(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記仮想垂線に対して傾斜している前記摩擦面が円弧であり、その中心は、前記環状コアの中心軸線に直交する断面において、前記環状コアの径方向について前記結合面の径方向の端部にまたは前記結合面の径方向の端部よりも前記連結凸部および前記連結凹部から離れた場所に、かつ、前記環状コアの周方向について前記結合面にまたは前記結合面よりも前記連結凸部および前記連結凹部から離れた場所に位置している、請求項1または2に記載の電機子。
円弧形状の前記摩擦面は、一対の前記摩擦面のうちの内径側に位置しており、その中心は、前記環状コアの中心軸線に直交する断面において、前記環状コアの径方向について前記結合面の外径方向の端部よりも外方、かつ、前記環状コアの周方向について前記結合面よりも連結凸部および前記連結凹部から離れた場所、に位置している、請求項5に記載の電機子。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、分割コアの周方向の両端面は、結合面とされている。分割コアが環状に連結された状態で、隣り合う分割コアの結合面同士が接している。特許文献2や特許文献3には、分割コアの結合面に膨出部やくびれ部、突出部を設け、これらを弾性的に嵌め合わせることで分割コア同士の連結強度を高めることが記載されている。
【0006】
本発明者らは、上記工程(1)〜(5)を経て製造される電機子において、求められる分割コア同士の連結強度について検討した。
工程(2)や(3)においては、金型装置から排出されるときに作用する外力や、中間体を搬送する場合や検査するときに作用する外力によっても、分割コアが互いに分離しない程度の連結強度が求められる。このため、連結強度が高いことが好ましい。
【0007】
しかし、工程(4)においては、分割コアを互いに分離する必要があるため、連結強度が高すぎると作業性が低下してしまう。このように、本発明者は、必ずしも連結強度を高めるだけでは、電機子の製造効率を高めることができないことに気が付いた。
【0008】
そこで本発明は、製造効率の高められた電機子および電機子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる電機子は、
電動機または発電機の電機子であって、
互いに連結されて環状コアを構成する複数の分割コアと、
各々の前記分割コアに巻回された巻線と、を備え、
各々の前記分割コアの周方向のそれぞれの端部に位置する結合面に、隣り合う前記分割コアを連結する連結凸部および連結凹部が設けられ、
前記環状コアの中心軸線に直交する断面において、
前記連結凸部および前記連結凹部は、前記結合面から離れるにしたがって幅狭となる、互いに相補的な形状であり、
前記連結凸部および前記連結凹部はそれぞれ、前記結合面から離れる方向へ延びる一対の摩擦面を有し、
前記連結凸部の一対の前記摩擦面の少なくとも一方は、前記連結凸部の一対の前記摩擦面の基部を結んだ線分に直交する仮想垂線に対して傾斜しており、
前記連結凹部の一対の前記摩擦面の少なくとも一方は、前記連結凹部の一対の前記摩擦面の基部を結んだ線分に直交する仮想垂線に対して傾斜している。
【0010】
本発明にかかる電機子によれば、連結凸部および連結凹部は、結合面から離れるにしたがって幅狭の相補的な形状であり、摩擦面の少なくとも一方が仮想垂線に対して傾斜しているので、特定の方向に分割コアを移動させなければ、分割コア同士が分離しない。また、摩擦面同士の摩擦力により十分な連結強度が得られている。このため、金型装置からの排出時、搬送中、検査中などに意図しない外力が加わっても、分割コア同士が分離しにくい。
また、本発明にかかる電機子によれば、連結凸部および連結凹部は、結合面から離れるにしたがって幅狭の相補的な形状であり、摩擦面の少なくとも一方が仮想垂線に対して傾斜しているので、特定の方向に分割コアを移動させれば、互いに干渉することなく、分割コア同士を分離させやすい。分割コア同士を分離させる場合と逆方向に分割コアを移動させれば、分割コア同士を連結して環状コアを組み立てやすい。しかも、連結凸部および連結凹部の仮想垂線に対して傾斜した摩擦面同士が噛み合うことによって分割コアの連結状態を維持するのではなく、摩擦面で生じる摩擦力によって分割コアの連結状態を維持するので、分割コアを分離しやすく、かつ、環状コアを組み立てやすい。
このように、本発明にかかる電機子によれば、分割コア同士の連結状態を維持しやすく、かつ、分割コアの分離および環状コアの組み立てが容易である。
【0011】
本発明にかかる電機子において、
前記連結凸部の一対の前記摩擦面の一方は、前記連結凸部の一対の前記摩擦面の基部を結んだ線分に直交する仮想垂線に対して傾斜しており、
前記連結凸部の一対の前記摩擦面の他方は、前記仮想垂線に平行であり、
前記連結凹部の一対の前記摩擦面の一方は、前記仮想垂線に対して傾斜しており、
前記連結凹部の一対の前記摩擦面の他方は、前記仮想垂線に平行である。
【0012】
本発明にかかる電機子によれば、連結凸部または連結凹部の一対の摩擦面のうち、一方の摩擦面に沿って分割コアを移動させることで連結凹部と連結凸部との連結を解除することができるが、他方の摩擦面に沿っては摩擦面同士の干渉や摩擦面同士の摩擦力の作用によって移動が抑制される。したがって、分割コアが解除される方向が特定されるので、分割コア同士の連結状態を維持しやすい。
【0013】
本発明にかかる電機子において、前記仮想垂線に対して傾斜している前記摩擦面は、前記連結凸部または前記連結凹部の前記結合面から離れるにつれて、前記環状コアの外径側または内径側に向かうように、傾斜している。
【0014】
本発明にかかる電機子によれば、仮想垂線に対して傾斜している摩擦面が環状コアの外径側に向かって傾斜している場合には、環状コアの外周面より外方に位置する回転中心回りに分割コアを回転させることにより、分割コア同士を分離しやすい。
また、仮想垂線に対して傾斜している摩擦面が環状コアの内径側に向かって傾斜している場合には、環状コアの内周面より内方に位置する回転中心回りに分割コアを回転させることにより、分割コア同士を分離しやすい。
【0015】
本発明にかかる電機子において、前記仮想垂線に対して傾斜している前記摩擦面が平面で構成されている。
【0016】
本発明にかかる電機子によれば、摩擦面の加工がしやすく、低コストかつ高精度で摩擦面を形成できる。
【0017】
本発明にかかる電機子において、前記仮想垂線に対して傾斜している前記摩擦面が曲面で構成されている。
【0018】
本発明にかかる電機子によれば、分割コアを回転させて分割コア同士を分離するときに、分割コア同士が干渉しにくい。
【0019】
本発明にかかる電機子において、前記仮想垂線に対して傾斜している前記摩擦面が円弧であり、その中心は、前記環状コアの中心軸線に直交する断面において、前記環状コアの径方向について前記結合面の径方向の端部にまたは前記結合面の径方向の端部よりも前記連結凸部および前記連結凹部から離れた場所に、かつ、前記環状コアの周方向について前記結合面にまたは前記結合面よりも前記連結凸部および前記連結凹部から離れた場所に位置している。
【0020】
環状コアに重なる位置に円弧の中心が位置してしまうと、分割コアを回転させて分離させるときに互いに干渉する恐れがある。しかし、本発明にかかる電機子によれば、環状コアから外れた場所に円弧の中心が位置すれば、分割コアを回転させたときに互いが干渉せず、分割コア同士を分離させやすい。
【0021】
本発明にかかる電機子において、円弧形状の前記摩擦面は、一対の前記摩擦面のうちの内径側に位置しており、その中心は、前記環状コアの中心軸線に直交する断面において、前記環状コアの径方向について前記結合面の外径方向の端部よりも外方、かつ、前記環状コアの周方向について前記結合面よりも連結凸部および前記連結凹部から離れた場所、に位置している。
【0022】
本発明にかかる電機子によれば、環状コアの外径側には大きな作業スペースがあるので、分割コアを分離するときの作業性がよい。
【0023】
本発明にかかる電機子の製造方法は、
互いに連結されて環状コアを構成する複数の分割コアを有する、電動機または発電機の電機子の製造方法であって、
金型装置内で、前記分割コアの周方向の各々の端部に位置する結合面に設けられた連結凸部および連結凹部が、隣り合う前記分割コアの前記連結凹部および前記連結凸部に連結されて、前記分割コアが環状に連結された環状の第一中間体を得る工程と、
前記第一中間体を前記金型装置から取り出す工程と、
前記第一中間体から、隣り合う前記分割コアの前記連結凸部を前記連結凹部から離脱させて、前記分割コアを互いに分離する工程と、
互いに分離された前記分割コアのそれぞれに巻線を巻き付ける工程と、
前記分割コアの前記連結凸部を隣り合う前記分割コアの前記連結凹部に挿入して前記分割コアを連結し、前記環状コアを得る工程と、を有し、
前記環状コアの中心軸線に直交する断面において、
前記連結凸部および前記連結凹部は、前記結合面から離れるにしたがって幅狭となる、互いに相補的な形状であり、
前記連結凸部および前記連結凹部はそれぞれ、前記結合面から離れる方向へ延びる一対の摩擦面を有し、
前記連結凸部の一対の前記摩擦面の少なくとも一方は、前記連結凸部の一対の前記摩擦面の基部を結んだ線分に直交する仮想垂線に対して傾斜しており、
前記連結凹部の一対の前記摩擦面の少なくとも一方は、前記連結凹部の一対の前記摩擦面の基部を結んだ線分に直交する仮想垂線に対して傾斜している。
【0024】
本発明にかかる電機子の製造方法によれば、分割コアは、連結凸部および連結凹部が、結合面から離れるにしたがって幅狭の相補的な形状であり、摩擦面の少なくとも一方が仮想垂線に対して傾斜しているので、特定の方向に分割コアを移動させなければ、分割コア同士が分離しづらい。また、分割コアは、連結凸部および連結凹部が、結合面から離れるにしたがって幅狭の相補的な形状であり、摩擦面の少なくとも一方が仮想垂線に対して傾斜しているので、特定の方向に沿って移動させれば、互いに干渉することなく、容易に分離させることができ、また、分離させる場合と逆方向に移動させれば、容易に組み立てることができる。
したがって、金型装置からの取り出し時に意図しない外力が加わっても分割コアが互いに分離しにくく、しかも、所定の方向へ移動させることで容易に分割コアを分離および結合させることができるので、電機子の製造効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、製造効率の高められた電機子および電機子の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明にかかる電機子および電機子の製造方法の実施の形態の例を、図面を参照して説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0028】
図1は、本発明の実施形態にかかる電機子1を示す平面図である。
図1に示すように、本実施形態にかかる電機子1は、環状コア2を有している。電機子1は、ロータ(図示略)とともに電動機または発電機を構成する。電機子1は、環状コア2の他に、環状コア2を収容するハウジング等を含んでいてもよい。環状コア2は、複数の分割コア11を有している。複数の分割コア11は、互いに連結されて環状コア2を構成している。各々の分割コア11には、巻線5が巻回されている。
【0029】
図2は、分割コア11の斜視図である。
図2に示すように、分割コア11は、複数枚の分割鉄心片16を積層し、互いをかしめることで形成されている。分割鉄心片16は、例えば、電磁鋼板を打ち抜いて形成することができる。図示した分割鉄心片16は、平面視で略T字状の板状部材である。
【0030】
分割鉄心片16は、裏面に突出し表面が凹んだかしめ部17を有している。
図2の左下部に断面模式図で示したように、分割鉄心片16の厚み方向(
図2において上下方向)に別の分割鉄心片16を積層させてかしめると、下側に位置する分割鉄心片16のかしめ部17が、上側に位置する分割鉄心片16のかしめ部17に嵌合し、互いが固定される。なお、最下層の分割鉄心片16は、上側に位置する分割鉄心片16のかしめ部17に対応する位置に貫通孔17’を有しており、該貫通孔17’に上側に位置する分割鉄心片16のかしめ部17が嵌合している。
【0031】
分割鉄心片16は、平面視略円弧状の頭部16aと、頭部16aから円弧の中心に向かって延びる軸部16bと、軸部16
bの端部に設けられた脚部16cとを一体的に有している。
【0032】
分割コア11は、平面視略円弧状のヨーク部12と、円弧の中心に向かって延びるティース部13と、ティース部13の先端に設けられた極歯15とを一体的に有している。巻線5は、ティース部13に巻回されている。
積層された複数枚の分割鉄心片16の頭部16aがヨーク部12を形成している。積層された複数枚の分割鉄心片16の軸部16bがティース部13を形成している。積層された複数枚の分割鉄心片16の脚部16cが極歯15を形成している。各々の分割コア11のヨーク部12同士が互いに結合して環状コア2を形成している。
【0033】
図3は、分割コア11の連結箇所の拡大平面図である。
図3に示すように、円弧状のヨーク部12の周方向の端面が、結合面21,31とされている。分割コア11aの結合面21に連結凸部22が設けられ、分割コア11aに隣り合う分割コア11bの結合面31に連結凹部32が設けられている。
図3は、環状コア2の中心軸線C(
図1参照)に直交する断面における分割コア11の連結箇所を示している。この
図3の断面において、連結凸部22および連結凹部32は、結合面21,31から離れるにしたがって幅狭となる、互いに相補的な形状とされている。
ここで、
図3の断面において連結凸部22が結合面21,31から離れるにしたがって幅狭となる形状とは、
図3の断面において結合面21から外方に向かって突出する部位が先細りとなっている形状を言う。
図3の断面において連結凹部32が結合面31から離れるにしたがって幅狭となる形状とは、
図3の断面において結合面31から内方に向かって凹んだ部位が先細りとなっている形状を言う。
【0034】
連結凸部22は、結合面21から離れる方向へ延びる一対の摩擦面23,24を有している。以降の説明において、環状コア2の中心軸線Cに近い摩擦面を第一内方摩擦面23、環状コア2の中心軸線Cから遠い摩擦面を第一外方摩擦面24と呼ぶ。突面25により、これら第一内方摩擦面23の先端と第一外方摩擦面24の先端とが接続されている。
【0035】
連結凹部32は、結合面31から離れる方向へ延びる一対の摩擦面33,34を有している。以降の説明において、環状コア2の中心軸線Cに近い摩擦面を第二内方摩擦面33、環状コア2の中心軸線Cから遠い摩擦面を第二外方摩擦面34と呼ぶ。底面35により、これら第二内方摩擦面33の基端と第二外方摩擦面34の基端とが接続されている。
【0036】
本実施形態において、第一内方摩擦面23、第一外方摩擦面24、第二内方摩擦面33、第二外方摩擦面34のいずれもが平面で構成されている。
結合面21と第一内方摩擦面23とは滑らかな円弧で接続され、結合面21と第一外方摩擦面24とは滑らかな円弧で接続されている。突面25と第一内方摩擦面23とは滑らかな円弧で接続され、突面25と第一外方摩擦面24とは滑らかな円弧で接続されている。
同様に、結合面31と第二内方摩擦面33とは滑らかな円弧で接続され、結合面31と第二外方摩擦面34とは滑らかな円弧で接続されている。底面35と第二内方摩擦面33とは滑らかな円弧で接続され、底面35と第二外方摩擦面34とは滑らかな円弧で接続されている。
本実施形態でいう摩擦面23,24,33,34とは、いずれも円弧状の部位を除いた平面状の部位である。
【0037】
図3において、第一内方摩擦面23の基部を通り、かつ、第一内方摩擦面23の基部と第一外方摩擦面24の基部からなる一対の摩擦面23,24の基部を結んだ線分に直交する直線を、第一仮想垂線PL1と定義する。
また、第一外方摩擦面24の基部を通り、かつ、第一内方摩擦面23の基部と第一外方摩擦面24の基部からなる一対の摩擦面23,24の基部を結んだ線分に直交する直線を、第二仮想垂線PL2と定義する。第二仮想垂線PL2は第一仮想垂線PL1と平行である。
【0038】
第一内方摩擦面23は、第一仮想垂線PL1に対して傾斜している。第一外方摩擦面24は、第二仮想垂線PL2と平行である。なお、
図3中の直線Lは、第一内方摩擦面23および第二内方摩擦面33に沿った直線である。
【0039】
第二内方摩擦面33は、第一仮想垂線PL1に対して傾斜している。第二内方摩擦面33が第一仮想垂線PL1に対してなす傾斜角θは、第一内方摩擦面23が第一仮想垂線PL1に対してなす傾斜角と略等しく設定されている。
また、第二外方摩擦面34は、第二仮想垂線PL2と平行である。
【0040】
第一内方摩擦面23は、連結凸部22の結合面21から離れるにつれて、環状コア2の外径側に向かうように傾斜している。また、第二内方摩擦面33は、連結凹部32の結合面31から離れるにつれて、環状コア2の外径側に向かうように傾斜している。
【0041】
次に、上記構成の電機子1の製造方法を説明する。
(中間体作製工程)
図4は、環状の中間体2Aの上面図である。
まず、
図4に示したような環状の中間体2Aを作製する。
分割鉄心片16を環状に並べた状態で板材から打抜き、まず1層の分割鉄心片16からなる環状の薄い中間体を形成する。隣接する分割鉄心片16は、予め金型内にて、頭部16aの円周方向端部を打抜き等で切断して分離され、その後に再度押し戻すことで、互いに結合した状態となっている。次に、この環状に並べられた分割鉄心片16の上に更に分割鉄心片16を重ねて配置し、下に配置された分割鉄心片16と上に配置された分割鉄心片16とをかしめる。この作業を必要な厚みが得られるまで繰り返し、
図4に示す環状の中間体2Aを得る。これらの作業は、金型装置の内部で行われる。
このようにして得られた中間体2Aにおいて、連結凸部22と連結凹部32とにより、分割コア11同士が互いに連結されている。なお、
図2は、製造途中の単一の分割コア11を取り出してその様子を示したものであり、金型装置の内部では
図2に示した複数の分割コア11が環状に連結されている。
【0042】
(中間体取り出し工程)
次に、第一中間体2Aを金型装置から取り出す。金型装置に第一中間体2Aを排出させることにより、第一中間体2Aを取り出す。第一中間体2Aを取り出したら、必要に応じて、寸法検査などの各種検査や熱処理などの各種処理を施す。
【0043】
(分割コア分離工程)
図5は、分割コア11の分離工程を示す図である。
図5に示すように、中間体2Aを構成する分割コア11同士を互いに分離させる。具体的には、環状の中間体2Aから、分割コア11aの連結凸部22を隣り合う分割コア11bの連結凹部32から離脱させて、それぞれの分割コア11を分離する。
【0044】
図3で示したように、連結凸部22および連結凹部32は、結合面21,31から離れるにしたがって幅狭の相補的な形状である。このため、分割コア11a,11b同士が連結された状態において、分割コア11a,11b同士は、連結凸部22および連結凹部32の噛み合いによってその連結状態が維持されているのではない。すなわち、第一内方摩擦面23と第二内方摩擦面33の噛み合い、および、第一外方摩擦面24と第二外方摩擦面34の噛み合いによってその連結状態が維持されているのではない。分割コア11a,11b同士は、第一内方摩擦面23と第二内方摩擦面33との間に作用する摩擦力、および、第一外方摩擦面24と第二外方摩擦面34との間に作用する摩擦力によって、その連結状態が維持されている。
【0045】
図3の連結状態から、
図5のように分割コア11a,11b同士を分離するためには、第一内方摩擦面23と第二内方摩擦面33、および、第一外方摩擦面24と第二外方摩擦面34とを離間させて摩擦力が生じないようにすればよい。本実施形態において、第一内方摩擦面23および第二内方摩擦面33は第一仮想垂線PL1に対して傾斜している。
したがって、
図5に示すように、一方の分割コア11aを矢印A方向に回転させると、第一内方摩擦面23と第二内方摩擦面33とが干渉せず、かつ、第一外方摩擦面24と第二外方摩擦面34とが干渉しない。このような操作により、第一内方摩擦面23と第二内方摩擦面33との干渉および第二内方摩擦面24と第二外方摩擦面34との干渉を生じさせることなく、第一内方摩擦面23と第二内方摩擦面33とを分離させ、かつ、第一外方摩擦面24と第二外方摩擦面34とを分離させ、容易に分割コア11a,11b同士を分離できる。
【0046】
また、本実施形態において、連結凸部22の第一内方摩擦面23は、第一仮想垂線PL1に対して傾斜しており、連結凸部22の第一外方摩擦面24は、第二仮想垂線PL2に平行である。連結凹部32の第二内方摩擦面33は、第一仮想垂線PL1に対して傾斜しており、連結凹部32の第二外方摩擦面34は、第一仮想垂線PL1および第二仮想垂線PL2に平行である。
【0047】
このため、本実施形態においては、第一内方摩擦面23および第二内方摩擦面24に沿って分割コア11aを移動させることで連結凸部22と連結凹部32との連結を解除することができる。しかし、第一外方摩擦面24および第二外方摩擦面34に沿って分割コア11aを移動させようとしても、該移動は分割コア11a,11b同士の干渉や摩擦面23,33同士あるいは摩擦面24,34同士の摩擦力の作用によって移動が抑制される。つまり、分割コア11a,11bの連結状態が解除される方向が特定されているので、分割コア同士の連結状態を維持しやすい。
【0048】
また、本実施形態においては、第一内方摩擦面23と第二内方摩擦面33が環状コア2の外径側に向かって傾斜しているので、回転中心を環状コア2の外周面より外方に位置に設定し、この回転中心回りに分割コア11を回転させることにより、分割コア11同士を分離しやすい。
【0049】
(巻線巻回工程)
図6は、分割コア11に巻線5を巻回する工程を示す図である。
図6に示すように、互いに分離させた分割コア11のそれぞれのティース部13に、巻線5を巻回する。分割コア11同士がそれぞれ分離されているため、巻線5をそれぞれのティース部13に巻き付けやすい。
【0050】
(環状コア組立工程)
図7は、分割コア11を互いに連結させて環状コア2を組み立てる工程を示す図である。
図7に示すように、ティース部13に巻線5が巻回された分割コア11同士を環状に連結し、環状コア2(
図1参照)を得る。
【0051】
図7に示すように、一方の分割コア11aを矢印B方向へ回転させて、分割コア11a,11b同士を連結する。この矢印B方向は、
図5で示した矢印A方向の逆の方向である。
【0052】
このとき、連結凸部22および連結凹部32は、結合面21,31から離れるにしたがって幅狭とされ、連結凸部22と連結凹部32の摩擦面23,24,33,34は互いに噛み合う部分がなく互いに干渉しないので、連結凸部22を連結凹部32に挿入しやすく、分割コア11同士を連結させやすい。
【0053】
以上、説明したように、本実施形態にかかる電機子1およびその製造方法によれば、連結凸部22および連結凹部32は、結合面21,31から離れるにしたがって幅狭の相補的な形状であり、第一内方摩擦面23および第二内方摩擦面33が第一仮想垂線PL1に対して傾斜している。このため、上述した矢印A方向など、第一内方摩擦面23と第二内方摩擦面33との干渉および第一外方摩擦面24と第二外方摩擦面34との干渉が生じない特定の方向に分割コア11を移動させなければ、分割コア11同士が分離しにくい。
また、第一内方摩擦面23と第二内方摩擦面33との間に作用する摩擦力、および、第一外方摩擦面24と第二外方摩擦面34との間に作用する摩擦力により十分な連結強度が得られている。
このため、第一中間体2Aを金型装置から取り出す際、取り出し後における搬送中、各種検査中あるいは各種処理中などに意図しない外力が加わっても、分割コア11同士が分離しにくい。
【0054】
また、本実施形態においては、分割コア11aを矢印A方向に回転させると分割コア11a,11bを容易に分離できるが、他の方向へ分割コア11を動かそうとしても、第一内方摩擦面23と第二内方摩擦面33との干渉や第一外方摩擦面24と第二外方摩擦面34との干渉によって分割コア11の移動が抑制されている。つまり、連結凹部32と連結凸部22との連結状態が解除される方向が特定されているので、意図しない外力が作用しても、分割コア11同士の連結状態を維持しやすい。
【0055】
また、本実施形態にかかる電機子1およびその製造方法によれば、連結凸部22および連結凹部32は、結合面21,31から離れるにしたがって幅狭の相補的な形状であり、第一内方摩擦面23および第二内方摩擦面33が第一仮想垂線PL1に対して傾斜している。
このため、第一内方摩擦面23および第二内方摩擦面33の噛み合いによって分割コア11の連結状態が維持されているのではなく、第一内方摩擦面23と第二内方摩擦面33との間に作用する摩擦力と第一外方摩擦面24と第二外方摩擦面33との間に作用する摩擦力によって分割コア11の連結状態が維持されている。
したがって、例えば、上述した矢印Aや矢印B方向など、第一内方摩擦面23と第二内方摩擦面33との干渉および第一外方摩擦面24と第二外方摩擦面34との干渉が生じない特定の方向に分割コア11を移動させれば、分割コア11同士を容易に分離したり連結したりすることができる。
【0056】
このように、本実施形態にかかる電機子1およびその製造方法によれば、意図しない外力が作用しても分割コア11同士の連結状態を維持しやすく、かつ、分割コア11の分離および連結が容易である。
【0057】
また、本実施形態においては、第一内方摩擦面23、第一外方摩擦面24、第二内方摩擦面33および第二外方摩擦面34が平面で構成されている。これらの摩擦面23,24,33,34の加工がしやすく、低コストかつ高精度で摩擦面23,24,33,34を形成できる。
【0058】
なお、上記実施形態では、第一内方摩擦面23と第二内方摩擦面33との間に作用する摩擦力、および、第一外方摩擦面24と第二外方摩擦面34との間に作用する摩擦力は、それぞれの摩擦面の大きさ、連結凸部22の高さおよび連結凹部32の深さで容易に調整できる。例えば、連結凸部22の高さおよび連結凹部32の深さを大きくすることで、第一内方摩擦面23と第二内方摩擦面33との接触面積を大きくし、第一外方摩擦面24と第二外方摩擦面34との接触面積を増やして摩擦力を大きく設定でき、分割コア11同士の連結強度を大きくすることができる。
【0059】
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例が適用可能である。
【0060】
次に、各種の変形例にかかる電機子について説明する。
なお、上記実施形態と同一構成部分は、同一符号を付して説明を省略する。
【0061】
(変形例1)
図8は、本発明の変形例1に係る分割コア11Aの連結箇所の拡大平面図である。
上記実施形態では、第一内方摩擦面23および第二内方摩擦面33を平面で構成したが、本発明はこれに限らない。
図8に示すように、変形例1では、第一内方摩擦面23および第二内方摩擦面33が、曲面で構成されている。第一内方摩擦面23および第二内方摩擦面33は、分割コア11Aの結合面21,31の外周端部に位置する点C1を中心とする円弧状である。
【0062】
この変形例1によれば、第一内方摩擦面23および第二内方摩擦面33が曲面で構成されているので、分割コア11Aを回転させて分割コア11A同士を分離するときに、第一内方摩擦面23および第二内方摩擦面33の干渉をさらに避けやすい。図示の例においては、点C1を中心として矢印G方向に分割コア11Aを回転させると、分割コア11A同士が干渉せず、容易に両者を分離できる。
なお、第一内方摩擦面23および第二内方摩擦面33は、平面のみで構成したり、曲面のみで構成したり、平面と曲面とで構成してもよい。
【0063】
(変形例2)
図9は、本発明の変形例2に係る分割コア11Bの連結箇所の拡大平面図である。
上記実施形態では、環状コア2の内径側に位置する第一内方摩擦面23および第二内方摩擦面33が第一仮想垂線PL1に対して傾斜した例を説明したが、本発明はこれに限られない。
図9の変形例2に示すように、環状コア2の外径側に位置する第一外方摩擦面24および第二外方摩擦面34が第二仮想垂線PL2に対して傾斜されており、環状コア2の内径側に位置する第一内方摩擦面23および第二内方摩擦面33が第一仮想垂線PL1に対して平行とされていてもよい。なお、
図9において、第一外方摩擦面24および第二外方摩擦面34が延びる方向を、仮想線VLで示している。
【0064】
この変形例2によっても、第一内方摩擦面23と第二内方摩擦面33との間に作用する摩擦力と第一外方摩擦面24と第二外方摩擦面34との間に作用する摩擦力によって、分割コア11Bの連結状態を維持しやすい。また、分割コア11Bを矢印D方向へ回転させればその連結状態を解除できるが、それ以外の方向への分割コア11Bの移動が規制されている。このため、意図しない分割コア11Bの分離を阻止しつつ、分割コア11B同士の分離および連結が容易とされている。
【0065】
(変形例3)
図10は、本発明の変形例3に係る分割コア11Cの連結箇所の拡大平面図である。
上記実施形態では、環状コア2の内径側に位置する第一内方摩擦面23と第二内方摩擦面33のみを、第一仮想垂線PL1に対して傾斜させたが、本発明はこれに限らない。
図10の変形例3に示すように、第一内方摩擦面23と第二内方摩擦面33を第一仮想垂線PL1に対して傾斜させ、かつ、第一外方摩擦面24と第二外方摩擦面34を第二仮想垂線PL2に対して傾斜させてもよい。これらの第一内方摩擦面23、第二内方摩擦面33、第一外方摩擦面24、第二外方摩擦34は、結合面21,32から離れるにつれて、環状コア2の外径側に向かうように傾斜している。
【0066】
この変形例3によれば、矢印E方向に分割コア11Cを平行移動させることにより、第一内方摩擦面23を第二内方摩擦面33から離間させ、第一外方摩擦面24を第二外方摩擦面34から離間させて、分割コア11C,11C同士を分離できる。また、矢印Eと逆の方向に分割コア11を移動させることにより、分割コア11C,11C同士を容易に連結できる。
【0067】
(変形例4)
図11は、本発明の変形例4に係る分割コア11Dの連結箇所の拡大平面図である。
図11に示すように、変形例4では、第一仮想垂線PL1に対して傾斜している第一内方摩擦面23と第二内方摩擦面33が、点C2を中心とする円弧状の曲面で構成されている。円弧の中心C2は、環状コア2の中心軸線Cに直交する断面において、環状コア2の径方向について、結合面21,31の外径方向の端部C3に位置しているか、または、結合面21,31の外径方向の端部C3よりも連結凸部22および連結凹部32から離れる方向へ寸法a離れた場所に位置している(a≧0)。かつ、円弧の中心C2は、環状コア2の中心軸線Cに直交する断面において、環状コア2の周方向について、結合面21,31に位置しているか、または、結合面21,31よりも連結凸部22および連結凹部32から離れる方向へ寸法b離れた場所に位置している(b≧0)。
【0068】
ここで、図示の例とは異なり、円弧の中心C2が環状コア2の外周面よりも内側に設定されている場合には、分割コア11Dを分離させるときに、分割コア11D同士が互いに干渉して円滑に離間できない恐れがある。
これに対して、変形例4によれば、第一内方摩擦面23および第二内方摩擦面33の円弧の中心C2が環状コア2の外周面またはこの外周面から外れた場所に位置する。このため、分割コア11D同士を分離させる際に、環状コア2の外周面に位置する円弧の中心C2、またはこの外周面から外れた場所に位置する円弧の中心C2回りに分割コア11Dを回転させると、第一内方摩擦面23と第二内方摩擦面33とが干渉しない。しかも、環状コア2の外径側には大きな作業スペースがあるので、分割コア11Dを分離するときの作業性がよい。
【0069】
図12は、治具41を用いて変形例4の分割コア11Dを連結する作業を説明する図である。
図12の(a)は分割コア11Dの連結前の状態を示し、
図12の(b)は分割コア11Dの連結後の状態を示している。
図12の(a)および(b)に示すように、隣り合う2つの分割コア11Dにわたって治具41を取り付けることにより、分割コア11Dの連結作業を容易に行うことができる。この治具41は、それぞれの分割コア11Dの外周面に固定される固定片42を備えており、これらの固定片42は、その端部がピン43によって回転可能に連結されている。この治具41は、そのピン43における回転中心C4が、第一内方摩擦面23および第二内方摩擦面33の円弧の中心C2に一致されている。
【0070】
このように、変形例4において、治具41を隣り合う分割コア11Dに取り付ければ、治具41の固定片42をピン43回りに矢印F方向へ回転させると、
図12(a)に示すように、分割コア11Dを容易に連結できる。