(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
知られているように、ラジアルタイヤは、トレッド、2つの非伸長性ビード、これらのビードをトレッドに連結する2枚の側壁及びカーカス補強材とトレッドの間に円周方向に配置したベルト又はクラウン補強材を含む。このカーカス及び/又はクラウン補強材は、知られている通り、重量物を運搬する産業用車両用のタイヤの場合一般的には金属タイプのコードのような補強用要素によって補強されているゴム製の少なくとも1枚のプライ(又は「層」)から構成されている。
【0003】
カーカス及び/又はクラウン補強材を強化するには、一般に、中心層又はコア及びこのコアの周りに配置した1以上の同心スレッドの層から構成されたシングルストランドコードを使用する。最も頻繁に使用される3層状コードは、本質的に、N本のスレッドの中間層(Nは典型的には3〜12本の範囲にある)によって取囲まれ、このスレッド自体もP本のスレッドの外部層(Pは典型的には8〜20本の範囲にある)によって取囲まれているM本のスレッドのコア(Mは1〜4本の範囲にある)から形成されているM+N+P本構造のコードである;このアッセンブリ全体を、必要に応じて、上記外部層の周りにらせん状に巻付けられた外側包装用ワイヤーで包装することは可能である。上記のように、いくつかのストランドを含むマルチストランド金属ロープも使用する。
【0004】
周知のとおり、これらの金属コードは、タイヤが走行しているとき、高い応力を、特に、スレッドにおいて、特に隣接層間の接触の結果としての摩擦、従って磨耗を、さらに、疲労をもたらす繰返しの屈曲又は曲率の変化を被る;従って、これらの層状コードは「フレッティング疲労」現象に対して高い抵抗性を有しなければならない。
【0005】
クラウン補強材に関しては、重量産業用車両、特に土木工事車両のタイヤは多数の腐蝕を受ける。特に、このタイプのタイヤは通常平坦でない路面上を走行し、時には結果としてトレッドの穿孔をもたらす。これらの穿孔には腐蝕剤、例えば空気や水が入ることができ、クラウン補強材、特にクラウンプライの金属補強用要素を酸化し、タイヤの寿命をかなり短縮する。
【0006】
また、これらの補強用要素にゴムを可能な限り含浸させ、この物質がコードを構成するスレッド及び/又はストランド間の空間の全てに浸透することが特に重要である。事実、この浸透が不充分な場合、空のチャンネル又は毛管が、コードに沿って、また、コード内に形成され、水又は空気中の酸素でさえのような腐蝕剤が、例えばタイヤトレッド内の切断の結果として、タイヤに浸透し、これらの空のチャンネルに沿ってタイヤ内に入り込む傾向を有する。この水分の存在は、乾燥雰囲気における使用と比較して、腐蝕を生じさせ、上記の劣化過程(いわゆる「腐蝕疲労」現象及びクラウン腐蝕)を促進するのに重要な役割を果す。
【0007】
これらの疲労及び腐蝕の現象は、全て、上記コードの機械的性質の進行性の劣化を起し、最も厳しい走行条件下では、これらのコードの寿命に影響を及ぼし得る。
【0008】
上記欠点を解決するために、出願WO 2005/071157号は、1+N+P本構造、特に、1+6+12本構造を有する3層状コードを提案しており、これらのコードの本質的特徴の1つは、ゴム引き用組成物と呼ばれる、ゴム組成物から構成されているシースが、少なくとも、M本のスレッドから構成されている中間層を被覆しており、上記コードのコア(又は個々のスレッド)自体は、ゴムによって被覆されていても被覆されていなくてもよいことである。この特定の設計によって、上記コードは、フレッティング疲労耐久特性も腐蝕に対する抵抗特性も優れ、特に従来技術のコードに関して改良されている。従って、タイヤの寿命及びそのカーカス及び/又はクラウン補強材の寿命は、極めて顕著に改良されている。
【0009】
しかしながら、タイヤの使用の間、スレッド間のゴム引き用組成物の存在にもかかわらず、腐蝕剤、例えば水は、金属補強用要素と接触して、補強材に浸透することができ、外側のストランド及び/又はスレッドを介してこれらを腐蝕することができ、従って、カレンダー加工組成物として既知の、機械的性質及び金属補強用要素に隣接したゴム組成物に対する接着特性を急速に分解する。
【0010】
腐蝕防止剤の使用は、一方では、金属補強用要素の周りに保護膜を形成することによって腐蝕剤の作用を防止することを可能にし、もう一方では、金属補強用要素上に吸着することによって、金属補強用要素上に、また、それの中に腐蝕剤の腐蝕作用を遅くさせることを、実際に停止させることさえを可能にする。
【0011】
腐蝕防止剤としてトリアジンのファミリーの誘導体を含む組成物は、文献JP05177772号から公知である。しかしながら、その化合物は比較的高価である。さらにまた、環境影響を有し得る化合物の使用される量を可能な限り制限することは望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、効果的で且つ環境的に中性の腐蝕防止剤を含むゴム引き用ゴム組成物によって現場ゴム引きされているコードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これを目的として、本発明の主題は、下記を備える現場ゴム引きシングルストランドコードであって:
−N1インターナルスレッドを含むコードの内部層、
−コードの内部層の周りにらせん状に巻付けられたN3エクスターナルスレッドを含むコードの外部層、
−コードの内部層とコードの外部層の間に位置するゴム組成物、
そのゴム組成物が式(I)又は(II)の化合物又はこの化合物の塩を含むことを特徴とする、前記現場ゴム引きシングルストランドコードである:
【化1】
(式中:R1、R2、R3及びR4の各基は、互いに独立して、-OH基、-O-アルキル基又は-O(C)-アルキル基を表す)。
【0014】
式(I)又は(II)の化合物又はこの化合物の塩は、腐蝕防止剤を形成する。
【0015】
有利には、本発明に従うゴム引き用ゴム組成物は、金属コードの腐蝕のリスクを減少させ、実際には排除させることさえも可能にする。さらにまた、コードの内部層とコードの外部層の間に配置したゴム組成物に式(I)又は(II)の化合物又はこの化合物の塩を添加する事実は、前記化合物が隣接するカレンダー加工ゴム組成物に配置される場合と同様の、実際にはその場合より良好な腐蝕防止効果を得ると共に化合物の量を減少させることを可能にする。
【0016】
一方、式(I)又は(II)の化合物又はこれらの化合物の塩は、腐蝕剤を捕捉した後にゴム引き用組成物によって保護されたスレッドに到達する。
【0017】
一方、組成物は、スレッドに対する腐蝕剤の腐蝕作用を制限することも可能にする。事実、式(I)又は(II)の化合物又はこれらの化合物の塩が腐蝕剤、例えば水によって、スレッドまで輸送され、そこで、ゴム引き用組成物が保護するスレッドの外部表面に吸着され、腐蝕剤の作用を阻止すると仮定される。
【0018】
式(I)又は(II)の化合物又はこれらの化合物の塩は、環境に関して比較的中性である。
【0019】
式(I)及び(II)の化合物は、可能なジアステレオ異性体のどれかの形で存在し得る。
【0020】
ゴム組成物は、生の形又は加硫された形で存在し得る。
【0021】
好ましい実施態様において、スレッドは銅又は黄銅の層で被覆されており、その層は、なかでも、硬化の間、この層の硫化作用によってゴムのスレッドへの接着を改善することを可能にする。式(I)又は(II)の化合物又はこれらの化合物の塩は、この硫化作用を阻害せず、従って、金属補強用要素とゴム組成物の間の接着を妨害しない。
【0022】
本発明に従う現場ゴム引きシングルストランドコードは、また、個々に又は全ての組み合わせに従って技術的に可能とみなされる、下記の特徴の1つ以上を含むことができる:
− R1=R2;及び/又は
− R1及びR2は、-OH基を表す;及び/又は
− R3=R4;及び/又は
− R3及びR4は、-OH基を表す;及び/又は
− 式(I)の化合物は、アスコルビン酸、好ましくはL-アスコルビン酸である;及び/又は
− ゴム組成物は、多くても2phr(限界値を含む)、好ましくは多くても1phr(限界値を含む)、より好ましくは多くても0.7phr(限界値を含む)の式(I)又は(II)の化合物又はこの化合物の塩を含む。
【0023】
1つ実施態様において、ゴム組成物は、内部層のN1インターナルスレッドと外部層のN3エクスターナルスレッドの間に位置する毛管の各々に存在する。
【0024】
他の実施態様において、コードは、さらに、コードの内部層の周りにらせん状に巻付けられたN2中間スレッドを含むコードの中間層を備え、コードの外部層のN3エクスターナルスレッドはコードの中間層の周りにらせん状に巻付けられている。
【0025】
好ましくは、ゴム組成物は、内部層のN1インターナルスレッドと中間層のN2中間スレッドの間に位置する毛管の各々に存在する。
【0026】
より好ましくは、なお、ゴム組成物は、中間層のN2中間スレッドと外部層のN3エクスターナルスレッドの間に位置する毛管の各々に存在する。
【0027】
本発明は、また、本発明に従う現場ゴム引きシングルストランドコードである少なくとも1本のストランドを備える、現場ゴム引きマルチストランドロープに関する。
【0028】
好ましい実施態様において、現場ゴム引きマルチストランドロープは下記を備える:
−T1インターナルストランドを含むロープの内部層、
−ロープの内部層の周りにらせん状に巻付けられたT2エクスターナルストランドを含むロープの外部層、
−本発明に従う現場ゴム引きシングルストランドコードである少なくとも1本のインターナルストランド及び/又はエクスターナルストランド。
【0029】
現場ゴム引きマルチストランドロープは、また、個々に又は全ての組み合わせに従って技術的に可能とみなされる、下記の特徴の1つ以上を含むことができる:
−各エクスターナルストランドは、本発明に従う現場ゴム引きシングルストランドコードである;及び/又は
−各インターナルストランドは、本発明に従う現場ゴム引きシングルストランドコードである;及び/又は
−マルチストランドロープは、ロープのT1インターナルストランドの内部層とロープのT2エクスターナルストランドの外部層の間に位置するゴム組成物を含み、そのゴム組成物は、式(I)又は(II)の化合物又はこの化合物の塩を含んでいる:
【化2】
(式中:R1、R2、R3及びR4の各基は、互いに独立して、-OH基、-O-アルキル基又は-O(C)-アルキル基を表す)。
【0030】
本発明は、また、下記を備える、現場ゴム引きマルチストランドロープに関する:
−T1インターナルストランドを含むロープの内部層、
−ロープの内部層の周りにらせん状に巻付けられたT2エクスターナルストランドを含むロープの外部層、
−ロープの内部層とロープの外部層の間に位置するゴム組成物であって、そのゴム組成物が式(I)又は(II)の化合物又はこの化合物の塩を含む、前記ゴム組成物:
【化3】
(式中:R1、R2、R3及びR4の各基は、互いに独立して、-OH基、-O-アルキル基又は-O(C)-アルキル基を表す)。
【0031】
現場ゴム引きシングルストランドコードのために上で触れた利点は、上記のマルチストランドロープについて準用する。
【0032】
本発明は、また、本発明に従う現場ゴム引きシングルストランドコード又は本発明に従う現場ゴム引きマルチストランドロープのゴム製の半製品又は物品、例えばタイヤを補強するための使用に関する。
【0033】
本発明は、さらに、本発明に従う現場ゴム引きシングルストランドコード又は本発明に従う現場ゴム引きマルチストランドロープを備えるタイヤに関する。
本発明の実施態様の制限されない例として示している以下の説明を読み取ることで、また、添付の図面を検討することで、本発明のより良好な理解を得るであろう。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本説明においては、特に明確に断らない限り、示す全てのパーセント(%)は、質量%である。略記「phr」は、エラストマーの100部当りの質量部を意味する。
【0036】
さらに、現場ゴム引きコードは、本発明の意味の範囲内で、実際の製造中に、従って生の製造状態において、「ゴム引き用」ゴム組成物によって内側からゴム引きされているコードを意味するものと理解されたい。言い換えれば、隣接するスレッド又はストランドによって形成される毛管又は間隙(これら2つの互変的な用語は充填するゴムの存在しない空隙又は空間を意味する)の少なくとも1つは、2cmのコード長毎に、各毛管がゴムの少なくとも1つのゴムプラグを含むように(コードの軸に沿って連続的に又は非連続的に)ゴム引き用組成物によって少なくとも部分的に充たされている。
【0037】
本発明は、コードの少なくとも1の内部層CT1及びコードの1の外部層CT3を備える現場ゴム引きシングルストランドコードCに関する。コードの内部層CT1は、1本以上のN1を有するN1インターナルスレッドを構成している。コードの外部層CT3は、コードの内部層CT1の周りにらせん状に巻付けられたN3エクスターナルスレッドを構成している。
【0038】
特に、内部層CT1は、1本以上のスレッド(即ち、N1は1〜3本の範囲にある)を備え得る。外部層CT3は、10〜14本のスレッド(即ち、N3は5〜7本の範囲にある)を備え得る。
【0039】
本発明に従うコードは、現場ゴム引きされ、従って、コードの内部層CT1とコードの外部層CT3の間に位置する「ゴム引き用」ゴム組成物20を含む。
【0040】
ゴム引き用組成物20のゴム(又は無差別に「エラストマー」、両方とも同義語とみなされている)は、好ましくはジエンエラストマー、即ち、定義により、ジエンモノマー(即ち、2つの共役又は非共役炭素-炭素二重結合を有するモノマー)から少なくとも部分的に得られるエラストマー(即ち、ホモポリマー又はコポリマー)である。
【0041】
特に好ましくは、組成物のジエンエラストマーは、ポリブタジエン(BR)、合成ポリイソプレン(IR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー及びこれらのエラストマーの混合物からなるジエンエラストマーの群から選択される。そのようなコポリマーは、より好ましくは、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、イソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)及びそのようなコポリマーの混合物からなる群から選択される。
【0042】
組成物は、1つのみのジエンエラストマー又はいくつかのジエンエラストマーの混合物を含むことができ、それはジエンエラストマー又はジエンエラストマー以外の任意のタイプの合成エラストマーと組み合わせて、実際にはエラストマー以外のポリマー、例えば熱可塑性ポリマーとさえ使用されるエラストマーが可能である。
【0043】
好ましくは、組成物は補強用充填剤を含む。
【0044】
補強用充填剤を使用する場合、タイヤの製造に使用し得るゴム組成物を補強する能力が既知の任意のタイプの補強用充填剤、例えば有機充填剤、例えばカーボンブラック、補強用無機充填剤、例えばシリカ、更にこれらの2つのタイプの充填剤のブレンド、特にカーボンブラックとシリカのブレンドを使用することができる。
【0045】
タイヤにおいて通常使用する全てのカーボンブラック類(「タイヤ級」ブラック類)は、カーボンブラックとして適切である。より詳しくは、例えば、100、200又は300シリーズの補強用カーボンブラック類(ASTM級)を挙げることができる。
【0046】
「補強用無機充填剤」は、本特許出願においては、定義により、カーボンブラックとは対照的に、「白色充填剤」、「透明充填剤」として或いは「非黒色充填剤」としてさえも知られている、その色合及びその起源(天然または合成)の如何にかかわらない任意の無機又は鉱質充填剤を意味するものと理解すべきであり、この無機充填剤は、それ自体で、中間カップリング剤以外の手段によることなく、タイヤの製造を意図するゴム組成物を補強し得、換言すれば、通常のタイヤ級カーボンブラックとその補強機能において置き換わり得る。そのような充填剤は、一般に、知られているとおり、その表面でのヒドロキシル(-OH)基の存在に特徴を有する。
【0047】
補強用無機充填剤を供給する物理的状態は、粉末、マイクロビーズ、顆粒又はビーズの形状或いは任意の他の適切な濃密形のいずれであれ、重要ではない。勿論、補強用無機充填剤は、種々の補強用無機充填剤、特に、以下で説明するような高分散性シリカ質及び/又はアルミナ質充填剤の混合物も意味するものと理解されたい。
【0048】
シリカ質タイプ、特にシリカ(SiO
2)、又はアルミナ質タイプ、特にアルミナ(Al
2O
3)の鉱質充填剤は、特に補強用無機充填剤として適切である。使用するシリカは、当業者にとって既知の任意の補強用シリカ、特に、共に450m
2/g未満、好ましくは30〜400m
2/gであるBET表面積とCTAB比表面積を示す任意の沈降又はヒュームドシリカであり得る。高分散性沈降シリカ(「HDS」)、EvonikからのUltrasil 7000及び Ultrasil 7005シリカ類、HuberからのZeopol 8715、8745及び8755シリカ類又は出願WO 03/016837号に記載されているような高比表面積を有するシリカ類が挙げられる。
【0049】
補強用無機充填剤をジエンエラストマーにカップリングさせるためには、知られている通り、無機充填剤とジエンエラストマー間に化学的及び/又は物理的性質の満足し得る結合を付与することを意図する少なくとも二官能性のカップリング剤(又は結合剤)、特に、二官能性のオルガノシラン又はポリオルガノシロキサンを使用する。
【0050】
当業者であれば、この項において説明した補強用無機充填剤と等価の充填剤として、もう1つの性質、特に有機性を有する補強用充填剤を、この補強用充填剤がシリカのような無機層によって被覆されているか、或いはその表面に、充填剤とエラストマー間の結合を形成させるためにカップリング剤の使用を必要とする官能部位、特にヒドロキシル部位を含むかを条件として、使用し得ることを理解されたい。
【0051】
補強用充填剤全体(カーボンブラック及び/又はシリカのような補強用無機充填剤)の含有量は、5〜120phr(限界値を含む)、より好ましくは5〜70phr(限界値を含む)、より好ましくは、また、5〜60phr(限界値を含む)の範囲内にある。
【0052】
勿論、1種のみのカーボンブラック又は異なるASTM級の数種のカーボンブラックのブレンドを使用することが可能である。また、カーボンブラックは、他の補強用填剤、特に上述したような補強用無機充填剤、特にシリカとのブレンドとして使用し得る。従って、1種のみのシリカ又は数種の異なるシリカのブレンドを使用することができる。
【0053】
無機充填剤(例えばシリカ)が、単独で又はカーボンブラックとのブレンドとして組成物において使用する場合、その含有量は、0〜70phr(限界値を含む)、好ましくは0〜60phr(限界値を含む)、特にまた5〜70phr(限界値を含む)の範囲内にあり、より好ましくはなおこの割合は5〜60phr(限界値を含む)の範囲にある。
【0054】
好ましくは、ゴム引き用組成物20は、主にシリカを質量により含み、より好ましくはシリカだけを含む補強用充填剤を含む。主にとは、シリカの質量による割合が組成物の残りのその他の補強用充填剤の質量による割合より多いことを、これらの充填剤が、有機、例えば、カーボンブラックであるにしても又は無機であるにしても、意味するものと理解されたい。
【0055】
有利には、ゴム引き用組成物20は、少なくとも30phr(限界値を含む)、好ましくは少なくとも40phr(限界値を含む)のシリカを含む。
【0056】
好ましくは、ゴム引き用組成物20は、種々の添加剤を含む。
【0057】
また、ゴム引き用組成物は、タイヤの製造を意図するエラストマー組成物において一般に使用する通常の添加剤の全部又は一部、例えば、可塑剤又は増量剤オイル(後者は、芳香族性にせよ非芳香族性にせよ)、顔料、酸化防止剤のような保護剤、疲労防止剤、ビスマレイミドのような補強用樹脂、メチレン受容体(例えば、フェノールノボラック樹脂)又はメチレン供与体(例えば、HMT又はH3M)も含み得る。
【0058】
上で示しているように、ゴム引き用組成物は式(I)又は(II)又はこれらの化合物に従う腐蝕防止剤を含む:
【化4】
(式中:R1、R2、R3及びR4の各基は、互いに独立して、-OH基、-O-アルキル基又は-O(C)-アルキル基を表す)。
【0059】
好ましくは、R1及びR2は同一である。
【0060】
R1及びR2が同一の場合には、これらは-OH基である。
【0061】
1つの実施態様において、R3及びR4は同一である。
【0062】
R1及びR2が同一の場合には、これらは-OH基である。
【0063】
好ましくは、式(I)の化合物は、アスコルビン酸、より好ましくはL-アスコルビン酸である。
【0064】
好ましくは、ゴム引き用ゴム組成物20は、多くても2phr(限界値を含む)、好ましくは多くても1phr(限界値を含む)、より好ましくは多くても0.7phr(限界値を含む)の式(I)又は(II)の化合物又はこの化合物の塩を含む。
【0065】
好ましくは、ゴム引き用組成物20は、架橋系、より好ましくは加硫系を含む。
【0066】
架橋系、この場合には加硫系は、イオウ供与剤、例えばイオウを含む。
【0067】
好ましくは、加硫系は、加硫活性化剤、例えば酸化亜鉛及びステアリン酸を含む。
【0069】
有利には、促進剤は、テトラベンジルチウラムジスルフィド(「TBZTD」と略記する)及び2-メルカプトベンゾチアゾールジスルフィド(「MBTS」と略記する)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(「CBS」と略記する)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンソチアゾールスルフェンアミド(「DCBS」と略記する)、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(「TBBS」と略記する)、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(「TBSI」と略記する)からなるスルフェンアミドの群並びにこれらの化合物の混合物から選択される。
【0070】
必要に応じて、加硫系は、また、N-(シクロヘキシルチオ)フタルイミド(「CTP」と略記する)のような加硫遅延剤を含む。
【0071】
イオウ又はイオウ供与剤は、0.5phrと10phrの間(限界値を含む)、より好ましくは0.5phrと8.0phrの間(限界値を含む)、非常に好ましくは2.0phrと8.0phrの間(限界値を含む)の好ましい含有量で使用する。組み合わせた加硫促進剤、遅延剤及び活性化剤は、0.5phrと15phrの間(限界値を含む)の好ましい含有量で使用する。1種以上の加硫活性化剤は、0.5phrと10phrの間(限界値を含む)の好ましい含有量で使用する。
【0072】
別の形では、架橋系を不要にすることを予想すること、即ちイオウ供与剤、例えばイオウ及び酸化亜鉛やステアリン酸のような加硫活性化剤がないゴム引き用組成物20が利用できることが可能である。
【0073】
化合物がない組成物は、組成物に故意に導入されるこの化合物を組成物が含まないこと及びこの化合物が存在する場合には、例えば、組成物の製造方法に、関係がある微量の形で存在することを意味するものと理解されたい。例えば、化合物がない組成物は、化合物を0.1phr以下、好ましくは0.05phr以下の量で含む。
【0074】
2層を備える現場ゴム引きシングルストランドコードCの
図1に示している第1の実施態様によれば、現場ゴム引きシングルストランドコアCの内部層CT1はインターナルスレッド10を備え、コードの外部層CT3はインターナルスレッドの周りにらせん状に巻付けられた6本のエクスターナルスレッド13を備えている。
【0075】
好ましくは、ゴム引き用ゴム組成物20は、内部層CT1のインターナルスレッドと外部層CT3の6本のエクスターナルスレッドの間に位置する毛管又は間隙の各々に存在する。
【0076】
示されていないが、例えば、3本のインターナルスレッド及び9本のエクスターナルスレッド有する2層コードを与えることが可能である。
【0077】
3層を備える現場ゴム引きシングルストランドコードの
図2〜4に図示している実施態様によれば、本発明の現場ゴム引きシングルストランドコードCは、N2中間スレッドを含むコードの中間層CT2を備え得る。N2中間スレッドはコードの内部層CT1の周りにらせん状に巻付けられ、コードの外部層CT3のN3エクスターナルスレッドはコードの中間層CT2の周りにらせん状に巻付けられている。
【0078】
図2〜4に図示している実施態様において、内部層CT1は、インターナルスレッド10を備え、中間層CT2は6本の中間スレッド12を備え、外部層CT3は12本のエクスターナルスレッド13を備えている。
図2〜4のコードは、1+6+12本構造を示している。
【0079】
本発明は、
図2〜4に図示している構成に限定されない。
【0080】
特に、内部層CT1は、より多くのスレッドを含むことができ、例えば2又は3本のスレッドが一緒にアッセンブルされている(即ち、N1は、1〜3本の範囲にある)。
【0081】
さらに、中間層CT2は、5〜7本のスレッドを含むことができる(即ち、N2は、5〜7本の範囲にある)。
【0082】
最後に、外部層CT3は、10〜14本のスレッドを含むことができる(即ち、N3は10〜14本の範囲にある)。
【0083】
図2に示している実施態様によれば、ゴム引き用ゴム組成物20は、内部層CT1のインターナルスレッド10と中間層CT2の6本の中間スレッド12の間に位置する毛管の各々に存在する。
【0084】
有利には、そのような構成は、インターナルスレッドと中間スレッドの腐蝕に対して良好な保護を確実にすることを可能にする。
【0085】
図3に示している実施態様によれば、ゴム引き用ゴム組成物20は、中間層CT2の6本の中間スレッド12と外部層CT3の12本のエクスターナルスレッド13の間に位置する毛管の各々に存在する。
【0086】
有利には、そのような構成は、中間スレッド及びエクスターナルスレッドの腐蝕に対して良好な保護を確実にすることを可能にする。従って、ゴム引き用組成物20はコードのコアと外部の間に腐蝕防止保護バリヤを形成することを可能にする。
【0087】
図4に示しているように、内部層CT1のインターナルスレッド10と中間層CT2の6本の中間スレッド12の間に位置する毛管の各々に及び中間層CT2の6本の中間スレッド12と外部層CT3の12本のエクスターナルスレッド13の間に位置する毛管の各々に存在させるようにゴム引き用組成物20を供給することも可能である。
【0088】
有利には、そのような構成は、コードの異なる層の腐蝕に対して最大の保護を与えることを可能にする。
【0089】
本発明は、また、ロープの少なくとも1の内部層CCI及びロープの1の外部層CCE
を備える現場ゴム引きマルチストランドロープC'に関する。
【0090】
ロープの内部層CCIは、T1インターナルストランドを構成している。
【0091】
ロープの外部層CCEは、ロープC'の内部層CCIの周りにらせん状に巻付けられたT2エクスターナルストランドを構成している。
【0092】
各インターナルストランドTI及びエクスターナルストランドTEは、コードの少なくとも1の内部層CT1及びコードの1の外部層CT3を構成するシングルストランドコードである。内部層はN1インターナルスレッドを備え、外部層はコードの内部層の周りにらせん状に巻付けられたN3エクスターナルスレッドを備えている。
【0093】
図5〜10に示している現場ゴム引きマルチストランドロープC'の実施態様において、各インターナルストランドTIとエクスターナルストランドTEは、中間層CT2を備えるシングルストランドコードである。コードの中間層CT2は、コードの内部層CT1の周りにらせん状に巻付けられたN2中間スレッドを備え、コードの外部層CT3のN3エクスターナルスレッドはコードの中間層CT2の周りにらせん状に巻付けられている。
【0094】
本発明に従うマルチストランドロープC'は、
図5〜10に示している構造を有するストランドを備えるロープに限定されない。
【0095】
本発明の実施態様、
図5〜9に示している例示的実施態様によれば、インターナルストランド及び/又はエクスターナルストランドの少なくとも1つは、本発明に従うシングルストランドコード、即ち、式(I)又は(II)の化合物又はこの化合物の塩を含むゴム組成物によって現場ゴム引きされたシングルストランドコードである:
【化5】
(式中、R1、R2、R3及びR4の各基は、互いに独立して、-OH基、-O-アルキル基又は-O(C)O-アリキル基を表す)。
【0096】
図5に示している実施態様によれば、各エクスターナルストランドTEは、
図4によって記載されているように、本発明に従う現場ゴム引きシングルストランドコードである。
【0097】
図6に示している実施態様によれば、各インターナルストランドTIは、
図4によって記載されているように、本発明に従うゴム引きシングルストランドコードである。
【0098】
図7に示されている実施態様によれば、各エクスターナルストランドTEと各インターナルストランドTIは、
図4によって記載されているように、本発明に従う現場ゴム引きシングルストランドコードである。
【0099】
図8及び9に示されている実施態様によれば、本発明に従うマルチストランドロープは、ロープのインターナルストランドTIの内部層CCIとロープのエクスターナルストランドTEの外部層CCEの間に位置するゴム引き用ゴム組成物20を含むことができ、そのゴム引き用ゴム組成物20は、式(I)又は(II)の化合物又はこの化合物の塩を含んでいる:
【化6】
(式中、R1、R2、R3及びR4の各基は、互いに独立して、-OH基、-O-アルキル基又は-O(C)O-アリキル基を表す)。
【0100】
これらの例において、ゴム引き用ゴム組成物20は、シングルストランドコードに対して上で記載したものと同じである。
【0101】
図8に示されている実施態様によれば、各エクスターナルストランドTEは、
図4によって記載したように、本発明に従う現場ゴム引きシングルストランドコードであり、インターナルストランドは、現場ゴム引きされていないストランドであり、式(I)又は(II)の化合物又はこれらの化合物の塩を含むゴム引き用ゴム組成物20は、ロープの内部層CCIとロープの外部層CCEの間に位置する。この例では、ロープの内部層CCIとロープの外部層CCEの間に位置するゴム引き用ゴム組成物20は、シングルストランドコードに対して上で記載されているものと同じである。
【0102】
図9に示されている実施態様によれば、各エクスターナルストランドTE及び各インターナルストランドTIは、本発明に従う現場ゴム引きシングルストランドコードであり、式(I)又は(II)の化合物又はこれらの化合物の塩を含むゴム引き用ゴム組成物20は、ロープの内部層CCIとロープの外部層CCEの間に位置する。この例では、ロープの内部層CCIとロープの外部層CCEの間に位置するゴム引き用ゴム組成物20は、シングルストランドコードに対して上で記載されているものと同じである。
【0103】
本発明は、また、少なくとも下記を備える、現場ゴム引きマルチストランドロープC'に関する:
−T1インターナルストランドTIを含むロープの内部層CCI、
−ロープの内部層CCIの周りにらせん状に巻付けられたT2エクスターナルストランドTEを含むロープの外部層CCE、
−ロープの内部層CCIとロープの外部層CCEの間に位置するゴム組成物であって、そのゴム組成物は式(I)又は(II)の化合物又はこの化合物の塩を含む、前記ゴム組成物:
【化7】
(式中、R1、R2、R3及びR4の各基は、互いに独立して、-OH基、-O-アルキル基又は-O(C)O-アリキル基を表す)。
【0104】
図10に示されている実施態様において、ストランドは、現場ゴム引きされないシングルストランドコードである。式(I)又は(II)の化合物又はこれらの化合物の塩を含むゴム引き用ゴム組成物20は、ロープの内部層CCIとロープの外部層CCEの間に位置する。好ましくは、ロープの内部層CCIとロープの外部層CCEの間に位置するゴム引き用ゴム組成物20は、シングルストランドコードに対して上で記載したものと同じである。
【0105】
本発明は、また、本発明に従うコードの、プラスチック及び/又はゴム製の半製品、例えば、プライ、パイプ、ベルト、コンベアベルト又はタイヤ、より詳しくは産業用車両を意図したタイヤの補強のための使用にも関する。
【0106】
上記のコードを製造するために、ゴム引き用ゴム組成物20は、コードの異なる層のアッセンブリにおいて、当業者の一般知識に従って配置される。特に、文献EP 1 699 973号、WO2006/013077号、WO2007/090603号、WO09/083212号、WO09/083213号、WO10/012411号、WO10/054790号、WO10/054791号、WO10/112444号、WO10/112445号、WO10/139583号、WO11/000963号、WO11/000964号、WO11/000950号及びWO11/000951号に言及されている。
【0107】
本発明のコードは、特に、バン類、「重量級」車両、即ち、地下鉄、バス、大型道路輸送車(トラック、トラクター、トレーラー)又は道路外車両、農業用車両又は土木機械、航空機、並びに他の輸送及び作業用車両から選ばれる産業用車両を意図する補強要素として使用することを意図する。
【0108】
本発明に従うコードは、タイヤの異なる部分、特にそのようなタイヤ、特に産業用タイヤ、例えば重量級車両又は土工機械タイヤの、特にカーカス補強材又はクラウン補強材を補強するために使用し得る。
【0109】
さらに、本発明は、本発明に従うコードによって補強されている場合のこれらのプラスチック及び/又はゴム製の半製品又は最終物品自体、特に上述の産業用車両、より詳しくは重量級又は土工機械タイヤを意図するタイヤ、また、そのようなタイヤのカーカス又はクラウン補強プライとして使用し得る、本発明に従う現場ゴム引きコードによって補強されたカレンダー加工用ゴム組成物マトリックスを含む複合ファブリックに関する。
【0111】
腐蝕阻害剤を欠いた当業者にとって既知の最新技術に従う「対照」組成物を上で説明した通りの「発明」ゴム引き用組成物と比較した。
【0112】
「対照1」、「対照2」及び「発明」の組成物の成分の量を、下記表1に示し、エラストマーの100質量部当たりの質量部(phr)として表す。
表1
【0114】
「発明」組成物の腐蝕防止剤は、式(I)に従う。適切な場合には、下記式(III)のL-アスコルビン酸である。
【化8】
【0115】
「発明」組成物は、多くても2phr(限界値を含む)、好ましくは多くても1phr(限界値を含む)、より好ましくは多くても0.7phr(限界値を含む)の式(III)の化合物を含む。
【0116】
表1の組成物において、ジエンエラストマーは天然ゴムである。シリカは、HD型シリカ − RhodiaからのZeosil 1165MPである。カーボンブラックは、N330型である。酸化防止剤は、N-(1,3-ジメチルブチル)-N-フェニル-パラ-フェニレンジアミン(FlexsysからのSantoflex 6-PPD)である。オルガノシランは、TESPT(DegussaからのSi69)である。コバルト塩は、ナフテン酸コバルトである。加硫促進剤は、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(FlexsysからのSantocure CBS)である。組成物の加硫遅延剤は、N-(シクロヘキシルチオ)フタルイミド(CAS No.17796-82-6)である。
【0118】
組成物は、適切なミキサー内で、当業者に周知の2つの連続する調製段階:110℃と190℃の間、好ましくは130℃と180℃の間の最高温度(Tmaxと表す)までの高温で熱機械的に加工又は混練する第1段階(「非生産段階」とも称する)、その後の、典型的には110℃よりも低い、例えば、60℃と100℃の間の低めの温度で機械加工する第2の段階(「生産段階」とも称する)を使用して製造し、その仕上げ段階において、架橋系又は加硫系を混入する;そのような段階は、例えば、上述の文献EP 501 227号、EP 735 088号、WO00/05300号、WO00/05301号又はW002/083782号に記載されている。
【0119】
一例として、第1(非生産)段階は、1回の熱機械的段階において実施し、その間に、第1の工程において、全ての必要なベース構成成分(ジエンエラストマー、補強用無機充填剤及びカップリング剤)を標準の密閉ミキサーのような適切なミキサー内に導入し、その後、第2の工程において、例えば1〜2分間混練した後に必要に応じてのさらなる加工助剤及び化学架橋系を除いた各種他の添加剤を導入する。補強用無機充填剤の嵩密度が低い(シリカの一般例)場合、その導入を2部以上に分けることが有利であり得る。熱機械加工の第2の段階は、組成物を追加の熱機械的処理に供する目的で、特に、エラストマーマトリックスにおいて、補強用無機充填剤及びそのカップリング剤の分散を更に改善するために、混合物を落下させ、中間冷却した(好ましくは100℃未満の冷却温度)後に、この密閉式ミキサーに添加し得る。この非生産段階における総混錬時間は、好ましくは2分と10分の間の時間である。
【0120】
そのようにして得られた混合物を冷却した後、必要であれば、架橋系を低温で、一般に開放ミルのような開放ミキサー内に混入する;その後、混ぜ合わせた混合物を、数分間、例えば、5分と15分の間の時間混合する。
【0121】
その後、そのようにして得られた最終組成物を、例えば、シート又はプラークの形にカレンダー加工するか、或いは、例えば、ゴム形状要素を形成するために押出加工する。
【0122】
加硫(又は硬化)は、知られているように、一般的には130℃と200℃の間の温度で、好ましくは圧力下で、例えば、5分と90分の間の範囲にあり得る充分な時間、特に、硬化温度、採用した加硫系、検討中の組成物の加硫速度論又はタイヤのサイズの関数として実施する。
【0124】
2.30NF構造の金属コードを含む試験片(それの一部を調製したゴム組成物でできている2つの細片の間に挿入し、それの他の部分はそのままにしておく)についてASTM D2229規格に従う引きはがし試験を実施する。
【0125】
2つのゴム細片からコードを引きはがすのに必要な力を測定する。測定は、15のコードについて実施する。保持した値は、これらの15のコードに対する測定の平均である。力の値が大きいほど、コードとゴム組成物の間の接着が大きい。
【0126】
試験される組成物に対して、引きはがすのに必要な力が対照試験片からコードを引きはがすのに必要な力より大きい場合には、試験されるゴム組成物に対するコードの接着は対照試験片より良好であり、従って、保持される相対値は100より大きい(対照試験片の相対値は100に等しい)。逆に、所定の組成物に対して、引きはがすのに必要な力が対照試験片からコードを引きはがすのに必要な力より小さい場合には、試験されるゴム組成物に対するコードの接着は対照試験片より悪く、従って、保持される相対値は100未満である。
【0127】
上記の接着試験は、異なる条件A、B、C、D、E及びF下で加硫及び/又は熟成した試験片によって実施する。
【0128】
条件A(通常の硬化)は、100℃を超える温度で1時間未満の時間加硫される試験片で実施される試験に対応する。
【0129】
条件B(過硬化)は、100℃を超える温度で1時間を超える時間硬化される試験片について実施される試験に対応する。
【0130】
条件C(生の状態で湿潤熟成)は、生の組成物を含む試験片について実施し、30℃を超える温度で50%を超える相対湿度で数日間熟成される試験に対応する。
【0131】
条件D(腐蝕性大気下の熟成)は、生の組成物を含む試験片について実施し、NaCl溶液中で数日間熟成される試験に対応する。
【0132】
条件E(蒸気熟成)は、生の組成物を含む試験片について実施し、100℃を超える温度で数時間熟成される試験に対応する。
【0133】
条件F(硬化後の状態における湿潤熟成)は、100℃を超える温度で1時間未満の時間硬化される試験片で実施し、30℃を超える温度で50%を超える相対湿度で数日間熟成される試験に対応する。
【0134】
測定される接着が大きいほど、ゴム引き用組成物の腐蝕防止性能が良好であり、従って、そのようなゴム引き用組成物を含むコードを備えるタイヤについて疲労・フレッティングの耐久特性及び腐蝕に対する抵抗特性が良好であることが理解される。
【0135】
異なる状件下での接着試験結果は、下記表2に示した。
表2
【0136】
「発明」組成物は、「発明」組成物が最新技術のC組成物より優れている接着性を示す条件D(腐蝕性大気下の熟成)及びF(硬化後の状態における湿潤熟成)を除いてどのような試験条件でも、最新技術のC組成物に少なくとも等価の接着性能を示す。従って、「発明」組成物は、条件D及びFの腐蝕剤によって生じる腐蝕を防止することを可能にする。
【0139】
ムーニー可塑度は、規格ASTM D1646-99に従う稠度計を使用して
決定する。ムーニー可塑度測定は、次の原理に従って実施する:一般に生の混合物を、所定の温度、通常は100℃、この場合には60℃に加熱した円筒状チャンバー内で成形する。1分間予熱した後、Lタイプのローターが試験標本内で2回転/分で回転し、この運動を維持するための仕事トルクを4分間の回転後に測定する。ムーニー可塑度(ML 1+4)は、「ムーニー単位」(MU、1MU = 0.83ニュートン.メートル)で表す。
【0142】
これらの引張試験は、ゴム組成物の弾性応力及び破断点諸特性の測定を可能にする。特に断らない限り、これらの試験は、1988年9月のフランス規格 NF T 46−002に従って実施する。公称割線モジュラス(又はMPaでの見掛け応力)は、10%伸び(MA10と表す)、100%伸び(MA100と表す)及び300%伸び(MA300と表す)での2回目の伸びにおいて(即ち、測定自体おいてもたらされる伸長速度に対する順応サイクルの後に)測定する。
【0143】
破壊応力(MPaで)及び破断点伸び(%で)は、23℃±2℃において標準湿度測定条件(50±5%相対湿度)下で測定する。
【0144】
異なる組成物の硬化の前後の特性の測定の結果は、下記表3に示した。
表3
【0145】
「発明」組成物のムーニー可塑度及び10%、100%及び300%の公称割線モジュラスは、C組成物に対して比較的変わらない。
【0146】
勿論、本発明は、上記で説明した実施態様に限定されない。
【0147】
数種の腐蝕防止剤の混合を与えることは可能である。
【0148】
例えば、いくつかのスレッドは、非円形断面、例えば塑性的に変形した断面、特に実質的に楕円形又は多角形断面、例えば、三角形、正方形又は長方形の断面を有し得る。
【0149】
円形又は非円形断面、例えば波形スレッドは、スレッドは、らせん形に撚り合せた又はジグザク形に撚り合わせたらせん体であり得る。そのような場合は、勿論、そのスレッドの直径は、そのスレッドを取囲む仮想回転柱の直径(最外側回転直径)を示し、コアスレッド自体の直径(又はスレッド断面が円形でない場合の任意の他の横方向サイズ)をもはや示さないことと理解するべきである。
【0150】
工業的実現性、コスト及び全体的性能を理由として、本発明を、線状スレッド、即ち、円形の通常の断面を有する直線スレッド、即ち、直線形スレッドでもって実施することが好ましい。
【0151】
また、本発明に従う、1×N本構造(Nはらせん状に一緒に巻付けられたストランドの数を表す)を有する現場ゴム引きマルチストランドロープを予想することも可能である。
【0152】
また、上記で説明した又は予想された種々の実施態様の特徴を組み合わせることも可能である、但し、これらの特徴が互いに適合し得ることを条件とする。