特許第6293311号(P6293311)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6293311
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】組織修復装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/06 20060101AFI20180305BHJP
【FI】
   A61B17/06
【請求項の数】16
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-572283(P2016-572283)
(86)(22)【出願日】2015年6月10日
(65)【公表番号】特表2017-518114(P2017-518114A)
(43)【公表日】2017年7月6日
(86)【国際出願番号】IL2015050585
(87)【国際公開番号】WO2015189843
(87)【国際公開日】20151217
【審査請求日】2017年1月20日
(31)【優先権主張番号】62/009,946
(32)【優先日】2014年6月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516367095
【氏名又は名称】ポップ メディカル ソリューションズ リミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ハラリ,ボーズ
(72)【発明者】
【氏名】オーハド,ガイ
【審査官】 槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0196389(US,A1)
【文献】 特表2008−510589(JP,A)
【文献】 特表2008−523926(JP,A)
【文献】 特表2004−509685(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/093924(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/03−17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)使用者の指の上に装着するように適合された筐体と、
(b)前記筐体の長さに沿って取り付けられた少なくとも1つの案内管であって、前記少なくとも1つの案内管は、その近位開口から遠位開口に組織修復移植片を導くように構成される、少なくとも1つの案内管と
を備え、かつ
前記案内管は、前記近位開口が前記筐体の近位端を超えて突出するように、前記筐体に取り付けられる、手術装置。
【請求項2】
前記筐体が前記指の上に装着されると、前記近位開口が前記使用者の手の甲の上に位置付けられるように、前記案内管は前記筐体に取り付けられる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記筐体は、前記筐体に取り付けられた前記指を介して前記使用者が組織を触診できるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記筐体はその遠位端で開く、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記使用者の前記指が組織に接触すると前記遠位開口が触診する前記組織に隣接するように、前記案内管は前記筐体に取り付けられる、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記使用者の前記指が組織に接触すると前記遠位開口が触診する前記組織から移動されるように、前記案内管は前記筐体に取り付けられる、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
縫合糸端部がアンカーに取り付けられる、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記筐体は、遠位および/または近位指節間関節で前記指を屈曲できるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記筐体はそれに撮像装置を取り付けるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記撮像装置は超音波変換器である、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記超音波変換器の撮像頭部は、前記超音波変換器が前記筐体に取り付けられると触診する組織に隣接することができる、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記撮像頭部は、前記筐体に取り付けられた前記指が触診する組織に接触すると前記組織に隣接する、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
触診する組織は後外側膣壁であり、前記筐体は前記指を介して膣管の中に送達するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記指が前記後外側膣壁に接触した状態で、前記筐体が前記膣管内に位置付けられると、前記少なくとも1つの案内管の前記近位開口は前記膣管から出て延在する、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記組織修復移植片はメッシュ、スリング、縫合糸、または縫合糸アンカーである、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記案内管の近位開口が膣腔の外側に位置付けられるように、前記案内管は前記筐体に取り付けられる、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移植片を組織に導き固定するための装置および方法に関する。本発明の実施形態は、骨盤底障害の骨盤臓器脱(POP(pelvic organ prolapse))を修復する目的で、仙棘靭帯内に縫合糸、縫合糸アンカーまたはメッシュを導き固定するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
経膣的骨盤底修復は、後膣壁から仙棘靭帯にアクセスするために組織の鈍的切開を利用する外科手術である。次いでスリングまたはメッシュを仙棘靭帯および膣尖部もしくは子宮峡部線維リング、頸部、または身体に固定し、それによって脱出組織および/または臓器を支持する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
骨盤底修復は一般的処置だが、仙棘靭帯へのアクセスは間に合わせの手動による組織の鈍的切開技法および/または市販器具の使用によって通常行われる。
【0004】
中心尖部の再建は、適切な骨盤臓器脱(POP)修復のための鍵である。高品質の支持骨盤構造は、骨盤の後面に位置付けられた仙棘靭帯(SSL(sacrospinous ligament))である。SSLは頑強な靭帯であり、したがって長く持続する解決策を提供する。SSLは骨盤内の高部に内側に位置付けられるので、SSLはレベル1の支持(DeLancey(デランシー))を提供し、脱出修復に利用されると性交疼痛の可能性を低減する。
【0005】
膣壁がSSLにアクセスすることは、アクセス経路を包囲する臓器および組織が切開中に損傷しやすい恐れがあるので、困難であり危険である可能性がある。SSLにアクセスするための今日の手法は、後部または前膣壁の正中線の切断から始め、続いて粘膜下筋膜の下を骨盤側壁に横に切開し、座骨棘に向かってSSLの中間(MSSL(mid SSL))まで切開する。
【0006】
この手法は、膀胱/直腸を迂回することにより組織が損傷する可能性を低減する一方で、上記の目標物に沿った正確なナビゲーションを維持する。このような手法は、高度の技能を必要とし、またこのような手法は合併症を起こす確率が高い可能性もある。
【0007】
本発明を実践している間に、本発明者らは組織アンカーを生体構造的ランドマークおよび膣腔から座骨棘および仙棘靭帯などの構造に送達するために使用できる装置を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、使用者の指の上に装着するように適合された筐体と、(b)筐体の長さに沿って取り付けられた少なくとも1つの案内管であって、該少なくとも1つの案内管は、その近位開口から遠位開口に組織修復移植片を導くように構成される、少なくとも1つの案内管とを備える外科装置が提供される。
【0009】
以下に説明される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、近位開口が筐体の近位端を超えて突出するように、案内管は筐体に取り付けられる。
【0010】
説明された好ましい実施形態における一層さらなる特徴によれば、筐体が指の上に装着されると、近位開口が使用者の手の甲の上に位置付けられるように、案内管は筐体に取り付けられる。
【0011】
説明された好ましい実施形態における一層さらなる特徴によれば、筐体は、筐体に取り付けられた指を介して使用者が組織を触診できるように構成される。
【0012】
説明された好ましい実施形態における一層さらなる特徴によれば、筐体はその遠位端で開く。
【0013】
説明された好ましい実施形態における一層さらなる特徴によれば、使用者の指が組織に接触すると遠位開口が組織に隣接するように、案内管は筐体に取り付けられる。
【0014】
説明された好ましい実施形態における一層さらなる特徴によれば、使用者の指が組織に接触すると遠位開口が組織から移動されるように、案内管は筐体に取り付けられる。
【0015】
説明された好ましい実施形態における一層さらなる特徴によれば、縫合糸端部はアンカーに取り付けられる。
【0016】
説明された好ましい実施形態における一層さらなる特徴によれば、筐体は、遠位および/または近位指節間関節で指を屈曲できるように構成される。
【0017】
説明された好ましい実施形態における一層さらなる特徴によれば、筐体はそれに撮像装置を取り付けるように構成される。
【0018】
説明された好ましい実施形態における一層さらなる特徴によれば、撮像装置は超音波変換器である。
【0019】
説明された好ましい実施形態における一層さらなる特徴によれば、超音波変換器の撮像頭部は、超音波変換器が筐体に取り付けられると組織に隣接することができる。
【0020】
説明された好ましい実施形態における一層さらなる特徴によれば、撮像頭部は、筐体に取り付けられた指が組織に接触すると組織に隣接する。
【0021】
説明された好ましい実施形態における一層さらなる特徴によれば、組織は後外側膣壁であり、筐体は指を介して膣管の中に送達するように構成される。
【0022】
説明された好ましい実施形態における一層さらなる特徴によれば、指が後外側膣壁に接触した状態で、筐体が膣管内に位置付けられると、該少なくとも1つの案内管の近位開口は膣管から出て延在する。
【0023】
説明された好ましい実施形態における一層さらなる特徴によれば、組織修復移植片はメッシュ、スリング、縫合糸、または縫合糸アンカーである。
【0024】
本発明の別の態様によれば、(a)指を介して手術装置を膣腔の中に位置付けることであって、手術装置は指の上に装着するように適合された筐体、および筐体の長さに沿って取り付けられた少なくとも1つの案内管を含む、位置付けることと、(b)膣腔の後外側壁を触診し、それを通って仙棘靭帯を配置するために指を使うことと、(c)該少なくとも1つの案内管を通って、また後外側膣壁を通って組織修復移植片を前進させることであって、それによって組織修復移植片を仙棘靭帯に固定する、前進させることとを含む、骨盤底障害を修復する方法が提供される。
【0025】
説明された好ましい実施形態における一層さらなる特徴によれば、組織修復移植片はメッシュ、スリング、縫合糸、または縫合糸アンカーである。
【0026】
説明された好ましい実施形態における一層さらなる特徴によれば、装置は筐体に取り付けられた超音波変換器をさらに含み、さらに(b)は超音波ガイド下で達成される。
【0027】
説明された好ましい実施形態における一層さらなる特徴によれば、案内管の近位開口が膣腔の外側に位置付けられるように、案内管は筐体に取り付けられる。
【0028】
本発明の別の態様によれば、(a)指を介して手術装置を膣腔の中に位置付けることであって、手術装置は指の上に装着するように適合された筐体、および筐体の長さに沿って取り付けられた少なくとも1つの案内管を含む、位置付けることと、(b)膣腔の後外側壁を触診し、それを通って仙棘靭帯を配置するために指を使うことと、(c)該少なくとも1つの案内管を通って、また後外側膣壁を通って縫合糸アンカーを前進させることであって、それによって縫合糸アンカーを仙棘靭帯に固定する、前進させることと、(d)縫合糸アンカーの少なくとも1つの縫合糸の上にメッシュを前進させることと、(e)メッシュを適位置に固定するために該少なくとも1つの縫合糸を結ぶこととを含む、骨盤底障害を修復する方法が提供される。
【0029】
本発明の別の態様によれば、縫合糸アンカーをガイドとして使用してメッシュを体内位置に送達するための装置、および上に説明された方法が提供される。装置は、1つまたは複数の縫合糸を受容するための中空管、およびメッシュに取り付けられた解放可能なカフを受容するための遠位端を含む。
【0030】
本発明は、組織修復のための装置および方法を体腔内から提供することにより、現在公知の構成の欠点に首尾よく対処する。
【0031】
別段の記載がない限り、本明細書に使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者により共通に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に説明された方法および材料に類似した、または等しい方法および材料は、本発明の実施または試験に使用できるが、適切な方法および材料は以下に説明される。矛盾する場合、定義を含む特許明細書が制御する。加えて材料、方法、および例は例示に過ぎず、限定を意図するものではない。
【0032】
本発明は添付図面に関連して例のみとして本明細書に説明されている。次に図面を特に詳細に参照して、示された事項は本発明の好ましい実施形態の例として、また事例の検討目的であり、本発明の原理および概念的見地の最も有益で容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために表されていることを強調しておく。この点において、本発明の基本的な理解に必要である以上に詳細に、本発明の構造細部を示すことはせず、本発明のいくつかの形の方法を当業者に明らかにする図面に描かれた説明により、実際に具現化され得る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】単一の案内管を有する本装置の実施形態を示す図である。
図2】2つの案内管を有する本装置の実施形態を示す図である。
図3】単一の案内管および撮像装置を有する本装置の実施形態を示す図である。
図4】2つの案内管および撮像装置を有する本装置の実施形態を示す図である。
図5】使用者の指の上に装着された図1の装置を示す図である。
図6】移植片送達装置の案内管の中への挿入を示す図である。
図7】移植片送達装置の案内管の中への挿入を示す図である。
図8】案内管内に位置付けられた移植片送達装置を備えた、指の上に装着された図1の装置を示す図である。
図9a】ガイドとして本装置によって送達された縫合糸アンカーを使用して送達され固定されるメッシュを示す図である。
図9b】ガイドとして本装置によって送達された縫合糸アンカーを使用して送達され固定されるメッシュを示す図である。
図9c】ガイドとして本装置によって送達された縫合糸アンカーを使用して送達され固定されるメッシュを示す図である。
図9d】ガイドとして本装置によって送達された縫合糸アンカーを使用して送達され固定されるメッシュを示す図である。
図9e】ガイドとして本装置によって送達された縫合糸アンカーを使用して送達され固定されるメッシュを示す図である。
図9f】ガイドとして本装置によって送達された縫合糸アンカーを使用して送達され固定されるメッシュを示す図である。
図9g】ガイドとして本装置によって送達された縫合糸アンカーを使用して送達され固定されるメッシュを示す図である。
図9h】ガイドとして本装置によって送達された縫合糸アンカーを使用して送達され固定されるメッシュを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は組織修復のために使用できる装置であり、より具体的には体腔の壁を通って組織修復移植片を送達するために使用できる、指に装着する装置である。
【0035】
本発明の原理および作動は、図面および添付の説明を参照してより良好に理解され得る。
【0036】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用が以下の説明または「例示」によって実証された詳細な説明に限定されないことを理解されたい。本発明は他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施または実行できる。また本明細書に利用された表現および専門用語は説明のためであり、限定とみなされるべきではないことも理解されたい。
【0037】
骨盤臓器脱(POP)、特に尖中心部支持欠損(ACSD(apical central supportive defect))は、女性人口の約20%の生活の質に重大な影響を及ぼす。
【0038】
POPは通常経腹壁的手術、または経膣外科手術を介して修正される。
【0039】
経膣再建手法は、手術時間および入院期間がより短く、機能回復が速いことに起因して、経腹壁的手法より優れているとみなされている。しかし経膣処置は高度な手術技能を必要とし、したがってかなり少なく高い技能の群の執刀医によって実行される。
【0040】
経膣処置では、執刀医は膣尖部(VA(vaginal apex))または子宮頸部(UC(uterine cervix))を仙棘靭帯(SSL)、仙骨、骨盤筋膜腱弓(ATFP(arcus tendineus fascia pelvis))、または前部もしくは後膣壁切断および組織の鈍的切開を介してアクセスされる他の可能な中実の支持骨盤構造に懸架することを選択できる。
【0041】
これらの組織へのアクセス経路を生成することは、骨盤側壁(PSW(pelvic side wall))、座骨棘(IS(ischial spine))、次いで中間SSL(MSSL)、または膀胱、直腸、血管、神経、尿管などを損傷する恐れをもたらす仙骨への複雑なナビゲーションを必要とするので、経膣処置の大きな課題である。
【0042】
ほとんどのPOP処置の合併症は、選択された組織支持部位に組織経路を生成する必要がある切開に起因する。
【0043】
先行技術の経膣処置のこれらの限界を超えるために、本発明者らは、執刀医がSSLを触診し、それに組織修復移植片を送達できる、指に装着する膣内装置を利用する手法を考案した。
【0044】
本明細書に使用される場合、語句「骨盤底障害」は、脱出、ヘルニア、または骨盤底組織の生体構造的に不適切な位置付けに関連した、骨盤底のあらゆる障害を指す。
【0045】
したがって本発明の一態様によれば、組織修復、特に骨盤底障害の修復のための装置が提供される。用語「修復」は、骨盤底障害に関連して本明細書に使用される際は、縫合糸、縫合糸アンカー、メッシュ、および/またはスリングなどの組織修復移植片を介して生体構造の(完全または不完全な)修正を指す。
【0046】
本装置は、使用者の指、好ましくは使用者の人差し指の上に装着するのに適合された筐体を含む。筐体は指先または指のあらゆる部分(遠位もしくは近位の指節間関節または指全体まで)の上に装着するように構成されることが可能である。装置は、筐体の長さに沿って取り付けられた少なくとも1つの案内管(好ましくは1つまたは2つ)をさらに含む。したがって案内管は、筐体がその上に装着されたときに使用者の指に平行または実質的に平行に走る。
【0047】
筐体は、指の上に装着されると筐体を体腔(例えば膣腔または肛門腔)の中に容易に挿入するための、指の上に装着可能な長手方向の管腔および平滑な外壁(恣意的に長手方向の孔を有する)を備えた実質的に「指」形状(細長くわずかに圧縮された円筒形)である。遠位端(使用者から離れている)は、この弾性膜によって被覆できる開口のような、指先のための開口を含む。
【0048】
筐体は、成形または機械加工手法を使用して高分子または合金(好ましくは生体適合性がある)から製造されることが可能である。筐体の一般的な寸法は、長さ65mm、内径18mmである。筐体は、筐体が不注意に外れることなく、あらゆる長さまたは直径の指の上に確実に装着することを保証するために、指に順応し留まる機構を含む。このような機構は、筐体の長さ、高さ、および/もしくは幅(すなわち直径)を調節するための筐体管腔または調節機構内に装着される弾性タブを含むことができる。このような機構の一例は、図面を参照して以下に説明される。
【0049】
案内管(複数可)は、筐体に取り付けられるか、またはそれとともに共同組立され、その近位開口から遠位開口に移植片を導くように構成される。
【0050】
案内管は、好ましくは(手が上部から見たときに)指の側部に沿って走るように筐体の側部に沿って取り付けられる。本装置の一実施形態の詳細な説明は図1図8を参照して以下に提供される。
【0051】
上述されたように、本発明の装置を使用して、案内管から組織修復移植片を送達できることにより組織修復ができる。このような誘導は撮像ガイドの有無にかかわらず効果を発揮できる。撮像下で実行される際、本装置はそれに撮像装置を取り付けるように構成される。撮像装置の一例は、筐体上に提供された専用ブラケットに取り付けることができる超音波変換器である。
【0052】
本装置は、洗浄源および/または吸引に取り付けるための洗浄管腔をさらに含むことができる。
【0053】
次に図面を参照すると、図1図8は、本明細書で装置10と呼ばれる本装置を示す。装置10は膣内へのアクセスおよび骨盤底修復のために構成されるが、その中でまたはそこを通って修復に作用するために肛門管などの他の体腔の中にアクセスするために装置10を修正することができることに留意されたい。
【0054】
装置10は、実質的に指形状であり、長さ6cm、直径1.8cmである筐体12を含む。筐体はプラスチック、金属、またはゴム様材料から製造することができる。筐体12は人差し指全体の上に装着するように構成される(図5参照)が、この指の一部の上に装着するように構成される場合に必要な機能も提供する。直に指の上に、または手術用手袋によって覆われた指の上に装着することができる。筐体12は、近位開口14および壁20によって包囲された管腔18を形成する遠位開口16を含む。壁20は、数個の孔22(上孔22が示されている)および筐体12がその寸法にかかわらず指の上に確実にとどまるために、指(図5)に弾性的に係合するための指保持機構24を含むことができる。指保持機構24は、指面に調節性弾力(下方)を提供することによりあらゆる大きさの指を収納するように設計されることが可能である。このような力は、筐体内に指を捕捉するのに充分であるはずであるが、依然として使用者が筐体を指から摺動させることにより筐体を取り除くことができるはずである。人差し指の末節骨の直径の範囲はほとんどの人では13〜18mmであり、したがって単一設計を使用してこのような指の大きさの範囲を収納することができる。
【0055】
遠位開口16は、筐体12が指の上に装着されるときに、指先がそれを通って突出できるような大きさおよび構成にされる。これにより、装置10を使用時に膣腔内に位置付けると、使用者は組織壁を触診できる。触診できるが、使用者が手袋を着用していない場合に使用者の指と組織との間に障壁を提供することができる、薄い弾性膜で遠位開口16を覆うことができる。
【0056】
装置10は少なくとも1つの案内管28(図1には1つが示され、図2には2つが示されている)をさらに含む。案内管は、ブラケット29(図1および図2に示されている)を介して筐体12に取り付けられることが可能である。案内管28は、近位開口および遠位開口(それぞれ30および32)を有する細長い管として構成される。筐体12が膣腔内に位置付けられる(遠位開口を後外側壁に、またはその付近に備えて)とき、近位開口30が膣腔の外側に位置付けられて、それを通って組織修復移植片にアクセスでき送達できるように(図6図8に示されているように)、案内管28の長さは筐体12より長い。案内管28の長さは70〜120mmのいずれでも可能である一方で、外径および内径は(それぞれ)2〜8mmおよび1〜3mmのいずれでも可能である。案内管28は、ステンレス鋼などの実質的に剛体材料から、またはニチノールなどの弾性材料もしくはポリカーボネートなどの高分子から製造することができる。案内管28の弾性の実施形態は、案内管28の遠位開口が近位開口と整合しない場合に有利であることが可能である。
【0057】
案内管28は、送達装置36(図6図8に示されている)が案内管28の管腔に容易にアクセスできるためのポート34を含む。
【0058】
送達装置36は2つの同軸管から構築することができる。すなわち組織アンカー38(図6に示されている)に取り付けられた内管、および第1の管の周囲に同軸に配置された剛体外管である。組織アンカー38(縫合糸、メッシュまたはスリングに取り付けることができる)を、その間に第1の管を前進させることにより剛体管から送達することができる。このような送達を達成するために、送達装置36は、剛体管内で第1の管の前方運動(遠位方向)を作動させるためのハンドル40を含む。送達装置36は、好ましくは膣壁に穴を開け、組織を通って目的部位(例えばMSSL)の中に組織アンカー38を運ぶことができる。したがって第1の管の遠位端は組織に穴を開けるように構成される(傾斜、二重傾斜、または円錐)ことが可能である。別法として組織アンカー38は組織に穴を開けるように構成されることが可能であり、さらに別法として膣壁内の最初の切断を使用してそれを通って第1の管を送達することができる。第1の剛体管、すなわちアンカー38は、撮像面内でこれらの要素を識別できるための撮像マーカーを含むことができる。超音波プローブとともに使用できるエコー源性マーカーの一例は、米国特許第20050228288号に提供されている。
【0059】
図2に示されたように、本発明の装置10は2つの案内管28を含むことができる。このような構成により、使用者は組織修復移植片を送達するために最良の側部を選択でき、または2つの移植片を送達することができる。
【0060】
図3に示されたように、装置10は筐体12に取り付けられた撮像装置50を含むこともでき、撮像頭部52は案内管28の反対側の側面上の筐体12の遠位端において遠位開口32または図4図4は2つの案内管28および撮像装置50を含む装置10を示す)に示されたように中間に位置付けられている。装置10に使用できる撮像装置の一例は、超音波撮像装置である。案内管28の遠位開口32付近の筐体の遠位端に位置付けられた変換器頭部を有する超音波撮像装置を使用して、SSLおよび周囲の構造/臓器を撮像でき、組織修復移植片を送達するための追加のガイドを提供することができる。
【0061】
本発明の装置10は、以下のような骨盤臓器脱(POP)修復処置に使用することができる。
【0062】
固定する部位は事前触診および/または事前処置膣超音波に基づいて選択される。
【0063】
本装置は、利き手の人差し指上に位置付けられ、送達装置(針)は、送達装置の剛体外管の遠位端が案内管の遠位開口と同一平面にあるように、案内管内に位置付けられる。
【0064】
本装置は膣腔の中に導入され、人差し指の指先を使用して膣壁を通って組織対象を触診する。次いで送達装置の剛体外管は靭帯の領域において膣壁に押し付けられる。
【0065】
次いで送達装置の内管は、膣壁を通って靭帯の中にアンカーを送達するためにハンドルの送達ボタンを介して作動される。次いで内管はアンカーを残して引き抜かれ、縫合糸/メッシュに適位置で取り付けられる。縫合糸端部(複数可)は、鉗子を介して膣腔の外側に固定され、最初の引き抜き力は縫合糸端部上に手動で引き寄せることによって検証される。次いで恣意的に処置は装置の第2の側部のために反復され、それによって第2のアンカー縫合糸/メッシュを靭帯に第2の部位で取り付ける。
【0066】
次いで縫合糸端部は、子宮頸部線維リング、膣尖部の漿膜、子宮仙骨靭帯、膣(子宮摘出後の被験者)、または脱出処置に対するルーチンであるような骨盤底のあらゆる他の適切な中心尖部のアンカー点に取り付けられる。
【0067】
上述されたように、本装置を使用してアンカー部位にメッシュを送達することもできる。図9a〜図9hは、ガイドとして本装置によって移植された縫合糸アンカーを使用して、アンカー部位へのメッシュの送達を示す。
【0068】
図9aは、MSSLを通って位置付けられ縫合糸38’に取り付けられたアンカー38を示す。
【0069】
遠位カフ54(図9e)を有するメッシュ52を運ぶメッシュ送達装置50は、縫合糸38’の一方または両方の上で糸を通される。装置50および取り付けられたカフ54は、膣管の外側から装置のハンドルを押すことにより縫合糸(複数可)の上を前進される(図9b〜図9d)。
【0070】
カフ54はメッシュ52の遠位端に取り付けられ、装置50の先端の周囲に位置付けられる。カフ54は合金または高分子から製造することができ、縫合糸に堅固に取り付けるために、装置50から解放されると縫合糸38’の周囲に弾性的に締め付けられるように構成されることが可能である。別法としてカフ54は堅く、縫合糸38’の一方はカフを通って糸が通され、縫合糸38’の他方はカフ54の周囲に置かれる(図9f)。いずれの場合でも、MSSLの付近またはMSSLの反対の適所にあるとき、カフ54は装置50から解放され、装置50は取り除かれる(図9g)。次いで身体の外側からカフ54に結び目56を走らせることにより、縫合糸38’をカフ54の周囲で結ぶことができる(図9h)。
【0071】
次いで当技術分野に周知の手法を使用して、メッシュ52の近位端をアンカー縫合糸に固定することができる。
【0072】
本明細書に使用される場合、用語「約」は±10%を指す。
【0073】
本発明の追加の目的、利点、および新規の特徴は、限定することを意図しない以下の例示を精査すれば当業者に明らかになろう。
【0074】
例示
次に上の説明と一緒に非限定的方法で本発明を示す以下の例を参照する。
【0075】
本明細書に説明された装置の試作品は、骨盤修復処置に使用された。42〜76歳で中心尖部脱出を有する10人の女性被験者が、本装置および縫合糸アンカーまたはメッシュアンカー移植片を使用して治療された。
【0076】
処置
患者に麻酔をかけ、本装置を利用して後膣切開後にメッシュを備えた、またはメッシュを備えていない縫合糸アンカーをSSLに送達し、上記に説明されたように切開を実行した。メッシュを備えて、またはメッシュ無しで縫合糸を固定し、縫合糸端部上に手動で引き寄せることにより最初の引き抜き力を検証した。次いで縫合糸端部を、子宮頸部線維リング、膣尖部の漿膜、もしくは子宮仙骨靭帯、膣(子宮摘出後の被験者)、または脱出処置に対するルーチンであるような骨盤底のあらゆる他の適切な中心尖部のアンカー点に取り付けた。脱出した子宮をその元の場所に持ち上げている間に両方の縫合糸を結んだ。次いで小さい膣切開を閉じて処置を終えた。
【0077】
2つのアンカーを各患者に(片側に1つずつ)移植した。2人の患者に縫合糸アンカーを移植し、8人の患者に縫合糸およびメッシュアンカーを移植した。平均処置時間は30分であった。
【0078】
結果
骨盤臓器脱の定量化(POP−Q)の得点は処置前に3〜4であった。処置に続いてPOP−Qの得点は0/1であった。処置の直後に重篤な有害事象(SAE)または有害事象(AE)に関連した装置は見られなかった。手術の3か月後に行われた調査および検査は、患者の満足を示し、AEに関連した装置または患者からの不満はなく、また脱出は再現しなかった。
【0079】
明確にするために別個の実施形態という状況で説明された本発明のある特定の特徴は、単一の実施形態に組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に簡潔にするために単一の実施形態という状況で説明された本発明の様々な特徴も、別個にまたはあらゆる適切な小結合で提供されてもよい。
【0080】
本発明はその特定の実施形態に関連して説明されたが、多くの代替形態、修正形態および変形形態が当業者に明白になることは明らかである。したがって本発明は、添付の特許請求の範囲の精神および広範囲に収まるこのようなすべての代替形態、修正形態および変形形態を含むことが意図される。本明細書に記載されたすべての公報、特許、および特許出願は、それぞれ個々の公報、特許、または特許出願が参照により本明細書に組み込まれるために具体的かつ個別に示されたかのように、それと同じ程度にそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。加えて本出願におけるあらゆる参考文献の引用または識別は、このような参考文献が先行技術として本発明に利用可能である許可として解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図9c
図9d
図9e
図9f
図9g
図9h