(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6293732
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】噴霧化による肺サーファクタントの投与方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
A61M 16/00 20060101AFI20180305BHJP
A61M 11/00 20060101ALI20180305BHJP
A61M 11/02 20060101ALI20180305BHJP
A61M 25/14 20060101ALI20180305BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
A61M16/00 375
A61M16/00 305C
A61M11/00 D
A61M11/02 Z
A61M25/14 512
A61M25/00 600
【請求項の数】13
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-506195(P2015-506195)
(86)(22)【出願日】2013年4月12日
(65)【公表番号】特表2015-514481(P2015-514481A)
(43)【公表日】2015年5月21日
(86)【国際出願番号】EP2013057744
(87)【国際公開番号】WO2013160129
(87)【国際公開日】20131031
【審査請求日】2016年3月25日
(31)【優先権主張番号】12165234.1
(32)【優先日】2012年4月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514208275
【氏名又は名称】チエシイ ファルマセウティシ ソシエタ ペル アチオニ
【氏名又は名称原語表記】CHIESI FARMACEUTICI S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100164471
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】ラファエレ デラッカ
(72)【発明者】
【氏名】イラリア ミレージ
【審査官】
和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−038607(JP,A)
【文献】
米国特許第05803078(US,A)
【文献】
特表2002−508244(JP,A)
【文献】
特表2011−515153(JP,A)
【文献】
特表2002−541062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/00
A61M 11/00
A61M 25/00
A61M 25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を自発呼吸下の患者に送達するシステムであって、
(i)前記患者の咽頭後部に到達するように構成された可撓性のカテーテルであって、液状薬剤の流れを前記患者の咽頭部中を通って搬送するように構成された少なくとも第1のチャネル及び加圧ガスの流れを前記患者の咽頭部中を通って搬送する少なくとも第2のチャネルを含むカテーテル、
(ii)前記少なくとも第1のチャネルの第1の端部に接続され、前記液状薬剤の液柱を前記少なくとも第1のチャネルの第2の端部に向けて押す圧力を発生するように構成された第1のポンプ手段、
(iii)前記少なくとも第2のチャネルの第1の端部に接続され、加圧ガスの流れを発生するよう構成され、且つ前記液状薬剤の液柱及び前記加圧ガスが前記咽頭腔内で出会うとき、前記液柱が複数の粒子に分裂され、噴霧化した薬剤が前記患者の肺に送達されるように構成された第2のポンプ手段、及び
(iv)前記少なくとも第1のチャネルに接続され、前記患者の前記咽頭腔内の圧力を示す値を測定する圧力センサを備え、この圧力を示す値は患者が吸気相にあるのか呼気相にあるのかを決定し、前記第1のポンプ手段を吸気中のみ選択的に駆動するために使用される、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記少なくとも第2のチャネルは前記第1のチャネルの周囲に配置された複数のチャネルを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記カテーテルは可撓性プラスチック材料を含む、請求項1又は2記載のシステム。
【請求項4】
前記カテーテルは部分的に剛性の骨格構造を含む、請求項3記載のシステム。
【請求項5】
前記カテーテルは、前記カテーテルがエアロゾル処置のために所定の位置にあるとき、前記少なくとも第1のチャネル及び前記少なくとも第2のチャネルの第2の端部が前記咽頭腔の壁から離れて維持されるように、その外面上に配置されたスペーサを含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記エアロゾル薬剤は肺サーファクタントを含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記肺サーファクタントは、改変天然肺サーファクタント、人工サーファクタント及び再構成サーファクタントからなる群から選ばれる、請求項6記載のシステム。
【請求項8】
前記改変天然肺サーファクタントはポラクタントアルファである、請求項7記載のシステム。
【請求項9】
前記肺サーファクタントは再構成サーファクタントである、請求項7記載のシステム。
【請求項10】
前記加圧ガスは空気を含む、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記患者は自発呼吸下の早産児である、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
コンピュータ上で実行されると、
マルチチャネルカテーテルを用い、前記マルチチャネルカテーテルの少なくとも第1のチャネルを通して液状薬剤の低圧液柱を咽頭後腔内に供給するために第1のポンプ手段を選択的に駆動するステップ、
前記マルチチャネルカテーテルの少なくとも第2のチャネルを通して加圧ガス流を供給するために第2のポンプ手段を選択的に駆動するステップ、及び
前記少なくとも第1のチャネルに接続された圧力センサを用いて患者の吸気活動を検出するステップ
を前記コンピュータに実行させる、コンピュータプログラムであって、
前記薬剤の液柱と前記加圧ガス流が咽頭後腔内で出会うとき、前記薬剤の液柱が複数の粒子に分裂され、その結果噴霧化された薬剤が前記患者の肺に送達され、且つ前記液状薬剤を前記マルチチャネルカテーテルの前記少なくとも第1のチャネルを通して供給する前記ステップが前記吸気活動中のみ実行される、
ことを特徴とする、コンピュータプログラム。
【請求項13】
(a)薬学的に許容される水媒体中に懸濁された肺サーファクタントを含む医薬組成物、(b)請求項1乃至11のいずれか一項に記載のシステム、(c)咽頭部内へのカテーテルの導入を位置決めし及び/又は容易にする手段、及び(d)前記医薬組成物、前記システム及び前記位置決め手段を収容する容器を備えるキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は咽頭後方薬剤注入の分野に関し、特に噴霧化による肺サーファクタントの投与方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
肺への薬剤の投与は、治療の有効性と侵襲性との間の正しいバランスを見つけ出すという問題にしばしば直面する。これは特に乳幼児に対して難しい(以後新生児も乳幼児の同義語として使用する)。早産児はnRDS(新生児呼吸窮迫症候群)、即ち肺サーファクタントの欠乏を引き起こす全身性未熟による肺疾患に影響され得る。長年の間、nRDSは、外因性肺サーファクタントを機械的人工換気下に保たれた挿管された早産児に器官内注入によりボーラスとして投与することによって治療していた。この治療は死亡率の低下で証明されるように極めて有効であるが、機械的人工換気(気圧障害)及びとにかく侵襲的である挿管処理に固有のいくつかの欠点が存在する。
【0003】
挿管及び機械的人工換気に伴う潜在的な合併症を考慮して、外因性肺サーファクタントを投与する様々な方法に注意が集まった。
【0004】
特に、呼吸支援として、マスク、プロング、チューブなどの特別設計の経鼻装置を通して肺に空気を送達する経鼻的持続気道陽圧法(nCPAP)のような非侵襲的換気法が新生児集中治療に導入されている。その後、最近の15年では、肺サーファクタントの投与の代替方法の発見に大きな注意が集まっている。実行されている研究の殆どは、より穏やかで緩やかな投与がボーラス投与によって起こり得る高い脳血流の変動を防止するという仮説に基づいて、呼吸器回路に接続された市販の噴霧器で噴霧化したサーファクタント(即ち、10μmより小さい質量直径を有する粒子)の投与に注目している(例えば、Mazela J, Merrit TA, Finner NN “Aerosolized surfactants” Curr Opin Pediatr. 2007; 19(2): 155;又はMazela J, Polin RA “Aerosol delivery to ventilated newborn infants: Historical challenges and new directions” Eur J Pediatr. 2011:1-12;又はShah S “Exogenus surfactant: Intubated present, nebulized future?” World Journal of Pediatrics. 2011; 7(1): 11-5参照)。その結果サーファクタントがより均一に分布されるが、種々の研究で得られた肺機能の改善は極めて対照的で、噴霧化法の有効性を証明していない。他の研究では、サーファクタント噴霧化システムを非侵襲的呼吸器セットに接続しているが(即ち、鼻プロング経由のCPAP)、この状態では、肺に到達する噴霧化サーファクタントの量は極少量(20%以下)であることがわかった。更に、CPAP中に投与される噴霧化サーファクタントは、早産児に関する試験的研究で示されるように、肺機能に決定的に有益な影響を何ももたらさない(例えば、Berggren E, Liljedhal M, Winbladh B, Andreasson B, Curstedt T, Robertson B, et al “Pilot study of nebulized surfactant therapy for neonatal respiratory distress syndrome” Acta Paediatrica 2000;89 (4): 460-4; 又はFinner NN, Merritt TA, Bernstein G, Job L, Mazela J, Segal R “An open label, pilot study of Aerosurf combined with nCPAP to prevent RDS in preterm neonates” Journal of aerosol medicine and pulmonary drug delivery. 2010; 23(5): 303-9;又はJorch G, Hartl H, Roth B, Kribs A, Gortner L, Schaible T, et al “Surfactant aerosol treatment of respiratory distress syndrome in spontaneously breathing premature infants” Pediatr Pulmonol. 1997; 24(3):222-4参照)。これらの研究は極めて多様であり、著者はいくつかのパラメータ、例えば(1)噴霧発生器の位置及びタイプ、(2)呼吸換気のモード、(3)湿度、(4)空気流、(5)粒子サイズ、(6)nRDSモデル、(7)サーファクタント希釈液など、に関連して様々な条件を適用している。
【0005】
よって、それらの間で適切な比較を行うことは難しい。しかしながら、既知のシステムは一般的に極めて有効であることを証明していない。
【0006】
更に、噴霧化されたサーファクタントが噴霧器によりマスクを通して、新生児の呼吸と同期化されずに投与されると、一部分が呼気中に吐き出され、上気道又は管路/接続路内に堆積するか、呼気リムにより吐き出される。更に、噴霧化されたサーファクタントの投与は呼吸回路にデッドスペースを付加し、早産児は1回換気量が1ml又はそれより小さくなり得ると考えられ、これはC0
2保有を促進し、最終的には高炭酸症の最終状態に達して危険状態になり得る。
【0007】
上記の危険を部分的に緩和する興味深い方法がWagner他により提案され(Wagner MH, Amthauer H, Sonntag J, Drenk F, Eichstadt HW, Obladen M “Endotracheal surfactant atomization: an alternative to bolus instillation?” Crit Care Med. 2000; 28(7):2540)、有望な結果を示している。この方法は、先端部にアトマイザが挿入された変形気管チューブに基づくものであり、そのアトマイザは、吸気中(オペレータにより識別される)のみ、100μmより大きいSMD(ザウター平均径)を有する粒子を発生する。アトマイザを気管チューブ内に直接入れる選択は技術的に難しい挑戦であった。
【0008】
Wangerの方法の有望な結果は、おそらく、ボーラス投与に関連するメカニズムと同様の肺サーファクタントの分布及び吸収を可能にする大きな粒子径に起因する。特に、大きな粒子はより中央の気道に堆積し、拡散勾配、マランゴーニ効果及び毛管現象により拡張してない肺胞に到達することができるが、これに反し、上気道を通過し得る小さな噴霧化粒子は呼気中に吐き出されるか、呼吸中に空気流を生じる既に開いた肺胞内に堆積され、肺の無気肺領域に到達しないで、肺の時定数のより均一な分布に寄与しない可能性が高い。Wagnerの別の利点は、肺サーファクタントは吸気中にのみ投与され、これは有効に送達される薬剤の量のより良い制御に有用であることにある(節約及び臨床結果の点で改善が得られる)。
【0009】
Wagnerの欠点は、上気道で除去される大きな粒子を送達しうるようにするために、チューブを(噴霧器が設置される)気管に到達させなければならないことにあり、この処理は侵襲的であり、特に新生児に対して問題を生じ得る。他方、非侵襲的(即ち、気管チューブを挿入しない)投与法を実施する全ての既知の従来技術は小さい粒子のみを投与することができ、外的障害を克服するが、治療を必要とするすべての領域へ到達させる点で効率がよくない。
【0010】
更に、Wagnerの実験によると、薬剤送達の吸気リズムとの同期化は手動的に行われ、これは生成物の浪費などの明白な理由のために理想的でない。他方、このような同期化を実行する従来既知のすべての試み、例えばEP692273に記載されている試み、は人口呼吸器などの装置の存在に依存している。しかしながら、この解決法は新生児の気道への接続を必要とし、デッドスペースを付加し、患者の呼吸に機械的負荷を付加する。
【0011】
これらの理由すべてのために、大粒子噴霧化の利点とサーファクタント送達の適切な自動同期化とを組み合わせることができる、外因性サーファクタントの改良された非侵襲的投与方法及びシステムが強く望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は従来技術と関連する問題の少なくとも幾つかを克服することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は添付の請求項に記載する方法及びシステムを提供する。
【0014】
本発明の一つの態様によれば、薬剤を自発呼吸している患者に送達するシステムを提供し、本システムは、
(i) 前記患者の咽頭後部に到達するように構成された可撓性のカテーテルであって、液状薬剤の流れを前記患者の咽頭部中を通って搬送するように構成された少なくとも第1のチャネル及び加圧ガスの流れを前記患者の咽頭部中を通って搬送する少なくとも第2のチャネルを含むカテーテル、
(ii) 前記少なくとも第1のチャネルの第1の端部に接続され、前記液状薬剤の液柱を前記少なくとも第1のチャネルの第2の端部に向けて押す圧力を発生するように構成された第1のポンプ手段、
(iii) 前記少なくとも第2のチャネルの第1の端部に接続され、加圧ガスの流れを発生するよう構成され、且つ前記液状薬剤の液柱及び前記加圧ガスが前記咽頭腔内で出会うとき、前記液柱が複数の粒子に分裂され、噴霧化した薬剤が前記患者の肺に送達されるように構成された第2のポンプ手段、及び
(iv) 前記少なくとも第1のチャネルに接続され、前記患者の咽頭腔内の圧力を示す値を測定する圧力センサを備え、この圧力を示す値は患者が吸気相にあるのか呼気相にあるのかを決定し、前記第1のポンプ手段を吸気中のみ選択的に駆動するために使用される、
ことを特徴とする。
【0015】
咽頭腔内の圧力スイングを推測するためのカテーテルの液体充満ルーメンの使用は他の方法に比較して特定の利点をもたらす。即ち、(1)極めて速い応答速度のカテーテル圧力トランスデューサシステムをもたらす(液体は圧縮性でなく、測定システムに最小のコンプライアンスを与え、極めて速い時定数をもたらす)、新生児の呼吸相の高速検出が可能になる(小さな早産児の呼吸数は毎分60回より多くなり得、成人より1桁大きくなり得る)。(2)圧力サンプリング用の追加のルーメンがなく、圧力トランスデューサがメイン装置に近接配置され、小型で低コストの使い捨てカテーテルとして使用可能である。(3)ルーメン内の液体の存在は水蒸気飽和環境のためにカテーテルの先端が咽頭内に常に存在する唾液又は分泌物などの流体で閉塞されるのを防止し、圧力検出のために空気充満ルーメンより有利であり重要である。(4)液体充満ルーメンにより与えられる低抵抗通路による圧力スイングはガス通路に比較して小さいので、新生児の呼吸による咽頭腔内の極めて小さい圧力スイング(1cmH
20程度)を検出するのがずっと容易になる。
【0016】
好ましくは、カテーテルは可撓性プラスチック材料製であり、代替例として部分的に合成骨格構造を含むことができる。好ましくは、少なくとも第2のチャネルは第1の値の周囲に配置された複数のチャネルを含む。
【0017】
好ましくは、エアロゾル薬剤は例えば改変天然肺サーファクタント(例えばポラクタントアルファ)、人工サーファクタント、及び再構成サーファクタントから選ばれる外因性肺サーファクタントを含むが、加圧ガスは空気又は酸素を含む。
【0018】
他の実施形態によれば、カテーテルは、カテーテルがエアロゾル処置のために所定の位置にあるとき、少なくとも第1のチャネル及び少なくとも第2のチャネルの第2の端部が前記咽頭腔の壁から離れて維持されるように、その外面上に配置されたスペーサを含む。
【0019】
本発明の第2の態様では、自発呼吸下の患者の呼吸窮迫症候郡を予防及び/又は治療する方法を提供し、該方法は、マルチチャネルカテーテルを用い、前記マルチチャネルカテーテルの少なくとも第1のチャネルを通して液状薬剤の低圧液柱を供給するとともに、前記マルチチャネルカテーテルの少なくとも第2のチャネルを通して加圧ガス流を供給することによって噴霧化された薬剤を前記患者の咽頭後部に送達するステップを含み、前記薬剤の液柱と前記加圧ガス流が咽頭腔内で出会うとき、前記薬剤液柱が複数の粒子に分裂される、ことを特徴とする。好ましくは、本方法は、前記患者の吸気活動を好ましくは少なくとも第1のチャネルに接続された圧力センサを用いて検出するステップを備え、前記液柱の供給ステップは前記吸気活動中のみ実行される。
【0020】
より好ましくは、本発明の方法は、患者に経鼻的持続気道陽圧療法(nCPAP)などの非侵襲的換気処置を施すステップを更に含む。
【0021】
本発明の第3の態様では、(a)薬学的に許容される水媒体中に懸濁された肺サーファクタントを含む医薬組成物、(b)本発明のシステム、(c)咽頭部内へのカテーテルの導入を位置決めし及び/又は容易にする手段、及び(d)前記医薬組成物、前記システム及び前記位置決め手段を収容する容器を備えるキットを提供する。第4の態様では、自発呼吸下の早産児の呼吸窮迫症候郡を予防及び/又は治療する方法であって、該方法は前記早産児の咽頭後腔内に肺サーファクタントを送達するステップを備えることを特徴とする。本発明の更に他の態様は上記の方法を制御するコンピュータプログラムを提供する。
【0022】
本発明の好ましい実施形態による方法及びシステムは、カテーテルを設置する侵襲的処置を必要とせずに、サーファクタントの投与を肺への噴霧化粒子の効率的な送達で最適化することができる。本発明の方法及びシステムはいくつかの利点を提供する。例えば、サーファクタントへの機械的衝撃が極めて小さい空気ブラスト噴霧化カテーテルの結果、噴霧化プロセスがより穏やかになる、先端テーパがない結果、噴霧化カテーテルがより製造容易でよりコンパクトな設計になる、センサの導入、気道開口での接続又は第2のルーメンの必要なしに患者の呼吸パターンを監視し同期させることが可能である、本装置は自発呼吸時も、非侵襲的呼吸支援時、例えばnCPAP時又は経鼻的間欠的陽圧換気法(NIPPV)などの他の非侵襲的換気処置時も使用することができるという柔軟性を有する、病院職員に既に良く知られているコンポーネント、例えば(血圧の侵襲的監視に使用されるものに類似する)カテーテル及び使い捨て圧力センサの活用、肺サーファクタント及び患者と接触するすべての部分は低コストで使い捨てにでき、従来のものより衛生的で安全な処理が許される(これは患者が早産児であるとき特に重要である)などである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は本発明の好ましい実施形態を実現するシステムの回路図である。
【
図2】
図2は本発明の一実施形態によるマルチチャネルカテーテルの一例を示す。
【
図3】
図3は本発明の好ましい実施形態による噴霧化されたサーファクタント(Curosurf(登録商標))の粒子寸法の一例を示す。
【
図4】
図4a及び4bは本発明の一実施形態による圧力センサ及び該圧力センサを制御する回路をそれぞれ示す。
【
図5】
図5は早産児に関して取得される模範的な咽頭後方圧力信号を示す。
【
図6】
図6は本発明の好ましい実施形態による方法のステップを示す。
【
図7】
図7は本発明の一実施形態による方法及びシステムで治療されている胎児に関する1回換気量のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔定義〕
「肺サーファクタント」とは、肺に投与される外因性肺サーファクタントを意味し、下記の種類の1つに属するものとし得る。
(i) 「改変天然肺サーファクタント」:これらは切り刻まれた哺乳類の肺又は肺洗浄の脂質抽出物である。これらの調整は不定量のタンパク質SP−BおよびSP−Cを含有し、抽出方法に応じて、非肺サーファクタント性脂質、タンパク質又は他の成分を含有しうる。Survanta(登録商標)などの現在市販されている改変天然肺サーファクタントのいくつかは、トリパルミチン、ジパルミトイルホスファチジルコリン及びパルミチン酸などの合成成分が混合されている。
(ii) 「人工」肺サーファクタント:これらは単に合成成分の混合物、主としてリン脂質及び脂質組成に形成される他の脂質の混合物であり、天然肺サーファクタントの働きをする。それらは肺サーファクタントタンパク質が欠けている。
(iii) 再構成サーファクタント:これらは動物から分離された肺サーファクタントタンパク質/脂質又はWO95/32992に記載されているような組換え技術により製造されたタンパク質/脂質又はWO89/06657、WO92/22315及びWO00/47623に記載されているような合成肺サーファクタントタンパク質類似物が加えられた人口肺サーファクタントである。
【0025】
「非侵襲的換気(NIV)処置」は挿管を必要としないで呼吸を支援する換気法を定義する。
【0026】
〔好ましい実施形態の詳細な説明〕
図1を参照すると、本発明の好ましい実施形態による方法及びシステムの一実施例が示されている。ここで論じる実施例では、適正量の噴霧化された薬剤を患者に送達する問題に対処し、特に肺サーファクタント(例えば、Chiesi Farmaseutici SpA社からCurosurf (登録商標)として市販されているポラクタントアルファ)を例えば早産児に投与する。
【0027】
しかしながら、呼吸窮迫症候群及び他の肺疾患状態のために現在使用中の又は今後開発される如何なる肺サーファクタントも本発明で使用するのに好適であり得る。これらのサーファクタントとして改変天然肺サーファクタント、人口肺サーファクタント及び再構成肺サーファクタント(PS)が含まれる。
【0028】
現在の改変天然肺サーファクタントとしては、限定されないが、ウシ脂質肺サーファクタント(BLES(登録商標)、BLES Biochemicals, Inc. London, Ont)、カルファクタント(Infasurf(登録商標)、Forest pharmaceuticals, St. Louis, MO.)、ボバクタント(bovactant)(Alveofact(登録商標)、Thomae, Germany)、ウシ肺サーファクタント(Pulmonary surfactant TA(登録商標)、Tokyo Tanabe, Japan)、ポラクタントアルファ(Curosurf(登録商標)、Chiesi Farmaceutici SpA, Parma, Italy)、及びベラクタント(Survanta(登録商標)、Abbott Laboratories, Inc., Abbott Park, Ill)が含まれる。
【0029】
人口サーファクタントの例としては、プマクタント(Alec(登録商標)、Britannia Pharmaceuticals, UK)、およびパルミチン酸コルフォスセリル(colfosceril)(Exosurf(登録商標)、GlaxoSmithKline, plc, Middlesex)が含まれる。
【0030】
再構成サーファクタントの例としては、限定されないが、ルシナクタント(Surfaxin(登録商標)、Discovery Laboratories, Inc., Warrington, Pa)及びWO2010/139442の例2の表2に開示されている組成を有する製品が含まれる。
【0031】
好ましくは、肺サーファクタントは改変天然サーファクタント又は再構成サーファクタントである。より好ましくは、肺サーファクタントはポラクタントアルファ(Curosurf(登録商標))である。
【0032】
投与すべき肺サーファクタントの投与量は患者の大きさ及び年齢並びに患者の状態の重篤性によって変化する。当業者ならこれらのファクタを容易に決定し、それに応じて投与量を調整することができる。
【0033】
カテーテル101は、薬剤投与の効率を侵襲的処置を必要としないで増加するために、噴霧化された薬剤(例えばサーファクタント)を咽頭後部に直接搬送する。これは、新生児呼吸窮迫症候群(nRDS)を患う早産児のような極若年患者にとって特に重要である。本発明の好ましい実施形態によれば、カテーテルは生体適合可撓性材料(例えば、プラスチック材料)製である。カテーテルは、装置の剛性を増し位置決め操作の容易さを向上させるために、剛性骨格構造(例えば、金属製)と結合することができる。本発明の好ましい実施形態では、噴霧化された薬剤の送達は空気ブラスト技術によって行われる。噴霧化を助ける空気の使用は、低圧及び低流量の状態が要求される場合でも完全な噴霧化を与える周知の技術である(例えば、Arthur Lefebvre, “Atomization and spray”, Taylor and Francis, 1989参照)。このような技術は、比較的少量のガス(例えば空気、しかし他の圧縮ガス、例えば酸素、窒素又はヘリウムとしてもよい)を液体の形で供給される薬剤とは別の1つ以上のチャネルに流すことに基づいており、空気流が液柱を加速し分裂して、薬剤の噴霧化を誘発する。従って、カテーテル101は薬剤と空気流を同時に搬送するために複数のチャネル(少なくとも2つ、薬剤用の1つと空気用の1つ)を含む。液状薬剤柱は、2つの流れ(空気及び液状薬剤)がカテーテルチャネルを出るとき隣りを流れる空気又は周囲を流れる空気による乱流によって液滴に分裂され、咽頭後部に集まる。噴霧化された液滴は少なくとも80μm、好ましくは100μmより大きい、より好ましくは80−150μmの平均直径を有する。この効果は流体シート不安定性を促進する空気流によって生じるものと信じられる。空気は液滴の分散も助け、液滴同士の衝突を防止し、粒子と咽頭後腔との接触の可能性を低減することによって肺内の薬剤の拡散を促進する。
【0034】
本発明の好ましい実施形態では、薬剤(例えば、サーファクタント)はカテーテルの一端に接続されたポンプ103によって供給され、液状薬剤はカテーテルの他端から押し出され、ここで(カテーテルの異なるチャネルで搬送される)空気流と出会い、加圧空気によって噴霧化される(即ち、複数の小さな粒子(液滴)に分裂される。ポンプ103は輸液ポンプなどのフロー生成装置により実現することができ、本発明の好ましい実施形態では、ポンプ103は液状薬剤を収容するシリンジの保持構造及びシリンジピストンを押すステップモータを備える機械的フレームからなる。本発明の一実施形態では、ポンプ103は制御ユニット109で制御することができ、このような制御ユニットはコンピュータ、マイクロプロセッサ、又はもっと一般的なデータ処理可能装置で具体化することができる。ポンプ装置105(加圧源と圧力調整器及びフィルタを含むことができる)が空気流を搬送する1以上のチャネルに接続される。当業者ならポンプと言えば液流又はガス流に圧力を与えることができる任意の装置を含むことは理解されよう。ポンプ105はポンプ103について記載した制御ユニットで制御することができる。ポンプ103の液流は9−18ml/Hの範囲にすべきであるが、ポンプ105は0.4−0.8Atm(1Atm=1.01325Bar)の範囲にすべきである。
【0035】
本開示の好ましい実施形態では、カテーテル101は複数のチャネルを含み、サーファクタントを搬送する主(例えば中心)チャネルが加圧空気流を搬送する複数の追加のチャネル(例えば外側)で取り囲まれている。ここに記載する空気ブラスト技術はサーファクタントをより穏やかに分裂するという利点を提供する。薬物送達用の現在のアトマイザは通常単純オリフィスに基づいているが、本開示による方法は空気ブラスト法を採用した噴霧カテーテルを使用する。単純オリフィスの幾何学的構造は通常カテーテルの先端部で狭窄して液体を加速するノズルを与え、高い圧力低下(1Atmより大きい)の存在下で高い不安定性を発生させ、その結果として液体の粒子への分裂を発生させる。これに反し、本開示の好ましい実施形態による空気ブラストカテーテルはマルチルーメンカテーテルであり、サーファクタントが主ルーメンに流入するとともに加圧空気が外側ルーメンに流入する。小さな空気流により発生される乱流がサーファクタントを極めて「穏やかに」分裂させる。更に、単純オリフィスの使用は噴霧化を生じさせるためにノズル間に極めて高い差圧を必要とするが、空気ブラストアトマイザは、サーファクタントの周囲の空気の乱流によって噴霧プロセスが駆動されるため、サーファクタントへの高い駆動圧力を必要としない。
【0036】
肺サーファクタントは、製薬的に許容可能な無菌の水媒体中、好ましくは干渉生理食塩(0.9%w/vの塩化ナトリウム)水溶液中の懸濁液として投与するのが好ましい。その濃度は当業者により適正に調整される。
【0037】
サーファクタントの濃度は、2−160mg/ml、好ましくは10−100mg/ml、より好ましくは40−80mg/mlとするのが有利であり得る。
【0038】
供給する量は、一般的に5.0ml以下、好ましくは3.0ml以下とすべきである。いくつかの実施形態では、1.5ml又は3mlとしてよい。
【0039】
本開示による方法及びシステムの可能な追加の特徴は、肺サーファクタントの投与を患者の呼吸相と同期させることにある。この特徴を実現するために、圧力センサ107が外部からサーファクタントカテーテルに沿って食道まで挿入され、間接的であるが正確な咽頭圧スイングの測定値を提供する。この測定は、サーファクタントを搬送するチャネル内の圧力が比較的低いために可能であり、噴霧化を患者の呼吸パターンと同期させること及び担当医療スタッフがカテーテルを適正位置に置くのを助け且つ治療中その適正位置の維持を監視し、カテーテル先端の誤位置(例えば、食道内)の識別を可能にすることを目的として、サーファクタントラインを咽頭後部圧の測定のために使用することができる。
【0040】
図2は本発明の好ましい実施形態によるマルチチャネルカテーテルの特定の実装例を示す。本実施形態の空気バラストアトマイザはいくつかの小さいルーメン203で囲まれた中心内部ルーメン201を備えるマルチルーメンカテーテルによって実現される。サーファクタントが輸液ポンプ203により駆動されて主中心ルーメンに流入するとともに、ガス(例えば、空気、酸素富化空気又は純粋酸素)が側部ルーメンを流れる。中心カテーテル内の圧力低下はその長さ及び内径に依存する。本開示の好ましい実施形態では、カテーテルは7−15cmの長さ及び0.4−0.6mmの内径を有するものとし得る。この場合には、圧力低下は、3ml/20分のサーファクタントの流れを考慮すると、7.8−0.72cmH2Oの範囲内である。このように、ノズルは必要とされず、粒子サイズ寸法は主として側部チャネル内を流れる空気の圧力によって決定される。側部ルーメンに流入するガス流を発生させるために圧縮器又は加圧ガス源(例えば、シリンダ又は医療ガス壁プラグ)を使用することができ、その圧力はシステムを流れる塵埃を除去するために機械的フィルタを備えた圧力調整器により調整される。
【0041】
このような加圧ガス流はかなり制限されており、解剖学的構造は大気に開口しているため、このようなガス流は咽頭内の圧力をあまり変化させない。
【0042】
本発明の好ましい実施形態によって得られる粒径の分布は、市販のレーザ回折サイズ分析器(Malvern, Insitec RT)により特徴づけられた。測定は0.5Barの加圧空気及び3ml/20分のサーファクタント流量の模範的な条件を用いて実行した。
【0043】
その結果、大部分の粒径は100−200ミクロンの間に含まれた。特に、
図3に示されるように、平均値は137.47ミクロン、第10パーセンタイル値は39.50ミクロン、第90パーセンタイル値は130.63ミクロンであった。
【0044】
追加の可能な特徴として、本開示の方法及びシステムで使用するカテーテルはその外部表面に、その位置決めを助けるとともにカテーテル自体と咽頭後腔の壁との間に最小距離を維持するのに役立ついくつかのスペーサを設けることができる。この分離によって噴霧化されたサーファクタントが吸気空気流により肺に運ばれ、咽頭腔の壁に投射されないようにする。一例が
図2bに示され、この例ではいくつかのリブがカテーテルの外面に沿って延在し、これらのリブは(上述した金属骨組構造の代わりとして)ある種の剛性をカテーテルに付加する補強機能も有する。他の形状のリブも可能であり、例えばカテーテルを互いに所定の間隔で取り囲む1以上のリングの形状にすることもでき、当業者ならいくつかの等価な代替例を実現できることは理解されよう。
【0045】
カテーテルを咽頭後腔内に位置させるために適切に利用し得る別のツールとして咽頭鏡も当業者に知られている。
【0046】
更に、マギルかん止、口腔咽頭カニューレ(例えばメイヨ、ゲデル、サファー及びビールマンのカニューレ)はカテーテルの導入を容易にする。好ましい実施形態では、カテーテル先端を適正位置、即ち咽頭壁に接触しない位置に導入し、サーファクタントの送達の全期間中気管の入口に向けて維持するのを容易にするためにメイヨのカニューレを使用する。
【0047】
図4aは、咽頭腔から流出する又は内に流入する空気の圧力を検出するために本発明の実施形態で使用される上述した圧力センサ107の可能な実施形態を示す。このような測定圧力は患者の呼吸リズムの兆候として使用され、システムは薬剤の投与をそれに応じて同期化させる。この同期化は治療の有効性の点及び薬剤の浪費の低減の点で大きな利益をもたらす。有効性は、噴霧化された薬剤が吸気流により輸送されることに起因し、節約は、薬剤が必要とされるときだけ送達され、患者が息を吐き出している間に薬剤が浪費されることが回避されることに起因する。本開示の一実施形態では、圧力センサはサーファクタントラインに沿って挿入され、カテーテルの先端からの圧力(即ち、新生児咽頭内の圧力)を可変抵抗として作用する検知素子で変換する。モータを駆動すると、シリンジがゆっくりサーファクタントを噴霧化カテーテルに追い出し、3ml/hの平均の流れを生じさせることができる(このパラメータは処理プログラムに基づいて調整することができる)。
図4bに示すように、センサは機械的圧力を電圧降下に変換するためにピエゾ抵抗現象を利用し、またセンサは内部ホイートストンブリッジセンサを含み、つまり周囲温度変動を内部的に補償している。
【0048】
センサは、例えば血圧の非侵襲手的測定に使用されているものと同様に、使い捨て圧力センサとすることができる。
【0049】
吸気相中のみのサーファクタントの投与は本発明による大きな利点であり、これは、肺胞に到達する有効量のより良い制御及び供給サーファクタントの浪費の回避をもたらす。これは、吸気終末及び呼気終末を検出し新生児の「将来」の呼吸パターンを予測するために、早産児の換気状態の呼吸パターン(nCPAP又は他の非侵襲的換気処置の下で維持されている自発呼吸)関する信号の測定を必要とする。本発明の一実施形態によれば、
(1) 投与の機械的な遅れを考慮するため、
(2) 吸気の終了時に送達されるサーファクタントがまだ咽頭腔内に存在し、呼気の開始時に吐き出されることによるサーファクタントの損失を防止するため、
サーファクタントの投与は吸気の開始前に開始し、呼気の開始前に終了させる。
【0050】
28週の在胎月齢で体重1650gの代表的な早産児からトレースした代表的な咽頭後圧力が
図5に示されている。パネルaは、いくつかのスパイク及びベースラインの変動を有する極めて高い変動性で特徴付けられる全軌跡を示し、パネルbには同じ信号の拡大が示されている。データの統計的分析を実行し予測アルゴリズムを設計した。その主なステップは
図6のフローチャートに相対的機能で示されている。具体的には、トレンド除去及び高周波数ノイズ除去後に、信号を積分して肺容積に比例する新しい信号を生成し、最大値及び最小値を探すことによって吸気終末点及び呼気終末点を検出することができる。私たちの統計的分析は関連する圧力の測定も含み、その圧力は異なる状態の全てにおいて約1cmH
20である。
【0051】
このアプローチを使用することによって、模範的なシミュレーションにおいて、29.5±3週の在胎月齢で1614g(±424g)の体重の7人の早産児について60±21分の間97±0.8%のサーファクタントの投与が得られた。
【0052】
ここに記載するシステムの動作のすべては、本発明の好ましい実施形態による方法を実行するように構成されたソフトウェアを実行するマイクロプロセッサ(例えば、マイクロチップテクノロジ社によるPIC18Fファミリーのマイクロコントローラ)により制御される。
【0053】
上記の実施形態には開示の範囲から逸脱することなく多くの変更や修正を加えることができることは理解されよう。当然のことながら、局所的及び特定的要求のために、当業者なら上記の解決方法に多くの修正や変更を加えることができる。特に、本開示好ましい実施形態について特に深く詳細に記載したが、形状及び細部を最終的に省略、置換及び変更することは可能であることを理解すべきである。更に、開示の任意の実施形態と関連して記載した特定の要素及び/又は方法のステップは他の任意の実施形態に設計上の選択の汎用事項として組み込むことができることを明確に意図している。
【0054】
例えば、コンポーネント(例えばマイクロプロセッサ又はコンピュータ)が異なる構造を有する又は同等の装置を含む場合も同様の考察があてはまり、いずれにせよ、コンピュータを任意のコード実行構成要素(例えば、PDA、携帯電話など)と置き換えることができる。
【0055】
プログラム(開示のいくつかの実施形態を実施するために使用し得る)が異なる方法で構成されている場合、又は追加のモジュール又は機能が設けられる場合も同様の考察があてはまり、同様に、メモリ構造を他のタイプのものとする、又は等価な構成要素(必ずしも物理的記憶媒体からなるものである必要はない)と置き換えることができる。更に、提案の解決方法はそれ自体等価な方法(異なる順序であっても同様の又は追加のステップを有する)で実施するのに適している。いずれにせよ、プログラムは、任意のデータ処理システムで使用する又は該システムと関連して使用するのに適した任意の形、例えば外部又は常駐ソフトウェア、ファームウェア又はマイクロコード(オブジェクトコードでもソースコードでもよい)にすることができる。更に、プログラムはコンピュータ使用可能な媒体上に設けることができ、媒体はプログラムを含有する、プログラムを記憶する、プログラムと通信する、プログラムに伝播する又はプログラムに転送するのに適した任意の要素とすることができる。このような媒体の例には、固定ディスク(プログラムをプリロードすることができる)、リムーバブルディスク、テープ、カード、ワイヤ、ファイバ、無線接続、ネットワーク、放送波などがあり、例えば媒体は電子型、磁気型、光型、電磁気型、赤外型又は半導体型とすることができる。
【0056】
いずれにせよ、本開示による解決方法はそれ自体ハードウェア構造(例えば、半導体材料チップに集積されたもの)で又はソフトウェアとハードウェアの組合せで実施するのに適している。本発明のシステムは、特に新生児の呼吸窮迫症候群(RDS)(nRDS)の予防及び/又は治療に適している。しかしながら、本システムは、サーファクタント欠乏又は機能不全に関連する成人の急性RDS(ARDS)の予防及び/又は治療、並びに、例えば胎便吸引症候群、肺感染(例えば肺炎)、直接肺外傷及び気管支肺異形成症の結果として呼吸窮迫が存在し得る状態の予防及び/又は治療のためにも有利に使用できる。
【0057】
本発明のシステムは、有利には自発呼吸している早産児に適用され、好ましくは、臨床的徴候及び/又は酸素補給要求(吸入酸素濃度(FiO
2)>30%で示される呼吸窮迫症候群の初期兆候を示す、24−35週の在胎月齢の極端に低い出産時体重(ELBW)、極めて低い出産時体重(VLBW)及び低出産時体重(LBW)の新生児に適用される。
【0058】
より有利には、当業者に知られている処置に従って、新生児持続的気道陽圧法(nCPAP)が前記新生児に適用される。
【0059】
好ましくは、鼻マスク又は鼻プロングが使用される。市販の任意の鼻マスク、例えばCPAPストアLLC及びCPAP社から提供される鼻マスクを使用することができる。
【0060】
鼻CPAPは一般的に1−12cmH
2O、好ましくは2−8cmH
2Oの間に含まれる圧力で与えられるが、この圧力は新生児月齢及び肺の状態に応じて変えることができる。
【0061】
鼻間欠的陽圧換気法(NIPPV)、高流量鼻カニューレ(HFNC)及び2相性気道陽圧法(BiPAP)などの他の非侵襲的換気処置を代替的に新生児に適用することができる。本発明を下記の例で詳細に説明する。
【0062】
噴霧化されたサーファクタント(本例では上で定義したポラクタントアルファ)の生体内有効性を妊娠27日目(出産予定日31±1日)のウサギの早産児について評価した。選択したモデルはRDSに冒された人の早産児に良く類似し、これらの動物の肺はまだ自分のサーファクタントを生成できないが、外因性サーファクタント投与に応答して膨張し得るためガス交換を確実にすることができる。
【0063】
治療は160mg/kgドーズに対応する2ml/kgの量の気管内投与を行った。その後、臭化パンクロニウム(0.02mg i.p.)で麻痺された胎児を純粋酸素で一定の圧力に換気された37℃のプレチスモグラフシステム(頻度40/分、吸気/呼気比60/40)内に置いた。呼気終末陽圧(PEEP)は与えなかった。最初に細い導気道内の毛管現象による初期抵抗を克服するために35cmH
2Oの「開口」圧力を1分間供給した。続いて、25cmH
2Oの圧力を15分、20cmH
2Oの圧力を5分、15cmH
2Oの圧力を5分及び最後に再び25cmH
2Oの圧力を5分供給した。呼吸流量をプレチモグラフシステムの各チャンバに接続されたフライシャーチューブで5分ごとに測定した。1回換気量(Vt)が流量曲線の積分により自動的に得られた。
【0065】
第1組の実験では、5つの試料(各1ml)を受け取った。各試料における投与肺サーファクタントはそれぞれ、噴霧化してないポラクタントアルファ、0.0、0.2、0.5及び0.8Barの空気圧力で噴霧化したポラクタントアルファである。肺サーファクタントは本発明の好ましい実施形態を用いて噴霧化した。
【0066】
この組の実験では、何の処置もなされてない対照群が含まれている。すべての噴霧化した試料(何の圧力も供給することなく通過したものも含む)は噴霧化してないポラクタントアルファと同程度の有効性であった(P<0.05、一元ANOVA(分散分析)に続くチューキー検定;グラフパッドプリズム)。噴霧化の異なる条件の間に統計的に有意の差は無かった。
【0067】
第2組では、3つの試料(各1ml)を受け取った。各試料における投与肺サーファクタントはそれぞれ、噴霧化してないポラクタントアルファ、0.2、0.5及び0.8Barの空気圧力で噴霧化したポラクタントアルファである。
【0068】
この組の実験では、2つの他の群、如何なる処置もなされてない対照群及び既に市販されているポラクタントアルファのバッチで処置された群が含まれている。
【0069】
第2の組の実験でも同じ結果が観測された。結果は2つの組で一致しているので、そのデータを保存した(
図7)。これらのデータの統計的分析は上記の結果を裏付けている。
【0070】
結論として、本発明の好ましい実施形態を用いたアトマイザの通過はウサギの早産児におけるポラクタントアルファの有効性に影響を与えない。特に、0.2−0.8Barの間の圧力での噴霧化はポラクタントアルファの有効性にあまり影響を与えず、0.5Barの加圧は最も適切であるが、種々の噴霧化条件の間に統計的に有意の差は観測されなかった。