(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1ステップでの第1積分期間をT1とし、第2ステップでの第2積分期間をT2としたとき、前記第2積分期間T2は、T2≧αT1(但し、0.05≦α≦0.5)であることを特徴とする請求項1に記載の2重積分型A/D変換器。
前記第3ステップから前記第5ステップまでのトータルの積分期間T20は、T20=(1+α)MT1(但し、T2≧αT1、0.05≦α≦0.5、1≦M≦16)で示されることを特徴とする請求項5に記載の2重積分型A/D変換器。
前記入力電圧の大きさに関わらず、前記積分期間T20は常にT20=(1+α)MT1(但し、T2≧αT1、0.05≦α≦0.5、1≦M≦16)で示されることを特徴とする請求項6に記載の2重積分型A/D変換器。
前記制御回路は、前記積分器からの出力信号を基準電位と比較するコンパレータと、所定の周波数とパルス幅を有するクロック信号を生成するクロック信号生成部と、前記クロック信号に基づき前記積分に要した積分期間をカウントするカウンタと、前記カウンタからの出力に応動し前記スイッチング信号を所定のタイミングで出力し前記スイッチング信号を出力するA/D制御回路とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の2重積分型A/D変換器。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明にかかる2重積分型A/D変換器の概念図を示す。2重積分型A/D変換器100は、積分器10、入力切替部20、コンパレータ30及び制御回路40を備える。
【0015】
積分器10は、オペアンプ11とコンデンサC、抵抗R1,R2、第3スイッチSW3を有する。第3スイッチSW3は、積分器10を初期化するために用意される。すなわち第3スイッチSW3をオンしコンデンサCに蓄積された電荷を取り除くために用意されている。オペアンプ11の反転入力端子に抵抗R1,R2が接続されており、オペアンプ11の出力端子と反転入力端子の間にコンデンサCが接続されている。コンデンサCと第3スイッチSW3は並列に接続されている。オペアンプ11の非反転入力端子は基準電圧Vref2に接続される。抵抗R1は入力電圧Vinをオペアンプ11の反転入力端子(−)に入力するときの積分入力抵抗として、抵抗R2は参照電圧Vref1をオペアンプ11の反転入力端子(−)に入力するときの積分入力抵抗としての役割を担う。抵抗R1と抵抗R2の抵抗値は同じ大きさであってもよいし異ならせてもよい。
【0016】
積分器10は、抵抗R1,R2とコンデンサCの容量で定まる時定数により反転入力端子に入力された入力電圧Vinと、同じく非反転入力端子に入力された参照電圧Vref1との差分を積分し、積分結果に応じた電圧を出力する。
【0017】
入力切替部20は、積分器10に入力電圧Vinと、当該入力電圧Vinとは逆極性の参照電圧Vref1の入力の切替ができる構成となっている。入力切替部20は、入力電圧Vinをオペアンプ11への入力を中継する第1スイッチSW1と、参照電圧Vref1をオペアンプ11への入力を中継する第2スイッチSW2とを備えている。
【0018】
入力電圧Vinとしては、たとえば図示しない抵抗型センサや静電容量型センサなどの出力電圧をプリアンプなどにより増幅して得られた電圧信号などである。なお、入力されるのは電圧成分ではなく電流成分であってもよい。これらの電圧信号、電流信号は、アナログ信号であり、A/D変換の対象となる信号として、オペアンプ11の反転入力端子に入力される。なおセンサの具体的な構成や検出対象等については、様々な形態が採用されうる。
【0019】
コンパレータ30の反転入力端子には、積分器10の出力すなわちオペアンプ11の出力積分電圧Vo、Vo1が入力され、非反転入力端子には基準電圧Vref2が与えられ、積分器10の出力積分電圧Voが基準電圧Vref2と等しくなったときにコンパレータ30の出力側からハイまたはローの信号が出力される。
【0020】
制御回路40は、ロジック回路として形成され、クロック信号生成回路41、カウンタ42、A/D制御回路43およびスイッチ制御回路44を備える。A/D制御回路43は、開始タイミング測定回路43aを備える。
【0021】
制御回路40は、クロック信号生成回路41で生成したクロック信号CLKをカウンタ42でカウントし、カウント値より参照電圧Vref1の積分期間をA/D制御回路43で算出し、算出した結果をスイッチ制御回路44に出力する。
【0022】
カウンタ42は、クロック信号CLKに基づき積分期間の時間をカウントしデジタル化された出力デジタル電圧Voutを出力する。さらに開始タイミング測定回路43aによって積分期間の時間と積分の開始タイミングが設定される。設定されたタイミングと積分時間に応じて第1スイッチSW1および第2スイッチSW2のオン・オフが決定される。
【0023】
図2は、本発明の好ましい一実施の形態に至るにあたり検討に供した2重積分型A/D変換器のタイミングチャートを示している。なお、
図2に示した積分波形は特許文献1(特開平4−200017号公報、第2図)に類似する。すなわち本発明にかかる
図2は、2重積分を2回行う積分状態を示している。すなわち、1回目の2重積分は第1積分期間T31と第2積分期間T32が相当する。1回目のトータルの積分期間T40は第1積分期間T31と第2積分期間T32とを加えた大きさに等しい。2回目の2重積分は第3積分期間T33〜第5積分期間T35までが相当する。2回目のトータルの積分期間T50は第3積分期間T33、第4積分期間T34および第5積分期間T35及びリセット期間Trを加えた大きさに等しい。なお、本発明が特許文献1と大きく異なるのは第3積分期間T33〜第5積分期間T35における積分であり、特に本発明の第4積分期間T34に特徴を有する。詳細については後述する。
【0024】
図2(a)は、積分器10の出力積分電圧Vo1の積分波形の遷移を、
図2(b)は、第1スイッチSW1のオン・オフのタイミングを、
図2(c)は、第2スイッチSW2のオン・オフのタイミングを、
図2(d)は第3スイッチSW3のオン・オフのタイミングをそれぞれ示した図である。以下、
図2のタイミングチャートについて
図1を参照しながら説明する。
【0025】
図2(a)には、入力電圧Vinを積分する第1積分期間T31、入力電圧Vinとは逆の成分を持った参照電圧Vref1を積分する第2積分期間T32、積分器10の残留電荷を除去するリセット期間Tr、入力電圧Vinを積分する第3積分期間T33、入力電圧Vinと参照電圧Vref1を重畳して積分する第4積分期間T34、参照電圧Vref1を積分する第5積分期間T35、の5つの積分期間とリセット期間をそれぞれ示す。
【0026】
図2(b),(c),(d)は、第1スイッチSW1〜第3スイッチSW3をオン・オフさせるスイッチング信号を示す。これらのスイッチング信号は、制御回路40で生成されている。なお、第1スイッチSW1〜第3スイッチSW3のオン・オフの期間を表すときに「第1ステップ」〜「第5ステップ」なる語句を用いる。ここで、各ステップは上記積分期間に対応している。たとえば、第1ステップとは第1積分期間T31における第1スイッチSW1〜SW3の状態に対応する。同様に第2ステップ、第3ステップ、第4ステップ、および第5ステップはそれぞれ第2積分期間T32、第3積分期間T33、第4積分期間T34、および第5積分期間T35における第1スイッチSW1〜SW3の切替状態に対応する。
【0027】
図2(a)において、第1ステップ(第1積分期間T31)では、第1スイッチSW1はオン、第2スイッチSW2はオフ、第3スイッチSW3はオフに設定される。これにより入力電圧Vinが抵抗R1を通じてオペアンプ11の反転入力端子に加えられ、定められた時間の間、積分が行われる。
【0028】
第2ステップ(第2積分期間T32)では、第1スイッチSW1はオフ、第2スイッチSW2はオン、第3スイッチSW3はオフに設定される。このとき、オペアンプ11の反転入力端子に参照電圧Vref1が抵抗R2を通じて印加され所定の時間積分される。
【0029】
第2ステップから第3ステップに移行する僅かの時間、リセット期間Trが設けられている。リセット期間Trでは、第1スイッチSW1はオフ、第2スイッチSW2はオフ、第3スイッチSW3はオンに設定される。リセット期間Trは次の第3ステップ(第3積分期間T33)に移行するにあたりコンデンサCに蓄積された電荷を放電させ積分器10を初期化(リセット)するために用意されている。
【0030】
第3ステップ(第3積分期間T33)では、第1スイッチSW1はオン、第2スイッチSW2はオフ、第3スイッチSW3はオフに設定される。第3ステップでは入力電圧Vinが積分器10に入力され、定められた時間の間、積分が行われる。
【0031】
第4ステップ(第4積分期間T34)では、第1スイッチSW1はオン、第2スイッチSW2はオン、第3スイッチSW3はオフに設定される。第4ステップでは入力電圧Vinと参照電圧Vref1の両者が積分器10に入力される。すなわち、参照電圧Vref1は入力電圧Vinとは極性が反転された電圧であるので、両者の電圧の差分が積分されることになる。すなわち、第4積分期間T34は、入力電圧Vin及び参照電圧Vref1が重畳して積分器10へ入力される。入力電圧Vinの積分と基準電圧Vref2の積分期間では逆極性であるため、入力電圧Vinの積分期間のノイズと、参照電圧Vref1の積分期間のノイズが打ち消しあう。そのため、第4積分期間T34では、耐ノイズ特性に優れた状態で積分することが実現できる。
【0032】
第5ステップ(第5積分期間T35)では、第1スイッチSW1はオフ、第2スイッチSW2はオン、第3スイッチSW3はオフに設定される。すなわち、第5ステップでは参照電圧Vref1のみが積分される。ここで参照電圧Vref1のみを積分するのは参照電圧Vref1の残留分を積分するためである。
【0033】
図2は前に述べたように2重積分を2回行う積分方式を示す。こうした積分方法は第4積分期間T34で入力電圧Vinと、それとは逆極性の参照電圧Vref1を重畳して積分を行うので耐ノイズ特性を向上させることが可能である。しかし、2重積分を2回行うこと、特に第1積分期間T31及び第2積分期間T32が比較的長い時間であるため全体の積分時間が長くなってしまうという不具合が依然として残ることになる。
【0034】
図3は、
図2に示した不具合を克服するためになされたものであり、本発明にかかる好ましい実施の形態を示す。
図3には本発明における入力電圧Vinおよび参照電圧Vref1の積分期間および、各積分期間を切替える第1スイッチSW1〜第3スイッチSW3のオン、オフ状態を示す。
図3が
図2と比べて大きく異なる点は、第1積分期間T1および第2積分期間T2を短縮させ測定時間を短縮させたことである。
図2に示した入力電圧Vinと参照電圧Vref1を重畳させた積分期間T34は、理論的には積分時間を1/2にできる。そこで、本発明は第1積分期間T1および第2積分期間T2を短縮させ測定時間が従来の例えば70%程度になるように試みた。第1積分期間T1、第2積分期間T2は、それぞれ
図2に示した積分期間T31、T32の、1/M(Mは積分期間係数;1≦M≦16)に設定される。積分期間係数Mは、積分時間と積分精度の両者からみて、シミュレーションの結果、1≦M≦16の範囲に設定することとした。第3積分期間T3と第4積分期間T4は、使用者が任意で決めた時間に設定し、
図2に示した積分期間T31、T32と同じ積分期間例えば500μS程度である。
【0035】
図3(a)において、積分期間係数がM=1に設定されたときは、
図2(a)と同じ状態となる。積分期間係数MがたとえばM=8に設定すると、第1積分期間T1、第2積分期間T2を合わせた積分期間T10は
図2(a)に示した積分期間T40のほぼ1/8に設定される。積分期間係数Mはトータルの積分時間に基づき設定するが、積分期間係数Mを大きくするとトータルの積分時間は短縮できるが、入力電圧Vinおよび参照電圧Vref1を精度よく積分できないということになる。また、積分期間係数Mを小さくすると入力電圧Vinおよび参照電圧Vref1を積分する精度は向上するが積分時間の短縮が十分に図れないことになる。
【0036】
図3(a)は出力積分電圧Voの積分波形の遷移を、
図3(b)は第1スイッチSW1のオン・オフのタイミングを、
図3(c)は、第2スイッチSW2のオン・オフのタイミングを、
図3(d)は第3スイッチSW3のオン・オフのタイミングをそれぞれ示している。
【0037】
図3(a)は、
図2(a)の第1積分期間T31及び第2積分期間T32を短縮した出力積分電圧Voの各スイッチ動作による波形の変化を示した図を示す。
【0038】
図3(a)に示す第1積分期間T1は、第3積分期間T3と第4積分期間T4の合計積分期間をt0としたとき、T1=t0/M(M:積分期間係数、1≦M≦16)に設定されている。積分期間係数Mの範囲は前に述べたように積分時間と積分精度から求めたシミュレーション結果である。第2積分期間T2は、入力電圧Vinを第1積分期間T1だけ積分したのち参照電圧Vref1に切替えたときの参照電圧Vref1が所定のレベルに達するまでの積分期間である。リセット期間Trは、積分器10に残存した電荷を取り除く期間である。第3積分期間T3は、第1積分期間T1及び第2積分期間T2によって決められ、T3=M{(1+α)T1−T2}として示される。但し、ここで0.05≦α≦0.5、1≦M≦16、T2≧αT1とする。第4積分期間T4は、入力電圧Vinと参照電圧Vref1を同時に積分する期間である。ここで第4積分期間T4は、0.05≦α≦0.5、1≦M≦16、T2≧αT1であるとき、T4=M(T2−αT1)として示される。また、第5積分期間T5は、参照電圧Vref1の積分期間であり、第5積分期間T5は、0.05≦α≦0.5、1≦M≦16、T2≧T1であるとき、T5=αMT1として示される。積分期間マージン係数αは、積分時間と積分精度の両者からみて、シミュレーションの結果、0.05≦α≦0.5の範囲に設定することとした。
【0039】
図3(b)は、第1スイッチSW1をオン・オフさせるスイッチング信号のタイミングチャートを示す。
図3(b)に示すスイッチング信号は第1スイッチSW1を制御し、オンのとき、入力電圧Vinが抵抗R1を介してオペアンプ11の反転入力端子に入力される。第1スイッチSW1は、第1積分期間T1、第3積分期間T3、第4積分期間T4のときオンとなり、第2積分期間T2および第5積分期間T5のときはオフになるように制御回路40によって制御される。
【0040】
図3(c)は第2スイッチSW2をオン・オフさせるスイッチング信号のタイミングチャートを示す。
図3(c)に示すスイッチング信号は第2スイッチSW2を制御し、スイッチング信号がオンのとき、参照電圧Vref1が抵抗R2を介してオペアンプ11の反転入力端子に入力される。第2スイッチSW2は、第2積分期間T2、第4積分期間T4および第5積分期間T5でオンとなり、第1積分期間T1および第3積分期間T3でオフになるように制御回路40によって制御される。
【0041】
図3(d)は第3スイッチSW3をオン・オフさせるスイッチング信号のタイミングチャートを示す。
図3(d)に示すスイッチング信号は第3スイッチSW3をオンして、積分器10の残留電荷を放電させ初期化を行う。第3スイッチSW3は、リセット期間Trでオンとなり、その他の期間すなわち第1積分期間T1、第2積分期間T2、第3積分期間T3、第4積分期間T4および第5積分期間T5においてはオフになるように制御回路40によって制御される。
図3(b),(c),(d)に示す各スイッチング信号は制御回路40で生成される。
【0042】
図4は
図1および
図3に示した本発明にかかる好ましい実施の形態において、入力電圧Vinの大きさに応じた積分波形を模式的に示すものである。
【0043】
図4(a),(b),(c)は、それぞれ入力電圧Vinが積分器10のダイナミックレンジに比べて比較的小さい場合、中程度の場合および大きい場合の3つの状態においての積分器10の出力積分電圧Voの遷移を示したものである。入力電圧Vinの大中小は相対的な比較であり、具体的な数値を用いた比較ではない。たとえば、入力電圧Vinが比較的小さい場合とは、入力電圧Vinが大きい場合のたとえば1/3程度であり、中程度とは入力電圧Vinの大きさが大きい場合のたとえば2/3程度である。ここで、入力電圧Vinが大きい場合とは積分器10のダイナミックレンジのフル範囲または、これに近い入力電圧を指している。
【0044】
以下、
図4を用いて第1積分期間T1から第5積分期間T5までの時間の長さと、入力電圧Vinの大きさとの関係を述べる。なお、各積分期間の単位については説明の便宜上割愛し数値のみを用いて説明する。
【0045】
図4(a)は、入力電圧Vinが比較的小さい場合の積分波形と各積分期間の長さを模式的に示す。入力電圧Vinが比較的小さい場合(Vin 小)では、第1積分期間T1の長さをたとえば1.0とすると、第2積分期間T2は0.3、第3積分期間T3は6.4、第4積分期間T4は1.6、第5積分期間T5は0.8の大きさを取る。すなわち、第3積分期間T3は第4積分期間T4の4倍の長さを取ることになる。
【0046】
図4(b)は、入力電圧Vinが中程度の場合の積分波形と各積分期間の長さを模式的に示す。入力電圧Vinが中程度の場合(Vin 中)では、第1積分期間T1の長さをたとえば1.0とすると、第2積分期間T2は0.5、第3積分期間T3は4.8、第4積分期間T4は3.2、第5積分期間T5は0.8の大きさを取る。すなわち、第3積分期間T3は第4積分期間T4の1.5倍となり、
図4(a)に示した入力電圧Vinが比較的小さい場合よりはそれらの差が縮まることになる。
【0047】
図4(c)は、入力電圧Vinが比較的大きい場合の積分波形と各積分期間の長さを模式的に示す。入力電圧Vinが比較的大きい場合(Vin 大)とは積分器10のダイナミックレンジのフル範囲までの入力電圧が印加される状態を指す。第1積分期間T1の長さをたとえば1.0とすると、第2積分期間T2も1.0の長さとなり、第3積分期間T3は0.8、第4積分期間T4は7.2、第5積分期間T5は0.8の大きさを取る。すなわち、第4積分期間T4は第3積分期間T3の9倍となり、
図4(a),(b)に示した両者の関係とは大きさが逆転することが分かる。すなわち、入力電圧Vinが比較的大きくなるにつれ、第4積分期間T4の長さが長くなり、入力電圧Vinと参照電圧Vref1とを重畳して積分する時間が長くなるので、耐ノイズ特性が向上するという効果が奏される。
【0048】
図4(a)〜(c)において、第1積分期間T1は入力電圧Vinの大きさに関わらず所定の積分時間に設定しているのですべて同じ長さとなる。
【0049】
第2積分期間T2は、入力電圧Vinを参照電圧Vref1に切替えて積分する期間であり、第1積分期間T1の期間に積分器10に蓄積された電荷を放電する期間である。第2積分期間T2の大きさは、入力電圧Vinの大きさに比例する。入力電圧Vinが大きいほど、第2積分期間T2の期間は大きくなるので、
図4(a)に示した入力電圧Vinが小のときが一番短く、
図4(c)に示した入力電圧Vinが大のときに一番長くなる。なお、第2積分期間T2は最も大きい(長い)期間は第1積分期間T1と同じ長さ(T2=T1)になる。一般的にはT2≦T1である。
【0050】
リセット期間Trは、積分器10に残留した電荷を取り除く期間であり、入力電圧Vinの大きさに関わらず一定の時間に設定される。リセット期間Trは第1積分期間T1および第2積分期間T2のたとえば1/10程度に設定される。
【0051】
第3積分期間T3はたとえば、T3=M{(1+α)T1−T2}(但し、T2≧αT1、0.05≦α≦0.5、1≦M≦16)として示されている。上式において、第2積分期間T2は入力電圧Vinに比例して長くなるので、第3積分期間T3は入力電圧Vinの大きさに反比例することになる。すなわち、に入力電圧Vinが大きくなると第3積分期間T3は短くなり、入力電圧Vinが小さくなると大きくなる。
【0052】
第4積分期間T4は、T4=M(T2−αT1)(但し、T2≧αT1、0.05≦α≦0.5、1≦M≦16)として示される。第2積分期間T2は前に述べたように入力電圧Vinに比例する。このため、入力電圧Vinが大きくなると第2積分期間T2は大きくなるので、第4積分期間T4も大きくなる。逆に入力電圧Vinが小さくなると第2積分期間T2は小さくなる。
【0053】
第5積分期間T5は、T5=αMT1として示されるので、入力電圧Vinの大きさの影響を受けずに所定の時間に設定される。
【0054】
図4において、第1積分期間T1と第2積分期間T2は予備の積分期間であり、第3積分期間T3、第4積分期間T4および第5積分期間T5は本積分期間であるといえる。すなわち、本発明において第1積分期間T1と第2積分期間T2は、本積分を行うための予備としての位置づけを担っている。言い換えると、第1積分期間T1と第2積分期間T2は第3積分期間T3、第4積分期間T4および第5積分期間T5の積分時間を設定するためのプレ測定であるとも言える。
【0055】
また、本発明にかかる好ましい実施の形態を示した
図4からも明らかになるように、第1積分期間T1と第2積分期間T2とを加えた、いわゆるプレ測定に要する積分期間T10は入力電圧Vinに比例する。しかし、本測定に要する第3積分期間T3から第5積分期間T5までのトータルの積分期間T20はT20=M(1+α)T1として示され、入力電圧Vinの大きさに依存することなく所定の大きさを取る。すなわち、積分期間T20は、入力電圧Vinの大きさに関わらず、常にT20=M(1+α)T1と設定することができると言う特徴を有する。こうした各積分期間を設定することによって、入力電圧Vinの大小に関わらず入力電圧Vinの測定に要するトータルの積分時間をほぼ一定にすることができる。
【0056】
図4(a),(b),(c)に出力積分電圧Voおよびその最大値Vtop1,Vtop2およびVtop3を模式的に示したように、入力電圧Vinの大きさと第3積分期間T3の大きさに応じて最大値Vtop1,Vtop2およびVtop3が変動することが分かる。最大値Vtop1,Vtop2およびVtop3の大きさは、積分器10のダイナミックレンジを左右する。すなわち、最大値が小さくなるほどダイナミックレンジの余裕度は拡大する。ダイナミックレンジを拡大することができるならば出力積分電圧Voの変動に対して有利となる。また、ダイナミックレンジを小さくできるということは積分器10の電源電圧を低くすることができるので省電力化を実現することができる。
【0057】
図4全体において積分値の最大値Vtop1,Vtop2およびVtop3に注目すると、Vtop2>Vtop1>Vtop3であることが分かる。すなわち、これらの最大値は入力電圧Vinの大きさには比例しないことが分かる。入力電圧Vinが中程度であるときの最大値Vtop2が最も大きいことが分かる。ここで、入力電圧Vinが中程度のときの最大値Vtop2とダイナミックレンジとの関係をシミュレーションした結果、最大値Vtop2は積分器10のダイナミックレンジの約30%程度であることが分かった。このことは積分器10のダイナミックレンジの余裕度が拡大でき、延いては積分器10の電源電圧を低くできるという効果をも奏する。
【0058】
図5は、本発明にかかる2重積分型A/D変換器100の本測定の積分波形と、従来にかかる2重積分型A/D変換器の積分波形を示す。
図1に示したカウンタ42の動作が、たとえばノイズ等により所定の期間停止した場合を示す。
【0059】
図5(a)は、従来にかかる2重積分型A/D変換器のタイミングチャートを示し、積分器10から出力される出力積分電圧Vo1を示す。時間t0から時間t1までは入力電圧Vin、時間t1から時間t3までは、参照電圧Vref1のそれぞれ積分期間である。時間t1から時間t3までに積分された積分電圧の大きさが出力デジタル電圧Voutとしてカウンタ42から出力される。
【0060】
ここで、時間t1から時間t2までの期間、カウンタ42がたとえばノイズ等によって動作がたとえば停止した場合、カウンタ42の動作は停止するが、あらかじめ設定された時間t1との差に応じて時間t2まで積分は継続される。時間t2に到達すると、積分動作は参照電圧Vref1の積分動作に移行し、この積分動作はノイズ等によって停止された時間分、当初予想された時間t3よりは長い時間t4まで実行される。すなわち、カウンタ42のカウント動作が停止すると、入力電圧Vinを積分する時間は所定の大きさよりも長くなり、また、参照電圧Vref1は入力電圧Vinの積分時間が延びた分だけ長くなるので、正確な積分動作が実行できなくなるという不具合が生じる。
【0061】
図5(b)は、本発明にかかる2重積分型A/D変換器100のタイミングチャートを示し、積分器10から出力される出力積分電圧Voを示す。時間t5から時間t6は入力電圧Vinの積分期間であり、時間t6から時間t7までは入力電圧Vinと参照電圧Vref1を重畳させた積分期間であり、時間t7から時間t8までは参照電圧Vrefの積分期間を示す。時間t6から時間t8までに積分された積分電圧の大きさが出力デジタル電圧Voutとしてカウンタ42へ出力される。
【0062】
ここで時間t7から時間t8までの期間、カウンタ42の動作が、たとえばノイズ等により停止したと仮定すると、参照電圧Vref1の積分期間は時間t6から時間t9まで期間となる。出力デジタル電圧Voutが出力される期間は、カウンタ42の動作が停止した時間t7から時間t8の期間を除いた時間t6から時間t9までの期間となる。また、時間t8から時間t9までと時間t7から時間t8までの時間は、入力電圧Vinの大きさに関わらずほぼ一定に設定された時間である。よって出力デジタル電圧Voutが出力される期間は、ノイズが到来しカウンタが停止した時間t7から時間t8の期間を除いた時間t6から時間t9の期間と、時間t6から時間t8までの時間と同じになる。よって出力デジタル電圧Voutがノイズによって変動することがなくなる。
【0063】
図6は本発明にかかる2重積分型A/D変換器の積分波形を従来と比較して示したタイミングチャートである。
【0064】
図6(a)は、従来にかかる2重積分型A/D変換器のタイミングチャートを示し、積分器10から出力された出力積分電圧Vo1を示す。ここで従来とは、
図2に示した第1積分期間T31および第2積分期間T32で行う積分方式である。
図6(a)において、第1積分期間T31は入力電圧Vinの積分期間であり、第2積分期間T32は参照電圧Vref1の積分期間である。従来では、これらの積分期間は入力電圧Vinの大きさに応じた比較的長い時間積分することになる。
【0065】
図6(b)は、本発明にかかる2重積分型A/D変換器のタイミングチャートを示し、積分器10から出力される出力積分電圧Voを示す。第1積分期間T1及び第2積分期間T2を従前の積分期間(T31,T32)の1/M(Mは積分期間係数;Mは例えばM=8)に設定することで、従前の積分期間の1/8程度に短縮することができる。また、第3積分期間T3、第4積分期間T4および第5積分期間T5を合わせた積分期間は、前に述べたように第1積分期間T1と第2積分期間T2に基づき設定するようにし、かつ、これらの積分期間は入力電圧Vinの大きさに関わらず一定としたので、第1積分期間T1から第5積分期間T5までに要する積分期間T30は従前の積分期間T40のほぼ70%となり積分時間の短縮化が図れることが分かった。
【0066】
図7は本発明と従来とのノイズ影響度及び測定時間(積分期間)及びダイナミックレンジの特性比較を示す。
図7は
図6にも関連する。
図6を参照しながら
図7について説明する。
【0067】
まずノイズ影響度について述べる。ノイズ影響度は、
図6(a)に示すように入力電圧Vinを積分する第1積分期間T31と、参照電圧Vref1を積分する第2積分期間T32を有する積分方式と比較すると、本発明では積分時間マージン係数α=0.1とすると従来の10%程度に抑えられることが分かった。このことは第1積分期間T1、第2積分期間T2を従来の1/8程度に短縮したこと、さらに入力電圧Vinと参照電圧Vref1とを重畳して積分する時間を全体の50%程度以上に設定することによってノイズ影響度を大幅に抑制できることによる。ちなみに積分時間マージン係数α=0.05に設定するとノイズ影響はさらに良化し、従来の5%程度になることが分かった。なお、積分時間マージン係数αをたとえばα=0.5に設定すると、ノイズ影響はα=0.1のときよりは低下し、従来の63%になることが分かった。なお、入力電圧Vinが大きいときのレベルの1/3程度になると耐ノイズ特性の効果は入力電圧Vinが大きい場合に比べてその効果は低下することが分かった。
【0068】
次に測定時間(積分期間)の比較について述べる。測定時間は積分時間マージン係数α=0.1のときには従来の68%程度になることが分かった。すなわち本発明の積分時間は、従来の測定時間に比べると30%以上短縮することが分かった。本発明では2重積分を2回行うものであるが、従来の1回の2重積分方式に比べても積分時間の短縮化が図れた。なお、積分時間マージン係数α=0.05に設定すると従来の測定時間の65%程度になり、積分時間マージン係数α=0.5に設定すると、従来の測定時間の88%程度になり、正確には測定時間の短縮は、積分時間マージン係数αに依存することが分かった。
【0069】
次に、ダイナミックレンジの比較であるが、ダイナミックレンジは、積分時間マージン係数α=0.1のときには従来の30%程度に抑えられることが分かった。このことにより出力積分電圧Voの出力変動も小さく抑えられる。また、ダイナミックレンジが小さく抑えられることによって積分器10の電源電圧を低電源電圧で駆動することができ省電力化を実現することができる。
【0070】
また積分器10の低電源電圧化により、積分器10を構成するコンデンサCや抵抗R1,R2を小さくすることができるのでICの小型化および耐ノイズ特性をさらに向上させることができる。