(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
蒸発器、圧縮機、凝縮器及び絞り装置から構成された冷凍サイクルと、乾燥用の衣類が投入されるドラムと、前記ドラム内へ空気を循環供給するものであって内部に前記蒸発器と前記凝縮器と送風ファンとが設けられた通風路とを備えた衣類乾燥機において、
前記圧縮機の駆動モータを交流モータで構成すると共に、
前記交流モータを可変速運転する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記交流モータに供給する交流電源の周波数として、前記交流モータの運転の効率が比較的良い下限周波数及び上限周波数を設定するに際して、設定された既存の乾燥運転コース別に下限周波数及び上限周波数を設定し、前記交流モータを可変速運転する際には、前記交流電源の周波数を前記下限周波数と前記上限周波数との間の範囲で可変させるように構成され、更に、前記交流モータを前記交流電源の周波数を初期値に固定した状態で、前記送風ファンのファンモータの回転数を可変制御しても、前記蒸発器の入口冷媒温度と出口冷媒温度の温度差が第1温度以下の場合には、前記交流電源の周波数を乾燥運転コース別に設定された下限周波数まで徐々に下降させ、前記温度差が第1温度よりも高い第2温度以上の場合には、上限周波数まで徐々に上昇させるように構成され、加えて、乾燥運転の安定期終了後においては、急速コース以外の乾燥運転コースでは前記交流電源の周波数を低下させ、急速コースでは安定期の前記交流電源の周波数を維持するように構成されていることを特徴とする衣類乾燥機。
前記制御手段は、前記交流モータに供給する交流電源の周波数として、前記交流モータの運転の効率が許容できる最小となる下限周波数及び上限周波数を設定し、前記交流モータを可変速運転する際には、前記交流電源の周波数を前記下限周波数と前記上限周波数との間の範囲で可変させることを特徴とする請求項1記載の衣類乾燥機。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、複数の実施形態によるドラム式洗濯乾燥機を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において実質的に同一の構成部品には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
まず、
図1には、ヒートポンプ式の乾燥機能を備えたドラム式洗濯乾燥機の基台1から機内構造2を示しており、基台1に図示しない外箱が結合され、その外箱と基台1とで機内構造2を覆うようになっている。機内構造2は、水槽3を主体としている。水槽3は、軸方向が前後の横軸円筒状を成すものであり、左右一対のサスペンション4により、前上がりの傾斜状に弾性支持されている。従って、水槽3は、前部が高く、後部が低くなっている。
【0010】
水槽3の背部には、モータ5を取付けている。モータ5は、例えば直流のブラシレスモータで構成されており、後述する制御装置34によって回転数制御(フィードバック制御)されることにより可変速運転される構成となっている。更に、上記モータ5は、アウターロータ形であり、図示しない回転軸を水槽3の内部に挿入している。
【0011】
水槽3の内部には、
図2に示すドラム6を収容している。このドラム6も軸方向が前後の横軸円筒状を成すもので、それを後部の中心部で上記モータ5の回転軸の先端部に取付けることにより、水槽3と同軸の前上がりの傾斜状に支持している。その結果、ドラム6はモータ5により直に回転されるようになっており、従って、ドラム6は回転槽であり、水槽3はドラム6を収容した外槽であって、モータ5はドラム6を回転させるドラム駆動装置として機能するようになっている。ドラム6の周側部(胴部)には、脱水及び通風用の小孔(図示しない)を全域にわたって多数形成すると共に、衣類掻き上げ用のバッフルを複数(図示しない)設けている。
【0012】
このほか、水槽3については、図示しないが、水槽3の内部からドラム6の内部に給水する給水弁を初めとする給水装置と、ドラム6から水槽3内の水を外部に排出する排水弁を初めとする排水装置を設けている。
【0013】
一方、水槽3の後方である外箱内の後下部には、
図1及び
図2に示すヒートポンプユニット9を送風ファン10と共に配置している。ヒートポンプユニット9は、ユニットケース11の内部に、
図3に示すアキュームレータ12を併設した圧縮機13、凝縮器(コンデンサ)14、絞り装置(減圧手段)であるキャピラリ15、及び蒸発器(エバポレータ)16を配設して構成されている。ヒートポンプユニット9の上記各部品を
図3に示す順に冷媒流路7を介して接続することによって、ヒートポンプ(冷凍サイクル)17を構成している。
【0014】
本実施形態では、圧縮機13の駆動モータは、交流モータ例えば誘導モータ50(
図5参照)で構成されており、圧縮機13はいわゆるACコンプレッサからなるものである。そして、圧縮機13の誘導モータ50は、後述する制御装置34によって周波数制御(フィードバック制御)されることにより可変速運転される構成となっている。
【0015】
尚、ヒートポンプ17には、冷媒(及び潤滑用のオイル)を封入している。また、ユニットケース11内では、詳しくは図示しないが、蒸発器16及び凝縮器14を風上側から順に通る風路と、圧縮機13及びキャピラリ15を配置したスペースとを仕切壁により隔てている。
【0016】
ユニットケース11の
図2中の左側端部の上部には、上記蒸発器16及び凝縮器14を通る風路に連なる入気口18を形成しており、この入気口18には、水槽3についての排気ダクト19を接続している。排気ダクト19は、第1の排気ダクトである上部排気ダクト19aと、第2の排気ダクトである後部排気ダクト19bとから成るものである。後部排気ダクト19bは、水槽3の背部に上下方向を指向させて配設しており、その下端部を上記ユニットケース11の入気口18に接続している。
【0017】
上部排気ダクト19aは、水槽3の外周部中の上部に前後の軸方向を指向させて配設しており、その後端部に上記後部排気ダクト19bの上端部を接続している。上部排気ダクト19aの中間部には、上方へ開放するフィルタ収納部20を設けている。このフィルタ収納部20内にはフィルタ21を収納し、このフィルタ21によってもっぱら衣類から散出する糸くずを捕獲するようになっている。上部排気ダクト19aの前端部は、
図1に示す蛇腹状のダクト継手22を介して、水槽3の上部の前部に形成した排気口23に接続している。
【0018】
送風ファン10は、ケーシング10aの内部に
図2及び
図3に示す送風羽根10bを配設し、この送風羽根10bを回転駆動するモータ10cを
図3に示すようにケーシング10a外に配設して成るものである。尚、送風ファン10のモータ10cは、本実施形態では、直流のブラシレスモータで構成されており、後述する制御装置34によって回転数制御(フィードバック制御)されることにより可変速運転される構成となっている。
【0019】
そして、送風ファン10のケーシング10aをユニットケース11の
図2中の右側部に配置して、該ケーシング10aの入口部(図示せず)をユニットケース11の前記蒸発器16及び凝縮器14を通る風路の出口部(図示せず)と連通させている。また、ケーシング10aは出口部10dを上部に有しており、その出口部10dを、
図1に示すように、蛇腹状のダクト継手24を介して、給気ダクト25の下端部に接続している。
【0020】
給気ダクト25は、水槽3の背部に配設されており、下方の基端部を上記ケーシング10aの出口部10dに蛇腹状のダクト継手24を介して接続している。これに対して、水槽3の後部、中でも後端板部の上部には、給気口26を形成しており、この給気口26に給気ダクト25の上端部を連通接続させている。
【0021】
以上の、ダクト継手22、排気ダクト19(上部排気ダクト19a、後部排気ダクト19b)、ユニットケース11の蒸発器16及び凝縮器14を通る風路、送風ファン10(ケーシング10a)、ダクト継手24、及び給気ダクト25により、水槽3の排気口23と給気口26とを接続する通風路27を構成している。
【0022】
図3は、通風路27を前記ヒートポンプ17と併せて概略的に示している。通風路27内における蒸発器16の近傍のドラム6側の部位(ドラム6出口側部位)には、ドラム出口空気温度を検出するドラム出口空気温度センサ28が設けられている。給気ダクト25内には、ドラム入口空気温度を検出するドラム入口空気温度センサ29が設けられている。蒸発器16の入口に接続された冷媒流路7には、蒸発器16の入口冷媒温度を検出するエバ入口冷媒温度センサ30が設けられている。蒸発器16の出口に接続された冷媒流路7には、蒸発器16の出口冷媒温度を検出するエバ出口冷媒温度センサ31が設けられている。圧縮機13の吐出口に接続された冷媒流路7には、圧縮機13の出口冷媒温度を検出する圧縮機出口冷媒温度センサ32が設けられている。凝縮器14には、凝縮器14の冷媒温度を検出する凝縮器冷媒温度センサ33が設けられている。
【0023】
また、
図2は、以上の機内構造2を概略的に示している。
上記構成のドラム式洗濯乾燥機の乾燥運転にあっては、ヒートポンプユニット9において、圧縮機13の駆動により当該圧縮機13から吐出された気体冷媒が、凝縮器14において凝縮されて液体冷媒となる。この液体冷媒がキャピラリ15によって膨張されて霧状となり、当該霧状の冷媒が、蒸発器16において外気との熱交換により気化され、気体冷媒が圧縮機13により圧縮されて高温、高圧とされて吐出されるという循環が行われる。この場合、送風ファン10の送風作用に伴う空気の循環により、水槽3(ドラム4)内の衣類から湿気を奪って多量の蒸気を含んだ空気が、通風路27内の蒸発器16部分を通って冷却されることで、蒸気が凝縮(あるいは昇華)されて除湿される。この除湿空気が凝縮器14部分を通ることにより加熱されて乾いた温風となり、再びドラム4内に供給され、衣類の乾燥に供される。
【0024】
図4は、上記したドラム式洗濯乾燥機の電気的構成を概略的に示すブロック図である。制御装置34は、マイクロコンピュータを主体に構成されており、ドラム4内の衣類の洗濯〜乾燥を行う洗濯行程〜乾燥行程を含む洗濯乾燥機1の動作全般を制御する。
【0025】
制御装置34には、ユーザが運転コース等の設定や指示等を行うための操作部35、水槽3内の水位を検出する水位センサ36、外箱の底部に設けられた外気温検出部37、ドラム出口空気温度センサ28、ドラム入口空気温度センサ29、エバ入口冷媒温度センサ30、エバ出口冷媒温度センサ31、圧縮機出口冷媒温度センサ32、凝縮器冷媒温度センサ33が接続され、それらの信号が入力される。
【0026】
また、制御装置34には、モータ5等の回転速度を検出する回転センサ38、モータ5等に流れる電流を検知する電流センサ39、水槽3の振動を検出するように設けた振動センサ40が接続され、それらの信号も入力される。制御装置34は、振動センサ40の検出値に基づき振幅(振動値)を算出するようになっている。また、制御装置34には、当該振幅に対する閾値や、後述する予想所要時間テーブル、モータ5、圧縮機13及び送風ファン10の回転数に係るデータテーブル等が記憶された不揮発性記憶手段(EEPROMやフラッシュメモリ等)が設けられている。
【0027】
制御装置34は、入力された各種の信号や、予め記憶されている運転制御プログラムに基づいて、ユーザに残り運転時間等を知らせる表示部41、必要な報知を行うブザー42、給水弁43、排水弁44、モータ5、ファンモータ10c、圧縮機(誘導モータ)13等を駆動制御する。こうして、制御装置34により、ユーザの選択した運転コースに応じて、洗い、すすぎ、脱水等を含む洗濯行程、並びに、乾燥行程が自動で実行される。
【0028】
さて、本実施形態では、乾燥行程の前にドラム6を高速回転(脱水運転)させ、その後、ドラム6を低速で正逆回転させながら、ヒートポンプユニット9の圧縮機13及び送風ファン10の運転を開始して、ドラム6内の衣類を乾燥させる乾燥行程を実行する。
【0029】
具体的には、ヒートポンプユニット9の運転開始前に行われるドラム6の高速回転は、その所定の速度領域に至るまでの速度上昇過程で、水槽3の振幅が前記閾値以上の場合に例えば1000rpmに設定され、当該振幅が閾値に満たない場合に例えば1400rpmに設定される。こうして、ドラム6の回転速度が1400rpmあるいは当該回転速度より低速の1000rpmに至ると、その回転速度が維持される。この高速回転中は、1000rpmであっても、ドラム6内の衣類が遠心力でドラム6の周壁に張り付くようにして、衣類に残留する水が遠心力により振り切られて排出される。ここで、「高速回転における所定の速度領域」とは、ドラム6内の衣類の水分を遠心力により除去するようなドラム6(モータ5)の速度領域であり、上記の具体的な値に限定するものではない。
【0030】
そして、上記脱水運転が完了したら、乾燥行程を開始する、即ち、ドラム6の回転速度を低速例えば50rpm程度に設定して正逆回転させ、更に、圧縮機13を起動してヒートポンプユニット9の運転を開始させると共に、送風ファン10の運転を開始させる。この場合、制御装置34は、圧縮機13の誘導モータ50の回転数(周波数)をインバータ制御により可変速運転する構成となっている。
【0031】
ここで、誘導モータ50をインバータ制御するインバータ装置としては、例えば特開2010−57216号公報に記載されている構成を用いることが好ましい。以下、この誘導モータ50のインバータ装置51について、
図5を参照して簡単に説明する。尚、上記インバータ装置51は、制御装置34に内蔵されている。
【0032】
誘導モータ50のインバータ装置51の電気的構成を示す
図5において、直流電源52は、交流電源52a、図示しないリアクトルと整流ダイオード52b、コンデンサ52cによって構成されている。直流電源52には、例えば抵抗素子からなる電流検出素子54(ワンシャント電流検出)を負側に介して、例えばIGBTやMOSFETなどの6個のスイッチング素子を3相ブリッジ接続した3アームのインバータ回路53が接続されている。
【0033】
インバータ回路53の出力端子のうち、端子Uは誘導モータ50の補助巻線50aに(A相)、端子Vは主巻線50bに(B相)、端子Wは補助巻線50aと主巻線50bとの中点に(N相)接続されている。ここで、誘導モータ50は、通常は補助巻線にコンデンサを配置して単相交流電源で動作するコンデンサラン型の単相誘導モータよりコンデンサを排除したもの(2相誘導モータ)であり、補助巻線50aと主巻線50bとは巻数や線径が異なる所謂不平衡の状態のものである。
【0034】
電流検出部55(電流検出手段)は、電流検出素子54と、その両端電圧を増幅し、AD変換によりマイクロコンピュータ(マイコン)58が取り扱える電流データIdcにする電流検出部62、及びマイコン58内でソフトウェアにより構成される第1電流変換部63からなっている。
【0035】
ベクトル制御演算部56(ベクトル制御演算手段)は、マイコン58のソフトウェアにより実現される機能であり、第2電流変換部64(電流平衡化手段)、dq軸に変換する第3電流変換部65、回転角を決定する誘起電圧演算部66、周波数推定部67、積分部68、dq軸電圧を決定する加算器78及び79、PI演算器71及び73、磁束指令部72、出力電圧を決定する第1電圧変換部74、第2電圧変換部75(電圧不平衡化手段)から構成されている。PWM信号形成部57(PWM信号形成手段)は、ソフトウェアにより実現される第3電圧変換部76(指令電圧演算手段)、PWM部77から構成される。
【0036】
また、マイコン58には、直流電源52が出力するDC電圧に対するインバータ回路53の出力電圧の比を求める電圧率演算部69、その結果に基づく周波数指令部70が設けられている。インバータ回路53の直流母線間には、例えば分圧抵抗で構成される直流電圧検出部80(直流電圧検出手段)が配置されており、検出された電圧Vdcは、電圧率演算部69及び電圧変換部76に与えられている。
【0037】
本実施形態の場合、インバータ装置51は、電源周波数を可変制御した2相の交流電源、例えば30Hzから80Hzまでの範囲の例えば90度位相をずらした2相の交流電源を生成して誘導モータ50の2相の巻線50a、50bに供給可能な構成となっている。上記インバータ装置51は、上記範囲の2相の交流電源を圧縮機13の誘導モータ50へ供給することにより、上記誘導モータ50の回転数(周波数)を30Hzから80Hzまでの範囲で可変速制御(可変速運転)することができる。この構成の場合、誘導モータ50は、誘導モータ用進相コンデンサが不要である。
【0038】
尚、前記モータ5及び前記ファンモータ10c(いずれも直流ブラシレスモータ)をインバータ制御により可変速運転するインバータ装置としては、周知構成(例えば特開2010−273505号公報)を用いることが好ましい。
【0039】
さて、本実施形態の圧縮機13の誘導モータ50の周波数特性を、
図6に示す。この
図6に示すように、上記圧縮機13の誘導モータ50は、電源周波数が例えば50Hzまたは60Hzのときに、運転の効率が最も良くなるように構成されている。そして、
図6から、上記誘導モータ50の運転の効率が比較的良い下限周波数及び上限周波数は、例えば40Hz及び70Hzであることがわかる。これにより、誘導モータ50に供給する交流電源の電源周波数を、40Hzから70Hzまでの間の範囲内で可変させるように制御すると、誘導モータ50の運転の効率が比較的良い状態となる。
【0040】
更に、上記
図6から、上記誘導モータ50の運転の効率が許容できる最小である場合の下限周波数び上限周波数は、例えば30Hz及び80Hzであることがわかる。これにより、誘導モータ50に供給する交流電源の電源周波数を、30Hzから80Hzまでの間の範囲内で可変させるように制御すると、誘導モータ50の運転の効率が許容できる最小の状態となる。
【0041】
さて、本実施形態のドラム式洗濯乾燥機の乾燥運転においては、省エネコース、標準コース、急速(スピード)コースの3つの乾燥運転コースが用意されており、各コースによって圧縮機13の誘導モータ50の回転数(運転周波数、電源周波数)の可変制御を変更するように構成しており、各コース毎の運転周波数の設定の一例を、
図7に示す。
【0042】
即ち、乾燥運転の起動時(初期)においては、圧縮機13の誘導モータ50の電源周波数を、省エネコースでは例えば40Hzとし、標準コースでは例えば50Hzとし、急速コースでは例えば60Hzとする。そして、乾燥運転の安定期においては、圧縮機13の誘導モータ50の電源周波数を、省エネコースでは例えば30〜60Hzの範囲内で可変させ、標準コースでは例えば40〜70Hzの範囲内で可変させ、急速コースでは例えば50〜80Hzの範囲内で可変させる。更に、乾燥運転の安定期終了後においては、圧縮機13の誘導モータ50の電源周波数を、省エネコースでは例えば30Hzとし、標準コースでは例えば40Hzとし、急速コースでは電源周波数を変更しないとする。尚、乾燥運転の安定期終了の判定、及び、乾燥終了の判定は、例えばドラム出口空気温度で判定する。
【0043】
また、乾燥運転の起動時においては、送風ファン10の風量を、上記3つのコースとも同じ風量であって比較的高風量、即ち、送風ファン10のファンモータ10aの回転速度を例えば5000rpmに設定する。
【0044】
そして、乾燥運転の安定期においては、蒸発器16の入口冷媒温度と出口冷媒温度の温度差Δte、即ち、冷媒の過熱度(スーパーヒート)Δteがほぼ一定になるように、具体的には、上記過熱度Δteが例えば0℃〜10℃の範囲内に収まるように安定化させる制御を行う。本実施形態では、まず、圧縮機13の誘導モータ50の電源周波数を初期値に固定した状態で、送風ファン10のファンモータ10aの回転数を可変制御する。この送風ファン10の回転数の可変制御を行っても、上記過熱度Δteが0℃以下の場合には、圧縮機13の誘導モータ50の電源周波数を、運転の効率が良い下限の電源周波数(省エネコースでは30Hz、標準コースでは40Hz、急速コースでは50Hz)まで少しずつ下降させる制御を行う。反対に、上記過熱度が10℃以上の場合には、圧縮機13の誘導モータ50の電源周波数を、運転の効率が良い上限の電源周波数(省エネコースでは60Hz、標準コースでは70Hz、急速コースでは80Hz)まで少しずつ上昇させる制御を行う。
【0045】
この後、安定期乾燥が終了した場合、圧縮機13の誘導モータ50の電源周波数を下限周波数(省エネコースでは30Hz、標準コースでは40Hz、急速コースでは変更しない)に低下させて、効率が若干悪くなるが、入力を低減させる制御を行う。以下、上述した運転制御について、
図8ないし
図10のフローチャートを参照して説明する。
【0046】
まず、
図8のステップS10においては、ドラム出口空気温度が第1の判定温度td1以上であるか否かを判断する。ここで、ドラム出口空気温度が第1の判定温度td1以上でなければ、即ち、乾燥安定期が終了していないときには、「NO」へ進み、ステップS20へ進む。
【0047】
ステップS20では、上記過熱度Δteが0℃よりも大きいか否かを判断する。ここで、過熱度Δteが0℃よりも大きくないとき(Δteが0℃以下のとき)には、「NO」へ進み、ステップS30へ進む。ステップS30では、送風ファン10の風量(回転数)が最大(マックス例えば5500rpm)であるか否かを判断する。ここで、送風ファン10の風量が最大でなければ、「NO」へ進み、ステップS40へ進み、送風ファン10の風量をアップする。具体的には、ファンモータ10cの回転数を例えば100rpmアップする。そして、ステップS10へ戻る。
【0048】
また、上記ステップS10において、ドラム出口空気温度が第1の判定温度td1以上でないとき、即ち、乾燥安定期が終了したときには、「YES」へ進み、ステップS50へ進む。ステップS50では、ドラム出口空気温度が第2の判定温度td2以上であるか否かを判断する。ここで、ドラム出口空気温度が第2の判定温度td2以上でなければ、即ち、乾燥が終了していないときには、「NO」へ進み、ステップS60へ進む。ステップS60では、急速コース(スピードモード)以外は下限周波数を設定し(省エネコースでは30Hz、標準コースでは40Hzに設定し)、急速コースは周波数を変更しないでそのままとして、ステップS50へ戻る。一方、ステップS50において、ドラム出口空気温度が第2の判定温度td2以上であれば、「YES」へ進み、乾燥運転を終了する。
【0049】
また、上記ステップS20において、過熱度Δteが0℃よりも大きいときには、「YES」へ進み、
図9のステップS110へ進む。ステップS110においては、圧縮機出口冷媒温度または凝縮器冷媒温度が、あらかじめ設定した圧縮機出口冷媒温度または凝縮器冷媒温度の各設定上限温度からそれぞれ5℃を差し引いた温度よりも低いか否かを判断する。ここで、圧縮機出口冷媒温度または凝縮器冷媒温度が上記各設定上限温度からそれぞれ5℃を差し引いた温度よりも低いときには、「YES」へ進み、ステップS120へ進む。尚、圧縮機出口冷媒温度または凝縮器冷媒温度が上記各設定上限温度からそれぞれ5℃を差し引いた温度以上のときには、「NO」へ進み、
図8のステップS10へ戻る。
【0050】
上記ステップS120においては、上記過熱度Δteが10℃よりも高いか否かを判断し、ここで、過熱度Δteが10℃よりも高いときには、「YES」へ進み、ステップS130へ進む。尚、過熱度Δteが10℃以下のときには、「NO」へ進み、
図8のステップS10へ戻る。
【0051】
上記ステップS130においては、圧縮機13の誘導モータ50に供給している交流電源の電源周波数Faが安定上限値F1よりも小さいか否かを判断する。安定上限値F1は、省エネコースでは例えば60Hzであり、標準コースでは例えば70Hzであり、急速コース(スピードモード)では例えば上限周波数である80Hzである。ここで、電源周波数Faが安定上限値F1よりも小さいときには、「YES」へ進み、ステップS140へ進む。尚、電源周波数Faが安定上限値F1以上のときには、「NO」へ進み、
図8のステップS10へ戻る。
【0052】
上記ステップS140では、電源周波数Faが(安定上限値F1−5Hz)よりも小さいか否かを判断する。ここで、電源周波数Faが(安定上限値F1−5Hz)よりも小さいときには、「YES」へ進み、ステップS150へ進み、電源周波数Faを例えば5Hzアップさせ、
図8のステップS10へ戻る。また、電源周波数Faが(安定上限値F1−5Hz)以上のときには、「NO」へ進み、ステップS160へ進み、電源周波数Faを安定上限値F1とし、
図8のステップS10へ戻る。
【0053】
次に、
図8のステップS30において、送風ファン10の風量が最大であるときには、「YES」へ進み、
図10のステップS210へ進む。ステップS210では、圧縮機13の誘導モータ50に供給している交流電源の電源周波数Faが安定下限値F2以上であるか否かを判断する。安定下限値F2は、省エネコースでは例えば30Hzであり、標準コースでは例えば40Hzであり、急速コースでは例えば50Hzである。ここで、電源周波数Faが安定下限値F2以上のときには、「YES」へ進み、ステップS220へ進む。尚、電源周波数Faが安定下限値F2よりも小さいときには、「NO」へ進み、
図8のステップS10へ戻る。
【0054】
上記ステップS220では、電源周波数Faが(安定下限値F2+5Hz)以上であるか否かを判断する。ここで、電源周波数Faが(安定下限値F2+5Hz)以上であるときには、「YES」へ進み、ステップS230へ進み、電源周波数Faを例えば5Hzダウンさせ、
図8のステップS10へ戻る。また、電源周波数Faが(安定下限値F2+5Hz)よりも小さいときには、「NO」へ進み、ステップS240へ進み、電源周波数Faを安定下限値F2とし、
図8のステップS10へ戻る。
【0055】
上記した構成の本実施形態によれば、圧縮機13の駆動モータを誘導モータ50で構成すると共に、その誘導モータ50を可変速運転する制御装置34を備えたので、製品コストを安くすることができ、しかも、乾燥性能をきめ細かく制御することができる。また、制御装置34は、誘導モータ50に供給する交流電源の周波数として、誘導モータ50の運転の効率が許容できる最小となる下限周波数(例えば30Hz)及び上限周波数(例えば80Hz)を設定し、誘導モータ50を可変速運転する際には、交流電源の周波数を前記下限周波数と前記上限周波数との間の範囲で可変させるように構成したので、誘導モータ50の運転の効率が悪化したとしても、許容できる最小となる状態にとどめることができる。
【0056】
更に、上記実施形態では、誘導モータ50の運転の効率が比較的良い下限周波数及び上限周波数として、下限周波数(例えば40Hz)及び上限周波数(例えば70Hz)を設定し、誘導モータ50を可変速運転する際には、交流電源の電源周波数を、下限周波数から上限周波数までの間の範囲内で可変させるように構成したので、誘導モータ50の運転の効率が悪化したとしても、誘導モータ50の運転の効率を比較的良い状態に保持することができる。
【0057】
また、乾燥運転コースとして、省エネコース、標準コース、急速(スピード)コースの3つの乾燥運転コースを用意し、各コースによって圧縮機13の誘導モータ50の回転数(運転周波数、電源周波数)の可変制御を変更設定するように構成したので、乾燥運転コースに応じた最適な運転の効率で誘導モータ50を駆動制御することができる。
【0058】
更に、上記実施形態では、例えば90度位相をずらした2相の交流電源を生成して誘導モータ50の2相の巻線50a、50bに供給するように構成したので、誘導モータ50には誘導モータ用進相コンデンサが不要となり、誘導モータ50の製造コストをより一層低減することができる。また、上記実施形態では、ヒートポンプユニット9(冷凍サイクル)において、電子膨張弁に代えてキャピラリ15を用いるように構成したので、製造コストを低減することができる。
【0059】
(第2実施形態)
図11は、第2実施形態を示すものである。尚、第1実施形態と同一構成には同一符号を付している。この第2実施形態においては、インバータ装置51は、誘導モータ50に供給する2相の交流電源の電圧値を可変制御可能なように構成されており、電源周波数及び電源電圧値を可変制御することにより、V(電圧)/F(周波数)比を一定に制御している。これにより、
図11において、「Δ」マークで示すように、誘導モータ50の運転の効率が向上する。尚、「×」マークは第1実施形態(V/F一定制御をしない構成、即ち、電源電圧値を一定にする構成)を示す。
【0060】
ここで、V/F一定にしながら電源周波数を可変させる制御の例を説明する。例えば、誘導モータ50に供給する交流電源の周波数が60Hzのとき、定格電圧が110Vであったとすると、V/F比は1.83となる。上記誘導モータ50に対して、周波数を例えば5Hz下げて55Hzの周波数で運転する場合には、電圧を55Hz*1.83=101Vに低下させて運転する。このように運転制御することにより、
図11に示すように、周波数だけ変化させる構成に比べて、運転の効率を改善することができ、更に高効率な運転が可能となる。この結果、価格が安い圧縮機13(ACコンプレッサ)及びキャピラリ15を使用して製造コストを低下させながら、運転の効率の良い、省エネ性の高い乾燥運転を実現することができる。
【0061】
上述した以外の第2実施形態の構成は、第1実施形態と同じ構成となっている。従って、第2実施形態においても、第1実施形態とほぼ同じ作用効果を得ることができる。特に、第2実施形態によれば、誘導モータ50を可変速制御する際に、V/F一定制御を実行するように構成したので、誘導モータ50の運転の効率をより一層向上させることができる。
【0062】
(第3実施形態)
図12は、第3実施形態を示すものである。尚、第1実施形態と同一構成には同一符号を付している。この第3実施形態においては、
図12に示すように、圧縮機13のケース81を防音性の高い断熱材からなるカバー82で覆った。
【0063】
本実施形態のドラム式洗濯乾燥機で乾燥運転を行う場合に、室内が低温例えば5℃程度であったときには、乾燥運転の立ち上がり時に、ドラム出口空気温度が5℃プラスアルファくらいまで下がるため、蒸発器16の温度(エバ温度)が0℃よりも低いマイナス温度となり、蒸発器16のフィンに着霜する可能性が生じる。これに対して、第3実施形態によれば、圧縮機13を運転すると損失が熱となって圧縮機13のケース81を暖めるが、このとき、断熱性を有するカバー82で上記ケース81が覆われているので、ケース81から周囲への熱リークが抑えられ、ケース81自身の温度が上昇しやすくなる。この結果、第3実施形態の構成では、圧縮機13の出口の冷媒ガスの温度が上昇し易くなるから、ドラム出口空気温度を早く上昇させることができる。そして、圧縮機13のケース81の温度の上昇が早くなると、該ケース81内の油の温度上昇も早くなることから、油の中に溶け込んでいる冷媒の蒸発が活発となり、冷媒が早くガス化してサイクル内を循環できるため、圧縮機13の仕事量が早く増加して、早く乾燥の安定状態になりやすい。よって、ドラム出口空気温度が上がるため、圧縮機13の温度がマイナスでも、蒸発器16のフィン部は加熱されることからから、フィン部に霜が発生しないで結露する現象を早く実現できる。これにより、フィン部の着霜により風量が低下して、乾燥スピードが悪化し、最悪は、乾燥できなくなるという不具合を防止することができる。
【0064】
上述した以外の第3実施形態の構成は、第1実施形態の構成と同じ構成となっている。従って、第3実施形態においても、第1実施形態とほぼ同じ作用効果を得ることができる。特に、第3実施形態によれば、断熱性を有するカバー82で圧縮機13のケース81を覆ったので、室内が低温時における乾燥運転の初期の蒸発器16のフィン部への着霜を防止することができる。
【0065】
(その他の実施形態)
以上説明した複数の実施形態に加えて以下のような構成を加えても良い。
第1実施形態では、乾燥運転コースとして、省エネコース、標準コース、急速コースの3つを用意し、各コースによって圧縮機13の誘導モータ50の回転数(運転周波数、電源周波数)の可変制御を変更設定(
図7参照)するように構成したが、これに限られるものではなく、乾燥運転コースを2種類以下または4種類以上としても良いし、また、コース毎の具体的な運転周波数の設定については、
図7に示す設定値は一例であり、各設定値は種々変更することが好ましい。
【0066】
また、第1実施形態では、圧縮機13の誘導モータ50の回転数(運転周波数、電源周波数)を可変制御するに際して、インバータ装置51によってフィードバック制御(例えばベクトル制御)するように構成したが、これに代えて、オープンループ制御するように構成しても良い。このように構成すると、インバータ装置51の構成を簡略化することができる。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。