特許第6293707号(P6293707)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6293707
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】アルコール、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 7/06 20060101AFI20180305BHJP
   C12C 11/00 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   C12P7/06
   C12C11/00
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-133770(P2015-133770)
(22)【出願日】2015年7月2日
(65)【公開番号】特開2017-12110(P2017-12110A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2016年3月2日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】397046386
【氏名又は名称】たかい食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 正純
(72)【発明者】
【氏名】高井 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】北村 友彦
(72)【発明者】
【氏名】阿部 津代志
【審査官】 川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2004/008836(WO,A1)
【文献】 特開昭60−054672(JP,A)
【文献】 特開昭53−072897(JP,A)
【文献】 特開昭54−037892(JP,A)
【文献】 特開2015−015920(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/005281(WO,A1)
【文献】 特開2015−084660(JP,A)
【文献】 Food Control, 2013, 32(2), pp.563-568 (Available online 31 January 2013)
【文献】 たかい食品株式会社,part:8 粉末米糖化物,弊社機能性米粉のご紹介,2013年 4月27日
【文献】 J. Cereal Sci., 2006, 43(1), pp.38-46
【文献】 Lebensm.-Wiss. u.-Technol., 1997, 30(1), pp.50-55
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 7/06
C12C 11/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機のシリンダー内で、大麦を圧縮混練し、前記大麦中の澱粉質のα-1、4結合を前記押出機により機械的に切断する工程であって、前記押出機は、上段シリンダーと、中段シリンダーと、下段シリンダーとからなる3段型タンデム押出機であり、上段シリンダー温度は100〜150℃、中段シリンダー温度は80〜100℃、下段シリンダー温度は40〜60℃である前記押出機により、前記上段シリンダー内、前記中段シリンダー内、前記下段シリンダー内の順に機械的に切断する工程と、前記下段シリンダー内に糖化酵素を添加して、澱粉質のα-1、4結合及び/又は澱粉質のα-1、6結合を切断することにより、糖化液を得る工程と、前記糖化液に酵母を加える工程と、を含むアルコールの製造方法。
【請求項2】
さらに、前記糖化液にホップを加える工程を含む、請求項1記載のアルコールの製造方法。
【請求項3】
前記大麦は、粉状又は粒状である請求項1又は2に記載のアルコールの製造方法。
【請求項4】
前処理として、前記大麦を加水する工程を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記糖化酵素は、β-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、又はトランスグルコシターゼから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米又は大麦を原料として作られる澱粉糖とアミノ酸含有物を利用したアルコール及び、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、デキストリン、マルトース、グルコースなどの澱粉糖製造方法として利用されているのは、酸を使用する方法、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、グルコアミラーゼなどの酵素を使用する方法である。
【0003】
しかしながら、これら製造方法は製造設備が非常に大掛かりなものとなり、設置スペースの問題が発生し、かつ大量の水、蒸気、電気を要するものであり、製造コストが非常に高いものとなっていた。更にこれら澱粉糖は原料に前もってタンパク質除去された澱粉を使用する事で、有意性のある栄養価に富んだアミノ酸を含まない形で提供されていた。
【0004】
一方、これら生産方法以外には平成17年3月11日、「米糖化液の製造法」など高圧下で加水分解を促進させる方法等が提案されている(特許文献1)。
【0005】
また、糖化液とは切り離して、一般に、日本酒、ビールを製造する際には原料穀物をアルファ化、液化、糖化させ、その後酒造用酵母を添加し、アルコール発酵を行い、その後、所定のアルコール濃度まで達した後に火入れ、濾過などを行い製品とする事が通常行われている。
【0006】
また、日本酒製造においては、高温糖化法(月桂冠:融米作り、宝酒造:焙焼作りなど)と呼ばれる製造方法で製造時間の短縮、原料費の圧縮を狙うものがある。
【0007】
また、ビール製造においては、速醸もとを利用した速醸造法などが利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003‐250485
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の通常行われてきた製造方法は製造設備が非常に大掛かりなものとなり、設置スペースの問題が発生し、かつ大量の水、蒸気、電気を要するものであり、また製品に仕上げるまでに約3か月から6か月を要し、製造コストが非常に高いものとなっていた。
【0010】
また、上述の日本酒製造において、依然として原料はアルファ化、または液化の段階までに反応が留まっており、別途、糖化に要する時間が必要であり、利用不可能な酒粕が発生したりなど、依然として製造に時間が掛かる事や廃棄物が発生し、結果、製造コストが高くなる問題があった。
【0011】
また、上述のビール製造においては、糖化液自体の製造自体の短縮を得るものではなく、あくまでもアルコール発酵のみを速やかに行うものであった。
【0012】
したがって、本発明は、米又は大麦から連続的に安価に糖化液を得て、短時間でアルコールを提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明者は、押出成形機について鋭意検討を行った結果、本発明を見出すに至った。
【0014】
すなわち、本発明のアルコールの製造方法は、押出機のシリンダー内で、大麦を圧縮混練し、前記大麦中の澱粉質のα-1、4結合を前記押出機により機械的に切断する工程であって、前記押出機は、上段シリンダーと、中段シリンダーと、下段シリンダーとからなる3段型タンデム押出機であり、上段シリンダー温度は100〜150℃、中段シリンダー温度は80〜100℃、下段シリンダー温度は40〜60℃である前記押出機により、前記上段シリンダー内、前記中段シリンダー内、前記下段シリンダー内の順に機械的に切断する工程と、前記下段シリンダー内に糖化酵素を添加して、澱粉質のα-1、4結合及び/又は澱粉質のα-1、6結合を切断することにより、糖化液を得る工程と、前記糖化液に酵母を加える工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明のアルコールの製造方法の好ましい実施態様において、さらに、前記糖化液にホップを加える工程を含むことを特徴とする。
【0016】
また、本発明のアルコールの製造方法の好ましい実施態様において、前記大麦は、粉状又は粒状であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明のアルコールの製造方法の好ましい実施態様において、前処理として、前記大麦を加水する工程を含むことを特徴とする。

【0018】
また、本発明のアルコールの製造方法の好ましい実施態様において、前記糖化酵素は、β-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、又はトランスグルコシターゼから選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明のアルコールの製造方法によれば、糖化液をアルコール発酵させ、より付加価値の高い酒造用途に使用し、ごく短期間に、かつ工程内で工業排水、酒粕などの廃棄物を発生させずに発酵酒を製造することが可能であるという有利な効果を奏するものである。
【0023】
また、本発明によれば、米と大麦と酵素と所蔵用酵母を原料としたアルコールとアミノ酸含有物を製造可能であるという有利な効果を奏する。さらに本発明によれば、押出機を利用し、α-アミラーゼを使用せずに、機械的に澱粉の1,4結合を切断し、選択的にβ-アミラーゼ、グルコアミラーゼをプロセス途中で添加し、マルトース、グルコースを連続製造することが可能であるという有利な効果を奏する。さらに、本発明によれば、得られた高濃度の糖化液に酒造用酵母を添加し、アルコールを短時間に生産することができるという有利な効果を奏する。
【0024】
本発明によれば、従来、製造に膨大な時間を要した日本酒、ビールなどの発酵酒製造の短縮化、また製造コスト削減に寄与することができるという有利な効果を奏する。また、本発明によれば、アミノ酸を含む旨みを有する純米酒を提供することができるほかに、精製された米澱粉等を原料とした場合、アミノ酸を含まない、安価な吟醸酒を製造する事が可能であり、また脱皮済の大麦など使用した場合は明度が高く、軽い味のビールを製造する事が可能であるという有利な効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
すなわち、本発明のアルコールの製造方法は、押出機のシリンダー内で、米又は大麦を圧縮混練し、前記米又は大麦中の澱粉質のα-1、4結合を前記押出機により機械的に切断する工程と、前記シリンダー内に糖化酵素を添加して、澱粉質のα-1、4結合(前工程等で切断しきれなかったα-1、4結合も含む。)及び/又は澱粉質のα-1、6結合を切断することにより、糖化液を得る工程と、前記糖化液に酵母を加える工程と、を含むことを特徴とする。本発明で用いられる米又は大麦は、特に限定されるものではない。また、米は、米粒又は米粒でもよく、大麦は、大麦粉又は大麦粒でもよい。例えば、米粉又は米粒として、うるち米、もち米等を原料とする米粉又は米粒を用いることができる。米粒としては、精白米、玄米、屑米、古米などを挙げる。
【0026】
また、一般に、米粉は、うるち米、もち米を問わず、粳米、糯米の生米を精米し粉砕、粉末化したもので、粉砕する前の生米としては、精白米、玄米、屑米、古米などを挙げることができるが、特に制限されることなく、本発明の組成物等に米粉として用いることができる。
【0027】
大麦に関して、穂の形状の違いから、二条大麦、四条大麦、六条大麦、裸麦、野生オオムギ等を挙げることができるが、本発明に適用可能な大麦は特に限定されるものではない。
【0028】
前記米粉、又は前記大麦粉の製粉方法は、胴搗き製粉、ロール製粉、石臼製粉、気流粉砕製粉、ピンミル製粉のいずれの方法も用いることができる。
【0029】
また、本発明の好ましい実施態様において、前記米粉、又は大麦粉の粒度としては、米粒、大麦粒でも糖化可能であるので、粒径の上限については特に限定されない。例えば、一般的な篩(メッシュ)の規格である、3.5メッシュから635メッシュを使用することができる。なお3.5メッシュは約5.6mm、635メッシュは約20μmとなる。なお、平均粒度の測定方法については、米粉業界等で通例で行う「メッシュパス」でおおよその粒子径を測定する方法によるものである。具体的には、ザル状の篩を使用し刷毛でこすり、何メッシュの金網を通ったものが、結果的に何μmであるかによって定めることができる。したがって、より正確には、平均粒度としては、最低150メッシュパス、最高330メッシュパスの平均粒度が30〜80μmとすることができる。
【0030】
また、本発明のアルコールの製造方法の好ましい実施態様において、さらに、前記糖化液にホップを加える工程を含むことを特徴とする。ホップは、アルコールのうち、主にビールを製造する場合に、ビールに苦味を与え、また腐敗を防ぐ等の観点から用いられる。
【0031】
また、本発明のアルコールの製造方法の好ましい実施態様において、前処理として、前記米又は大麦を加水する工程を含むことを特徴とする。本発明で用いられる米は米粒、米粉共に使用可能であり、大麦も大麦粒、大麦粉共に使用可能であるが、シリンダー内での流動性確保という観点から、前処理として、これら原料に対し20〜70%の加水を行う事が好ましい。米の場合、水分の分散を効率よく行うためには、平均粒度が30〜350μm程度の米粉を使用する事が特に好ましい。また、大麦の場合、水分の分散を効率よく行うためには、平均粒度が30〜350μm程度の大麦粉を使用する事が特に好ましい。
【0032】
また、本発明において、酵素を用いた場合以下の利点を有する。すなわち、種々の酵素を選択的に使用する事で、マルトトリオース、イソマルトオリゴ糖などの連続生産を行う事ができる。
【0033】
また、本発明のアルコールの製造方法の好ましい実施態様において、前記糖化酵素は、β-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、又はトランスグルコシターゼから選択される少なくとも1種であることを特徴とする。例えば、本発明で用いられる酵素として、マルトース主成分の糖化液を得たい場合には、β-アミラーゼのみ使用することが可能であり、また、グルコース主成分の糖化液を得たい場合にはグルコアミラーゼのみ使用する事が可能である。
【0034】
また、本発明のアルコールの製造方法の好ましい実施態様において、前記押出機は、タンデム型押出機であることを特徴とする。すなわち、本発明において、タンデム型多段押出機と使用酵素を選択的に使用する事が可能である。本発明に使用することが可能なタンデム型多段押出機は、2段から5段までのシリンダー構成が好ましく、混練の均一性、自由度という観点から、各段に存在するスクリュー本数は1〜8本が望ましい。タンデム型押出機は2段以上のシリンダー構成が望ましいが、量産性、メンテナンスの簡易さから、2段から3段の構成が特に好ましい。
【0035】
また、本発明のアルコールの製造方法の好ましい実施態様において、前記タンデム型押出機は、前記タンデム型押出機は、量産性、メンテナンスの簡易さという観点から、前記タンデム型押出機は、上段シリンダーと、下段シリンダーとからなる2段型、又は上段シリンダーと、中段シリンダーと、下段シリンダーとからなる3段型であり、酵素失活を避け、ダイス部での製品焼けを防止するという観点から、シリンダー温度は、上段から下段へ行くに従い、低下することを特徴とする。また各シリンダー内のスクリュー構成は単軸、2軸が望ましく、量産性、メンテナンスの簡易さから2軸が特に好ましい。前記タンデム型押出機は正確な酵素添加を行う為に、酵素液、または酵素を各段接合部にフィードできる機構を持つ事が望ましい。
【0036】
本発明において、マルトース主成分混合物製造の場合、3段タンデム型押出機を利用し、α-1,4結合を有効に切断するという観点から上段シリンダー温度100〜150℃、製品を冷却するという観点から中段シリンダー温度80〜100℃、酵素失活を避けるという観点から下段シリンダー温度40〜60℃とし、中段真空室を利用し、そこからβ‐アミラーゼ1〜5%溶液を対固形に対し0.5〜1.0%滴下する事が望ましい。
【0037】
また、グルコース主成分混合物製造の場合、3段タンデム型押出機を利用し、α-1,4結合を有効に切断するという観点から上段シリンダー温度100〜150℃、製品を冷却するという観点から中段シリンダー温度80〜100℃、酵素失活を避けるという観点から下段シリンダー温度40〜60℃とし、中段真空室を利用し、そこからグルコアミラーゼ1〜5%溶液を対固形に対し0.5〜1.0%滴下する事が望ましい。このように得られたマルトース主成分の糖化液はビール製造に、またグルコース主成分の糖化液は日本酒製造用に使用する事が望ましい。
【0038】
これら糖化液に加水し希釈し、使用する事も可能だが、プロセスの短縮化を狙う為に、
前もって原料に所定の加水を行う事が望ましい。
【0039】
このようにして得られた糖化液にホップ、その他香りづけの他原料を添加し、発酵を行う事も可能であり、このようにして得られたビール、日本酒共に従来にない香りを賦与する事も可能である。
【0040】
また、本発明のアルコールは、本発明のアルコールの製造方法により得られたことを特徴とする。本発明のアルコールの製造方法については、上述の説明をそのまま参照することができる。本発明によれば、アミノ酸由来の旨みを有する特有のアルコールを提供することができる。また、アミノ酸を除去すれば、例えば、精製された米澱粉等を原料とした場合、アミノ酸を含まない、安価な吟醸酒を製造する事が可能である。
【実施例】
【0041】
ここで、本発明の実施例を説明するが、本発明は、下記の実施例に限定して解釈されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であることは言うまでもない。
【0042】
実施例1
まず、澱粉糖とアミノ酸混合物の製造において、原料として米粉を用いて、試験を行った。米由来のアミノ酸含有糖化物組成物の製造には、タンデム型多段押出機を使用した。
【0043】
まず、グルコース主成分のアミノ酸含有糖化物組成物の製造を試みた。グルコース主成分混合物製造の場合、3段タンデム型押出機を利用し、上段シリンダー温度100〜150℃に設定し、中段シリンダー温度80〜100℃に設定し、下段シリンダー温度40〜60℃に設定した。中段真空室を利用し、そこからβ‐アミラーゼ1〜5%溶液を対固形に対し0.5〜1.0%滴下した。これらの工程は、1時間足らずで終了し、目的のアミノ酸含有糖化物組成物を短時間で得ることができた。
【0044】
得られた組成物の糖組成データを表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
この結果、グルコアミラーゼを使用した場合、通常、流通している米糖化液である米飴と比較して、甘味度が高い事が推察される。また、単糖、2糖の量も、3糖以上の糖と比較すると、非常に高いことも分かる。
【0047】
実施例2
次に、マルトース主成分のアミノ酸含有糖化物組成物の製造を試みた。澱粉糖とアミノ酸混合物の製造において、原料として米粉を用いて、試験を行った。米由来のアミノ酸含有糖化物組成物の製造には、タンデム型多段押出機を使用した。マルトース主成分混合物製造の場合、3段タンデム型押出機を利用し、上段シリンダー温度100〜150℃に設定し、中段シリンダー温度80〜100℃に設定し、下段シリンダー温度40〜60℃に設定した。中段真空室を利用し、そこからβ‐アミラーゼ1〜5%溶液を対固形に対し0.5〜1.0%滴下した。これらの工程は、1時間足らずで終了し、目的のアミノ酸含有糖化物組成物を短時間で得ることができた。得られた糖組成データの結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
この結果、β-アミラーゼを使用して製造した本発明のアミノ酸含有糖化物組成物は、通常、流通している米糖化液である米飴と比較して、マルトース比率が高いことが判明した。また、単糖、2糖の量も、3糖以上の糖と比較すると、非常に高いことも分かる。
【0050】
実施例3
次に、上述の実施例と同様の手順に従って、大麦を使用して、β-アミラーゼ処理を行った場合の、一実施態様におけるアミノ酸含有糖化物組成物の糖組成を分析した。その結果を表3に示す。
【0051】
【表3】
【0052】
この結果、本発明のアミノ酸含有糖化物組成物は、通常、流通している米糖化液である米飴と比較して、マルトース比率が低いことが判明した。また、3糖以上の糖と比較すると、非常に高いことも分かる。
実施例4
<日本酒製造>
手順1:上述のように得られた、Brix45のグルコースを主体とする糖化液2,000gに対し水1,000g加水し、品温30℃になるよう加熱撹拌する。手順2:次いで、1で得られた液にイースト5gを入れ撹拌する。手順3:次いで、2で得られた液を30℃に維持し、アルコール発酵を進める。このようにして得られた日本酒のアルコール度数の結果を表3に示す。
【0053】
【表4】
【0054】
その結果、一般的な日本酒のアルコール度数15%に値するサンプルを120時間で得る事が出来た。なお日本酒製造において、このアルコール度数までにする為には、通常約60日ほど必要とされ、大幅な時間短縮となった。
【0055】
実施例5
<ビール製造>
大麦としては、六条大麦を使用した。六条大麦の粉から製造した糖液を使用した。
手順1:上述のようにして得られた、Brix35のマルトースを主体とする糖化液4,000gに対し水7,500gをザーツホップ8gと合わせ加水し、これを沸騰させた後、カスケードホップを4g投入し、10分極弱火で煮る。手順2:次いで、手順1で得られた液を28℃まで温度を下げた後、ビール酵母を9.5g入れ、撹拌後、品温20℃でアルコール発酵を進める。このようにして得られたビールのアルコール度数の結果を表3に示す。
【0056】
【表5】
その結果、一般的なドライビールのアルコール度数5%に値するサンプルを72時間〜96時間で得る事が出来た。なおドライビール製造において、このアルコール度数までにする為には、通常10日程度必要とされ、大幅な時間短縮が可能となった。
【0057】
なお、上述のように得られたアルコールを遠心分離、またはフィルタープレスなどの濾過を行い、清澄性の高いアルコール液を効率的に得る事ができるので、清澄性の高いアルコールを得たい場合には、ろ過等を利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
近年、米粉及び米粒等の有効利用が重要な課題となっており、また、本技術によれば、環境負荷が少なく、広範な分野において応用可能である。