【文献】
Alexander YPMA, et al.,Bayesian Feature Selection for Hearing Aid Personalization, [online],Machine Learing for Signal Processing,IEEE,2007年 8月,Pages 425-430,[2017年10月31日検索], <インターネット>,URL,http://ieeexplore.ieee.org/document/4414344/
【文献】
Perry Cornelis GROOT, et al.,Predicting Preference Judgments of Individual Normal and Hearing-Impaired Listeners With Gaussian Processes,IEEE Transactins on Audio, Speech and Language Processing,IEEE,2011年 5月,Pages 811-821,[2017年10月31日検索], <インターネット>,URL,http://ieeexplore.ieee.org/document/5545403/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ユーザ応答のセットを提供するステップが,二変量予測改善についての分析式を用いて上記ユーザによって評価されるべき次のパラメータ値設定を決定するステップを含む,請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
新たなパラメータ値設定の関数としての上記二変量予測改善の勾配についての分析式が,勾配の上昇アプローチまたは下降のアプローチを使用するパラメータ値のセットの関数としての二変量予測改善の最大値を見つけるために用いられる,請求項8または9に記載の方法。
周辺尤度についてML-IIまたはMAP-II最適化を適用することによって,共分散および尤度のハイパーパラメータθcovおよびθlikを決定するステップを含む,請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
ユーザ応答のセットをマッピングするステップが,上記ユーザ応答が上記第2の応答範囲においてよりガウス分布となるように構成されている,請求項15に記載の方法。
上記ユーザ応答をマッピングするステップが,ガウス分布の逆累積分布関数,逆シグモイド関数および逆双曲線正接関数を含む関数群から選択される単調増加関数を用いて実行される,請求項15または16に記載の方法。
【実施例】
【0034】
本願の開示において,リラックス音(relaxing sound)という用語は,ユーザが集中すること,よりリラックスして快適に感じること,およびストレスを軽減しかつ不安を感じないようにすることを手助けするために,補聴器において人工的に(synthetically)生成される音を表す。
【0035】
一態様において,上記リラックス音は,マスキングによって,または望まれない邪魔な音からユーザの注意をそむけさせることによって達成することができる。他の態様において,リラックス音それ自体が,望まれない邪魔な音が存在するかどうかかかわらず,これを達成するのに役立つことが分かった。
【0036】
概略的には,発明者は,ユーザの好みが1日のうちに数回にわたって大きく変化することがあること,すなわち好みは時刻(朝,昼または夕刻)に,またはユーザの気分もしくはユーザが従事している活動のタイプに依存することがあることを見いだしたことから,発明者は,リラックス音を,ユーザの現在の好み(present preferences)に適合させること(すなわちカスタマイズ)ができれば,上記ユーザにとってかなりの改善が提供されることを見いだしたものである。
【0037】
多くのユーザに様々な好みがあることから,発明者はまた,様々なタイプのリラックス音を聞くのにあまりに多くの時間を費やすことなく上記カスタマイズを実行できれば,ユーザにとってかなりの改善をもたらすことも見いだした。
【0038】
さらに,多くのユーザに様々な好みがあることから,発明者は,限定された処理資源を有する補聴器システムだけを利用して上記カスタマイズを実行できれば,カスタマイズをどこでもいつでも実行することができるので,ユーザにとってかなりの改善をもたらすことを見いだした。
【0039】
さらに発明者は,ユーザが複雑なやり方で補聴器システムと対話することを必要とせずにカスタマイズを実行できることが非常に重要であることを見いだした。
【0040】
特に,発明者は,補聴器システムのユーザが2つの補聴器システム設定(hearing aid system settings)を比較し,上記設定の一方が他方よりもどの程度好ましいかを評価するように促される場合に,前もって予測できない処理効率のもとで(with beforehand unseen processing efficiency)補聴器システムのカスタマイゼーションを実行することができる分析式(analytical expressions)を導出できることを見いだした。
【0041】
上述したように,この発明はリラックス音のカスタマイゼーションについて特に利点がある。
【0042】
補聴器システムにおける実装に適する人工的に生成されるリラックス音の一例は,たとえばWO−A1−02/41296に見ることができる。
【0043】
さらに発明者は,WO−A1−02/41296に開示されているような人工的に生成されるリラックス音は,音の生成を制御するために用いられるパラメータを擬似ランダムに(pseudo-randomly)変化させることできる範囲(ranges)を最適化することによって,効果的にカスタマイズされることを見いだした。しかしながら,カスタマイズ・アプローチの代替案の一つとして,発明者は,生成されたリラックス音の高調波特性の最適化(optimization of the harmonics characteristics of the generated relaxing sounds)が,ユーザに大きな改善をもたらし得ることを見だした。
【0044】
はじめに,この発明の第1の実施態様によるリラックス音をカスタマイズする方法を説明する。
【0045】
第1のステップにおいて,補聴器システムによるリラックス音の生成を制御するパラメータ群からパラメータのセット(a set of parameters)が選択される。
【0046】
許容範囲にわたって(over their allowed range)パラメータを変化させたときに有意な変化を有すると知覚される多数のリラックス音を提供することができる,そのようパラメータ(複数)が選択される。
【0047】
この実施態様の一変形例では,WO−A1−02/41296を参照して,上記パラメータ・セットは,WO−A1−02/41296の実施形態による多数の音発生器によって生成される信号に加えられる特定の高調波(the specific harmonics)を含む。これにより,上記音発生器はユーザが好む高調波特性を有する音を提供するようにカスタマイズされる。
【0048】
この実施形態の別の変形例によると,再度WO−A1−02/41296を参照して,第1のパラメータ・セットが,一または複数の音発生器についての許容範囲を備え,その範囲において上記音発生器の周波数およびフェードアウト時間を,提供される乱数によって制御されるように変化させることができる。すなわち,発明者は,パラメータ値の変化が許容される上記範囲をカスタマイズすることによって,この変化がランダムに制御されるとしても,ユーザにとって有意な改善を提供することができることを見いだした。
【0049】
第2のステップにおいて,第1および第2のパラメータ値のセットが選択され(第1および第2のパラメータ値設定,または単に第1および第2の設定と呼ぶこともある),これによって上記第1のパラメータ値セットに基づいて第1のリラックス音が生成されてユーザに提供され,かつ第2のパラメータ値セットに基づいて第2のリラックス音が生成されかつユーザに提供される。この実施形態では第1および第2のパラメータ値セットはランダムに選択される。
【0050】
変形例において,上記第1および第2のパラメータ値セットはランダムに選択されることを要しない。その代わりに,上記第1のパラメータ値セットは,上記補聴器システムが電源オフされたときにアクティブであったセットとされる。さらなる変形例では,上記第1および第2のパラメータ値設定を同一のものとすることができる。
【0051】
ここで補聴器システムによるリラックス音の生成を制御するd個の選択されるパラメータの値を含む,d次元のベクトル
x(太字のx,以下同様)を考える。
【0052】
【数1】
【0053】
以下において,d個のパラメータの特定値を有するd次元のベクトル
xを,設定(a setting)またはパラメータ値設定(a parameter value setting)とも呼ぶ。
【0054】
第3のステップにおいて,ユーザは,第1および第2のリラックス音を比較することを促され,かつ2つのリラックス音のうちユーザが好むものを判定することができる第1のユーザ応答(以下において観測(オブザベーション)とも言う)を提供する。
【0055】
この実施態様によると,上記観測は段階的応答(a graduated response)を含み,これによってユーザは,0と1の間の有界範囲(間隔ともいう)内の数(a number)を選択することによって,第1のリラックス音(および第1のパラメータ値設定)が第2のリラックス音(および第2のパラメータ値設定)よりもどの程度好まれるかを評価し,1のユーザ応答(a user response of one)は,たとえば第1のパラメータ値設定が第2のパラメータ値設定よりも限りなく良好(indefinitely better)であることを意味し,ゼロは第2のセットが第1のセットよりも限りなく良好であることを意味し,半分の値は2つのオプションが等しく良好であると評価されたことを意味する。
【0056】
この実施態様の変形例では,上記有界範囲は基本的に任意の範囲を,たとえば−1から+1の範囲,または−10から+10の範囲をカバーすることができる。しかしながら,一般には,特にこの明細書の範囲内では,ユーザが一の設定または他の設定のいずれかを選択するテストは,互いの設定のユーザ評価を提供するとはみなされない(can’t be considered to provide a user’s rating of the settings relative to each other)ことを強調しておく。すなわち,この明細書の範囲内において,ユーザ応答が有界範囲からの数値の形態を取る場合,この範囲(または間隔)は2以上の要素(more than two elements)を持つ。
【0057】
第4のステップにおいて,ユーザは,複数のパラメータ値設定に基づいて複数の追加のユーザ応答を提供し,ここでn個のテストパラメータ値設定の集合Xは以下によって与えられる。
【0058】
【数2】
【0059】
ここでm個の有界観測のベクトルは,u
k,v
k∈{1,…,n}を意味する設定
xuk,
xvk∈Xに基づくリラックス音のペアに関連する。
【0060】
【数3】
【0061】
ここで上記有界観測は以下の形態である。
【0062】
【数4】
【0063】
すべてのn
*個の利用可能パラメータ値設定の集合X
*は以下のように表される。
【0064】
【数5】
【0065】
ユーザの未知の内部応答関数はfで示され,パラメータ値の設定
xが与えられたときの特定音のユーザの知覚が符号化されると仮定する。
【0066】
【数6】
【0067】
以下において,(確率的な)ベクトル
fは,ユーザの内部応答関数fのXにおけるn個の設定のそれぞれについての関数値f(
xi)を含むものとして定義される。
【0068】
【数7】
【0069】
第5のステップにおいて,有界観測ベクトル
yは,非有界観測ベクトル(a vector of unbounded observations)
zにワープされる(warped)。これは,有界観測または部分的な有界観測yを,非有界観測z=g(y)にマッピングすることによって定義されるワーピング関数(warping function)を用いて行われる。
【0070】
【数8】
【0071】
上記マッピングを実行する適切な関数は,ガウス分布の逆累積分布関数(inverse cumulative distribution function of the Gaussian distribution),逆シグモイド関数(inverse sigmoid function)および逆双曲線正接関数(inverse hyperbolic tangent function)を含む単調増加関数群(a group of monotonically increasing functions)から選択することができる。
【0072】
このように上記観測をマッピングするまたはワープすることによって(以下,これらの用語は互換的に用いられることがある),カスタマイズ法の性能を,収束速度(すなわち,ユーザが好むパラメータ値設定を見つけるために必要とされるユーザ応答数)および堅牢性(ロバスト性)(すなわち,上記カスタマイズ法がユーザの内部応答関数を反映する予測を提供することができるチャンス)の両方に関して改善することができる。しかしながら,この発明の方法において,ワーピングが提供されることが必須条件ではない。
【0073】
第6のステップにおいて,上記ワープされた観測zは以下の式によって与えられると仮定される。
【0074】
【数9】
【0075】
ここでεはガウス雑音(ε〜N(0,σ
2))であり,独立かつ同一に分布されており,上記段階的応答が実行されるときのユーザの不確実性を表す。
【0076】
この仮定に基づくと,zを観測する尤度関数(the likelihood function for observing z)は,以下のように直接に決定することができる。
【0077】
【数10】
【0078】
ここでz
kは特定のワープされたユーザ応答を表し,σ
2はユーザ応答の分散を表し,N(z
k|f(
xu)−f(
xv),σ
2)は,平均値f(
xu)−f(
xv)および分散σ
2を有する変数z
kについての単一変量ガウス分布(the single variate Gaussian distribution)である。以下において,分散σ
2を尤度ハイパーパラメータ(likelihood hyper parameter)
θlikとも呼ぶ。
【0079】
第7のステップにおいて,以下の新規かつ進歩的な式を用いて尤度が決定される。
【0080】
【数11】
【0081】
ここで
Im×mは,m×m単位行列
z=[z
1,…,z
m]
T=[g(y
1),…,g(y
m)]
Tであり,行列
Mは,要素[
M]
k,uk=1および[
M]
k,vk=−1を除いてゼロだけから構成されるm×n行列である。
【0082】
すなわち,N(
z|
Mf,σ
2Im×m)は,平均ベクトル
Mfおよび共分散行列σ
2Im×mを有するユーザ応答
zのセットに関する多変量ガウス分布(multivariate Gaussian distribution)を表す。
【0083】
第8のステップにおいて,ユーザの未知内部応答関数の関数値に関する事前分布(a prior distribution)p(
f|X,
θcov)がゼロ平均ガウス過程(a zero-mean Gaussian process)から得られる。これは,ゼロ平均ガウス過程が,多変量ガウス分布としての有限集合の関数値
fにわたる結合分布(joint distribution)を定義するという事実に基づいて得られる。
【0084】
【数12】
【0085】
ここで,任意の2つの関数値間の共分散(the covariance)は,半正定共分散関数(a positive semi-definite covariance function),k(
xi,
xj,
θcov)によって与えられ,共分散行列
Kは以下によって決定される。
【0086】
【数13】
【0087】
ここでkは二乗指数共分散関数(the squared exponential covariance function)(ガウスカーネルとも呼ばれる)であり,次のように定義される。
【0088】
【数14】
【0089】
ここでσ
fおよび半正定行列(the positive semi-definite matrix)
Lは共分散ハイパーパラメータ(the covariance hyper parameters)であり,主にユーザの内部応答関数の平滑さ(the smoothness)を決定する。共分散ハイパーパラメータσ
fおよび
Lは一緒に
θcovで表すことができる(may be together denoted)。
【0090】
一般に,ガウス過程(Gaussian Process)(以下,GPと略記することがある)から得られる上記事前(the prior)は,ユーザの内部応答関数fの平滑さに関する仮定を,パラメータ値設定
xおよび異なる補聴器パラメータ間の相互作用(interplay)として捕捉する。
【0091】
ガウス過程によってモデル化された関数f(
x)からの任意の有限集合の関数値の結合分布(the joint distribution of any finite set of function values)を常に得ることができることが,ガウス過程の基本的特性である。したがって,関数値を含む2つのベクトルを連結し,たとえば次のようにして対応する結合分布を得ることができる。
【0092】
【数15】
【0093】
ここから,他のベクトルを与えられる関数値の1つのベクトルの条件付き分布を得ることは自明である(it is trivial to obtain the conditional distribution of one vector of function values given the other vector )。たとえば,以下のとおりである。
【0094】
【数16】
【0095】
しかしながら,この実施形態の変形例では,ガウスカーネルに代えて,他の半正定共分散関数を適用することができる。 このような共分散関数の例には,γ指数共分散関数(γ−exponential covariance function),マター級共分散関数(the Matern class of covariance functions),有理二次共分散関数(the rational quadratic covariance function),周期共分散関数(periodic covariance functions)および線形共分散関数(linear covariance functions)がある。
【0096】
第9のステップにおいて,ハイパーパラメータθ={θcov,θlik}が,周辺尤度(the marginal likelihood)についての式の最大化に基づいて選択され,これによって観測データの尤度も最大化される。上記周辺尤度は,尤度p(
z|
f,
θlik)および事前p(
f|X,
θcov)に基づいて決定される。
【0097】
【数17】
【0098】
最後の比例記号は,ワープ関数が固定されている場合に成立し,すなわち最適化が必要とされるハイパーパラメータが含まれていないことを意味する。
【0099】
典型的には,ML-IIまたはMAP-II最適化技術が適用される。しかしながら,この実施態様の変形例では,他の最適化技術を同様に適用することもできる。
【0100】
上記ML-II法が適用される場合,ハイパーパラメータに関する周辺尤度の最大化は,ハイパーパラメータに関する負の対数周辺尤度(negative log marginal likelihood)を最小化することによって達成される。
【0101】
【数18】
【0102】
この実施形態の変形例ではMAP-IIとして知られる方法が用いられ,そこでは上記周辺尤度が,適切なハイパー事前分布(a suitable hyper prior distribution)p(θ),たとえば半生徒のt分布(the half-student’s t distribution),ガンマ分布,ラプラス分布,ガウス分布,またはノイズパラメータについての一様事前(a uniform prior for noise parameters)等で正規化される。
【0103】
次に,負の対数(the negative logarithmic)の最小値を見つけることによって,正規化された周辺尤度がp(
θ|
z,X)∝p(
z|X,
θ)p(
θ)に関して最大化される。 したがってMAP-IIの最適化は以下によって与えられる。
【0104】
【数19】
【0105】
発明者は,補聴器システムをカスタマイズするときに典型的な約50回以下の観測が利用可能である場合に,この方法に特に利点があることを見いだした。
【0106】
周辺尤度についての新たな解析式が,関数値と関数値にわたる観測との間の結合分布を過小評価することによって(by marginalizing)導出される。この結合分布は,上記尤度と上記事前との積であり,これによって次式が提供される。
【0107】
【数20】
【0108】
ハイパーパラメータのMAP-IIまたはML-II最適化のいずれかについて周辺尤度を用いると,典型的には,周辺尤度の負の対数を最小にするために数値的により堅牢(ロバスト)になる。
【0109】
【数21】
【0110】
または,オリジナルの非ワープの観測Yを考慮すると,以下のようになる。
【0111】
【数22】
【0112】
yの負の対数周辺尤度に付加される最後の項はヤコビ行列(ヤコビアン)(the Jacobian)であり,ヤコビ行列はワーピングが固定されていればハイパーパラメータに依存しないことに留意されたい。したがって,ヤコビ行列は,ハイパーパラメータの勾配の上昇/下降の最適化(gradient ascend/descend optimization of hyper parameters)に影響しないので,したがってハイパーパラメータのML-IIまたはMAP-II最適化を実行するときに無視することができる。
【0113】
この実施態様の変形例では,ワープ関数がガウス分布の逆累積密度関数(the inverse cumulative density function)Φ
−1(y)であり,この場合ヤコビアン項(the Jacobian term)は以下のように容易に見つけられる。
【0114】
【数23】
【0115】
このように発明者は,周辺尤度の負の対数についての分析式を導出し,これによってハイパーパラメータに関する周辺尤度の負の対数の勾配も導出したものであり,これによりハイパーパラメータを非常に処理効率の良いやり方で決定することができる。
【0116】
しかしながら,この実施態様の変形例では,上記共分散および尤度のハイパーパラメータを,経験に基づく推測を提供する類似状況からの経験(experience from similar situations to provide a qualified guess)を用いて,単純に設定することができる。特定の変形例では,上記ハイパーパラメータは,他の補聴器システムのユーザからの経験に基づいて設定される。
【0117】
他の変形例では,ワープ関数がハイパーパラメータを含むことができる。
【0118】
第10のステップでは,ユーザの内部応答関数p(
f|
z,X,
θ)の未知の関数値に関する解析的事後分布(analytical posterior distribution)が,ベイズルール(Bayes rule)に基づいて導出される。
【0119】
【数24】
【0120】
以前に与えられた新規のペアワイズガウス尤度(the novel pairwise Gaussian likelihood),ガウス過程を用いて導出された上記事前,上記尤度と上記事前の積のユーザの内部応答関数に関する積分としての周辺尤度を用いて,上記事後についての分析式は以下のように求めることができる。
【0121】
【数25】
【0122】
第11のステップにおいて,ユーザの内部応答関数の未知関数値についての予測分布のための分析式(analytical expression for the predictive distribution)が見つけられる。 完全ベイズモデル(full Bayesian modeling)では,予測は,観測
yが与えられたとき,またはワープされた観測
zが与えられたときに,新たな関数値
f*=[f(
x1*,…,f(
x*n*))]
Tの予測分布という観点から到来する。したがって,予測分布は条件付き分布(a conditional distribution)であり,上記条件は観測上のもののみである(the conditional is on the observations only)。 以下のように導出される。
【0123】
【数26】
【0124】
p(
f*|
f,X,X
*,
θcov)は,第8のステップを参照して記述したようにガウス過程によるガウス関数(Gaussian)であることに留意されたい。この実施形態では,上記事後分布は,p(
f|
z,X,
θ)=N(
f|
μ,
Σ)の形態におけるガウス分布であるので,上記積分に対する解は分析解を有し(the solution to the integral has an analytical solution),上記事後分布からの平均および共分散を挿入することによって,予測分布が以下のようにして与えられる。
【0125】
【数27】
【0126】
ここで上記予測分布の平均ベクトルを考慮し,これを
μ*で示すと,上記数式は以下のように与えられる。
【0127】
【数28】
【0128】
K*の項だけがX
*に属するパラメータ値設定に依存することがそこから直接的に導かれる。
【0129】
第12のステップにおいて,すべての利用可能な設定(すなわち集合X
*)のうちでユーザが好むパラメータ値設定を,X
*がn
*=1によって示される設定
x*のみを含む場合を考慮することによって見つけることができ,これによって以下が取得される。
【0130】
【数29】
【0131】
これは,単一の入力
x*を取得し(take),テストされたパラメータ値設定
xiのそれぞれについての共分散関数出力のベクトルを返す関数である。したがって,予測分布の平均値を,以下のような対応する平均関数値を返す単一のパラメータ値設定の関数として解釈することができる。
【0132】
【数30】
ここで行列Bはx
*に依存しないものである。
【0133】
単一の入力を取る関数としての平均値のこの解釈は,以下の勾配(the gradient)を用いることによって,入力x
*に関する予測分布の平均の(局所的)最大値を見つけることを可能にする。
【0134】
【数31】
【0135】
したがって,上記勾配についての解析式が利用可能であることに起因して,この発明は,すべての利用可能なパラメータ値設定の中からユーザが好むパラメータ値設定の推定を提供し,上記推定を,非常に限定された処理およびメモリ資源だけを用いて提供することができるということになる。
【0136】
しかしながら,この実施形態の変形例では,テストされる設定のうちユーザが好むパラメータ値設定を,ここでは,集合Xにおけるパラメータ値設定がユーザに従前に提示された設定と同じである(すなわち,Xに属する設定)ことを考慮することによって見つけることができ,したがって以下のようになる。
【0137】
【数32】
【0138】
したがって,以下のようになる。
【0139】
【数33】
【0140】
集合Xが典型的には限られたサイズのもの(limited size)であり,したがって勾配アプローチを用いることなく見つけることができるので,ユーザが好むパラメータ値設定の推定を,この実施形態より少ない処理およびメモリ資源を要求する方法を用いて,見つけることができる。
【0141】
しかしながら,この実施形態では,比較することをユーザが促される設定はランダムに選択されない。そうではなく,現在のベストのパラメータ値設定
x^ (太字のxの上部に^ が付随する記号,以下同じ)と比較されるべき次の新たな設定が,次の式によって与えられる,新たな二変量予測改善(bivariate Expected Improvement)を最大にするパラメータ値設定x ^
*として求められる。
【0142】
【数34】
【0143】
ここでΦ(μ
I/σ
I)はガウス分布の標準累積分布関数(standard cumulative distribution function of the Gaussian distribution)である。
【0144】
二変量予測改善の分析式についてのさらに具体的な利点は,二変量予測改善の勾配の分析式を導出できることである。
【0145】
【数35】
【0146】
二変量予測改善についての新たな分析式を導出するとき,発明者は,新たな(すなわちまだテストされていない)パラメータ値設定
x*の関数値f(
x*)をモデル化するガウス過程を用いると,新たなパラメータ値設定
x*の関数値は,現在の最大値
x^における関数値f(
x*)と共変動する(co-varies)ことを考慮した。オリジナルかつ周知(単変量)の予測改善式(Expected Improvement formulation)(以下,単にEIとも言う)はこれを考慮しない。そうではなく,EI式は,上記f(
x^)が確定的に(deterministically)定義されることを要求する。その結果,ガウス過程においてEIを用いると,最大点
μ^における平均関数値が,対応する関数値f(
x^)の決定論的結論(the deterministic prediction)として用いられ,第11のステップからの予測分布から利用可能な新たなパラメータ値設定についての関数値を用いた分散
σ^
2 および共分散の両方を無視する。非常に一般的なシナリオでは,これは,すべての利用可能な新たなパラメータ値設定
x *の中で,最大のEIを有するパラメータ値設定が現在の最大値
x^に任意に近い設定である(the setting that is arbitrarily close to the current maximum)という望ましくない結果をもたらす。したがって,EI基準は,共分散を無視するだけのために,現在の最大値に任意に近いポイントを示唆するものとなる。 発明者によって設計された二変量予測改善は,共分散が含まれるので,この望ましくない挙動を回避する。
【0147】
欠点としては,二変量予測改善アプローチは,第11ステップから,予測分布の共分散行列全体を計算しかつ保存する必要があることである。少数のパラメータ,たとえば3を超えるパラメータを用いるとすると,数十GBの利用可能なメモリであっても,共分散行列の大きさは補聴器システムのメモリに格納するには大きすぎることになる。したがって,発明者が二変量予測改善についての分析式を提供したことは重要な意味を持っており,それは,これによって共分散行列全体が計算されかつ格納されることを必要としない勾配上昇手順(gradient ascend procedure)を用いて最大化されることを可能とするからである。
【0148】
第1の実施態様の変形例では,次の新たな設定が,新たなかつ進歩的な二変量予測改善法を用いて決定されることを要しない。これに代えて,次の新たな設定を,単一の変動予測改善法(single variate Expected Improvement method)を用いて決定することができる。
【0149】
第1の実施態様の他の変形例では,発明者は,補聴器システム設定の任意のカスタマイズが,開示方法からの利点を得ることを見いだした。
【0150】
ここで,この発明による第2の実施態様による,補聴器システムにおけるパラメータをカスタマイズする方法を説明する。
【0151】
第1のステップにおいて,複数の補聴器システム・パラメータが,ユーザ・カスタマイズのために選択される。この実施態様によると,補聴器システムはグラフィカル・ユーザ・インターフェースを備え,ユーザはカスタマイズされるべきパラメータを選択することができる。この実施形態の変形例では,上記補聴器システムは,上記ユーザが,たとえばノイズ低減やリラックス音をカスタマイズするかどうかをメニューから選択することを提示されるように構成され,上記補聴器システムは,ユーザの選択に応答して,カスタマイズされるべき適切なパラメータを選択し,パラメータが変更されることが許可される範囲を選択する。
【0152】
第2のステップにおいて,ユーザは,2つの異なるパラメータ値設定の関数としての補聴器システムからの音響出力を比較して,互いについての2つの異なるパラメータ値設定のユーザの評価を表すユーザ応答(user response representing the user’s rating of the two different parameter value settings relative to each other)を提供することを促される。この実施形態では,補聴器システムはユーザが自己の評価を入力することができるグラフィカル・ユーザ・インターフェースを備える。
【0153】
第3のステップにおいて,複数のユーザ応答および対応するパラメータ値設定が少なくとも一時的に補聴器システムのメモリに保存され,その後に,パラメータ値設定は,n×nサイズの共分散行列
Kを決定するために用いられる。ここでnはテストされたパラメータ値設定の数であり,以下のように与えられる。
【0154】
【数36】
【0155】
ここでkは半正定共分散関数,たとえば二乗指数共分散関数であり,
x1,
x2,…,
xdは,異なるパラメータ値設定を表すベクトルである。
【0156】
第4のステップにおいて,m×mのサイズの行列
Mが提供され,ここでmは提供されるユーザ応答の数であり,
Mは,[
M]
k,uk=1かつ[
M]
k,vk=−1を除いてゼロのみから構成され,インデックスkは,k番目のユーザ応答を表し,インデックスu
kおよびv
kは,k番目のユーザ応答を促すために用いられるパラメータ値設定を表す。
【0157】
この実施態様の変形例では,テストされたパラメータ値設定のうちユーザが好むパラメータ値設定
x^が,以下のように与えられる。
【0158】
【数37】
【0159】
ここでσ
2は独立かつ同一に分布するガウス雑音であり,段階的応答を実行するときのユーザの不確実性を表しており,ここで
zは提供されるユーザ応答から導出されるベクトルである。
【0160】
この実施態様では,σ
2は,この発明の第1実施態様において詳細に説明したようなMAP-II最適化に基づいて決定され,上記ベクトル
zは,これもこの発明の第1の実施態様において詳細に説明したように,有界ユーザ応答(bounded user responses)のベクトル
yから導出される。
【0161】
ここで
図1を参照して,
図1はこの発明の第3の実施態様による補聴器システム100をかなり概略的に示している。補聴器システム100は,補聴器101および外部装置102を備えている。上記外部装置102は,グラフィカル・ユーザ・インターフェース103,パラメータ設定セレクタ104,パラメータ・メモリ105および最適化パラメータ推定器106を備えている。上記補聴器101は,音声入力(オーディオ・インプット)107,補聴器デジタル信号処理装置(DSP)108,パラメータ・コントローラ109および電気−音響出力トランスデューサ110を備えている。
【0162】
はじめに,上記グラフィカル・ユーザ・インターフェース103は,補聴器システムのユーザ111が補聴器システムのユーザの好みに対するカスタマイズのために複数の補聴器パラメータを選択できるように構成される。上記パラメータ・メモリ105は,変動が許容されるパラメータの範囲といった,カスタマイズのために選択することができるパラメータにおける情報を保持する。
【0163】
パラメータ設定セレクタ104は,補聴器ユーザ111によって評価される次の2つのパラメータ値設定が決定されることを可能にするアルゴリズムを含み,上記パラメータ設定セレクタ104はさらに補聴器101のパラメータ・コントローラ109に送信される上記2つのパラメータ値設定を提供するように構成されている。
【0164】
パラメータ・コントローラ109は,音声が補聴器において合成的に生成される場合には音声入力107を,上記音声入力107からの音声を生成するときに上記補聴器DSP108が評価されるべきパラメータを用いる場合に補聴器デジタル信号処理装置108を,それぞれ制御するように構成される。
【0165】
音声入力107は,たとえばリラックス音を表す人工的に生成された電気信号を提供するか,または一または複数の音響−電気トランスデューサから受信される信号をリレーすることができる。
【0166】
補聴器DSP108は,上記音声入力107から受信された音声を表す電気信号を処理し,かつ処理信号を電気−音響トランスデューサ110に提供するように構成されており,ユーザが聴覚欠損を蒙っている可聴周波数範囲の部分の周波数において音声を増幅することによって聴覚損失を緩和する。
【0167】
最適化パラメータ推定器106は,補聴器システムのユーザ111によって提供されるユーザ応答および前の実施形態を参照して詳細に記載したように評価されたパラメータ値設定に基づいて,補聴器システムのユーザ111が好むパラメータ値設定を推定するように構成されている。最適化パラメータ推定器106はさらに上記好ましいパラメータ設定を補聴器に提供するように構成されており,補聴器における上記パラメータ設定を調整し,これによってカスタマイズ処理を終了する。これはユーザが所定数の評価を実行したことに応答して,または他のなんらかの収束基準(some other convergence criteria)が満たされたことに応答して,これをトリガするユーザ入力に応答して行うことができる。
【0168】
前の実施形態の変形例によると,カスタマイズ処理は,複数の少なくとも疑似ランダムに選択されたパラメータ値設定についての予測改善の結合度合(the combined magnitude of the Expected Improvement)が所定の閾値未満である場合に収束したものとみなされる。
【0169】
一般に,特定の実施形態に関して説明した変形例は,他の開示された実施形態について考えられる変形例についても適用可能である。
【0170】
これは,開示された方法を,補聴器システム設定の任意のタイプの最適化(すなわちカスタマイズ)に用いることができるという事実に特に当てはまる。
【0171】
これは,共分散関数および尤度関数の両方についてのハイパーパラメータの値を選択する方法についても当てはまる。
【0172】
さらに,これは,マッピング(ワーピングという言うこともできる)技術が適用されるかどうかについて当てはまる。
【0173】
ユーザによって評価される次のパラメータ値設定を決定する方法についても同様にあてはまる。新規かつ進歩性のある二変量予測改善法は非常に有利であるが,この発明は次のパラメータ値設定を決定する特定の方法には依存しない。
【0174】
カスタマイズされるべきパラメータが補聴器システムにおいてどのように音声を処理するかを制御するために用いられるかどうか,または補聴器システムによってどのように音声が人工的に生成されるかを制御するために用いられるかどうかは,特定の実施形態に同様に無関係である。
【0175】
すなわち,たとえば補聴器システムのパラメータが,ユーザのカスタマイズのためにどのように提供され,提示されまたは選択されるか(provided or offered or selected)は特定の実施形態に依存しない。ユーザ応答を提供する方法についても特定の実施形態に依存しない。
【0176】
本願の開示において,ユーザの内部応答関数の未知の関数値についての分布は,主要には,ハイパーパラメータが明示的に現れるように表現される。しかしながら,これが当てはまらない場合には,当然ではあるが,ハイパーパラメータは暗黙的に開示されると仮定される。