特許第6293363号(P6293363)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6293363
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】共振型電力伝送システム及び共振器
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20180305BHJP
   H01F 38/14 20060101ALI20180305BHJP
   H02J 50/70 20160101ALI20180305BHJP
【FI】
   H02J50/12
   H01F38/14
   H02J50/70
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-505904(P2017-505904)
(86)(22)【出願日】2015年3月16日
(86)【国際出願番号】JP2015057666
(87)【国際公開番号】WO2016147293
(87)【国際公開日】20160922
【審査請求日】2017年2月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123434
【弁理士】
【氏名又は名称】田澤 英昭
(74)【代理人】
【識別番号】100101133
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 初音
(74)【代理人】
【識別番号】100199749
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 成
(74)【代理人】
【識別番号】100188880
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 辰哉
(74)【代理人】
【識別番号】100197767
【弁理士】
【氏名又は名称】辻岡 将昭
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】阿久澤 好幸
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 有基
(72)【発明者】
【氏名】松盛 裕志
【審査官】 高橋 優斗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−135717(JP,A)
【文献】 特開2003−221277(JP,A)
【文献】 特開2005−101706(JP,A)
【文献】 特開2013−034371(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/137495(WO,A1)
【文献】 特開2010−279239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F38/14,
H02J7/00−7/12,
H02J7/34−7/36,
H02J50/00−50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信コイルを有する送信側共振器と受信コイルを有する受信側共振器との間で固有の共振周波数で電力伝送を行う共振型電力伝送システムにおいて、
前記送信コイル及び前記受信コイルのうちの少なくとも一方のコイルの軸方向に垂直な面に対向配置され、当該コイルと対向する自身の面積及び自身と当該コイルとの距離のうちの少なくとも一方が可変である誘電体を備え、
前記誘電体は、各々分離可能であり、誘電率が異なる複数の部材から構成された
ことを特徴とする共振型電力伝送システム。
【請求項2】
送信コイルを有する送信側共振器と受信コイルを有する受信側共振器との間で固有の共振周波数で電力伝送を行う共振型電力伝送システムにおいて、
前記送信コイル及び前記受信コイルのうちの少なくとも一方のコイルの軸方向に垂直な面に対向配置され、当該コイルと対向する自身の面積及び自身と当該コイルとの距離のうちの少なくとも一方が可変であり、電圧が印加されることで比誘電率が変化する誘電体層を複数重ねて構成された誘電体と、
前記誘電体の誘電体層間に電圧を印加する電圧印加部とを備えた
ことを特徴とする共振型電力伝送システム。
【請求項3】
送信コイルを有する送信側共振器と受信コイルを有する受信側共振器との間で固有の共振周波数で電力伝送を行う共振型電力伝送システムにおいて、
前記送信コイル及び前記受信コイルのうちの少なくとも一方のコイルの軸方向に垂直な面に対向配置され、当該コイルと対向する自身の面積及び自身と当該コイルとの距離のうちの少なくとも一方が可変である誘電体と、
前記コイルの他コイルとの対向面とは反対側の面に対向配置された磁性体と、
前記磁性体の温度を制御する温度制御部とを備えた
ことを特徴とする共振型電力伝送システム。
【請求項4】
前記誘電体は、複数に分割されて各々分離可能に構成された
ことを特徴とする請求項2又は請求項記載の共振型電力伝送システム。
【請求項5】
前記コイルを内部に埋め込んだ第2の誘電体を備えた
ことを特徴とする請求項1から請求項のうちの何れか1項記載の共振型電力伝送システム。
【請求項6】
前記コイルの他コイルとの対向面とは反対側の面に対向配置された磁性体を備えた
ことを特徴とする請求項1又は請求項記載の共振型電力伝送システム。
【請求項7】
前記磁性体は、前記コイルとの距離が可変である
ことを特徴とする請求項又は請求項記載の共振型電力伝送システム。
【請求項8】
前記送信側共振器と前記受信側共振器とは、磁界共鳴により電力伝送を行う
ことを特徴とする請求項1から請求項のうちの何れか1項記載の共振型電力伝送システム。
【請求項9】
前記送信側共振器と前記受信側共振器とは、電界共鳴により電力伝送を行う
ことを特徴とする請求項1から請求項のうちの何れか1項記載の共振型電力伝送システム。
【請求項10】
前記送信側共振器と前記受信側共振器とは、電磁誘導により電力伝送を行う
ことを特徴とする請求項1から請求項のうちの何れか1項記載の共振型電力伝送システム。
【請求項11】
他コイルとの間で固有の共振周波数で電力伝送を行うコイルを有する共振器において、
前記コイルの軸方向に垂直な面に対向配置され、当該コイルと対向する面積及び当該コイルとの距離のうちの少なくとも一方が可変である誘電体を備え、
前記誘電体は、各々分離可能であり、誘電率が異なる複数の部材から構成された
ことを特徴とする共振器。
【請求項12】
他コイルとの間で固有の共振周波数で電力伝送を行うコイルを有する共振器において、
前記コイルの軸方向に垂直な面に対向配置され、当該コイルと対向する面積及び当該コイルとの距離のうちの少なくとも一方が可変であり、電圧が印加されることで比誘電率が変化する誘電体層を複数重ねて構成された誘電体と、
前記誘電体の誘電体層間に電圧を印加する電圧印加部とを備えた
ことを特徴とする共振器。
【請求項13】
他コイルとの間で固有の共振周波数で電力伝送を行うコイルを有する共振器において、
前記コイルの軸方向に垂直な面に対向配置され、当該コイルと対向する面積及び当該コイルとの距離のうちの少なくとも一方が可変である誘電体と、
前記コイルの他コイルとの対向面とは反対側の面に対向配置された磁性体と、
前記磁性体の温度を制御する温度制御部とを備えた
ことを特徴とする共振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、送信コイルを有する送信側共振器と受信コイルを有する受信側共振器との間で固有の共振周波数で電力伝送を行う共振型電力伝送システム及び共振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の共振型電力伝送システムとして、誘電体セラミック材料を主成分として含む支持部材により、共振器のコイルを支持したものが知られている(例えば特許文献1参照)。この支持部材により、共振器の寄生容量が増加して共振特性の確保が容易となり、共振器の小型化が可能となる。また、コイルの線長を短縮化できるため、導体損失が低下する。よって、導体損失に起因する共振器の発熱を抑制することができる。
【0003】
また、アンテナ(コイル)を誘電体に埋め込むことで、誘電率を高めたものも知られている(例えば非特許文献1参照)。これにより、アンテナの静電容量を増加させることができ、アンテナの共振周波数を低周波化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−138509号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】2013年電子情報通信学会総合大会BCS−1−15「誘電体装荷テープ構造を用いた無線電力伝送用スパイラルアンテナに関する検討」名古屋工業大学
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、特許文献1及び非特許文献1に開示された従来構成では、誘電体を用いて共振器の共振周波数を低下させている。しかしながら、これらの従来構成では、送信側共振器と受信側共振器との間の距離の変動、及び受信側共振器に接続されている負荷の変動に対する対策はされていない。すなわち、上記変動によって共振条件がずれた場合、従来構成では、共振キャパシタ等の素子から成る外部回路を用いて共振特性を一定に保つ必要がある。しかしながら、この外部回路では、素子の定格(電圧、電流)による制約のため、高電圧及び高電流の条件下で使用することができないという課題がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、電力伝送用アンテナの共振条件を調整可能であり、且つ従来技術よりも高電圧及び高電流でも電力伝送を可能とする共振型電力伝送システム及び共振器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る共振型電力伝送システムは、送信コイルを有する送信側共振器と受信コイルを有する受信側共振器との間で固有の共振周波数で電力伝送を行う共振型電力伝送システムにおいて、送信コイル及び受信コイルのうちの少なくとも一方のコイルの軸方向に垂直な面に対向配置され、当該コイルと対向する自身の面積及び自身と当該コイルとの距離のうちの少なくとも一方が可変である誘電体を備え、誘電体は、各々分離可能であり、誘電率が異なる複数の部材から構成されたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、上記のように構成したので、電力伝送用アンテナの共振条件を調整可能であり、且つ従来技術よりも高電圧及び高電流でも電力伝送を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明の実施の形態1に係る共振型電力伝送システムの構成例を示すブロック図である。
図2】この発明の実施の形態1に係る共振器の構成例を示す図であり、(a)斜視図であり、(b)上面図である。
図3】この発明の実施の形態1における誘電体の、コイルとの対向面積を可変する場合の動作例を示す斜視図である。
図4】この発明の実施の形態1における誘電体の、コイルとの距離を可変する場合の動作例を示す斜視図である。
図5】この発明の実施の形態1に係る共振器での、共振条件の調整例を示す図である。
図6】この発明の実施の形態1に係る共振器での、共振条件の調整例を示す図である。
図7】この発明の実施の形態1に係る共振器において、誘電体とコイルとの対向面積を可変する場合の別の動作例を示す上面図である。
図8】この発明の実施の形態1に係る共振器の別の構成例を示す上面図である。
図9】この発明の実施の形態1に係る共振器の別の構成例を示す上面図である。
図10】この発明の実施の形態1に係る共振器において、誘電体とコイルとの対向面積を可変する場合の動作を自動化した例を示す模式図である。
図11】この発明の実施の形態2に係る共振器の構成例を示す斜視図である。
図12】この発明の実施の形態3に係る共振器の構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る共振型電力伝送システムの構成例を示すブロック図である。
共振型電力伝送システムは、図1に示すように、送信側共振器13を有する送信装置1と、受信側共振器21を有する受信装置2とを備えている。この共振型電力伝送システムは、受信側共振器21が送信側共振器13に近づくことで、送信装置1から受信装置2へ電力伝送を行うものである。
【0012】
送信装置1は、図1に示すように、一次電源11、送信電源12及び送信側共振器13を有している。
【0013】
一次電源11は、直流又は交流の電力を出力するものである。
送信電源12は、一次電源11からの直流又は交流の電力(入力電力)を、送信側共振器13の共振周波数に合わせた電力(高周波電力)に変換して出力するものである。また、送信電源12は、自身の保護機能により、受信側共振器21が送信側共振器13に近づくことにより変化する送信電源12に関するパラメータを検出する機能(パラメータ検出部)を有している。この送信電源12は、図1に示すように、インバータ回路121、入力検出部122、電源パラメータ検出部123及び出力検出部124を有している。
【0014】
インバータ回路121は、一次電源11からの入力電力を、送信側共振器13に出力するための高周波電力に変換するものである。
入力検出部122は、一次電源11から送信電源12に入力される電力に関するパラメータを検出するものである。この際、入力検出部122は、送信電源12の入力電流、入力電圧のうち少なくとも1つ以上を検出する。
【0015】
電源パラメータ検出部123は、送信電源12内部のインバータ回路121に関するパラメータを検出するものである。この際、電源パラメータ検出部123は、例えば、インバータ回路121の共振電圧、共振電流、共振電圧と共振電流の位相、反射電力、インバータ回路121内のスイッチング素子のドレイン−ソース間の電圧Vds又は電流Ids、インバータ回路121内の素子(FET(Field Effect Transistor)、キャパシタ、インダクタ等)の発熱等のうち少なくとも1つ以上を検出する。
【0016】
出力検出部124は、送信電源12から出力された電力(インバータ回路121により変換された高周波電力)に関するパラメータを検出するものである。この際、出力検出部124は、例えば、インバータ回路121からの出力電圧又は出力電流(位相、振幅、実効値、周波数)、透過電力、反射電力等のうち少なくとも1つ以上を検出する。
【0017】
なお、入力検出部122、電源パラメータ検出部123及び出力検出部124は、受信側共振器21が送信側共振器13に近づくことにより変化する送信電源12に関するパラメータを検出するパラメータ検出部を構成する。そして、このパラメータ検出部の機能は、送信電源12が通常に有している保護機能(電源の破壊を防止するための機能)を兼用することで実現可能であり、専用回路は不要である。また図1では、パラメータ検出部として、入力検出部122、電源パラメータ検出部123及び出力検出部124を全て有している場合を示しているが、これらの検出部122〜124のうち少なくとも1つ以上有していればよい。なお、複数のパラメータを検出することで、共振条件の調整精度を向上させることができる。
【0018】
送信側共振器13は、送信電源12からの高周波電力の周波数と同一周波数で共振し、受信装置2の受信側共振器21に対して電力伝送を行うものである。
【0019】
受信装置2は、図1に示すように、受信側共振器21及び受信回路22を有している。
受信側共振器21は、送信側共振器13の共振周波数と同一周波数で共振することで電力を受信し、交流電力を出力するものである。
【0020】
受信回路22は、整流回路221、DC/DCコンバータ222及び負荷223を有している。
整流回路221は、受信側共振器21からの交流電力を直流電力に変換するものである。
DC/DCコンバータ222は、整流回路221から入力された直流電力を任意の電圧へ変換し、負荷223へ供給するものである。
なお図1に示す受信回路22において、負荷223はバッテリであってもよい。
【0021】
また、送信側共振器13と受信側共振器21との共振結合による電力伝送方式は特に限定されるものではなく、磁界共鳴による方式、電界共鳴による方式、電磁誘導による方式、接触型の共振結合方式のいずれであってもよい。
【0022】
次に、本発明の共振器の構成について、図2を参照しながら説明する。なお以下では、送信側共振器13を例に説明を行う。
送信側共振器13は、図2に示すように、送信コイル(電力伝送用アンテナ)131及び誘電体132を有している。
【0023】
送信コイル131は、スパイラル型又はヘリカル型等のコイルであり、その形状は、円形、楕円形又は長方形等任意の形状でよい。なお図2の例では、送信コイル131が、楕円形のスパイラル型に構成された場合を示している。
【0024】
誘電体132は、送信コイル131の軸方向に垂直な面に対向配置され、当該送信コイル131と対向する面積及び当該送信コイル131との距離のうちの少なくとも一方が可変であるものである。この誘電体132は、セラミック又はアクリル等により構成される。なお図2の例では、誘電体132が、送信コイル131の両面にそれぞれ対向配置された場合を示している。また図2の例では、誘電体132が、軸心を中心に放射状に複数分割されて、ピース1321毎に分離可能に構成された場合を示している。図2において、誘電体132は、単一の部材から構成してもよいし、誘電率が異なる複数の部材から構成してもよい。
【0025】
図2に示す構成において、誘電体132が送信コイル131と対向する面積を可変に構成されている場合には、例えば図3に示すように、誘電体132の任意のピース1321を面内に平行な方向に移動させる。これにより、送信側共振器13の寄生容量を変化させることができ、共振条件を調整することができる。
【0026】
また、図2に示す構成において、誘電体132が送信コイル131と対向する距離を可変に構成されている場合には、例えば図4に示すように、誘電体132の任意のピース1321を面内に垂直な方向に移動させる。これにより、送信側共振器13の寄生容量を変化させることができ、共振条件を調整することができる。
なおここでは、図3,4に示すような誘電体132の移動は、手動で行うものとする。また、誘電体132の移動方法は、共振器の設置スペース等に応じて適宜選択される。
【0027】
なお図2では、送信側共振器13に誘電体132を設けた場合について示したが、送信側共振器13及び受信側共振器21のうちの少なくとも一方に誘電体132が設けられていればよい。受信側共振器21に誘電体132を設ける場合にも、送信側共振器13に誘電体132を設ける場合と同様に構成される。
【0028】
次に、共振条件の調整例について、図5,6を参照しながら説明する。なお以下では、図2の構成を用い、送信側共振器13の誘電体132を移動させることで、共振条件を調整する場合を例に説明を行う。
図5では、受信側共振器21に接続されている負荷223が変動した場合、又は送信側共振器13と受信側共振器21との間に異物が存在する場合での共振条件の調整例を示している。なお、通常状態での共振器の共振周波数fは下式(1)で表される(図5の実線、f)。
=1/2π√(LC)(1)
ここで、Lは共振器のインダクタンスであり、Cは共振器の寄生容量である。
【0029】
そして、図5に示すように、受信側共振器21に接続されている負荷223が変動した場合、又は送信側共振器13と受信側共振器21との間に異物が存在する場合、共振器の共振条件が変動する(図5の破線、f)。なお、共振条件の変動は、送信電源12のパラメータ検出部による検出結果から得る。
この場合、図2に示す送信側共振器13の誘電体132の任意のピース1321を移動させて、送信側共振器13の寄生容量が小さくなるように変化させる(C0>C1)。これにより、共振周波数をfからf’に調整することができ、共振条件を初期状態へ戻すことができる(図5の実線、f’)。なお、共振条件を調整後の共振周波数f’は下式(2)で表される。
’=1/2π√(LC)>f(2)
【0030】
図6では、送信側共振器13と受信側共振器21との距離が近い場合での共振条件の調整例を示している。
図6に示すように、送信側共振器13と受信側共振器21との距離が近づくと、共振条件の周波数軸上の伝送効率ηが双峰特性となり、共振周波数fでの伝送効率ηが低下する(図6の破線)。なお、共振条件の変動は、送信電源12のパラメータ検出部による検出結果から得る。
この場合、図2に示す送信側共振器13の誘電体132の任意のピース1321を移動させて、送信側共振器13の寄生容量を変化させる。これにより、共振周波数fで高い伝送効率ηとなるように共振条件を調整することができる(図6の実線)。
【0031】
なお本発明では、図5,6に示すように、誘電体132をずらすことで共振条件を調整することが可能なため、共振型電力伝送システムでの使用周波数を広帯域化することも可能である。
【0032】
以上のように、この実施の形態1によれば、送信コイル131及び不図示の受信コイル(電力伝送用アンテナ)のうちの少なくとも一方のコイルの軸方向に垂直な面に対向配置され、当該コイルと対向する自身の面積及び自身と当該コイルとの距離のうちの少なくとも一方が可変である誘電体132を備えたので、電力伝送用アンテナの共振条件を調整可能であり、且つ従来技術よりも高電圧及び高電流でも電力伝送を可能とすることができる。すなわち、従来構成のような外部回路を用いずに共振条件を可変できるため、外部回路の素子の定格(電圧、電流等)による制約がなく、大電力化が容易である。
また、誘電体132を移動させることで共振条件を調整するため、共振特性を離散的ではなく連続的に変化させることが可能である。これによって、細かい調整が可能となり、共振特性を目標値に一致させることができる。
【0033】
なお図2では、誘電体132を、送信コイル131の両面にそれぞれ対向配置した場合を示したが、片面にのみ設けてもよい。ただし、誘電体132を送信コイル131の両面に設けた方が、片面にのみ設けた場合に対して寄生容量を増加させることができる。
【0034】
なお図2では、誘電体132を複数に分割し、ピース1321を面内に平行な方向に移動させることで、送信コイル131と対向する面積を変える場合について示した。しかしながら、これに限るものではなく、例えば図7に示すように、誘電体132全体を面内で回転させることで、送信コイル131と対向する面積を変えるようにしてもよい。なおこの場合には、送信コイル131及び誘電体132を、誘電体132を回転させた際に対向面積が変化するような形状にそれぞれ構成する。
【0035】
また図2では、誘電体132の分割形状を放射形状とした場合について示した。しかしながら、これに限るものではなく、例えば、図8に示すような同心円形状としてもよいし、図9に示すような四角形状としてもよい。
【0036】
なお図2において、送信コイル131を内部に埋め込む第2の誘電体を設けてもよい。これにより、送信コイル131の寄生容量をさらに増加させることができる。
また図2において、誘電体132に溝、小穴等の空隙を設け、誘電体132の内部に、ガス(炭酸ガス、窒素等)、ジェル状、液状(水、酢等)又は粉状の第3の誘電体を挿入してもよい。
【0037】
また図2において、誘電体132を、電圧が印加されることで比誘電率が変化する誘電体層を複数重ねて構成してもよい。この場合には、送信側共振器13に、誘電体132を構成する誘電体層間に電圧を印加する電圧印加部がさらに設けられる。これにより、送信コイル131の寄生容量の変化を微調整することができる。また、共振器の設置スペースによっては、誘電体132を移動可能な範囲に限りがあるため、その場合に比誘電率を変化させることで、共振条件の調整範囲を広げることができる。
【0038】
また上記の各変形例は、受信側共振器21に誘電体132を設けた場合にも同様に適用可能である。
【0039】
また上記において、誘電体132の移動は、手動で行うことを想定して説明を行ったが、自動化してもよい。この場合、例えば図10(a)に示すように、誘電体132のピース1321毎にシリンダ5を取付けて、このシリンダ5によってピース1321を面内に平行な方向に移動させてもよい。また、例えば図10(b)に示すように、切れ込みを入れた誘電体132を用い、この誘電体132の中心にモータ6を取付ける。そして、このモータ6により誘電体132をめくるように開閉してもよい。
【0040】
また上記では、送信電源12のパラメータ検出部による検出結果から共振条件のずれを検出する場合を示した。しかしながら、これに限るものではなく、共振条件のずれを検出できる方法であればよく、共振条件のずれを検出可能な外部回路を共振型電力伝送システムに追加してもよい。
【0041】
実施の形態2.
図11はこの発明の実施の形態2に係る共振器の構成を示す図である。この図11に示す実施の形態2に係る共振器は、図2に示す実施の形態2に係る共振器に磁性体133を追加したものである。その他の構成は同様であり、同一の符号を付してその説明を省略する。なお図11では、送信側共振器13を例に説明を行う。
【0042】
磁性体133は、送信コイル131の受信コイルとの対向面とは反対側の面に対向配置されたものである。この磁性体133は、フェライト又はアモルファス等の透磁率を有する部材で構成される。磁性体133は、図11に示すようなシート状でもよいし、磁性塗料でもよい。このように、磁性体133を送信コイル131付近に配置することで、送信側共振器13のインダクタンス(式(1)のL)が増加し、共振条件を調整することができる。また、磁性体133を設けることで、共振器からの放射電磁界をシールドする効果も得られる。
なお、誘電体132と同様に、磁性体133を複数に分割してピース毎に分離可能に構成してもよい。
【0043】
また図11では、送信側共振器13に誘電体132を設ける場合について示したが、誘電体132が受信側共振器21に設けられている場合には当該受信側共振器21に磁性体133を設けてもよい。なお、受信側共振器21に磁性体133を設ける場合にも、送信側共振器13に磁性体133を設けた場合と同様に構成される。
【0044】
また、図11に示す構成に、磁性体133の温度を変えて透磁率を調整するために温度を制御する温度制御部を設けてもよい。この温度制御部としては、電熱線又はシート状のヒータ等が挙げられる。この温度制御部により磁性体133の温度を制御することで、磁性体133の比透磁率を可変し、共振条件を調整することができる。
【0045】
実施の形態3.
図11では、送信側共振器13に磁性体133を設けた場合について示した。それに対し、図12に示すように、磁性体133を、対向する送信コイル131との距離を可変とするように構成してもよい。このように、磁性体133と送信コイル131との距離を可変とすることによっても、共振条件を調整することができる。なお図12では、送信側共振器13を例に説明を行ったが、受信側共振器21に磁性体133が設けられる場合にも同様である。
【0046】
なお実施の形態1〜3では、本発明の共振器を図1に示すような共振型電力伝送システムに適用した場合について示した。しかしながら、これに限るものではなく、他の電力伝送システムにも本発明の共振器を同様に適用可能である。
【0047】
また、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
この発明に係る共振型電力伝送システムは、共振条件を調整可能であり、且つ高電圧及び高電流の条件下でも電力伝送を可能とすることができ、送信コイルを有する送信側共振器と受信コイルを有する受信側共振器との間で固有の共振周波数で電力伝送を行う共振型電力伝送システム等に用いるのに適している。
【符号の説明】
【0049】
1 送信装置、2 受信装置、5 シリンダ、6 モータ、11 一次電源、12 送信電源、13 送信側共振器、21 受信側共振器、22 受信回路、121 インバータ回路、122 入力検出部、123 電源パラメータ検出部、124 出力検出部、131 送信コイル、132 誘電体、133 磁性体、221 整流回路、222 DC/DCコンバータ、223 負荷、1321 ピース。
図1
図2
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図12