【実施例】
【0044】
以下、図面を参照しながら、本発明の観察装置及び観察方法並びにコンピュータプログラムの実施例を説明する。尚、以下では、本発明の観察装置及び観察方法並びにコンピュータプログラムが、被験者の角膜の表面を撮像することで観察画像を取得すると共に当該取得した観察画像を解析することで角膜の表面に形成される涙液層の状態を推定する(言い換えれば、計測する)観察装置に適用されるものとする。
【0045】
但し、本発明の観察装置及び観察方法並びにコンピュータプログラムは、被験者の眼の状態を観察する任意の観察装置に対して適用されてもよい。例えば、本発明の観察装置及び観察方法並びにコンピュータプログラムは、被験者の角膜の表面を撮像することで観察画像を取得するとともに当該取得した観察画像をユーザ(例えば、眼科医)等に向けて表示する観察装置に対して適用されてもよい。この場合、ユーザは、観察装置が表示する観察画像に基づいて、眼の状態を推定してもよい。
【0046】
(1)第1実施例
はじめに、
図1から
図7を参照しながら、第1実施例の観察装置1について説明する。
【0047】
(1−1)第1実施例の観察装置1の構成
はじめに、
図1を参照しながら、第1実施例の観察装置1の構成について説明する。
図1は、第1実施例の観察装置1の構成を示すブロック図である。
【0048】
図1に示すように、第1実施例の観察装置1は、上述した実施形態中の「投影手段」の一具体例である投影部110と、上述した実施形態中の「投影手段」の一具体例である拡散板120と、上述した実施形態中の「投影手段」の一具体例である接眼レンズ124と、上述した実施形態中の「投影手段」の一具体例であるケーラー照明用レンズ131と、ビームスプリッタ132と、上述した実施形態中の「撮像手段」の一具体例である撮像部140と、上述した実施形態中の「制御手段」の一具体例である制御部150とを備える。尚、
図1では、投影部110、拡散板120、接眼レンズ124、ケーラー照明用レンズ131、ビームスプリッタ132及び撮像部140の夫々は、投影部110、接眼レンズ124、ケーラー照明用レンズ131又は撮像部140の光軸に沿った断面図を用いて記載されている。
【0049】
投影部110は、所望の投影画像を投影する。投影部110は、投影画像の少なくとも一部が後述する拡散板120上で結像するように、投影画像を投影する。投影部110は、投影画像の少なくとも一部が網膜上で結像するように、投影画像を投影する。投影画像を投影するために、投影部110は、表示素子111と、投影レンズ112と、投影絞り113とを備える。
【0050】
表示素子111は、投影部110が投影するべき投影画像を表示する。表示素子111は、例えば、液晶ディスプレイ等の任意のディスプレイ装置である。
【0051】
表示素子111は、投影画像が表示される表示面111aを備えている。第1実施例では、表示面111aは、涙液層の状態を観察するために用いられる検査画像(後述する
図3(a)から
図3(d)参照)を表示するための第1表示領域111a1と、撮像部140の撮像結果である観察画像(後述する
図4参照)を表示するための第2表示領域111a2とに仮想的に区分される。
【0052】
第1表示領域111a1は、第2表示領域111a2を取り囲むように分布する。言い換えれば、第1表示領域111a1は、第2表示領域111a2の周囲又は外側に分布する。第2表示領域111a2は、第1表示領域111a1よりも表示面111aの中心部に近接していることが好ましい。
【0053】
表示素子111は、第1表示領域111a1に検査画像を表示する。更に、表示素子111は、第2表示領域111a2に観察画像を表示する。つまり、第1実施例では、表示素子111は、検査画像が観察画像を取り囲むように(言い換えれば、検査画像の中心部又は当該中心部の近傍に観察画像が位置するように)観察画像と検査画像とを合成することで得られる投影画像を表示する。その結果、第1表示領域111a1からは、検査画像を眼に投影する(より具体的には、検査画像を拡散板120に投影する)ための照明光L11が出射される。第2表示領域111a2からは、観察画像を眼に投影する(より具体的には、観察画像を網膜上に結像させる)ための照明光L12が出射される。
【0054】
投影レンズ112は、照明光L11を拡散板120上に結像させる。その結果、投影部110が投影する検査画像は、拡散板120上で結像する。加えて、投影レンズ112は、ケーラー照明用レンズ131及び接眼レンズ124と共に、照明光L12を網膜上に結像させる。その結果、投影部110が投影する観察画像は、網膜上で結像する。
【0055】
投影絞り113は、投影部110から出射する照明光L11及び照明光L12の光量を調整する。
【0056】
拡散板120は、拡散板120に入射してくる照明光L11を拡散する板(言い換えれば、スクリーン)である。具体的には、拡散板120は、投影部110側を向いている拡散板120の表面121に入射してくる照明光L11を、被験者側(角膜側)を向いている拡散板120の表面122から照明光L21として拡散する。拡散板120によって拡散された照明光L21の少なくとも一部は、角膜を照明する。
【0057】
第1実施例では、拡散板120の表面122の断面(具体的には、光軸に沿った断面)は、のこぎり状の断面となることが好ましい。つまり、表面122は、フレネルレンズの表面の如き形状を有していることが好ましい。特に、表面122の断面は、表面122の断面がのこぎり状の断面とならない場合と比較してより多くの照明光L11を照明光L21として角膜に向けて拡散することが可能なのこぎり状の断面となることが好ましい。その結果、
図1に示すように、照明光L11は、より多くの照明光L11が照明光L21として角膜に向かうように、拡散板120によって拡散される。
【0058】
第1実施例では、拡散板120には、開口123が形成されている。被験者の眼は、角膜が開口123に対向することが可能な位置に位置している。開口123は、表面121から表面122に向かって拡散板120を貫通する開口である。
【0059】
開口123は、角膜によって反射された照明光L21である反射光L31が通過する開口である。開口123には、反射光L31をビームスプリッタ132の反射面に導く接眼レンズ124が配置されている。
【0060】
開口123は更に、ビームスプリッタ132を通過した後に拡散板120に入射してくる照明光L12が通過する開口である。開口123を通過する照明光L12は、開口123に配置される接眼レンズ124によって、網膜に導かれる。その結果、照明光L12は、網膜上で結像する。つまり、投影部110から出射する照明光L12は、拡散板120によって拡散されることはない。但し、投影部110から出射する照明光L12の少なくとも一部が、拡散板120によって拡散されてもよい。
【0061】
尚、
図1では、拡散板120は、透過型の拡散板である。しかしながら、拡散板120は、反射型の拡散板であってもよい。また、観察装置1は、拡散板120に加えて又は代えて、拡散板120に入射してくる照明光L11を拡散することが可能な任意の光学素子を備えていてもよい。例えば、観察装置1は、拡散板120に加えて又は代えて、フレネルレンズを備えていてもよい。また、拡散板120の表面122の断面は、のこぎり状の断面でなくてもよい。例えば、拡散板120の表面122は、平面であってもよい。
【0062】
ケーラー照明用レンズ131は、投影レンズ112及び接眼レンズ124と共に、照明光L12を網膜上に結像させる。典型的には、ケーラー照明用レンズ131と接眼レンズ124との間には、照明光L12が結像する中間結像面が位置する。例えば、照明光L12は、ケーラー照明用レンズ131と接眼レンズ124との間に位置する接眼レンズ124の前側焦点と一致する中間結像面上で結像する。尚、照明光L11は、ケーラー照明用レンズ131を通過しない(つまり、ケーラー照明用レンズ131のレンズ面を通過しない)ことが好ましい。但し、照明光L11の少なくとも一部は、ケーラー照明用レンズ131を通過してもよい。
【0063】
ビームスプリッタ132は、投影部110から出射する照明光L11及び照明光L12を透過する。一方で、ビームスプリッタ132は、角膜によって反射された照明光L21である反射光L31を、撮像部140に向けて反射する。
【0064】
撮像部140は、検査画像が投影されている拡散板120の角膜反射像(つまり、角膜によって反射された照明光L21である反射光L31によって形成される画像であり、実質的には拡散板120の表面122)又は角膜の表面を撮像する。角膜反射像又は角膜の表面を撮像するために、撮像部140は、撮像絞り141と、撮像レンズ142と、撮像素子143とを備えている。
【0065】
撮像絞り141は、ビームスプリッタ130によって反射された反射光L31の光量(より具体的には、撮像素子143に向かう反射光L31の光量)を調整する。
【0066】
撮像レンズ142は、反射光L31を撮像素子143上に(より具体的には、撮像素子143の撮像面上に)結像させる。その結果、撮像素子143上では、検査画像が投影されている拡散板120の角膜反射像又は角膜の表面を示す画像が結像する。
【0067】
撮像素子143は、撮像素子143に入射してくる反射光L31を電気信号に変換するCCDセンサ又はCMOSセンサを備えている。その結果、撮像素子143は、検査画像が投影されている拡散板120の角膜反射像又は角膜の表面を示す画像である観察画像を取得する。撮像素子143が取得した観察画像は、制御部150に出力される。
【0068】
制御部150は、観察装置1の全体の動作を制御する。制御部150は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を備えていてもよい。制御部150は、例えば、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリを備えていてもよい。
【0069】
第1実施例では特に、制御部150は、撮像部140が取得した観察画像を解析することで、角膜の表面に形成される涙液層の状態を推定する。更に、制御部150は、観察画像を網膜に結像させるための照明光L12が被験者の瞳孔を通過するように、投影部110を制御する。制御部150は、主として涙液層の状態を推定するために、画像解析部151と、状態推定部152とを備えている。更に、制御部150は、主として照明光L12が被験者の瞳孔を通過するように投影部110を制御するために、瞳孔検出部153と、表示制御部154とを備えている。
【0070】
制御部150は、画像解析部151、状態推定部152、瞳孔検出部153及び表示制御部154の動作をCPUに実行させるためのコンピュータプログラムを、CPU上で実行してもよい。制御部150は、このようなコンピュータプログラムをメモリ等の記録媒体から読み出してもよいし、ネットワークを介してダウンロードしてもよい。その結果、画像解析部151、状態推定部152、瞳孔検出部153及び表示制御部154は、例えば、論理的な処理ブロックとしてCPU上で機能する。但し、画像解析部151、状態推定部152、瞳孔検出部153及び表示制御部154のうちの少なくとも一つは、制御部150内に物理的に実現される回路ブロックであってもよい。
【0071】
画像解析部151は、撮像部140が取得した観察画像を解析する。例えば、後に詳述するように、全白色の検査画像が拡散板120に投影されている場合には、画像解析部151は、観察画像に現れる干渉色を解析してもよい。尚、観察画像に現れる干渉色は、油層の表面によって反射された反射光L31と油層の裏面(つまり、油層と水層との界面)によって反射された反射光L31との干渉光が呈する色を意味する。例えば、後に詳述するように、線状パターンを含む検査画像が拡散板120に投影されている場合には、画像解析部151は、観察画像に現れる線状パターンの経時的な変化(時間的な変化)を解析してもよい。
【0072】
状態推定部152は、画像解析部151の解析結果に基づいて、涙液層の状態を推定する(言い換えれば、計測する)。例えば、状態推定部152は、画像解析部151の解析結果の一例である「観察画像に現れる干渉色」に基づいて、涙液層の状態の一例である「油層(つまり、涙液層を構成する一つの層である油層)の厚さ」を推定してもよい。例えば、状態推定部152は、画像解析部151の解析結果の一例である「線状パターンの経時的な変化」に基づいて、涙液層の状態の一例である「BUT(tear film Break Up Time:涙液層破壊時間:被験者の眼が開いてから涙液層の表面に亀裂が入るまでの時間)」を推定してもよい。
【0073】
瞳孔検出部153は、撮像部140が取得した観察画像中に現れる被験者の瞳孔の位置を検出する。例えば、瞳孔検出部153は、撮像部140が取得した観察画像を解析することで、観察画像中に現れる瞳孔の位置を検出する。
【0074】
表示制御部154は、涙液層の状態を観察するために用いられる検査画像を表示するように、表示素子111を制御する。更に、表示制御部154は、撮像部140が取得した観察画像を表示するように、表示素子111を制御する。
【0075】
第1実施例では、表示制御部154は、第2表示領域111a2を取り囲む第1表示領域111a1に検査画像を表示するように、表示素子111を制御する。更に、表示制御部154は、第1表示領域111a1によって取り囲まれる第2表示領域111a2に観察画像を表示するように、表示素子111を制御する。従って、表示制御部154は、観察画像が検査画像の中心部(或いは、中心部の近傍)に重なるように観察画像と検査画像とを合成することで得られる投影画像を表示するように、表示素子111を制御する。言い換えれば、表示制御部154は、検査画像が観察画像を取り囲むように観察画像と検査画像とを合成することで得られる投影画像を表示するように、表示素子111を制御する。
【0076】
表示制御部154は更に、瞳孔検出部153の検出結果に基づいて、表示素子111の表示面111a上における観察画像の表示位置を調整する。つまり、表示制御部154は更に、瞳孔検出部153の検出結果に基づいて、観察画像の表示位置を調整するように表示素子111を制御する。具体的には、表示制御部154は、観察画像を網膜に結像させるための照明光L12が瞳孔を通過するように、表示面111a上における観察画像の表示位置を調整する。つまり、表示制御部154は、表示面111a上において第2表示領域111a2が分布する位置を調整する。
【0077】
尚、表示面111a上における観察画像の表示位置の調整は、角膜の表面(或いは、照明光L12を投影部110から網膜に導く光学部材(例えば、ケーラー照明用レンズ131や、接眼レンズ124)の光軸に垂直な仮想的な光学面)上における観察画像の投影位置の調整に相当する。つまり、表示面111a上における観察画像の表示位置の調整は、角膜の表面上における照明光L12の照射位置の調整に相当する。従って、表示制御部154は、実質的には、観察画像の投影位置(つまり、照明光L12の照射位置)を調整しているとも言える。
【0078】
(1−2)第1実施例の観察装置1の動作
続いて、
図2を参照しながら、第1実施例の観察装置1の動作について説明する。
図2は、第1実施例の観察装置1の動作の流れを示すフローチャートである。
【0079】
図2に示すように、表示制御部154は、表示面111に検査画像を表示するように、表示素子111を制御する(ステップS101)。このとき、表示制御部154は、表示面111の全面に検査画像を表示するように、表示素子111を制御してもよい。或いは、表示制御部154は、表示面111aのうちの第1表示領域111a1(つまり、表示面111aの中心部又は第2表示領域111a2を除く領域)に検査画像を表示するように、表示素子111を制御してもよい。その結果、表示素子111は、検査画像を表示する(ステップS101)。
【0080】
ここで、
図3(a)から
図3(d)を参照しながら、検査画像について説明する。
図3(a)から
図3(d)は、夫々、検査画像を示す平面図である。
【0081】
図3(a)は、観察装置1が涙液層の状態の一例である油層の厚さを推定する場合に表示される検査画像を示している。
図3(a)に示すように、観察装置1が油層の厚さを推定する場合には、表示制御部154は、全白色の画像(つまり、全体が白色となる画像)である検査画像を表示するように、表示素子111を制御する。
【0082】
図3(b)は、観察装置1が涙液層の状態の一例であるBUTを推定する場合に表示される検査画像の第1例を示している。
図3(b)に示すように、観察装置1がBUTを推定する場合には、表示制御部154は、同心円の複数のリングの画像(つまり、多重リング状パターン)である検査画像を表示するように、表示素子111を制御する。
【0083】
図3(c)は、観察装置1がBUTを推定する場合に表示される検査画像の第2例を示している。
図3(c)に示すように、観察装置1がBUTを推定する場合には、表示制御部154は、
図3(b)に示す多重リング状パターンである検査画像に代えて、互いに平行な複数の直線又は線分の画像(つまり、ストライプ状パターン)である検査画像を表示するように、表示素子111を制御してもよい。
【0084】
図3(d)は、観察装置1がBUTを推定する場合に表示される検査画像の第3例を示している。
図3(d)に示すように、観察装置1がBUTを推定する場合には、表示制御部154は、
図3(b)に示す多重リング状パターンである検査画像及び
図3(c)に示すストライプ状パターンである検査画像に代えて、格子の画像(つまり、格子状パターン)である検査画像を表示するように、表示素子111を制御してもよい。
【0085】
つまり、観察装置1がBUTを推定する場合には、表示制御部154は、複数の直線、線分又は曲線の画像(つまり、線状パターン)である検査画像を表示するように、表示素子111を制御する。
【0086】
尚、
図3(a)に示す検査画像は、観察装置1が油層の厚さを推定する場合に表示される検査画像の一例に過ぎない。従って、観察装置1が油層の厚さを推定する場合に、表示制御部154は、
図3(a)に示す検査画像とは異なる他の検査画像を表示するように、表示素子111を制御してもよい。
【0087】
同様に、
図3(b)から
図3(d)に示す検査画像は、観察装置1がBUTを推定する場合に表示される検査画像の一例に過ぎない。従って、観察装置1がBUTを推定する場合に、表示制御部154は、
図3(b)から
図3(d)に示す検査画像とは異なる他の検査画像を表示するように、表示素子111を制御してもよい。
【0088】
再び
図2において、表示素子111が検査画像を表示すると、表示面111a(或いは、第1表示領域111a1)からは、検査画像を拡散板120に投影するための照明光L11が出射される。照明光L11は、投影レンズ112及び投影絞り113を介して、拡散板120に入射する。その結果、拡散板120上では、検査画像が結像する。拡散板120は、拡散板120に入射してくる照明光L11を、照明光L21として拡散する。その結果、照明光L21は、被験者の角膜に入射する。従って、拡散板120は、投影部110が投影している検査画像に応じた明暗パターンで眼を照明する照明板として機能する。このとき、検査画像は、角膜上で結像していてもよい。或いは、検査画像は、角膜上で結像していなくてもよい。
【0089】
その後、撮像部140は、検査画像が投影されている拡散板120の角膜反射像もしくは角膜の表面を撮像する(ステップS102)。その結果、撮像部140は、角膜の表面状態を反映した画像である観察画像を取得する(ステップS102)。
【0090】
ここで、
図4を参照しながら、観察画像について説明する。
図4は、観察画像を示す平面図である。
【0091】
図4は、
図3(b)に示す検査画像(多重リング状パターン)が拡散板120投影されている場合に当該拡散板120の角膜反射像を撮像することで取得される観察画像を示している。
図4に示すように、観察画像中には、被験者の角膜(更には、眼)に映り込んでいる拡散板120上の検査画像(つまり、多重リング状パターン)のみならず、被験者の前眼部が含まれている。但し、後述するように観察装置1がBUTを推定する場合には、撮像レンズ142は角膜に映り込んでいる拡散板120にピントを合わせることが好ましいがゆえに、被験者の前眼部は多少ボケる可能性がある。
【0092】
再び
図2において、表示制御部154は、ステップS101で表示素子111が表示している検査画像とステップS102で撮像部140が取得した観察画像とを合成する(ステップS103)。その結果、表示制御部154は、検査画像と観察画像とを合成することで得られる投影画像を生成する(ステップS103)。
【0093】
ここで、
図5を参照しながら、検査画像と観察画像とを合成することで得られる投影画像について説明する。
図5は、検査画像と観察画像とを合成することで得られる投影画像を示す平面図である。
【0094】
図5に示すように、投影画像中において、多重リング状パターンである検査画像は、観察画像を取り囲む。投影画像中において、観察画像は、検査画像の中心部又は当該中心部の近傍に配置される。このため、表示制御部154は、検査画像が観察画像を取り囲むように(例えば、検査画像の中心部又は当該中心部の近傍に観察画像が位置する)ように、検査画像と観察画像とを合成する。言い換えれば、表示制御部154は、第2表示領域111a2を取り囲む第1表示領域111a1に検査画像が表示され且つ第1表示領域111a1によって取り囲まれる第2表示領域111a2に検査画像が表示されるように、検査画像と観察画像とを合成する。
【0095】
再び
図2において、その後、表示制御部154は、ステップS103で生成した投影画像(つまり、検査画像と観察画像とを合成することで得られる画像)を表示するように、表示素子111を制御する(ステップS104)。その結果、表示素子111は、投影画像(つまり、検査画像と観察画像とを合成することで得られる画像)を表示する(ステップS104)。
【0096】
表示素子111が投影画像を表示すると、表示面111aのうちの第1表示領域111a1からは、検査画像を眼に投影する(より具体的には、検査画像を拡散板120に投影する)ための照明光L11が出射される。このため、上述したように、拡散板120は、投影部110が投影している検査画像に応じた明暗パターンで眼を照明する照明板として機能する。
【0097】
一方で、表示素子111が投影画像を表示すると、表示面111aのうちの第2表示領域111a2からは、観察画像を眼に投影する(より具体的には、観察画像を網膜上に結像させる)ための照明光L12が出射される。照明光L12は、投影レンズ112、投影絞り113、ケーラー照明用レンズ131、ビームスプリッタ132及び接眼レンズ124を介して、被験者の角膜に入射する。その結果、照明光L12は、被験者の網膜上で結像する。従って、被験者は、検査画像が投影されている角膜の表面の画像である観察画像を視認することができる。
【0098】
その後、画像解析部151は、ステップS102で撮像部140が取得した観察画像を解析する(ステップS111)。
【0099】
例えば、観察装置1が油層の厚さを推定する場合には、撮像部140は、撮像レンズ142のピントを角膜の表面に合わせた上で、角膜の表面を撮像する。このため、観察画像は、全白色の画像である検査画像によって照明されている角膜の表面の画像となる。この場合、画像解析部151は、観察画像に含まれる検査画像に生ずる干渉色(つまり、観察画像に現れる干渉色)を識別するように、観察画像を解析する。但し、画像解析部151は、観察画像に含まれる検査画像の特徴のうち干渉色とは異なる特徴を推定するように、観察画像を解析してもよい。
【0100】
例えば、観察装置1がBUTを推定する場合には、撮像部140は、撮像レンズ142のピントを角膜に写った拡散板120に合わせた上で、拡散板120の表面122を撮像する。このため、観察画像は、多重リング状パターンである検査画像が投影されている拡散板120の角膜反射像となる。この場合、画像解析部151は、観察画像に含まれる複数のリングの経時的な変化(言い換えれば、時間的な変化)を判定するように、観察画像を解析する。特に、画像解析部151は、観察画像に含まれる複数のリングの経時的な破壊状況を判定するように、観察画像を解析する。尚、表示素子111がストライプ状パターン又は格子状パターンである検査画像を表示している場合においても、画像解析部151は、観察画像に含まれる複数のライン又は格子の経時的な変化(特に、破壊状況)を推定するように、観察画像を解析する。但し、画像解析部151は、観察画像に含まれる検査画像の特徴のうち複数の線の経時的な変化(特に、破壊状況)とは異なる特徴を推定するように、観察画像を解析してもよい。
【0101】
その後、状態推定部152は、ステップS111における画像解析部151の解析結果に基づいて、涙液層の状態を推定する(ステップS112)。
【0102】
例えば、観察装置1が油層の厚さを推定する場合には、画像解析部151は、観察画像に含まれる検査画像に生ずる干渉色を識別するように、観察画像を解析している。この場合、状態推定部152は、画像解析部151の解析結果に相当する干渉色に基づいて、油層の厚さを推定する。具体的には、全白色の画像である検査画像が投影されている拡散板120によって照明されている角膜を撮像することで得られる観察画像に現れる干渉色は、油層の厚さに固有の色となる傾向にある。従って、状態推定部152は、画像解析部151の解析結果に相当する干渉色に基づいて、油層の厚さを推定することができる。但し、状態推定部152は、油層の厚さとは異なる涙液層の状態を推定してもよい。
【0103】
例えば、観察装置1がBUTを推定する場合には、画像解析部151は、観察画像に含まれる検査画像に含まれる複数のリングの経時的な変化(特に、破壊状況)を判定するように、観察画像を解析している。この場合、状態推定部152は、画像解析部151の解析結果に相当する複数のリングの経時的な変化(特に、破壊状況)に基づいて、BUTを推定する。具体的には、涙液層の表面に亀裂が入ると、観察画像に含まれる複数のリングの形状が乱れる。従って、状態推定部152は、被験者の眼が開いてから観察画像に含まれる複数のリングの形状が乱れる(例えば、複数のリングのうちの少なくとも一つのリングの形状が所定態様で乱れる)までの時間を推定することで、BUTを推定することができる。但し、状態推定部152は、BUTとは異なる涙液層の状態を推定してもよい。
【0104】
尚、BUTは、上述したように、被験者の眼がドライアイであるか否かを診断するための指標の1つとして用いられる。従って、観察装置1は、状態推定部152が推定したBUTをユーザ(例えば、眼科医や被験者等)に提示することで、被験者の眼がドライアイであるか否かの診断をサポートしてもよい。
【0105】
一方で、油層の厚さは、BUTと一定の相関があることが知られている。従って、観察装置1は、状態推定部152が推定した油層の厚さをユーザに提示することで、被験者の眼がドライアイであるか否かの診断をサポートしてもよい。観察装置1は、状態推定部152が推定した油層の厚さに基づいてBUTを推定すると共に当該推定したBUTをユーザに提示することで、被験者の眼がドライアイであるか否かの診断をサポートしてもよい。
【0106】
第1実施例では更に、ステップS111における観察画像の解析動作及びステップS112における涙液層の状態の推定動作と並行して、表示制御部154は、瞳孔検出部153の検出結果に基づいて、表示素子111の表示面111a上における観察画像の表示位置を調整する。
【0107】
具体的には、瞳孔検出部153は、撮像部140が取得した観察画像中に現れる被験者の瞳孔の位置を検出する(ステップS121)。例えば、瞳孔検出部153は、撮像部140が取得した観察画像を解析することで、観察画像中に現れる瞳孔の位置を検出する。
【0108】
瞳孔検出部153は、瞳孔(或いは、瞳孔を取り囲む虹彩又は瞳孔を含む眼の少なくとも一部)のパターンを観察画像中から検出するパターンマッチング処理を行うことで、観察画像中に現れる瞳孔の位置を検出してもよい。尚、パターンマッチング処理そのものは公知であるため、パターンマッチング処理の詳細な説明は省略する。
【0109】
或いは、例えば、検査画像として多重リング状パターンが角膜の表面に投影されている場合には、典型的には、ステップS101で表示素子111が検査画像を表示した段階で、アライメント動作が行われる。アライメント動作は、例えば、多重リング状パターンを構成する複数のリングの中心と瞳孔の中心とが一致するように、被験者の眼の位置又は検査画像若しくは投影画像の投影位置を調整する動作である。つまり、アライメント動作により、複数のリングと瞳孔との間の位置関係は、所定の位置関係となっている。この場合、瞳孔検出部153は、観察画像中の複数のリングの位置に基づいて、瞳孔の位置を検出してもよい。
【0110】
或いは、表示制御部154は、瞳孔の位置を検出するためのマーカが検査画像中に含まれるように表示素子111を制御してもよい。この場合、瞳孔検出部153は、観察画像中のマーカの位置に基づいて、瞳孔の位置を検出してもよい。
【0111】
いずれにせよ、瞳孔検出部153は、何らかの公知な又は新規の方法を用いて、観察画像中に現れる被験者の瞳孔の位置を検出する。
【0112】
その後、表示制御部154は、ステップS121における瞳孔検出部153の検出結果(つまり、検出された瞳孔の位置)に基づいて、観察画像を網膜上に結像させるための照明光L12が瞳孔を通過することが可能か否かを判定する(ステップS122)。
【0113】
例えば、表示制御部154は、以下に示す動作を行うことで、照明光L12が瞳孔を通過することが可能か否かを判定してもよい。まず、表示制御部154は、第2表示領域111a2に表示された観察画像を網膜上に結像させるための照明光L12の光路を算出する。その結果、表示制御部154は、角膜上における照明光L12の通過位置を特定することができる。その後、表示制御部154は、角膜上における照明光L12の通過位置が、瞳孔検出部153が検出した瞳孔の位置と一致するか否かを判定する。つまり、表示制御部154は、角膜上における照明光L12の通過位置が、瞳孔検出部153が検出した瞳孔の位置に包含されるか否かを判定する。角膜上における照明光L12の通過位置が、瞳孔検出部153が検出した瞳孔の位置と一致する(つまり、瞳孔検出部153が検出した瞳孔の位置に包含される)場合には、表示制御部154は、照明光L12が瞳孔を通過することが可能であると判定する。但し、表示制御部154は、上に述べた方法とは異なる公知な又は新規の方法を用いて、照明光L12が瞳孔を通過することが可能か否かを判定してもよい。
【0114】
ステップS122の判定の結果、照明光L12が瞳孔を通過することが可能でないと判定される場合には(ステップS122:No)、表示制御部154は、照明光L12が瞳孔を通過するように、表示面111a上における観察画像の表示位置を調整する(ステップS123)。つまり、表示制御部154は、照明光L12が瞳孔を通過するように、表示面111a上における第2表示領域111a2の分布位置を調整する(ステップS123)。
【0115】
ここで、
図6(a)から
図6(d)及び
図7(a)から
図7(e)を参照しながら、表示面111a上における観察画像の表示位置の調整動作について説明する。尚、以下では、多重リング状パターンである検査画像が眼に投影されている例を用いて説明を進める。
【0116】
図6(a)は、表示面111aの中心部である表示基準位置に観察画像が表示されている例を示している。つまり、
図6(a)は、観察画像の中心が検査画像の中心(つまり、複数のリングの中心)と一致するように、観察画像が表示面111a上の表示基準位置に表示されている例を示している。
【0117】
表示面111a上の表示基準位置に表示されている観察画像は、瞳孔が瞳孔基準位置に位置する場合に網膜に結像するものとする。瞳孔が瞳孔基準位置に位置するという状態は、
図6(b)に示すように、瞳孔が被験者の真正面を向いているという状態であるものとする。この場合、
図6(c)に示すように、観察画像中において、表示基準位置に表示されている観察画像を構成する複数のリングの中心は、瞳孔基準位置に位置する瞳孔の中心と一致するものとする。つまり、瞳孔が瞳孔基準位置に位置するという状態は、観察画像中において表示基準位置に表示されている観察画像を構成する複数のリングの中心が瞳孔の中心に一致する状態であるものとする。
【0118】
この場合には、
図6(d)に示すように、観察画像を網膜に結像させるための照明光L12は、瞳孔基準位置に位置する瞳孔を通過することができる。その結果、照明光L12は、網膜上で結像する。つまり、観察画像は、網膜上で結像する。従って、被験者は、観察画像を視認することができる。
【0119】
このような
図6(a)から
図6(d)に示す状態を基準として、
図7(a)に示すように、被験者が眼を動かした場合を想定する。具体的には、
図7(a)に示すように、瞳孔が瞳孔基準位置から所定ずれ量s0だけずれた位置に位置する場合を想定する。
図7(a)に示す例では、被験者が眼を左側(但し、被験者から見て左側であり、投影部110から見て右側)に向けて動かしている。つまり、
図7(a)に示す例では、瞳孔は、瞳孔基準位置から左側に向かって所定ずれ量s0だけずれた位置に位置している。
【0120】
図7(b)は、
図7(a)に示す眼を撮像する(言い換えれば、
図7(a)に示す眼による拡散板120の反射像を撮像する)ことで取得される観察画像を示す。
図7(b)に示すように、瞳孔が瞳孔基準位置からずれると、観察画像中において、表示基準位置に表示されている観察画像を構成する複数のリングの中心が瞳孔の中心に一致しなくなる。具体的には、瞳孔の中心は、表示基準位置に表示されている観察画像を構成する複数のリングの中心から所定ずれ量s1だけずれた位置に位置する。
図7(b)に示す例では、瞳孔の中心は、表示基準位置に表示されている観察画像を構成する複数のリングの中心から右側(但し、観察画像に向かって右側)に向かって所定ずれ量s1だけずれた位置に位置する。尚、所定ずれ量s1は、典型的には所定ずれ量s0に比例する。
【0121】
この場合には、
図7(c)に示すように、表示基準位置に表示されている観察画像を網膜に結像させるための照明光L12は、瞳孔基準位置からずれた位置に位置する瞳孔を通過することができない。その結果、照明光L12は、網膜上で結像することはない。つまり、観察画像は、網膜上で結像することはない。従って、被験者は、観察画像を視認することができない。
【0122】
そこで、第1実施例では、表示制御部154は、照明光L12が瞳孔を通過するように、表示面111a上における観察画像の表示位置(つまり、第2表示領域111a2の位置)を調整する。具体的には、
図7(d)に示すように、表示制御部154は、観察画像の表示位置が表示基準位置から所定ずれ量s2だけずれた位置と一致するように、観察画像の表示位置を調整する。尚、所定ずれ量s2は、典型的には所定ずれ量s0に比例する。
【0123】
尚、
図7(d)に示す例では、表示制御部154は、観察画像の表示位置が表示基準位置から左側(但し、投影部110から見て左側であり、被験者から見て右側、以下同じ)に向かって所定ずれ量s2だけずれた位置と一致するように、観察画像の表示位置を調整している。つまり、
図7(d)に示す例では、表示制御部154は、観察画像の表示位置が表示基準位置から瞳孔のずれ方向(つまり、基準位置に対する瞳孔のずれ方向)とは逆の方向に向かって所定ずれ量s2だけずれた位置と一致するように、観察画像の表示位置を調整する。但し、照明光L12を眼に導く光学系の設計によっては、表示制御部154は、観察画像の表示位置が表示基準位置から瞳孔のずれ方向と同じ方向に向かって所定ずれ量s2だけずれた位置と一致するように、観察画像の表示位置を調整してもよい。
【0124】
このため、
図7(e)に示すように、照明光L12の光路が変化する。その結果、
図7(e)に示すように、表示基準位置からずれた位置に表示されている観察画像を網膜に結像させるための照明光L12は、瞳孔基準位置からずれた位置に位置する瞳孔を通過することができる。その結果、照明光L12は、網膜上で結像する。つまり、観察画像は、網膜上で結像する。従って、被験者は、眼(特に、瞳孔)を動かした場合であっても、観察画像を視認することができる。
【0125】
再び
図2において、他方で、ステップS122の判定の結果、照明光L12が瞳孔を通過することが可能であると判定される場合には(ステップS122:Yes)、表示制御部154は、表示面111a上における観察画像の表示位置を調整しなくてもよい。
【0126】
以降は、観察装置1による観察動作が終了するまでの間、ステップS102からステップS104、ステップS111からステップS112及びステップS121からステップS213の動作が繰り返し行われる(ステップS131)。
【0127】
以上説明したように、第1実施例の観察装置1は、被験者の瞳孔の位置に基づいて、表示面111a上における観察画像の表示位置を調整することができる。従って、被験者は、眼(特に、瞳孔)を動かした場合であっても、観察画像を視認することができる。つまり、被験者は、眼(特に、瞳孔)の位置が変わる場合であっても、観察画像を視認することができる。
【0128】
加えて、第1実施例の観察装置1は、観察画像を解析することで、被験者の瞳孔の位置を検出することができる。従って、観察装置1は、被験者の瞳孔の位置を比較的容易に検出することができる。
【0129】
加えて、第1実施例の観察装置1は、検査画像が観察画像を取り囲むように(言い換えれば、検査画像の中心部又は当該中心部の近傍に観察画像が位置するように)観察画像と検査画像とを合成することで得られる投影画像を投影することができる。ここで、瞳孔が眼の中心(つまり、眼の表面、前眼部の表面又は角膜の表面の中心)に位置する可能性が高い。そうすると、投影画像の中心部に観察画像が位置する場合には、投影画像の中心部に観察画像が位置しない場合と比較して、照明光L12が瞳孔を通過する可能性が高くなる。従って、観察装置1は、照明光L12が瞳孔を通過する可能性が相対的に高くなるように、観察画像を好適に投影することができる。
【0130】
一方で、投影画像の中心部の周辺に検査画像が位置する場合には、投影画像の中心部に検査画像が位置する場合と比較して、照明光L11が瞳孔を通過する可能性が低くなる。つまり、照明光L11が瞳孔の周囲に投影される可能性が高くなる。その結果、被験者は、観察画像を好適に視認する一方で、視認する必要性が相対的に小さい検査画像の一部又は全部を視認することはなくなる。従って、被験者は、観察画像と共に眼に投影される検査画像に煩わされることなく、観察画像を好適に視認することができる。
【0131】
尚、表示制御部154は、表示面111a上における観察画像の表示位置を調整することに加えて、表示面111a上における検査画像の表示位置を調整してもよい。このとき、表示制御部154は、表示面111a上における観察画像の表示位置の調整態様と同様の調整態様で、表示面111a上における検査画像の表示位置を調整してもよい。例えば、多重リング状パターンである検査画像が眼に投影されている場合には、表示制御部154は、角膜の表面に投影される複数のリングの中心が瞳孔の中心に一致するように、表示面111a上における検査画像の表示位置を調整してもよい。或いは、任意の検査画像が眼に投影されている場合には、表示制御部154は、角膜の表面に投影される検査画像と瞳孔との間の位置関係が瞳孔の位置の変化に係らず所定の位置関係となるように、表示面111a上における検査画像の表示位置を調整してもよい。
【0132】
また、表示制御部154は、瞳孔の位置に基づいて観察画像の表示位置を調整することに加えて又は代えて、照明光L12が瞳孔を通過するか否かを直接的に又は間接的に示すその他の特性に基づいて観察画像の表示位置を調整してもよい。
【0133】
また、表示制御部154は、観察画像を第2表示領域111a2に表示するように表示素子111を制御することに加えて又は代えて、観察画像とは異なる任意の画像を第2表示領域111a2に表示するように表示素子111を制御してもよい。例えば、表示制御部154は、眼の状態の観察にとって有用な情報を示す画像を第2表示領域111a2に表示するように表示素子111を制御してもよい。その結果、被験者は、観察装置1が眼の状態を観察している間においても、様々な情報を好適に認識することができる。つまり、被験者は、拡散板120の接眼レンズ124から眼を離すことなく、様々な情報を好適に認識することができる。
【0134】
(2)第2実施例
続いて、
図8を参照しながら、第2実施例の観察装置2について説明する。
図8は、第2実施例の観察装置2の構成を示すブロック図である。尚、第1実施例の観察装置1が備える構成要件と同一の構成要件については、同一の参照番号を付することでその詳細な説明を省略する。
【0135】
図8に示すように、第2実施例の観察装置2は、第1実施例の観察装置1と比較して、拡散板120及び接眼レンズ124に代えて、上述した実施形態中の「投影手段」の一具体例である対物レンズ220を備えているという点において異なっている。第2実施例の観察装置2が備えるその他の構成要件は、第1実施例の観察装置1が備えるその他の構成要件と同一であってもよい。
【0136】
対物レンズ220は、投影レンズ112と共に、対物レンズ220に入射してくる照明光L11を被験者の角膜(或いは、その近傍、以下同じ)上に結像させる。具体的には、対物レンズ220は、投影レンズ112と共に、対物レンズ220に入射してくる照明光L11を、角膜に接する(特に、角膜の中心部又はその近傍に接する)又は角膜の近傍に位置する仮想的な結像面上に結像させる。
【0137】
対物レンズ220は更に、投影レンズ112及びケーラー照明用レンズ131と共に、対物レンズ220に入射してくる照明光L12を被験者の網膜上に結像させる。尚、典型的には、ケーラー照明用レンズ131と対物レンズ220との間には、照明光L12が結像する中間結像面が位置する。例えば、照明光L12は、ケーラー照明用レンズ131と対物レンズ220との間に位置する対物レンズ220の前側焦点と一致する中間結像面上で結像する。
【0138】
その結果、第2実施例においても、第1実施例と同様に、投影部110が投影している検査画像に応じた明暗パターンで眼を照明する照明板として対物レンズ220が機能すると共に、投影部110が投影している観察画像が網膜上で結像する。
【0139】
一方で、角膜によって反射された照明光L11である反射光L31は、対物レンズ220を介してビームスプリッタ132の反射面に入射する。このため、第2実施例においても、角膜によって反射された照明光L11である反射光L31は、撮像部140に入射する。その結果、撮像部140は、観察画像を取得することができる。
【0140】
第2実施例では、投影絞り113と角膜の曲率中心とは、共役の関係にあることが好ましい。この場合、照明光L11は、角膜に対してほぼ垂直に入射する。その結果、角膜によって反射された照明光L11である反射光L31は、照明光L11の光路とほぼ同一の光路を通って対物レンズ220を通過し且つビームスプリッタ132に入射する。但し、
図8では、角膜によって反射された照明光L11が反射光L31であることを明確に説明するという説明の便宜上、照明光L11の光路と反射光L31の光路とが大きく区別して記載されている。
【0141】
第2実施例の観察装置2は、上述した第1実施例の観察装置1が行う動作(つまり、
図2に示す動作)を行うことができる。その結果、第2実施例の観察装置2は、上述した第1実施例の観察装置1が享受することができる効果を好適に享受することができる。
【0142】
尚、観察装置2は、ケーラー照明用レンズ131を備えていなくてもよい。この場合、観察装置2は、投影レンズ112を投影レンズ112の光軸に沿って移動させてもよい。例えば、投影レンズ112は、投影レンズ112が第1位置に位置する場合に、対物レンズ220と共に照明光L11を角膜上に結像させることができる。同様に、例えば、投影レンズ112は、投影レンズ112が第1位置とは異なる第2位置に位置する場合に、対物レンズ220と共に照明光L12を網膜上に結像させることができる。従って、観察装置2は、投影レンズ112を移動させることで、検査画像が角膜の表面に投影され且つ観察画像が網膜上で結像するように、検査画像及び観察画像を含む投影画像を投影することができる。加えて、投影レンズ112の移動に同期して表示素子111が投影画像を表示するように、制御部150が表示素子111を制御してもよい。投影レンズ112が第1位置に位置する場合、照明光L11が角膜上に結像するがゆえに、撮像部140は観察画像を好適に取得することができる。しかしながら、照明光L12は網膜上に結像しないがゆえに、被験者は観察画像を視認することができない。一方、投影レンズ112が第2位置に位置する場合、照明光L12が網膜上に結像するがゆえに、被験者は観察画像を視認することができる。しかしながら、照明光L11は角膜上に結像しないがゆえに、検査画像にぼけが生じる。このため、投影レンズ112が第1位置に位置する場合に撮像部140が得た観察画像を、投影レンズ112が第2位置に位置する場合に表示素子111が表示すれば、フレームレートは落ちるもののケーラー照明用レンズ113を備えなくても被験者が観察画像を視認することができる。ここで、投影レンズ112が第1位置に位置する場合、表示素子111が表示する投影画像は被験者が視認できないので、観察画像を検査画像と合成する必要はなく、投影画像が検査画像と一致していてもよい。
【0143】
或いは、観察装置2がケーラー照明用レンズ131を備えていない場合には、対物レンズ220は、照明光L11が通過すると共に照明光L11を角膜に結像させるレンズ部分と、照明光L12が通過すると共に照明光L12を網膜に結像させるレンズ部分を備えていてもよい。或いは、対物レンズ220は、照明光L11が通過すると共に照明光L11を角膜に結像させるレンズ部分を備える一方で、照明光L12が通過する開口が対物レンズ220に形成されていてもよい。その結果、観察装置2は、検査画像が角膜の表面に投影され且つ観察画像が網膜上で結像するように、検査画像及び観察画像を含む投影画像を投影することができる。
【0144】
(3)第3実施例
続いて、
図9を参照しながら、第3実施例の観察装置3について説明する。
図9は、第3実施例の観察装置3の構成を示すブロック図である。尚、第1実施例の観察装置1が備える構成要件と同一の構成要件については、同一の参照番号を付することでその詳細な説明を省略する。
【0145】
図9に示すように、第3実施例の観察装置3は、上述した実施形態中の「投影手段」の一具体例である投影部310と、上述した実施形態中の「投影手段」の一具体例であるプラチド板320と、上述した実施形態中の「投影手段」の一具体例である接眼レンズ324と、ビームスプリッタ332と、撮像部140と、制御部350とを備えている。
【0146】
投影部310は、第1実施例の投影部110と比較して、リレーレンズ314を備えているという点において異なっている。投影部310は、第1実施例の投影部110と比較して、検査画像を投影しない(つまり、照明光L11を出射しない)という点において異なっている。第3実施例の投影部310が備えるその他の構成要件は、第1実施例の投影部110が備えるその他の構成要件と同一であってもよい。
【0147】
リレーレンズ314は、投影レンズ112及び接眼レンズ324と共に、観察画像を網膜上に結像させるための照明光L12を被験者の網膜上に結像させる。尚、典型的には、リレーレンズ314と対物レンズ220との間には、照明光L12が結像する中間結像面が位置する。例えば、照明光L12は、リレーレンズ314と接眼レンズ324との間に位置する接眼レンズ324の前側焦点と一致する中間結像面上で結像する。このため、リレーレンズ314は、実質的には、上述したケーラー照明用レンズ131と同様の機能を有するレンズであるとも言える。
【0148】
プラチド板320は、検査画像に対応する明暗パターン(照明パターン)で角膜の表面を照明する板である。プラチド板320の一例である多重リング状パターンを投影するプラチド板320の構成例について説明する。被験者側(角膜側)を向いているプラチド板320の表面322は、凹面となっている。被験者側(角膜側)を向いているプラチド板320の表面322には、所定幅のリングパターンを構成する透光部が形成されている。表面322のうち透光部以外の領域は、遮光部となる。プラチド板320は、その内部に不図示の光源を備えている。光源が発した照明光L11は、透光部を通過することで、角膜の表面に照射される。その結果、角膜の表面は、多重リング状パターンである検査画像に対応する明暗パターンで照明される。
【0149】
第3実施例では、プラチド板320には、開口323が形成されている。被験者の眼は、角膜が開口323に対向することが可能な位置に位置している。開口323は、表面322からプラチド板320の他方の表面に向かってプラチド板320を貫通する開口である。開口323は、角膜によって反射された照明光L11である反射光L31が通過する開口である。開口323には、反射光L31をビームスプリッタ132に導く接眼レンズ324が配置されている。
【0150】
ビームスプリッタ332は、投影部310から出射する照明光L12を、プラチド板320(特に、接眼レンズ324)に向けて反射する。一方で、ビームスプリッタ332は、角膜によって反射された照明光L11である反射光L31を透過する。
【0151】
制御部350は、上述した第1実施例の制御部150と比較して、検査画像を表示するように表示制御部154が表示素子111を制御しなくてもよいという点において異なっている。第3実施例の制御部350が備えるその他の構成要件は、第1実施例の制御部150が備えるその他の構成要件と同一であってもよい。
【0152】
第3実施例の観察装置3は、上述した第1実施例の観察装置1が行う動作(つまり、
図2に示す動作)を行うことができる。但し、第3実施例では、表示素子111が観察画像を表示する(つまり、眼に投影する)一方で、プラチド板320が検査画像に応じた明暗パターンで眼を照明する。その結果、第3実施例の観察装置3は、上述した第1実施例の観察装置1が享受することができる効果を好適に享受することができる。
【0153】
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能である。そのような変更を伴なう観察装置及び観察方法並びにコンピュータプログラムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。