(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る共振型電力伝送システムの構成例を示すブロック図である。
共振型電力伝送システムは、
図1に示すように、送信側共振器13を有する送信装置1と、受信側共振器21を有する受信装置2とを備えている。この共振型電力伝送システムは、受信側共振器21が送信側共振器13に近づくことで、送信装置1から受信装置2へ電力伝送を行うものである。
【0012】
送信装置1は、
図1に示すように、一次電源11、送信電源12及び送信側共振器13を有している。
【0013】
一次電源11は、直流又は交流の電力を出力するものである。
送信電源12は、一次電源11からの直流又は交流の電力(入力電力)を、送信側共振器13の共振周波数に合わせた電力(高周波電力)に変換して出力するものである。また、送信電源12は、自身の保護機能により、受信側共振器21が送信側共振器13に近づくことにより変化する送信電源12に関するパラメータを検出する機能(パラメータ検出部)を有している。この送信電源12は、
図1に示すように、インバータ回路121、入力検出部122、電源パラメータ検出部123及び出力検出部124を有している。
【0014】
インバータ回路121は、一次電源11からの入力電力を、送信側共振器13に出力するための高周波電力に変換するものである。
入力検出部122は、一次電源11から送信電源12に入力される電力に関するパラメータを検出するものである。この際、入力検出部122は、送信電源12の入力電流、入力電圧のうち少なくとも1つ以上を検出する。
【0015】
電源パラメータ検出部123は、送信電源12内部のインバータ回路121に関するパラメータを検出するものである。この際、電源パラメータ検出部123は、例えば、インバータ回路121の共振電圧、共振電流、共振電圧と共振電流の位相、反射電力、インバータ回路121内のスイッチング素子のドレイン−ソース間の電圧Vds又は電流Ids、インバータ回路121内の素子(FET(Field Effect Transistor)、キャパシタ、インダクタ等)の発熱等のうち少なくとも1つ以上を検出する。
【0016】
出力検出部124は、送信電源12から出力された電力(インバータ回路121により変換された高周波電力)に関するパラメータを検出するものである。この際、出力検出部124は、例えば、インバータ回路121からの出力電圧又は出力電流(位相、振幅、実効値、周波数)、透過電力、反射電力等のうち少なくとも1つ以上を検出する。
【0017】
なお、入力検出部122、電源パラメータ検出部123及び出力検出部124は、受信側共振器21が送信側共振器13に近づくことにより変化する送信電源12に関するパラメータを検出するパラメータ検出部を構成する。そして、このパラメータ検出部の機能は、送信電源12が通常に有している保護機能(電源の破壊を防止するための機能)を兼用することで実現可能であり、専用回路は不要である。また
図1では、パラメータ検出部として、入力検出部122、電源パラメータ検出部123及び出力検出部124を全て有している場合を示しているが、これらの検出部122〜124のうち少なくとも1つ以上有していればよい。なお、複数のパラメータを検出することで、共振条件の調整精度を向上させることができる。
【0018】
送信側共振器13は、送信電源12からの高周波電力の周波数と同一周波数で共振し、受信装置2の受信側共振器21に対して電力伝送を行うものである。
【0019】
受信装置2は、
図1に示すように、受信側共振器21及び受信回路22を有している。
受信側共振器21は、送信側共振器13の共振周波数と同一周波数で共振することで電力を受信し、交流電力を出力するものである。
【0020】
受信回路22は、整流回路221、DC/DCコンバータ222及び負荷223を有している。
整流回路221は、受信側共振器21からの交流電力を直流電力に変換するものである。
DC/DCコンバータ222は、整流回路221から入力された直流電力を任意の電圧へ変換し、負荷223へ供給するものである。
なお
図1に示す受信回路22において、負荷223はバッテリであってもよい。
【0021】
また、送信側共振器13と受信側共振器21との共振結合による電力伝送方式は特に限定されるものではなく、磁界共鳴による方式、電界共鳴による方式、電磁誘導による方式、接触型の共振結合方式のいずれであってもよい。
【0022】
次に、本発明の共振器の構成について、
図2を参照しながら説明する。なお以下では、送信側共振器13を例に説明を行う。
送信側共振器13は、
図2に示すように、送信コイル(電力伝送用アンテナ)131及び誘電体132を有している。
【0023】
送信コイル131は、スパイラル型又はヘリカル型等のコイルであり、その形状は、円形、楕円形又は長方形等任意の形状でよい。なお
図2の例では、送信コイル131が、楕円形のスパイラル型に構成された場合を示している。
【0024】
誘電体132は、送信コイル131の軸方向に垂直な面に対向配置され、当該送信コイル131と対向する面積及び当該送信コイル131との距離のうちの少なくとも一方が可変であるものである。この誘電体132は、セラミック又はアクリル等により構成される。なお
図2の例では、誘電体132が、送信コイル131の両面にそれぞれ対向配置された場合を示している。また
図2の例では、誘電体132が、軸心を中心に放射状に複数分割されて、ピース1321毎に分離可能に構成された場合を示している。
図2において、誘電体132は、単一の部材から構成してもよいし、誘電率が異なる複数の部材から構成してもよい。
【0025】
図2に示す構成において、誘電体132が送信コイル131と対向する面積を可変に構成されている場合には、例えば
図3に示すように、誘電体132の任意のピース1321を面内に平行な方向に移動させる。これにより、送信側共振器13の寄生容量を変化させることができ、共振条件を調整することができる。
【0026】
また、
図2に示す構成において、誘電体132が送信コイル131と対向する距離を可変に構成されている場合には、例えば
図4に示すように、誘電体132の任意のピース1321を面内に垂直な方向に移動させる。これにより、送信側共振器13の寄生容量を変化させることができ、共振条件を調整することができる。
なおここでは、
図3,4に示すような誘電体132の移動は、手動で行うものとする。また、誘電体132の移動方法は、共振器の設置スペース等に応じて適宜選択される。
【0027】
なお
図2では、送信側共振器13に誘電体132を設けた場合について示したが、送信側共振器13及び受信側共振器21のうちの少なくとも一方に誘電体132が設けられていればよい。受信側共振器21に誘電体132を設ける場合にも、送信側共振器13に誘電体132を設ける場合と同様に構成される。
【0028】
次に、共振条件の調整例について、
図5,6を参照しながら説明する。なお以下では、
図2の構成を用い、送信側共振器13の誘電体132を移動させることで、共振条件を調整する場合を例に説明を行う。
図5では、受信側共振器21に接続されている負荷223が変動した場合、又は送信側共振器13と受信側共振器21との間に異物が存在する場合での共振条件の調整例を示している。なお、通常状態での共振器の共振周波数f
0は下式(1)で表される(
図5の実線、f
0)。
f
0=1/2π√(LC
0)(1)
ここで、Lは共振器のインダクタンスであり、C
0は共振器の寄生容量である。
【0029】
そして、
図5に示すように、受信側共振器21に接続されている負荷223が変動した場合、又は送信側共振器13と受信側共振器21との間に異物が存在する場合、共振器の共振条件が変動する(
図5の破線、f
1)。なお、共振条件の変動は、送信電源12のパラメータ検出部による検出結果から得る。
この場合、
図2に示す送信側共振器13の誘電体132の任意のピース1321を移動させて、送信側共振器13の寄生容量が小さくなるように変化させる(C0>C1)。これにより、共振周波数をf
1からf
0’に調整することができ、共振条件を初期状態へ戻すことができる(
図5の実線、f
0’)。なお、共振条件を調整後の共振周波数f
0’は下式(2)で表される。
f
0’=1/2π√(LC
1)>f
1 (2)
【0030】
図6では、送信側共振器13と受信側共振器21との距離が近い場合での共振条件の調整例を示している。
図6に示すように、送信側共振器13と受信側共振器21との距離が近づくと、共振条件の周波数軸上の伝送効率ηが双峰特性となり、共振周波数f
0での伝送効率ηが低下する(
図6の破線)。なお、共振条件の変動は、送信電源12のパラメータ検出部による検出結果から得る。
この場合、
図2に示す送信側共振器13の誘電体132の任意のピース1321を移動させて、送信側共振器13の寄生容量を変化させる。これにより、共振周波数f
1で高い伝送効率ηとなるように共振条件を調整することができる(
図6の実線)。
【0031】
なお本発明では、
図5,6に示すように、誘電体132をずらすことで共振条件を調整することが可能なため、共振型電力伝送システムでの使用周波数を広帯域化することも可能である。
【0032】
以上のように、この実施の形態1によれば、送信コイル131及び不図示の受信コイル(電力伝送用アンテナ)のうちの少なくとも一方のコイルの軸方向に垂直な面に対向配置され、当該コイルと対向する自身の面積及び自身と当該コイルとの距離のうちの少なくとも一方が可変である誘電体132を備えたので、電力伝送用アンテナの共振条件を調整可能であり、且つ従来技術よりも高電圧及び高電流でも電力伝送を可能とすることができる。すなわち、従来構成のような外部回路を用いずに共振条件を可変できるため、外部回路の素子の定格(電圧、電流等)による制約がなく、大電力化が容易である。
また、誘電体132を移動させることで共振条件を調整するため、共振特性を離散的ではなく連続的に変化させることが可能である。これによって、細かい調整が可能となり、共振特性を目標値に一致させることができる。
【0033】
なお
図2では、誘電体132を、送信コイル131の両面にそれぞれ対向配置した場合を示したが、片面にのみ設けてもよい。ただし、誘電体132を送信コイル131の両面に設けた方が、片面にのみ設けた場合に対して寄生容量を増加させることができる。
【0034】
なお
図2では、誘電体132を複数に分割し、ピース1321を面内に平行な方向に移動させることで、送信コイル131と対向する面積を変える場合について示した。しかしながら、これに限るものではなく、例えば
図7に示すように、誘電体132全体を面内で回転させることで、送信コイル131と対向する面積を変えるようにしてもよい。なおこの場合には、送信コイル131及び誘電体132を、誘電体132を回転させた際に対向面積が変化するような形状にそれぞれ構成する。
【0035】
また
図2では、誘電体132の分割形状を放射形状とした場合について示した。しかしながら、これに限るものではなく、例えば、
図8に示すような同心円形状としてもよいし、
図9に示すような四角形状としてもよい。
【0036】
なお
図2において、送信コイル131を内部に埋め込む第2の誘電体を設けてもよい。これにより、送信コイル131の寄生容量をさらに増加させることができる。
また
図2において、誘電体132に溝、小穴等の空隙を設け、誘電体132の内部に、ガス(炭酸ガス、窒素等)、ジェル状、液状(水、酢等)又は粉状の第3の誘電体を挿入してもよい。
【0037】
また
図2において、誘電体132を、電圧が印加されることで比誘電率が変化する誘電体層を複数重ねて構成してもよい。この場合には、送信側共振器13に、誘電体132を構成する誘電体層間に電圧を印加する電圧印加部がさらに設けられる。これにより、送信コイル131の寄生容量の変化を微調整することができる。また、共振器の設置スペースによっては、誘電体132を移動可能な範囲に限りがあるため、その場合に比誘電率を変化させることで、共振条件の調整範囲を広げることができる。
【0038】
また上記の各変形例は、受信側共振器21に誘電体132を設けた場合にも同様に適用可能である。
【0039】
また上記において、誘電体132の移動は、手動で行うことを想定して説明を行ったが、自動化してもよい。この場合、例えば
図10(a)に示すように、誘電体132のピース1321毎にシリンダ5を取付けて、このシリンダ5によってピース1321を面内に平行な方向に移動させてもよい。また、例えば
図10(b)に示すように、切れ込みを入れた誘電体132を用い、この誘電体132の中心にモータ6を取付ける。そして、このモータ6により誘電体132をめくるように開閉してもよい。
【0040】
また上記では、送信電源12のパラメータ検出部による検出結果から共振条件のずれを検出する場合を示した。しかしながら、これに限るものではなく、共振条件のずれを検出できる方法であればよく、共振条件のずれを検出可能な外部回路を共振型電力伝送システムに追加してもよい。
【0041】
実施の形態2.
図11はこの発明の実施の形態2に係る共振器の構成を示す図である。この
図11に示す実施の形態2に係る共振器は、
図2に示す実施の形態2に係る共振器に磁性体133を追加したものである。その他の構成は同様であり、同一の符号を付してその説明を省略する。なお
図11では、送信側共振器13を例に説明を行う。
【0042】
磁性体133は、送信コイル131の受信コイルとの対向面とは反対側の面に対向配置されたものである。この磁性体133は、フェライト又はアモルファス等の透磁率を有する部材で構成される。磁性体133は、
図11に示すようなシート状でもよいし、磁性塗料でもよい。このように、磁性体133を送信コイル131付近に配置することで、送信側共振器13のインダクタンス(式(1)のL)が増加し、共振条件を調整することができる。また、磁性体133を設けることで、共振器からの放射電磁界をシールドする効果も得られる。
なお、誘電体132と同様に、磁性体133を複数に分割してピース毎に分離可能に構成してもよい。
【0043】
また
図11では、送信側共振器13に誘電体132を設ける場合について示したが、誘電体132が受信側共振器21に設けられている場合には当該受信側共振器21に磁性体133を設けてもよい。なお、受信側共振器21に磁性体133を設ける場合にも、送信側共振器13に磁性体133を設けた場合と同様に構成される。
【0044】
また、
図11に示す構成に、磁性体133の温度を変えて透磁率を調整するために温度を制御する温度制御部を設けてもよい。この温度制御部としては、電熱線又はシート状のヒータ等が挙げられる。この温度制御部により磁性体133の温度を制御することで、磁性体133の比透磁率を可変し、共振条件を調整することができる。
【0045】
実施の形態3.
図11では、送信側共振器13に磁性体133を設けた場合について示した。それに対し、
図12に示すように、磁性体133を、対向する送信コイル131との距離を可変とするように構成してもよい。このように、磁性体133と送信コイル131との距離を可変とすることによっても、共振条件を調整することができる。なお
図12では、送信側共振器13を例に説明を行ったが、受信側共振器21に磁性体133が設けられる場合にも同様である。
【0046】
なお実施の形態1〜3では、本発明の共振器を
図1に示すような共振型電力伝送システムに適用した場合について示した。しかしながら、これに限るものではなく、他の電力伝送システムにも本発明の共振器を同様に適用可能である。
【0047】
また、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。