(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
クラッチアクチュエータの実際に検出されたピストンストローク量が、車両の動作状態に基づいて算出された指示値となるようPID制御に基づいてクラッチの断接が自動制御可能に構成されてなる自動クラッチ制御装置におけるクラッチ制御方法であって、
前記ピストンストローク量が指示値に到達した際に前記クラッチアクチュエータの駆動停止を行うと共にPID制御を停止し、かつ、PID制御における積分項を初期化し、しかる後、前記ピストンストローク量が所定のしきい値を超えるか、又は、前記PID制御の停止時から所定時間が経過した場合に、PID制御を再開することを特徴とするクラッチ制御方法。
クラッチアクチュエータの実際に検出されたピストンストローク量が、車両の動作状態に基づいて算出された指示値となるようPID制御に基づいてクラッチの断接を制御可能に構成された電子制御ユニットを具備してなる自動クラッチ制御装置において、
前記電子制御ユニットは、
前記ピストンストローク量が指示値に到達したと判定した際に前記クラッチアクチュエータの駆動停止を行うと共にPID制御を停止し、かつ、PID制御における積分項を初期化し、しかる後、前記ピストンストローク量が所定のしきい値を超えたと判定された際、又は、前記PID制御の停止時から所定時間が経過したと判定された際に、PID制御を再開するよう構成されてなることを特徴とする自動クラッチ制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、
図1乃至
図5を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態における自動クラッチ制御装置が適用されたクラッチ作動装置の構成について、
図1を参照しつつ説明する。
本発明の実施の形態におけるクラッチ作動装置1は、クラッチの断接を行うクラッチアクチュエータ2、クラッチアクチュエータ2の作動に必要なエアー圧(圧縮空気圧)を発生するエアー圧源3,及び、クラッチアクチュエータ2の作動制御を行う自動クラッチ制御装置4を具備して構成されたものとなっている。
【0011】
なお、かかるクラッチ作動装置1により断接作動せしめられるクラッチは、例えば、前述の特許文献1に記載されたクラッチを始め従来公知のクラッチのように、図示しないクラッチスプリングやダイアフラムの付勢力により接続される一方、エアー圧によって切断されるよう構成されてなるものである。
【0012】
自動クラッチ制御装置4は、給気弁5、排気弁6、車両の自動変速機を制御する変速機用電子制御ユニット7、及び、クラッチアクチュエータのクラッチストローク位置を検出するストロークセンサ8を有して構成されたものである。
変速機用電子制御ユニット7は、例えば、公知・周知の構成を有してなるマイクロコンピュータ(図示せす)を中心に、RAMやROM等の記憶素子(図示せず)を備えると共に、入出力インターフェイス回路(図示せず)を主たる構成要素として構成されてなるもので、変速制御処理が実行されると共に、従来のクラッチ制御処理を基本として、後述する本発明の実施の形態におけるクラッチ制御処理が実行されるものとなっている。なお、
図1においては、「クラッチ制御部13」は、特に、クラッチ制御処理がマイクロコンピュータ(図示せず)によって実行されることで実現されるもので、かかる制御部分を概念的に示したものである。
【0013】
また、給気弁5は、給気用大開度電磁弁9及び給気用小開度電磁弁10を有して構成されると共に、同様に、排気弁6は、排気用大開度電磁弁11及び排気用小開度電磁弁12を有して構成されたものとなっている(
図1及び
図2参照)。
【0014】
給気用大開度電磁弁9は、開弁状態とされた場合に、その弁開度が所定の大きな開度となるよう設定されてなる電磁弁である。
一方、給気用小開度電磁弁10は、開弁状態とされた場合に、その弁開度が、給気用大開度電磁弁9の弁開度より小さな所定の開度となる設定されてなる電磁弁である。
これらの給気用大開度電磁弁9及び給気用小開度電磁弁10は、いずれも常閉(非動作時に閉)の電磁弁である。
【0015】
上述の給気用大開度電磁弁9及び給気用小開度電磁弁10の弁開度の設定は、排気用大開度電磁弁11及び排気用小開度電磁弁12にも同様に言えることであるので、ここでの再度の詳細な説明は省略することとする。
また、排気用大開度電磁弁11及び排気用小開度電磁弁12は、いずれも常開(非動作時に開)の電磁弁である。
なお、排気用大開度電磁弁11及び排気用小開度電磁弁12は、いずれも常閉の電磁弁で構成することもできる。
以下の説明においては、排気用大開度電磁弁11及び排気用小開度電磁弁12は、いずれも常開の電磁弁として説明を行うこととする。
【0016】
給気用大開度電磁弁9及び給気用小開度電磁弁10の各給気側は、それぞれ、各エアー通路14,15,16を介してエアー源3に接続されたものとなっている(
図1及び
図2参照)。また、給気用大開度電磁弁9及び給気用小開度電磁弁10の排気側は、それぞれ、各エアー通路17,18を介して排気用大開度電磁弁11及び排気用小開度電磁弁12の各給気側に接続されている(
図2参照)。
【0017】
そして、各エアー通路17,18は、エアー通路19を介して互いに接続されると共に、エアー通路20を介してクラッチアクチュエータ2に接続されている。
したがって、給気用大開度電磁弁9及び給気用小開度電磁弁10の各排気側と、排気用大開度電磁弁11及び排気用小開度電磁弁12の各給気側は、クラッチアクチュエータ2に接続されたものとなっている。
さらに、排気用大開度電磁弁11及び排気用小開度電磁弁12の各排気側は、各エアー通路21,22,23を介して外部に接続されたものとなっている。
【0018】
これら給気用大開度電磁弁9及び給気用小開度電磁弁10、並びに、排気用大開度電磁弁11及び排気用小開度電磁弁12は、いずれも、変速機用電子制御ユニット7のクラッチ制御部13により、従来同様、例えば、PWM(Pulse Width Modulation)制御により駆動制御されるものとなっている。
例えば、車両のキースイッチ(図示せず)がオフされた状態においては、
図2に示されたように、給気用大開度電磁弁9及び給気用小開度電磁弁10は、いずれも閉弁状態となる一方、排気用大開度電磁弁11及び排気用小開度電磁弁12は、いずれも開弁状態となる。
したがって、この状態では、クラッチアクチュエータ2からエアーが排出されて、クラッチアクチュエータ2は非動作状態となり、クラッチスプリング(図示せず)により接続された状態となる(通常のクラッチ接続状態)。
【0019】
次に、かかる状態において、車両のエンジンを始動するために、例えば、ブレーキペダル(図示せず)が踏み込まれた状態でキースイッチ(図示せず)がオンされると、変速機用電子制御ユニット7のクラッチ制御部13により、排気弁6が閉じられると共に給気弁5が開かれる。
これにより、エアーが吸気弁5を通してクラッチアクチュエータ2に供給され、エアー圧によるピストン押圧力がピストン2aに対するクラッチスプリング(図示せず)の付勢力に打ち勝つようになると、ピストン2aがストロークし、クラッチアクチュエータ2が作動を開始することとなる。
そして、ピストン2aが第1の所定量ストロークするとクラッチ(図示せず)が軽く接続されて半クラッチ状態となり、ピストン2aがさらに第2の所定量ストロークするとクラッチ(図示せず)が切断されることとなる。
【0020】
この場合、給気用小開度電磁弁10のみが開弁されると、比較的小流量のエアーがクラッチアクチュエータ2に供給されるので、クラッチアクチュエータ2のピストン2aのストローク速度は比較的遅くなる一方、給気用大開度電磁弁9のみが開弁されると、比較的大流量のエアーがクラッチアクチュエータ2に供給されるので、ピストン2aのストローク速度は、給気用小開度電磁弁10のみが開弁された場合に比べて速くなる。
さらに、給気用大開度電磁弁9及び給気用小開度電磁弁10が共に開弁された場合には、さらなる大流量のエアーがクラッチアクチュエータ2に供給されるので、ピストン2aのストローク速度は、給気用大開度電磁弁9のみが開弁された場合に比べてさらに速くなる。
【0021】
一方、ピストン2aがクラッチ切断位置までストロークしたクラッチアクチュエータ2の作動状態、すなわち、クラッチの切断状態から、クラッチアクチュエータを非動作方向(
図2において紙面左方向)にストロークさせてクラッチを接続させるにあっては、クラッチ制御部13により給気弁5が閉じられる一方、排気弁6が開弁状態とされる。
その結果、エアーがクラッチアクチュエータ2から排気弁6を介して通して外部に排出され、ピストン2aが非作動方向にストロークを開始し、所定量のストロークの後、クラッチ(図示せず)は軽く接続された半クラッチ状態となる。
そして、ピストン2aが非動作方向にさらにストロークすると、クラッチは強く接続された通常の状態となる。
【0022】
この場合、排気用小開度電磁弁12のみが開弁されると、比較的小流量のエアーがクラッチアクチュエータ2から排出されるので、クラッチアクチュエータ2のピストン2aのストローク速度は比較的遅くなる一方、排気用大開度電磁弁11のみが開弁されると、比較的大流量のエアーがクラッチアクチュエータ2から排出されるので、ピストン2aのストローク速度は、排気用小開度電磁弁12のみが開弁された場合に比べて速くなる。
さらに、排気用大開度電磁弁11及び排気用小開度電磁弁12が共に開弁された場合には、さらなる大流量のエアーがクラッチアクチュエータ2から排出されるので、ピストン2aのストローク速度は、排気用大開度電磁弁11のみが開弁された場合に比べてさらに速くなる。
【0023】
このように本発明の実施の形態におけるクラッチ作動装置1においては、給気用大開度電磁弁9及び給気用小開度電磁弁10、並びに、排気用大開度電磁弁11及び排気用小開度電磁弁12を、それぞれ別個に駆動することができ、適宜、使い分けることによって、クラッチアクチュエータ2の動作速度、すなわち、ピストン2aのストローク速度を所望の大きさに調整可能となっており、それによって、クラッチアクチュエータ2のクラッチストロークを短時間で高精度に目標クラッチストローク値に到達せしめることが可能な構成となっている。
【0024】
さらに、本発明の実施の形態においては、次述するようなクラッチ制御処理によって、先の背景技術で説明したような従来装置におけるエアシリンダの空気密度やクラッチの付勢手段として用いられるばねの特性に起因するクラッチ制御における制御応答の低下を抑圧し、制御応答性の向上が可能なものとなっている。
図3には、クラッチ制御部13によって実行される本発明の実施の形態におけるクラッチ制御処理の手順がサブルーチンフローチャートに示されており、以下、同図を参照しつつ本発明の実施の形態におけるクラッチ制御処理について説明する。
【0025】
最初に、本発明の実施の形態における自動クラッチ制御装置4は、ストロークセンサ8によって検出された実際のピストンストローク量が、車両の動作状態に基づいて算出された指示値となるようPID制御に基づいてクラッチの断接を制御する、いわゆる従来のクラッチ制御処理が行われるよう構成されたものであることを前提とし、さらに、以下に説明する本発明の実施の形態におけるクラッチ制御処理が行われるものとなっている。
以下、具体的に説明すれば、まず、クラッチ制御部13による処理が開始されると、クラッチアクチュエータ2へ対する操作指令が発生しているか否かが判定される(
図3のS102参照)。
すなわち、図示されないメインルーチンにおいては、従来同様実行されるメインクラッチ制御処理が実行され、車両の運転状況等に基づいてラッチアクチュエータ2を駆動する必要があるか否かが判定されるようになっている。
したがって、ステップ102においては、メインルーチンにおける上述のクラッチアクチュエータ2の駆動が必要か否かの判定結果を流用することで足りる。
【0026】
ステップS102において、クラッチアクチュエータ2の駆動が必要と判定されているとの判定結果を得た場合(YESの場合)には、次述するテップS104の処理へ進む一方、クラッチアクチュエータ2の駆動は必要ではないと判定されているとの判定結果を得た場合(NOの場合)には、これ以後の一連の処理を行う必要はないとして処理は終了され、図示されないメインルーチンへ戻ることとなる。
【0027】
次いで、ステップS104においては、図示されないメインルーチンにおいて判断されたクラッチアクチュエータ2のピストン2aの駆動方向に応じて、給気弁5又は排気弁6への弁駆動信号の出力が行われることとなる。
ここで、弁駆動信号は、先に説明したようにPWM制御におけるPWM信号であり、説明の便宜上、給気弁5へ対して出力されるPWM信号を”給気デューティ信号”と称し、また、排気弁6へ対して出力されるPWM信号を”給気デューティ信号”と称することとする(
図1参照)。
【0028】
次いで、ストロークセンサ8により検出されたピストン2aの実際のストローク量(以下、説明の便宜上「実ストローク量」と称する)が、図示されないメインルーチンにおいて車両の動作状態に基づいて演算算出された指示値を超えているか否かが判定され(
図3のステップS106参照)、超えたと判定されると(YESの場合)、次述するステップS108の処理へ進むこととなる。
ここで、指示値は、車両の動作状態に基づいて所望されるピストン2aのストローク量であり、換言すれば、目標値である。
【0029】
次いで、ステップS108においては、実ストローク量が指示値を超えたことに対応して、弁駆動信号の出力が停止されると共に、PID制御が停止され、かつ、PID制御におけるI項(積分値)の初期化が実行される。なお、ここで、初期化は、I項の値を零とすることを意味する。
次いで、ストロークセンサ8により検出されたピストン2aの実ストローク量が、しきい値を超えたか否かが判定され(
図3のステップS110参照)、しきい値を超えたと判定された場合(YESの場合)には、PID制御によるクラッチ制御が再び開始されることとなる(
図3のステップS114参照)。
【0030】
一方、ステップS110において、実ストローク量は、未だしきい値を超えていないと判定された場合(NOの場合)には、先のステップS108において弁駆動信号出力が停止されると同時にPID制御が停止されてから、所定時間が経過したか否かが判定され(
図3のステップS112参照)、所定時間が経過したと判定された場合(YESの場合)には、ステップS114の処理へ進む一方、未だ、所定時間を経過していないと判定された場合(NOの場合)には、先のステップS110へ戻り、ステップS110の判定結果がYESとなるか、又は、ステップS112の判定結果がYESとなるまで、これらの処理が繰り返されることとなる。
【0031】
次に、上述のようなクラッチ制御処理を実行することの意義について、
図4及び
図5の模式図を参照しつつ説明する。
まず、
図5(A)は、従来のクラッチ制御における給気弁5又は排気弁6の操作量を、
図5(B)は、
図5(A)に示された給気弁又は排気弁の操作量に対するストローク量の変化を、それぞれ模式的に示した模式図である。
【0032】
ここで、”給気弁又は排気弁の操作量”とは、クラッチアクチュエータ2を作動させてピストン2aを所望する位置へ移動させるために給気弁又は排気弁に印加される弁駆動信号の量を意味し、より具体的には、本発明の実施の形態においては、給気デューティ信号、排気デューティ信号のデューティの大きさである。一般に、デューティ信号のデューティが大きくなる程、給気弁又は排気弁へ対する通電量が増加し、給気弁又は排気弁の開度は大となる。
【0033】
図5(A)において、操作量の正の領域は、例えば給気弁5の操作量とすると、負の領域は排気弁6の操作量に相当する。
例えば、ある指示値(
図5(B)参照)のストローク量を得るために、排気弁5が必要な操作量で駆動されたとすると、ピストン2aが移動を開始し、時間の経過と共にストローク量が指示値に向かって増加してゆく(
図5(B)参照)。
背景技術に述べたように、クラッチアクチュエータ2の作動に用いられる空気の特性やクラッチを一方向へ付勢する一手段としてのばねの特性等に起因して、ストローク量が指示値に達しても即座に停止することはなく(
図5(B)参照)、オーバーシュートが生ずるのが一般的である。
【0034】
ストローク量が指示値を超えると同時にピストン2aを本来の位置へ戻すべく、給気弁5に代えて排気弁6へ対してPID制御に基づく操作量が与えられ(
図5(A)及び
図5(B)の時刻t1の箇所参照)、その後、ストトーク量はピークとなった後、指示値へ向かって反転する(
図5(B)参照)。
以後、ストローク量は、指示値を中心にして、複数回上下動しつつ徐々に指示値へ収束してゆくこととなる(
図5(B)参照)。
【0035】
このように従来のクラッチ制御においては、PID制御において、特に、オーバーシュートやアンダーシュートが生じた後のストローク量の変化分がI項(積分項)に順次加減算されるため、その結果、ストローク量がオーバーシュートした後、指示値を中心に上下動を繰り返す、いわゆるストローク量の振動現象が回避困難であった。
【0036】
一方、
図4(A)は、本発明の実施の形態におけるクラッチ制御処理を実行した場合の給気弁5又は排気弁6の操作量を、
図4(B)は、
図4(A)に示された給気弁5又は排気弁6の操作量に対するストローク量の変化を、それぞれ模式的に示した模式図であり、
図4(A)は
図5(A)に、
図4(B)は
図5(B)に、それぞれ対応するものである。
【0037】
図5の説明同様、例えば、排気弁5がある操作量で駆動された場合、ストローク量が指示値へ向かって増加してゆき、指示値を超えてオーバ−シュートするまでは、従来のクラッチ制御と基本的に同じ変化である(
図4(A)及び
図4(B)並びに
図5(A)及び
図5(B)参照)。
本発明の実施の形態においては、ストローク量が指示値を超えると、弁駆動信号の出力が停止されると共にPID制御が停止され、かつ、I項の初期化がなされる(
図3のステップS106,S108参照)。かかる処理が実行されるのは、
図4においては、時刻t1の時点である。
【0038】
弁駆動信号の出力停止とPID制御の停止がなされても、回路動作の遅れやピストン2aの惰性等によりストローク量は指示値を超えてオーバシュートを生ずる。そして、ストローク量が指示値を超えた後、所定のしきい値(
図4(B)において「th」と表記)を超えるか(
図4(B)において時刻t2の時点)、又は、PID制御停止時から所定時間経過すると、PID制御が再開される(
図3のステップS110,S114,S112参照)。
ここで、しきい値thは、
図4のようにストローク量がオーバーシュートする場合には、指示値よりも所定値αだけ上で、かつ、オーバーシュートのピーク値を超えない範囲に設定されたものである。なお、所定値αは、車両の具体的な仕様等を勘案し、試験結果やシミュレーション結果を基に適切なものを選定するのが好適である。
【0039】
図4はストローク量がオーバーシュートする場合を例としているが、本発明の実施の形態におけるクラッチ制御処理は、ストローク量がオーバーシュートする場合のみならず、勿論、アンダーシュートする場合にも同様に適用されるものであり、その場合、しきい値thは、アンダーシュートが生じた指示値よりも所定値βだけ低い値に設定されることとなり、この場合も、所定値βは、車両の具体的な仕様等を勘案し、試験結果やシミュレーション結果を基に適切なものを選定されるべきものである。
【0040】
また、所定時間についても、車両の具体的な仕様等を勘案し、試験結果やシミュレーション結果を基に適切なものを選定するのが好適である。
PID制御を再開する条件として、しきい値を超えるか、又は、所定時間を経過することとしたのは、オーバーシュート(又はアンダーシュート)が必ずしもしきい値を超えるとは限らないことや、しきい値を超えるとしても比較的長い時間要する場合には、PID制御を再開した方がクラッチ制御の安定性、応答性等を考慮して得策と考えられるからである。
【0041】
しかして、ストローク量がしきい値を超えるか、又は、PID制御停止から所定時間経過して、PID制御が再開され、ストローク量が指示値となるように制御されるが、発明の実施の形態においては、PID制御再開の前に、I項の初期化が行われているため(
図3のステップS108参照)、従来と異なり、PID制御再開後のストローク量は指示値へ向かってゆき指示値に到達した後、殆ど振動することなく指示値、又は、その極近傍の値収束することとなる(
図4(B)参照)。
なお、
図4(A)における操作量は、給気弁5又は排気弁6全体として操作量として説明しており、本発明の実施の形態のように、給気弁5、排気弁6が、それぞれ大小の開度の電磁弁を用いて構成されると共に、それぞれ別個に駆動可能となっている場合、これらを以下に使い分けるかは、任意であり、特定の駆動形態に限定される必要はないものである。