特許第6293610号(P6293610)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6293610-空気入りタイヤ 図000003
  • 特許6293610-空気入りタイヤ 図000004
  • 特許6293610-空気入りタイヤ 図000005
  • 特許6293610-空気入りタイヤ 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6293610
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20180305BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   B60C11/00 H
   B60C11/12 D
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-160633(P2014-160633)
(22)【出願日】2014年8月6日
(65)【公開番号】特開2016-37123(P2016-37123A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124707
【弁理士】
【氏名又は名称】夫 世進
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 聡一
【審査官】 鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−76764(JP,A)
【文献】 特開2002−29216(JP,A)
【文献】 特開2005−263180(JP,A)
【文献】 特開2013−193512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00−11/24
B60C 3/00− 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ幅方向両側のショルダー陸部の隣にそれぞれメディエイト陸部が形成された空気入りタイヤであって、
前記メディエイト陸部にはそれぞれサイプが形成され、
車両装着時に車両幅方向内側となるメディエイト陸部は、車両幅方向外側となるメディエイト陸部よりも、サイプ密度が大きく、
車両装着時に車両幅方向内側となるメディエイト陸部は、車両幅方向外側となるメディエイト陸部よりも、タイヤ径方向外側へ大きく突出していることを特徴とする、空気入りタイヤ。
【請求項2】
タイヤ幅方向中央にセンター陸部を備え、
前記センター陸部は、タイヤ基準輪郭線よりもタイヤ径方向外側へ突出し、
その突出量は、車両装着時に車両幅方向内側となるメディエイト陸部の突出量よりも小さい、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記センター陸部はサイプを備え、
前記センター陸部のうち車両装着時に車両幅方向内側となる部分は、車両幅方向外側となる部分よりも、サイプ密度が大きく、
前記センター陸部の幅方向の中心よりも車両装着時に車両幅方向内側となる部分に、タイヤ径方向外側への突出の頂点が形成された、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
車両装着時に車両幅方向内側となるメディエイト陸部における前記サイプの密度の、車両幅方向外側となるメディエイト陸部における前記サイプの密度に対する比率が、1.2以上3.5以下であり、
車両装着時に車両幅方向内側となるメディエイト陸部の頂点は、車両幅方向外側となるメディエイト陸部の頂点よりも、0.2mm以上1.5mm以下だけ高く突出している、請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
車両装着時に車両幅方向内側となるメディエイト陸部における前記サイプの密度の、車両幅方向外側となるメディエイト陸部における前記サイプの密度に対する比率が、1.2以上3.5以下であり、
車両装着時に車両幅方向内側となるメディエイト陸部の頂点は、車両幅方向外側となるメディエイト陸部の頂点よりも、0.2mm以上1.5mm以下だけ高く突出し、
車両幅方向内側となるメディエイト陸部の頂点は、前記センター陸部の頂点よりも0.2mm以上1.0mm以下だけ高く突出している、請求項2又は3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記センター陸部の前記突出の頂点は、前記センター陸部の幅方向の中心よりも、前記センター陸部の半幅の25%以上50%以下の長さだけ、車両装着時に車両幅方向内側となる方向にずれた位置にある、請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
操縦安定性が向上する空気入りタイヤの構成の1つとして、トレッドのリブがタイヤ径方向外側へ膨出し、膨出の頂点がリブの幅方向の中心よりも車両装着時の内側にずれているものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−263180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、リブやブロックにおけるサイプ密度も操縦安定性に影響する。例えば、サイプ密度が大きいと雪上での操縦安定性が良い。しかし、サイプ密度が大きいぶんリブやブロックの剛性が小さいため、乾燥路面上での特に高荷重でのコーナリング時の操縦安定性が悪い。一方、サイプ密度が小さいと乾燥路面上での高荷重でのコーナリング時の操縦安定性が良いが、雪上での操縦安定性が悪い。
【0005】
そこで本発明は、雪上での操縦安定性と、乾燥路面上での高荷重でのコーナリング時の操縦安定性とを両立できる空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の空気入りタイヤは、タイヤ幅方向両側のショルダー陸部の隣にそれぞれメディエイト陸部が形成された空気入りタイヤであって、前記メディエイト陸部にはそれぞれサイプが形成され、車両装着時に車両幅方向内側となるメディエイト陸部は、車両幅方向外側となるメディエイト陸部よりも、サイプ密度が大きく、車両装着時に車両幅方向内側となるメディエイト陸部は、車両幅方向外側となるメディエイト陸部よりも、タイヤ径方向外側へ大きく突出していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
実施形態の空気入りタイヤによれば、雪上での操縦安定性と、乾燥路面上での高荷重でのコーナリング時の操縦安定性とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】空気入りタイヤ1のトレッド2付近の幅方向断面図。
図2】空気入りタイヤ1のトレッドパターン。
図3】空気入りタイヤ1の別のトレッドパターン。
図4】空気入りタイヤ1の接地面を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(空気入りタイヤ1の構造)
実施形態の空気入りタイヤ1の断面構造は、図1に示すように、トレッド2を除いて従来から知られた構造で、ビード部と、ビード部を包む形でタイヤ幅方向内側から外側に折り返されたカーカス10を備える。カーカス10のタイヤ径方向外側には、ベルト層11、ベルト補強層12、トレッド2が、この順に積層されている。これらの部材の他にも、タイヤの機能上の必要に応じて、様々な部材が設けられている。
【0010】
図1〜3に示すように、トレッド2にはタイヤ周方向に1周する4本の主溝20が形成されている。そして、タイヤ幅方向中央のセンター陸部21、タイヤ幅方向両側のショルダー陸部22、22、センター陸部21とショルダー陸部22、22との間に位置するメディエイト陸部23a、23bが、主溝20により区分されている。なお、センター陸部21はその幅方向の範囲内にタイヤ赤道Eを含む。実施形態では、センター陸部21とメディエイト陸部23a、23bは、横溝で分断されることなくタイヤ周方向に1周しているリブである。一方、ショルダー陸部22は、複数のブロック22aがタイヤ周方向に並んで形成されている。
【0011】
空気入りタイヤ1は車両への装着方向が決まっている。車両装着時に車両幅方向内側(以下IN側とする)となるメディエイト陸部をIN側メディエイト陸部23a、車両装着時に車両幅方向外側(以下OUT側とする)となるメディエイト陸部をOUT側メディエイト陸部23bとする。
【0012】
図2、3に示すように、メディエイト陸部23a、23bにはサイプ24が形成されている。IN側メディエイト陸部23aのサイプ密度は、OUT側メディエイト陸部23bのサイプ密度よりも大きい。ここでサイプ密度とは、接地面の単位面積あたりの、接地面に現れているサイプ24の合計長さである。IN側メディエイト陸部23aにおけるサイプ密度の、OUT側メディエイト陸部23bにおけるサイプ密度に対する比率(IN側メディエイト陸部23aにおけるサイプ密度/OUT側メディエイト陸部23bにおけるサイプ密度)は、1.2以上3.5以下であることが望ましい。
【0013】
図1に示すように、メディエイト陸部23a、23bには、タイヤ基準輪郭線L1よりもタイヤ径方向外側へ突出した突出部25a、25bが形成されている。その場合、メディエイト陸部23a、23bの一部に突起が形成されているのではなく、図示するようにメディエイト陸部23a、23bの全体がタイヤ基準輪郭線L1よりもタイヤ径方向外側へ突出していることが望ましい。タイヤ基準輪郭線L1は図1において二点鎖線で示されている。IN側メディエイト陸部23aにおけるタイヤ基準輪郭線L1は、IN側メディエイト陸部23aのタイヤ幅方向両端部P、Qと、IN側メディエイト陸部23aよりタイヤ幅方向内側の陸部(すなわちセンター陸部21)のIN側メディエイト陸部23a側の端部Rとの、3点P、Q、Rを通る円弧で表される。また、OUT側メディエイト陸部23bにおけるタイヤ基準輪郭線L1は、OUT側メディエイト陸部23bのタイヤ幅方向両端部T、Uと、OUT側メディエイト陸部23bよりタイヤ幅方向内側の陸部(すなわちセンター陸部21)のOUT側メディエイト陸部23b側の端部Sとの、3点S、T、Uを通る円弧で表される。
【0014】
IN側の突出部25aの突出量は、OUT側の突出部25bの突出量よりも大きい。IN側の突出部25aの頂点26a(タイヤ基準輪郭線L1からタイヤ基準輪郭線L1に垂直な方向へ最も突出している部分)は、OUT側の突出部25bの頂点26bよりも、0.2mm以上1.5mm以下だけ高く突出していることが望ましい。ここで高いとはタイヤ基準輪郭線L1に垂直な方向へ出ているということである。
【0015】
なお、OUT側メディエイト陸部23bはタイヤ基準輪郭線L1よりタイヤ径方向外側へ突出していなくても良い。その場合はIN側の突出部25aの頂点26aがタイヤ基準輪郭線L1より0.2mm以上1.5mm以下だけ突出していることが望ましいことになる。
【0016】
図1に示すように、センター陸部21には、タイヤ基準輪郭線L2よりもタイヤ径方向外側へ突出して突出部27が形成されていることが望ましい。その場合、センター陸部21の一部に突起が形成されているのではなく、図示するようにセンター陸部21の全体がタイヤ基準輪郭線L2よりもタイヤ径方向外側へ突出していることが望ましい。ここで、センター陸部21の幅方向両端部R、Sと、2つのメディエイト陸部23a、23bの幅方向内側の各端部Q、Tのうち、3点Q、R、Sを通る円弧と、3点R、S、Tを通る円弧を求め、曲率半径が大きい方の円弧をタイヤ基準輪郭線L2とする。
【0017】
センター陸部21の突出部27の突出量は、IN側メディエイト陸部23aの突出部25aの突出量よりも小さい。IN側メディエイト陸部23aの突出部25aの頂点26aは、センター陸部21の突出部27の頂点28よりも、0.2mm以上1.0mm以下だけ高く突出していることが望ましい。ここでも高いとはタイヤ基準輪郭線L2に垂直な方向へ出ているということである。また、センター陸部21の突出部27の突出量は、OUT側メディエイト陸部23bの突出部25bの突出量よりも大きいことが望ましい。
【0018】
ここで、センター陸部21の突出部27の頂点28は、センター陸部21の幅方向の中心よりもIN側の部分にあることが望ましく、センター陸部21の幅方向の中心よりもセンター陸部21の半幅の25%以上50%以下の長さだけIN側にずれた位置にあることがさらに望ましい。
【0019】
図2、3に示すように、センター陸部21にはサイプ24が形成されていることが望ましい。センター陸部21のサイプ密度は、図2に示すようにセンター陸部21のIN側とOUT側とで同じでも良い。しかし、センター陸部21の幅方向の中心よりもIN側のサイプ密度が、センター陸部21の幅方向の中心よりもOUT側のサイプ密度よりも、大きいことが望ましい。このようなサイプ密度の差は、様々な方法で付けることができる。例えば、図3に示すように、サイプ24がセンター陸部21のIN側に開口しOUT側に開口しないように形成されていれば、OUT側よりもIN側の方がサイプ24の合計長さが長くなるため、OUT側よりもIN側のサイプ密度が大きくなる。また、サイプ24のタイヤ周方向の間隔が、IN側では狭く、OUT側では広くなるように形成されていれば、OUT側よりもIN側のサイプ密度が大きくなる。
【0020】
以上の説明において、タイヤ基準輪郭線L1、L2や各突出部25a、25b、27の頂点26a、26b、28の突出量は、空気入りタイヤ1を正規リムに装着して正規内圧とした場合の無負荷でのものであり、この状態でのタイヤ形状をレーザー形状測定装置で計測することにより得られる。ここで正規リムとは、JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、又はETRTO規格における「Measuring Rim」である。正規内圧とは、JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の「最大値」、又はETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」である。また、接地面とは、空気入りタイヤ1を前記正規リムに装着して前記正規内圧とし、前記正規内圧における最大負荷能力の80%の負荷を与えたときに平坦な路面に接する面のことである。
【0021】
(効果)
以上のように、IN側メディエイト陸部23aには、他の陸部の突出部よりも突出量が大きい突出部25aが形成されている。そのため、空気入りタイヤ1が接地しそのIN側とOUT側にほぼ等しく荷重がかかると、図4(a)に示すように、IN側メディエイト陸部23aの接地面が他の陸部の接地面よりも広くなる。そのため、操縦安定性にIN側メディエイト陸部23aが大きく寄与することとなる。ここで、IN側メディエイト陸部23aはサイプ密度が大きいため、そのことが寄与し、空気入りタイヤ1は雪上での操縦安定性が優れたものとなる。
【0022】
一方、コーナリングでOUT側に高荷重がかかると、図4(b)に示すように、OUT側メディエイト陸部23bの接地面が他の陸部の接地面よりも広くなる。そのため、操縦安定性にOUT側メディエイト陸部23bが大きく寄与することとなる。ここで、OUT側メディエイト陸部23bはサイプ密度が小さく剛性が大きいため、そのことが寄与し、乾燥路面上での高荷重でのコーナリング時の操縦安定性が優れたものとなる。
【0023】
このようにして、乾燥路面上での高荷重でのコーナリング時の操縦安定性と、雪上での操縦安定性とが両立される。
【0024】
ここで、IN側メディエイト陸部23aのサイプ密度の、OUT側メディエイト陸部23bのサイプ密度に対する比率が、1.2以上3.5以下であり、かつ、IN側の突出部25aの頂点26aがOUT側の突出部25bの頂点26bよりも0.2mm以上1.5mm以下だけ高く突出している場合、乾燥路面上での高荷重でのコーナリング時の操縦安定性と、雪上での操縦安定性とのバランスが最も良くなる。
【0025】
また、IN側メディエイト陸部23aとOUT側メディエイト陸部23bだけでなく、センター陸部21もタイヤ径方向外側へ突出していれば、接地性が良くなり、操縦安定性が良くなる。センター陸部21の突出量がIN側メディエイト陸部23aの突出量より小さいと、IN側メディエイト陸部23aの接地がセンター陸部21によって阻害されるおそれが無く、IN側メディエイト陸部23aの突出量が大きいことによる効果が発揮される。
【0026】
また、センター陸部21におけるIN側のサイプ密度がOUT側のサイプ密度よりも大きく、かつ、センター陸部21の突出部27の頂点28が、センター陸部21の幅方向の中心よりもIN側にある場合、雪上での操縦安定性と高荷重でのコーナリング時の操縦安定性との両立にセンター陸部21が貢献する。具体的には、空気入りタイヤ1が接地しそのIN側とOUT側に等しく荷重がかかっている状態では、センター陸部21のIN側の部分の接地面積がOUT側の部分の接地面積より広くなるが、センター陸部21のIN側の部分はサイプ密度が大きいため、雪上での操縦安定性が良くなる。一方、コーナリングでOUT側に高荷重がかかると、センター陸部21のOUT側の部分の接地面積がIN側の部分の接地面積より広くなるが、センター陸部21のOUT側の部分はサイプ密度が小さいため、乾燥路面上での高荷重でのコーナリング時の操縦安定性が良くなる。
【0027】
ここで、IN側メディエイト陸部23aにおけるサイプ密度の、OUT側メディエイト陸部23bにおけるサイプ密度に対する比率が、1.2以上3.5以下であり、かつ、IN側の突出部25aの頂点26aがOUT側の突出部25bの頂点26bよりも0.2mm以上1.5mm以下だけ高く突出し、かつ、IN側の突出部25aの頂点26aがセンター陸部21の突出部27の頂点28よりも0.2mm以上1.0mm以下だけ高く突出している場合、乾燥路面上での高荷重でのコーナリング時の操縦安定性と、雪上での操縦安定性とのバランスが最も良くなる。
【0028】
また、センター陸部21の突出部27の頂点28の前記ずれの量がセンター陸部21の半幅の25%の長さより短い場合、センター陸部21のIN側とOUT側に等しく荷重がかかっている状態では、IN側とOUT側の接地面積に大きな差ができない。そのため、センター陸部21のIN側のサイプ密度が大きいことの効果が小さい。また、前記ずれの量がセンター陸部21の半幅の50%の長さより長い場合、高荷重でのコーナリング時にセンター陸部21のIN側とOUT側の接地面積に大きな差ができない。そのため、OUT側のサイプ密度が小さいことの効果が小さい。しかし、センター陸部21の突出部27の頂点28の、センター陸部21の幅方向の中心からのIN側へのずれの量が、センター陸部21の半幅の25%以上50%以下の長さであれば、これらの問題は生じにくい。
【0029】
(実施例)
表1に示す比較例及び実施例の空気入りタイヤの性能を評価した。いずれの空気入りタイヤも、陸部はリブ状である。表1におけるサイプ密度は、比較例3のサイプ密度を1とした場合の指数で表されており、この指数が大きいほどサイプ密度が大きい。
【0030】
実施例1の空気入りタイヤは、IN側メディエイト陸部のサイプ密度及びタイヤ径方向外方への突出量が、OUT側メディエイト陸部のそれらよりも大きい空気入りタイヤである。実施例2の空気入りタイヤは、さらに、センターリブがタイヤ径方向外方へ突出しており、その突出量がIN側メディエイト陸部の突出量より小さい空気入りタイヤである。実施例3の空気入りタイヤは、さらに、センターリブにおけるサイプ密度がIN側でOUT側よりも大きく、また、センターリブのタイヤ径方向外側への突出の頂点が、センターリブの幅方向中心よりもIN側へずれている空気入りタイヤである。
【0031】
比較例1の空気入りタイヤは、OUT側メディエイトリブがIN側メディエイトリブよりもタイヤ径方向外側へ大きく突出している空気入りタイヤである。比較例2の空気入りタイヤは、OUT側メディエイトリブのサイプ密度がIN側のそれよりも大きい空気入りタイヤである。比較例3の空気入りタイヤは、いずれのリブもタイヤ径方向外側へ突出していない空気入りタイヤである。
【0032】
雪上での操縦安定性については、雪上で直進走行やレーンチェンジ走行を実施し、ドライバーが官能評価した。また、乾燥路面上での操縦安定性については、乾燥路面上で直進走行やコーナリング走行を実施し、ドライバーが官能評価した。いずれの操縦安定性も、比較例3の結果を4とする1〜7の7段階で評価した。評価の数値が大きいほど操縦安定性が優れていることを示している。
【0033】
評価結果を図1に示す。実施例1〜3の評価は比較例1〜3の評価よりも良く、上記実施形態の空気入りタイヤの効果が確認できた。
【0034】
(変更例)
主溝の数は3本以上であれば何本でも良い。主溝の本数にかかわらず、タイヤ幅方向両側の陸部がショルダー陸部であり、その隣の陸部が、本実施形態と同様の特徴を備えるメディエイト陸部である。またセンター陸部が存在しない場合もある。例えば主溝の数が3本で中央の主溝がタイヤ赤道と一致する場合等である。
【0035】
センター陸部とメディエイト陸部は、それぞれ、ブロックがタイヤ周方向に並んで形成されたものでも良い。また、ショルダー陸部はリブであっても良い。全ての陸部がリブであっても良いし、全ての陸部がブロックから形成されていても良いし、リブの陸部とブロックの陸部が混在していても良い。ただし、サイプを除いて、トレッドパターンがタイヤ赤道に対して左右対称であることが望ましい。
【0036】
【表1】
【符号の説明】
【0037】
1…空気入りタイヤ、2…トレッド、10…カーカス、11…ベルト層、12…ベルト補強層、20…主溝、21…センター陸部、22…ショルダー陸部、22a…ブロック、23a…IN側メディエイト陸部、23b…OUT側メディエイト陸部、24…サイプ、25a…IN側の突出部、25b…OUT側の突出部、26a…IN側の突出部25aの頂点、26b…OUT側の突出部25bの頂点、27…突出部、28…センター陸部21の突出部27の頂点、C…中心線、E…タイヤ赤道、L1、L2…タイヤ基準輪郭線
図1
図2
図3
図4