特許第6293670号(P6293670)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6293670
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】水銀除去用の組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20180305BHJP
   B01D 53/64 20060101ALI20180305BHJP
   B01J 20/02 20060101ALN20180305BHJP
   B01J 20/30 20060101ALN20180305BHJP
   B01D 15/00 20060101ALN20180305BHJP
【FI】
   B01D53/14 100
   B01D53/64 100
   !B01J20/02 A
   !B01J20/30
   !B01D15/00 J
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-547272(P2014-547272)
(86)(22)【出願日】2012年12月4日
(65)【公表番号】特表2015-506823(P2015-506823A)
(43)【公表日】2015年3月5日
(86)【国際出願番号】US2012067683
(87)【国際公開番号】WO2013090048
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2015年10月1日
(31)【優先権主張番号】61/576,126
(32)【優先日】2011年12月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505241038
【氏名又は名称】クラリアント コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【弁理士】
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】ターベヴィル,ウェイン
(72)【発明者】
【氏名】コリンタ,グレグ
(72)【発明者】
【氏名】コール,タッド
(72)【発明者】
【氏名】ブレイデン,ジェフリー エル
【審査官】 佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0122327(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/147781(WO,A1)
【文献】 特開平08−089757(JP,A)
【文献】 特開平01−231920(JP,A)
【文献】 特開昭52−076284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14−53/18
B01D 53/34−53/85
B01D 15/00−15/42
B01J 20/00−20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相または液相から水銀を除去する方法において、水銀を含有する気相または液相を、沈降硫化金属からなる粉末化組成物と接触させる方法であって、
当該沈降硫化金属は銅源と硫化物源(HS−)から形成される硫化銅を含み、
当該組成物はパーライトを含む変性剤の存在下で形成され、
沈降硫化金属は、追加的に鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、銀および金から選択される金属を含み、
沈降硫化金属は、硝酸銅、硫酸銅、燐酸銅、酢酸銅、炭酸銅、水酸化銅、炭酸アンモニウム銅およびヒドロキシ炭酸銅から選択される金属塩から形成される方法
【請求項2】
組成物が、変性剤の存在下で形成され、
該変性剤が、追加的にアルミナ、シリカ、アルミノケイ酸塩、クレー、ゼオライト、カーボン、セメント、チタニア及びジルコニアから選ばれ、好ましくは、変性剤はアルミナからなることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
変性剤が追加的にアルミナを含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
変性剤が追加的に活性炭素を含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
組成物が、水銀を含有する気相または液相と接触させる前に、押し出され、乾燥されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
押し出された組成物の水銀吸着容量は、13,000μg-Hg/g―A以上であることを特徴とする、請求項記載の方法。
【請求項7】
押し出された組成物の水銀吸着容量は、40,700μg-Hg/g―A以上であることを特徴とする、請求項記載の方法。
【請求項8】
組成物が粉末であることを特徴とする、請求項記載の方法。
【請求項9】
組成物が、水銀を含有する気相または液相と接触させる前に、押し出され、乾燥されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
組成物が、20から80%の沈降硫化銅と、20から80%の変性剤からなることを特徴とする、請求項2乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
硫化物(HS−)の塩は硫化水素ナトリウムである請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2011年12月15日に出願された、米国仮特許出願第61/576,126号に対する優先権を主張し、前述の特許関係書類はすべて、引用によりそれぞれの全体が本明細書中に組み込まれる。
【0002】
硫化金属は、通常、精製過程で発生する天然ガス流などのガスや液体から、水銀を除去するのに使われる。一般に、硫化銅は、酸化銅と、硫化水素あるいは硫化カルボニルなどの気体状の硫化物を反応させる方法で製造する。
【0003】
本発明は、気相または液相から水銀を除去する方法であって、水銀を含有する気相または液相を、沈降硫化金属からなる組成物と接触させる方法に関する。
【0004】
組成物は、銅源、硫化物源及び変性剤を化合させて沈降硫化銅を形成するプロセスで作られた沈降硫化銅からなる。銅源は、硝酸銅、硫酸銅、リン酸銅、酢酸銅、炭酸銅、水酸化銅、アンモニウム炭酸銅、ヒドロキシ炭酸銅から選ばれる。硫化物源は、硫化水素(HS)、硫化カルボニル(COS)、硫化物塩(S2−)、水硫化物塩(HS)、多硫化物塩(Sn2−)から選ばれる。それらの塩のカチオンは、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリュウム、アンモニュウムから選ばれる。変性剤は、アルミナ、シリカ、アルミノケイ酸塩、クレー、ゼオライト、カーボン、セメント、チタニア、ジルコニアから選ばれる。
【0005】
本発明の目的及び利点は、下記の記述から明らかになるだろう。
【発明を実施するための形態】
【0006】
酸化銅の気相硫化法による硫化銅の調製法としては、銅を、水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、アンモニュウムなどの塩基で沈澱させる方法がある。調製される銅塩は通常、水酸化銅またはヒドロキシ炭酸銅であるが、それらを高温で焼成して分解しなければならない。硫化金属を、別の沈降法で調製しても良い。沈殿物は、遷移金属源と硫化物源から作る。生成物はどちらの製法でも金属と硫黄を含有しているが、沈降硫化金属の方が、他の方法で製造された硫化金属よりも水銀を良好に吸収することが分かっている。
【0007】
沈降により作られた硫化金属の性質としては、他の方法、例えば、焼成に続いて硫黄処理する方法、あるいは金属塩をあらかじめ支持体に吸着させせる方法により製造された硫化金属と比べて、その形態が違うと考えられている。沈降硫化金属は、水銀を吸着する箇所がより多く、表面積がより大きく、反応性を上昇させる空隙を有する。沈降法は通常、水中で行われるが、アルコールまたは他の液体、あるいは混合液体でも良い。一つの実施形態としては、遷移金属源と硫化物源が共に、液体に可溶性である。しかし、遷移金属源と硫化物源が、どちらも可溶性である必要はない。また別の実施形態では、遷移金属源は液体に可溶性ではなく、硫化物源は可溶性である。他の実施形態では、遷移金属源は液体に可溶性で、硫化物源は可溶性ではない。遷移金属源または硫化物源は、高度に水溶性でなくても良く、難溶性でもかまわない。
【0008】
沈降法では、遷移金属源と硫化物源を反応させて硫化金属を作製する。得られた硫化金属は、液体中で沈殿物になる。理論に束縛されずに言うならば、沈降には遷移金属源または硫化物源の酸化還元はないとされている。沈降に先立って、遷移金属を支持体あるいは他の物質に担持する必要はない。
【0009】
硫化金属は、多様な存在形態でよい。金属と硫黄の酸化状態は、違っても良い。これらの形態が違うことにより、化学物性も違ってくる。沈降硫化金属は、硫黄の公式の酸化状態が−2である硫化金属であると考えられている。硫化物は、多硫化物ではなく、一硫化金属であるかあるいは、一硫化金属からなると考えられている。ある実施形態では、沈降硫化金属は、一硫化銅である。
【0010】
硫化金属は、ガスまたは液体から水銀を吸着する。吸着法は、物理吸着、化学吸着または両者の組み合わせによって行われる。
【0011】
一つの実施形態では、工程により気相または液相から水銀を除去する。水銀を含有するガスまたは液体を、沈降硫化金属と接触させる。別の実施形態では、沈降硫化金属は遷移硫化金属から選ばれる。他の実施形態では、沈降硫化金属は、硫化鉄、硫化コバルト、硫化ニッケル、硫化銅、硫化亜鉛、硫化ジルコニウム、硫化モリブデン、硫化銀、硫化金から選ばれる。さらに他の実施形態では、硫化金属は、硫化銅からなる。
【0012】
硫化金属は、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、銀及び金塩からなる金属源から沈降させる。一つの実施形態では、金属塩は、硝酸金属、硫酸金属、リン酸金属、酢酸金属、炭酸金属、水酸化金属、アンモニウム炭酸金属、ヒドロキシ炭酸金属から選ぶことができる。ある実施形態では、金属源は、Cu2+からなる。さらにある実施形態では、金属源は、Cu2+からなり、硝酸銅、硫酸銅、リン酸銅、酢酸銅、炭酸銅、水酸化銅、アンモニウム炭酸銅、ヒドロキシ炭酸銅から選ばれる。金属源は、銅化合物の混合物でも良い。
【0013】
沈降硫化銅は、硫化物源から作られる。一つの実施形態では、硫化物源は、硫化水素(HS)、硫化カルボニル(COS)、硫化物塩(S2−)、水硫化物塩(HS)、多硫化物塩(Sn2−)から選ばれる。それらの塩のカチオンは、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリュウム、アンモニュウムから選ばれる。ある実施形態では、硫化物源は、硫化水素、硫化ナトリウム、水硫化ナトリウム、硫化カリウム、水硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム、硫化ベリリウム、硫化マグネシウム、硫化カルシウム、硫化ストロンチウム、硫化バリュウム、硫化アンモニュウムから選ばれる。別の実施形態では、硫化物源は、硫化水素、硫化ナトリウム、水硫化ナトリウム、硫化カリウム、水硫化カリウム、硫化マグネシウム、硫化カルシウム、硫化ストロンチウムから選ばれる。他の実施形態では、硫化物源は、硫化水素、硫化ナトリウム、水硫化ナトリウム、硫化カリウム、水硫化カリウム、硫化マグネシウム、硫化カルシウムから選ばれる。硫化物源は、単一の化合物でも良いし、硫化物の混合物でも良い。
【0014】
一つの実施形態では、沈降硫化金属は、変性剤の存在下で作られる。変性剤は、アルミナ(三水酸化物、遷移アルミナ、無定形アルミナ及びアルファアルミナを含む)、シリカ(ヒュームドシリカ、沈降シリカ、無定形シリカ、シリケート及び、パーライトのような天然型シリカを含む)、アルミノケイ酸塩、クレー(モンモリロナイト、ヒドロタルサイト及びアタパルジャイトを含む)、ゼオライト、カーボン(活性炭を含む)、セメント、チタニア、ジルコニアから選ばれる。変性剤は、一つ以上の変性剤からなっても良い。押し出し沈降硫化金属の構造と強度が得られる構造変性剤でも良い。沈降硫化金属の表面積を拡大する分散変性剤でも良い。沈降硫化金属の表面積を拡大すると、水銀の吸着速度が増す。一つの実施形態では、変性剤は、アルミナ、ゼオライト、シリカ及び活性炭から選ばれる。別の実施形態では、変性剤は、シリカから選ばれる。他の実施形態では、変性剤は、アルミナから選ばれる。沈降硫化金属は、沈降硫化銅でも良い。
【0015】
一つの実施形態では、組成物は、一つ以上の変性剤からなっている。変性剤は、一つ以上の構造変性剤でも良いし、一つ以上の分散変性剤でも良いし、あるいは少なくとも一つの構造変性剤と少なくとも一つの分散変性剤でも良い。構造変性剤の例としては、アルミナ、シリカ、アルミノケイ酸塩、クレー、ゼオライト、セメント、チタニア及びジルコニアがある。分散変性剤の例としては、アルミナ、シリカ、アルミノケイ酸塩、クレー、ゼオライト、カーボン、セメント、チタニア及びジルコニアがある。ある実施形態では、構造変性剤はアルミナで、分散変性剤は、パーライト及び活性炭から選ばれる。別の実施形態では、構造変性剤はアルミナで、分散変性剤はパーライトである。沈降硫化金属は、沈降硫化銅でも良い。
【0016】
組成物中の沈降硫化金属の量は、約1%から約100%の範囲である。組成物中の沈降硫化金属の量は、約5%から約100%、約10%から約90%、約20%から約90%、約30%から約90%、約40%から約90%、約50%から約90%、約60%から約90%、約70%から約90%、約80%から約90%、または約80重量%の範囲でも良い。組成物中の沈降硫化金属の量は、約10%から約80%、約10%から約70%、約10%から約60%、約10%から約50%、約10%から約40%、約10%から約30%、約10%から約20%、または約20重量%の範囲でも良い。変性剤の量は、組成物の重量の残部でよいし、あるいはその残部未満でも良い。それは、組成物の重量の残部の約90%から約10%、約80%から約20%、約70%から約30%、約60%から約40%、または約50%でも良い。
【0017】
一つの実施形態では、組成物は、約80%の沈降硫化金属、約10%の構造変性剤、と約10%の分散変性剤からなる。別の実施形態では、組成物は、約80%の沈降硫化金属と約20%の構造変性剤からなる。他の実施形態では、組成物は、約80%の沈降硫化金属と約20%の分散変性剤からなる。
【0018】
ある実施形態では、組成物は、約20%の沈降硫化金属、約40%の構造変性剤、と約40%の分散変性剤からなる。別の実施形態では、組成物は、約10%の沈降硫化金属と約90%の構造変性剤からなる。他の実施形態では、組成物は、約10%の沈降硫化金属と約90%の分散変性剤からなる。もう一つの実施形態では、組成物は、約20%の沈降硫化金属と約80%の分散変性剤からなる。
【0019】
沈降硫化金属は、母液から濾別し乾燥して、粉末にする。濾別後、硫化銅などの硫化金属をペースト状にした後、押し出して、円筒形、錠剤形、リング形及び球形などの形状にしてから乾燥する。更に、形状を変えて表面積を増やしても良い。それらは、うねり模様がついたり、ゆるくカーブしても良いし、滑らかでも良く、穴があいていても良い。押し出しは、スクリュー押出機を通して行われる。一つの実施形態では、沈降硫化銅は、水銀を含有する気相または液相と接触させる前に、押し出して乾燥する。沈降硫化金属は、粉末から錠剤化またはペレット化してもよい。粉末は粉砕して、微粉末にしても良い。
【0020】
沈降硫化金属は、沈降硫化金属の混合物でも良いし、単独の沈降硫化金属でも良い。ある実施形態では、沈降硫化金属は、さらに少なくとも一つの他の沈降硫化金属からなっていても良く、その場合、金属は、ジルコニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリュウム、クロム、マンガン、コバルト、鉄、モリブデン、ニッケル、亜鉛、チタン、タングステン、ランタン、セリウム及び銀から選ばれる。沈降硫化金属は、硫化銅でよい。ある実施形態では、沈降硫化金属は、更に硫化亜鉛からなる。一つ以上の沈降硫化金属が有る場合は、それらは共沈降させたものでも良いし、一方が沈降する前に、他方を沈降させても良い。
【0021】
沈降硫化金属の性能は、いくつかの方法で測定することができる。一つの方法は、水銀吸着容量の測定であり、あるレベルの水銀が、吸着物を通り抜ける(ブレイクスルー)前に、吸着物の質量当り吸着され得る水銀の質量のことである。簡単な測定法については実施例に示した。一つの実施形態では、押し出した沈降硫化金属の水銀吸着容量は、1%ブレイクスルー前には、約8,800ug-Hg/g―A以上である。ug-Hg/g―Aは、吸着物1g当りの吸着水銀のug数である。別の実施形態では、押し出した沈降硫化金属の水銀吸着容量は、1%ブレイクスルー前には、約13,000ug-Hg/g―A以上である。他の実施形態では、押し出した沈降硫化金属の水銀吸着容量は、1%ブレイクスルー前には、約40,000ug-Hg/g―A以上である。
【0022】
一つの実施形態では、水銀を除去するプロセスは、流動床式反応器で行なう。流動床式反応器では、ガスや液体などの流体を、流動固形物を通過させる。沈降硫化金属からなる組成物は、該固形物の一部である。固形物は、ガスや液体の最小流動速度で整流板から離れて、ガスや液体と混合する(流動化)。流動床の操作法は、当業者には周知である。
【0023】
ある実施形態では、水銀を除去するプロセスは、固定床式反応器で行なう。水銀を含有するガスまたは液体を、沈降硫化金属からなる組成物を含む容器を通過させる。組成物の量と充填物を調整して、固定床のどの部分でも大きな圧力降下を防止することができる。固定床プロセスについては、組成物中の沈降硫化金属の量は、約60%から約90%、約70%から約80%または約80%で、残りは変性剤である。
【0024】
一つの実施形態では、水銀は燃焼排ガス起源である。石炭火力発電所から出てくる排出ガスなどの燃焼排ガスが、水銀を含んでいる。沈降硫化金属からなる粉末化組成物をガス中に注入するか、または吹き込むことにより、燃焼排ガス中の水銀の量を減少させることができる。水銀含有量を減少させた後で、粉末をガスから除去する。燃焼排ガスプロセスについては、組成物中の沈降硫化金属の量は、約10%から約40%、約20%から約30%または約20%で、残りは変性剤である。
【0025】
燃焼排ガスプロセスについては、沈降硫化金属からなる組成物が、燃焼排ガス中で流動するように、組成物の密度を調整する。組成物が流動する場合は、焼排ガス中に懸濁させておく。これにより、組成物は除去されるまでは、燃焼排ガスと接触したままになる。組成物の密度は、約0.6 g/mLである。別の実施形態では、組成物の密度は、約0.1 g/mLから約0.9 g/mL、約0.2 g/mLから約0.8 g/mL、約0.5 g/mLから約0.8 g/mL、約0.4 g/mLから約0.5 g/mL、約0.1 g/mLから約0.3 g/mL、約0.1 g/mLから約0.2 g/mLまたは約0.4 g/mLから約0.6 g/mLである。密度は、組成物を軽くつき固めてから測定する。
【0026】
一つの実施形態では、組成物は、銅源、硫化物源及び変性剤を化合させて沈降硫化銅を形成するプロセスで作られた沈降硫化銅からなる。銅源は、硝酸銅、硫酸銅、リン酸銅、酢酸銅、炭酸銅、水酸化銅、アンモニウム炭酸銅、ヒドロキシ炭酸銅から選ばれる。硫化物源は、硫化水素(HS)、硫化カルボニル(COS)、硫化物塩(S2−)、水硫化物塩(HS)、多硫化物塩(Sn2−)から選ばれる。それらの塩のカチオンは、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリュウム、アンモニュウムから選ばれる。変性剤は、アルミナ(三水酸化物、遷移アルミナ、無定形アルミナ及びアルファアルミナを含む)、シリカ(ヒュームドシリカ、沈降シリカ、無定形シリカ、シリケート及び、パーライトのような天然型シリカを含む)、アルミノケイ酸塩、クレー(モンモリロナイト、ヒドロタルサイト、アタパルジャイトを含む)、ゼオライト、カーボン(活性炭を含む)、セメント、チタニア、ジルコニアから選ばれる。
【0027】
実施形態をいくつか記述して現公開を説明し、かつ例証した実施形態をかなり詳しく説明してきたが、ここに添えられた特許請求の範囲をそのような細部に制限したり、あるいはどのような形であれ限定することは、本出願人の意図するところではない。本願発明の利点を更に見出したり、本願発明を変更することは、当業者にとっては容易であろう。
【実施例】
【0028】
実施例1
硝酸銅結晶19.60gの試料を、水500mLに加えて溶解した。この溶液を攪拌し、60℃に加熱した。この溶液に、硫化ストロンチウム粉末(6.70g)をゆっくり添加した。得られたスラリーを1時間熟成させた後、濾過、洗浄して、110℃で2時間乾燥した。
実施例2
【0029】
硫化ナトリウム水和物結晶6.70gの試料を、水500mLに加えて溶解した。この溶液を攪拌し、60℃に加熱した。この溶液に、酢酸銅粉末(10.45g)をゆっくり添加した。得られたスラリーを1時間熟成させた後、濾過、洗浄して、110℃で2時間乾燥した。
実施例3−比較例
【0030】
Sud Chemie C18‐5銅触媒(公称CuO42パーセント、ZnO47パーセント、残余Al)の市販試料を、メタン中、150ppmのHSと2,500ppmの水を使い、50psiと50℃の条件で、10,000GHSVでイオウ処理を行った。触媒が飽和するまで、処理を続けた。
実施例4
【0031】
硫化ナトリウム水和物結晶264.8gの試料を、水1.5Lに加えて溶解した。この溶液を攪拌し、酢酸銅粉末415.90gをゆっくり添加した。得られたスラリーを1時間熟成させた後、濾過、洗浄して、110℃で2時間乾燥した。粉砕ケーキ50.5gを水25.2gと混合し、1/8インチの押出成形物を形成した。
実施例5
【0032】
塩基性炭酸銅59.39gとアルミナ粉末12.50gの試料を、水500mLに加えて攪拌した。硫化ナトリウム水和物結晶66.66gの試料を、水200mLに加えて溶解した。次いでこの溶液を、最初の炭酸塩とアルミナのスラリーにゆっくり添加した。得られたスラリーを3時間熟成させた後、濾過、洗浄して、110℃で2時間乾燥した。粉砕ケーキ54.80gを水23.63gと混合し、1/8インチの押出成形物を形成した。
実施例6
【0033】
塩基性炭酸銅59.34g、アルミナ粉末6.25gと活性炭粉末6.30gの試料を、水500mLに加えて攪拌した。硫化ナトリウム水和物結晶63.51gの試料を、水200mLに加えて溶解した。次いでこの溶液を、最初のスラリーにゆっくり添加した。得られたスラリーを1時間熟成させた後、濾過、洗浄して、110℃で2時間乾燥した。粉砕ケーキ60.51gを水33.90gと混合し、1/8インチの押出成形物を形成した。
実施例7
【0034】
塩基性炭酸銅59.36g、アルミナ粉末6.25gとパーライト6.28gの試料を、水500mLに加えて攪拌した。次いで硫化水素ナトリウム溶液71.55gの試料を、最初のスラリーにゆっくり添加した。得られたスラリーを1時間熟成させた後、濾過、洗浄して、110℃で2時間乾燥した。粉砕ケーキ55.00gを水22.0gと混合し、1/8インチの押出成形物を形成した。
実施例8−試験法
【0035】
ラボスケールの水銀蒸気試験装置を使い、長期吸着物性能を評価した。試験試料は、窒素ガスを温度制御水銀蒸発セルを通して泡立たせて発生させた水銀蒸気であった。セルを通して窒素ガスを流す(1.5−2.0 L/分)ことにより、1,200から2,500ug/m水銀の濃度で水銀蒸気流を発生させた。別の窒素ガス流(0から20L/分)で希釈して、最終水銀濃度を調整することができた。
【0036】
吸着物試料を、−60メッシュ粉末または16−20メッシュ微粒として、6mm温度制御カラムに充填した。次に、異なるガス空間速度(GHSV)で、水銀蒸気をカラムに通して吸着させた。
カラム圧力を6バールに維持して、質量流通調整器を使ってガス後流を水銀蒸気モニター(水銀装置VM−3000)へ送り、水銀を分析して、そのデーターをRS−232を通して1から5分毎にコンピューターに保存した。各試料の水銀吸着容量を、水銀の1%及び10%ブレイクスルーが起こった時期に基づいて表にまとめた。
【表1】
【表2】
実施例9−NaSを介して20パーセントCuSを担持したパーライト
【0037】
塩基性炭酸銅11.90gの試料を、水250mLに加えて攪拌した。硫化ナトリウム水和物結晶13.50gの試料を、水400mLに加えて溶解した。2つの溶液を加えて、パーライト40.0gと沈澱させた。得られたスラリーを1時間熟成させた後、濾過、洗浄して、110℃で4時間乾燥した。試料を実施例8のようにして、試験を行った。ただし条件は、‐40メッシュ、30℃、100,000 GHSV。
実施例10−NaSを介して20パーセントCuSを担持したカーボン
【0038】
塩基性炭酸銅11.87gとカーボン40.00gの試料を、水500mLに加えて攪拌した。硫化ナトリウム水和物結晶13.30gの試料を、水100mLに加えて溶解した。次いでこの溶液を、最初の炭酸塩とカーボンのスラリーにゆっくり添加した。得られたスラリーを1時間熟成させた後、濾過、洗浄して、110℃で2時間乾燥した。試料を実施例8のようにして、試験を行った。ただし条件は、−40メッシュ、30℃、100,000 GHSV。
実施例11−NaHSを介して20%CuSを担持したパーライト
【0039】
塩基性炭酸銅11.87gの試料を、水250mLに加えて攪拌した。硫化水素ナトリウム溶液14.43gの試料を、水で希釈して400mLとした。2つの溶液を、パーライト40.0gと沈澱させた。得られたスラリーを1時間熟成させた後、濾過、洗浄して、110℃で4時間乾燥した。試料を実施例8のようにして、試験を行った。ただし条件は、−40メッシュ、30℃、100,000 GHSV。
実施例12−NaHSを介して20%CuSを担持したパーライト
【0040】
塩基性炭酸銅11.87gの試料を、水250mLに加えて攪拌した。硫化水素ナトリウム溶液14.43gの試料を、水で希釈して400mLとした。2つの溶液を、パーライト40.0gと沈澱させた。得られたスラリーを1時間熟成させた後、濾過、洗浄した。濾過物を、最初40℃で1時間、部分的に乾燥した後、150℃で5時間完全に乾燥した。試料を実施例8のようにして、試験を行った。ただし条件は、−40メッシュ、30℃、100,000 GHSV。
【表3】