特許第6293406号(P6293406)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6293406-容量性高インピーダンス測定方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6293406
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】容量性高インピーダンス測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/02 20060101AFI20180305BHJP
【FI】
   G01R27/02 A
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-182294(P2012-182294)
(22)【出願日】2012年8月21日
(65)【公開番号】特開2013-44751(P2013-44751A)
(43)【公開日】2013年3月4日
【審査請求日】2015年7月16日
【審判番号】不服2017-3844(P2017-3844/J1)
【審判請求日】2017年3月15日
(31)【優先権主張番号】13/214,693
(32)【優先日】2011年8月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505436014
【氏名又は名称】ケースレー・インスツルメンツ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Keithley Instruments,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・ソボレブスキー
【合議体】
【審判長】 中塚 直樹
【審判官】 清水 稔
【審判官】 須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−094677(JP,A)
【文献】 特開05−099960(JP,A)
【文献】 特開2010−286453(JP,A)
【文献】 特開2009−186469(JP,A)
【文献】 特開2010−249749(JP,A)
【文献】 特開平07−200003(JP,A)
【文献】 特開2000−194322(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/150337(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1pF以下の容量成分を有する被測定デバイスのインピーダンスを1kHz未満の低い周波数帯域で測定する容量性高インピーダンス測定方法であって、
第1ソース測定ユニット内の可変直流電圧源によって生成される電圧信号であって、上記第1ソース測定ユニット内のフィードバック・ループによって定まる周波数帯域幅の限界より小さいゼロでない周波数で周期的に電圧値を変化させた上記電圧信号を上記被試験デバイスの第1端子に加えるステップと、
第2ソース測定ユニットによって直流バイアス電圧を上記被試験デバイスの第2端子に加えるステップと、
上記電圧信号及び上記直流バイアス電圧の差分に応じて、上記被試験デバイスに流れる電流信号を、上記第2ソース測定ユニットを用いてモニタするステップと、
上記電圧信号の上記電圧値の周期的な変化に応じて、上記電圧信号及び上記直流バイアス電圧の上記差分並びに上記電流信号を同期させてデジタル化するステップと、
デジタル化した上記電圧信号及び上記直流バイアス電圧の上記差分並びに上記電流信号から上記インピーダンスを計算するステップと
を具える容量性高インピーダンス測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インピーダンスの測定に関し、特に低周波数における容量性インピーダンスを測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ソース測定ユニット(SMU:Source measure unit)は、非常に正確な直流電圧信号を供給し、結果として生じる直流電流信号を非常に正確に測定する(これと反対に、電圧を電流を入れ替えた場合も同様)という機能があることで、直流電気信号の精密測定分野では、良く知られている。例えば、SMUは、1マイクロ・ボルト以下から1キロ・ボルト以上までの直流電圧を選択的に供給し、1アト・アンペア以下から1アンペア以上までの直流電流(その反対も同様)を測定するのに利用できる。直流測定のやり方では、これによって非常に高いインピーダンスの測定が可能になる(つまり、R=V/I)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−197099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非常に高いインピーダンスの測定には、困難を伴うことがある。そうした余りに高いインピーダンスでは、被測定デバイス(DUT)に著しく高い電圧を印加しても、得られる電流は著しく小さいということになるからである。例えば、あまりに高い電圧を用いると、デバイスを破壊したり、アーク放電が生じたりといった結果になりかねない。コンデンサの場合では、そのインピーダンスは周波数に反比例するので、低周波数において問題が悪化する。
【0005】
そこで、低周波数における容量性の高インピーダンスを効果的に測定できる技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による方法は、1pF以下の容量を有する被試験デバイス(DUT)のインピーダンスを効果的に測定する。まず、1kHz以下のゼロでない周波数の交流成分を含む電圧信号又は電流信号をDUTに加える。加えた電圧信号又は電流信号に応じて、DUTの電流信号又は電圧信号を夫々観測する。続いて、これら電圧信号及び電流信号を同期させてデジタル化する。そして、デジタル化した電圧信号及び電流信号からインピーダンスを計算する。
【0007】
具体的には、本発明の概念1は、1pF未満の容量を有する被試験デバイス(DUT)のインピーダンスを測定する方法であって、
1kHz未満のゼロでない周波数の交流成分を含む電圧信号を上記DUTに加えるステップと、
上記電圧信号に応じて、上記DUTの電流信号をモニタするステップと、
上記電圧信号及び上記電流信号を同期させてデジタル化するステップと、
デジタル化した上記電圧信号及び上記電流信号からインピーダンスを計算するステップと
を具えている。
【0008】
本発明の概念2は、概念1の方法であって、上記電圧信号が少なくとも一つのソース測定ユニットによって生成されることを特徴としている。
【0009】
本発明の概念3は、概念2の方法であって、上記電圧信号が上記ソース測定ユニットによってデジタル化されることを特徴としている。
【0010】
本発明の概念4は、概念1の方法であって、上記電流信号が少なくとも一つのソース測定ユニットによってモニタされることを特徴としている。
【0011】
本発明の概念5は、概念4の方法であって、上記電流信号が上記ソース測定ユニットによってデジタル化されることを特徴としている。
【0012】
本発明の概念6は、概念1の方法であって、上記デジタル化するステップは、少なくとも一つのソース測定ユニットによって実行されることを特徴としている。
【0013】
本発明の概念7は、概念1の方法であって、コントローラによって実行される上記計算するステップは、FFT又はDFT計算を含むことを特徴としている。
【0014】
本発明の概念8は、概念1の方法であって、上記電圧信号はソース測定ユニットによって生成され、上記電流信号は上記ソース測定ユニットによってモニタされることを特徴としている。
【0015】
本発明の概念9は、概念1の方法であって、上記交流成分は第1ソース測定ユニットによって生成され、上記電流信号は第2ソース測定ユニットによってモニタされることを特徴としている。
【0016】
本発明の概念10は、概念9の方法であって、上記第2ソース測定ユニットが直流バイアス電圧を上記電圧信号に加えることを特徴としている。
【0017】
本発明の概念11は、1pF未満の容量を有する被試験デバイス(DUT)のインピーダンスを測定する方法であって、
1kHz未満のゼロでない周波数の交流成分を含む電流信号を上記DUTを通して流すステップと、
上記電流信号に応じて、上記DUTの電圧信号をモニタするステップと、
上記電圧信号及び上記電流信号を同期させてデジタル化するステップと、
デジタル化した上記電圧信号及び上記電流信号からインピーダンスを計算するステップと
を具えている。
【0018】
本発明の概念12は、概念11による方法であって、上記電流信号が少なくとも一つのソース測定ユニットによって生成されることを特徴としている。
【0019】
本発明の概念13は、概念12による方法であって、上記電流信号が上記ソース測定ユニットによってデジタル化されることを特徴としている。
【0020】
本発明の概念14は、概念11による方法であって、上記電圧信号が少なくとも一つのソース測定ユニットによってモニタされることを特徴としている。
【0021】
本発明の概念15は、概念14による方法であって、上記電圧信号が上記ソース測定ユニットによってデジタル化されることを特徴としている。
【0022】
本発明の概念16は、概念11による方法であって、上記デジタル化するステップは、少なくとも一つのソース測定ユニットによって実行されることを特徴としている。
【0023】
本発明の概念17は、概念11による方法であって、コントローラによって実行される上記計算するステップは、FFT又はDFT計算を含むことを特徴としている。
【0024】
本発明の概念18は、概念11による方法であって、上記電流信号はソース測定ユニットによって生成され、上記電圧信号は上記ソース測定ユニットによってモニタされることを特徴としている。
【0025】
本発明の概念19は、概念11による方法であって、上記交流成分は第1ソース測定ユニットによって生成され、上記電圧信号は第2ソース測定ユニットによってモニタされることを特徴としている。
【0026】
本発明の概念20は、概念19による方法であって、上記第2ソース測定ユニットが直流バイアス電流を上記電流信号に加えることを特徴としている。
【0027】
本発明の概念21は、1pF未満の容量を有する被試験デバイス(DUT)のインピーダンスを測定する方法であって、
1kHz未満のゼロでない周波数の交流成分を含む第1電気特性信号を上記被試験デバイスに供給するステップと、
上記第1電気特性信号に応じて、上記被試験デバイスの第2電気特性信号をモニタするステップと、
上記第1電気特性信号及び上記第2電気特性信号を同期させてデジタル化するステップと、
デジタル化した上記第1電気特性信号及び上記第2電気特性信号からインピーダンスを計算するステップと
を具えている。
【0028】
本発明の概念22は、概念21の方法であって、上記交流成分は第1ソース測定ユニットによって生成され、上記第2電気特性信号は第2ソース測定ユニットによってモニタされることを特徴としている。
【0029】
本発明の概念23は、概念22の方法であって、上記第2ソース測定ユニットが直流バイアス第1電気特性信号を上記第1電気特性信号に加えることを特徴としている。
【0030】
本発明の概念24は、概念22の方法であって、
上記第1ソース測定ユニットが上記第1電気特性信号を上記被試験デバイスの第1端子に供給し、
上記第2ソース測定ユニットが直流バイアス第1電気特性信号を上記被試験デバイスの第2端子に供給することによって、上記直流バイアス第1電気特性信号を上記第1電気特性信号に加えると共に、上記被試験デバイスの上記第2端子から上記第2電気特性信号を受けることを特徴としている。
【0031】
本発明の概念25は、概念21〜概念24の方法であって、上記第1電気特性が電圧の場合には上記第2電気特性は電流であり、上記第1電気特性が電流の場合には上記第2電気特性は電圧であることを特徴としている。
【0032】
本発明の目的、効果及び他の新規な点は、以下の詳細な説明を添付の特許請求の範囲及び図面とともに読むことによって明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、本発明による測定の実施形態の例のブロック図である。
図2図2は、本発明による測定の別の実施形態の例のブロック図である。
図3図3本発明による測定の更に別の実施形態の例のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、被試験デバイス(DUT)30に接続された理想化されたソース測定ユニット(SMU)12の例を含む測定の実施形態10を示す。可変電圧源14は、演算増幅器16の非反転入力端子に電圧V1を供給する。抵抗器18(R)によるフィードバック・ループによって、演算増幅器16の反転入力端子もV1の値となる。フィードバック・ループは、DUT30を流れる電流Iの電流源ともなることに注意されたい。結果として、抵抗器18間の電圧降下(VR−V1)は、DUT30を流れる電流に比例する(即ち、VR−V1=IR、つまり、I=(VR−V1)/R)。
【0035】
バッファ増幅器20は、電圧V1(これは、DUT30にかかる電圧の値)をバッファしたものを制御及び測定部22に供給し、バッファ増幅器24は、DUT30を流れる電流に抵抗値Rをかけたものである電圧(VR−V1)のバッファしたものを制御及び測定部22に供給する。
【0036】
制御及び測定部22には、電圧V1及び電流Iの値を測定し、加えてこれら値をデジタル化する機能がある。また、制御及び測定部22は、可変電圧源14の電圧V1を所望の値に制御できる。
【0037】
SMU12は、基本的には直流のデバイスではあるが、可変電圧源14の電圧値V1を調整する能力も有している。SMU12のフィードバック・ループで制約される帯域幅内において、V1の値は制御及び測定部22によって周期的に変更され、交流信号を生成する。典型的には、SMU12の帯域幅の制限は、1kHz以下である。これによって、SMU12は、例えば、1kHz以下の対応する正弦交流電圧信号を供給できる。
【0038】
基本的に小さなキャパシタンス(例えば、1pF以下)のDUT30のインピーダンスを、こうした低周波数で測定するため、周期的に変化する電圧信号V1がDUT30に印加され、DUT30を流れる電流Iがモニタ(観測)される。制御及び測定部22は、これら電圧信号及び電流信号を同期させてデジタル化することで、DUT30のインピーダンスを計算できる。これは、例えば、典型的な理想的でない容量性デバイスでは、容量性成分だけでなく、抵抗性成分を含むこともある複素数値である。
【0039】
1kHzの周波数、1pFのキャパシタンス、そして、公称1kVの電圧信号の場合では、容量性インピーダンスは約160メガ・オームとなり、電流は6マイクロ・アンペアのオーダーである。SMU12がアト・アンペアを測定できる場合であれば、過度に高い電圧を用いることなく、もっと低い周波数でもっとかなり高いインピーダンスを測定できると考えられる。
【0040】
制御及び測定部22は、多くの場合、高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズムを用いて実現される離散フーリエ変換(DFT)のような技術を用いることで、デジタル化された電圧及び電流からインピーダンスを効果的に計算できる。
【0041】
実際の動作では、測定実施形態10は、DUT30と並列な浮遊インピーダンス(例えば、SMUの出力インピーダンス、ケーブル・リーク、試験フィクスチャ・インピーダンス)によって理想からずれている。図2は、性能を向上させた測定実施形態10’を示し、これは2つのSMU12及び12’を用いる。
【0042】
SMU12は、交流電圧成分をDUT30に印加する一方、SMU12’は、直流バイアス電圧信号を供給し、直流バイアス電圧信号の上に交流電圧成分が乗せられる。これは、DUTを流れる交流信号の全てがSMU12’に戻るように働く。一方、演算増幅器16’の反転入力端子の電圧は、直流バイアス電圧V12で固定されるので、図1の実施形態と比較し、SMU12’に関し、DUT30と並列な浮遊インピーダンスの影響が低減される。従って、DUTに関して測定される電圧及びSMU12’で測定される電流は、DUT30のインピーダンスから得られる信号を、より正確に表すものとして用いることができる。夫々の制御及び測定部22及び22’は、互いに通信し、再度、DFTをインピーダンスの計算に利用できる。DUT30にかかる電圧は、V11−V12であり、DUT30を流れる電流は、(VR2−V12)/R2である。
【0043】
図2の実施形態は、複数ピンのキャパシタンスを同時に測定するものへと拡張できる。例えば、図3を参照すると、SMU12は、DUT30’に交流電圧信号成分を供給するのに使われる一方、SMU12’、12’’及び12’’’は、DUT30’のそれぞれに対応する試験ピンに直流バイアス電圧を供給し、DUT30’を通ってSMU12と夫々の試験ピン間を流れる電流を測定できる。SMU夫々の制御及び測定部は、相互に接続されている(Aで示す)。夫々のインピーダンスは、上述のようにして計算できる。
【0044】
電圧と電流は対となるものであるから、DUTのインピーダンスを測定するのに、電圧を印加して電流を測定する代わりに、電流を流して電圧を測定するようにもできることに注意されたい。SMUは、電圧を供給して電流を測定することと、電流を供給して電圧を測定することを相互に切り換えて同じようにできるよう設計されているので、こうした用途には特に有効である。
【0045】
本願の開示内容は例を示したものに過ぎず、本願で開示した原理から離れることなく、細かい点を追加、変更又は省略することによって、種々の変更が可能なことは明らかであろう。よって、本願発明は、本願で開示した実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0046】
10 測定実施形態
10’ 測定実施形態
10’’ 測定実施形態
12 ソース測定ユニット(SMU)
12’ ソース測定ユニット(SMU)
12’’ ソース測定ユニット(SMU)
12’’’ ソース測定ユニット(SMU)
14 可変電圧源
14’ 可変電圧源
14’’ 可変電圧源
14’’’ 可変電圧源
16 演算増幅器
16’ 演算増幅器
16’’ 演算増幅器
16’’’ 演算増幅器
18 抵抗器
18’ 抵抗器
18’’ 抵抗器
18’’’ 抵抗器
20 バッファ増幅器
20’ バッファ増幅器
20’’ バッファ増幅器
20’’’ バッファ増幅器
22 制御及び測定部
22’ 制御及び測定部
22’’ 制御及び測定部
22’’’ 制御及び測定部
24 バッファ増幅器
24’ バッファ増幅器
24’’ バッファ増幅器
24’’’ バッファ増幅器
30 被測定デバイス(DUT)
30’ 被測定デバイス(DUT)
図1
図2
図3