(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、水道メータから流量の積算値等のデータを光通信で受信し、受信したデータ等を、所定の形式に変換した後に、通信線を通じて集中検針盤に送信できる
図9に示す送受信器101がある。この送受信器101は、水道メータの近くに設置されるために、水道メータと共に送受信器101が水没することがある。
【0003】
そのために、
図9に示すように、光通信を行うための受光素子102は、防水性のある樹脂103で覆われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、受光素子102を覆う樹脂は、受光素子102が受光できる光が透過できるように、透明の樹脂が用いられていた。そのため、有色のポリオレフィン系のホットメルト材は、この樹脂材よりも防水性が高いが光を透過できないために用いることが出来なかった。
【0005】
そこで、本発明は、前記従来技術の問題点を解決した
受信器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、基板と、該基板に設けた受光素子
と、該受光素子
を覆うとともに、受光素子が受光できる光が透過できる窓部材を有し、
前記窓部材の内側に前記基板側が開口する空間を形成し、該空間内に前記受光素子を配設し、
前記基板の外周全体及び窓部材の側面の少なくとも一部を外被材で覆い、
該外被材は、ポリオレフィン系のホットメルト材を、前記基板の外周全体及び窓部材の側面の少なくとも一部に、ホットメルトモールディングして一体形成したものであることを特徴とするものである。
【0009】
請求項
2記載の発明は、請求項
1記載の発明において、
前記空間内に充填材を、
前記受光素子の2面以上を覆うように充填したことを特徴とするものである。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記窓部材を、前記外被材の表面より外側に突出させたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、受光素子が受光できる光が透過できる窓部材を設け、この窓部材の側面の少なくとも一部をポリオレフィン系のホットメルト材を、ホットメルトモールディングしたことにより、窓部材以外の部分は、防水性が高く、有色のポリオレフィン系のホットメルト材を用いることができ、前記従来の送受信器より防水性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態を図に示す実施例に基づいて説明する。
[実施例1]
図1乃至
図7は本発明の実施例1を示す。
【0013】
本実施例1は、本発明の送受信器を、
図6に示すように水道メータ10の上部に設けて、水道メータ10から送信された流量の積算値などの信号を受信し、図示しない集中検針盤に流量の積算値などの信号を送信する送受信器1に適用したものである。
【0014】
送受信器1は、
図1乃至
図3に示すように、制御部(図示せず)が設けられた基板2と、制御部に接続線3aを介して電力を供給する電池3を有する。電池3としては、基板2に電力を供給できる化学電池であれば、マンガン、アルカリマンガン、オキシライド等の乾電池、リチウム電池、水銀電池、酸化銀電池、リチウムイオン二次電池、ニッケルカドミウム蓄電池等の任意のものを用いることが出来る。また、電池3の形状としては、円筒状、ボタン状、方形状など任意の形体とすることが出来る。本実施例1では円筒形状のリチウム電池を用いた。
【0015】
基板2には、通信ケーブル4と受光素子5が接続されており、この通信ケーブル4を通じて、制御部は、集中検針盤に信号を送信することが出来るようになっている。また、
図6に示すように、水道メータ10に設けた発光素子10aである光通信用LEDと対面するように設けた受光素子5により、制御部が、水道メータ10から信号を受信することができるようになっている。通信ケーブル4は、塩化ビニル等の樹脂で被覆されている。
【0016】
図2,
図3に示すように、電池3の外周部全体、電池3の両電極が設けられた面で両電極に接続されている接続線3a以外の部分の外側と、接続線3aの一部の外側には被覆材6が設けられ、被覆材6により電池3は被覆されている。被覆材6は、後述するホットメルトモールディングの際に、電池3に加わる温度を低減できるとともに、電池3に加わる力を低減できるものである。被覆材6として、本実施例1では、厚さ2〜3mmのフッ素樹脂シート(ニチアス社 型式#4140)を用いた。
【0017】
通信ケーブル4の基板2側部は、
図4に示すように、樹脂で形成された挿通部材11の挿通孔11aに貫通されている。
【0018】
挿通部材11は、
図4に示すように、基板2側に形成した小径部12と、小径部12の基板2と反対側において、小径部12の外径より大きな外径に形成した大径部13と、小径部12と大径部13との間に設けた拡径部14で一体に構成されている。小径部12の中心部には、両端が開口する円筒状の小径孔12aが形成され、大径部13の中心部には、両端が開口すると共に、小径孔12aの内径より大きな内径で、かつ、円筒状の大径孔13aが形成され、小径孔12aと大径孔13aとの間には前記拡径部14の一部が位置している。小径孔12aと大径孔13aは連通し、小径孔12aと大径孔13aと拡径部14の一部により、挿通孔11aが構成されている。
【0019】
拡径部14の内面の延長部と、小径孔12aの内面の延長部との交差部には、拡径部14の内面側と小径孔12aの内面側が開口する溝部16が設けられ、通信ケーブル4の外周と溝部16との間には、シール部材17であるOリングが圧入され、外部からシール部材17の内側への水の浸入を防止している。
【0020】
大径孔13aの内周面には雌ねじ13bが刻設され、この雌ねじ13bに抜止材18の外周面に設けた雄ねじ18aが螺合され、抜止材18によりシール部材17の挿通孔11aの軸方向への移動が抑制されている。
【0021】
図5に示すように、受光素子5と、受光素子5の周囲の基板2を覆うようにして窓部材19が設けられている。窓部材19は、受光素子5が受光できる光が透過できる材料で形成され、その内側には、基板2側のみが開口する空間19aが形成され、この空間19a内に受光素子5が位置するようになっている。窓部材19は、受光素子5が受光できる光が透過できれば、ポリプロピレン、ポリカーボネイト、アクリル樹脂などを用いることが出来、本実施例では、後述するポリオレフィン系のホットメルト材と接着性の良いノルボルネンとエチレンをメタロセン触媒により共重合した環状オレフィン・コポリマー(COC)を用いた。このCOCの光の透過率は91%である。
【0022】
窓部材19の空間19a内には、充填材20が充填されて、空間19a内の空気ができるだけ除かれている。これにより、窓部材19を空気と共に水分が透過することを抑制している。充填材20としては、受光素子5が受光できる光が透過できれば任意のものを用いることが出来るが、窓部材19を基板2に接着できるとともに、受光素子5が受光できる光が透過できる接着剤を用いた場合には、製造時において、窓部材19を所定の位置に固定できて好ましい。本実施例においては、セメダイン社 スーパーXゴールド若しくは、スリーボンド社 スリーボンド1757を用いた。
【0023】
窓部材19には、その本体部19bから、基板2と並行で外側方向に突出する鍔状の突部19cが、本体部19の側面の全周に亘って、上下に2個形成され、窓部材19と後述する外被材22との接触面積を大きくするようになっている。また、窓部材19と外被材22の間の部分にプライマーを塗布してもよい。
【0024】
基板2、被覆材6の外周全体と、挿通部材11の内側端部の外周と、窓部材19の本体19bの側面の少なくとも一部と、突部19cの周りに樹脂を射出成形して外被材22を一体に形成し、好ましくは、ホットメルト材をホットメルトモールディングして外被材22を一体形成する。なお、受光素子5における基板2とは反対側の端面(図の上面部)は、外被材22で覆われないようになっている。この外被材22を構成する樹脂としては、硬化後に加水分解が生じにくく、吸水率が低く、電気抵抗率の高いものであれば任意の樹脂(ホットメルト材)を用いることが出来、本実施例ではポリオレフィン系のホットメルト材(東亞合成株式会社 AS972)を使用した。
【0025】
次に、外被材22の成形方法を説明する。
下型枠の所定の位置に、電池3、受光素子5、窓部材19、通信ケーブル4、挿通部材11等を取り付けた基板2を設置した後に、上型枠を下型枠に対して所定の位置まで移動し、上下の型枠内に所定の圧力と温度でホットメルト材を射出して、外被材22を一体成形する。その後、所定時間、所定圧力を保った後に、上型枠を移動して成形品を取り出し、自然乾燥した後に送受信器1を得る。
【0026】
前記挿通部材11は、外被材22を構成するホットメルト材と接着性の良い樹脂であれば任意の樹脂を用いることで、挿通部材11と外被材22との間からの内部への水の浸入を抑制できる。本実施例においてはポリオレフィン系のホットメルト材と接着性の良いポリプロピレンを用いた。
【0027】
また、挿通部材11における挿通孔11aの内周面と通信ケーブル4の外周面との間にシール部材17を圧入したことにより、挿通穴11aを通じて内部への水の浸入を防止することができる。
【0028】
また、硬化後に加水分解が生じにくく、吸水率が低く、電気抵抗率の高いポリオレフィン系のホットメルト材を用いたことにより、外被材22を通じて内部へ水分が浸入することを防止できる。
【0029】
また、窓部材19を、ポリオレフィン系のホットメルト材との接着性が良い環状オレフィン・コポリマー(COC)で構成するとともに、窓部材19に突部19cを設けて窓部材19の側面の面積を大きくしたことにより、窓部材19と外被材22の間を通じて水が浸入することを抑制できる。また、窓部材19と外被材22の間の部分にクロスプライマーを塗布すると、より防水性を高めることができる。
【0030】
これらにより、本発明の送受信器1は、所定の防水性を確保することが出来る。
また、通信ケーブル4の周囲に関する防水は、通信ケーブル4と挿通孔11aの内周面間に圧入したシール部材17により行われ、通信ケーブル4の被覆材の素材に影響されることは無いため、任意の通信ケーブル4を用いることが出来る。
【0031】
通常、電池3は、100℃を超える熱が加わると、電池の性能に悪影響がでる虞がある。電池3の外周面に対して直接、射出温度220℃、金型温度60℃、射出・保圧3MPa、射出・保圧時間60sの条件で、ポリオレフィン系のホットメルト材をホットメルトモールディングで行い、ホットメルトモールディングの際の電池3の外周面の4箇所で測定した温度経過を示したグラフを
図8に示す。この
図8から分かるように、電池3を被覆材6で被覆しないと、電池3が100度を超えてしまい、電池3の性能に悪影響がでる虞がある。
【0032】
図7は、本発明の実施例のグラフで、電池3の外周全体を、被覆材6であるフッ素樹脂シート(ニチアス社 型式#4140)で覆い、同条件で、ホットメルトモールディングした際の温度経過を示したグラフである。この
図7から明らかなように、電池3に伝わる熱を100℃以下にすることができることが分かる。この電池3を取り出して、ホットメルトモールディング前後での電池内部抵抗を測定したところ、成形前が3.45Ωで、成形後が3.55Ωであり、異常は認められなかった。
【0033】
このように、ホットメルトモールディングにより外被材22を一体形成することができるために、前記従来技術の送受信器と比較して、製造時間を大幅に削減でき、製造コストを低減することが出来る。
【0034】
また、被覆材6として、復元力の大きなものを使用すると、ホットメルトモールディングした際に被覆材6が収縮し、その後被覆材6が復元する際に、外被材22にひびが入る虞があるために、被覆材6としては、ホットメルトモールディングした後の復元力が小さく、外被材22に与える力が小さいものを用いることが好ましい。被覆材6として、フッ素樹脂シート(ニチアス社 型式#4140)を用いて加速試験を実施したが、20年に相当する時間が経過した後にも外被材22にひび割れ等は認められなかった。
【0035】
なお、窓部材19の本体部19bに設けた突部19cは、送受信器に要求される防水性に応じて、図示した形状や数に限定されず任意に設定することが出来る。また、突部19cを設けず、本体部19bの側面に溝部を設けて、本体部19bの側面の面積を増大させるようにしてもよい。
【0036】
また、前記実施例では、挿通部材11の内側部の外周に外被材22を設けたが、挿通部材11の外周全体に外皮材22を設けるようにしてもよい。
【0037】
[実施例2]
前記実施例1では、窓部材19の空間19a内に受光素子5を設けたが、対応する受光素子が受光できる光を発光できる発光素子を設けるようにし、例えば、通信ケーブル4を通じて制御部が水道メータから信号を受信し、発光素子から他の機器に信号を発信するようにしてもよい。
【0038】
その他の構造は前記実施例1と同様であるのでその説明を省略する。
本実施例2においても前記実施例1と同様の作用、効果を発揮することが出来る。
【0039】
[その他の実施例]
前記実施例1では、本発明の送受信器を、水道メータからの信号を受信し、集中検針盤に信号を送信するものに適用したが、信号を受信する機器としては、水道メータ以外にも、ガスメータ、水位計等の任意の測定機器から信号を受信することが出来、また、集中検針盤以外にも任意の機器に信号を送信するようにしても良い。また、他の機器から信号を受信し、測定機器に信号を送信するようにしても良い。