(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6293752
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】摩擦材料
(51)【国際特許分類】
F16D 69/02 20060101AFI20180305BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
F16D69/02 G
C09K3/14 520M
C09K3/14 520G
C09K3/14 520F
C09K3/14 520J
C09K3/14 530G
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-525999(P2015-525999)
(86)(22)【出願日】2013年8月7日
(65)【公表番号】特表2015-530532(P2015-530532A)
(43)【公表日】2015年10月15日
(86)【国際出願番号】IB2013056469
(87)【国際公開番号】WO2014024152
(87)【国際公開日】20140213
【審査請求日】2016年6月17日
(31)【優先権主張番号】TO2012A000713
(32)【優先日】2012年8月7日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】514060514
【氏名又は名称】アイティーティー・イタリア・エス.アール.エル
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】トロンボット、フラビオ
【審査官】
保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−008865(JP,A)
【文献】
特開2008−179806(JP,A)
【文献】
特開平10−195420(JP,A)
【文献】
特開2004−182870(JP,A)
【文献】
特開2000−290636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/14
F16D49/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線維性基材、充填剤、及び有機結合剤を含む組成物から形成される、車両のブレーキパッド及びシューを製造するための、アスベストフリーの有機摩擦材料であって、前記組成物は、銅及び銅化合物又は合金を全く含まないが、前記線維性基材中に、無機及び/又は有機繊維と共に、前記組成物の合計体積から計算して1〜10体積%のステンレススチール繊維を含み、前記組成物はまた、金属性チタン酸塩から作製される、1〜25体積%の「線維性酸化物の系」を含み、ジルコニアが様々な比率で添加され、ジルコニアとチタン酸塩との間の体積含有率の比率は1:1〜1:2であることを特徴とする、アスベストフリーの有機摩擦材料。
【請求項2】
線維性基材、充填剤、及び有機結合剤を含む組成物から形成される、車両のブレーキパッド及びシューを製造するための、アスベストフリーの有機摩擦材料であって、前記組成物は、銅及び銅化合物又は合金を全く含まないが、前記線維性基材中に、無機及び/又は有機繊維と共に、前記組成物の合計体積から計算して1〜10体積%のステンレススチール繊維を含み、前記組成物はまた、金属性チタン酸塩から作製される、1〜25体積%の「線維性酸化物の系」を含み、ジルコニアが様々な比率で添加され、ステンレススチール繊維の体積含有率と、ジルコニア及びチタン酸塩の体積含有率の合計との間の比率は、1:4〜1:8であることを特徴とする、アスベストフリーの有機摩擦材料。
【請求項3】
前記チタン酸塩は六チタン酸カリウム(K2Ti6O13)、又は他のカリウム及び/若しくはナトリウムチタン酸塩であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の摩擦材料。
【請求項4】
前記組成物は、0〜10体積%の固体潤滑剤を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の摩擦材料。
【請求項5】
適切に選択された量の黒鉛及び/又はコークスを組成物中に含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の摩擦材料。
【請求項6】
前記摩擦材料の組成物全体の2〜15体積%の量で黒鉛及び/又はコークスを前記組成物中に含むことを特徴とする、請求項5に記載の摩擦材料。
【請求項7】
前記組成物中に含まれる、前記ステンレススチール繊維が、0.5〜1.5mmの合計繊維長さ、及び40〜150マイクロメートルの繊維直径を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の摩擦材料。
【請求項8】
合計体積に対する体積で計算し、以下の割合の組成物:
有機繊維 1〜10体積%
無機繊維 1〜20体積%
樹脂 5〜30体積%
炭素材料 1〜15体積%
他の金属 0〜10体積%
無機硫黄 0〜15体積%
無機塩 0〜30体積%
無機酸化物 1〜30体積%
珪酸塩 1〜20体積%
チタン酸塩 1〜25体積%
ステンレススチール 1〜10体積%
を呈することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の摩擦材料。
【請求項9】
前記結合剤は、前記組成物の前記合計体積に対して、2〜30体積%の量で、前記組成物に含まれている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の摩擦材料。
【請求項10】
結合剤がフェノール樹脂により構成されていることを特徴とする、請求項9に記載の摩擦材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスベストフリーの有機材料、特に、NAO(「非アスベスト有機物」)として既知の種類の摩擦材料、すなわち、アスベストフリーの有機摩擦材に関する。
【0002】
特に、本発明は、良好な摩耗耐性、係合表面の磨損を回避することを可能にする、係合表面(車両のブレーキの分野における、ブレーキディスク又はドラムの表面)における緩やかさ、及び適切なブレーキング機能(特に、高温における摩擦安定性)などにより、自動車のブレーキ、及び一般的に自動車業界における同様の用途(例えば、クラッチディスク)における摩擦材料として使用するために適合された、アスベストフリーの有機摩擦材料に関する。
【背景技術】
【0003】
車両のドラムブレーキのブレーキシュー、及びディスクブレーキのブレーキパッド、並びに他の装置(例えば、クラッチディスク)として使用される摩擦材料は、線維性材料、結合剤、及び充填剤から形成される基材を含む。過去において、アスベストは、線維性材料として比較的多く使用されていたが、大きな環境問題を呈し、また、人体の健康に周知の毒性作用を有したために、ここしばらく法律で禁止されている。そのため、この材料は、例えば、岩綿、ウォラストナイト、繊維ガラスなどの無機物、並びにアラミド繊維及びカーボン繊維などの有機物の両方、加えて金属、例えば、銅、スズ、鉄、アルミニウムの繊維又は粉末、青銅又は真鍮などの他の金属又は合金などの、他の材料に代えられた。結合剤は、通常、フェノール樹脂ベースの熱硬化性ポリマーである。充填剤として使用されるさまざまな材料には、例えばバライト(硫酸バリウム)、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タルク、珪酸ジルコニウム、ジルコニア、雲母、金属粉末、二硫化モリブデン、ゴム(粉末又は顆粒)、黒鉛が挙げられる。特に、黒鉛、及び二硫化モリブデンは、摩耗耐性を改善する。
【0004】
EP1227262は、アンチモニー化合物の使用を排除する一方で、依然として、特に高温において良好な摩耗耐性を維持する目的のため、およそ10体積%の銅繊維を線維性材料として、並びに0.1〜15体積%のスズ及び/又は硫化スズを含む、上記の種類の摩擦材料を開示している。
【0005】
EP482204もまた、互いに異なり、異なる融点を有する3つのスズ化合物(金属性スズを含む)の混合物が同時に存在することにより、ブレーキシュー又はブレーキパッドが、使用中にディスク又はドラムの接触表面に付着する、又は「膠着する」のを回避する、という問題を解決する、4〜9体積%の青銅繊維を含む、上記の種類の摩擦材料を開示する。
【0006】
それでも、環境を保全し、人体の健康に対する障害の可能性を避けるために、様々な国内及び国際規格は、アスベスト及び重金属を含まないだけではなく、銅が少ない、又はこれを全く含まない、摩擦材料の使用を、より頻繁に課すようになった(規格は既にいくつかのアメリカの州で承認され、来年から施行される)。
【0007】
したがって、当該技術分野において、アスベスト、重金属、及び銅を含まず、しかし同時にこのような物質を含む摩擦材料によるものと少なくとも匹敵する性能を保持する摩擦材料を提供する必要性が存在している。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、先行技術の不利益を克服し、銅を含むアスベストフリーの有機摩擦材料と匹敵しうるブレーキング性能を呈することができる、青銅及び真鍮などの、銅及び銅化合物を含まない、アスベストフリーの有機摩擦材料を提供することである。
【0009】
本発明はしたがって、請求項1に定義されるアスベストフリーの摩擦材料に関する。
【0010】
特に、本発明に係る摩擦材料は、線維性基材、充填剤、及び有機結合剤を含む組成物又は混合物から形成され、銅及び銅化合物又は合金を全く含まないが、線維性基材中に、無機及び/又は有機繊維と共に、組成物の合計体積から計算して1〜10体積%のステンレススチール繊維、例えば、従来的なUNI X 10 Cr Ni 1808(「inox 18−8」として既知)、又は同等のステンレススチール、10(重量)%のNi(「inox 18−10」として既知)を含む。
【0011】
本発明に係る摩擦材料はまた、金属性チタン酸塩、好ましくは六チタン酸カリウム(K
2Ti
6O
13)、又はカリウム及び/若しくはナトリウムの他のチタン酸塩に基づく、本発明による、1〜25体積%の「線維性酸化物の系」を含み、これにジルコニア(これ自体は線維性材料でない)が様々な比率で添加される。
【0012】
特に、本発明に係る摩擦材料を構成する組成物又は混合物において、ジルコニアと、チタン酸塩(特に、六チタン酸カリウム)との間の体積含有率の比率は、1:1〜1:2である。
【0013】
更に、ステンレススチール繊維の体積含有率と、ジルコニア及びチタン酸塩の体積含有率の合計との間の比率は、1:4〜1:8でなくてはならない。
【0014】
本発明のアスベストフリーの有機摩擦材料を形成するために使用される摩擦材料の組成物は、SnS及びSnS
2などの、スズ硫化物など、0〜10体積%の固体潤滑剤を含み得る。
【0015】
組成物中に黒鉛、及び/又はコークスを含むことも望ましい。
【0016】
黒鉛は、摩擦材料中に一般的に使用される既知の任意の黒鉛であり得る。
【0017】
黒鉛(及び/又はコークス)は、適切に選択された量(これは、好ましくは摩擦材料の組成物全体の2〜15体積%を含む)で添加される。
【0018】
摩擦材料の組成物の他の成分は、当該技術分野において既知である摩擦材料中に使用される成分であり得る。
【0019】
特に、線維性基材の残部は、摩擦材料中に一般的に使用される、アスベスト以外の任意の有機繊維又は無機繊維であり得る。代表的な実施形態としては、例えばガラス繊維、岩綿、ウォラストナイト、海泡石、及びアタパルジャイトなどの無機繊維、及びカーボン繊維、アラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリアミド繊維、フェノール繊維、セルロース、及びアクリル繊維、又はPAN(ポリアクリルニトリル)などの有機繊維が挙げられる。
【0020】
線維性基材は、短繊維、又は粉末の形態で使用され得る。
【0021】
線維性基材、及び特に使用されるステンレススチール繊維が、0.5〜1.5mmの合計繊維長、及び40〜150マイクロメートルの繊維直径を有することが望ましい。
【0022】
当該技術分野において既知の様々な材料が有機又は無機充填剤として使用され得る。代表的な実施形態としては、炭酸カルシウム沈殿物、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、フッ化カルシウム、消石灰、タルク、三酸化モリブデン、珪酸塩ジルコニウム、酸化鉄、雲母、硫化鉄、二酸化ケイ素、バーミキュライト、ゴム粉末(ゴム粉末及び顆粒)、ニトリルゴム粉末(加硫物)金属粉末(銅及びその合金を除く)、アクリルゴム粉末(加硫物)が挙げられる。
【0023】
これらは、単独で、又は2つ以上の組み合わせとして使用され得る。このような充填剤は、摩擦材料の組成物全体に基づき、好ましくは2〜40体積%の量で含まれる。
【0024】
結合剤は、摩擦材料において一般的に使用される、既知の結合剤であり得る。
【0025】
好適な結合剤の代表的な実施形態としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、及びエポキシ樹脂、様々な変性フェノール樹脂、例えば、エポキシ変性フェノール樹脂、油変性フェノール樹脂、アルキルベンゼン変性フェノール樹脂、及びアクリルニトリルブタジエンゴム(NBR)が挙げられる。
【0026】
これらの化合物のいずれか1つ、又はこれらの2つ以上の組み合わせが使用され得る。結合剤は、摩擦材料の組成物全体に基づき、好ましくは2〜30体積%の量で含まれる。
【0027】
本発明の別の態様によれば、本発明による摩擦材料はまた、ステンレススチール繊維に加え、0.2〜1.5mmの全長、50〜250μmの合計直径、1〜10体積%の合計量を有する、亜鉛繊維を含んでもよい。
【0028】
より一般的に、本発明による摩擦材料は、合計体積に対する体積により計算して、以下の%組成を呈する:
有機繊維 1〜10
無機繊維 1〜20
樹脂 5〜30
炭素材料 1〜15
他の金属 0〜10(とりわけ亜鉛)
無機硫黄 0〜15
無機塩 0〜30
無機酸化物 1〜30
珪酸塩 1〜20
チタン酸塩 1〜25
ステンレススチール 1〜10
本発明の摩擦材料は一般的に、例えば、Henschel、Loedige、又はEirichミキサなどの、好適なミキサにおいて、特定量の上記の線維性基材と、結合剤及び充填剤とを一緒に均一に混合することにより生成される。
【0029】
加圧は、130〜200℃(266〜392°F)の温度で、150〜1500Kg/cm
2(14,7〜147,1MPa)の圧力で、3〜10分の時間にわたり行われ、又はダイ内で混合が行われた後、130〜180℃(266〜356°F)の温度で、150〜500Kg/cm
2(14,7〜49MPa)の圧力で、3〜10分の時間にわたり加圧が行われる。
【0030】
結果として得られる加圧された物品は典型的には、150〜250℃(302〜482°F)で、2〜10時間にわたり熱処理することにより予備硬化され、その後スプレー塗装、又は粉末コーティングされ、炉乾燥され、場合によって必要に応じて機械加工されて、最終製品を生成する。
【0031】
本発明の摩擦材料は、自動車、トラック、貨車、及び他の様々な種類の車両、並びに工業機械のブレーキの、ディスクライニング、シュー、及びパッド等の用途、又はクラッチディスクにおいて使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明は、以下の実施例及び比較例、及び、ブレーキング性能テストの結果を図形の形態で例示する、添付の図面の
図1〜4を参照して、より詳細に説明される。
【
図1】
図1は、銅及びその化合物/合金、及びステンレススチール繊維の両方を含まない、比較材料「配合3」を指す。
【
図2】
図2は、銅を含む現況技術の材料「配合1」を指す。
【
図3】
図3は、銅を含まないが、チタン酸カリウム及びジルコニアと共にステンレススチール繊維を含む、本発明の材料「配合2」を示す。
【
図4】
図4は、銅を含まず、ステンレススチール繊維を含むが、チタン酸塩を含まない、比較材料「配合4」を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
実施例及び比較例は、例示目的のために記載され、これは本発明の制限を意図しない。
【0034】
実施例
表1に示される成分は、Loedigeミキサ内で均一に混合され、200kg/cm
2(19,6MPa)の圧力下で、3分間にわたり、160℃(320°F)の温度で、ダイで加圧された。その後、5時間にわたり200℃(392°F)の温度での熱処理により硬化されて、「配合2」として示される本発明による摩擦材料が生成され、「配合3」として示される比較材料は、本発明の材料と実質的に同一の組成を有するが、ステンレススチール繊維を含まず、同量の硫酸バリウムと代えられ、「配合4」として示される比較材料は、「配合2」によるものと同一の組成を有するが、チタン酸カリウムがバライトに代えられ、「配合1」として示される既知の技術による比較材料は、銅を含んだ。
【表1】
【0035】
このようにして得られた材料は、車両に取り付けられ、以下のサイクルによりベンチ試験で試験された。
【0036】
・試験設定:80〜30km/hへ96回のブレーキング(49,7〜18,6mph)
・特性値:80〜40Km/hへ8回のブレーキング(49,7〜24,8mph)
・高速フェード試験:168〜80Km/hへ5回のブレーキング(104,4〜49,7mph)、及び168〜5Km/hへ5回のブレーキング(104.4〜3.1mph)
・高速フェード試験:168〜80Km/hへ9回のブレーキング(104,4〜49,7mph)
・特性値:80〜40Km/hへ8回のブレーキング(49,7〜24,8mph)
得られた結果は、
図1〜4のグラフに例示されている。
【0037】
明らかに、Xの印のついた点により表され、ブレーキ中における油の消費を表す曲線を特に観察し、銅を含まない、本発明による摩擦材料は、全体的におよそ6.9体積%の銅を含む、当該技術分野において既知のものと匹敵するブレーキング性能を有する。逆に、銅及びステンレススチールの双方を含まないが、依然として他の成分については本発明の材料と全体的に同様の組成を有する、比較材料「配合3」は、ブレーキング中の油消費が指数関数的に増加し、これは車両のブレーキングが漸進的に「より長い」挙動を呈し、車両において一般的に許容不可能であることを意味する。
【0038】
他の図面ともあわせて、
図4の比較例から、ステンレススチール繊維と、チタン酸カリウム(
図3)の組み合わせを有する材料が、銅の代わりにステンレススチールを備えるが、チタン酸塩カリウムを含まない同じ材料よりも確かに優れていることが、更に明らかとなる。更に、最後の材料「配合4」は、対照材料「配合3」のものより確かに優れた挙動を呈し、現況技術の材料「配合1」のものよりも高い油消費を呈する一方で、対照材料「配合3」が代わりに呈する指数関数的な変化を呈さず、特定の選択されるステンレススチール繊維の存在が、単独でも、銅及びその合金なしに、革新的な結果をもたらすことを示している。
【0039】
したがって、本発明の目的が完全に達成される。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
特に、線維性基材、充填剤、及び有機結合剤を含む組成物又は混合物から形成される、車両のブレーキパッド及びシューを製造するための、アスベストフリーの有機摩擦材料であって、前記組成物は、銅及び銅化合物又は合金を全く含まないが、前記線維性基材中に、無機及び/又は有機繊維と共に、前記組成物の合計体積から計算して1〜10体積%のステンレススチール繊維を含み、前記組成物はまた、金属性チタン酸塩、好ましくは六チタン酸カリウム(K2Ti6O13)、又は他のカリウム及び/若しくはナトリウムチタン酸塩から作製される、1〜25体積%の「線維性酸化物の系」を含み、ジルコニアが様々な比率で添加され、ジルコニアとチタン酸塩との間の体積含有率の比率は1:1〜1:2であることを特徴とする、アスベストフリーの有機摩擦材料。
[2]
特に、線維性基材、充填剤、及び有機結合剤を含む組成物又は混合物から形成される、車両のブレーキパッド及びシューを製造するための、アスベストフリーの有機摩擦材料であって、前記組成物は、銅及び銅化合物又は合金を全く含まないが、前記線維性基材中に、無機及び/又は有機繊維と共に、前記組成物の合計体積から計算して1〜10体積%のステンレススチール繊維を含み、前記組成物はまた、金属性チタン酸塩、好ましくは六チタン酸カリウム(K2Ti6O13)、又は他のカリウム及び/若しくはナトリウムチタン酸塩から作製される、1〜25体積%の「線維性酸化物の系」を含み、ジルコニアが様々な比率で添加され、ステンレススチール繊維の体積含有率と、ジルコニア及びチタン酸塩の体積含有率の合計との間の比率は、1:4〜1:8であることを特徴とする、アスベストフリーの有機摩擦材料。
[3]
前記組成物は好ましくは、0〜10体積%の固体潤滑剤を含むことを特徴とする、[1]又は[2]2に記載の摩擦材料。
[4]
前記摩擦材料の前記合計組成物の、好ましくは2〜15体積%の、適切に選択された量の、黒鉛及び/又はコークスを組成物中に含むことを特徴とする、[1]〜[3]のいずれか一に記載の摩擦材料。
[5]
前記組成物中に含まれる、前記線維性基材、及び特に、前記ステンレススチール繊維が、0.5〜1.5mmの合計繊維長さ、及び40〜150マイクロメートルの繊維直径を有することを特徴とする、[1]〜[4]のいずれか一に記載の摩擦材料。
[6]
合計体積に対する体積で計算し、以下の割合の組成物:
有機繊維 1〜10
無機繊維 1〜20
樹脂 5〜30
炭素材料 1〜15
他の金属 0〜10
無機硫黄 0〜15
無機塩 0〜30
無機酸化物 1〜30
珪酸塩 1〜20
チタン酸塩 1〜25
ステンレススチール 1〜10
を呈することを特徴とする、[1]〜[5]のいずれか一に記載の摩擦材料。
[7]
前記結合剤は、前記組成物の前記合計体積に対して、2〜30体積%の量で、前記組成物に含まれ、好ましくはフェノール樹脂により構成されている、[1]〜[6]のいずれか一に記載の摩擦材料。