(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の血管分岐と前記第2の血管分岐とが重なるように、前記第1の3次元医用画像と前記第2の3次元医用画像との位置合せを行う位置合せ工程をさらに備えた、請求項1又は2に記載の画像処理方法。
前記第1の血管分岐と前記第2の血管分岐とが重なるように、前記第1の3次元医用画像と前記第2の3次元医用画像との位置合せを行う位置合せ手段をさらに備えた、請求項5に記載の画像処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、発明の実施形態について説明する。なお、これにより発明は限定されない。
【0032】
本実施形態に係る画像処理装置は、同一の被検者における同一の部位を表す2つの3次元医用画像を位置合せし、その後、任意のスライスを表す断層画像を再構成して表示する装置である。位置合せの手法としては、上記2つの3次元医用画像の各々について血管を抽出して血管分岐などの血管部分構造体を検出し、上記2つの3次元医用画像間で共通する同一の血管部分構造体を特定して、これらが互いに重なるように3次元医用画像の座標変換を行う手法を用いる。この手法は、画像の濃淡の類似性を見るのではなく、血管部分構造体の形状の類似性を見る手法である。そのため、本手法は、物質の種類と画素値との対応関係が互いに異なるような2つの画像間の位置合せ、例えば、撮影モダリティが互いに異なる画像間の位置合せや、肝臓・肺など変形性の高い部位を表す画像間の位置合せに対して特に有効である。本実施形態では、この手法において、位置合せする画像間で共通する同一の血管部分構造体を特定する際に、その特定精度を高めるため、比較対象となる血管部分構造体だけでなく、その周辺の血管が参照できるようにする。具体的には、比較対象となる血管部分構造体とその周辺を含む領域について、最大画素値投影や最小画素値投影などの投影処理を行って、その領域内の血管が強調された投影画像を生成し、これを表示する。操作者は、この投影画像を参照することにより、血管部分構造体を含む広い範囲の血管構造の類似性を判断することができ、比較対象となる血管部分構造体が共通する同一の血管部分構造体であるか否かを高い確度で判定することができる。画像処理装置は、この判定結果を利用することで精度の高い画像の位置合せを行うことができる。
【0033】
(第一実施形態)
図1は、本実施形態に係る画像処理装置1aの構成を概略的に示す機能ブロック(block)図である。画像処理装置1aは、例えば、コンピュータ(computer)CPに所定のプログラム(program)を実行させることにより実現させることができる。
【0034】
図1に示すように、画像処理装置1aは、画像取得部2と、血管抽出部3と、血管部分構造体検出部4と、マッチング(matching)評価部5と、処理対象スライス(slice)特定部6と、スライス幅広領域投影部7と、投影画像表示部8と、マッチング確定部9と、座標変換部10と、位置合せ調整部11と、対応断層画像生成部12と、画像出力部13とを有している。なお、処理対象スライス特定部6、スライス幅広領域投影部7及び投影画像表示部8は、それぞれ、発明における特定手段、投影手段及び表示手段の一例である。また、マッチング確定部9、座標変換部10及び位置合せ調整部11は、発明における位置合せ手段の一例である。
【0035】
画像取得部2は、位置合せの対象となる2つの3次元医用画像を取得する。ここでは、ユーザ(user)の操作に応じて、入力された2つの3次元医用画像を位置合せの対象として取得する。画像取得部2は、これら2つの3次元医用画像のうち一方を、位置合せ処理において固定する“目標画像”に設定し、他方を、位置合せ処理において座標変換する“対象画像”に設定する。本例では、位置合せの対象となる2つの3次元医用画像として、同一の被検者の肝臓を表すMR3D画像G
MR及びUS3D画像G
USを取得する場合を想定する。また、US3D画像G
USを“目標画像”に設定し、MR3D画像G
MRを“対象画像”に設定する。なお、MR3D画像G
MR及びUS3D画像G
USは、発明における第1の3次元医用画像及び第2の3次元医用画像の一例である。
【0036】
図2に、同一の被検者の肝臓を表すMR3D画像G
MR及びUS3D画像G
USの一例を示す。ただし、この図では、便宜上、3次元医用画像における所定の断層画像を示している。
【0037】
血管抽出部3は、MR3D画像G
MR及びUS3D画像G
USから、血管を表す血管画像をそれぞれ抽出する。血管画像の抽出には、既知の手法を用いる。例えば、非特許文献 Kirbus C and Quek F: A review of vessel extraction technique and algorithms, ACM Computer Surveys (CSUR), 36(2), 81-121, 2004.に記載されている手法を用いる。以下、MR3D画像G
MRにおける血管画像をMR血管画像V
MRといい、US3D画像G
USにおける血管画像をUS血管画像V
USという。本例では、血管画像として、肝臓の門脈または肝静脈を表す画像を抽出する。また、血管画像は、二値化画像として抽出する。
【0038】
図3(a)に、血管画像の一例として、MR血管画像V
MRのサンプル(sample)を示す。
【0039】
血管部分構造体検出部4は、抽出されたMR血管画像V
MR及びUS血管画像V
USにおいて、1つ以上の血管部分構造体をそれぞれ検出する。ここで、血管部分構造体とは、互いに近接または結合する複数の血管部分により構成される構造体のことを言う。本例では、血管部分構造体として、血管分岐を検出する。血管分岐は、血管分岐点と、その血管分岐点から枝分かれする二本の血管部分とにより構成される。そのため、血管分岐は、血管分岐点の位置と、その血管分岐点から枝分かれする二本の血管部分の走行方向及び長さとにより特定され、識別される。血管部分構造体検出部4は、具体的には、次のような処理を行う。
【0040】
まず、抽出されたMR血管画像V
MR及びUS血管画像V
USに対して、スムージング(smoothing)処理を施す。これにより、境界(輪郭)が滑らかになった血管画像が得られる。スムージング処理には、例えば、3次元のガウシアンフィルタ(Gaussian Filter)や3次元のメディアンフィルタ(Median Filter)などを用いる。
【0041】
次に、スムージング処理済みのMR血管画像V
MR及びUS血管画像V
USに対して、スケルトン(skeleton)処理(3次元細線化処理)を施す。これにより、血管の走行方向に沿った軸だけが枝のように線状に表された「血管ツリー(tree)」が得られる。以下、MR血管画像から得られた血管ツリーをMR血管ツリーTR
MRといい、US血管画像から得られた血管ツリーをUS血管ツリーTR
USという。スケルトン処理としては、例えば、非特許文献 Lee et.al , Building skeleton models via 3-D medial surface/axis thinning algorithms. Computer Vision, Graphics, and Image Processing, 56(6):462-478, 1994 に記載されている手法を用いる。
図3(b)に、血管ツリーの一例として、MR血管ツリーTR
MRのサンプルを示す。
図3(b)において、各血管部分に付された番号は、タグ(tag)番号である。
【0042】
次いで、MR血管ツリーTR
MR及びUS血管ツリーTR
USにおいて、1つ以上の血管分岐点をそれぞれ検出する。以下、具体的な処理について説明する。
【0043】
図4は、血管分岐点を検出する方法を説明するための図である。
図4に示すように、血管ツリーTRの枝に沿って、その枝上の点を含む所定サイズ(size)の領域を解析領域A1として設定する。解析領域A1は、例えば、血管ツリーTRの枝上の点に対応した画素を中心とする[3×3×3]画素の3次元領域とする。次いで、この解析領域A1に対して解析を行い、血管分岐を形成する連続画素を検出する。解析は、血管ツリーの「幹」側から「枝先」側に向かって行われるよう、血管ツリーの元となる血管画像において最も太い血管部分に相当する枝の端部から解析を開始する。そして、連続画素が枝分かれする点を、血管分岐点BPとして検出する。なお、血管分岐は、一本の血管が二本の血管に枝分かれする二叉分岐が典型であるが、一本の血管が同一の分岐点で三本以上の血管に枝分かれする三叉以上の分岐も存在する。三叉以上の分岐は、複数の二叉分岐として認識する。以下、MR血管ツリーTR
MRにおいて検出された各血管分岐点をMR血管分岐点BP
MR,i(i=1,2,…)で表し、US血管ツリーTR
USにおいて検出された各血管分岐点をUS血管分岐点BP
US,j(j=1,2,…)で表す。
【0044】
なお、血管分岐点を検出する際には、簡略化のため、血管ツリーの全体において、血管分岐点から枝分かれした血管部分の長さが非常に小さい血管分岐点は排除し、枝分かれした血管部分の長さが所定の閾値を超える比較的大きめの血管分岐点のみを検出するようにしてもよい。
【0045】
次に、MR血管分岐点BP
MR,i及びUS血管分岐点BP
US,jの各々について、その血管分岐点から枝分かれする二本の血管部分に対応した二つのベクトル(vector)を求める。以下、具体的な処理について説明する。
【0046】
図5は、血管分岐を形成する血管部分に対応したベクトルを求める方法を説明するための図である。
図5(a)に示すように、血管ツリーTR上で、血管分岐点BPごとに、その血管分岐点BPを含む所定サイズの領域を注目領域A2として設定する。注目領域A2は、例えば、血管分岐点BPを中心とする[10×10×10]画素の3次元領域とする。注目領域A2内には、血管分岐点BPから枝分かれする二本の血管部分BV
1,BV
2が含まれている。次に、
図5(b)に示すように、二本の血管部分BV
1,BV
2それぞれの走行方向と長さを表すベクトルb
1,b
2を求める。血管分岐点BPから枝分かれする血管部分BV
1,BV
2の走行方向と長さは、注目領域A2内において、対象となる血管分岐点BPから枝分かれする血管部分に次の血管分岐点BNが現れる場合には、対象となる血管分岐点BPとその次の血管分岐点BNとを結ぶ線分の方向と長さとする。一方、対象となる血管分岐点BPから枝分かれする血管部分に、終端点または注目領域A2の境界面との交点である特定点BCが現れる場合には、対象となる血管分岐点BPと特定点BCとを結ぶ線分の方向と長さとする。
【0047】
このような処理により、MR血管ツリーTR
MR及びUS血管ツリーTR
USそれぞれにおいて、血管分岐を、血管分岐点に対応する画素の座標と、その血管分岐点から枝分かれする二本の血管部分に対応した二つのベクトルとで特定することができる。なお、以下、MR血管ツリーTR
MRにおける血管分岐をMR血管分岐といい、US血管ツリーTR
USにおける血管分岐をUS血管分岐という。
【0048】
マッチング評価部5は、MR血管分岐とUS血管分岐との組合せごとに、血管分岐同士のマッチング評価を行う。本例では、マッチング評価の対象となるMR血管分岐とUS血管分岐とが重なるように、スムージング処理済みのMR血管画像V
MRと、スムージング処理済みのUS血管画像V
USとを位置合せする。次いで、位置合せされたMR血管画像V
MRとUS血管画像V
USとの間において、マッチング評価の対象となるMR血管分岐及びUS血管分岐の周辺での類似度を算出する。具体的には、マッチング評価の対象となるMR血管分岐及びUS血管分岐の組合せごとに、次のような処理を行う。
【0049】
図6に、血管分岐のマッチング評価の概念図を示す。まず、スムージング処理済みのMR血管画像V
MR及びUS血管画像V
USに座標変換を行って、これらの血管画像をマッチング評価の対象となるMR血管分岐及びUS血管分岐に共通の座標空間に置く。
【0050】
この座標空間は、マッチング評価の対象となるMR血管分岐のMR血管分岐点と、マッチング評価の対象となるUS血管分岐のUS血管分岐点とが重なり、さらに、そのMR血管分岐を形成する二本の血管部分に対応した二つのベクトルを含む平面と、そのUS血管分岐を形成する二本の血管部分に対応した二つのベクトルを含む平面とが重なるように規定された座標空間である。以下、この座標空間を第一共通座標空間という。スムージング処理済みのMR血管画像V
MRを第一共通座標空間に置くには、マッチング評価の対象となるMR血管分岐に対応した変換行列を求め、この変換行列を用いてMR血管画像V
MRの座標変換を行う。同様に、スムージング処理済みのUS血管画像V
USを第一共通座標空間に置くには、マッチング評価の対象となるUS血管分岐に対応した変換行列を求め、この変換行列を用いてUS血管画像V
USの座標変換を行う。
【0051】
ここで、変換行列の求め方について説明する。変換行列は、第一共通座標空間の中心となる原点と、血管分岐の姿勢(向き)を規定する回転行列とによって構成される。
図7に示すように、血管分岐点をP=[p
x,p
y,p
z]とし、血管分岐点Pから枝分かれする血管部分に対応するベクトルをU及びV′とし、UV′面に垂直なベクトル、すなわち法線ベクトルをWとする。また、WU面に垂直なベクトルをVとする。すると、互いに直交するベクトルU,V,Wは、当該血管分岐の姿勢に応じて決定され、回転行列を規定する。
図3(c)に、MR血管分岐におけるベクトルU,V,Wの算出結果のサンプルを示す。
【0052】
U=[u
x u
y u
z],V′=[v’
x v’
y v’
z]
W=U×V′=[w
x w
y w
z]
V=(U×V′)×U=[v
x v
y v
z]
【0053】
変換行列は、MR血管ツリーTR
MRにおいて検出されたMR血管分岐と、US血管ツリーTR
USにおいて検出されたUS血管分岐との各々について求められる。MR血管分岐について求められる変換行列T
MR-BFと、US血管分岐について求められる変換行列T
US-BFとは、それぞれ次のように表すことができる。
【数1】
【0054】
なお、MR3D画像G
MRとUS3D画像G
USとの間にスケール(scale)の相違がある場合には、MR血管分岐またはUS血管分岐の対応する変換行列に、スケール比scalを乗ずることで、このスケールの相違をキャンセル(cancel)することができる。MR3D画像G
MRとUS3D画像G
USとのスケール比の行列は、次のように表すことできる。
【数2】
【0055】
ここで、スケールパラメータ(scale parameter)fx,fy,fzは、MR3D画像G
MRとUS3D画像G
USとの間における対応実空間のスケール比から求められる。
【0056】
スムージング処理済みのMR血管画像V
MR及びUS血管画像V
USを、第一共通座標空間に置いたら、MR血管画像V
MRとUS血管画像V
USとの類似度を算出する。具体的には、第一共通座標空間において、MR血管画像V
MR及びUS血管画像V
USの各々について、第一共通座標空間の原点を含む所定サイズの領域を評価領域として設定する。評価領域は、例えば、その原点を中心とした[64×64×64]画素の3次元領域とする。そして、MR血管画像V
MRとUS血管画像V
USとの間における当該評価領域での類似度を算出する。類似度としては、例えば、相互相関係数を用いる。相互相関係数の算出に用いる相関関数は、既知のものでよい。
【0057】
このようなMR血管画像及びUS血管画像の第一共通座標空間への座標変換と、類似度の算出とを、MR血管分岐及びUS血管分岐の組合せごとにそれぞれ行う。すなわち、MR血管分岐の数をm個とし、US血管分岐の数をn個とすると、m個のMR血管分岐それぞれの変換行列と、n個のUS血管分岐それぞれの変換行列とは、次のように表すことができる。
【0058】
{T
1MR-BF,T
2MR-BF,…,T
mMR-BF} {T
1US-BF,T
2US-BF,…,T
nUS-BF}
そして、上記したマッチング評価処理を、MR血管分岐とUS血管分岐との組合せの数、すなわちm×nの数だけ行う。ただし、MR血管分岐を構成するどちらの血管部分とUS血管分岐を構成するどちらの血管部分とが共通の同じ血管となる可能性があるのかは、マッチング評価を行うまで不明である。そのため、実際には、MR血管分岐とUS血管分岐との組合せごとに、MR血管分岐またはUS血管分岐のいずれかに対して、血管分岐を形成する二本の血管部分の一方と他方とを位置的に入れ換えた場合についても、マッチング評価を行う必要がある。したがって、厳密には、上記マッチング評価処理は、m×n×2の数だけ行うことになる。
【0059】
マッチング評価部5は、さらに、一定レベル(level)以上の類似度が算出されたMR血管分岐とUS血管分岐との組合せを、MR3D画像G
MRとUS3D画像G
USとで共通する同一の血管分岐を表す組合せの候補として特定する。例えば、類似度が大きい順に上位所定数以内となるMR血管分岐とUS血管分岐との組合せ、あるいは、類似度が所定の閾値以上となるMR血管分岐とUS血管分岐との組合せを、上記候補として特定する。
【0060】
処理対象スライス特定部16は、上記候補として特定された血管分岐の組合せごとに、MR3D画像G
MRにおける当該組合せを構成するMR血管分岐が含まれるスライスと、US3D画像G
USにおける当該組合せを構成するUS血管分岐が含まれるスライスとを特定する。ここでは、MR3D画像G
MRにおけるMR血管分岐が含まれるスライスをMRスライスSL
MRと呼び、US3D画像G
USにおけるUS血管分岐が含まれるスライスをUSスライスSL
USと呼ぶことにする。MRスライスSL
MRは、MR血管分岐を形成する2本の血管部分に対応した2つのベクトルを含む平面に平行なスライス面を持つスライスである。同様に、USスライスSL
USは、US血管分岐を形成する2本の血管部分に対応した2つのベクトルを含む平面に平行なスライス面を持つスライスである。
【0061】
処理対象スライス特定部16は、上記候補である組合せごとに、その組合せを構成するMRスライスSL
MR及びUSスライスSL
USを、処理対象として順次特定する。
【0062】
スライス幅広領域投影部17は、MR3D画像G
MRにおいて、処理対象となったMRスライスSL
MRを含み、そのMRスライスSL
MRのスライス軸方向にそのスライス幅より幅広である領域を、MRスライス幅広領域WR
MRとして設定する。また、US3D画像G
USにおいても同様に、処理対象となったUSスライスSL
USを含み、そのUSスライスSL
USのスライス軸方向にそのスライス幅より幅広である領域を、USスライス幅広領域WR
USとして設定する。
【0063】
図8に、USスライスを含むUSスライス幅広領域の設定例を示す。本例では、US3D画像G
USにおいて、USスライスSL
USを中心に、そのスライス軸方向に幅Δwの厚さを有するUSスライス幅広領域WR
USが設定された様子を示している。
【0064】
スライス幅広領域投影部17は、さらに、MRスライス幅広領域WR
MRについて、そのMRスライスSL
MRのスライス軸方向に画素値の投影処理を行い、MRスライス幅広投影画GP
MR像を得る。また、USスライス幅広領域WR
USについても同様に、そのUSスライスSL
USのスライス軸方向に画素値の投影処理を行い、USスライス幅広投影画像GP
USを得る。
【0065】
投影処理の種類としては、例えば、最大値投影(MIP;Maximum Intensity Projection)処理、最小値投影(MinIP;Minimum Intensity Projection)処理または平均値投影(AIP;Average Intensity Projection)処理等を考えることができる。ここで、画素値の最大値投影処理及び最小値投影処理について簡単に説明する。
【0066】
図9は、画素値の最大値投影処理及び最小値投影処理の概念を示す図である。
図9(a)に示すように、画素値の最大値投影(MIP)処理は、投影領域において投影方向に並ぶ画素の画素値のうち最大の画素値を投影する処理である。また、画素値の最小値投影(MinIP)処理は、投影領域において投影方向に並ぶ画素の画素値のうち最小の画素値を投影する処理である。今、
図9(b)に示すように、投影領域Rを矢印eの方向に投影することを考える。また、矢印eに沿った画素値のプロファイルが、例えば、
図9(c)に示すようなプロファイルPRであったとする。この場合、矢印eに沿った画素値の最大値投影処理では、プロファイルPR上の点c2に対応する最大画素値が投影される。また、矢印eに沿った画素値の最小値投影処理では、プロファイルPR上の点c1に対応する最小画素値が投影される。
【0067】
スライス幅広領域投影部17が実行する投影処理の種類は、処理対象となる画像において血管がどのような画素値で描写されるか、すなわち、処理対象となる画像の撮影モダリティや被写体である部位の種類、血管への造影剤の注入の有無等に応じて決定される。
【0068】
ここで、投影処理の種類の決定方法について簡単に説明する。
【0069】
図10に、断層画像の例を示す。
図10(a)は、造影剤が注入された被検体の肝臓を表すCT3D画像における所定のCTスライスに対応した断層画像である。また、
図10(b)は、造影剤が注入された被検体の肝臓を表すMR3D画像における所定のMRスライスに対応した断層画像である。例えば、
図10(a)に示すように、造影剤が注入された被検体の肝臓を表すCT画像など、血管がその周辺の組織の平均的な画素値よりも高い画素値(輝度値)で表されるような場合には、投影処理の種類として最大値投影処理が用いられる。一方、
図10(b)に示すように、造影剤が注入された被検体の肝臓を表すMR画像など、血管がその周辺の組織の平均的な画素値よりも低い画素値(輝度値)で表されるような場合には、投影処理の種類として最小値投影処理が用いられる。
【0070】
図11に、投影画像の例を示す。
図11(a)は、造影剤が注入された被検体の肝臓を表すCT3D画像における所定のCTスライス幅広領域に最大値投影処理を行って得られた投影画像である。また、
図11(b)は、造影剤が注入された被検体の肝臓を表すMR3D画像における所定のMRスライス幅広領域に最小値投影処理を行って得られた投影画像である。
図11から分かるように、投影画像では、一般的なスライス幅のスライスには含まれない立体的な血管の構造がしっかり投影される。
【0071】
なお、MRスライスSL
MR及びUSスライスSL
USに対応する実空間上のスライス幅と、MRスライス幅広領域WR
MR及びUSスライス幅広領域WR
USに対応する実空間上の領域幅との好適な例は、処理対象となる3次元医用画像が表す部位、すなわち血管の太さ等に応じて異なる。例えば、部位が肝臓や肺などである場合には、MRスライス及びUSスライスに対応する実空間上のスライス幅は、0.5mm以上、3mm以下程度が好適であり、MRスライス幅広領域WR
MR及びUSスライス幅広領域WR
USに対応する実空間上の領域幅は、5mm以上、30mm以下程度である。
【0072】
このような投影処理によって得られた投影画像によれば、MRスライスやUSスライスを表す断層画像には含まれない、その周辺領域に及ぶ血管構造が描写される。操作者は、このような投影画像を見ることで、対象としている血管分岐だけでなく、その周りの血管構造をも把握することができる。そのため、操作者は、これらの投影画像を見比べることにより、対象としている血管分岐の類似性をより高い精度で評価することができ、指定されたMR血管分岐とUS血管分岐とが同一の血管分岐であるか否かを、高い確信度を持って判断することができる。
【0073】
図12に、断層画像と投影画像との比較例を示す。
図12(a)は、超音波撮像装置を用いて被検体の肝臓をBモードで撮像して得られた、あるスライスに対応した断層画像である。
図12(b)は、そのスライスを含むUSスライス幅広領域の投影画像である。また、
図12(c)は、MR撮像装置を用いて造影剤が注入された同じ被検体の肝臓を撮像して得られた、実質的にほぼ同じスライスを含むMRスライス幅広領域の投影画像である。なお、各画像において、解剖学的な幾つかの位置に符号a〜cの矢印を付してあるが、同じ符号の矢印は、解剖学的にほぼ同じ位置を示している。
図12から分かるように、通常の断層画像では血管分岐が認識し辛い場合があるが、投影画像では血管分岐の周辺における血管の構造がしっかり強調される。
【0074】
投影画像表示部18は、上記候補の組合せごとに、MRスライス幅広投影画像及びUSスライス幅広投影画像を表示する。
【0075】
ここで、操作者は、表示されたこれらの投影画像を参照して、同一の血管分岐を表すと思われるMR血管分岐とUS血管分岐との組合せを選択する。
【0076】
マッチング確定部19は、操作者により選択されたMR血管分岐とUS血管分岐との組合せを同一の血管分岐を表すベストマッチングの血管分岐として確定する。
【0077】
座標変換部6は、ベストマッチングとして確定された血管分岐の組合せについて、この組合せに対応した変換行列に基づいて、MR3D画像G
MRの座標変換に用いる変換行列を決定する。
【0078】
粗い位置合せに最適な変換行列は、次式により求められる。
【0079】
T
MR-US=[T
MR-BF]
best[T
US-BF]
-1best[scal]
【0080】
ここで、[T
MR-BF]
bestは、ベストマッチングとなったMR血管分岐に対応する変換行列であり、[T
US-BF]
-1bestは、ベストマッチングとなったUS血管分岐に対応する変換行列の逆行列である。
【0081】
座標変換部6は、この最適な変換行列T
MR-USを用いて、MR3D画像G
MRの座標変換を行うことにより、MR3D画像G
MRをUS3D画像G
USに粗く位置合せをする。
【0082】
位置合せ調整部7は、粗く位置合せされたMR3D画像G
MR及びUS3D画像G
USに対して、細かい位置合せを行う。細かい位置合せには、位置合せする画像間における画素値や濃度勾配、エッジなどの特徴部分が合致するように座標変換を行う手法などを用いる。
【0083】
本例における細かい位置合せに適した手法の一つとして、標準勾配場(Normalized Gradient Field:NGF)を用いる手法、例えば、非特許文献 Proceeding of SPIE Vol.7261, 72610G-1, 2009 や、特許文献 特願2013−230466号の明細書に記載されている手法が挙げられる。標準勾配場とは、画像上の座標において各方向x,y,zの1次偏微分、すなわち勾配ベクトル(Gradient Vector)を算出した後、その勾配ベクトルをその勾配ベクトルの長さ(Vector Norm)で規格化(normalized)したものである。つまり、標準勾配場は、画素値あるいは輝度値の大小や勾配の大きさに依存せず、勾配の方向だけを表す特徴量である。仮に、ある2つの画像において互いに対応する位置に同じ方向の標準勾配場が発生しているならば、これら2つの画像の位置は合っていると見なすことができる。したがって、この手法では、標準勾配場が示す方向の揃い具合を最適化することで、位置合せを行うことができる。
【0084】
対応断面像生成部8は、位置合せが成されたMR3D画像G
MR及びUS3D画像G
USにおいて、互いに対応する断面像を生成する。生成する断面像の断面位置は、例えば、操作者によって指定される。
【0085】
画像出力部9は、生成された断面像を画面に表示させたり、画像データとして外部に出力したりする。このとき、ベストマッチングの血管分岐の組合せを、画像化して共に出力してもよい。例えば、MR血管ツリーTR
MRとUS血管ツリーTR
USとを並べて表示し、これらの画像の上に、ベストマッチングの血管分岐を構成する血管分岐点と、その血管分岐を形成する血管部分のベクトルとを、色づけするなどして強調して表示する。
図13に、画像表示の一例を示す。
図13において、上段左の画像は、US血管分岐に対応するベクトルU,V,Wを求めて表示した結果を含むUS血管ツリーTR
MR1であり、上段右の画像は、MR血管分岐に対応するベクトルU,V,Wを求めて表示した結果を含むMR血管ツリーTR
US1である。また、下段左の画像は、特定されたベストマッチングのUS血管分岐を含む、座標変換済みUS3D画像の所定断面像G
US1であり、下段中央の画像は、特定されたベストマッチングのMR血管分岐を含む、座標変換済みMR3D画像G
MRの所定断面像G
MR1である。下段右の画像は、US3D画像G
USに粗い位置合せが成されたMR3D画像G
MRの任意断面像G
MR-USである。
【0086】
これより、第一実施形態に係る画像処理装置1aにおける処理の流れについて説明する。
図14は、第一実施形態に係る画像処理装置1aにおける処理の流れを示すフロー図である。
【0087】
ステップ(step)S1では、画像取得部2が、同一被検者の肝臓を表すMR3D画像G
MR及びUS3D画像G
USを取得する。本例では、US3D画像G
USを目標画像とし、MR3D画像G
MRを対象画像とする。
【0088】
ステップS2では、血管抽出部3が、MR3D画像G
MR及びUS3D画像G
USそれぞれについて、肝臓の門脈または肝静脈に相当する血管を表す血管画像を抽出する。抽出には既知の手法を用いる。血管画像は二値化画像として抽出する。
【0089】
ステップS3では、血管部分構造体検出部4が、MR3D画像G
MRにおいて抽出されたMR血管画像V
MRと、US3D画像G
USにおいて抽出されたUS血管画像V
USのそれぞれに対して、スムージング処理及びスケルトン処理を施して、MR血管ツリーTR
MR及びUS血管ツリーTR
USを得る。
【0090】
ステップS4では、血管部分構造体検出部4が、MR血管ツリーTR
MR及びUS血管ツリーTR
USそれぞれにおいて、枝骨に沿って追跡しながら解析を行う。この解析により、血管分岐点の位置と、その血管分岐点から枝分かれする二本の血管部分に対応するベクトルとを求めることにより、1つ以上の血管分岐を検出する。
【0091】
ステップS5では、マッチング評価部5が、マッチング評価の対象となるMR血管分岐とUS血管分岐との組合せごとに、血管分岐同士が重なるように、スムージング処理済みのMR血管画像V
MRと、スムージング処理済みのUS血管画像V
USとを位置合せする。そして、位置合せされたMR血管画像V
MRとUS血管画像V
USとの間において、対象となるMR血管分岐及びUS血管分岐の周辺での類似度を算出する。
【0092】
ステップS6では、マッチング評価部5が、算出された類似度に基づいて、MR3D画像G
MRとUS3D画像G
USとで共通する同一の血管分岐を表すMR血管分岐とUS血管分岐との組合せの候補を特定する。なお、ここでは、MR血管分岐とUS血管分岐との組合せを、MR/US分岐組合せと呼ぶことにする。
【0093】
ステップS7では、処理対象スライス特定部16が、候補として特定されたMR/US分岐組合せごとに、MR3D画像G
MRにおける当該組合せを構成するMR血管分岐が含まれるMRスライスと、US3D画像G
USにおける当該組合せを構成するUS血管分岐が含まれるUSスライスとを、処理対象として特定する。
【0094】
ステップS8では、スライス幅広領域投影部17が、MR3D画像G
MRにおいて、処理対象となったMRスライスを含み、そのMRスライスのスライス軸方向にそのスライス幅より大きい幅を有する幅広の領域を、MRスライス幅広領域として設定する。US3D画像G
USにおいても同様に、処理対象となったUSスライスを含み、そのUSスライスのスライス軸方向にそのスライス幅より大きい幅を有する幅広の領域を、USスライス幅広領域として設定する。
【0095】
ステップS9では、スライス幅広領域投影部17が、MRスライス幅広領域について、そのMRスライスのスライス軸方向に画素値の最小値投影(MinIP)を行い、MRスライス幅広投影画像を得る。USスライス幅広領域についても同様に、そのUSスライスのスライス軸方向に画素値の最小値投影(MinIP)を行い、USスライス幅広投影画像を得る。
【0096】
ステップS10では、投影画像表示部18が、得られたMRスライス幅広投影画像及びUSスライス幅広投影画像を表示する。
【0097】
ステップS11では、操作者は、表示されたこれらの投影画像を参照して、上記候補である、MR血管分岐とUS血管分岐とによる複数の組合せの中から、同一の血管分岐を表すと思われる組合せを選択する。
【0098】
ステップS12では、マッチング確定部19が、操作者により選択された組合せを、同一の血管分岐を表すMR血管分岐及びUS血管分岐として、すなわちベストマッチングの血管分岐の組合せとして確定する。
【0099】
ステップS13では、座標変換部6が、ベストマッチングとなった血管分岐の組合せに対応した変換行列に基づいて、粗い位置合せのための画像の座標変換に用いる変換行列T
MR-USを決定する。
【0100】
ステップS14では、座標変換部6が、MR画像G
MRを、ステップS7で決定した変換行列T
MR-USを用いて座標変換を行うことにより、US画像G
USに粗く位置合せをする。
【0101】
ステップS15では、位置合せ調整部7が、粗く位置合せされたMR画像G
MR及びUS画像G
USに対して、細かい位置合せを行い、位置合せの調整を行う。細かい位置合せには、位置合せの対象となる画像間における画素値や、濃度勾配、エッジ(edge)などの特徴部分が合致するように座標変換を行う手法などを用いる。
【0102】
ステップS16では、対応断面像生成部8が、位置合せが成されたMR3D画像G
MR及びUS3D画像G
USにおいて、互いに対応するスライスの断層画像を生成する。生成する断層画像のスライス位置は、例えば、操作者によって指定される。
【0103】
ステップS17では、画像出力部9が、生成された断層画像を画面に表示させたり、画像データ(data)として外部に出力したりする。
【0104】
(第二実施形態)
本実施形態に係る画像処理装置1bは、血管ツリーにおいて、血管分岐点から枝分かれする血管部分が一本しか見つからないような場合であっても、画像の位置合せを可能にするものである。本実施形態では、第一実施形態による画像処理装置1aをベース(base)として、血管部分構造体検出部4、及びマッチング評価部5が、第一実施形態とは異なる処理を行う。
【0105】
血管部分構造体検出部4は、MR血管ツリーTR
MR及びUS血管ツリーTR
USそれぞれにおいて、1つ以上の血管部分構造体を検出する。本例では、その血管部分構造体として、不完全血管分岐ペア(pair)を検出する。不完全血管分岐ペアは、
図15に示すように、血管ツリーTRにおいて、第一血管分岐点BP
1と、この第一血管分岐点BP
1から伸びる一本の第一血管部分VP
1と、第一血管分岐点BP
1に近接しており第一血管分岐点BP
1とは異なる第二血管分岐点BP
2と、この第二血管分岐点BP
2から伸びる一本の第二血管部分VP
2とにより構成される。そのため、不完全血管分岐ペアは、第一血管分岐点BP
1の位置と、その第一血管分岐点BP
1から伸びる第一血管部分VP
1の走行方向及び長さ(ベクトルu)と、第二血管分岐点BP
2の位置と、その第二血管分岐点からBP
2伸びる第二血管部分VP
2の走行方向及び長さ(ベクトルv)とにより特定され、識別される。
【0106】
なお、血管部分構造体検出部4は、血管ツリーにおいて、血管の伸びる方向が急激に変化する位置を、血管分岐点として認識し、その位置から先に伸びる血管部分を、分岐点から枝分かれする血管部分として認識する。これにより、血管分岐点から伸びる血管部分が一本しか見つからない場合であっても、血管分岐点とこの分岐点から伸びる血管部分とを的確に検出することができる。
【0107】
血管部分構造体検出部4は、具体的には、次のような処理を行う。
【0108】
まず、第一実施形態と同じ要領で、MR画像G
MR及びUS画像G
USから、MR血管ツリーTR
MR及びUS血管ツリーTR
USとを得る。また、MR血管ツリーTR
MR及びUS血管ツリーTR
USそれぞれにおいて、2つ以上の血管分岐点を検出する。
【0109】
次に、MR血管分岐点BP
MR,i及びUS血管分岐点BP
US,jの各々について、その血管分岐点から伸びる一本の血管部分に対応した一つのベクトルを求める。
【0110】
このような処理により、MR血管ツリーTR
MR及びUS血管ツリーTR
USそれぞれにおいて、不完全血管分岐ペアを、第一血管分岐点に対応する画素の座標と、その第一血管分岐点から伸びる一本の第一血管部分に対応した一つのベクトルと、第二血管分岐点に対応する画素の座標と、その第二血管分岐点から伸びる一本の第二血管部分に対応した一つのベクトルとで特定することができる。なお、以下、MR血管ツリーTR
MRにおいて検出された不完全血管分岐ペアをMR不完全血管分岐ペアといい、US血管ツリーTR
USにおいて検出された不完全血管分岐ペアをUS不完全血管分岐ペアという。
【0111】
マッチング評価部5は、MR不完全血管分岐ペアとUS不完全血管分岐ペアとの組合せごとに、不完全血管分岐ペア同士のマッチング評価を行う。本例では、マッチング評価の対象となるMR不完全血管分岐ペアとUS不完全血管分岐ペアとが重なるように、スムージング処理済みのMR血管画像V
MRと、スムージング処理済みのUS血管画像V
USとを位置合せする。位置合せされたMR血管画像V
MRとUS血管画像V
USとの間において、マッチング評価の対象となるMR不完全血管分岐ペア及びUS不完全血管分岐ペアの周辺での類似度を算出する。そして、この類似度の値が大きいほど、よりマッチングしているとの評価を行う。具体的には、マッチング評価の対象となるMR不完全血管分岐ペアとUS不完全血管分岐ペアとの組合せごとに、次のような処理を行う。
【0112】
まず、スムージング処理済みのMR血管画像V
MR及びUS血管画像V
USを、マッチング評価の対象となるMR不完全血管分岐ペア及びUS不完全血管分岐ペアに共通の座標空間に置く。
【0113】
この座標空間は、マッチング評価の対象となるMR不完全血管分岐ペアにおける「第一血管分岐点」、「第二血管分岐点」、または「第一血管部分に沿って伸びる直線と第二血管部分に沿って伸びる直線とを最短距離で結ぶ線分の中点」のうちの所定の一点と、マッチング評価の対象となるUS不完全血管分岐ペアにおける上記所定の一点とが重なり、さらに、マッチング評価の対象となるMR不完全血管分岐ペアにおける第一血管部分に対応するベクトルと第二血管部分に対応するベクトルとを当該MR不完全血管分岐ペアにおける上記所定の一点に置いたときにこれらのベクトルを含む平面と、マッチング評価の対象となるUS不完全血管分岐ペアにおける第一血管部分に対応するベクトルと第二血管部分に対応するベクトルとを当該US不完全血管分岐ペアにおける上記所定の一点に置いたときにこれらのベクトルを含む平面とが重なるように規定された座標空間である。以下、この座標空間を第二共通座標空間という。
【0114】
スムージング処理済みのMR血管画像V
MRを第二共通座標空間に置くには、マッチング評価の対象となるMR不完全血管分岐ペアに対応した変換行列を求め、この変換行列を用いてMR血管画像V
MRの座標変換を行う。同様に、スムージング処理済みのUS血管画像V
USを第二共通座標空間に置くには、マッチング評価の対象となるUS不完全血管分岐ペアに対応した変換行列を求め、この変換行列を用いてUS血管画像V
USの座標変換を行う。
【0115】
ここで、変換行列の求め方について説明する。変換行列は、第二共通座標空間の中心となる原点と、不完全血管分岐ペアの姿勢(向き)を規定する回転行列とによって構成される。
図16(a)に示すように、第一血管分岐点をP
0=[p
x,p
y,p
z]とし、第一血管分岐点P
0から伸びる第一血管部分に対応するベクトルをu=[u
x,u
y,u
z]とする。また、第二血管分岐点をQ
0=[q
x,q
y,q
z]とし、第二血管分岐点Q
0から伸びる第二血管部分に対応したベクトルをv=[v
x,v
y,v
z]とする。そして、ベクトルuに沿って伸びる直線とベクトルvに沿って伸びる直線とを最短距離で結ぶ線分をLとする。すると、第二共通座標空間の中心となる原点は、
図16(b)に示すように、第一血管分岐点P
0、第二血管分岐点Q
0、または、最短距離線分Lの中点Oとすることができる。また、ベクトルu及びvは、第二共通座標空間の中心すなわち原点に移動して配置させることができる。ここでのベクトルu,vは、第一実施形態における二本の血管部分に対応したベクトルU,V′と同様に扱うことができる。あとは、第一実施形態と同様の方法を用いることで、不完全血管分岐ペアから、第二共通座標空間への座標変換のための変換行列を算出することができる。
【0116】
なお、最短距離線分Lは、次のようにして求めることができる。
【0117】
第一血管分岐点P0を通り、ベクトルUに沿って伸びる3次元での線ベクトルの式は、次のように表すことができる。
【0118】
P(s)=P
0+s・u
ここで、sは連続可変のパラメータ値である。
【0119】
第一血管分岐点P
0と第二血管分岐点Q
0との間の線ベクトルをWとすると、
w=P
0−Q
0
であるから、
P(s)−Q
0=w+s・u
という式が成り立つ。
【0120】
同様に、
Q(t)−P
0=−w+t・v
という式が成り立つ。ここで、tは、連続可変のパラメータ値である。
【0121】
これら2つの式を合成すると、
(P(s)−Q(t))+(P
0−Q
0)=2・w+s・u−t・v
(P(s)−Q(t))+w=2・w+s・u−t・v (i)
となる。
【0122】
線ベクトルP(s)と線ベクトルQ(t)とを結ぶ線分は、その線分が線ベクトルP(s)及び線ベクトルQ(t)に対してそれぞれ直角となるときに最短距離を取る。ここで、線ベクトルP(s)と線ベクトルQ(t)とを最短距離で結ぶ線分の両端点をP(s1),Q(t1)とする。すると、互いに直交する2つのベクトルの内積は0であるから、
u・(P(s1)−Q(t1))=0
となる。
【0123】
また、この式に、式(i)を代入すると、
u・(w+s1・u−t1・v)=0
となる。
【0124】
したがって、
s1=(u・v)[s1・(u・v)+v・w]−u・w
=s1・(u・v)
2+(u・v)(v・w)−u・w
s1=[(u・v)(v・w)−u・w]/[1−(u・v)
2]
となる。
【0125】
同様に、
t1=[v・w−(u・v)(u・w)]/[1−(u・v)
2]
となる。
【0126】
最短距離線分Lは、
L=P(s1)−Q(t1)
であり、ベクトルu,v,wから求めることができる。
【0127】
スムージング処理済みのMR血管画像V
MR及びUS血管画像V
USを、第二共通座標空間に置いたら、MR血管画像V
MRとUS血管画像V
USとの相互相関係数を算出する。具体的には、第二共通座標空間において、MR血管画像V
MR及びUS血管画像V
USそれぞれについて、第二共通座標空間の原点を含む所定サイズの領域を評価領域として設定する。評価領域は、例えば、その原点を中心とした[64×64×64]画素の3次元領域とする。そして、MR血管画像V
MRとUS血管画像V
USとの間における当該評価領域での類似度、例えば相互相関係数を算出する。
【0128】
(第三実施形態)
本実施形態に係る画像処理装置1cは、血管ツリーにおいて、血管分岐点が見つからず、互いに近接する血管部分しか見つからないような場合であっても、画像の位置合せを可能にするものである。本実施形態では、第一実施形態による画像処理装置1aをベースとして、血管部分構造体検出部4、及びマッチング評価部5が、第一実施形態とは異なる処理を行う。
【0129】
血管部分構造体検出部4は、MR血管ツリーTR
MR及びUS血管ツリーTR
USそれぞれにおいて、1つ以上の血管部分構造体を検出する。本例では、その血管部分構造体として、血管部分ペアを検出する。血管部分ペアは、
図17に示すように、血管ツリーTRにおいて、第一血管部分VP
1と、第一血管部分VP
1に近接しており第一血管部分VP
1とは異なる第二血管部分VP
2とにより構成される。そのため、血管部分ペアは、第一血管部分端点KP
1の位置と、その第一血管部分端点KP
1から伸びる第一血管部分VP
1の走行方向及び長さ(ベクトルu)と、第二血管部分端点KP
2の位置と、その第二血管部分端点KP
2から伸びる第二血管部分VP
2の走行方向及び長さ(ベクトルv)とにより特定され、識別される。
【0130】
なお、血管部分構造体検出部4は、血管ツリーにおいて、血管分岐点を含まない血管部分を認識し、その血管部分の端点を、血管部分端点として認識する。
【0131】
血管部分構造体検出部4は、具体的には、次のような処理を行う。
【0132】
まず、第一実施形態と同じ要領で、MR画像G
MR及びUS画像G
USから、MR血管ツリーTR
MR及びUS血管ツリーTR
USとを得る。また、MR血管ツリーTR
MR及びUS血管ツリーTR
USそれぞれにおいて、互いに異なる2つ以上の血管部分端点を検出する。
【0133】
次に、MR血管部分端点KP
MR,i及びUS血管部分端点KP
US,jの各々について、その血管部分端点から伸びる一本の血管部分に対応した一つのベクトルを求める。
【0134】
このような処理により、MR血管ツリーTR
MR及びUS血管ツリーTR
USそれぞれにおいて、血管部分ペアを、第一血管部分端点に対応する画素の座標と、その第一血管部分端点から伸びる一本の第一血管部分に対応した一つのベクトルと、第二血管部分端点に対応する画素の座標と、その第二血管部分端点から伸びる一本の第二血管部分に対応した一つのベクトルとで特定することができる。なお、以下、MR血管ツリーTR
MRにおいて検出された血管部分ペアをMR血管部分ペアといい、US血管ツリーTR
USにおいて検出された血管部分ペアをUS血管部分ペアという。
【0135】
マッチング評価部5は、MR血管部分ペアとUS血管部分ペアとの組合せごとに、血管部分ペア同士のマッチング評価を行う。本例では、マッチング評価の対象となるMR血管部分ペアとUS血管部分ペアとが重なるように、スムージング処理済みのMR血管画像V
MRと、スムージング処理済みのUS血管画像V
USとを位置合せする。位置合せされたMR血管画像V
MRとUS血管画像V
USとの間において、マッチング評価の対象となるMR血管部分ペア及びUS血管部分ペアの周辺での類似度を算出する。具体的には、マッチング評価の対象となるMR血管部分ペアとUS血管部分ペアとの組合せごとに、次のような処理を行う。
【0136】
まず、スムージング処理済みのMR血管画像V
MR及びUS血管画像V
USを、マッチング評価の対象となるMR血管部分ペア及びUS血管部分ペアに共通の座標空間に置く。
【0137】
この座標空間は、マッチング評価の対象となるMR血管部分ペアにおける「第一血管部分に沿って伸びる直線と第二血管部分に沿って伸びる直線とを最短距離で結ぶ線分の中点」と、マッチング評価の対象となるUS血管部分ペアにおける「第一血管部分に沿って伸びる直線と第二血管部分に沿って伸びる直線とを最短距離で結ぶ線分の中点」とが重なり、さらに、マッチング評価の対象となるMR血管部分ペアにおける第一血管部分に対応するベクトルと第二血管部分に対応するベクトルとを当該MR血管部分ペアにおける上記最短距離線分の中点に置いたときにこれらのベクトルを含む平面と、マッチング評価の対象となるUS血管部分ペアにおける第一血管部分に対応するベクトルと第二血管部分に対応するベクトルとを当該US血管部分ペアにおける上記最短距離線分の中点に置いたときにこれらのベクトルを含む平面とが重なるように規定された座標空間である。以下、この座標空間を第三共通座標空間という。
【0138】
スムージング処理済みのMR血管画像V
MRを第三共通座標空間に置くには、マッチング評価の対象となるMR血管部分ペアに対応した変換行列を求め、この変換行列を用いてMR血管画像V
MRの座標変換を行う。同様に、スムージング処理済みのUS血管画像V
USを第三共通座標空間に置くには、マッチング評価の対象となるUS血管部分ペアに対応した変換行列を求め、この変換行列を用いてUS血管画像V
USの座標変換を行う。
【0139】
ここで、変換行列の求め方について説明する。変換行列は、第三共通座標空間の中心となる原点と、血管部分ペアの姿勢(向き)を規定する回転行列とによって構成される。
図18(a)に示すように、第一血管部分端点をP
1=[p
x,p
y,p
z]とし、第一血管部分端点P
1から伸びる第一血管部分に対応するベクトルをu=[u
x,u
y,u
z]とする。また、第二血管部分端点をQ
1=[q
x,q
y,q
z]とし、第二血管部分端点Q
1から伸びる第二血管部分に対応したベクトルをv=[v
x,v
y,v
z]とする。そして、ベクトルuに沿って伸びる直線とベクトルvに沿って伸びる直線とを最短距離で結ぶ線分をLとする。すると、第三共通座標空間の中心となる原点は、
図18(b)に示すように、最短距離線分Lの中点Oとすることができる。また、ベクトルu及びvは、第三共通座標空間の中心すなわち原点に移動して配置させることができる。ここでのベクトルu,vは、第一実施形態における二本の血管部分に対応したベクトルU,V′と同様に扱うことができる。あとは、第一実施形態と同様の方法を用いることで、血管部分ペアから、第三共通座標空間への座標変換のための変換行列を算出することができる。
【0140】
スムージング処理済みのMR血管画像V
MR及びUS血管画像V
USを、第三共通座標空間に置いたら、MR血管画像V
MRとUS血管画像V
USとの相互相関係数を算出する。具体的には、第三共通座標空間において、MR血管画像V
MR及びUS血管画像V
USそれぞれについて、第三共通座標空間の原点を含む所定サイズの領域を評価領域として設定する。評価領域は、例えば、その原点を中心とした[64×64×64]画素の3次元領域とする。そして、MR血管画像V
MRとUS血管画像V
USとの間における当該評価領域での類似度、例えば相互相関係数を算出する。
【0141】
(第四実施形態)
第四実施形態に係る画像処理装置1dは、同一の血管部分構造体(血管分岐、不完全血管分岐ペア、または血管部分ペア)を表すと思われるMR血管部分構造体(MR血管分岐、MR不完全血管分岐ペア、またはMR血管部分ペア)とUS血管部分構造体(US血管分岐、US不完全血管分岐ペア、またはUS血管部分ペア)との組合せを、手動で特定するものである。
【0142】
図19は、第四実施形態に係る画像処理装置1dの構成を概略的に示す機能ブロック図である。第四実施形態に係る画像処理装置1dは、第一〜第三実施形態に係る画像処理装置1a〜1cをベースに、マッチング評価部5を除いた構成である。
【0143】
第四実施形態では、操作者が、検出されたMR血管部分構造体及びUS血管部分構造体の中から所望の血管部分構造体を指定する。
【0144】
処理対象スライス特定部16は、操作者により指定されたMR血管部分構造体を含むスライスを処理対象となるMRスライスSL
MRとして特定し、操作者により指定されたUS血管部分構造体を含むスライスを処理対象となるUSスライスSL
USとして特定する。
【0145】
図20は、第四実施形態に係る画像処理装置1dにおける処理の流れを示すフロー図である。第四実施形態に係る画像処理装置1dでは、
図20に示すように、第一実施形態のステップS5,S6における“候補”を自動で特定する処理に代えて、ステップT5における候補を手動で特定する処理を行うことになる。
【0146】
このように、上記実施形態によれば、3次元医用画像において特定されたスライスを含みそのスライス軸方向にそのスライス幅より幅広である領域について画素値投影処理を行い、得られた投影画像を表示するので、当該スライスのスライス幅はそのままで、当該スライス周辺のスライス軸方向における血管構造の情報をより多く可視化することができ、当該スライスの空間分解能を損ねることなく、そのスライスに含まれる血管の構造をより把握しやすく表示することができる。
【0147】
また、上記の実施形態によれば、操作者は、表示された投影画像を参照することによって、位置合せする2つの3次元医用画像間で共通する同一の血管部分構造体を含むスライスの特定が順調に行われているかを確認したり、誤った特定を回避したりすることができ、当該位置合せの精度を向上させることができる。特に、撮像モダリティが互いに異なる2つの3次元医用画像同士の位置合せでは、共通する同一の血管部分構造体を自動で特定することは容易でない。そのため、上記の実施形態に係る画像処理装置のように投影画像を表示することは、位置合せの精度を向上させる上で非常に効果的である。
【0148】
なお、第二実施形態、第三実施形態による画像位置合せ手法は、完全な血管分岐を検出できない時にのみ行ってもよいし、完全な血管分岐を検出できるか否かに関係なく行ってもよい。
【0149】
また、上記実施形態では、マッチング評価を、MR血管画像におけるm個の血管部分構造体(血管分岐、不完全血管分岐ペア、または血管部分ペア)と、US血管画像におけるn個の血管部分構造体との総当たりの組合せについて行っているが、これに限定されるものではない。例えば、マッチング評価を、US血管画像におけるn個の血管部分構造体のうち、ユーザによって選択された単一の血管部分構造体と、MR血管画像におけるm個の血管構造体との組合せごとに行ってもよいし、MR血管画像におけるm個の血管部分構造体のうち、ユーザによって選択された単一の血管部分構造体と、US血管画像におけるn個の血管構造体との組合せごとに行ってもよい。ユーザによって選択される単一の血管部分構造体は、例えば、MR画像またはUS画像における腫瘤などを含む関心領域の近傍に存在する血管部分構造体とすることができる。このようにすれば、関心領域の周辺において特に高い精度での位置合せを期待することができ、診断効率をより向上させることが可能になる。
【0150】
また、位置合せを行う2つの画像の組合せとしては、MR画像とUS画像の組合せだけでなく、CT画像とUS画像や、MR画像とCT画像の組合せなど、あらゆる撮像モダリティの画像に適用できる。ただし、本提案による位置合せ手法は、位置合せの対象となる2つの画像間で輝度値の関連性が薄い場合にも、その影響をほとんど受けずに位置合せを行うことができる。そのため、本提案による位置合せ手法は、位置合せ対象の画像として、特殊な描写形態・コントラスト(contrast)を有するUS画像が含まれる場合に、特に有効である。
【0151】
また、上記実施形態は、発明を、撮像モダリティが互いに異なる画像同士の位置合せに適用した例であるが、撮像モダリティが同一であって撮像の時相が互いに異なる画像同士の位置合せに適用することもできる。このような画像としては、例えば、手術前後の画像や造影撮影における早期相と後期相の画像などが考えられる。また、発明は、人体の医用画像だけでなく、動物の医用画像にも適用可能である。
【0152】
また、上記実施形態は、発明を、2つの3次元医用画像の位置合せ処理に適用した例であるが、別の例として、例えば、単一の3次元医用画像における血管の探索処理に適用することもできる。この場合、画像処理装置は、単一の3次元医用画像において関心が持たれるスライスを特定し、特定されたスライスを含みそのスライス幅より幅広な領域についてスライス軸方向に投影処理を行い、得られた投影画像を表示する。操作者は、血管の探索処理において、探索が難しいと判断される個所を含むなど関心が持たれたスライスの断層画像を参照することで、真の血管が探索されているか否かを判定し、真の血管だけが探索されるように調整することができる。
【0153】
また、上記実施形態では、被検体の肝臓を表す3次元医用画像を処理対象としているが、被検体の肺を表す3次元医用画像を処理対象とすることもできる。肺は、肝臓と同様に変形性があり、血管を有しているので、血管構造を解剖学的ランドマークとして利用することができる。そのため、肺を表す3次元医用画像は、上記実施形態における3次元医用画像同士の位置合せ処理や投影画像の表示処理の処理対象として好適である。
【0154】
また、上記実施形態は、画像処理装置であるが、コンピュータをこのような画像処理装置として機能させるためのプログラムや、当該プログラムが記憶されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体もまた発明の実施形態の一例である。なお、当該記憶媒体としては、一過性のものだけでなく、非一過性のものも考えることができる。