特許第6293451号(P6293451)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6293451環境親和型車両のバッテリーモジュール間接冷却装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6293451
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】環境親和型車両のバッテリーモジュール間接冷却装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/613 20140101AFI20180305BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20180305BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20180305BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20180305BHJP
   H01M 10/653 20140101ALI20180305BHJP
   H01M 10/6551 20140101ALI20180305BHJP
   H01M 10/6552 20140101ALI20180305BHJP
   H01M 10/6555 20140101ALI20180305BHJP
   H01M 10/6561 20140101ALI20180305BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20180305BHJP
   F28D 15/02 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   H01M10/613
   H01M10/615
   H01M10/625
   H01M10/647
   H01M10/653
   H01M10/6551
   H01M10/6552
   H01M10/6555
   H01M10/6561
   H01M10/658
   F28D15/02 101N
   F28D15/02 Z
   F28D15/02 101H
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-219440(P2013-219440)
(22)【出願日】2013年10月22日
(65)【公開番号】特開2014-216313(P2014-216313A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年8月4日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0046449
(32)【優先日】2013年4月26日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】チン ウ,クァク
(72)【発明者】
【氏名】ト ソク,ハン
(72)【発明者】
【氏名】コン グ,イ
(72)【発明者】
【氏名】キョン ファ,ソン
(72)【発明者】
【氏名】ヒョク,カン
(72)【発明者】
【氏名】チョン フン,ソ
【審査官】 小池 堂夫
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/020614(WO,A1)
【文献】 韓国登録特許第10−1055422(KR,B1)
【文献】 国際公開第2012/091459(WO,A2)
【文献】 特開2011−108617(JP,A)
【文献】 特開2011−243524(JP,A)
【文献】 特開2011−014436(JP,A)
【文献】 特開2012−015096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/00−15/06
H01M 10/52−10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリーセルのうち選択された二つ以上のバッテリーセルの間に、ヒートパイプをオーバーモールディングして埋め込んだ熱伝導性の界面プレートを密着配置し、前記ヒートパイプの上端部に一体に連結されたヒートシンクを、冷却空気流路に載置させ、前記界面プレートが配置されていないバッテリーセルの間に、面状発熱体が密着配置され、
前記面状発熱体は、
バッテリーセルとの完全な面接触のためのポリウレタン層と、発熱時に耐熱性を担うポリエチレンテレフタレート(PET)層とがラミネートされたフィルムと、
フィルムのポリエチレンテレフタレート層上にコーティングされる発熱体と、
発熱体を保護するために、発熱体上にコーティングされて表面硬化されたLSR材質の保護層と、から構成されたことを特徴とする環境親和型車両のバッテリーモジュール間接冷却装置。
【請求項2】
前記界面プレートは、高い熱伝導性を有する熱可塑性のエラストマー素材として採択されたことを特徴とする請求項1に記載の環境親和型車両のバッテリーモジュール間接冷却装置。
【請求項3】
前記ヒートパイプは、アルミニウム材質を用いた帯状の平面状に備えられ、界面プレート内に等間隔に埋め込まれたことを特徴とする請求項1に記載の環境親和型車両のバッテリーモジュール間接冷却装置。
【請求項4】
前記ヒートパイプは、1.0ないし1.5mmの厚さに製作され、前記界面プレートは、ヒートパイプの厚さを含めて、2ないし5mmの厚さにモールディングされたことを特徴とする請求項1または3に記載の環境親和型車両のバッテリーモジュール間接冷却装置。
【請求項5】
前記ヒートシンクは、ヒートパイプ内に気化した作動流体を凝縮させる凝縮部であって、ヒートパイプの上端部に、複数の放熱板が上下方向に等間隔を成して一体に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の環境親和型車両のバッテリーモジュール間接冷却装置。
【請求項6】
前記面状発熱体は、0.5mm以下の厚さを有することを特徴とする請求項1に記載の環境親和型車両のバッテリーモジュール間接冷却装置。
【請求項7】
前記バッテリーセルを取り囲む外部ハウジングは、熱伝導度の低い素材で形成され、その上端部には、前記ヒートシンクが載置される単一の冷却空気流路が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の環境親和型車両のバッテリーモジュール間接冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境親和型車両のバッテリーモジュール間接冷却装置に係り、より詳しくは、ヒートパイプが挿入された界面プレートを用いて、バッテリーモジュールを間接冷却させることで、バッテリーの放熱性能を極大化すると共に、バッテリー性能の低下を防止することが可能な環境親和型車両のバッテリーモジュール間接冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環境親和型車両とは、排気ガスの排出がない電気自動車、燃料電池自動車などを称し、これらの環境親和型車両には、走行のためのモータ駆動のために、バッテリーが搭載されている。
【0003】
電気自動車の場合、バッテリーシステムの信頼性と安定性は、電気自動車の商品性を決定づける最も重要な要素として作用するので、多様な外部温度の変化によるバッテリー性能の低下を防止するために、バッテリーシステムの適正温度範囲である35ないし40℃を維持しなければならない。
【0004】
このために、一般的な気候条件では、優秀な放熱性能を有し、かつ低い温度環境では、バッテリーの適正温度を維持させることが可能なポーチセルモジュール用の熱制御システムが必要である。
【0005】
電気自動車用バッテリーの場合、高速充電、高出力、繰り返し充電回数などによって発生する熱により、バッテリーセル間の局部的な温度差が発生したり、バッテリーの効率及び安定性を阻害するサーマルランナウェイ(熱暴走)現象が発生したりする。これは、バッテリーの内部で発生する熱より、外部への熱放出ないし熱拡散能力が不足してもたらすものと知られている。
【0006】
バッテリーの種類のうち、ポーチ型バッテリーセルは、充電及び放電時に、リチウムイオンの電極物質へのインターカレーション及びデインターカレーションにより、バッテリーの体積が変化する。これによって、バッテリー内の電極の膨張と共に、二つの電極物質間の分離層の損傷が発生する。
【0007】
前記分離層の損傷は、バッテリーの内部抵抗の発生と共に、深刻なバッテリー性能の低下、バッテリーの最終容量の減少などをもたらすので、バッテリーの体積膨張に対応するための放熱界面素材が要求されている。
【0008】
ポーチ型バッテリーの膨張がはなはだしい場合、ポリマーポーチが損傷して、内部の電解液の漏れ及びガス噴出などの危険が発生し、ポーチ型セルモジュールは、複数のセルを積層させたものであるので、膨張やガス噴出または爆発が発生する場合、隣接セルにも直接的な損傷を加える。
【0009】
また、ポーチ型バッテリーの膨張は、バッテリーセル間の冷却のための冷却空気流路の大きさを減少させて、発熱現象を加速化させる要因ともなる。
【0010】
一方、従来の技術の一例として、冷却空気がバッテリーの表面に直接接触して、バッテリーの発生熱を放熱させる直接冷却方式が広く知られているところ、この場合には、バッテリーを冷却空気が直接冷却するので、バッテリーを取り囲むハウジング素材の熱伝導度を要求していないが、冷却空気が流れる冷却空気流路は、各バッテリーセルの間に一定の大きさ以上確保されなければならないので、単位体積当たりセルの挿入個数を増加させるのに限界がある。
【0011】
従来の技術の他の例として、リチウムイオンバッテリーの間に、平板型のヒートパイプを挿入し、ヒートパイプの上端部に、凝縮部であるルーバーフィン状の放熱フィンを互いに交差させた間接冷却構造を形成して、バッテリーの放熱特性を向上させることが可能なヒートパイプを用いたバッテリー放熱構造が、特許文献1に開示されている。
【0012】
しかし、高速充放電によるバッテリー(例えば、ポーチ型バッテリー)の体積膨張に全く対応できないという短所がある。
【0013】
一般的に、ポーチ型バッテリーの表面は平らでなく、前記の従来の技術に開示された平板型のヒートパイプが、バッテリーセルの間に載置される場合、平板型のヒートパイプと、各バッテリーセルとの間の平坦度の低下によって、界面伝達抵抗が発生し、これは、熱伝達効率を低下させる要因となる。
【0014】
また、前記の従来の技術の他の例において適用した平板型のヒートパイプの場合、バッテリーの表面に直接接触するので、ヒートパイプの製造過程で発生した金属バー(burr)により、車両の振動時、またはバッテリーモジュールの組み立て過程で、ポーチ型バッテリーが破れる危険がある。
【0015】
一方、従来のバッテリーモジュールの他の短所としては、車両の冷始動性や低温環境における出力低下に対応することが可能な素材ないし装置が全く備えられていないというものがある。
【0016】
すなわち、図1に示すように、一般的なリチウムイオンバッテリーの場合、低温環境で車両の出力性能の低下をもたらすが、具体的には、10℃以下から出力性能が低下し始めて、−20℃で約30%性能が低下するということが分かる。したがって、冷始動及び低温環境で、バッテリーを約30ないし40℃のレベルにヒーティングできる別途の素材ないし装置が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許公開第2011−0206965号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、前記のような点に鑑みてなされたものであって、ヒートパイプをオーバーモールディングして埋め込んだ熱伝導性の界面プレートを、各バッテリーセルの間に密着配置すると共に、ヒートパイプの上端に一体に連結された凝縮部であるヒートシンクを、空気冷却流路に載置させることで、界面プレートとバッテリーセルとの密着力を向上させ、これによって、バッテリーの放熱性能を極大化して、発熱による体積膨張を防止することが可能な環境親和型車両のバッテリーモジュール間接冷却装置を提供することにある。
【0019】
本発明の他の目的は、界面プレートが配置されていないバッテリーセルの間に、面状発熱体をさらに配置して、冷始動及び低温環境で、バッテリーを適正レベルの温度にヒーティングすることで、バッテリー性能の向上、及び車両の出力低下の防止を図ることが可能な環境親和型車両のバッテリーモジュール間接冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記目的を達成するための本発明は、複数のバッテリーセルのうち選択された二つ以上のバッテリーセルの間に、ヒートパイプをオーバーモールディングして埋め込んだ熱伝導性の界面プレートを密着配置し、ヒートパイプの上端部に一体に連結されたヒートシンクを、冷却空気流路に載置させたことを特徴とする環境親和型車両のバッテリーモジュール間接冷却装置を提供する。
【0021】
本発明の望ましい具現例として、前記界面プレートは、高い熱伝導性を有する熱可塑性のエラストマー素材として採択されたことを特徴とする。
【0022】
特に、前記ヒートパイプは、アルミニウム材質を用いた帯状の平面状に備えられ、界面プレート内に等間隔に埋め込まれたことを特徴とする。
【0023】
望ましくは、前記ヒートパイプは、1.0ないし1.5tの厚さに製作され、前記界面プレートは、ヒートパイプの厚さを含めて、2ないし5mmの厚さにモールディングされたことを特徴とする。
【0024】
また、前記ヒートシンクは、ヒートパイプ内に気化した作動流体を凝縮させる凝縮部であって、ヒートパイプの上端部に、複数の放熱板が上下方向に等間隔を成して一体に形成されたことを特徴とする。
【0025】
本発明の望ましい具現例として、前記界面プレートが配置されていないバッテリーセルの間には、0.5mm以下の厚さの面状発熱体が密着配置されたことを特徴とする。
【0026】
特に、前記面状発熱体は、バッテリーセルとの完全な面接触のためのポリウレタン層と、発熱時に耐熱性を担うポリエチレンテレフタレート(PET)層とがラミネートされたフィルムと、フィルムのポリエチレンテレフタレート層上にコーティングされる発熱体と、発熱体を保護するために、発熱体上にコーティングされて表面硬化されたLSR材質の保護層と、から構成されたことを特徴とする。
【0027】
望ましくは、前記バッテリーセルを取り囲む外部ハウジングは、熱伝導度の低い素材で形成され、その上端部には、前記ヒートシンクが載置される単一の冷却空気流路が形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
前記した課題解決手段を通じて、本発明は、下記のような効果が得られる。
【0029】
本発明によれば、環境親和型車両のバッテリーモジュールを構成する各バッテリーセルのうち選択されたバッテリーセルの間に、バッテリー(特に、ポーチ型バッテリー)の体積膨張に対応するための耐熱界面素材として、ヒートパイプをオーバーモールディングして埋め込んだ熱伝導性の界面プレートを密着配置することで、熱伝導度の高い界面プレートとバッテリーセルとの密着力を向上させ、これによって、発熱による体積膨張を防止すると共に、バッテリーの放熱性能を極大化させることができる。
【0030】
特に、界面プレートが配置されていないバッテリーセルの間に、面状発熱体をさらに配置することで、環境親和型車両の冷始動及び低温環境で、バッテリーを適正レベルの温度にヒーティングできるので、バッテリー性能の向上、及び車両の出力低下の防止を図ることができる。
【0031】
また、既存のバッテリーセルの間に冷却空気流路を形成して、バッテリーを直接冷却する直接冷却式バッテリーモジュールと比較して、バッテリーセルの間に冷却空気流路を形成していないので、既存の直接冷却式バッテリーモジュールに比べて、よりコンパクトなバッテリーモジュールを提供でき、バッテリーモジュールの設計自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】環境親和型車両の低温の出力性能の低下区間を示すグラフである。
図2】本発明による環境親和型車両のバッテリーモジュール間接冷却装置のヒートパイプ及び界面プレートを示す斜視図である。
図3】本発明による環境親和型車両のバッテリーモジュール間接冷却装置の界面プレート及び面状発熱体が、バッテリーセルの間に配列された状態を示す斜視図である。
図4】本発明による環境親和型車両のバッテリーモジュール間接冷却装置のヒートパイプ及び界面プレートが、バッテリーセルの間に配列されて、外部ハウジングにより取り囲まれた状態を示す斜視図である。
図5】本発明による環境親和型車両のバッテリーモジュール間接冷却装置の面状発熱体の断面構成を示す概略的な断面図である。
図6】本発明による環境親和型車両のバッテリーモジュール間接冷却装置についての放熱性能のテストのための構成を示す概略図である。
図7】本発明による環境親和型車両のバッテリーモジュールと、既存のモジュールとの間の冷却性能をテストした結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の望ましい実施形態を、添付した図面を参照して詳細に説明する。
【0034】
図2及び図4を参照すれば、本発明によるバッテリーモジュール間接冷却装置は、ヒートパイプ12をオーバーモールディングして埋め込んだ熱伝導性の界面プレート10を含む。
【0035】
前記界面プレート10は、バッテリーセルで発生した熱を効果的にヒートパイプに伝達するために、界面空隙が最小化し、平坦度が優秀であり、また、バッテリーセルの間に配置された時、バッテリーセルとの接触グリップ性(完全な密着性)を付与して、熱伝達の界面抵抗を最小化すると共に、熱伝達特性を最大化させる点を考慮して、高い熱伝導性を有する熱可塑性のエラストマー素材として採択される。
【0036】
より詳しくは、前記界面プレート10は、バッテリー(特に、ポーチ型バッテリー)の体積膨張に対応できるように、バッテリーセルとの接着度(密着力)を向上させるために、熱伝導度が平板方向に10W/mK以上と優秀であり、かつソフトな素材である熱可塑性のエラストマー素材として採択されたものである。
【0037】
前記ヒートパイプ12は、アルミニウム材質を用いた長方形の帯片状に備えられ、界面プレート10内に等間隔を成して埋め込まれ、その上端部には、界面プレート10から伝達されたバッテリーの発熱時の熱エネルギーを、外部ハウジング20の冷却空気流路22の方に伝達するために、ヒートシンク14が一体に形成される。
【0038】
前記ヒートシンク14は、ヒートパイプ12内で気化した作動流体を凝縮させる凝縮部であって、ヒートパイプ12の上端部に、複数の放熱板が上下方向に等間隔を成して一体に形成されたものである。
【0039】
参考までに、前記ヒートパイプ12の内部には、揮発性作動流体(例えば、アセトン)が満たされた状態であり、当該作動流体は、バッテリーの発熱時の熱により蒸発すると共に、熱エネルギーをもってヒートシンク14の方に移動して放熱し、再び放熱と共に凝縮されて、ヒートパイプ12内に復帰する。
【0040】
望ましくは、前記バッテリーモジュールのコンパクト化に鑑みて、前記ヒートパイプ12は、1.0ないし1.5tの厚さに製作され、前記界面プレート10は、ヒートパイプ12の厚さを含めて、2ないし5mmの厚さにオーバーモールディングされる。
【0041】
このように備えられた界面プレート10、すなわち、ヒートパイプ12が埋め込まれた界面プレート10を、複数のバッテリーセル30のうち選択された二つ以上のバッテリーセルの間に密着配置し、ヒートパイプ12の上端部に一体に連結されたヒートシンク14を、外部ハウジング20の冷却空気流路22内に載置させる。
【0042】
例えば、一つのバッテリーモジュールが総8個のバッテリーセルで構成される場合、最初のセルと二番目のセル、三番目のセルと四番目のセル、五番目のセルと六番目のセル、七番目のセルと八番目のセルとの間に、三つのヒートパイプが埋め込まれた界面プレートがそれぞれ配置され、二番目のセルと三番目のセル、四番目のセルと五番目のセル、六番目のセルと七番目のセルとの間には、下記のように面状発熱体が配置される。
【0043】
前記面状発熱体40は、冷始動時または低温環境で、バッテリーモジュールを適正レベルの温度にヒーティングするために採択されたものであって、界面プレートが配置されていないバッテリーセルの間に、0.5mm以下の厚さのパッド状に備えられて密着配置される。
【0044】
望ましくは、前記面状発熱体40は、図5に示すように、バッテリー(特に、ポーチ型バッテリー)の体積膨張に対応しつつ、バッテリーセルに完全に密着されるグリップ性を有するポリウレタン層42と、発熱時に耐熱性を担うポリエチレンテレフタレート(PET)層44とが互いにラミネートされたフィルムをベースとし、当該フィルムのポリエチレンテレフタレート層44上に、通常の発熱体46が積層付着される。
【0045】
より望ましくは、前記発熱体46には、別途の補助電源及び制御ユニットを連結して、低温時に制御ユニットの制御によって、自動的に発熱したり、温度調節が行われるようにする。
【0046】
また、前記発熱体46上には、LSR(Liquid Silane Resin)をコーティングして表面硬化させた保護層48が形成され、当該保護層48は、発熱体46を保護し、脆性の発熱体の剥離を防止する役割を行う。
【0047】
一方、前記界面プレート10及び面状発熱体40などが含まれたバッテリーセル30は、図4に示すように、一種のバッテリーケースである外部ハウジング20により取り囲まれ、当該外部ハウジング20の上端部には、ヒートシンク14が載置される単一の冷却空気流路22が形成される。
【0048】
望ましくは、前記外部ハウジング20は、バッテリーで発生した熱を放熱する役割を行わなくてもよいので、熱伝導度の低い素材で形成される。その理由は、低温環境で面状発熱体によるバッテリーのヒーティングが必要な場合、外部の熱を遮断して、バッテリーの昇温速度をより速めるためである。
【0049】
ここで、前記した構成からなる本発明のバッテリーモジュール間接冷却装置についての動作フローを見れば、下記の通りである。
【0050】
バッテリーセル20の高速充電及び放電、高出力、繰り返し充電回数などにより熱が発生すれば、発生した熱は、界面プレート10を通じて、ヒートパイプ12に伝達される。
【0051】
続いて、前記ヒートパイプ12に伝達された熱によって、ヒートパイプ12の内部(蒸発部)に存在する作動流体が気化し、気化したガス分子は、熱エネルギーを保有しつつ、ヒートパイプ12の反対側、すなわち、ヒートシンク14が付着された側(凝縮部)に移動する。
【0052】
この時、前記ヒートシンク14は、外部ハウジング20の冷却空気流路22を通過する冷却空気と接触する状態であるところ、これによって、作動流体が保有した熱エネルギーが、ヒートシンク14を通じて放熱されると共に、動作流体は凝縮されて、再びヒートパイプ12の方に移動する。
【0053】
一方、環境親和型車両の冷始動及び低温環境で、前記面状発熱体40の発熱を行うことで、バッテリーを適正レベルの温度にヒーティングして、バッテリー性能の向上、及び車両の出力低下の防止を図ることができる。
【0054】
この時、前記面状発熱体40の発熱動作が行われる場合、外部ハウジング20の冷却空気流路22に冷却空気を吹き込むブロワーが作動しないように制御することが望ましい。その理由は、面状発熱体40からバッテリーセル30に伝達される熱を、バッテリーセルを適正レベルの温度にヒーティングするのにのみ使用するためである。
【0055】
すなわち、面状発熱体40からバッテリーセル30に伝達された熱が、界面プレート10及びヒートパイプ12を通じて、ヒートシンク14に放熱されることを防止して、冷始動性能をより有利に改善させるためである。
【0056】
ここで、本発明を、試験例を通じて見れば、下記の通りである。
【0057】
二つのヒートパイプが埋め込まれた界面プレートを、8個のバッテリーセルのうち、最初のセルと二番目のセル、三番目のセルと四番目のセル、五番目のセルと六番目のセル、七番目のセルと八番目のセルとの間に配置したバッテリーモジュール試製品を製作して、バッテリー冷却性能試験を行い、間接冷却方式の冷却性能を検証するために、バッテリーセルに面状発熱体を配置しない状態で、バッテリー冷却試験を行った。
【0058】
まず、コンピュータプログラムを通じて、バッテリー冷却性能を解析したところ、解析条件は、バッテリーセルの発熱量を2W/セル、冷却空気流路に吹き込む空気流量を13CMHとし、その解析結果は、下記の表1に示す通りである。
【0059】
【表1】
【0060】
前記表1から、各バッテリーセルの温度は、全て42℃未満であり、かつバッテリーセル間の温度偏差は、最大0.09℃に過ぎないので、バッテリー冷却効果が優秀であるということが分かった。
【0061】
このような解析結果を検証するために、図6に示すように、断熱処理された外部ハウジング20の冷却空気流路に連結される冷却空気循環ライン60と、当該冷却空気循環ライン60の一定の位置に取り付けられるブロワー及び流量調節器62と、各バッテリーセルの充放電のための充放電器64と、各バッテリーセルに連結された温度センサーから温度値を伝送される温度データロガー66と、を備える試験装備を構築した。
【0062】
この時、前記バッテリー冷却試験のために、バッテリーモジュール試製品を断熱処理して、35.5℃に維持した状態で、ブロワー及び流量調節器を用いて、13.3CMHの空気流量を、外部ハウジングの冷却空気流路に吹き込み、湿度は65±20%を維持した。
【0063】
このような試験条件下で、バッテリーの60% SOCで10秒間40Aの充放電パルスを印加しつつ、バッテリーセルの温度をチェックしたところ、その結果は、図7に示す通りである。
【0064】
バッテリーセルの温度をチェックする時、各バッテリーセルの温度が45℃未満であり、かつバッテリーセル間の温度偏差が5℃以下であれば、バッテリー冷却効果が検証されたものと判定でき、前記図7に示すように、試製品の各バッテリーセルの温度は、既存のバッテリーモジュール(直接冷却式)に比べて、全て42℃未満であり、かつバッテリーセル間の温度偏差は、2.0℃以下に過ぎないので、バッテリー冷却効果が優秀であるということが分かった。
【符号の説明】
【0065】
10 界面プレート
12 ヒートパイプ
14 ヒートシンク
20 外部ハウジング
22 冷却空気流路
30 バッテリーセル
40 面状発熱体
42 ポリウレタン層
44 ポリエチレンテレフタレート層
46 発熱体
48 保護層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7