【0016】
本発明の一態様では、本発明の睫毛化粧料は複合樹脂コアシェル型ポリマーエマルションを実質的に含有しない。ここで、上記複合樹脂コアシェル型ポリマーエマルションとは、以下の工程(1)〜(4);
(1)エステル基含有(メタ)アクリル酸単量体を含有する重合性単量体であって、これを重合させて得られる重合体のガラス転移温度が95℃以上、105℃以下となる重合性単量体((b)成分)の存在下で、ポリプロピレングリコールと、ジメチロールプロピオン酸と、脂肪族又は脂環式多価イソシアネートとを反応させてイソシアネート基及びカルボキシル基を含有するウレタンプレポリマー((a)成分)を生成させ、(a)成分及び(b)成分の混合液を得る工程、
(2)(1)で得られた(a)成分及び(b)成分の混合液中の(a)成分が含有するカルボキシル基を当量のトリエタノールアミンを用いて中和して、(a)成分の中和物及び(b)成分の混合液を得る工程、
(3)(2)で得られた(a)成分の中和物及び(b)成分の混合液を、水性媒体中に乳化分散させて乳化液を得る工程、
(4)(3)で得られた乳化液中の(b)成分を重合させて、複合樹脂コアシェル型ポリマーエマルジションを得る工程
の各工程を順次行うことにより得られ、工程(1)において、ポリプロピレングリコールとして、数平均分子量1000のポリプロピレングリコールと数平均分子量2000のポリプロピレングリコールの2種を94:6〜92:8(質量比)の割合で使用し、混合液中の(a)成分と(b)成分との割合が、(a)成分:(b)成分(純分質量比)=50:50〜60:40である複合樹脂コアシェル型ポリマーエマルションを意味する。
「実質的に含有しない」とは、 例えば固形分換算 で1質量% を超える量(又は1質量%以上 )を含有しない、より好ましくは固形分換算で0.5 質量%を超える量(又は0.5質量%以上)を含有しないことを意味する。
【実施例】
【0018】
以下、具体例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の技術的範囲を何ら限定するものではない。当業者は要求される耐水性、温水洗浄容易性、カール力、その他の条件に応じて適宜配合を調整できる。なお、以下の実施例及び比較例における配合量(含有量)は全て質量%である。
【0019】
<極性溶媒の比較1>
試料作製
皮膜剤として、ポリウレタン−35(BAYCUSAN C1010(ポリウレタン−35を約40%含有)、Covestro Deutschland AG製)を用いた。
各実施例では、皮膜剤総量に対し各極性溶媒が10%になるように、各極性溶媒添加した。
耐皮脂性、耐水性、温水洗浄容易性、乾燥性、安定性、破断強度(水浸時)については、皮膜剤と極性溶媒を混合したものをドクターブレードでガラスプレート上に60μmに塗り広げ2時間乾燥させたものを試料として用いた。
伸縮性については、シリコーン型に、皮膜剤と極性溶媒を混合したものを2g流し入れ、45℃の恒温槽で3時間以上乾燥させ、均一で厚い膜を形成させ、型から取り出した皮膜を0.2cm×5cmに切り抜き、5kgの重しを載せて平坦にし、放冷したものを試料として用いた。
【0020】
評価試験
【0021】
耐皮脂性
人工皮脂(トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(O.D.O、日清オイリオグループ(株)製)を2滴試料上に垂らし、1分静置して拭き取ったのち、その表面状態を観察し、5人のパネラーで以下の基準で評価した。全員一致で表1に示す評価となった。
○:・・・皮膜に変化がない
△:・・・皮膜がわずかにベタつく
×:・・・皮膜が著しくベタつく、はがれる
【0022】
耐水性(24時間液浸試験)
試料を室温で水に24時間液浸し、5秒、10分、30分、60分、24時間で試料を撮影した。
図1は皮膜剤のみで試料を作成した比較例(例1)である。
図2〜5はそれぞれ極性溶媒としてエトキシジグリコール(例2)、炭酸プロピレン(例3)、ジアセトンアルコール(例4)、又はクエン酸トリエチルエステル(例5)を用いて試料を作成した実施例である。
皮膜が白く濁るのは、水に膨潤しているためと考えられる。例1、5の60分後以降では、液浸させた水へ試料が分散してしまった。
撮影結果を5人のパネラーで以下の基準で2段階評価したところ、全員一致で表1に示す評価となった。
○:耐水性が良い
×:耐水性が悪い
【0023】
温水洗浄容易性
試料を約40℃の温水に10秒浸漬し、5人のパネラーに10回程度指でこすってもらい、以下の基準で評価した。全員一致で表1に示す評価となった。
○:・・・すべて落ちる
△:・・・5割〜9割程度落ちる
×:・・・落ちない
なお、「落ちる」とは、溶ける又は剥離することを意味する。
【0024】
乾燥性
試料をガラスプレートに塗り終わった瞬間から、皮膜の色が透明になるまでの時間を5人のパネラーで計測し、その平均値を求め、以下の基準で評価した。
○:7分未満
△:7分以上9分未満
×:9分以上
【0025】
安定性
各試料をガラス瓶に入れ、45℃で1週間〜1ヶ月静置した後の各試料の状態を、目視や粘度計測により、5人のパネラーで以下の基準で評価した。全員一致で表1に示す評価となった。
○:・・・変化なし
△:・・・やや増粘・減粘する
×:・・・著しく増粘・減粘する、凝集物がある、または気体が発生している。
【0026】
破断強度(水浸時)
試料を約40℃の温水に浸漬し、5人のパネラーに手で引きちぎってもらい、破断強度の官能評価を1(とても弱い)〜5(とても強い)で判定し、その平均値を以下の基準で評価した。
○:3.5以上
△:1.5以上3.5未満
×:1.5未満
【0027】
伸縮性
試料を5人のパネラーに手で引きちぎってもらい、伸縮性の官能評価を1(まったく伸びない)〜5(良く伸びる)で判定し、その平均値を以下の基準で評価した。
○:4.0以上
△:2.5以上4.0未満
×:2.5未満
【0028】
評価結果を表1に示す。例1
、3、及び5は比較例である。例2
及び4は実施例である。
【表1】
【0029】
<カール力>
処方
表2にしたがって2種の睫毛化粧料を処方した。
【表2】
【0030】
評価方法
つけ睫毛(ガールズシークレット01、発売元(株)エリザベス)を用意し、1束毎に解体する。そのうちの1束を、垂直に立てたプラスチック板に、毛が垂直下向きになるようにつけ睫毛の根元を貼り(
図6、7を参照)、ビューラーでカールさせ上記処方(例6〜10)の睫毛化粧料を30回塗布した。塗布前及び塗布5分後のカール底面から毛先までの角度を測定した(
図6、7を参照)。測定結果を表3に示す。
【0031】
【表3】
【0032】
試験の結果、例7の処方は比較例(例6)よりもカール力が向上した。これは、乾燥性及び伸縮性が向上したことに起因しているものと考えられる。すなわち、乾燥時に皮膜の収縮がより強く起こり、カール力を上げているものと考えられる。エトキシジグリコールを皮膜剤と極性溶媒の和に対して10%(例7)から0.1%(例8)に変えたとき、例8の処方は例7の処方ほどは高いカール力は観察されなかったが、例6(極性溶媒なし)よりは高いカール力が得られた。また、その効果は皮膜剤濃度が少ない時(皮膜剤と極性溶媒の和を30%(例7)から1%(例9)に変更)でも確認できた。