特許第6293367号(P6293367)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6293367
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】光軸調整機構
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/497 20060101AFI20180305BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   G01S7/497
   G01S7/481 A
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-513157(P2017-513157)
(86)(22)【出願日】2016年8月10日
(86)【国際出願番号】JP2016073573
【審査請求日】2017年3月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】392036153
【氏名又は名称】菱電湘南エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123434
【弁理士】
【氏名又は名称】田澤 英昭
(74)【代理人】
【識別番号】100101133
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 初音
(74)【代理人】
【識別番号】100199749
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 成
(74)【代理人】
【識別番号】100188880
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 辰哉
(74)【代理人】
【識別番号】100197767
【弁理士】
【氏名又は名称】辻岡 将昭
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 成人
(72)【発明者】
【氏名】▲崎▼村 武司
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 隆行
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼崎 拓哉
【審査官】 山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−014837(JP,A)
【文献】 特開平10−073661(JP,A)
【文献】 特開2000−278614(JP,A)
【文献】 特開平05−100181(JP,A)
【文献】 特開2007−309950(JP,A)
【文献】 特開平08−293461(JP,A)
【文献】 特開平08−201915(JP,A)
【文献】 特開平07−307026(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/088716(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 − G01S 7/51
G01S 17/00 − G01S 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光における基準光軸上に配置され、入射されたレーザ光における光軸の角度を調整する角度調整機構と、
前記基準光軸上に配置され、入射されたレーザ光における光軸の位置を調整する位置調整機構と
前記基準光軸上に配置され、前記角度調整機構及び前記位置調整機構の後段に配置される光軸合わせ部とを備えたライダ装置の光軸調整機構において
前記位置調整機構は、
前記基準光軸上に、入射面の法線が当該基準光軸に対して傾いて配置された第1の平行平板と、
前記第1の平行平板を前記基準光軸周りに回転させる第1の回転機構と、
前記基準光軸上に、入射面の法線が当該基準光軸に対して傾いて配置された第2の平行平板と、
前記第2の平行平板を前記基準光軸周りに回転させる第2の回転機構とを有し、
前記角度調整機構により光軸の角度が調整され前記位置調整機構により光軸の位置が調整されたレーザ光における光軸の位置を検出する位置検出部と、
前記位置検出部により検出された位置に基づいて、前記第1の回転機構及び前記第2の回転機構による回転量を調整する位置調整部と、
前記角度調整機構により光軸の角度が調整され前記位置調整機構により光軸の位置が調整されたレーザ光が入射され、当該レーザ光を転写する光学系とを備え、
前記位置検出部は、前記光学系との距離s2が、前記光学系の焦点距離をf、前記光軸合わせ部と前記光学系の距離をs1とすると、1/(s2)={1/f}―{1/(s1)}とした、前記光学系によりレーザ光が転写される位置に配置された
ことを特徴とする光軸調整機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーザ光における光軸の角度及び位置を調整する、ライダ装置の光軸調整機構に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を用いたライダ装置(レーザレーダ装置、光波レーダ装置とも呼ばれる)では、大気中に向けてレーザ光を送信し、大気中のエアロゾルによる散乱光を受信して、風速を計測する、又は、被測定対象物に向けてレーザ光を送信し、被測定対象物による反射光を受信して、被測定対象物までの距離及び速度を計測する。ここで、送信したレーザ光に対する受信光(散乱光、反射光)を効率よく受信するためには、レーザ光における光軸と受信光における光軸との角度及び位置(光軸に垂直な面における位置)を一致させることが望ましい(同軸受信方式)。特に、コヒーレントドップラーライダ装置では、高い精度でレーザ光における光軸と受信光における光軸との角度及び位置を一致させる必要がある。
【0003】
従来、同軸受信方式を実現する方法として、2枚のミラーを有する市販又は専用の角度調整機構により、レーザ光における光軸の角度及び位置を同時に調整する方法が用いられている。
また、航空機に搭載されるライダ装置のように、光軸調整において耐震性が要求される用途では、角度調整機構として上記2枚のミラーに代えて2枚のウェッジ板を使用する。そして、ウェッジ板をレーザ光における基準光軸周りに回転させることで、レーザ光における光軸の位置及び角度を調整している。
【0004】
同軸受信方式では、レーザ光における光軸と受信光における光軸とが一致しているため、距離が近いところから遠いところまで、安定した計測が可能となる。ここで、角度が一致していれば、レーザ光は受信光における光軸に平行に伝搬するため、遠方における位置ずれの影響は小さい。一方、角度がずれている場合、遠方における位置ずれの影響が大きくなる。そのため、光軸調整後は、特に角度ずれに対する安定性が要求される。
【0005】
一方、従来の光軸調整では、ミラー又はウェッジ板を調整すると、レーザ光における光軸の角度及び位置の両方がずれてしまうため、角度ずれを補正すると位置がずれてしまう。このように、従来の光軸調整では、光軸の角度と位置とを独立して調整できないという課題があった。
【0006】
また、ミラーを用いた角度調整機構では、光軸調整の際にミラーの角度が大きくずれてレーザ光が受信光における光軸から大きくずれてしまった場合、レーザ光における光軸を元の位置に戻すために再度光軸調整が必要となる。しかしながら、従来のミラーを用いた角度調整機構では、レーザ光における光軸を元の位置に戻すことは困難である。そのため、例えば野外で使用されるライダ装置のように測定器が限られた環境で光軸を調整する必要がある場合では、光軸調整により更に特性が悪化してしまう恐れがある。
【0007】
また、ミラーを用いた角度調整機構では、ミラー自体の角度を調整する機構を有するため、光軸調整後にミラーの位置を固定する際に角度ずれが生じやすい。また、この角度調整機構では、2枚のミラーの距離が離れており、ミラーが独立して調整されるため、何れかのミラーに角度ずれが生じた場合、レーザ光における光軸の角度ずれ及び位置ずれが生じてしまう。
【0008】
なお、平行平板を用いてレーザ光における光軸の位置を調整する機構が知られている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1に開示された機構では、1枚又は2枚の平行平板を、レーザ光における基準光軸に垂直な軸周りに回転可能としている。そして、この機構を光軸調整機構に適用することで、角度調整機構とは別に、光軸の位置のみを独立して調整する構成も考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−035960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に開示された機構では、平行平板をレーザ光における基準光軸に垂直な軸周りに回転させており、この機構を光軸調整機構に適用しても光軸調整の安定性及び再現性は低い。
【0011】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、光軸調整の安定性及び再現性を有し、レーザ光における光軸の角度は変化させずに、光軸の位置を調整できるライダ装置の光軸調整機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係るライダ装置の光軸調整機構は、レーザ光における基準光軸上に配置され、入射されたレーザ光における光軸の角度を調整する角度調整機構と、基準光軸上に配置され、入射されたレーザ光における光軸の位置を調整する位置調整機構と、基準光軸上に配置され、角度調整機構及び位置調整機構の後段に配置される光軸合わせ部とを備え、位置調整機構は、基準光軸上に、入射面の法線が当該基準光軸に対して傾いて配置された第1の平行平板と、第1の平行平板を基準光軸周りに回転させる第1の回転機構と、基準光軸上に、入射面の法線が当該基準光軸に対して傾いて配置された第2の平行平板と、第2の平行平板を基準光軸周りに回転させる第2の回転機構とを有し、角度調整機構により光軸の角度が調整され位置調整機構により光軸の位置が調整されたレーザ光における光軸の位置を検出する位置検出部と、位置検出部により検出された位置に基づいて、第1の回転機構及び第2の回転機構による回転量を調整する位置調整部と、角度調整機構により光軸の角度が調整され位置調整機構により光軸の位置が調整されたレーザ光が入射され、当該レーザ光を転写する光学系とを備え、位置検出部は、光学系との距離s2が、光学系の焦点距離をf、光軸合わせ部と光学系の距離をs1とすると、1/(s2)={1/f}―{1/(s1)}とした、光学系によりレーザ光が転写される位置に配置された
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、上記のように構成したので、光軸合わせ部での光軸の位置ずれを、位置検出部に再現できるため、光軸調整の安定性及び再現性を有し、レーザ光における光軸の角度は変化させずに、光軸の位置を独立して調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の実施の形態1に係る光軸調整機構の構成例を示す図である。
図2】この発明の実施の形態1に係る光軸調整機構による光軸調整例を示すフローチャートである。
図3図3Aは、この発明の実施の形態1における第1の平行平板によるレーザ光の平行移動を説明する図であり、図3Bは、第1の平行平板によるレーザ光の移動可能範囲を示す図である。
図4図4A図4Cは、この発明の実施の形態1における第1の平行平板及び第2の平行平板によるレーザ光の移動可能範囲を示す図であり、図4AはΔd1=Δd2の場合を示す図であり、図4BはΔd1>Δd2の場合を示す図であり、図4CはΔd1<Δd2の場合を示す図である。
図5図5A図5Bは、この発明の実施の形態1における第1の平行平板及び第2の平行平板によるレーザ光の位置調整(Δd1=Δd2の場合)を説明する図であり、図5Aはレーザ光の平行移動量をゼロとした場合を示す図であり、図5Bはレーザ光の平行移動量を最大とした場合を示す図である。
図6図6A図6Bは、この発明の実施の形態1に係る光軸調整機構の効果を説明する図であり、図6Aは従来の平行平板を示す図であり、図6Bは実施の形態1における第1の平行平板を示す図である。
図7】この発明の実施の形態2に係る光軸調整機構の構成例を示す図である。
図8】この発明の実施の形態2における光学系の構成例を示す図である。
図9図9A図9Bは、この発明の実施の形態2における位置調整部のハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る光軸調整機構の構成例を示す図である。
光軸調整機構は、入射されたレーザ光101における光軸の角度及び位置を調整する機構であり、レーザを用いたライダ装置(不図示)に搭載される。この光軸調整機構は、図1に示すように、角度調整機構1、位置調整機構2及び光軸合わせ部3を備えている。なお図1における点線の矢印は、レーザ光101の移動可能範囲を示している。
【0016】
角度調整機構1は、レーザ光101における基準光軸102上に配置され、入射されたレーザ光101における光軸の角度を調整する。この角度調整機構1は、既存のものを使用でき、例えば回転機構により基準光軸102周りに回転可能な2枚のウェッジ板を組合わせることで実現可能である。なお、この角度調整機構1では、光軸の角度だけではなく位置も変化する。
【0017】
位置調整機構2は、基準光軸102上に配置され、入射されたレーザ光101における光軸の位置を調整する。この位置調整機構2の詳細については後述する。
【0018】
光軸合わせ部3は、基準光軸102上であって角度調整機構1及び位置調整機構2の後段に配置され、基準光軸102と受信光における基準光軸103とを重ね合わせる。この光軸合わせ部3は、例えば、P偏光を透過し、S偏光を反射する偏光ビームスプリッタを用いることで実現可能である。なお、P偏光とは、偏光ビームスプリッタにおける反射面の法線と基準光軸102とを含む面内に電界を持つ偏光であり、S偏光とは、上記反射面の法線と基準光軸102とを含む面に垂直な面内に電界を持つ偏光である。図1の例では、光軸合わせ部3は、レーザ光101は反射して向きを変え、受信光は透過させる。
【0019】
次に、位置調整機構2の詳細について説明する。
位置調整機構2は、図1に示すように、第1の平行平板21、第1の回転機構22、第2の平行平板23及び第2の回転機構24を有している。
【0020】
第1の平行平板21は、基準光軸102上に、入射面の法線が当該基準光軸102に対して傾いて配置された部材であり、屈折率を有する媒質である。この第1の平行平板21は、第1の回転機構22により、基準光軸102周りに回転可能に構成されている。
第1の回転機構22は、第1の平行平板21を基準光軸102周りに回転させる。
【0021】
第2の平行平板23は、基準光軸102上に、入射面の法線が当該基準光軸102に対して傾いて配置された部材であり、屈折率を有する媒質である。この第2の平行平板23は、第2の回転機構24により、基準光軸102周りに回転可能に構成されている。
第2の回転機構24は、第2の平行平板23を基準光軸102周りに回転させる。
【0022】
次に、実施の形態1に係る光軸調整機構による光軸調整例について、図1〜5を参照しながら説明する。
光軸調整機構による光軸調整例では、図2に示すように、まず、角度調整機構1は、入射されたレーザ光101における光軸の角度を調整する(ステップST21)。この角度調整機構1では、例えば2枚のウェッジ板を基準光軸102周りに所定の回転量だけ回転させることで、レーザ光101における光軸の角度を調整する。なお、この角度調整機構1では、光軸の角度だけではなく位置も変化する。
【0023】
次いで、位置調整機構2は、入射されたレーザ光101における光軸の位置を調整する(ステップST22)。以下、位置調整機構2内の動作について説明する。なお、図3Aに示すように、第1の平行平板21は、入射面の法線が基準光軸102に対して角度θ1傾いて配置され、同様に、第2の平行平板23は、入射面の法線が基準光軸102に対して角度θ2傾いて配置されているとする。なお図3Aにおける破線の矢印は、第1の平行平板21の回転方向を示している。
【0024】
角度調整機構1を通過したレーザ光101は、図3Aに示すように、第1の平行平板21における入射面に対してθ1の角度で入射する。ここで、第1の平行平板21は、屈折率がn1であり、厚さがt1であるとする。この場合、第1の平行平板21に入射したレーザ光101は、基準光軸102と第1の平行平板21における入射面の法線とを含む面内で、下式(1)で表される変化量Δd1だけ平行移動して出射する。
Δd1=(t1/cos(θ1’))×sin(θ1−θ1’) (1)
なお、式(1)におけるθ1’は、第1の平行平板21の内部角度であり、下式(2)で表される。
θ1’=sin−1(sin(θ1)/n1) (2)
【0025】
また、第1の平行平板21は、第1の回転機構22により基準光軸102周りに回転可能に構成されている。そのため、図3Bに示すように、第1の平行平板21は、自身の回転位置により、レーザ光101を、基準光軸102を中心として変化量Δd1を半径とする円上の任意の位置に平行移動させることが可能である。
【0026】
同様に、第1の平行平板21を通過したレーザ光101は、第2の平行平板23における入射面に対してθ2の角度で入射する。ここで、第2の平行平板23は、屈折率がn2であり、厚さがt2であるとする。この場合、第2の平行平板23に入射したレーザ光101は、基準光軸102と第2の平行平板23における入射面の法線とを含む面内で、下式(3)で表される変化量Δd2だけ平行移動して出射する。
Δd2=(t2/cos(θ2’))×sin(θ2−θ2’) (3)
なお、式(3)におけるθ2’は、第2の平行平板23の内部角度であり、下式(4)で表される。
θ2’=sin−1(sin(θ2)/n2) (4)
【0027】
また、第2の平行平板23は、第2の回転機構24により基準光軸102周りに回転可能に構成されている。そのため、第2の平行平板23は、自身の回転位置により、レーザ光101を、基準光軸102を中心として変化量Δd2を半径とする円上の任意の位置に平行移動させることが可能である。
【0028】
したがって、レーザ光101は、第1の平行平板21及び第2の平行平板23を通過することで、図4に示すように、変化量Δd1を半径とする円(実線)上の任意の位置に平行移動した後に、変化量Δd2を半径とする円(点線)上の任意の位置に平行移動する。そのため、位置調整機構2は、レーザ光101を、最大半径|Δd1+Δd2|から最小半径|Δd1―Δd2|の間の任意の位置に平行移動させることが可能となる。なお、図4AはΔd1=Δd2の場合を示し、図4BはΔd1>Δd2の場合を示し、図4AはΔd1<Δd2の場合を示している。
【0029】
また、図4Aに示すように、変化量Δd1と変化量Δd2が同じ値となるように第1の平行平板21及び第2の平行平板23の配置角度及び回転位置を調整すれば、位置調整機構2は、レーザ光101を平行移動量ゼロで、すなわちレーザ光101における光軸の位置を変えずに、出射させることも可能である。なお図5Aは、Δd1=Δd2の場合において、レーザ光101の平行移動量をゼロとした場合での第1の平行平板21及び第2の平行平板23の回転位置を示す図であり、図5Bは、Δd1=Δd2の場合において、レーザ光101の平行移動量を最大とした場合での第1の平行平板21及び第2の平行平板23の回転位置を示す図である。
【0030】
次いで、光軸合わせ部3は、基準光軸102と受信光における基準光軸103とを重ね合わせる(ステップST23)。図1の例では、光軸合わせ部3は、レーザ光101は反射して向きを変え、受信光は透過させる。
【0031】
このように、位置調整機構2では、第1の平行平板21及び第2の平行平板23を基準光軸102周りに回転させることで、レーザ光101における光軸の位置のみを変化させている。そのため、レーザ光101における光軸の位置調整を角度調整から独立して行うことが可能となり、光軸調整の際に安定した特性が得られる光軸調整機構を実現できる。また、位置調整の後、第1の平行平板21及び第2の平行平板23の回転位置を固定することで、容易に、レーザ光101における光軸の位置を固定できる。
また、位置調整機構2では、位置調整において、光軸の平行移動量が大きくなり過ぎてたとしても、第1の平行平板21及び第2の平行平板23を回転させることで、光軸を位置調整前の位置に復帰させることができる。そのため、位置調整において光軸が完全にずれることはなく、確実に光軸を調整できる。特に野外で使用されるライダ装置等では、計測器が限られた環境での光軸調整が必要となる場合が多いが、位置調整に失敗したとしても光軸を位置調整前の位置に戻すことができる。
【0032】
また、位置調整機構2では、2枚の平行平板21,23を用いている。そのため、例えば筐体の歪み等により位置調整機構2自体に傾きが生じた場合、レーザ光101に対して当該傾きに依存した光軸の平行移動が生じるが、光軸の角度は変化せず、光軸調整機構の性能が安定する。特に野外で使用されるライダ装置等では、応力又は温度により筐体が歪むことがあるが、この場合であっても、光軸の角度が変化することはない。
【0033】
なお上記では、角度調整機構1の後段に位置調整機構2を配置した場合を示したが、これに限らず、角度調整機構1の前段に位置調整機構2を配置してもよい。なおこの場合にも、図2に示すフローチャートの通り、角度調整機構1による角度調整の後に、位置調整機構2による位置調整を行う。
【0034】
以上のように、この実施の形態1によれば、レーザ光101における基準光軸102上に配置され、入射されたレーザ光101における光軸の角度を調整する角度調整機構1と、基準光軸102上に配置され、入射されたレーザ光101における光軸の位置を調整する位置調整機構2とを備え、位置調整機構2は、基準光軸102上に、入射面の法線が当該基準光軸102に対して傾いて配置された第1の平行平板21と、第1の平行平板21を基準光軸102周りに回転させる第1の回転機構22と、基準光軸102上に、入射面の法線が当該基準光軸102に対して傾いて配置された第2の平行平板23と、第2の平行平板23を基準光軸102周りに回転させる第2の回転機構24とを有するので、光軸調整の安定性及び再現性を有し、レーザ光101における光軸の角度は変化させずに、光軸の位置を調整できる。
【0035】
なお、位置調整機構2では、第1の平行平板21及び第2の平行平板23を基準光軸102周りに回転させることで、レーザ光101における光軸の位置を調整している。そのため、平行平板をレーザ光における基準光軸に対して垂直な軸周りに回転させる従来構成に対し、再現性及び安定性の高い光軸調整機構を得ることができる。
すなわち、図6Aに示す従来構成のように、平行平板をレーザ光における基準光軸に垂直な軸周りに回転させる場合、平行平板の回転位置を固定するために、平行平板を回転させる回転軸の固定又は平行平板自体の固定を行う必要がある。しかしながら、この際に、レーザ光を遮らないように固定する必要があるため、構成が複雑になる。また、平行平板自体の固定を行う場合には、平行平板に対して力をかける方向(図6Aの符号601)が平行平板の回転方向(図6Aの符号602)となるため、光軸調整後に平行平板の回転位置を固定する際に回転位置がずれてしまう。更に、平行平板の回転位置を固定する固定部による平行平板の固定箇所が回転軸から遠くなるため、テコの原理により回転軸に大きな力がかかり、回転軸を歪ませてしまう等の恐れがある。外部からの擾乱の影響も同様で、回転軸のみで平行平板を支持している場合には、固定部に強い衝撃が加わると、回転軸にかかる応力が強くなるため、回転位置がずれやすい。
一方、図6Bに示す実施の形態1のように第1の平行平板21を基準光軸102周りに回転させる場合、第1の平行平板21の回転位置を固定するために第1の平行平板21に力をかける方向(図6Bの符号603)が、第1の平行平板21の回転方向(図6Bの符号604)に対して垂直となる。そのため、固定による回転位置のずれが発生しにくく、強く固定することが可能であり、且つ、固定方向に第1の平行平板21がずれた場合でも平行移動のみであるので光軸調整に影響を与えない。更に、回転に対する光軸ずれの変化量が小さく、上記固定により第1の平行平板21に回転が発生しても光軸ずれは小さいため、再現性も高くなる。第2の平行平板23についても同様である。
【0036】
なお、実施の形態1では位置調整機構2を基準光軸102上に配置したが、位置調整機構2は受信光における基準光軸103上に配置して、基準光軸103の位置を調整しても基準光軸102と基準光軸103を重ね合わせることができ、上記と同様の効果が得られる。
【0037】
実施の形態2.
実施の形態1に係る光軸調整機構では、レーザ光101における光軸の角度を変化させずに、光軸の位置を調整する構成を示した。この光軸調整機構では、位置調整により光軸が完全にずれることはなく、第1の平行平板21及び第2の平行平板23を回転させるだけで位置調整前の位置に戻すことができる。そのため、この光軸調整機構にレーザ光101における光軸の位置を検出する構成を追加することで、位置調整の自動化が可能となる。そこで、実施の形態2では、位置調整を自動で行う光軸調整機構について説明する。
【0038】
図7はこの発明の実施の形態2に係る光軸調整機構の構成例を示す図である。この図7に示す実施の形態2に係る光軸調整機構は、図1に示す実施の形態1に係る光軸調整機構に対し、位置検出部4、位置調整部5及び光学系6を追加している。その他の構成は同様であり、同一の符号を付してその説明を省略する。なお図7において、符号7は、主たる光を反射し、一部の光を透過する部分反射鏡である。この部分反射鏡7は、光の一部分が透過するものであればよい。例えば一般的に全ての光を反射するとされる全反射ミラーでもわずかな透過光が発生するため、部分反射鏡7として用いることが可能である。
【0039】
位置検出部4は、角度調整機構1により光軸の角度が調整され位置調整機構2により光軸の位置が調整されたレーザ光101における光軸の位置を検出する。
【0040】
位置調整部5は、位置検出部4により検出された位置に基づいて、第1の回転機構22及び第2の回転機構24による回転量を調整する。これにより、位置調整部5は、レーザ光101における光軸の位置が所望の位置となるように調整する。
例えば、位置調整部5は、予め、受信光における基準光軸103の位置を記憶する。そして、位置調整部5は、位置検出部4により検出されたレーザ光101における光軸の位置と記憶した受信光における基準光軸103の位置との差を検出し、当該差が無くなるように、第1の回転機構22及び第2の回転機構24による回転量を調整する。
【0041】
図7の例では、光軸合わせ部3の後段に部分反射鏡7が配置され、この部分反射鏡7によりレーザ光101及び受信光の向きが変えられる。そして、位置検出部4は、この部分反射鏡7の裏面から漏れたレーザ光101を用いて光軸の位置を検出する。これにより、位置検出部4を有する光軸調整機構をライダ装置に搭載でき、光軸調整機構はライダ装置による観測中に自動で光軸調整が可能となる。
【0042】
光学系6は、角度調整機構1により光軸の角度が調整され位置調整機構2により光軸の位置が調整されたレーザ光101が入射され、当該レーザ光を転写する。図7の例では、光学系6は部分反射鏡7の後段に配置されている。この光学系6は、必須の構成ではなく、必要に応じて設けられる。そして、光学系6を設ける場合には、位置検出部4は、光学系6によりレーザ光101が転写される位置に配置される。この光学系6は、位置検出部4に、任意の箇所でのレーザ光101における光軸の位置を検出可能とさせる。上記任意の箇所とは、レーザ光101と受信光との光軸を合わせたい箇所であり、例えば光軸合わせ部3の出射面である。
【0043】
なお、光学系6としては、図8に示すような焦点距離fを有するレンズ、又は、複数の光学部品の組合わせで実現された当該レンズと等価である転写光学系を用いることができる。ここで、光軸合わせ部3の出射面でのレーザ光101における光軸の位置を位置検出部4で検出する場合、光軸合わせ部3と光学系6の距離s1と、光学系6と位置検出部4の距離s2との関係は、下式(5)で表される。
1/f=1/s1+1/s2 (5)
【0044】
ここで、光学系6を設けない場合、レーザ光101が受信光における基準光軸103に対して角度を有すると、位置検出部4で検出される光軸の位置は、光軸合わせ部3の出射面での当該光軸の位置に対してずれる。よって、角度調整と位置調整を繰り返し行う必要がある。
一方、光学系6を設けた場合、光軸合わせ部3の出射面でのレーザ光101における光軸と受信光における基準光軸103との位置関係を、位置検出部4に転写して再現できる。その結果、レーザ光101が受信光における基準光軸103に対して角度を有する場合でも、光軸合わせ部3での光軸の位置ずれを位置検出部4に再現できるため、位置のみを独立して調整できる。よって、短時間で光軸調整が可能となる。
【0045】
なお、位置調整機構2では、第1の平行平板21及び第2の平行平板23を基準光軸102周りに回転させることで、レーザ光101における光軸の位置のみを変化させている。そのため、位置調整機構2では、位置調整において、光軸の平行移動量が大きくなり過ぎたとしても、第1の平行平板21及び第2の平行平板23を回転させることで、光軸を位置調整前の位置に復帰させることができる。よって、位置調整において光軸が完全にずれることはなく、確実に光軸を調整できる。更に、位置調整部5は、第1の平行平板21及び第2の平行平板23の初期回転位置を予め記憶しておくことで、位置調整に失敗した場合でも、容易に光軸を初期位置に戻すことができる。
【0046】
最後に、図9を参照して、実施の形態2における位置調整部5のハードウェア構成例を説明する。
位置調整部5の機能は、処理回路51により実現される。処理回路51は、図9Aに示すように、専用のハードウェアであっても、図9Bに示すように、メモリ53に格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、DSP(Digital Signal Processor)ともいう)52であってもよい。
【0047】
処理回路51が専用のハードウェアである場合、処理回路51は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又はこれらを組み合わせたものが該当する。
【0048】
処理回路51がCPUの場合、位置調整部5の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアやファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ53に格納される。処理回路51は、メモリ53に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、位置調整部5の機能を実現する。すなわち、位置調整部5は、処理回路51により実行されるときに、位置検出部4により検出された位置に基づいて、第1の回転機構22及び第2の回転機構24による回転量を調整する動作が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ53を備える。また、これらのプログラムは、位置調整部5の手順や方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。ここで、メモリ53とは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically EPROM)等の、不揮発性又は揮発性の半導体メモリや、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD(Digital Versatile Disc)等が該当する。
【0049】
このように、処理回路51は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせによって、上述の機能を実現することができる。
【0050】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
この発明に係る光軸調整機構は、光軸調整の安定性及び再現性を有し、レーザ光における光軸の角度は変化させずに、光軸の位置を調整でき、レーザ光における光軸の角度及び位置を調整する光軸調整機構等に用いるのに適している。
【符号の説明】
【0052】
1 角度調整機構、2 位置調整機構、3 光軸合わせ部、4 位置検出部、5 位置調整部、6 光学系、7 部分反射鏡、21 第1の平行平板、22 第1の回転機構、23 第2の平行平板、24 第2の回転機構、51 処理回路、52 CPU、53 メモリ、101 レーザ光、102 基準光軸、103 基準光軸。
【要約】
レーザ光(101)における基準光軸(102)上に配置され、入射されたレーザ光(101)における光軸の角度を調整する角度調整機構(1)と、基準光軸(102)上に配置され、入射されたレーザ光(101)における光軸の位置を調整する位置調整機構(2)とを備え、位置調整機構(2)は、基準光軸(102)上に、入射面の法線が当該基準光軸(102)に対して傾いて配置された第1の平行平板(21)と、第1の平行平板(21)を基準光軸(102)周りに回転させる第1の回転機構(22)と、基準光軸(102)上に、入射面の法線が当該基準光軸(102)に対して傾いて配置された第2の平行平板(23)と、第2の平行平板(23)を基準光軸(102)周りに回転させる第2の回転機構(24)とを有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9