特許第6293472号(P6293472)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6293472
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】水素製造装置および水素製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/14 20060101AFI20180305BHJP
   C01B 3/50 20060101ALI20180305BHJP
   C10K 1/14 20060101ALI20180305BHJP
   C10K 1/32 20060101ALI20180305BHJP
   C10K 3/04 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   C01B3/14
   C01B3/50
   C10K1/14
   C10K1/32
   C10K3/04
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-257846(P2013-257846)
(22)【出願日】2013年12月13日
(65)【公開番号】特開2015-113265(P2015-113265A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】羽有 絵莉
【審査官】 山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/109294(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/005901(WO,A1)
【文献】 特開2000−212580(JP,A)
【文献】 特開昭57−014691(JP,A)
【文献】 特開平11−228973(JP,A)
【文献】 特開昭55−085403(JP,A)
【文献】 特開2004−256684(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0279763(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B3/00−6/34
C10K1/00−3/06
C10J1/00−3/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素含有固体燃料がガス化されたガス化ガスから一酸化炭素含有ガスと高純度水素ガスとを生成するメインガスラインと、
前記一酸化炭素含有ガスに含有される一酸化炭素をシフト反応させることにより水素を含有する水素含有ガスを生成するリサイクルライン
とを備え、
前記メインガスラインは、
前記ガス化ガスが冷却された冷却後ガス化ガスに、前記水素含有ガスを混合することにより混合ガスを生成する混合部と、
前記混合ガスから酸性ガスを除去することにより酸性ガス除去後ガスを生成する酸性ガス除去装置と、
前記酸性ガス除去後ガスを前記一酸化炭素含有ガスと前記高純度水素ガスとに分離する水素精製装置とを備える水素製造装置。
【請求項2】
炭素含有固体燃料がガス化されたガス化ガスから一酸化炭素含有ガスと高純度水素ガスとを生成するメインガスラインと、
前記一酸化炭素含有ガスに含有される一酸化炭素をシフト反応させることにより水素を含有する水素含有ガスを生成するリサイクルライン
とを備え、
前記リサイクルラインは、
前記水素含有ガスを前記一酸化炭素含有ガスから生成するシフト反応器と、
前記水素含有ガスから二酸化炭素を除去することにより二酸化炭素除去後ガスを生成する二酸化炭素分離装置とを備え、
前記メインガスラインは、
前記ガス化ガスが冷却された冷却後ガス化ガスから酸性ガスを除去することにより酸性ガス除去後ガスを生成する酸性ガス除去装置と、
前記酸性ガス除去後ガスと前記二酸化炭素除去後ガスとを混合することにより混合ガスを生成する混合部と、
前記混合ガスを前記一酸化炭素含有ガスと前記高純度水素ガスとに分離する水素精製装置とを備える水素製造装置。
【請求項3】
炭素含有固体燃料がガス化されたガス化ガスから一酸化炭素含有ガスと高純度水素ガスとを生成するメインガスラインと、
前記一酸化炭素含有ガスに含有される一酸化炭素をシフト反応させることにより水素を含有する水素含有ガスを生成するリサイクルライン
とを備え、
前記リサイクルラインは、
前記水素含有ガスを前記一酸化炭素含有ガスから生成するシフト反応器と、
前記水素含有ガスから二酸化炭素を除去することにより二酸化炭素除去後ガスを生成する二酸化炭素分離装置とを備え、
前記メインガスラインは、
前記ガス化ガスが冷却された冷却後ガス化ガスから硫黄化合物を除去することにより硫黄化合物除去後ガスを生成する硫黄化合物除去装置と、
前記硫黄化合物除去後ガスと前記二酸化炭素除去後ガスとを混合することにより、混合ガスを生成する混合部と、
前記混合ガスを前記一酸化炭素含有ガスと前記高純度水素ガスとに分離する水素精製装置とを備える水素製造装置。
【請求項4】
炭素含有固体燃料がガス化されたガス化ガスから一酸化炭素含有ガスと高純度水素ガスとを生成するメインガスライン工程と、
前記一酸化炭素含有ガスに含有される一酸化炭素をシフト反応させることにより水素を含有する水素含有ガスを生成するリサイクルライン工程
とを備え、
前記メインガスライン工程は、
前記ガス化ガスが冷却された冷却後ガス化ガスに、前記水素含有ガスを混合することにより混合ガスを生成する工程と、
前記混合ガスから酸性ガスを除去することにより酸性ガス除去後ガスを生成する工程と、
前記酸性ガス除去後ガスを前記一酸化炭素含有ガスと前記高純度水素ガスとに分離する工程とを備える水素製造方法。
【請求項5】
炭素含有固体燃料がガス化されたガス化ガスから一酸化炭素含有ガスと高純度水素ガスとを生成するメインガスライン工程と、
前記一酸化炭素含有ガスに含有される一酸化炭素をシフト反応させることにより水素を含有する水素含有ガスを生成するリサイクルライン工程
とを備え、
前記リサイクルライン工程は、
前記水素含有ガスを前記一酸化炭素含有ガスから生成する工程と、
前記水素含有ガスから二酸化炭素を除去することにより二酸化炭素除去後ガスを生成する工程とを備え、
前記メインガスライン工程は、
前記ガス化ガスが冷却された冷却後ガス化ガスから酸性ガスを除去することにより酸性ガス除去後ガスを生成する工程と、
前記酸性ガス除去後ガスと前記二酸化炭素除去後ガスとを混合することにより混合ガスを生成する工程と、
前記混合ガスを前記一酸化炭素含有ガスと前記高純度水素ガスとに分離する工程とを備える水素製造方法。
【請求項6】
炭素含有固体燃料がガス化されたガス化ガスから一酸化炭素含有ガスと高純度水素ガスとを生成するメインガスライン工程と、
前記一酸化炭素含有ガスに含有される一酸化炭素をシフト反応させることにより水素を含有する水素含有ガスを生成するリサイクルライン工程
とを備え、
前記リサイクルライン工程は、
前記水素含有ガスを前記一酸化炭素含有ガスから生成する工程と、
前記水素含有ガスから二酸化炭素を除去することにより二酸化炭素除去後ガスを生成する工程とを備え、
前記メインガスライン工程は、
前記ガス化ガスが冷却された冷却後ガス化ガスから硫黄化合物を除去することにより硫黄化合物除去後ガスを生成する工程と、
前記硫黄化合物除去後ガスと前記二酸化炭素除去後ガスとを混合することにより、混合ガスを生成する工程と、
前記混合ガスを前記一酸化炭素含有ガスと前記高純度水素ガスとに分離する工程とを備える水素製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素製造装置および水素製造方法に関し、特に、炭素含有固体燃料がガス化されることにより生成されるガス化ガスから水素を生成するときに利用される水素製造装置および水素製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学肥料やSNG、FT油の原料、燃料電池への供給等広範囲で、水素需要が高まっている。水素製造においては、従来の炭化水素ガスを用いた水蒸気改質が一例として用いられるが、石炭に例示される炭素含有固体燃料がガス化された石炭ガス化炉の石炭ガス化ガスから水素を製造する技術の実用化が求められている。
また、COシフト反応(以降、単にシフト反応と記す)を用いて、石炭がガス化されたガス化ガスから、水素Hを高濃度に含有する高純度水素ガスが水素製造装置にて生成される。高純度水素ガスは、アンモニアNHに例示される化合物製品を合成する原料に利用される(特開平10−67992号公報参照。)。
現行の石炭ガス化炉を用いた水素製造システムでは、メインガスラインにCOシフト反応器を設置し、水蒸気を投入することで一酸化炭素COを水素Hと二酸化炭素COへシフト反応をするよう促進しているが、ガス化ガスから水素を高濃度に含有する高純度水素ガスを安価に生成することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−67992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現行の石炭ガス化炉を用いた水素製造システムにおけるシフト反応器では、通過するガス流量が多いために高温・高圧の水蒸気を大量に必要とする。このためプラント全体の性能に与える影響は大きい。また、シフト反応器は、メインガスラインに設置されるために、ガス温度が高く、さらには硫黄成分が存在する雰囲気に設置検討されるものが多く、高温シフト反応触媒(Fe−Cr系)を用いる必要があるため、コストが増大していた。
すなわち、水素製造装置は、さらに、水素を高濃度に含有する高純度水素ガスをガス化ガスから適切に生成することが望まれ、シフト反応を進行させるシフト反応器の負荷を低減することが望まれている。ここで、負荷とは、反応器への通過ガス量や反応量及び触媒活性温度への余裕度合を示すものである。
【0005】
本発明の課題は、水素を高濃度に含有する高純度水素ガスをガス化ガスから適切に生成する水素製造装置および水素製造方法を提供することにある。
本発明の他の課題は、一酸化炭素と水蒸気とから水素と二酸化炭素とを生成するシフト反応を進行させるシフト反応器の負荷を低減する水素製造装置および水素製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の課題は、シフト反応を進行させるシフト反応器の製造コストを低減する水素製造装置および水素製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による水素製造装置は、炭素含有固体燃料がガス化されたガス化ガスから一酸化炭素含有ガスと高純度水素ガスとを生成するメインガスラインと、前記一酸化炭素含有ガスに含有される一酸化炭素に水蒸気を添加してシフト反応を進行させることにより、二酸化炭素と水素とを含有する水素含有ガスを生成するリサイクルラインとを備えていることを特徴とし、後述する本発明の第1〜第3の実施形態を包含する。
【0007】
一酸化炭素含有ガスは、ガス化ガスから高純度水素ガスが分離されて生成されることにより、ガス化ガスより流量が少ない。このため、このような水素製造装置は、分離された一酸化炭素含有ガスのみがシフト反応器で処理されることにより、シフト反応器の負荷を低減することができる。
【0008】
かかる課題を達成するために、本発明の第1の水素製造装置は、前記メインガスラインは、前記ガス化ガスが冷却された冷却後ガス化ガスに、前記水素含有ガスを混合することにより混合ガスを生成する混合部と、前記混合ガスから酸性ガスを除去することにより酸性ガス除去後ガスを生成する酸性ガス除去装置と、前記酸性ガス除去後ガスを前記一酸化炭素含有ガスと前記高純度水素ガスとに分離する水素精製装置とを備えていることを特徴とする。本発明の第1の水素製造装置は、後述する本発明の第1の実施形態に対応する。
【0009】
このような水素製造装置は、リサイクルラインにより生成された水素含有ガスを、高純度水素ガスの生成に利用することができ、ガス化ガスから高純度水素ガスを高効率に生成することができる。このような水素製造装置は、さらに、リサイクルラインにより生成された水素含有ガスに大量の酸性ガスが含有されている場合でも、酸性ガス除去装置により酸性ガスが除去され、高純度水素ガスを適切に生成することができる。
【0010】
本発明の第2の水素製造装置は、本発明の第1の水素製造装置を改良したものであり、後述する本発明の第2の実施形態に対応する。前記リサイクルラインは、前記水素含有ガスを前記一酸化炭素含有ガスから生成するシフト反応器と、前記水素含有ガスから二酸化炭素を除去することにより二酸化炭素除去後ガスを生成する二酸化炭素分離装置とを備えている。前記メインガスラインは、前記ガス化ガスが冷却された冷却後ガス化ガスから酸性ガスを除去することにより酸性ガス除去後ガスを生成する酸性ガス除去装置と、前記酸性ガス除去後ガスと前記二酸化炭素除去後ガスとを混合することにより混合ガスを生成する混合部と、前記混合ガスを前記一酸化炭素含有ガスと前記高純度水素ガスとに分離する水素精製装置とを備えていることを特徴とする。
【0011】
このような水素製造装置は、シフト反応器により生成された水素含有ガスを、高純度水素ガスの生成に利用することができ、ガス化ガスから高純度水素ガスを高効率に生成することができる。このような水素製造装置は、さらに、シフト反応器により生成された水素含有ガスに二酸化炭素が含有されている場合でも、二酸化炭素分離装置により水素含有ガスから二酸化炭素が除去された二酸化炭素除去後ガスがメインガスラインに供給され、高純度水素ガスの生成に適切に利用されることができる。
【0012】
本発明の第3の水素製造装置は、本発明の第1の水素製造装置を改良したものであり、後述する本発明の第3の実施形態に対応する。前記リサイクルラインは、前記水素含有ガスを前記一酸化炭素含有ガスから生成するシフト反応器と、前記水素含有ガスから二酸化炭素を除去することにより二酸化炭素除去後ガスを生成する二酸化炭素分離装置とを備えている。前記メインガスラインは、前記ガス化ガスが冷却された冷却後ガス化ガスから硫黄化合物を除去することにより硫黄化合物除去後ガスを生成する硫黄化合物除去装置と、前記硫黄化合物除去後ガスと前記二酸化炭素除去後ガスとを混合することにより、混合ガスを生成する混合部と、前記混合ガスを前記一酸化炭素含有ガスと前記高純度水素ガスとに分離する水素精製装置とを備えていることを特徴とする。
【0013】
このような水素製造装置も、シフト反応器により生成された水素含有ガスを、高純度水素ガスの生成に利用することができ、ガス化ガスから高純度水素ガスを高効率に生成することができる。このような水素製造装置は、さらに、二酸化炭素分離装置により水素含有ガスから二酸化炭素が除去された二酸化炭素除去ガスがメインガスラインに供給され、高純度水素ガスを適切に生成することができる。
【0014】
本発明による水素製造方法は、炭素含有固体燃料がガス化されたガス化ガスから一酸化炭素含有ガスと高純度水素ガスとを生成するメインガスライン工程と、前記一酸化炭素含有ガスに含有される一酸化炭素をシフト反応させることにより水素を含有する水素含有ガスを生成するリサイクルライン工程とを備えていることを特徴とし、後述する本発明の第1〜第3の実施形態を包含する。
【0015】
一酸化炭素含有ガスは、ガス化ガスから高純度水素ガスが分離されて生成されることにより、ガス化ガスより流量が少ない。このため、このような水素製造方法は、分離された一酸化炭素含有ガスのみがシフト反応器で処理されることにより、シフト反応器の負荷を低減することができる。
【0016】
本発明の第1の水素製造方法は、後述する本発明の第1の実施形態に対応し、前記メインガスライン工程は、前記ガス化ガスが冷却された冷却後ガス化ガスに、前記水素含有ガスを混合することにより混合ガスを生成する工程と、前記混合ガスから酸性ガスを除去することにより酸性ガス除去後ガスを生成する工程と、前記酸性ガス除去後ガスを前記一酸化炭素含有ガスと前記高純度水素ガスとに分離する工程とを備えていることを特徴とする。
【0017】
このような水素製造方法は、リサイクルライン工程により生成された水素を、メインガスライン工程の高純度水素ガスの生成に利用することができ、ガス化ガスから高純度水素ガスを高効率に生成することができる。このような水素製造方法は、さらに、リサイクルライン工程により生成された水素含有ガスに大量の酸性ガスが含有されている場合でも、メインガスライン工程で水素含有ガスから酸性ガスを除去することができ、水素を高濃度に含有する高純度水素ガスを適切に生成することができる。
【0018】
本発明の第2の水素製造方法は、本発明の第1の水素製造方法を改良したものであり、後述する本発明の第2の実施形態に対応する。前記リサイクルライン工程は、前記水素含有ガスを前記一酸化炭素含有ガスから生成する工程と、前記水素含有ガスから二酸化炭素を除去することにより二酸化炭素除去後ガスを生成する工程とを備えている。前記メインガスライン工程は、前記ガス化ガスが冷却された冷却後ガス化ガスから酸性ガスを除去することにより酸性ガス除去後ガスを生成する工程と、前記酸性ガス除去後ガスと前記二酸化炭素除去後ガスとを混合することにより混合ガスを生成する工程と、前記混合ガスを前記一酸化炭素含有ガスと前記高純度水素ガスとに分離する工程とを備えていることを特徴とする。
【0019】
このような水素製造方法は、リサイクルライン工程により生成された水素含有ガスを、メインガスライン工程の高純度水素ガスの生成に利用することができ、ガス化ガスから高純度水素ガスを高効率に生成することができる。このような水素製造方法は、さらに、リサイクルライン工程により生成された水素含有ガスに大量の二酸化炭素が含有されている場合でも、メインガスライン工程で二酸化炭素が除去された二酸化炭素除去後ガスを処理することができ、高純度水素ガスの生成に適切に利用されることができる。
【0020】
本発明の第3の水素製造方法は、本発明の第1の水素製造方法を改良したものであり、後述する本発明の第3の実施形態に対応する。前記リサイクルライン工程は、前記水素含有ガスを前記一酸化炭素含有ガスから生成する工程と、前記水素含有ガスから二酸化炭素を除去することにより二酸化炭素除去後ガスを生成する工程とを備えている。前記メインガスライン工程は、前記ガス化ガスが冷却された冷却後ガス化ガスから硫黄化合物を除去することにより硫黄化合物除去後ガスを生成する工程と、前記硫黄化合物除去後ガスと前記二酸化炭素除去後ガスとを混合することにより、混合ガスを生成する工程と、前記混合ガスを前記一酸化炭素含有ガスと前記高純度水素ガスとに分離する工程とを備えていることを特徴とする。
【0021】
このような水素製造方法は、リサイクルライン工程により生成された水素含有ガスを、メインガスライン工程の高純度水素ガスの生成に利用することができ、ガス化ガスから高純度水素ガスを高効率に生成することができる。このような水素製造方法は、水素含有ガスから二酸化炭素をリサイクルライン工程で除去することにより、水素を高濃度に含有する高純度水素ガスを適切に生成することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明による水素製造装置および水素製造方法は、シフト反応器へ供給されるガスの流量を低減することにより、シフト反応器の負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の水素製造装置に係る第1の実施形態を示すブロック図である。
図2】比較例としての水素製造装置を示すブロック図である。
図3】水素製造装置に係る第2の実施形態を示すブロック図である。
図4】水素製造装置に係る第3の実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図面を参照して、水素製造装置の実施の形態が以下に記載される。
(第1の実施形態)
第1の実施形態における水素製造装置1は、図1に示されているように、石炭ガス化ガスが生成されるガス化炉・シンガスクーラ(SGC:Syngas Cooler)10とともに設けられている。ここで石炭ガス化ガスは、石炭から形成される微粉炭がガス化されることにより生成され、水素Hと一酸化炭素COと二酸化炭素COと水HOと微量成分とを含有している。微量成分は、石炭ガス化ガスに数ppm程度含有され、硫黄化合物(硫化水素HS,硫化カルボニルCOS等)とアンモニアNHとハロゲン類とを含んでいる。
【0025】
また、水素製造装置1は、メインガスラインとリサイクルラインとを備えている。メインガスラインは、スクラバ・ガス冷却装置2と混合部3と酸性ガス除去装置4と水素精製装置5とを備えている。リサイクルラインは、シフト反応器6を備えている。
【0026】
スクラバ・ガス冷却装置2は、ガス化炉・シンガスクーラ10により生成された石炭ガス化ガスから微量成分を除去することにより、洗浄後ガス化ガスを生成する。ここで微量成分とは、少なくともアンモニアとハロゲン類とを含んでいる。スクラバ・ガス冷却装置2は、さらに、洗浄後ガス化ガスを冷却することにより冷却後ガス化ガスを生成する。
【0027】
混合部3は、スクラバ・ガス冷却装置2により冷却された冷却後ガス化ガスと、リサイクルラインのシフト反応器6により生成された水素含有ガスとを混合することにより混合ガスを生成する。
【0028】
酸性ガス除去装置4は、例えば、図示されていない硫黄化合物吸収塔と二酸化炭素吸収塔とを備えている。硫黄化合物吸収塔は、例えばメタノール系の溶剤を備え、混合部3により生成された混合ガスを溶剤に接触させることにより、混合ガスから酸性ガス(主に硫黄化合物)を除去する。二酸化炭素吸収塔は、例えばメタノール系の溶剤を備え、硫黄化合物吸収塔により酸性ガスが除去された混合ガスを溶剤に接触させることにより、混合ガスから酸性ガス(主に二酸化炭素)をさらに除去する。すなわち、酸性ガス除去装置4は、混合部3により生成された混合ガスから酸性ガスを除去することにより、酸性ガス除去後ガスを生成する。
【0029】
水素精製装置5は、例えば圧力スイング吸着装置であり、圧力スイング吸着法(PSA:Pressure Swing Adsorption)を用いて、酸性ガス除去装置4により生成された酸性ガス除去後ガスを一酸化炭素含有ガスと高純度水素ガスとに分離する。
【0030】
水素精製装置5により生成された高純度水素ガスは、例えば水素製造装置1の次工程の図示しないアンモニア製造設備へと供給される。アンモニア製造設備は、触媒を備え、触媒を用いて高純度水素ガスからアンモニアを合成する。
【0031】
リサイクルラインのシフト反応器6は、シフト反応触媒を備えている。シフト反応器6は、シフト反応触媒を用いて、次化学反応式:
CO+HO→H+CO
により表現されるシフト反応を進行させ、水素精製装置5により生成された一酸化炭素含有ガスと図示されない外部の装置から供給される水蒸気とから水素含有ガスを生成する。ここで水蒸気は、石炭ガス化炉の熱交換部分等で生成され、例えば、ガス化炉・シンガスクーラ10で熱交換することにより生成することができる。シフト反応器6により生成された水素含有ガスは、混合部3へと供給される。
【0032】
第1の実施形態における水素製造方法は、ガス化炉・シンガスクーラ10により石炭ガス化ガスが生成されているときに水素製造装置1により実行される。石炭ガス化ガスは、石炭から形成される微粉炭がガス化されることにより生成され、水素と一酸化炭素と二酸化炭素と水と微量成分とを含有している。微量成分は、硫黄とアンモニアとハロゲン類とを石炭ガス化ガスに含んでいる。硫黄化合物としては、硫化水素、硫化カルボニルが例示される。水素製造方法は、メインガスライン工程とリサイクルライン工程とを備えている。
【0033】
メインガスライン工程は、メインガスラインにより実行され、すなわち、スクラバ・ガス冷却装置2と混合部と酸性ガス除去装置4と水素精製装置5とにより実行される。スクラバ・ガス冷却装置2は、ガス化炉・シンガスクーラ10により生成された石炭ガス化ガスから微量成分を除去することにより、洗浄後ガス化ガスを生成する。微量成分は、アンモニアとハロゲン類とを含んでいる。スクラバ・ガス冷却装置2は、さらに、洗浄後ガス化ガスを冷却することにより冷却後ガス化ガスを生成する。すなわち、スクラバ・ガス冷却装置2により冷却された冷却後ガス化ガスは、ガス化炉・シンガスクーラ10により生成された石炭ガス化ガスに比較して、アンモニアの濃度とハロゲン類からなる微量成分の濃度が低く、温度が低い。
【0034】
混合部3は、スクラバ・ガス冷却装置2により冷却された冷却後ガス化ガスと、リサイクルラインのシフト反応器6により生成された水素含有ガスとを混合することにより混合ガスを生成する。酸性ガス除去装置4の硫黄化合物吸収塔は、混合部3により生成された混合ガスを溶剤に接触させることにより、混合ガスから酸性ガス(主に硫黄化合物)を除去する。酸性ガス除去装置4の二酸化炭素吸収塔は、硫黄化合物吸収塔により酸性ガスが除去された混合ガスをさらに溶剤に接触させ、混合ガスから酸性ガス(主に二酸化炭素)をさらに除去することにより、酸性ガス除去後ガスを生成する。すなわち、酸性ガス除去後ガスに含有される硫黄化合物の濃度は、混合ガスに含有される硫黄化合物の濃度より小さい。酸性ガス除去後ガスに含有される二酸化炭素の濃度は、混合ガスに含有される二酸化炭素の濃度より小さい。
【0035】
水素精製装置5は、例えば圧力スイング吸着法を用いて、酸性ガス除去装置4により生成された酸性ガス除去後ガスを一酸化炭素含有ガスと高純度水素ガスとに分離する。一酸化炭素含有ガスに含有される水素の濃度は、酸性ガス除去後ガスに含有される水素の濃度より小さい。一酸化炭素含有ガスに含有される一酸化炭素の濃度は、酸性ガス除去後ガスに含有される一酸化炭素の濃度より大きい。高純度水素ガスに含有される水素の濃度は、酸性ガス除去後ガスに含有される水素の濃度より大きく、一酸化炭素含有ガスに含有される水素の濃度より大きい。高純度水素ガスに含有される一酸化炭素の濃度は、酸性ガス除去後ガスに含有される一酸化炭素の濃度より小さい。
【0036】
リサイクルライン工程は、リサイクルライン、すなわち、シフト反応器6により実行される。シフト反応器6は、シフト反応触媒を用いてシフト反応を進行させ、水素精製装置5により生成された一酸化炭素含有ガスと図示しない外部の装置から供給される水蒸気とから水素含有ガスを生成する。すなわち、水素含有ガスに含有される一酸化炭素の濃度は、一酸化炭素含有ガスに含有される一酸化炭素の濃度より小さい。水素含有ガスに含有される水素の濃度は、一酸化炭素含有ガスに含有される水素の濃度より大きい。さらに、水素含有ガスに含有される二酸化炭素の濃度は、一酸化炭素含有ガスに含有される二酸化炭素の濃度より大きい。
【0037】
水素製造装置1は、水素精製装置5により生成された高純度水素ガスを水素製造装置1の次工程の図示しないアンモニア製造設備に供給する。アンモニア製造設備は、触媒を用いて、高純度水素ガスからアンモニアを生成する。
【0038】
アンモニア製造設備が備える触媒は、一酸化炭素が被毒成分(触媒毒)となり得る。このため、アンモニア製造設備は、高純度水素ガスに含有される一酸化炭素の濃度が大きいときに、アンモニアを適切に生成することができないことがある。このような水素製造方法により生成された高純度水素ガスは、一酸化炭素の濃度が十分に低い。このため、アンモニア製造設備は、高純度水素ガスからアンモニアを適切に生成することができる。
【0039】
図2は、水素製造装置の比較例を示している。比較例の水素製造装置100は、ガス化炉・シンガスクーラ10とともに設けられ、スクラバ101とシフト反応器102とガス冷却装置103と酸性ガス除去装置104と水素精製装置105とを備えている。
【0040】
スクラバ101は、ガス化炉・シンガスクーラ10により生成された石炭ガス化ガスから微量成分(アンモニア、ハロゲン類)を除去することにより、洗浄後ガス化ガスを生成する。
【0041】
シフト反応器102は、第1の実施形態におけるシフト反応器6と同様にして、シフト反応を進行させ、スクラバ101により生成された洗浄後ガス化ガスと図示しない外部の装置から供給される水蒸気とから水素含有ガスを生成する。
【0042】
ガス冷却装置103は、シフト反応器102により生成された水素含有ガスを冷却することにより、冷却後水素含有ガスを生成する。
【0043】
酸性ガス除去装置104は、第1の実施形態における酸性ガス除去装置4と同様にして、ガス冷却装置103により生成された冷却後水素含有ガスから酸性ガスを除去することにより、酸性ガス除去後ガスを生成する。酸性ガスは、硫黄化合物と二酸化炭素とを含んでいる。
【0044】
水素精製装置105は、第1の実施形態における水素精製装置5と同様にして、酸性ガス除去装置104により生成された酸性ガス除去後ガスを一酸化炭素含有ガスと高純度水素ガスとに分離する。一酸化炭素含有ガスに含有される一酸化炭素の濃度は、酸性ガス除去後ガスに含有される一酸化炭素の濃度より大きい。高純度水素ガスに含有される水素の濃度は、酸性ガス除去後ガスに含有される水素の濃度より大きく、一酸化炭素含有ガスに含有される水素の濃度より大きい。水素精製装置105により生成された高純度水素ガスは、水素製造装置100の次工程の図示しないアンモニア製造設備に供給される。
【0045】
比較例の水素製造装置100により生成された高純度水素ガスは、第1の実施形態における水素製造装置1により生成された高純度水素ガスと同様にして、一酸化炭素の濃度が十分に低い。このため、比較例の水素製造装置100の次工程のアンモニア製造設備は、高純度水素ガスからアンモニアを適切に生成することができる。
【0046】
比較例の水素製造装置100のシフト反応器102に供給される洗浄後ガス化ガスは、ガス化炉・シンガスクーラ10により生成された石炭ガス化ガスから微量成分が除去されることにより生成されている。このため、シフト反応器102が処理する洗浄後ガス化ガスの流量は、ガス化炉・シンガスクーラ10により生成された石炭ガス化ガスの流量に概ね等しい。また、シフト反応器102に供給される洗浄後ガス化ガスの温度は、比較的高温(たとえば、300℃〜400℃)である。このため、シフト反応器102は、シフト反応触媒として例えばFe−Cr系の高温シフト反応触媒を備える必要がある。
【0047】
第1の実施形態におけるシフト反応器6に供給される一酸化炭素含有ガスの流量は、酸性ガス除去装置4により生成された酸性ガス除去後ガスからさらに水素精製装置5にて高純度水素ガスを分離されて生成されることにより、酸性ガス除去後ガスの流量より少なく、すなわち、ガス化炉・シンガスクーラ10により生成された石炭ガス化ガスの流量より少ない。
【0048】
換言すれば、シフト反応器6が処理するガスの処理量は、比較例の水素製造装置100が処理する石炭ガス化ガスと同じ量の石炭ガス化ガスを水素製造装置1が処理するときに、比較例のシフト反応器106が処理するガスの処理量より小さい。このため、水素製造装置1は、比較例の水素製造装置100に比較して、シフト反応器6の負荷を低減することができ、シフト反応器6が使用するシフト反応触媒の量を低減することができる。シフト反応器6は、シフト反応触媒の量を低減することにより、小型化することができ、製造コストを低減することができる。水素製造装置1は、シフト反応器6の負荷が低減することにより、さらに、シフト反応器6に水蒸気を供給する供給量を低減することができる。
【0049】
また、シフト反応器6に供給される一酸化炭素含有ガスは、水素精製装置5により処理されたものであり、比較例のシフト反応器102に供給される洗浄後ガス化ガスに比較して、一酸化炭素の濃度がより高い。このため、シフト反応器6は、シフト反応が平衡反応であることから、比較例のシフト反応器102に比較して、一酸化炭素含有ガスから水素をより高効率に生成することができるので、シフト反応触媒量に対する一酸化炭素反応量を低減してシフト反応器6の負荷を低減できる。
【0050】
さらに、シフト反応器6に供給される一酸化炭素含有ガスは、酸性ガス除去装置4により処理されたものであり、比較例のシフト反応器102に供給される洗浄後ガス化ガスに比較して、温度がより低く硫黄成分の濃度が低い。このため、シフト反応器6は、シフト反応触媒として低温シフト反応触媒を採用することができる。低温シフト反応触媒としては、例えばCu−Zn系の触媒が例示される。低温シフト反応触媒は、前述の高温シフト反応触媒に比較して安価であるため、シフト反応器6は、さらに、低温シフト反応触媒を利用することにより、製造コストを低減することができる。
【0051】
なお、水素製造装置1は、混合部3を酸性ガス除去装置4の内部に設けることができる。このとき、酸性ガス除去装置4の硫黄化合物吸収塔は、スクラバ・ガス冷却装置2により冷却された冷却後ガス化ガスを例えばメタノール系の溶剤に接触させ、冷却後ガス化ガスから酸性ガス(主に硫黄化合物)を除去することにより硫黄化合物除去後ガスを生成する。酸性ガス除去装置4の内部に設けられた混合部3は、硫黄化合物吸収塔により生成された硫黄化合物除去後ガスとシフト反応器6により生成された水素含有ガスとを混合することにより、混合ガスを生成する。酸性ガス除去装置4の二酸化炭素吸収塔は、酸性ガス除去装置4の内部に設けられた混合部3により生成された混合ガスを例えばメタノール系の溶剤に接触させ、混合ガスから酸性ガス(主に二酸化炭素)を除去することにより、酸性ガス除去後ガスを生成する。酸性ガス除去後ガスは、水素精製装置5に供給される。
【0052】
このように混合部3が酸性ガス除去装置4の内部に設けられた水素製造装置も、第1の実施形態における水素製造装置1と同様にして、シフト反応器6の負荷を低減することができる。
【0053】
(第2の実施形態)
図3は、水素製造装置の第2の実施形態を示している。
第2の実施形態の水素製造装置21では、第1の実施形態に対して、メインガスラインの混合部3が設置位置の異なる混合部23に置換され、リサイクルラインのシフト反応器6の後流に二酸化炭素分離装置22を設ける点で異なっているが、その他の構成については、第1の実施形態の水素製造装置1と同様であるので説明を省略する。
【0054】
メインガスラインの酸性ガス除去装置4は、スクラバ・ガス冷却装置2により冷却された冷却後ガス化ガスから酸性ガス(硫黄化合物と二酸化炭素とを含む)を除去することにより、酸性ガス除去後ガスを生成する。
【0055】
混合部23は、酸性ガス除去装置4により生成された酸性ガス除去後ガスとリサイクルラインの二酸化炭素分離装置22により生成された二酸化炭素除去後ガスとを混合することにより、混合ガスを生成する。
【0056】
水素精製装置5は、混合部23により生成された混合ガスを一酸化炭素含有ガスと高純度水素ガスとに分離する。水素精製装置5により生成された高純度水素ガスは、水素製造装置21の次工程の図示しないアンモニア製造設備に供給される。
【0057】
リサイクルラインのシフト反応器6は、水素精製装置5により生成された一酸化炭素含有ガスと外部の装置から供給される水蒸気とから水素含有ガスを生成する。
【0058】
二酸化炭素分離装置22は、例えばメタノール系の溶剤を備え、シフト反応器6により生成された水素含有ガスを溶剤に接触させ、水素含有ガスから二酸化炭素を除去することにより二酸化炭素除去後ガスを生成する。二酸化炭素分離装置22により生成された二酸化炭素除去後ガスは、メインガスラインの混合部23に供給される。
【0059】
水素製造装置21は、第1の実施形態における水素製造装置1と同様にして、シフト反応器6に供給される一酸化炭素含有ガスの流量がガス化炉・シンガスクーラ10により生成された石炭ガス化ガスの流量より少ないことにより、比較例の水素製造装置100に比較して、シフト反応器6の負荷を低減することができる。水素製造装置21は、シフト反応器6の負荷が低減することにより、シフト反応器6に供給する水蒸気の供給量を低減することができる。水素製造装置21は、シフト反応器6の負荷を低減することにより、さらに、シフト反応器6のシフト反応触媒の量を低減することができ、シフト反応器6を小型化し、シフト反応器6の製造コストを低減することができる。
【0060】
水素製造装置21は、水素精製装置5により分離された一酸化炭素含有ガスをシフト反応器6に供給することにより、比較例の水素製造装置100に比較して、シフト反応器6入口での一酸化炭素の濃度をより高くすることができる。シフト反応器6は、供給される一酸化炭素含有ガスの一酸化炭素濃度が高いことにより、一酸化炭素含有ガスから水素をより高効率に生成することができる。
【0061】
水素製造装置21は、酸性ガス除去装置4により処理された酸性ガス除去後ガスから水素精製装置5が一酸化炭素含有ガスを生成することにより、比較例の水素製造装置100に比較して、シフト反応器6に供給される一酸化炭素含有ガスの温度をより低くすることができる。このため、シフト反応器6は、シフト反応触媒として低温シフト反応触媒を採用することができ、低温シフト反応触媒を利用することにより、製造コストを低減することができる。
【0062】
第2の実施形態における水素製造装置21によれば、リサイクルラインにより生成されたガスが酸性ガス除去装置4の下流側に合流される場合でも、シフト反応器6により生成された水素含有ガスから二酸化炭素を二酸化炭素分離装置22が除去していることにより、混合部23から水素精製装置5に供給される混合ガスの二酸化炭素の濃度が低く、水素精製装置5は、高純度水素ガスを適切に生成することができる。
【0063】
(第3の実施形態)
図4は、水素製造装置の第3の実施形態を示している。
第3の実施形態では、第2の実施形態に対して、酸性ガス除去装置4が硫黄化合物除去装置32に置換され、その他の構成については、第2の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0064】
硫黄化合物除去装置32は、例えば硫黄化合物吸収塔を備えている。硫黄化合物吸収塔は、メタノール系の溶剤を備え、スクラバ・ガス冷却装置2により冷却された冷却後ガス化ガスを溶剤に接触させ、冷却後ガス化ガスから主に硫黄化合物を除去することにより、硫黄化合物除去後ガスを生成する。
【0065】
混合部23は、硫黄化合物除去装置32により生成された硫黄化合物除去後ガスと二酸化炭素分離装置22により生成された二酸化炭素除去後ガスとを混合することにより混合ガスを生成する。
【0066】
水素精製装置5は、第1の実施形態の水素精製装置5と同様にして、混合部23から供給された混合ガスを一酸化炭素含有ガスと高純度水素ガスとに分離する。水素精製装置5により生成された一酸化炭素含有ガスは、シフト反応器6へと供給される。水素精製装置5により生成された高純度水素ガスは、水素製造装置31の次工程の図示しないアンモニア製造設備に供給される。
【0067】
シフト反応器6は、第1の実施形態のシフト反応器6と同様にして、水素精製装置5により生成された一酸化炭素含有ガスと図示しない外部の装置から供給される水蒸気とから水素含有ガスを生成する。シフト反応器6により生成された水素含有ガスは二酸化炭素分離装置22へと供給する。
【0068】
二酸化炭素分離装置22は、第2の実施形態の二酸化炭素分離装置22と同様にして、シフト反応器6により生成された水素含有ガスから二酸化炭素を除去することにより二酸化炭素除去後ガスを生成する。二酸化炭素分離装置22により生成された二酸化炭素除去後ガスは、混合部23へと供給される。
【0069】
水素精製装置5により生成される一酸化炭素含有ガスは、ガス化炉・シンガスクーラ10により生成された石炭ガス化ガスより少なく、温度が比較的低く、一酸化炭素濃度が高い。このため、水素製造装置31は、第1、第2の実施形態における水素製造装置1、21と同様にして、シフト反応器6が処理するガスの処理量を低減することができる。水素製造装置31は、シフト反応器6の負荷を低減することにより、シフト反応器6に供給する水蒸気の供給量を低減することができ、ランニングコストを低減することができる。
【0070】
シフト反応器6は、負荷が低減することにより、使用するシフト反応触媒の量を低減することができる。シフト反応器6は、一酸化炭素含有ガスの温度が低いことにより、シフト反応触媒として低温シフト反応触媒を採用することができる。シフト反応器6は、使用するシフト反応触媒の量を低減することにより、または、低温シフト反応触媒を利用することにより、製造コストを低減することができる。さらに、シフト反応器6は、供給される一酸化炭素含有ガスの一酸化炭素濃度が高いことにより、一酸化炭素含有ガスから水素をより高効率に生成することができる。
【0071】
水素製造装置31の硫黄化合物除去装置32は、スクラバ・ガス冷却装置2により冷却された冷却後ガス化ガスから主に硫黄化合物を除去する。このため、水素精製装置5に供給される混合ガスは、第2の実施形態における水素精製装置5に供給される混合ガスより二酸化炭素濃度が高くなる。このとき、水素精製装置5は、混合ガスから分離された一酸化炭素含有ガスの二酸化炭素濃度が高くなるが、混合ガスから高純度水素ガスを適切に分離することができる。シフト反応器6は、供給される一酸化炭素含有ガスの二酸化炭素濃度が高い場合でも、一酸化炭素含有ガスから水素炭素含有ガスを適切に生成することができる。このため、水素製造装置31は、第2の実施形態における水素製造装置21と同様にして、高純度水素ガスを適切に生成することができる。
【0072】
第2の実施形態における酸性ガス除去装置4は、冷却後ガス化ガスから硫黄化合物と二酸化炭素との両方を除去するため、硫黄化合物除去装置32より規模が大きく、高価である。第3の実施形態における水素製造装置31は、メインガスラインの酸性ガス除去装置として硫黄化合物除去装置32をのみ備えることにより、第2の実施形態における水素製造装置21に比較して、製造コストを低減することができる。
【0073】
リサイクルラインで生成された水素含有ガス(または二酸化炭素除去後ガス)は、第1〜第3の実施形態で、メインガスラインのスクラバ・ガス冷却装置2から水素精製装置5までの途中に合流されることとしているが、それ以外の場所でメインガスラインに合流されることも可能である。たとえば、リサイクルラインで生成された水素含有ガス(または二酸化炭素除去後ガス)は、スクラバ・ガス冷却装置2の途中でメインガスラインに合流することでも、第1〜第3の実施形態における水素製造装置と同様の効果を得ることが可能である。
【0074】
水素精製装置5は、圧力スイング吸着法と異なる他の手段を用いる水素精製装置に置換されることができる。水素精製装置としては、水素透過膜を用いて酸性ガス除去後ガスを一酸化炭素含有ガスと高純度水素ガスとに分離する装置が例示される。このような水素精製装置を備える水素製造装置も、第1〜第3の実施形態における水素製造装置と同様にして、シフト反応器6の負荷を低減することができる。
【0075】
ガス化炉・シンガスクーラ10は、石炭と異なる炭素含有固体燃料を用いてガス化ガスを生成する設備に置換されることができる。炭素含有固体燃料としては、バイオマスが例示される。既述の水素製造装置は、ガス化炉・シンガスクーラ10がこのような設備に置換されたときも、同様にして、シフト反応器の負荷を低減することができる。
【0076】
アンモニア製造設備は、高純度水素ガスを利用する設備に置換されることができる。設備としては、高純度水素ガスを用いて発電する燃料電池が例示される。このような設備が備える触媒も、高純度水素ガスに含有する一酸化炭素が被毒成分となり得る。水素製造装置は、このような設備に高純度水素ガスを供給する場合も、高純度水素ガスに含有する一酸化炭素の濃度が十分に小さいことにより、適切に設備を稼働させることができる。
【符号の説明】
【0077】
1 :水素製造装置
3 :混合部
4 :酸性ガス除去装置
5 :水素精製装置
6 :シフト反応器
21:水素製造装置
22:二酸化炭素分離装置
23:混合部
31:水素製造装置
32:硫黄化合物除去装置
図1
図2
図3
図4