【実施例】
【0055】
次の非限定例は、本発明を図解する。
【0056】
<実施例1>
[OHB還元酵素活性の実証]
乳酸脱水素酵素またはリンゴ酸脱水素酵素をコードする野生型遺伝子を含有するプラスミドの構築:
大腸菌における(L)−リンゴ酸脱水素酵素、Ec−mdh(配列番号1)、大腸菌における(D)−乳酸脱水素酵素、Ec−ldhA(配列番号3)、ラクトコッカス・ラクティスの(L)−乳酸脱水素酵素、Ll−ldhA(配列番号5)、枯草菌の(L)−乳酸脱水素酵素、Bs−ldh(配列番号7)、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルスの(L)−乳酸脱水素酵素、Gs−ldh(配列番号9)、カイウサギの(L)−乳酸脱水素酵素の2種のアイソフォーム、Oc−ldhA(配列番号11および配列番号13)をコードする遺伝子を、高忠実度ポリメラーゼPhusion(商標)(Fermentas)および表1に収載されているプライマを用いたPCRにより増幅した。大腸菌MG1655、ラクトコッカス・ラクティスIL1403および枯草菌(B. subtilis)株168のゲノムDNAを鋳型として用いた。遺伝子Oc−ldhAおよびGs−ldhを、大腸菌における発現のためにコドン最適化し、MWG Eurofinsにより合成した。プライマは、それぞれ開始コドンの上流および終止コドンの下流に制限部位(表1)を導入して、T4 DNAリガーゼ(Fermentas)を用いたpET28a+(Novagen)発現ベクタの対応する部位への消化されたPCR産物のライゲーションを容易にした。ライゲーション産物を大腸菌DH5α細胞(NEB)に形質転換した。その結果得られたpET28−Ec−mdh、pET28−Ec−ldhA、pET28−Ll−ldhA、pET28−Bs−ldh、pET28−Gs−ldhおよびpET28−Oc−ldhAプラスミドを単離し、それぞれ大腸菌mdh、大腸菌ldhA、ラクトコッカス・ラクティスldhA、枯草菌ldh、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(G. stearothermophilus)ldhおよびカイウサギ(O. cuniculus)ldhA遺伝子の正確な全長配列を含有していることをDNA配列決定により示した。対応するタンパク質配列は、それぞれ配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12および配列番号14により表される。
【0057】
【表1】
【0058】
酵素の発現:大腸菌BL21(DE3)出発(star)細胞を、標準遺伝学プロトコール(サンブルック(Sambrook)、フリッチュ(Fritsch)&マニアティス(Maniatis)、1989)を用いて適切なプラスミドにより形質転換した。OD
600が0.1の一晩培養物から播種して0.6のOD
600となるよう増殖させ、その後、培養培地への1mMイソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)の添加によりタンパク質発現を誘導した50mLのLB培養物において、N末端ヘキサHisタグを有する酵素を発現させた。15時間のタンパク質発現の後、4000g、4℃、10分間の遠心分離により細胞を収集し、上清を廃棄した。さらに解析するまで細胞ペレットを−20℃で貯蔵した。増殖およびタンパク質発現は、25℃で行った。培養培地は、50μg/mLカナマイシンを含有した。
【0059】
酵素の精製:発現培養物の凍結した細胞ペレットを、0.5mLの破損バッファ(50mM Hepes、300mM NaCl、pH7,5)に再懸濁し、4回の逐次ラウンドの超音波処理(超音波処理間隔:20秒間、出力:30%、超音波処理器:Bioblock Scientific、VibraCell(商標)72437)により破損した。15分間、4℃、4000gで粗抽出物を遠心分離し、清澄な上清を保持することにより、細胞デブリを除去した。15mg/mLストレプトマイシン硫酸塩(Sigma)を添加し、13000g、10分間、4℃で試料を遠心分離し、上清を保持することにより、抽出物からRNAおよびDNAを除去した。1時間、4℃で、0.75mL(総容積)のTalon(商標)Cobalt親和性樹脂(Clontech)と共に、清澄なタンパク質抽出物をインキュベートした。卓上遠心分離機において700gで懸濁液を遠心分離し、上清を除去した。0.5mLの溶出バッファ(50mM Hepes、300mM NaCl、250mMイミダゾール、pH7,5)でタンパク質を溶出させる前に、10総容積の洗浄バッファ(50mM Hepes、300mM NaCl、15mMイミダゾール、pH7,5)で樹脂を洗浄した。SDS−PAGE解析により、溶出された酵素の純度を検証した。ブラッドフォード(Bradford)の方法(ブラッドフォード(1976、Anal.Biochem.72:248〜54)により、タンパク質濃度を推定した。乳酸脱水素酵素を安定化するために、pH7となるよう調整した100mMリン酸緩衝液で溶出バッファを系統的に交換した。タンパク質試料をAmicon(商標)超遠心分離フィルター(カットオフ10kDa)に移し、8分間、4000g、4℃で遠心分離してバッファを除去した。タンパク質をリン酸緩衝液に希釈し、手順を4回反復した。
【0060】
酵素アッセイ:反応混合物は、60mM Hepes(pH7)、50mM塩化カリウム、5mM MgCl
2、0.25mM NADH(必要に応じて、5mMフルクトース−1,6−ビスリン酸)(全製品はSigma製)および適切な量の精製されたリンゴ酸もしくは乳酸脱水素酵素または細胞抽出物を含有した。適切な量の2−オキソ−4−ヒドロキシ酪酸塩(OHB)、ピルビン酸またはオキサロ酢酸(OAA)を添加することにより、反応を開始した。96ウェル平底マイクロタイタープレートにおいて、250μLの最終容量で、37℃で酵素アッセイを行った。反応に続いて、マイクロプレートリーダ(BioRad 680XR)において、340nm(ε
NADH=6.22mM
−1cm
−1)におけるNADHの特徴的吸収を測定した。
【0061】
100mM Trisバッファ、pH7.8においてヘビ毒(L)−アミノ酸酸化酵素(1.25U/mL、Sigma)およびカタラーゼ(4400U/mL、Sigma)と125mMホモセリンを90分間、37℃でインキュベートすることにより、OHBを合成した。その後、カットオフ10kDaのAmicon(商標)超遠心分離フィルターにおいて反応混合物を精製して、酵素を排除した(ウェルナー(Wellner)&リヒテンベルク(Lichtenberg)、1971から適応させた方法)。
【0062】
1Mヒ酸ナトリウムおよび1Mホウ酸、pH6.5を含有する溶液1mLと100μLの被験溶液を混合することにより、OHBを定量化した。混合物を室温で30分間インキュベートし、325nmにおける吸光度を用いてOHBを定量化した。公知の濃度のピルビン酸溶液を用いて、吸光度およびケトンの濃度の間の関係を較正した((ウェルナー&リヒテンベルク、1971)から適応させた方法)。方法の典型的なOHB収率は、90%であった。
【0063】
結果:その天然の基質およびOHBにおける被験酵素の動態パラメータを表2に収載する。有意なOHB還元酵素活性は、異なる生物学的起源のあらゆる乳酸脱水素酵素に見いだされる。大腸菌のリンゴ酸脱水素酵素、Mdhは、OHBにおいて非常に軽微な活性しか持たなかった。ラクトコッカス・ラクティス由来の分岐鎖2−オキソ−酸脱水素酵素、PanEはまた、OHBにおいて有意な活性を有していた。
【0064】
【表2】
【0065】
<実施例2>
[改善されたOHB還元酵素活性を有する乳酸脱水素酵素の構築]
pET28−Ll−ldhAプラスミドを鋳型として用いて、ラクトコッカス・ラクティスldhA遺伝子の部位特異的突然変異誘発を行った。表3に収載されているオリゴヌクレオチド対を用いたPCR(Phusion 1U、HFバッファ20%(v/v)、dNTP0.2mM、ダイレクト(direct)およびリバースプライマ各0.04μM、鋳型プラスミド30〜50ng、水)により、アミノ酸配列を変化させるための点突然変異を導入した。PCRにより変異導入された遺伝子は、変異導入されたクローンの同定を容易にするために、機能的突然変異に加えて、表3に収載されている新しい制限部位(サイレント突然変異を用いて導入)を含有した。DpnIにより37℃で1時間PCR産物を消化して鋳型DNAを除去し、コンピテント大腸菌DH5α(NEB)細胞へと形質転換した。変異導入されたプラスミドを制限部位解析により同定し、DNA配列決定により所望の突然変異を保有していることを検証した。
【0066】
【表3】
【0067】
実施例1に記載されている通りに、変異体酵素を発現させ、精製し、OHBおよびピルビン酸還元酵素活性に関して検査した。両方の基質の活性測定値について、
図2に概要を述べる。結果は、好ましくは、アラニン、システイン、アスパラギンまたはメチオニンによるGln85の置き換えが、OHBに対する酵素の特異性の増加および/または最大比OHB還元酵素活性の増加を生じることを実証する。
【0068】
Ll−Ldhにおける突然変異Q85Nを、突然変異I226Vと組み合わせた。この交換は、OHBに対する基質親和性に大きなプラスの影響を有したことが実証された。
【0069】
【表4】
【0070】
<実施例3>
[改善されたOHB還元酵素活性を有するリンゴ酸脱水素酵素の構築]
表5に収載されているプライマを用いて、実施例2に記載されている通りに、大腸菌由来のmdh遺伝子の部位特異的突然変異誘発を行った。鋳型としてプラスミドpET28−Ec−mdhを用いた。
【0071】
【表5】
【0072】
実施例1に記載されている通りに、変異体酵素を発現させ、精製し、OHBおよびオキサロ酢酸還元酵素活性に関して検査した。OHBおよびオキサロ酢酸における活性測定値について、
図3に概要を述べる。結果は、アラニン、システイン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニンまたはバリンによるArg81の置き換えが、顕著なOHB還元酵素活性と、随伴するオキサロ酢酸還元酵素活性減少をもたらすことを実証する。
【0073】
Ec−Mdhにおける突然変異R81Aを、タンパク質配列の追加的な変化と組み合わせた。結果を表6に収載する。突然変異M85Q、M85E、I12V、D86SまたはG179Dの導入が、OHBにおける活性の増加をもたらすことが実証された。
【0074】
【表6】
【0075】
<実施例4>
[選択されたアミノ基転移酵素のホモセリンアミノ基転移酵素活性の実証]
高忠実度ポリメラーゼPhusion(商標)(Finnzymes)および表7に収載されているプライマを用いたPCRにより、大腸菌、出芽酵母およびラクトコッカス・ラクティスにおける異なるアミノ基転移酵素をコードする遺伝子を増幅した。大腸菌MG1655、出芽酵母BY4741およびラクトコッカス・ラクティスIL1403のゲノムDNAを鋳型として用いた。プライマは、それぞれ開始コドンの上流および終止コドンの下流に制限部位(表7)を導入し、T4 DNAリガーゼ(Biolabs)を用いたpET28a+(Novagen)発現ベクタの対応する部位への消化されたPCR産物のライゲーションを容易にした。ライゲーション産物を大腸菌DH5α細胞に形質転換した。その結果得られたプラスミドを単離し、DNA配列決定により、対応する遺伝子の正確な全長配列を含有することを示した。対応するタンパク質配列の参照は、表7に収載されている。
【0076】
【表7】
【0077】
実施例1に記載されている通りに酵素を発現させて精製し、後述する条件下でホモセリンアミノ基転移酵素活性に関して検査した。
【0078】
酵素アッセイ:アミノ基アクセプタとして2−オキソグルタル酸を用いて、数種の候補アミノトランスフェラーゼのアミノ基転移酵素活性を定量化した。ホモセリンおよび酵素の好ましいアミノ酸を用いて、アミノ基転移酵素反応を行った。反応に続いて、共役脱水素酵素反応においてNADHのアミノ酸依存性酸化を行った。
アミノ基転移酵素アッセイ(反応スキーム)
アミノ基転移酵素:アミノ酸+2−オキソグルタル酸→2−オキソ−酸+グルタミン酸塩
脱水素酵素:2−オキソ−酸+NADH→2−ヒドロキシ−酸+NAD
+
【0079】
反応混合物は、60mM Hepes(pH7)、50mM塩化カリウム、5mM MgCl
2、4mM 2−オキソグルタル酸、0.1mMピリドキサール−5’−リン酸(PLP)、0.25mM NADH(必要に応じて、5mMフルクトース−1,6−ビスリン酸)(全製品はSigma製)、4ユニット/mLの補助的2−ヒドロキシ酸脱水素酵素および適切な量の精製アミノトランスフェラーゼまたは細胞抽出物を含有した。補助的脱水素酵素は、アミノ酸フェニルアラニンおよびロイシンの場合はラクトコッカス・ラクティス由来の精製PanE(シャンベラン(Chambellon)、リイネン(Rijnen)、ロルケ(Lorquet)、ジットン(Gitton)、バン・ヒルカマブリーグ(van HylckamaVlieg)、ウーテルス(Wouters)&イヴォン(Yvon)、2009)、アスパラギン酸の場合はリンゴ酸脱水素酵素(Sigma)、ならびに出発基質としてホモセリンを用いる場合はウサギ筋肉(L)−乳酸脱水素酵素(Sigma)であった。50mMのアミノ酸を添加することにより反応を開始した。
【0080】
96ウェル平底マイクロタイタープレートにおいて最終容量250μLで、37℃で酵素アッセイを行った。反応に続いて、マイクロプレートリーダ(BioRad 680XR)において、340nm(ε
NADPH=6.22mM
−1cm
−1)におけるNAD(P)Hの特徴的吸収を測定した。
【0081】
結果:異なるアミノトランスフェラーゼの動態パラメータは、表8に収載されている。顕著なホモセリンアミノ基転移酵素活性が、収載されているアミノ基転移酵素に見出される。
【0082】
【表8】
【0083】
<実施例5>
[ホモセリン経路酵素の過剰発現のためのプラスミドの構築]
(プラスミドpTAC−op−HMS1およびpACT3−op−HMS1の構築)
高忠実度ポリメラーゼPhusion(商標)(Finnzymes)、ならびにNdeIおよびBamHI制限部位をそれぞれ開始コドンの上流および終止コドンの下流に導入するダイレクトおよびリバースプライマ
5’CACGAGGTACATATGTCTGAAATTGTTGTCTCC
3’(配列番号71)および
5’CTTCCAGGGGATCCAGTATTTACTCAAAC
3’(配列番号72)を用いたPCRによりlysC遺伝子を増幅することにより、プラスミドpET28−LYSCwtを構築した。大腸菌MG1655由来のゲノムDNAを鋳型として用いた。NdeIおよびBamHIによりPCR産物を消化し、T4 DNAリガーゼ(Biolabs)を用いてpET28a(Novagen)発現ベクタの対応する部位にライゲーションし、大腸菌DH5α細胞に形質転換した。その結果得られたpET28−LYSCwtプラスミドを単離し、DNA配列決定により、正確な配列(配列番号73)を有する全長lysC遺伝子を含有することを示した。
【0084】
pET28−LYSCwtプラスミドを鋳型として用いて、リジンによる阻害を軽減するためのlysCの部位特異的突然変異誘発を行った。オリゴヌクレオチド
5’GCGTTTGCCGAAGCGGCAAAGATGGCCACTTTTG
3’(配列番号74)および
5’CAAAAGTGGCCATCTTTGCCGCTTCGGCAAACGC
3’(配列番号75)を用いたPCR(Phusion 1U、HFバッファ20%(v/v)、dNTP0.2mM、ダイレクトおよびリバースプライマ各0.04μM、鋳型プラスミド50ng、水)により、グルタミン酸からリジンへと位置250におけるアミノ酸配列を変化させるための点突然変異(E250K、配列番号36)を導入した。37℃で1時間、DpnIによりPCR産物(配列番号35)を消化して鋳型DNAを除去し、コンピテント大腸菌DH5α(NEB)細胞に形質転換した。変異導入されたプラスミドpET28−LYSC
*を制限部位解析により同定し、DNA配列決定により所望の突然変異を保有することを検証した。
【0085】
高忠実度ポリメラーゼPhusion(商標)(Finnzymes)、ならびにNheIおよびBamHI制限部位をそれぞれ開始コドンの上流および終止コドンの下流に導入するダイレクトおよびリバースプライマ
5’TATAATGCTAGCATGAAAAATGTTGGTTTTATCGG
3’(配列番号76)および
5’TATAATGGA−TCCTTACGCCAGTTGACGAAGC
3’(配列番号77)を用いたPCRにより大腸菌のasd遺伝子を増幅することにより、プラスミドpET28−ASDwtを構築した。大腸菌DH5α由来のゲノムDNAを鋳型として用いた。NheIおよびBamHIによりPCR産物を消化し、T4 DNAリガーゼ(Biolabs)を用いてpET28a(Novagen)発現ベクタの対応する部位にライゲーションし、大腸菌DH5α細胞に形質転換した。その結果得られたpET28−ASDwtプラスミドを単離し、DNA配列決定により、正確な配列(配列番号98)を有する全長asd遺伝子を含有することを示した。
【0086】
高忠実度ポリメラーゼPhusion(商標)(Finnzymes)、ならびにNdeIおよびBamHI制限部位をそれぞれ開始コドンの上流および終止コドンの下流に導入するダイレクトおよびリバースプライマ
5’TATAATCATATGAGCACTAAAGTTGTTAATG
3’(配列番号78)および
5’TATAATGGATC−CCTAAAGTCTTTGAGCAATC
3’(配列番号79)を用いたPCRにより出芽酵母のHOM6遺伝子を増幅することにより、プラスミドpET28−HOM6wtを構築した。出芽酵母BY4741由来のゲノムDNAを鋳型として用いた。NdeIおよびBamHIによりPCR産物を消化し、T4リガーゼ(Biolabs)を用いてpET28a(Novagen)発現ベクタの対応する部位にライゲーションし、大腸菌DH5α細胞に形質転換した。その結果得られたpET28−HOM6wtプラスミドを単離し、DNA配列決定により、正確な配列(配列番号97)を有する全長HOM6遺伝子を含有することを示した。
【0087】
プラスミドpET28−LYSC
*を、誘導性tacプロモータからのリジン非感受性アスパラギン酸キナーゼ、アスパラギン酸セミアルデヒド脱水素酵素およびホモセリン脱水素酵素の発現を可能にするpTAC−op−HMSプラスミドの構築のための骨格として用いた。
【0088】
PCRによりpET28−asdwtからasd遺伝子を得た。高忠実度ポリメラーゼPhusion(商標)(Finnzymes)、ならびにBamHIおよびEcoRI制限部位をそれぞれpET28リボソーム結合部位(rbs)の上流および終止コドンの下流に導入するダイレクトおよびリバースプライマ
5’TATAAGGATCCGTTTAACTTTAAGAAGGAGATATACCATGGG
3’(配列番号80)および
5’TATAAGAATTCTTACGCCAGTTGACGAAG
3’(配列番号81)を用いたPCRにより、全コード領域ならびにpET28リボソーム結合部位(rbs)およびインフレームN末端Hisタグを含む上流領域の部分を増幅した。BamHIおよびEcoRIによりPCR産物を消化し、T4 DNAリガーゼ(Biolabs)を用いてpET28−LYSC
*の対応する部位にライゲーションし、大腸菌DH5α細胞に形質転換した。その結果得られたpET28−LYSC
*−ASDプラスミドを単離し、DNA配列決定により、正確な配列を有することを示した。
【0089】
PCRによりpET28−HOM6wtからHOM6遺伝子を得た。高忠実度ポリメラーゼPhusion(商標)(Finnzymes)、NotIおよびPspXI制限部位をそれぞれrbsの上流および終止コドンの下流に導入するダイレクトプライマ
5’TATAAGCGGCCGCGTTTAACTTTAAGAAGGAGATAT
3’(配列番号82)およびリバースプライマ
5’TATAAACTCGAGCCTAAAGTCTTTGAGCAAT
3’(配列番号83)を用いたPCRにより、全コード領域ならびにpET28リボソーム結合部位およびインフレームN末端Hisタグを含む上流領域の部分を増幅した。NotIおよびPspXIによりPCR産物を消化し、T4 DNAリガーゼ(Biolabs)を用いてpET28−LYSC
*−ASDの対応する部位にライゲーションし、大腸菌DH5α細胞に形質転換した。その結果得られたpET28−op−HMS1プラスミドを単離し、DNA配列決定により、正確な配列を有することを示した。
【0090】
SphIおよびXbaIによりプラスミドを消化し、適した制限部位を有する別のプロモータ領域をクローニングすることにより、3種の遺伝子の発現を同時に調節する5’上流プロモータ領域(即ち、pET28a+におけるT7プロモータ)を、誘導性または構成的のその他のプロモータに置き換えることができる。
【0091】
この非排他的な例において、pET28a+骨格のT7プロモータを、人工IPTG誘導性tacプロモータ(デ・ブール(de Boer)ら、1983)に置き換えた。SphIおよびXbaIによりこのプラスミドを消化することにより、プラスミドpEXT20(ディクスホーン(Dykxhoorn)ら、1996)からtacプロモータを得た。プロモータを含有するDNA断片を精製し、SphIおよびXbaIで消化したpET28−op−HMS1にクローニングして、pTAC−op−HMS1を得た。その結果得られたpTAC−op−HMSプラスミドを単離し、DNA配列決定により、正確な配列を有することを示した。
【0092】
BglIIおよびXbaI制限部位をPCR断片のそれぞれ5’および3’端に導入するプライマ5’−TATAAAGATCTTAGAAATAATTTTGTTTA−3’(配列番号84)および5’−TATAATCTAGACTAAAGTCTTTGAGCAAT−3’(配列番号85)を用いて、lysC
*、asdおよびHOM6のコード配列を含有するオペロンを、プラスミドpTAC−op−HMS1からPCR増幅した。断片を精製し、BglIIおよびXbaIで消化し、pACT3(ディクスホーンら、1996)の対応する部位にクローニングして、ベクタpACT3−op−HMS1を得た。その結果得られたpACT3−op−HMS1プラスミドを単離し、DNA配列決定により、正確な配列を有することを示した。
【0093】
プラスミドpEXT20−op−HMS2およびpACT3−op−HMS2の構築
高忠実度ポリメラーゼPhusion(商標)(Finnzymes)、ならびにNdeIおよびBamHI制限部位をそれぞれ開始コドンの上流および終止コドンの下流に導入するダイレクトおよびリバースプライマ5’−TATAATCATATGCGAGTGTTGAAGTTCG−3’(配列番号86)および5’−TATAATGGATCCTCAGACTCCTAACTTCCA−3’(配列番号87)を用いたPCRにより、二機能性酵素アスパラギン酸キナーゼ/ホモセリン脱水素酵素Iをコードする大腸菌thrA遺伝子を増幅することにより、プラスミドpET28−thrAwtを構築した。大腸菌MG1655由来のゲノムDNAを鋳型として用いた。NdeIおよびBamHIによりPCR産物を消化し、T4 DNAリガーゼ(Biolabs)を用いてpET28a+(Novagen)発現ベクタの対応する部位にライゲーションし、NEB5−アルファコンピテント大腸菌細胞(NEB)に形質転換した。その結果得られたpET28−thrAwtプラスミドを単離し、DNA配列決定により、正確な配列(配列番号88)を有する全長thrA遺伝子を含有することを示した。対応するタンパク質は、配列番号89により表される。
【0094】
位置345におけるセリンをフェニルアラニンに置き換える部位特異的突然変異誘発(S345F)により、スレオニンによる阻害に対し大幅に減少した感受性を有するアスパラギン酸キナーゼ/ホモセリン脱水素酵素を構築した。ダイレクトおよびリバースプライマ5’−TGT
CTCGAGCCCGTATTTTCGTGGTGCTG−3’(配列番号90)および5’−CAGCACCACGAAAATACGGG
CTCGAGACA−3’(配列番号91)ならびに鋳型としてpET28−thrAwtプラスミドを用いて、部位特異的突然変異誘発を行った。PCR(Phusion 1U、HFバッファ20%(v/v)、dNTP0.2mM、ダイレクトおよびリバースプライマ各0.04μM、鋳型プラスミド30〜50ng、水)により、アミノ酸配列を変化させる単一の点突然変異を導入した。PCRにより作製したプラスミドは、変異導入されたクローンの同定を容易にするために、機能的突然変異に加えて、サイレント突然変異により導入されたXhoIのための新しい制限部位(下線)を含有した。37℃で1時間、DpnIによりPCR産物を消化して鋳型DNAを除去し、DH5αコンピテント大腸菌細胞(NEB)に形質転換した。変異導入されたプラスミドpET_Ec_thrA_S345Fを制限部位解析により同定し、所望の突然変異を保有することをDNA配列決定により検証した。
【0095】
プラスミド pET_Ec_thrA_S345Fを鋳型として用いたPCRにより、二機能性大腸菌アスパラギン酸キナーゼ/ホモセリン脱水素酵素のthrAS345Fコード領域を得た(配列番号92)。高忠実度ポリメラーゼPhusion(商標)(Finnzymes)、ならびにSacIおよびXmaI制限部位(下線)をそれぞれ開始コドンの上流および終止コドンの下流に導入するダイレクトおよびリバースプライマ5’−TATAAT
GAGCTCGTTTAACTTTAAGAAGGAGATATACCATGCGAGTGTTGAAGTTCGGCG−3’(配列番号93)および5’−TATAAT
CCCGGGTCAGACTCCTAACTTCCA−3’(配列番号94)を用いたPCRにより、全コード領域を増幅した。ダイレクトプライマは、pET28のリボソーム結合部位(GAAGGAGA)配列を包含する。SacIおよびXmaIによりPCR産物を消化し、T4 DNAリガーゼ(Biolabs)を用いてpEXT20またはpACT3(ディクスホーン、サン・ピエール(St Pierre)&リン(Linn)、1996)のいずれかの対応する部位にライゲーションし、大腸菌DH5α細胞に形質転換した。その結果得られたpEXT20−op−HMS2_step1およびpACT3−op−HMS2_step1プラスミドを単離し、DNA配列決定により、正確な配列を有することを示した。
【0096】
高忠実度ポリメラーゼPhusion(商標)(Finnzymes)、ならびにXmaIおよびBamHI制限部位をそれぞれ開始コドンの上流および終止コドンの下流に導入するダイレクトおよびリバースプライマ5’−TATAAT
CCCGGGGTTTAACTTTAAGAAGGAGATATACCATGAAAAATGTTGGTTTTATCGGC−3’(配列番号95)および5’−TATAAT
GGATCCTTACGCCAGTTGACGAAG−3’(配列番号96)を用いたPCRにより、大腸菌アスパラギン酸セミアルデヒド脱水素酵素asdを増幅した(配列番号98)。ダイレクトプライマは、pET28のリボソーム結合部位配列を包含する。大腸菌MG1655のゲノムDNAを鋳型として用いた。XmaIおよびBamHIによりPCR産物を消化し、T4 DNAリガーゼ(Biolabs)を用いてpEXT20−op−HMS2_step1およびpACT3−op−HMS2_step1の対応する部位に大腸菌thrA遺伝子の直接下流にライゲーションし、大腸菌DH5α細胞に形質転換した。その結果得られたpEXT20−op−HMS2およびpACT3−op−HMS2プラスミドを単離し、DNA配列決定により、正確な配列を有することを示した。
【0097】
<実施例6>
[ホスホエノールピルビン酸(PEP)カルボキシキナーゼ、PEPカルボキシラーゼ、ピルビン酸キナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、イソクエン酸リアーゼ酵素およびガラクトースシンポーターパーミアーゼの過剰発現のためのプラスミドの構築]
鋳型としての大腸菌MG1655由来のゲノムDNAならびにフォワードおよびリバースプライマ、それぞれ
5’TATAATCCCGGGATGCGCGTTAACAATGGTTTGACC
3’(配列番号119)および
5’TATAATTCTAGATTACAGTTTCGGACCAGCCG
3’(配列番号120)を用いてpckコード配列を増幅することにより、大腸菌のpck遺伝子をコードするPEPカルボキシキナーゼを保持するプラスミドpACT3−pckを構築した。XmaIおよびXbaIによりDNA断片を消化し、T4 DNAリガーゼ(Biolabs)を用いてpACT3発現ベクタ(ディクスホーンら、1996)の対応する部位にライゲーションし、大腸菌DH5α細胞に形質転換した。クロラムフェニコール(25μg/mL)を含有する固体LB培地において、形質転換体を選択した。その結果得られたプラスミドを単離し、pck遺伝子の正確な挿入を配列決定により検証した。それぞれaceA、ppc、galPもしくはpck(全て大腸菌)またはラクトコッカス・ラクティス由来のpycAを保持するプラスミドpACT3−aceA、pACT3−ppc、pACT3−galP、pACT3−pckおよびpACT3−pycAを、表9に収載されているプライマを用いて類似的に構築した。
【0098】
【表9】
【0099】
<実施例7>
[ホモセリンアミノ基転移酵素およびOHB還元酵素の過剰発現のためのプラスミドの構築]
それぞれフォワードおよびリバースプライマ5’−ACAATTTCACACAGGAAACAGAATTCGAGCTCGGTACCGTTTAACTTTAAGAAGGAGATATACCATGACCACGAAGAAAGCTGATTAC−3’(配列番号131)および5’−GGATAACTTTTTTACGTTGTTTATCAGCCATGGTATATCTCCTTCTTAAAGTTAAACGGATCCTTATTGATTAACTTG−3’(配列番号132)ならびに鋳型としてプラスミドpET28−Ec−ilvE(実施例4)を用いて、大腸菌由来の分岐鎖アミノトランスフェラーゼ、IlvEのコード配列をPCR増幅した。それぞれフォワードおよびリバースプライマ5’−TAATATGGATCCGTTTAACTTTAAGAAGGAGATATACCATGGCTGATAAACAACGTAAAAAAGTTATCC−3’(配列番号133)および5’−CAATGCGGAATATTGTTCGTTCATGGTATATCTCCTTCTTAAAGTTAAACTCTAGATTAGTTTTTAACTGCAGAAGCAAATTC−3’(配列番号134)ならびに鋳型としてプラスミドpET28−Ll−ldhA(実施例1)を用いて、ラクトコッカス・ラクティス由来の乳酸脱水素酵素、LdhAのコード配列をPCR増幅した。重複伸長PCRにおいて、150ngの各断片を50μLの反応ミックスに添加して、プライマ5’−ACAATTTCACACAGGAAACAGAATTCGAGCTCGGTACCGTTTAACTTTAAGAAGGAGATATACCATGACCACGAAGAAAGCTGATTAC−3’(配列番号135)および5’−CAATGCGGAATATTGTTCGTTCATGGTATATCTCCTTCTTAAAGTTAAACTCTAGATTAGTTTTTAACTGCAGAAGCAAATTC−3’(配列番号136)を用いてPCRを行うことにより、増幅されたPCR断片を融合させた。その結果得られたPCR断片を精製し、KpnIおよびXbaIにより消化し、T4 DNAリガーゼ(Fermentas)を用いてpEXT20(ディクスホーン、サン・ピエール&リン、1996)の対応する部位にライゲーションした。ライゲーション産物を大腸菌DH5αに形質転換した。その結果得られたプラスミドpEXT20−DHBを単離し、DNA配列決定により、Ec−ilvEおよびLl−ldhAの正確な全長コード配列を含有することを示した。続いて、プラスミドを大腸菌MG1655由来の変異体株に形質転換し、DHB産生に関して検査した。
【0100】
<実施例8>
[DHB産生に最適化された株の構築]
DHB産生に対し炭素フラックス再区分および補助因子供給を最適化するために、大腸菌株MG1655における数種の遺伝子を破壊した。ファージ形質導入方法またはダツェンコ(Datsenko)ら(ダツェンコ&ワーナー(Wanner)、2000)に従ったラムダredリコンビナーゼ方法を用いて遺伝子欠失を行った。
【0101】
(ファージ形質導入方法を用いた遺伝子欠失の導入のためのプロトコール)
Keioコレクション(馬場(Baba)ら、2006)から所望の単一欠失を保有する株を得た。50μg/mLカナマイシン、2g/Lグルコースおよび5mM CaCl
2を含有する10mLのLB培地に100μLの一晩前培養物を播種することにより、単一欠失変異体のファージライセートを調製した。1時間37℃のインキュベーション後に、野生型MG1655株から調製した200μLのファージライセートを添加し、細胞溶解が完了するまで、培養物をさらに2〜3時間インキュベートした。200μLのクロロホルムの添加後、細胞調製物に先ず激しくボルテックスをかけ、次にそれを10分間4500×gで遠心分離した。清澄なライセートを回収し、4℃で貯蔵した。
【0102】
LB培地における37℃の一晩培養により、ファージ形質導入のための受容体株を調製した。1.5mLの容量の前培養物を1500×gで10分間遠心分離した。上清を廃棄し、10mM MgSO
4および5mM CaCl
2を含有する溶液600μlに細胞ペレットを再懸濁した。受容体株を含有する溶液100μLを100μLのライセートと混合し、この混合物を30℃で30分間インキュベートすることにより形質導入を行った。その後、100μLの1Mクエン酸ナトリウム溶液を加え、続いて激しくボルテックスをかけた。1mLのLB培地の添加後に、37℃で1時間、細胞懸濁液をインキュベートし、その後、50μg/mLカナマイシンを含有するLB寒天ディッシュ上に細胞を広げた。表11に収載されているプライマを用いて、抗生物質の存在下で増殖することができるクローンが、所望の欠失を含有することをコロニーPCRにより確認した。各遺伝子欠失の導入後に、(チェレパノフ(Cherepanov)&ワッケルナーゲル(Wackernagel)、1995)の方法に従って上述の通りに抗生物質マーカを除去した。記載されている方法により、欠失ΔldhA、ΔadhE、ΔmetA、ΔthrB、ΔrhtBおよびΔlldDを逐次導入した。
【0103】
(ラムダ−redリコンビナーゼ方法を用いた遺伝子欠失の導入のためのプロトコール)
高忠実度ポリメラーゼPhusion(商標)(Finnzymes)および鋳型としてのプラスミドpKD4のFRT隣接カナマイシン抵抗性遺伝子(kan)(ダツェンコ&ワーナー、2000)を用いたPCRにより、欠失カセットを調製した。センスプライマは、各標的遺伝子の5’端に対応する配列(下線)と、続くpKD4のFRT−kan−FRTカセットに対応する20bpを含有した。アンチセンスプライマは、各標的遺伝子の3’端領域に対応する配列(下線)と、続くカセットに対応する20bpを含有した。プライマは、表10に記載されている。DpnIによりPCR産物を消化し、形質転換前に精製した。
【0104】
LB液体培地において37℃でOD
600が0.6となるまで細胞を増殖させ、細胞を100倍濃縮し、これを氷冷10%グリセロールで2回洗浄することにより、大腸菌MG1655株をエレクトロコンピテントにした。エレクトロポレーション(2.5kV、200Ω25μF、2mmギャップキュベット内)により、プラスミドpKD46(ダツェンコ&ワーナー、2000)で細胞を形質転換した。アンピシリン(100μg/mL)LB固体培地において30℃で形質転換体を選択した。
【0105】
ラムダRedリコンビナーゼ発現プラスミドpKD46を保持するエレクトロコンピテント大腸菌株において破壊カセットを形質転換した。アンピシリン(100μg/mL)を含有する液体SOB培地において30℃で細胞を増殖させた。培養物のOD
600が0.1に達したときに、10mMアラビノースを添加することによりラムダredリコンビナーゼシステムを誘導した。OD
600が0.6になるまで細胞をさらに増殖させ、その後、遠心分離により収集し、氷冷10%グリセロールで2回洗浄し、エレクトロポレーションにより破壊カセットで形質転換した。LB液体培地における30℃の一晩の表現型発現後に、25μg/mLカナマイシンを含有する固体LB培地上に細胞を蒔いた。30℃における培養後に形質転換体を選択した。
【0106】
Crimson Taqポリメラーゼ(NEB)を用いたコロニーPCRにより、遺伝子置き換えを検証した。隣接する遺伝子座特異的プライマ(表11を参照)を用いて第1の反応を行って、親断片の同時喪失および新しい変異体特異的断片の獲得を検証した。1種の遺伝子座特異的プライマを、FRT−カナマイシン抵抗性カセット内で整列する(センス遺伝子座プライマ/k1revおよびk2for/リバース遺伝子座プライマ)対応するプライマk1revまたはk2for(表11を参照)のうち1種と共に用いることにより、2種の追加的な反応を行った。
【0107】
その後、FLPリコンビナーゼ保持プラスミドpCP20(チェレパノフ&ワッケルナーゲル、1995)を用いて染色体から抵抗性遺伝子(FRT−kan−FRT)を切除し、1個のFRT部位を含有するscar領域を残した。pCP20は、温度感受性複製およびFLPリコンビナーゼ合成の熱誘導を示すアンピシリンおよびCmRプラスミドである。カナマイシン抵抗性変異体をpCP20で形質転換し、30℃でアンピシリン抵抗性形質転換体を選択した。次に、固体LB培地において37℃で形質転換体を増殖させ、全抗生物質抵抗性の喪失に関して検査した。crimson taqポリメラーゼおよび隣接する遺伝子座特異的プライマ(表11)を用いたコロニーPCRにより、FRT−カナマイシンカセットの切除を解析した。上述のステップを反復することにより、複数欠失を得た。
【0108】
【表10】
【0109】
【表11】
【0110】
【表12】
【0111】
【表13】
【0112】
【表14】
【0113】
アスパラギン酸キナーゼ、アスパラギン酸セミアルデヒド脱水素酵素およびホモセリン脱水素酵素を同時発現するプラスミド(pACT3−op−HMS1)を、ホモセリンアミノ基転移酵素およびOHB還元酵素を発現するプラスミド(pEXT20−DHB)と共に、最適化された宿主株において形質転換した。クロラムフェニコール(25μg/mL)およびアンピシリン(100μg/mL)を含有する固体LB培地において、形質転換体を選択した。構築された株の非排他的な例は、表12に収載されている。
【0114】
【表15】
【0115】
宿主株におけるlacIのゲノム欠失と共に、上述のプラスミドの骨格からのlacI遺伝子の除去が、上述のプラスミドからのタンパク質発現を構成的なものとし得ることが理解される。
【0116】
<実施例9>
[ホモセリン−OHB経路を経たDHBの発酵性産生の実証]
株および培養条件:表12に収載されている株を用いて実験を行った。170rpmで回転するInfors回転式振盪機において、37℃で全培養を行った。グリセロールストックから一晩培養物(試験管における3mL培地)に播種し、これを用いて、500mL振盪フラスコ内で培養する100mLの増殖培養物における初期OD
600を0.05に調整した。増殖培養物のOD
600が0.8に達したら、1mmol/Lの濃度となるようIPTGを加えた。1リットル培養培地は、20gグルコース、18g Na
2HPO
4*12H
2O、3g KH
2PO
4、0.5g NaCl、2g NH
4Cl、0.5g MgSO
4*7H
2O、0.015 CaCl
2*2H
2O、100倍希釈した濃HClにおいて調製した0.06mol/L FeCl
3ストック溶液1mL、2mLの10mMチアミンHClストック溶液、20g MOPSおよび1mLの微量元素溶液(1リットル当たり:0.04g Na
2EDTA*2H
2O、0.18g CoCl
2*6H
2O、ZnSO
4*7H
2O、0.04g Na
2MoO
4*2H
2O、0.01g H
3BO
3、0.12g MnSO
4*H
2O、0.12g CuCl
2*H
2Oを含有)を含有した。培地pHを7に調整し、培地を濾過滅菌した。抗生物質カナマイシン硫酸塩、アンピシリンおよびクロラムフェニコールは、必要であれば、それぞれ50mg/L、100mg/Lおよび25mg/Lの濃度となるよう加えた。
【0117】
LC−MS解析によるDHB濃度の推定:自動溶離液(KOH)発生システム(RFIC、Dionex)および試料を4℃で保持するオートサンプラ(AS50、Dionex)を備えるDionex(米国サニーベール)製のICS−3000システムにおいて、液体陰イオン交換クロマトグラフィを行った。AG11 HC(50×2mm、Dionex)プレカラムにより保護されたIonPac AS11 HC(250×2mm、Dionex)カラムにおいて分析物を分離した。カラム温度を25℃に保持し、流速を0.25mL/分に固定し、以前に記載された(グルーサック(Groussac)E、オルティス(Ortiz)M&フランソワ(Francois)J(2000):Improved protocols for quantitative determination of metabolites from biological samples using high performance ionic−exchange chromatography with conductimetric and pulsed amperometric detection.Enzyme.Microb.Technol.26、715〜723)KOH勾配をアプライしつつ分析物を溶出した。注入された試料容量は、15μLであった。バックグラウンド低下のために、ASRSウルトラII(2mm、外部水モード、75mA)陰イオン抑制器を用いた。ESIモード(分割は1/3、窒素圧は90psi、キャピラリー電圧は3.5kV、プローブ温度は450℃であった)の質量感受性検出器(MSQ Plus、Thermo)を用いて、分析物を定量化した。
【0118】
(結果)
24時間の培養後に、LC−MS解析により異なる株の上清におけるDHB濃度を定量化した。株ECE73、ECE74、ECE75およびECE76は、それぞれ0mg/L、3.7mg/L、0.67mg/Lおよび11.9mg/LのDHBを産生した。
【0119】
(参考文献)
シャンベラン、E.、リイネン、L.、ロルケ、F.、ジットン、C.、バン・ヒルカマブリーグ、J.E.T.、ウーテルス、J.A.&イヴォン、M.(2009).The D−2−hydroxyacid dehydrogenase incorrectly annotated PanE is the sole reduction system for branched−chain 2−keto acids in Lactococcus lactis.J.Bacteriol 191、873〜881。
チェレパノフ、P.P.&ワッケルナーゲル、W.(1995).Gene disruption in Escherichia coli: TcR and KmR cassettes with the option of Flp−catalyzed excision of the antibiotic−resistance determinant.Gene 158、9〜14。
ダツェンコ、K.A.&ワーナー、B.L.(2000).One−step inactivation of chromosomal genes in Escherichia coli K−12 using PCR products.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 97、6640〜6645。
ディクスホーン、D.M.、サン・ピエール、R.&リン、T.(1996).A set of compatible tac promoter expression vectors.Gene 177、133〜136。
ハーディケ(Hadicke)、O.&クラムト(Klamt)、S.(2010).CASOP: a computational approach for strain optimization aiming at high productivity.J.Biotechnol 147、88〜101。
クラムト、S.、サエズ−ロドリゲス(Saez-Rodriguez)、J.&ギレス(Gilles)、E.D.(2007).Structural and functional analysis of cellular networks with CellNetAnalyzer.BMC Syst Biol 1、2。
ロスマン(Rothman)、S.C.&キルシュ(Kirsch)、J.F.(2003).How does an enzyme evolved in vitro compare to naturally occurring homologs possessing the targeted function? Tyrosine aminotransferase from aspartate aminotransferase.J.Mol.Biol 327、593〜608。
サンブルック、J.、フリッチュ、E.F.&マニアティス、T.(1989).Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2 ed. Cold Spring Harbor: Cold Spring Harbor Laboratory Press。
シュスター(Schuster)、S.、ダンデカー(Dandekar)、T.&フェル(Fell)、D.A.(1999).Detection of elementary flux modes in biochemical networks: a promising tool for pathway analysis and metabolic engineering.Trends Biotechnol 17、53〜60。
ウェルナー、D.&リヒテンベルク、L.A.(1971).Assay of amino acid oxidase.Methods in Enzymology 17、Part B、593〜596。