特許第6293614号(P6293614)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6293614
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】冷却塔
(51)【国際特許分類】
   F28D 1/04 20060101AFI20180305BHJP
   F28F 27/00 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   F28D1/04 B
   F28F27/00 501B
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-163531(P2014-163531)
(22)【出願日】2014年8月11日
(65)【公開番号】特開2016-38187(P2016-38187A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000164553
【氏名又は名称】空研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】高原 伸敏
(72)【発明者】
【氏名】神代 昭文
【審査官】 笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0067546(US,A1)
【文献】 特開2000−274977(JP,A)
【文献】 特開2003−148879(JP,A)
【文献】 特開平10−111085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 1/00 〜 13/00
F28C 1/14 〜 1/16
F28F 25/00
F28F 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却対象の熱媒体を内部に流通させる熱交換部に対し、ファンによる誘引通風で熱交換部表面に沿って外部から取り入れた空気を流通させ、熱交換部で少なくとも熱媒体と空気との熱交換を行わせる冷却塔において、
前記熱交換部が、出口側にファンを配置した所定の通風用空間にそれぞれ面する配置で複数配設され、熱交換を終えて各熱交換部を出た空気が前記通風用空間で混合してからファンにより外部に排出され、
各熱交換部の熱媒体を流通させる配管が直列に接続されて、熱媒体が各熱交換部を順次通過可能とされ、
前記熱交換部のうち、最初に熱媒体が流通するものを除いた熱交換部に対し、供給された散布水を散布する散水装置を配設し、
当該散水装置が、熱交換部に対し散布水を散布する状態と、散布水を散布しない状態とを切替可能とされ、
前記ファンからの排出直後の排出空気中の水分が過飽和状態に達しうる周囲環境状況では、前記散水装置が散布水を散布しない状態とされる一方、他の状況では散水装置が散布水を散布する状態とされることを
特徴とする冷却塔。
【請求項2】
前記請求項1に記載の冷却塔において、
前記散水装置に、所定の管路を通じて散布水を供給するポンプを備え、
前記散水装置における散布水の散布実施と不実施との切替が、前記ポンプによる散水装置への散布水の供給実施と不実施との切替により実行されることを
特徴とする冷却塔。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の冷却塔において、
前記散水装置が、散布水の散布対象の熱交換部上方に配設されて、底面に複数穿設された孔から散布水を熱交換部へ滴下させる上部水槽であることを
特徴とする冷却塔。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環使用する液相の熱媒体を熱交換部で空気と熱交換させて冷却する冷却塔に関し、特に熱交換後の排出空気の湿り度を抑えて空気中での凝縮水滴(=白煙)の発生を防ぐ白煙防止型の冷却塔に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、工場や空気調和設備などで循環使用する水などの液相の熱媒体の冷却を目的として屋外に設置される冷却塔のうち、冷却塔内部の熱交換部として、空気と熱媒体とを直接接触させずに間接熱交換させる熱交換器を用いる密閉式冷却塔では、熱交換器に散布される散布水が、ファンの作動に伴って外部から取込まれる外気と熱交換器表面で接触して蒸発し、潜熱による冷却効果を付加する仕組みとなっている。
【0003】
こうした冷却塔では、熱交換部に散布されて潜熱による冷却効果を付加する散布水が、直接空気と接触して一部蒸発するため、冷却塔からの排出空気は、熱交換により昇温し、且つ水蒸気を多く含んだ湿り状態となる。これにより、冬期など周囲の外気温度が低く、排出空気の温度が相対的に高くなる場合や、梅雨期など外気の湿度が高い場合などは、湿気を適切に周囲に放散できずに、排出直後から排出空気中の水分が過飽和となって凝結した水滴となり、目に見える状態となってあたかも冷却塔から白煙が吹出しているように見える現象が生じていた。こうしたいわゆる白煙の発生する現象は、火災、大気汚染等の誤認につながり、周囲に冷却塔の使用に対する不安感を与える他、視界の妨げとなり、冷却塔を使用する上での大きな問題となっていた。
【0004】
このような白煙の発生を防止するために、従来から、外気温度が低い場合等には排出空気の湿り度を抑えて、排出空気中の水分の過飽和による凝結を防ぐ白煙防止型の冷却塔が種々提案されている。例えば、白煙の発生を抑えたい時期には、熱交換部の一部で空気と散布水との接触がない乾式の熱交換を行わせ、この乾式熱交換と通常の湿式熱交換を併用して排出時に湿り空気と乾き空気を混合し、排出空気全体の湿度を十分低下させて、排出直後に水分が飽和状態にならないようにする一方、夏期等の外気温度が高い時期には、熱交換部の全ての箇所に散水を行って湿式熱交換可能とし、十分な熱交換能力の確保を図ろうとする乾湿切替タイプの冷却塔が近年提案されている。このような従来の白煙防止型冷却塔の一例として、特開2002−115979号公報に記載されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−115979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献に示す従来の冷却塔は、密閉型の熱交換部に乾湿空気兼用通路と湿り空気通路が並列して交互に配列されると共に、上部水槽における任意個の散水孔部位置に水槽内に起立する短管が設けられる構成となっており、冬期等の白煙の発生し易い時期には、上部水槽における散布水の水位を短管の上端より低くし、短管から乾湿空気兼用通路への散布水の供給を停止することで、乾湿空気兼用通路を乾き空気専用通路とし、この通路を流れる空気で循環水を間接的に空冷する一方、ここでの熱交換で昇温した空気を乾き空気として熱交換部より吐出でき、冷却塔からは湿り空気と乾き空気の混合空気を非過飽和状態で排出して白煙の発生を防止できる仕組みである。ただし、本来貯溜水量の少ない上部水槽の水位を通常はなるべく一定に維持するために行っている従前の制御に対し、新たに外気温度等に応じて積極的に水位変化させるような制御は非常に複雑となることから、上部水槽に通じる管路や弁、及び制御用機器のコストが上昇してしまうという課題を有していた。
【0007】
この他、より低コストで白煙防止を図る従来の冷却塔として、直交流式の冷却塔で通常二つ設けられる熱交換部のうち、一方の熱交換部については上部水槽からの散水の可否を切替可能とし、外気温が低い場合や外気の湿度が高い場合など、白煙が生じやすい状況では、排出空気の湿り度を抑えるために、一方の熱交換部への散水を停止して乾式熱交換を行わせ、乾いた空気と湿った空気とが混合して排出されることで、排出空気が外気に触れても飽和しにくくし、白煙の発生を防ぐようにするもの(図7参照)も、従来から使用されている。
【0008】
しかしながら、本来同様の条件で熱交換が行われるはずの二つの熱交換部の一方で、散水を停止して乾式の熱交換を行わせるため、冷却能力が不足することとなり、循環水温度を十分下げられず、この循環水と熱交換する空気温度もそれほど上がらず(図7(B)中、点II)、また、その分、散水を行う側の熱交換部を出る湿った空気の温度が下がらずに高止まりした状態(図7(B)中、点III)となり、循環水の入口温度が高い運転条件の場合には、排出空気(図7(B)中、点IV)の温度が高くなると共に排出空気中の水分量も多くなることで、排出後の白煙の発生を防止できない場合があるという課題を有していた。
【0009】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、循環する熱媒体と熱交換させる外部空気をそれぞれ異ならせた複数の熱交換部に対し、各熱交換部の熱媒体流路を直列に接続して同じ熱媒体を流通させ、各熱交換部で熱媒体に順次温度変化を生じさせると共に、熱交換部に対する散布水の散水を行わない熱交換部と必要に応じて散水を行う熱交換部をそれぞれ設定し、熱交換後の湿り度の異なる空気を混合して確実に白煙発生防止性能を発揮しつつ、熱媒体の冷却能力を十分確保できる冷却塔を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る冷却塔は、冷却対象の熱媒体を内部に流通させる熱交換部に対し、ファンによる誘引通風で熱交換部表面に沿って外部から取り入れた空気を流通させ、熱交換部で少なくとも熱媒体と空気との熱交換を行わせる冷却塔において、前記熱交換部が、出口側にファンを配置した所定の通風用空間にそれぞれ面する配置で複数配設され、熱交換を終えて各熱交換部を出た空気が前記通風用空間で混合してからファンにより外部に排出され、各熱交換部の熱媒体を流通させる配管が直列に接続されて、熱媒体が各熱交換部を順次通過可能とされ、前記熱交換部のうち、最初に熱媒体が流通するものを除いた熱交換部に対し、供給された散布水を散布する散水装置を配設し、当該散水装置が、熱交換部に対し散布水を散布する状態と、散布水を散布しない状態とを切替可能とされ、前記ファンからの排出直後の排出空気中の水分が過飽和状態に達しうる周囲環境状況では、前記散水装置が散布水を散布しない状態とされる一方、他の状況では散水装置が散布水を散布する状態とされるものである。
【0011】
このように本発明においては、循環させる熱媒体と外部空気とを熱交換させる熱交換部を複数配設し、複数の熱交換部で通過する外部空気をそれぞれ異ならせた上で、各熱交換部における熱媒体の流路を直列に接続して同じ熱媒体を順次流通させ、且つ、熱交換部を散布水を全く散布しないものと、必要に応じ散布水を散布するものをそれぞれ設定すると共に、散布水を全く散布しない熱交換部に熱媒体を流通させて熱媒体温度を下げてから、散布水を散布する熱交換部に熱媒体を流通させるようにし、これら各熱交換部での熱交換を終えた空気を、混合した状態で冷却塔外に排出することにより、熱交換の順番が早く熱媒体の温度がより高い分、散布水を全く散布しない熱交換部を出る乾いた空気の温度を上げられる一方、最初の熱交換を経て熱媒体の温度が下がる分、散布水の散布を行う熱交換部を出る湿った空気の温度を下げられ、乾いた空気と湿った空気とを混合して排出空気全体の湿度を下げる過程で、混合された排出空気の相対湿度を大きく下げられることとなり、排出空気が冷却塔を出て外部空気に触れても空気中の水分が飽和することはなく、過飽和による白煙の発生を確実に防止できる。
【0012】
また、熱媒体が、散布水を全く散布しない熱交換部で外部空気と熱交換した後、さらに散布水の散布を行う熱交換部で別途新たな熱交換を行うこととなり、散布水の散布を行わない場合は散布水相当量の節水と完全な白煙防止が実現する一方、散水を行う場合は、熱交換部で、循環水と外部空気及び散布水との間の顕熱交換と共に、散布水の潜熱を利用した熱交換を行わせて、適切な白煙防止性能を発揮させつつ、効率よく熱媒体を冷却して熱媒体温度を確実に低下させることができ、熱交換部を過度に大きくすることなく熱媒体に対し必要な冷却性能を確保できる。
【0013】
また、本発明に係る冷却塔は必要に応じて、前記散水装置に、所定の管路を通じて散布水を供給するポンプを備え、前記散水装置における散布水の散布実施と不実施との切替が、前記ポンプによる散水装置への散布水の供給実施と不実施との切替により実行されるものである。
【0014】
このように本発明においては、散水装置に散布水を供給可能なポンプを設け、ポンプの作動で散水装置に散布水を供給する状態と、ポンプ非作動で散布水を供給しない状態との切替で、散水装置での散布水の散布の実施、不実施を切替えることにより、熱交換部に散水するか否かをポンプの作動状態のみで切替えることができ、複雑な切替機構を用いずに散水状態を切替えられ、冷却塔のコストを抑えられる。
【0015】
また、本発明に係る冷却塔は必要に応じて、前記散水装置が、散布水の散布対象の熱交換部上方に配設されて、底面に複数穿設された孔から散布水を熱交換部へ滴下させる上部水槽であるものである。
【0016】
このように本発明においては、散水装置を上部水槽とし、上部水槽の各孔から散布水を滴下することで熱交換部への散布水散布を行うことにより、上部水槽へ向う散布水用の配管など管路系を従来同様の構成とすることができ、且つこうした簡略な構成で散布水の熱交換部への散水を確実に行わせることができ、熱交換部での熱交換性能を十分発揮させられると共に、簡略な構造で信頼性を高められ、冷却塔全体の運用に係るコストを抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態に係る冷却塔の一部切欠左側面図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る冷却塔における散水状態及び非散水状態の説明図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る冷却塔における散水状態での空気通過の説明図及び空気線図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る冷却塔の平面図及び正面図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る冷却塔における散布水及び循環水の流通経路概略説明図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る冷却塔における送風機及びポンプの外気温度ごとの作動制御状態説明図である。
図7】従来の冷却塔における散水状態での空気通過の説明図及び空気線図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る冷却塔を前記図1ないし図3に基づいて説明する。本実施形態においては、直交流型(クロスフロータイプ)として通風用のファンのある中央部を挟んで二つの熱交換部を対向配置される冷却塔の例について説明する。
【0019】
前記各図に示すように、本実施形態に係る冷却塔1は、配管中に通した熱媒体としての循環水を外部空気と熱交換させる二つの熱交換部10、20と、一方の熱交換部20の上側に配設されて熱交換部20への散布用の散布水を供給され、この散布水を熱交換部20各部へ分配滴下させる上部水槽30と、熱交換部10、20下側に配設され、熱交換部20を通過した散布水を回収する下部水槽40と、この下部水槽40から取出されて上部水槽30に向かう散布水を流通させる所定の配水管路50と、下部水槽40から必要に応じて散布水を上部水槽30へ向けて送り出すポンプ60と、下部水槽40中央上方に配設されて熱交換部10、20に誘引通風で外部の空気を通すファン70とを備える構成である。
【0020】
前記熱交換部10、20は、循環水を流通させる銅などの金属製の管を並列配置すると共に、管周囲に伝熱を促す銅などの金属薄板製のフィンを配設して、ユニットとして一体化した、いわゆるプレートフィンコイルとして形成され、前記ファン70下方の通風用空間80を挟んで下部水槽40上側に一対配設され、一の流路として連続させた熱交換部の管内に外部の循環経路から流入した循環水を流通させる一方で、この熱交換部を構成する管やフィン間の隙間に横方向から外部の空気を通過させ、熱伝導体である管やフィンを通じて循環水と空気との間で熱交換を行わせる公知の構成である。
【0021】
このうち、熱交換部20は、必要に応じて、管やフィン間の隙間に上部水槽30から散布水を滴下、散布され、管やフィンを通じて循環水と外部空気及び散布水との間で顕熱交換を、また、管やフィンの表面の散布水と外部空気との間で顕熱及び潜熱交換を行わせる仕組みである。
【0022】
この熱交換部20の冷却塔内側の空気出口部分に沿って、熱交換部20を出た散布水由来のミストを捕捉して、冷却塔外部に水滴が流出するのを防止するエリミネータを配設するようにしてもよい。その場合、エリミネータで捕捉された散布水は、下部水槽40に流下して、熱交換部20から流下するものと同様に回収されることとなる。
【0023】
前記上部水槽30は、底部に多数の散水用の小孔を穿設される浅い箱状体で形成され、配水管路50に接続されて熱交換部20の上側に配設され、下部水槽40を出て配水管路50を経由してきた散布水の供給を受け、この散布水を底部の多数の孔から熱交換部20各部へ向けて一様に所定の水量で分配滴下させる公知の構成であり、詳細な説明を省略する。
【0024】
前記下部水槽40は、固定設置される支持枠41上に配設され、流下した散布水を受けて一時貯溜しつつ回収するものであり、散布水減少時に補給される補給水の給水部(図示を省略)や、散布水の導入及び送出し用の管路(図示を省略)等をそれぞれ接続され、散布水を所定量貯溜可能とされる公知の構成であり、詳細な説明を省略する。
【0025】
なお、この下部水槽に貯留される散布水については、散布水が熱交換部に散布された際に、熱交換に伴う温度上昇と空気との接触で熱交換部表面において散布水が完全に蒸発し、この蒸発により熱交換部表面に蒸発残留物が付着する場合がある。この蒸発残留物は熱交換部の腐食の原因となることがあるため、こうした蒸発残留物が生じないよう、下部水槽において散布水の水質を適切に管理することが望ましい。
【0026】
前記配水管路50は、下部水槽40から上部水槽30へ散布水を供給する管路として冷却塔内に設けられるものである。また、ポンプ60は、散布水の供給用として下部水槽40近傍の配水管路50の所定箇所に配設されるものである。このポンプ60により、上部水槽30に対する散布水流通が制御される。
【0027】
ポンプ60の作動時には、下部水槽40から配水管路50を通じて散布水が上部水槽30に供給されて、上部水槽30から熱交換部20へ散布水を滴下できる仕組みとなっている。一方、ポンプ60が作動していない時には、散布水の上部水槽30への供給はなく、上部水槽30から熱交換部20への散布水の滴下、散布はない。
【0028】
前記ファン70は、冷却塔の中央上部に配設され、その下方で一対の熱交換部10、20に挟まれた中央の通風用空間80を介して誘引通風で各熱交換部10、20に横方向から外部空気を通し、熱交換部10、20を横に通過した排気を上方へ吹出して排出する公知のものであり、詳細な説明を省略する。
【0029】
次に、本実施形態に係る冷却塔の作動状態について説明する。通常の冷却塔運転状態では、循環経路中の冷凍機あるいは空気調和機器等を経て熱を受取り、温度を上げて冷却塔1に戻った熱媒体としての循環水は、まず、第一の熱交換部10内に流入し、熱交換後、さらに第二の熱交換部20内に流入し、ここでも熱交換を行って、最終的に再び循環経路に戻る過程が繰返される。
【0030】
上方に上部水槽を設けられない第一の熱交換部10には、散布水の滴下、散布はなく、ファン70による誘引通風で熱交換部10に対して横方向に導入、通風される外部空気と、熱交換部10内を流通する循環水との間で熱交換が行われる(図3(A)参照)。
【0031】
熱交換部10で、循環水は、循環水と通風された空気との温度差に伴う熱伝達(顕熱)による冷却作用により冷却される一方、熱交換により逆に空気の温度は上昇することとなる。
循環水は熱交換部10で冷却された後、熱交換部10の出口から新たに第二の熱交換部20内に流入する。
【0032】
上部水槽30から第二の熱交換部20への散水は、冷却塔周囲の外部環境の状況(気温、湿度)に基づいて、冷却塔1からの排出空気中に含まれる水分の凝結による白煙発生のおそれがあるか否かにより、その実行の可否が決定される。
【0033】
上部水槽から熱交換部への散水状態と非散水状態の切替えは、実際には、ポンプ60を作動させて上部水槽30への散布水供給を実施する状態(図2(A)参照)と、ポンプ60を作動させず散布水供給を実施しない状態(図2(B)参照)とを切替えることでなされる。
【0034】
熱交換部20への散布用の散布水は、下部水槽40に貯留されており、ポンプ60が作動状態の場合には、散布水がポンプ60で圧送されて配水管路50を通じて上部水槽30に供給される。上部水槽30では、散布水が供給されると、この散布水が所定時間で上部水槽30底部の小孔を通過して、下側の熱交換部20各部へ分配滴下される。一方、ポンプ60が非作動状態の場合には、散布水の上部水槽30への供給はなく、熱交換部20への散布水の滴下、散布は行われない。
【0035】
外気温の高い夏期等、排出空気中の水分が飽和状態に達しにくく、白煙発生の危険性は無い一方で、循環水の冷却性能は十分確保する必要がある場合、ポンプ60は作動状態とされて上部水槽30へ向けて散布水を供給し、上部水槽30には、散布水が継続的に導入される。そして、上部水槽30から第二の熱交換部20に散布水が滴下、散水される(図3(A)参照)。
【0036】
滴下され熱交換部20に達した散布水は、熱交換部20の管やフィン表面に沿って流下しつつ、管やフィンを介して循環水から熱を受取って温度を上昇させ、さらに、この熱交換部20に対してファン70による誘引で横方向に導入、通風される外部空気と接触し、一部が蒸発して熱交換部20を通過する空気中に取込まれる。
【0037】
こうして循環水との熱交換で温度が上がった散布水は、主に空気と散布水の温度差に伴う熱伝達(顕熱)による冷却作用、及び、散布水の蒸発熱(潜熱)による冷却作用により冷却される一方、熱交換により逆に空気温度を上昇させることとなる。
【0038】
熱交換部10での熱交換で一旦温度低下した循環水を熱交換部20に導入し、この熱交換部20で、循環水と空気との顕熱交換に加えて、循環水と散布水との顕熱交換、及び、散布水の潜熱を利用した熱交換を行わせることにより、効率よく循環水を冷却してその温度を十分に低下させることができる。
【0039】
熱交換部20を流下して通過した散布水は、下部水槽40に達して回収される。下部水槽40に溜った散布水は、ポンプ60が作動状態の場合、再び配水管路50に入って、前記散水の過程が繰返される。
【0040】
一方、循環水は熱交換部10、20で冷却された後、熱交換部20の管出口から再び循環経路に入り、熱交換媒体として冷凍機や空気調和機器等で熱交換して温度を上げた後、あらためて熱交換部10に達して前記過程が繰返される。
【0041】
さらに、ファン70による誘引で各熱交換部10、20に通風され、熱交換を終えて各熱交換部10、20を出た空気は、ファン下側の通風用空間80に達する。散布水を散布されない熱交換部10を通過した空気は、散布水を散布される熱交換部20を通過した空気に対し、熱交換した循環水温度が高い分、温度が高く、また、蒸発した散布水を含まない分、湿度の低い乾いた状態(図3(B)中、点II)となっており、この通風用空間80で、第一の熱交換部10を通過した湿度の低い空気と、第二の熱交換部20で散布水と接触して湿度を高くした空気(図3(B)中、点III)とが混合することにより、排出空気全体の湿度は十分低下した状態(図3(B)中、点IV)となる。この排出空気が、ファン70を経て冷却塔外に排出され、この排出直後に排出空気より温度の低い冷却塔周囲の外部空気と接触しても、排出空気内の水分が飽和状態とならず、白煙を発生させることなく排出空気を外部に拡散させられる。
【0042】
一方、外気温が高い時期以外の、熱交換部20に対し散水を行わなくても循環水の冷却性能を確保できる時期、特に、外気温の低い冬期や、外気湿度の高い梅雨季等の中間期など、逆に熱交換部20に対し散水を行うと、冷却塔からの排出空気中の水分がほぼ飽和状態となり、排出直後から過飽和状態に移行しやすく白煙発生のおそれがある状況では、ポンプ60は作動停止状態とされ、このポンプ停止状態では、上部水槽30への散布水供給も停止されて上部水槽30からの散水は行われず、熱交換部20には散布水は一切進入しない(図2(B)参照)。ファン70の誘引により各熱交換部10、20に通風される外部の空気は、熱交換部10、20内を通る循環水と管及びフィンを介した非接触の乾式熱交換(顕熱交換)を行い、空気中の水分含有量をそのままにして温度上昇することとなる。
【0043】
そして、各熱交換部10、20を通過した湿度の低い空気が、各熱交換部10、20を出て通風用空間80で混合することにより、排出空気全体の湿度もそのまま低い状態を維持している。この排出空気が、ファン70を経て冷却塔外に排出され、この排出直後に排出空気より温度の低い冷却塔周囲の外部空気と接触しても、排出空気内の水分が飽和状態となることはなく、排出空気は白煙を発生させることなく外部に拡散していく。
【0044】
このように、本実施形態に係る冷却塔では、熱媒体としての循環水と外部空気とを熱交換させる熱交換部10、20を複数配設し、複数の熱交換部で通過する外部空気をそれぞれ異ならせた上で、各熱交換部10、20における循環水の流路を直列に接続して同じ循環水を順次流通させ、且つ、熱交換部10、20を散布水を全く散布しないものと、必要に応じ散布水を散布するものをそれぞれ設定すると共に、散布水を全く散布しない熱交換部10に循環水を流通させて循環水温度を下げてから、散布水を散布する熱交換部20に循環水を流通させるようにし、これら各熱交換部10、20での熱交換を終えた空気を、混合した状態で冷却塔外に排出することから、循環水の熱交換の順番が早く循環水の温度がより高い分、散布水を全く散布しない熱交換部10を出る乾いた空気の温度を上げられる一方、最初の熱交換を経て循環水の温度が下がる分、散布水の散布を行う熱交換部20を出る湿った空気の温度を下げられ、乾いた空気と湿った空気とを混合して排出空気全体の湿度を下げる過程で、混合された排出空気の相対湿度を大きく下げられることとなり、排出空気が冷却塔を出て外部空気に触れても空気中の水分が飽和することはなく、過飽和による白煙の発生を確実に防止できる。
【0045】
(本発明の第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る冷却塔を前記図4ないし図6に基づいて説明する。
前記各図に示すように、本実施形態に係る冷却塔2は、前記第1の実施形態同様、熱交換部11、12、21、22と、上部水槽31、32と、下部水槽45と、配水管路51、52と、ポンプ61、62と、ファン71、・・・、78とを備える一方、異なる構成として、複数組設けた熱交換部やファンについて、外気温等の周囲環境条件に応じて熱交換部やファンの作動状態を組ごとに異ならせる構成を有するものである。
【0046】
前記熱交換部11、12、21、22は、散布水を散水されない熱交換部11と必要に応じ散水される熱交換部21の第一の組と、散布水を散水されない熱交換部12と必要に応じ散水される熱交換部22の第二の組との二組を、共通する下部水槽45上側にそれぞれ配設され、各ファンの下方に位置する共通する一つの通風用空間85に各熱交換部が面する配置とされる。
【0047】
各熱交換部の配置をさらに詳細に説明すると、第一の組の熱交換部11、21が、通風用空間85を挟んで対向配置されると共に、第二の組の熱交換部12、22が、通風用空間85を挟んで対向配置される。そして、同様に散布水を散水されることのない、熱交換部11と他の組の熱交換部12が横に並ぶ配置となることに加え、同様に散布水を散水される、熱交換部21と他の組の熱交換部22も横に並ぶ配置となる。
【0048】
各熱交換部11、12、21、22は、前記第1の実施形態同様、循環水を流通させる金属製の管と、管周囲の金属薄板製のフィンとをユニットとして一体化した、いわゆるプレートフィンコイルとして形成されるものである。
【0049】
前記熱交換部11、12は、一の流路として連続させた熱交換部の管内に外部の循環経路から流入した循環水を流通させる一方で、熱交換部を構成する管やフィン間の隙間に横方向から外部の空気を通過させ、熱伝導体である管やフィンを通じて循環水と空気との間で熱交換を行わせる公知の構成である。
【0050】
また、熱交換部21、22は、前記熱交換部11、12同様の構成に加え、必要に応じて、管やフィン間の隙間に上部水槽31、32から散布水を滴下、散布され、管やフィンを通じて循環水と外部空気及び散布水との間で顕熱交換を、また、管やフィンの表面の散布水と外部空気との間で顕熱及び潜熱交換を行わせる仕組みである。
【0051】
前記上部水槽31、32は、前記第1の実施形態同様、底部に多数の散水用の小孔を穿設される浅い箱状体で形成され、配水管路51、52にそれぞれ接続されて熱交換部21、22の上側に配設され、下部水槽45を出て配水管路50を経由してきた散布水の供給を受け、この散布水を底部の多数の孔から熱交換部21、22各部へ向けて滴下し散布する公知の構成である。
【0052】
前記下部水槽45は、前記第1の実施形態同様、固定設置される支持枠41上に配設され、散布水を所定量貯溜可能とされる公知の構成であり、詳細な説明を省略する。
前記配水管路51、52は、下部水槽45から上部水槽31、32へ散布水を供給する管路として冷却塔内に設けられるものである。また、ポンプ61、62は、散布水の供給用として下部水槽45近傍の配水管路51、52の所定箇所に配設されるものである。このポンプ61、62により、上部水槽31、32に対する散布水流通が制御される。
【0053】
ポンプ61の作動時には、下部水槽45から配水管路51を通じて散布水が上部水槽31に供給されて、上部水槽31から熱交換部21へ散布水を滴下、散布でき、また、ポンプ62の作動時には、下部水槽45から配水管路52を通じて散布水が上部水槽32に供給されて、上部水槽32から熱交換部22へ散布水を滴下、散布できる仕組みとなっている。一方、ポンプ61、62が作動していない時には、散布水の各上部水槽31、32への供給はなく、各上部水槽31、32から熱交換部21、22への散布水の滴下、散布はない。
【0054】
前記ファン71、・・・、78は、冷却塔の中央上部に複数配設され、その下方で対をなす第一の組の熱交換部11、21、及び、別途対をなす第二の組の熱交換部12、22にそれぞれ挟まれた中央の通風用空間85を介して、誘引通風で各熱交換部11、12、21、22に横方向から外部空気を通し、熱交換部11、12、21、22を横に通過した排気を上方へ吹出して排出する公知のものであり、詳細な説明を省略する。ファン71、・・・、78は、複数配設した冗長構成とすることで、通風機能の信頼性を高めると共に、状況に応じて作動させるファンの数を調整することで、ファン作動に伴うエネルギー消費を可能な限り抑えつつ、適切な通風量を確保して熱交換部での過不足のない循環水の冷却が行えるようにしている。
【0055】
次に、本実施形態に係る冷却塔の作動状態について説明する。通常の冷却塔運転状態では、循環経路中の冷凍機あるいは空気調和機器等を経て熱を受取り、温度を上げて冷却塔1に達した熱媒体としての循環水は、各熱交換部で熱交換を行う。熱交換部の第一の組では、循環水は、まず熱交換部11内に流入し、熱交換後、さらに熱交換部21内に流入し、ここでも熱交換を行って、再び循環経路に戻る。また、熱交換部の第二の組では、循環水は、まず熱交換部12内に流入し、熱交換後、さらに熱交換部22内に流入し、ここでも熱交換を行って、再び循環経路に戻ることとなる。こうして、循環経路を経て冷却塔に達した循環水が、熱交換を行い、最終的に再び循環経路に戻る過程が繰返される。
【0056】
前記第1の実施形態同様、上方に上部水槽を設けられない熱交換部11、12には、散布水の滴下、散布はなく、ファンによる誘引通風で熱交換部11、12に対して横方向に導入、通風される外部空気と、熱交換部10内を流通する循環水との間で熱交換が行われる。熱交換部11、12で、循環水は、循環水と通風された空気との温度差に伴う熱伝達(顕熱)による冷却作用により冷却される一方、熱交換により逆に空気の温度は上昇することとなる。
【0057】
なお、熱交換部への通風のために作動させるファンの数は、冷却塔を取り巻く状況(周囲環境や負荷等)の変化に応じて調整するようにしている。例えば、第一の組の熱交換部11、21に挟まれる通風用空間85の所定領域上に位置する四つのファン41、42、43、44のうち、第一の組の熱交換部11、21への通風のために作動させるものを、外気温の変化に応じて変えるよう制御する。具体的な例としては、外気温が19℃以上の場合には、四つのファン全てを作動させるが、外気温が9℃以上19℃未満の場合には、一つは停止として三つのファンを作動させるようにする。そして、外気温が9℃未満の場合には、二つのファンのみ作動させるようにする(図6参照)。
【0058】
このように、外気温が低くなって空気の単位流量当たりの冷却能力が相対的に増えるのに対応させて、ファンの作動数を減らし、熱交換部に通風される空気の流量を抑えることで、通風される空気全体の冷却能力が過剰となって熱交換対象の循環水が過冷却となることを防止でき、循環水を適切な温度範囲に維持して使用時の問題発生を抑えられると共に、ファンの作動に伴う電力等のエネルギー消費も、無駄を省いて効率化が図れる。こうしたファンの作動数調整は、第二の組の熱交換部12、22に対応する四つのファン45、46、47、48の作動についても同様に適用することができる。
【0059】
ここでは、作動するファン数の調整の一例として、作動ファン数を外気温に応じて調整制御するようにしているが、この他、空気の湿度など、冷却塔周囲環境の他のパラメータの変化に対応させて調整するようにしてもよい。また、循環水温度など、負荷側のパラメータ変化に応じて作動ファン数を調整するようにしてもよい。
【0060】
循環水は熱交換部11、12での空気との熱交換で冷却された後、熱交換部の出口から、必要に応じ散布水が散布される熱交換部21、22内に新たに流入する。これらの熱交換部21、22については、状況に応じて散布水を上部水槽31、32から各熱交換部21、22へ滴下散水するか否かを切替えられることで、熱交換状態が変化する。
【0061】
外気温の高い夏期等、排出空気中の水分が飽和状態に達しにくく、白煙発生の危険性は無い一方で、循環水の冷却性能は十分確保する必要がある場合、散布水の潜熱による冷却作用付加を見込んで、熱交換部21、22への散布水の散布を行うようにしているが、散布水の散布の有無による冷却塔全体での冷却能力の変化が、冷却塔を取り巻く状況(周囲環境や負荷等)の変化に対応して段階的に生じるよう、第一の組の熱交換部21と第二の組の熱交換部22とでは、散布水の散布の有無を切替える条件が異なっている。
【0062】
具体的には、例えば、外気温を条件とする場合、ポンプ61を作動させ、散布水を上部水槽31に供給し、散布水を上部水槽31から下側の熱交換部21に滴下、散布するのは、外気温が25℃以上の場合とする一方、ポンプ62を作動させ、散布水を上部水槽32に供給し、散布水を上部水槽32から下側の熱交換部22に滴下、散布するのは、外気温が30℃以上の場合とするようにしている(図6参照)。
【0063】
このように、外気温が高くなって冷却塔の冷却能力の要求量が増えていくのに対応させて、散布水を散布する熱交換部の数を少しずつ増やして、循環水の冷却性能を増大させていくことで、冷却塔全体で適切な冷却能力を確保すると共に、散布水を散水する箇所を必要最小限に抑えて、散布水自体の節減が図れ、また、ポンプの作動に伴う電力等のエネルギー消費も、無駄を省いて効率化が図れる。
【0064】
ポンプ61、62を作動状態として上部水槽31、32へ散布水を供給し、この散布水を供給した上部水槽31、32から、熱交換部21、22にそれぞれ散布水が滴下、散水される状態では、前記第1の実施形態同様、熱交換部21、22に達した散布水が、熱交換部21、22の管やフィン表面に沿って流下しつつ、管やフィンを介して循環水から熱を受取って温度を上昇させ、さらに、この熱交換部20に対してファンによる誘引で横方向に導入、通風される外部空気と接触し、一部が蒸発して熱交換部21、22を通過する空気中に取込まれる。
【0065】
循環水との熱交換で温度が上がった散布水は、主に空気と散布水の温度差に伴う熱伝達(顕熱)による冷却作用、及び、散布水の蒸発熱(潜熱)による冷却作用により冷却される一方、熱交換により逆に空気温度を上昇させることとなる。
【0066】
熱交換部11、12での熱交換で一旦温度低下した循環水を次段の熱交換部21、22にそれぞれ導入し、これらの熱交換部21、22で、循環水と空気との顕熱交換に加えて、循環水と散布水との顕熱交換、及び、散布水の潜熱を利用した熱交換を行わせることにより、効率よく循環水を冷却してその温度を十分に低下させることができる。
【0067】
熱交換部21、22を流下して通過した散布水は、下部水槽45に達して回収される。下部水槽45に溜った散布水は、ポンプ61、62が作動状態の場合、再び配水管路51、52に入って、前記散水の過程が繰返される。
【0068】
一方、循環水は熱交換部21、22で冷却された後、熱交換部21、22の管出口から再び循環経路に入り、熱交換媒体として冷凍機や空気調和機器等で熱交換して温度を上げた後、あらためて熱交換部11、12に達して前記過程が繰返される。
【0069】
熱交換を終えて各熱交換部11、12、21、22を出た空気は、ファン下側の通風用空間85に達する。散布水を散布されない熱交換部11、12を通過した空気は、散布水を散布される熱交換部21、22を通過した空気に対し、熱交換した循環水温度が高い分、温度が高く、また、蒸発した散布水を含まない分、湿度の低い乾いた状態となっており、この通風用空間85で、熱交換部11、12を通過した湿度の低い空気と、熱交換部21、22で散布水と接触して湿度を高くした空気とが混合することにより、排出空気全体の湿度は十分低下した状態となる。この排出空気が、ファンを経て冷却塔外に排出され、この排出直後に排出空気より温度の低い冷却塔周囲の外部空気と接触しても、排出空気内の水分が飽和状態とならず、白煙を発生させることなく排出空気を外部に拡散させられる。
【0070】
一方、外気温が高い時期以外の、熱交換部21、22に対し散水を行わなくても循環水の冷却性能を確保できる時期、特に、外気温の低い冬期や、外気湿度の高い梅雨季等の中間期など、逆に熱交換部21、22に対し散水を行うと、冷却塔からの排出空気中の水分がほぼ飽和状態となり、排出直後から過飽和状態に移行しやすく白煙発生のおそれがある状況では、ポンプ61、62は作動停止状態とされ、このポンプ停止状態では、上部水槽31、32への散布水供給も停止されて上部水槽31、32からの散水は行われず、熱交換部21、22には散布水は一切進入しない。
【0071】
この場合、ファン71、・・・、78の誘引により各熱交換部11、12、21、22に通風される外部の空気は、熱交換部11、12、21、22内を通る循環水と管及びフィンを介した非接触の乾式熱交換(顕熱交換)を行い、空気中の水分含有量をそのままにして温度上昇することとなる。
【0072】
そして、各熱交換部11、12、21、22を通過した湿度の低い空気が、各熱交換部11、12、21、22を出て通風用空間85で混合することにより、排出空気全体の湿度もそのまま低い状態を維持している。この排出空気が、ファンを経て冷却塔外に排出され、この排出直後に排出空気より温度の低い冷却塔周囲の外部空気と接触しても、排出空気内の水分が飽和状態となることはなく、排出空気は白煙を発生させることなく外部に拡散していく。
【0073】
このように、本実施形態に係る冷却塔では、循環水と外部空気とを熱交換させる熱交換部を複数組配設すると共に、ファンを複数設けて、冷却塔を取り巻く状況の変化に対応して、熱交換部ごとに散布水の散布の有無を切替えたり、ファンの作動数を調整して、冷却塔全体での冷却能力の変化を少しずつ段階的に生じさせられることから、散布水や空気の冷却能力を有効に利用でき、冷却塔全体で適切な冷却能力を確保し、循環水を過不足無く冷却できる一方、散布水を散水する箇所を必要最小限に抑えて、散布水自体の節減が図れ、また、ポンプやファンの作動に係る省エネルギー化も図れる。
【0074】
なお、前記第1及び第2の各実施形態に係る冷却塔は、熱交換部として、内部を流通する液相の熱媒体と外側に通風される空気との熱交換に適するプレートフィンコイルを用いる構成としているが、これに限らず、熱媒体と空気とを直接接触させずに熱交換させ、表面に空気の他に蒸発可能な液体を流下させても特に問題を生じないものであれば、他の熱交換器を用いる構成としてもかまわない。
【符号の説明】
【0075】
1、2 冷却塔
10、11、12 熱交換部
20、21、22 熱交換部
30、31、32 上部水槽
40、45 下部水槽
41 支持枠
50、51、52 配水管路
60、61、62 ポンプ
70、71、72 ファン
73、74、75 ファン
76、77、78 ファン
80、85 通風用空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7