(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6293237
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】バッテリー安全バルブの作動構造
(51)【国際特許分類】
H01M 2/34 20060101AFI20180305BHJP
H01M 2/12 20060101ALI20180305BHJP
H01M 2/04 20060101ALI20180305BHJP
H01M 2/26 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
H01M2/34 A
H01M2/12 101
H01M2/04 A
H01M2/26 A
【請求項の数】20
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-214573(P2016-214573)
(22)【出願日】2016年11月1日
(65)【公開番号】特開2017-117777(P2017-117777A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2016年11月9日
(31)【優先権主張番号】104143882
(32)【優先日】2015年12月25日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シェン−ファ イェ
【審査官】
渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】
特表2016−537780(JP,A)
【文献】
特開2011−124214(JP,A)
【文献】
特開2014−086140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/34
H01M 2/04
H01M 2/12
H01M 2/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリー上に設けられるように適合するバッテリー安全バルブの作動構造であって:
前記バッテリーの筐体上に設けられて第1表面と第2表面を有し、前記第1表面と前記第2表面は互いに反対を向き、かつ、前記バッテリーの正端子と負端子が貫通する、端部板;
前記端部板の前記第1表面上に設けられる安全バルブ;
前記第2表面上に設けられ、かつ、前記正端子から前記安全バルブに対応する前記第2表面上の第1位置まで延在する正端子導電板;
前記第2表面上に設けられ、かつ、前記負端子から前記安全バルブに対応する前記第2表面上の前記第1位置まで延在する負端子導電板;
前記第2表面上に設けられて、その第2位置が前記安全バルブの前記第1位置に対応する大気開放板;及び、
前記大気開放板と前記安全バルブとの間に設けられ、かつ、前記安全バルブによって通常条件下では一定の位置に制限される、作動板、を有し、
回転シャフトが前記作動板と前記大気開放板との間に設けられ、かつ、
前記バッテリーの内圧が前記安全バルブの破壊圧力を超えるとき、前記作動板は、回転して前記正端子と前記負端子にそれぞれ接触することで前記正端子と前記負端子との間に電気的接続路が生成されるように解放される、
バッテリー安全バルブの作動構造。
【請求項2】
前記端部板の前記第1表面が、前記第2表面へ向かって凹型であって前記安全バルブを設けるように構成される担持部を有し、
前記担持部は第1貫通穴を有し、かつ、
前記安全バルブの直径は前記第1貫通穴の直径よりも長い、
請求項1に記載のバッテリー安全バルブの作動構造。
【請求項3】
絶縁層が前記端部板の前記第2表面上に設けられ、かつ、
前記絶縁層は、前記正端子導電板と前記端部板とを隔離し、かつ、前記負端子導電板と前記端部板とを隔離する、
請求項1又は2に記載のバッテリー安全バルブの作動構造。
【請求項4】
前記絶縁層が、大気開放板を固定する基部と第2貫通穴を有し、
前記大気開放板は、前記大気開放板を固定する基部内において固定されて設けられ、かつ、
前記第2貫通穴は、前記大気開放板と前記安全バルブとの間に設けられる、
請求項3に記載のバッテリー安全バルブの作動構造。
【請求項5】
前記端部板が、大気開放板を固定する基部と第1貫通穴を有し、
前記大気開放板を固定する基部は、前記端部板の前記第2表面上に設けられ、
前記大気開放板は、前記大気開放板を固定する基部内において固定されて設けられ、かつ、
前記第1貫通穴は、前記大気開放板と前記安全バルブとの間に設けられる、
請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載のバッテリー安全バルブの作動構造。
【請求項6】
前記安全バルブが、第3表面と該第3表面とは反対を向く第4表面を有し、
位置限定構造は、前記安全バルブの前記第4表面上に設けられ、かつ、
前記端部板は第1貫通穴を有し、
前記位置限定構造は、前記第1貫通穴を貫通して前記第2表面にまで延在して前記作動板を固定し、それにより、前記作動板は、前記通常条件下では前記一定の位置に制限される、
請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載のバッテリー安全バルブの作動構造。
【請求項7】
少なくとも1つの圧力破壊溝が、前記第3表面上又は前記第4表面上に設けられ、かつ、前記安全バルブを破壊させることを可能にする、
請求項6に記載のバッテリー安全バルブの作動構造。
【請求項8】
前記大気開放板の表面が、前記大気開放板を貫通する複数の開口部を有し、かつ、
前記回転シャフトは、前記大気開放板の中心に設けられる、
請求項1に記載のバッテリー安全バルブの作動構造。
【請求項9】
前記作動板の2つの端部はそれぞれ、第1磁性要素と第2磁性要素を有し、かつ、
前記第1磁性要素と前記第2磁性要素は、透磁性材料又は磁化材料から作られる、
請求項1乃至8のうちいずれか一項に記載のバッテリー安全バルブの作動構造。
【請求項10】
前記安全バルブが対応する前記第2表面上の位置まで延在する前記正端子導電板の端部が、第1磁性物質を有し、
前記安全バルブが対応する前記第2表面上の位置まで延在する前記負端子導電板の端部は、第2磁性物質を有し、
前記回転シャフトに対して前記作動板の2つの端部を回転させるように駆動させるように、前記第1磁性物質と前記第1磁性要素は磁力によって互いに引きつけあい、かつ、前記第2磁性物質と前記第2磁性要素は磁力によって互いに引きつけあう、
請求項9に記載のバッテリー安全バルブの作動構造。
【請求項11】
前記第1磁性物質と前記第2磁性物質は、透磁性材料又は磁化材料から作られる、
請求項10に記載のバッテリー安全バルブの作動構造。
【請求項12】
ばねが、前記回転シャフトに対して回転させるように前記作動板を駆動させるため、前記作動板と前記大気開放板との間に設けられる、
請求項1乃至11のうちいずれか一項に記載のバッテリー安全バルブの作動構造。
【請求項13】
前記ばねが、渦巻きらせん状ばね又は圧縮ばねで、
前記ばねの一の端部は前記作動板上で固定され、かつ、
前記ばねの他の端部は前記大気開放板上で固定される、
請求項12に記載のバッテリー安全バルブの作動構造。
【請求項14】
前記安全バルブと前記作動板との間に設けられる空気圧バルブをさらに有する、請求項1に記載のバッテリー安全バルブの作動構造。
【請求項15】
前記空気圧バルブが、接続シート、バーストディスク、及び外部部材を有し、
前記接続シートは、前記安全バルブと前記バーストディスクとの間に設けられ、かつ、前記端部板上で固定され、
前記バーストディスクの中心は前記外部部材と結合し、
前記バーストディスクの周辺は、前記端部板の前記第1貫通穴を封止し、
位置限定構造は、前記作動板を固定するように前記外部部材の底部に設けられ、それにより、前記作動板は、前記通常条件下では前記一定の位置に制限される、
請求項14に記載のバッテリー安全バルブの作動構造。
【請求項16】
前記バーストディスクが第5表面と第6表面を有し、
前記第5表面と前記第6表面は互いに反対を向き、かつ、
少なくとも1つの圧力破壊溝が、前記第5表面上又は前記第6表面上に設けられ、かつ、前記バーストディスクを破壊させることを可能にする、
請求項15に記載のバッテリー安全バルブの作動構造。
【請求項17】
前記外部部材は、圧力感受性シートで、かつ、応力を検知するときに変形する、
請求項15に記載のバッテリー安全バルブの作動構造。
【請求項18】
前記作動板の2つの端部はそれぞれ、第1磁性要素と第2磁性要素を有し、かつ、
前記第1磁性要素と前記第2磁性要素は、透磁性材料又は磁化材料から作られる、
請求項15に記載のバッテリー安全バルブの作動構造。
【請求項19】
前記安全バルブが対応する前記第2表面上の位置まで延在する前記正端子導電板の端部が、第1磁性物質を有し、
前記安全バルブが対応する前記第2表面上の位置まで延在する前記負端子導電板の端部が、第2磁性物質を有し、
前記回転シャフトに対して前記作動板の2つの端部を回転させるように駆動させるように、前記第1磁性物質と前記第1磁性要素は磁力によって互いに引きつけあい、かつ、前記第2磁性物質と前記第2磁性要素は磁力によって互いに引きつけあう、
請求項18に記載のバッテリー安全バルブの作動構造。
【請求項20】
ばねが、前記回転シャフトに対して回転させるように前記作動板を駆動させるため、前記作動板と前記大気開放板との間に設けられる、
請求項15に記載のバッテリー安全バルブの作動構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術分野は、バッテリー安全バルブの作動構造に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリーが不適切に用いられる−たとえば過充電−とき、当該バッテリーの内部物質は、過剰な電圧に起因する分解反応によって気体を発生させる。バッテリーの構造が封止構造であるため、バッテリーの内圧は発生した気体によって増大する。バッテリーの温度もまた、分解反応又は抵抗によるエネルギー消費という現象によって増大する。従って、安全バルブは、内圧が増大する前に圧力を開放するように、バッテリー内に供される。安全バルブは一種の応力作動構造である。既知の技術は、安全バルブの圧力制御にのみ依拠してバッテリーの設計を改良している。
【0003】
「再充電可能バッテリー」と題された特許文献1は、電極集合体、電極集合体を含むケース、及び、キャップ集合体を有する再充電可能バッテリーを開示した。電極集合体は、第1電極、第2電極、及び、第1電極と第2電極との間に存在するセパレータを有する。キャップ集合体はケースに結合される。キャップ集合体は、第1電極へ電気的に接続されるタブ、及び、第2電極へ電気的に接続される変形可能板を有する。変形可能板はまた、圧力増大に起因して開く切込み部をも有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第8236439B2号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、バッテリー安全バルブの作動構造に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施形態によると、バッテリー安全バルブの作動構造は、バッテリー上に設けられるように適合する。前記バッテリー安全バルブの作動構造は、端部板、安全バルブ、正端子導電板、負端子導電板、大気開放板、及び作動板を有する。前記端部板は、当該バッテリーの筐体上に設けられ、かつ、第1表面と第2表面を有する。前記第1表面と前記第2表面は互いに反対を向いている。当該バッテリーの正端子と負端子は前記端部板を貫通する。前記安全バルブは、前記端部板の第1表面上に設けられる。前記正端子は、前記第2表面上に設けられ、かつ、前記正端子から、前記安全バルブに対応する第1位置まで延在する。前記負端子導電板は、前記第2表面上に設けられ、かつ、前記負端子から、前記安全バルブに対応する第1位置まで延在する。前記大気開放板は前記第2表面上に設けられる。前記大気開放板の第2位置は前記安全バルブの第1位置に対応する。前記作動板は、前記大気開放板と前記安全バルブとの間に設けられ、かつ、前記安全バルブによって通常条件下で一定の位置に制限される。回転シャフトは前記作動板と前記大気開放板との間に設けられる。当該バッテリーの内圧が前記安全バブルの破壊圧力を超えるとき、前記作動板は、前記正端子と前記負端子とを回転させ、かつ、前記正端子及び前記負端子とそれぞれ接触するように解放され、その結果、前記正端子と前記負端子との間に電気接続路が形成される。
【0007】
上記の記載は、以下に供される添付図面を適切に参照しながら本願で供される詳細な説明を丁寧に読むことでより良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】典型的な実施形態による、バッテリー安全バルブの作動構造を有するバッテリー本体の概略図である。
【
図2】
図1に示されたバッテリーの本体の分解図である。
【
図3A】典型的な実施形態による、バッテリー安全バルブの作動構造の上面図である。
【
図3B】典型的な実施形態による、バッテリー安全バルブの作動構造の底面図である。
【
図3C】典型的な実施形態による、バッテリー安全バルブの作動構造の分解図である。
【
図4A】作動構造、正端子導電板、及び負端子導電板の構成を表す概略図である。
【
図4B】作動構造、正端子導電板、及び負端子導電板の構成を表す概略図である。
【
図4C】作動構造、正端子導電板、及び負端子導電板の構成を表す概略図である。
【
図4D】作動構造、正端子導電板、及び負端子導電板の構成を表す概略図である。
【
図5】典型的な実施形態による、バッテリー安全バルブの作動構造の概略図である。
【
図6A】空気圧バルブの素子の一部の構成を表す概略図である。
【
図6B】空気圧バルブの素子の一部の構成を表す概略図である。
【
図7】バッテリーが短絡を有するときの放電と温度の関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以降では、典型的な実施形態が、当業者によって容易に理解されるように、添付図面を参照しながら詳細に説明される。本発明の基本概念は、本願で説明される典型的な実施形態に限定されることなく様々な形態で実施されてよい。周知の部材についての説明は簡明を期すために省略される。全体を通して、同様の参照番号は同様の構成要素を表す。
【0010】
典型的な実施形態では、バッテリー安全バルブの作動構造は、バッテリー内での内圧が大きくなりすぎるのを防止するため、バッテリー上に設けられるように適合する。バッテリーの内圧が、筐体の耐え得る破壊圧力を超えるとき、そのバッテリーは、強度が最も弱い地点から大量の可燃性気体を激増させて放出する。可燃性気体の濃度とバッテリーの温度が燃焼可能な状況に到達する場合、火花が、可燃性気体に点火することによって炎を起こし、かつ、人々の安全性に影響を及ぼす恐れがある。従って、本開示での安全バルブの設計においては、可燃性気体は、燃焼の可能性を減少させるように安全バルブを破壊することによって解放される。それに加えて、バッテリーが危険な状況にあるとき、短絡素子による正端子と負端子との間での短絡は即時に放電し得て、その結果、バッテリーはもはや電力が完全に満たされた状態にならず、バッテリーの安全性は増大する。この理由のため、本開示は、応力作動機構によって安全バルブを破壊する作動構造を供し、かつ、正端子と負端子との間を短絡するので、バッテリーのエネルギーは減少して、安全目標に到達する。
【0011】
それに加えて、バッテリーの安全機構においては、正端子と負端子との間での短絡が生じて放電が起こるとき、インピーダンスの加熱によるバッテリー温度の増大は、化学反応による圧力の増大よりも長い時間を必要とするので、短絡によるバッテリー温度の増大は、安全性の制御による制限の範囲内で制御され得る。
【実施例1】
【0012】
図1と
図2を参照してください。
図1は、典型的な実施形態によるバッテリー安全バルブ108の作動構造を有するバッテリー100の本体の概略図である。
図2は、バッテリー100の本体の分解図である。バッテリー100は、正端子101、負端子102、端部板110、筐体120、及び、筐体120内に設けられて端部板110によって封止されるバッテリー極性巻部105を有する。バッテリー極性巻部105は、正板、負板(図中には示されていない)、及び、正板と負板との間に存在するセパレータ(たとえば絶縁膜で、図中には示されていない)を巻くことによって作られる。バッテリー極性巻部105の2つの端部はそれぞれ、正導体106と負導体107である。バッテリー極性巻部105は、正極と負極に分割される活性物質を有する。正板と負板との間のセパレータは、通過する電子と鉛イオンの流れを遮断することで、電位差を生成するように、電流の蓄電と放電を制御してよい。バッテリー100は封止構造を有する。バッテリー100が不適切に用いられる−たとえば過充電又は穴をあける−とき、バッテリー極性巻部105は、筐体120を満たす熱と可燃性気体を生成し、その後内圧を生じさせる恐れがある。バッテリー100の内圧が、筐体120の耐える破壊圧力を超える場合、安全バルブ103が壊れることで、過圧は開放され、かつ、筐体120の爆発は防止される。
【0013】
バッテリー100の筐体120と端部板110の材料は金属等である。端部板110の2つの側部はそれぞれ、第1案内ハンドル111と第2案内ハンドル112を備えるように設けられる。1第1案内ハンドル111の一の端部と第2案内ハンドル112の一の端部は、バッテリー100の筐体120まで延在し、かつ、バッテリー極性巻部105の正導体106と負導体107にそれぞれ結合される。第1案内ハンドル111の他の端部は、正端子導電板121(
図3B参照)と正端子101に結合される。第2案内ハンドル112の他の端部は、負端子導電板122(
図3B参照)と負端子102に結合される。従って、バッテリー極性巻部105の正導体106と負導体107はそれぞれ、正端子101と負端子102に結合する。
【0014】
図3A〜
図3Cを参照してください。
図3Aは、典型的な実施形態によるバッテリー安全バルブ108の作動構造の上面図である。
図3Bは、典型的な実施形態による、バッテリー安全バルブ108の作動構造の底面図である。
図3Cは、典型的な実施形態による、バッテリー安全バルブの作動構造の分解図である。本開示の実施形態では、バッテリー安全バルブ108の作動構造は、端部板110、端部板110の第1表面S1上に設けられる安全バルブ103、端部板110の第2表面S2上に設けられる正端子導電板121、負端子導電板122、大気開放板123、作動板124、及び絶縁層125を有する。
【0015】
図3Aに示されているように、端部板110はたとえば長い形状の棒で、かつ、端部板110がバッテリー100と組み合わせられるとき、それに対応してバッテリー100の正端子101と負端子102は、正端子の穴101’と負端子の穴102’をそれぞれ通り抜ける。このとき正端子の穴101’と負端子の穴102’はそれぞれ、端部板110の長手側部間の2つの反対に位置する側部付近に存在する。端部板110は第1表面S1と第2表面S2を有する。第1表面S1と第2表面S2は互いに反対方向を向く。安全バルブ103は、端部板110の第1表面S1の中心に設けられる。具体的には、
図3Cを参照していただくと、端部板110の第1表面S1は、第2表面S2へ向かって凹型であって安全バルブ103を設けて固定するように構成される担持部115を有する。それに加えて、担持部115は第1貫通穴113を有し、かつ、安全バルブ103の直径は第1貫通穴113の直径よりも大きい。
図3Bを参照していただくと、正端子電導板121と負端子電導板122はたとえば、長い棒の形状で、かつ、端部板110の第2表面S2上に設けられる。正端子電導板121と負端子電導板122は、端部板110の長手側部に沿って延在する。正端子電導板121は、正端子101から、安全バルブ103に対応する第2表面S2上の位置まで延在する。負端子電導板122は、負端子102から、安全バルブ103に対応する第2表面S2上の位置まで延在する。正端子導電板121の材料はアルミニウムであり、かつ、負端子導電板122の材料は銅である。しかし本開示の技術的範囲は上記に限定されない。
【0016】
本開示の一の実施形態では、大気開放板123の表面は該大気開放板123を貫通する複数の開口部を有し、開口部128の数とサイズには制限が存在せず、かつ、回転シャフト130は大気開放板123の中心に設けられる。それに加えて、大気開放板123と安全バルブ103は互いに反対を向き、かつ、安全バルブ103は、端部板110上でレーザーはんだによってはんだ付けされて固定される。安全バルブ103は、第3表面S3、及び、第3表面S3とは反対を向く第4表面S4を有する。第3表面S3上又は第4表面S4上には少なくとも1つの破壊溝G−たとえばV字形状の溝の組−が存在することで、安全バルブ103は、圧力変化の結果壊れる。圧力破壊溝Gは他の周囲の板よりも薄い。従ってバッテリー100の内部気体が、大気開放板123の開口部128を介してバッテリー100の外部へ漏出するときに、安全バルブ103は、破壊又は変形−たとえば薄い圧力破壊溝Gから外側へ膨張−することで、過重圧力を緩和する。
【0017】
図3Bを参照していただくと、端部板110の材料はたとえばアルミニウムのような金属であるとき、絶縁層125−たとえばポリエステルシート−が端部板110の第2表面S2上に設けられる。絶縁層125は、正端子導電板121と端部板110とを隔離するだけではなく、負端子導電板122と端部板110とをも隔離する。従って絶縁層125は、正端子導電板121と負端子導電板122が、端部板110と接触して短絡を生じさせることを防止する。それに加えて、絶縁層125は、大気開放板を固定する基部126と第2貫通穴127を有する。安全バルブ103と対向する大気開放板123は、大気開放板を固定する基部126内で固定されて設けられる。第2貫通穴127は、大気開放板123と安全バルブ103との間に設けられる。他の実施形態では、端部板110の材料が非伝導性であるとき、端部板110の第2表面S2上に絶縁層125を設ける必要はなく、かつ、大気開放板を固定する基部126は、非伝導性端部板110の第2表面S2上に直接設けられてよい。
【0018】
図3Cを参照していただくと、位置限定構造104が安全バルブ103の第4表面S4上に設けられ、かつ、位置限定構造104は、第1貫通穴113を貫通して第2表面S2にまで延在する。さらに作動板124は、大気開放板123と安全バルブ103との間に設けられ、かつ、通常条件下で安全バルブ103によって一定の位置に制限される。具体的には、回転シャフト130は大気開放板123と作動板124との間に設けられる。回転シャフト130は大気開放板123上又は作動板124上で固定されてよく、かつ、大気開放板123と作動板124は回転シャフト130を介して互いにピン接合する。そのため作動板124は、大気開放板123に対して回転することができる。しかも大気開放板123の位置は安全バルブ103とは反対側で、かつ、絶縁層125の第2貫通穴127は端部板110の第1貫通穴と接続する。大気開放板123の材料はセラミックス又は銅と同様の材料である。作動板124の材料は銅又はアルミニウムである。
【0019】
図3C、
図4A〜
図4Dを同時に参照してください。
図4A〜
図4Dは、作動板124、正端子導電板121、及び負端子導電板122の構成を表す概略図である。一の実施形態では、安全バルブ103の位置限定構造104−たとえば2つのチップ−は作動板124を固定するように構成されているため、作動板124は、通常条件下では回転することなく一定の位置に制限される。
図4Aと
図4Bに示されているように、作動板124、正端子導電板121、及び負端子導電板122の材料は、たとえば銅又はアルミニウムのような導電性であり、かつ、作動板124は位置限定構造104によって制限されている。そのため、作動板124は、安全バルブ103が対応する第2表面S2上の位置にまで延在する正端子導電板121及び負端子導電板122とは接触も導通もしない。さらに
図4Cと
図4Dを参照していただくと、安全バルブ103が破壊又は変形するとき、位置限定構造104は作動板124を解放して自由にする。作動板124の2つの端部は、磁力又は弾性力によって駆動され、かつ、自由に回転する。作動板124の2つの端部は、正端子導電板121及び負端子導電板122とそれぞれ接触することで、正端子101と負端子102との間に電気的接続路を形成する(
図3Aをご参照ください)。
【0020】
図4Cに示されているように、安全バルブ103に対応する第2表面S2上に位置まで延在する正端子導電板121の端部は、第1磁性物質131を有し、かつ、安全バルブ103に対応する第2表面S2上に位置まで延在する負端子導電板122の端部は、第2磁性物質132を有する。第1磁性物質131と第2磁性物質132は、透磁性材料又は磁化材料−NdFeBのような永久磁石(たとえばN38UH、N40UH、N35EH、N38EH、N30AH、又はN33AH)−で作られる。それに加えて、作動板124の2つの端部はそれぞれ、第1磁性要素133と第2磁性要素134を有する。第1磁性要素133と第2磁性要素134は、透磁性材料又は磁化材料−NdFeBのような永久磁石(たとえばN38UH、N40UH、N35EH、N38EH、N30AH、又はN33AH)−で作られる。一の実施形態では、上述のNdFeB永久磁石の最大磁気エネルギー積(BH
max)は220KJ/m
3〜330KJ/m
3の範囲を有し、かつ、上述のNdFeB永久磁石の最大許容可能な動作温度は500℃−これはバッテリー極性巻部105の許容可能動作温度(120℃)を超える−を超えている。そのため磁石は高温環境による影響を受けない。
【0021】
作動板124が解放されるとき、回転シャフト130に対して回転させるように作動板124の端部を駆動するように、第1磁性物質131と第1磁性要素133は磁力によって互いに引きつけあい、かつ、第2磁性物質132と第2磁性要素134は別な磁力によって互いに引きつけあう。よって、それぞれ正端子導電板121と負端子導電板122により接近する作動板124の2つの端部には、より強い磁気駆動力が存在する。そのため抵抗は小さくなり得る。
【0022】
しかも
図4Dに示されているように、磁力による駆動に加えて、作動板124は弾性力によって駆動されてよい。本開示の実施形態では、ばね129は作動板124と大気開放板123との間に設けられる。ばね129は、渦巻きらせん状ばね又は圧縮ばねであってよい。ばね129の一の端部は作動板124上に固定されてよい。ばね129の他の端部は大気開放板123上に固定されてよい。作動板124が通常条件下で一定の位置で制限されているとき、ばね129は弾性力を蓄える。作動板124が解放されるとき、ばね129は、蓄えられた弾性力を解放することで、回転シャフト130に対して回転するように作動板129を駆動し、かつ、作動板124の2つの端部は、正端子導電板121及び負端子導電板122とそれぞれ接触する。
【0023】
上述したように、本開示では、バッテリー安全バルブ108の作動構造は、バッテリーの全エネルギーを減少させることで安全性目標に到達するように、応力作動機構によって正端子導電板121及び負端子導電板122と接触して短絡するように作動板124を駆動する。
【0024】
それに加えて、上述の実施形態では、バッテリー安全バルブ108の作動構造は、端部板110の第2表面S2に沿って、バッテリー100内部で内向きに設定される。しかし他の実施形態では、バッテリー安全バルブ108の作動構造は、端部板110の第2表面S1に沿って、バッテリー100内部で内向きに設定される。動作機構は上述の実施形態において説明したものと同一であるため、ここでは繰り返して説明しない。
【実施例2】
【0025】
図5、
図6A、及び
図6Bをご参照ください。
図5は、典型的な実施形態による、バッテリー安全バルブ208の作動構造の概略図である。
図6Aと
図6Bは、空気圧バルブ200の素子の一部の構成を表す概略図である。本開示の実施形態では、バッテリー安全バルブ208の作動構造は、端部板110、端部板110の第1表面S1上に設けられる安全バルブ201、端部板110の第2表面S2上に設けられる正端子導電板121、負端子導電板122、大気開放板123、作動板124、及び絶縁層125を有する。端部板110、正端子導電板121、負端子導電板122、大気開放板123、作動板124、及び絶縁層125は実施例1で既に説明しているので、ここでは繰り返して説明しない。
【0026】
バッテリー安全バルブ208の作動構造は、安全バルブ201と作動板124との間に設けられる空気圧バルブ200をさらに有する。詳細には、空気圧バルブ200は、安全バルブ201の第4表面S4上に設けられる接続シート202、バーストディスク203、及び外部部材204を有する。接続シート202は、安全バルブ201とバーストディスク203との間に存在し、かつ、端部板110の第1表面S1上で固定されている。(
図6Aに示されているように)バーストディスク203の中心部は外部部材204と結合し、バーストディスク203の周辺部は、端部板110の第1貫通穴113を封止することで、空気圧バルブ200の応力作動機構を構成する。具体的には、バーストディスク203の中心部には開口部が存在し、かつ、外部部材204はバーストディスク203の開口部内に設けられることで、開口部を封止して互いに結合する。図示をわかりやすくするため、端部板110と絶縁層125を示さずに、
図6Aは、端部板110の第1貫通穴113内に設けられるバーストディスク203と外部部材204のみ示し、かつ、
図6Bは、外部部材204、作動板124、正端子導電板121、及び負端子導電板122のみ示している。
【0027】
本開示の実施形態では、外部部材204の底部に位置限定構造205が存在する。位置限定構造205は、第1貫通穴113を貫通して第2表面S2まで延在し、かつ、作動板124を固定する。よって作動板124は、安全バルブ103によって通常条件下では一定の位置で制限されている。
【0028】
加えてバーストディスク203は第5表面S5と第6表面S6を有する。第5表面S5と第6表面S6は互いに反対を向いている。第5表面S5又は第6表面S6上には少なくとも1つの圧力破壊溝G1−たとえばV字形状溝の組−が存在する。安全バルブ201の第3表面S3又は第4表面S4上には少なくとも1つの1つの圧力破壊溝G2−たとえばV字形状溝の組−が存在する。2つの圧力破壊溝G1とG2は他の周囲の板よりも薄い。従ってバッテリー100の内部気体が、大気開放板123の開口部128を介してバッテリー100の外部へ漏出するときに、安全バルブ201とバーストディスク203は、破壊又は変形−たとえば薄い圧力破壊溝G1とG2から外側へ膨張−することで、過重圧力を緩和する。さらにバーストディスク203の中心に設けられた外部部材204は、圧力感受性シートであってよく、応力を検知するときに変形してよい。詳細には、外部部材204がバッテリー100の内部気体の外向きの空気圧を検知するとき、外部部材204は変形して、作動板124を回転させるように位置限定構造205を解放する。その結果、正端子導電板121と負端子導電板122は互いに接触するので、バッテリー100の安全性を改善するように放電が実現される。
【0029】
本開示の実施形態では、応力作動機構の二重バルブ(安全バルブと空気圧バルブ)及び位置限定構造205と安全バルブ201とを分離する設計を利用することによって、安全バルブ201が外部からの力によって使えなくなる又は壊れたときに、空気圧バルブ200が使えなくなった安全バルブ201の代わりになり得る。従ってバッテリー安全バルブ208の作動構造は、二重保護の機能を実現する。よって空気圧バルブ200が、バッテリー100の内部気体によって実際の破壊又は変形するときにのみ、空気圧バルブ200は、作動板124を解放して、安全性を向上させる。
【0030】
本開示の上述の実施形態では、安全バルブ(又は空気圧バルブ)を破壊することでバッテリー100の内圧が高くなりすぎるのを防止することによって、バッテリー安全バルブの作動構造は正端子と負端子との間で短絡を生成する。その結果バッテリーは、危険な状態にあるときに即時に放電するので、そのバッテリーの全エネルギーはもはや十分に満たされなくなることで、安全性が向上する。
【0031】
図7を参照してください。
図7は、バッテリーが短絡を有するときの放電と温度の関係を表すグラフである。バッテリー中で短絡を引き起こす放電を模擬する実験では、そのバッテリーの正端子と負端子は外部回路に結合される。外部回路のインピーダンスは5mΩ未満で、かつ、通過する電流を供する板の断面積は約3mm
2と仮定する。続いてバッテリーは、最大エネルギー(たとえば4.2V)を有するまで充電され、かつ、スイッチは外部回路を短絡するように開放される。そのとき、バッテリーは瞬時に放電する(最大電流は800Aに到達し得る)ので、そのバッテリー内部の温度、又は、そのバッテリーの正端子と負端子の温度は、インピーダンスの加熱によって上昇する。バッテリーの中心及び正端子と負端子で温度計によって測定された温度によると、短絡によって上昇した温度は、約80℃に到達し、かつ、依然として安全規制の許容可能な範囲内で制御されている。約300秒後、バッテリーは、温度が約50℃にまで減少するまで冷却段階に入り始める。
【0032】
よって正端子導電板と負端子導電板の線インピーダンスが低く、かつ、導電性領域が電流を流すのに十分な大きさである限り、バッテリー極性巻部によって生成される熱と、短絡によって生成される熱の合計は、そのバッテリーの温度が、そのバッテリー極性巻部のセパレータの融点(約120℃)を上回れるほど大きくない。そのためバッテリーは安全な状態を維持できる。
【0033】
開示された実施形態に対する様々な修正型及び変化型があり得ることは当業者には自明である。明細書及び実施例は単なる例に過ぎず、本開示の真の技術的範囲は「特許請求の範囲」及びその均等物によって示唆されることが意図されている。
【符号の説明】
【0034】
100 バッテリー、101 正端子、101’ 正端子の穴、102 負端子、102’ 負端子の穴、103,201 安全バルブ、104,205 位置限定構造、105 バッテリー極性巻部、106 正導体、107 負導体、108 バッテリー安全バルブ、110 端部板、111 第1案内ハンドル、112 第2案内ハンドル、113 第1貫通穴、115 担持部、120 筐体、121 正端子導電板、122 負端子導電板、123 大気開放板、124 作動板、125 絶縁層、126 大気開放板を固定する基部、127 第2貫通穴、128 開口部、129 ばね、130 回転シャフト、131 第1磁性物質、132 第2磁性物質、133 第1磁性要素、134 第2磁性要素、200 空気圧バルブ、202 接続シート、203 バーストディスク、204 外部部材。