特許第6293757号(P6293757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6293757デジタル撮像ビューワを使用する宝石鑑別装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6293757
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】デジタル撮像ビューワを使用する宝石鑑別装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/87 20060101AFI20180305BHJP
【FI】
   G01N21/87
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-530112(P2015-530112)
(86)(22)【出願日】2013年8月30日
(65)【公表番号】特表2015-531475(P2015-531475A)
(43)【公表日】2015年11月2日
(86)【国際出願番号】US2013057619
(87)【国際公開番号】WO2014036460
(87)【国際公開日】20140306
【審査請求日】2016年7月27日
(31)【優先権主張番号】13/901,445
(32)【優先日】2013年5月23日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/695,746
(32)【優先日】2012年8月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508137176
【氏名又は名称】ジェメックス システムズ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ワグナー、ランドール
(72)【発明者】
【氏名】シェッケルト、カート ピー.
(72)【発明者】
【氏名】チャオ、シャンホン
(72)【発明者】
【氏名】カッセンズ、グレン
【審査官】 越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−125045(JP,A)
【文献】 特開2003−315905(JP,A)
【文献】 特開2010−160286(JP,A)
【文献】 特開2004−102315(JP,A)
【文献】 特表2002−516992(JP,A)
【文献】 特開昭57−171249(JP,A)
【文献】 特開昭57−165742(JP,A)
【文献】 特開昭57−156545(JP,A)
【文献】 特開2006−081113(JP,A)
【文献】 米国特許第07461017(US,B2)
【文献】 米国特許第06020954(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−21/958
G03B 17/14
G03B 17/56
G02B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラレンズを有する電子通信デバイスと共に動作するための宝石ビューワであって、
1つまたは複数の隣接する側面部によって互いに離隔される上面部と底面部を含む基部と、
前記底面部に取り付けられたビューワ本体と、
前記ビューワ本体に取り付けられ、しかし前記カメラレンズからオフセットされたビューワレンズと、
前記ビューワ本体から前記カメラレンズに光を指向する第1のミラーおよび第2のミラーを含むチャネル本体と、
前記ビューワレンズ上に位置決めされた合焦管と、
前記ビューワレンズとは逆側で前記合焦管上に位置決めされた合焦ガラスと
を備える宝石ビューワ。
【請求項2】
前記合焦ガラスを所定位置に保持するための着脱可能な保定リングをさらに備え、前記合焦ガラスが、前記合焦ガラス上に宝石を受け取るように位置決めされる請求項に記載の宝石ビューワ。
【請求項3】
前記上面部、前記底面部、および前記1つまたは複数の側面部が、追加の圧力または機械的手段を加えることなく主に摩擦によって前記基部を前記電子通信デバイスに固定できるように、前記電子通信デバイスと接触するように配置される請求項に記載の宝石ビューワ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の宝石の鑑別、特に、デジタル撮像ビューワを使用するそのような宝石の鑑別に関する。
【背景技術】
【0002】
20世紀後半に、研磨済み宝石の宝飾品を所有することが急激に流行したことにつれて、それ以来、宝石購入人口の全体的な純資産に対する宝石の相対的な重要性が高まっている。特に、ダイヤモンドは、単に富裕者の見栄のためのものではない。高級な贅沢品または大切なエンゲージリングとして、ダイヤモンドの価格は購買者の一般集団の家計予算と比べると高いことがあるが、価値、特に感情的価値により、ある人にとっては、1つの特定のダイヤモンドが金銭的価値を超えて掛け替えのないものになり得る。紛失したダイヤモンドまたは盗難されたダイヤモンドは、特に所有者が保険をかけていた場合には、かなり簡単に代わりの品を得ることができる。しかし、結婚の誓いの思いまたは人が抱き得る他の無数の特別な思い出が吹き込まれたダイヤモンドを失うことは、代わりのダイヤモンドでは埋めることができない喪失感を生む。サファイア、ルビー、エメラルド、またはタンザナイトなど他の宝石も、ダイヤモンドほどの価値はないが、しばしば所有者にとって大きな感情的価値を持つ。そのため、宝石を常に安全に所有しておくことが、所有者にとって非常に重要になる。必ずしも悪い考えであるわけではないが、2つの根源的な事実がある。第1に、宝石の所有者は、サイズが実質的に同じである場合、多くの宝石の中から自分の特定の宝石を選び出すことができない。選択肢が2つしかなくても非常に難しい。第2に、ダイヤモンド等級付けシステムにより、素人が肉眼で見ると外観、サイズ、および種類が概して同様に見えることがあるダイヤモンドが価格的に大きく異なることがある。この違いは、不誠実な者に、高品質の価値の高いダイヤモンドを低品質の安いダイヤモンドとすり替える動機を与える。なぜなら、所有者がその違いを見分けることができない可能性が高いからである。
【0003】
宝石の所有者が宝石の違いを確実に見分けることができれば、すなわち、自分の宝石と世界中の全ての他の宝石とを簡単に鑑別できれば、より気楽に宝石を身に着けて出かけて披露できるだけでなく、自分の宝飾品を修理や嵌め直しに出す必要があるときに、宝石商など第三者に信頼して預けることができる。宝石を鑑別することができることは、正に、最も大切にしている物を身に着ける際に感じる不安を減らすために、一般消費者にとって価値がある。鑑別可能であるので、宝石を紛失した場合または盗難された場合に回収できるであろうという考え、またはすぐに見つかってしまうので悪徳宝石商が欺こうとしなくなるという考えは、一般的な消費者にとって実際的な分かりやすい利益である。また、宝石を鑑別することができることで、保険料が安く済むという実際の金銭的な利益があり、あるいは紛失した物品または盗難された物品が戻ってくる、また所有者が公然と行われる詐欺の被害者になるのを防ぐといった利益がある。
【0004】
宝石を鑑別する方法を開発する試みが続けられている。最も先進のレベルでは、研磨済みダイヤモンドが等級付け鑑定所に送られ、そこで、熟練の技師が、顕微鏡を使用し、訓練と長年の経験に基づいた自分の主観的な判断の下で、多くの一般に観察可能な特徴について各ダイヤモンドの等級を表す。これは、一般に、ダイヤモンドの4C等級と呼ばれ、すなわち、カラー、カット、クラリティ、およびカラット重量である。この解析は、ダイヤモンド材料自体の天然の傷のマッピングを含むとき、すなわち、確認できる観察可能な傷が存在するとき、ダイヤモンドの鑑別のかなり良好な方法を実現する。しかし、消費者にとって、ダイヤモンド等級付けを学んで実践することは実用的でなく、鑑定所で実施する度に費用がかかり、また結果が出るまでに数週間の時間もかかる。当然、その間にわたって所有者は宝石を自分の手から放す必要があり、これは、宝石を検証してもらうというそもそもの決心自体を躊躇させる。さらに、ダイヤモンドが傷を有さない、またはごくわずかな傷しか有さない場合、同様の等級のダイヤモンドを見分けることは非常に難しいことがある。
【0005】
ダイヤモンドの実地鑑別を行うための他の最も一般的な手法は、可読のシリアル番号または記号を付けるなど、唯一無二のものとなるようにダイヤモンドに単に印を付けることである。この印付けを達成する少なくとも2つの一般的な方法が存在する。すなわち、一つは、ダイヤモンドのガードル、すなわち赤道線またはウエストラインへのレーザ刻印であり、他の一つは、表面、最も一般的にはダイヤモンドのテーブル面、または通常は平坦な上側切子面へのプラズマエッチングまたは刻印である。これらの方法はどちらも、いくつかの実用上の欠点を有する。
【0006】
レーザ刻印を用いると、刻印は非常に小さく、見るには拡大する必要がある。焼き付け自体は、非常に粗い燃焼プロセスであり、読取りが難しい。さらに、レーザマークを除去したり、全く同じタイプの別のマークを作成したりすることはかなり簡単で安価である。これは、レーザ刻印されたシリアル番号を有するダイヤモンドを、実質的に妨げなくすり替えられることを意味する。さらに、ダイヤモンドがリングまたは宝飾品に取り付けられると、爪によって刻印が見えなくなることがよくあり、したがって、消費者は、(それほど簡単ではないが)読み取れるように十分大きく画像を拡大することができた場合でさえ、依然として刻印を見ることができないことがある。
【0007】
他の代替法である、テーブルのプラズマエッチングまたは刻印は、やはりかなり拡大しないと容易には読み取ることができない印付けを生成する。特殊な安価な刻印ビューワが消費者向けに開発されているが、そのようなビューワは、使用したいときに常には人の手元にないことがある。刻印が簡単には除去されず、簡単には複製されない(時として複製が不可能である)が、いまだに宝飾業界で広くは採用されていない。これは、新しい技術であること、少量に適用するには比較的コストがかかること、非常に高価なハイテク機器および熟練の技師を必要とするので広くは利用可能でないことを含め、いくつかの要因があり得る。また、ダイヤモンドの上面をエッチングするという着想に対しては、それによりダイヤモンドの価値が損なわれる恐れがあるという見方から業界の先入観、ひいては消費者の先入観がある。この先入観は通常、この技法の良い面について消費者に教示することによってなくすことができる。
【0008】
本発明と同一発明者によって発明され、同一譲受人によって所有される(特許文献1)および(特許文献2)(それらの全体を参照により本明細書に援用する)が、ミラーの反射と同様のスペクトル光反射を生み出すように研磨済みダイヤモンドの表面を照明するという概念を使用した、比較的安価で比較的効果的なビューワ(本明細書では以後、「刻印済み宝石ビューワ」と呼ぶ)を開示している。刻印済み宝石ビューワは、有効ではあるが、刻印を見る必要があり得るときに常に人の手元にあるといった利便性はなく、さらに、画像に含まれる情報の後の呼出し、比較解析、および遠隔通信のために画像を記憶するという機能を含まない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第7,468,786号明細書
【特許文献2】米国特許第8,035,807号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、使用機会の90%を超えて正確であり、特殊な技能または訓練を必要とせずに一般大衆が容易に使用でき、すぐに配備可能であって迅速に結果が得られ、後の呼出しおよび警察など第三者への通信のためにデータを記録する方法を含み、宝石に好ましくない変形または変性を及ぼさず、容易には詐欺被害に遭わないようにし、消費者にとって簡便に広く利用可能であり、かつ安価である宝石鑑別システムが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、明色の研磨済み宝石を能動的に鑑別するためのシステムであって、デジタル撮像カメラを備える電子通信デバイス(例えば、スマートフォン、タブレットコンピュータ、または任意の他のカメラ/インターネット機能付きデバイス)と共に使用するために設計された器具と、ソフトウェアとを備え、ソフトウェアが、電子通信デバイス上で実行され、画像データのキャプチャを容易にし、その後、画像データを処理して比較基準にし、対象の宝石のデータを収集済みのデータのデータベースと比較して、宝石データとデータベース内にある宝石データファイルとの適合を判断するシステムである。このシステムは、解析のためにオペレーティングサーバにデータを送信すること、または通信デバイスでローカルで解析を実施することを含むことがある。
【0012】
システムの一体化部分は、電子通信デバイスと共に動作するように設計された器具である。この器具は、電子通信デバイスに容易に着脱され、それにより、デバイスのカメラおよびその固有のデジタル撮像機能が、宝石ビューワのレンズによって拡大された宝石のデジタル画像をキャプチャすることを可能にし、宝石の切子面が宝石ビューワ本体の明るい表面および暗い表面を映すように向きを定められ、それにより、宝石のカットされた切子面表面および造形を強調する2次元画像を生成する宝石ビューワである。
【0013】
本発明の1つまたは複数の態様が特定の目的を達成することができ、1つまたは複数の他の態様が特定の他の目的を達成することができることを当業者は理解されよう。本発明の他の目的、特徴、利益、および利点は、この概要、および開示する実施形態の説明で明らかになり、当業者には容易に明らかになろう。そのような目的、特徴、利益、および利点は、添付図面に関連付けた上記の説明、およびそこから導出されるすべての妥当な推論から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】カメラを有する電子通信デバイスに取り付けられた状態で示される本発明で使用するための宝石ビューワの斜視上面−側面図である。
図2図1に示される宝石ビューワの斜視底面−側面図である。
図3図1に示される宝石ビューワの分解斜視図である。
図4図1に示される宝石ビューワの拡大上面図である。
図5図4の5−5線に沿って取られた、図4に示される宝石ビューワの側断面図である。
図6図1に示される宝石ビューワの底面図である。
図7図6の7−7線に沿って取られた図6の宝石ビューワの側断面図である。
図8】撮像のための所定位置でリングに取り付けられた宝石を示す、本発明による宝石ビューワの別の実施形態を示す斜視上面図である。
図8A図8に示される装置の斜視底面−側面図である。
図9図8に示される装置の上面図である。
図9A図8に示される装置の底面図である。
図10図9の10−10線に沿って取られた、図9に示される装置の断面図である。
図11図10に示される装置の分解図である。
図12】本発明の一態様に従って生成されるダイヤモンドの画像を示す図である。
図13】適合するものと適合しないものとを示す、ダイヤモンドの1群の例示的な画像を示す図である。
図14】本発明の一態様の論理的な流れを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
示されるように、本発明は、研磨済み明色宝石を能動的に鑑別するためのシステムに関する。本発明を使用して鑑別することができるそのような明色宝石は、限定はしないが、ダイヤモンド、サファイア、ルビー、エメラルド、およびタンザナイトを含む。本発明は、デジタル撮像カメラを備える既存の電子通信デバイス、例えば、タブレットコンピュータ、スマートフォン、または任意の他のカメラ/インターネット機能付きデバイスと共に使用するために設計された器具を含む。さらに、本発明は、宝石の画像データキャプチャを容易にする、通信デバイス上で実行されるソフトウェアを含む。その後、対象の宝石に関してキャプチャされたデータが比較基準により処理され、前に収集されたデータと比較されて、新たに撮影されたデータが前に収集されたデータと適合するか否か判断される。前に収集されたデータは、データベース内にあり得る。さらに、システムは、解析のために遠隔サーバにデータを送信することを含むことがあり、または電子通信デバイスでローカルで解析が行われてもよい。
【0016】
前述したように、システムの一部は、電子通信デバイスと共に動作するように設計された器具である。さらに、この器具は宝石ビューワと称され、宝石ビューワは、通信デバイスの撮像カメラおよびその固有のデジタル撮像機能が宝石のデジタル画像をキャプチャできるようにする。この器具は、宝石を拡大することができるレンズを含む。さらに、この器具は、宝石の切子面が宝石ビューワ本体の明るい表面および暗い表面を映すように宝石を位置決めする焦点面を含む。これらの反射は、撮像カメラによって感知され、それにより、宝石のカットされた切子面表面および造形を強調する2次元画像を生成する。
【0017】
本発明による宝石ビューワ10の一実施形態が、図1図7に示されている。宝石ビューワ10は、カメラレンズ2を含む電子通信デバイス1に着脱可能に取り付けられる。図示される実施形態では、電子通信デバイス1は、Apple(登録商標)iPhone(登録商標)であるが、本発明から逸脱することなく、例えばiPad(登録商標)や他のタブレットコンピュータ、またはカメラが取り付けられたラップトップもしくはデスクトップコンピュータを含めた任意の適切なデバイスを使用することができる。
【0018】
図示される実施形態では、ビューワ10は、基部12(図示される実施形態では概して正方形で示されるが、多くの他の形状も同様に機能する)を有し、電子通信デバイス1の角部を受け入れる。ここで、カメラレンズ2およびカメラ3は、電子通信デバイスの背面5に位置決めされている。また、宝石ビューワの代替実施形態は、利用可能であれば、インカメラを使用できるように電子通信デバイスに取り付けることもできる。図示されるように、基部12は、2つの隣接する側面部18、20によって離隔された上面部14と底面部16を有し、これは、最も好ましくは一体形成されるが、いくつかの部品から形成されて組み立てられていてもよい。基部12は、向かい合う2つの隣接する側面で開いており、2つの開いた側面を通して受け入れられるパーソナル通信デバイス1の厚さに対応する。基部12の上面部14、底面部16、および2つの側面部18、20は、追加の圧力または機械的手段を加えることなくビューワ10をパーソナル通信デバイスに固定できるように、パーソナル通信デバイス1と摩擦接触するように正確に間隔を空けられる。ビューワ10の代替実施形態では、基部12は、異なる位置にあるカメラレンズを備えた異なるモデルのスマートフォンまたはパーソナル通信デバイスを受け入れるビューワの向きを正確に定められるように、様々な形状およびサイズを有することができる。
【0019】
この実施形態では漏斗形状で示されるビューワ本体22は、底面部16に取り付けられるか、または底面部16と一体形成される。ビューワ本体22は、底面部16の高さでレンズ24を取り囲み、レンズ24は、電子通信デバイス1のカメラレンズ2と同軸に位置合わせされるが、接触はしない。底面部16は、妨害されない光路がレンズ24を通ってカメラレンズ2まで延びるように開いている。図示される実施形態では、レンズ24は、カメラの視野内の物体を、補助なしのカメラレンズ2によって可能なよりも大きく視覚的に拡大する。さらに、レンズ24は、カメラレンズ2が宝石に合焦できるようにし、宝石は、カメラレンズの最小焦点距離よりもカメラレンズ2に近くてもよい。図示される実施形態では、レンズ24は、好ましくは少なくとも10倍に宝石を拡大するが、ソフトウェアが宝石の独特の鑑別特性を処理することができる限り、本発明から逸脱することなく、より大きい倍率またはより小さい倍率を使用することもできる。例えば、デジタルカメラセンサの発達により、レンズ24が宝石を(拡大するにせよ)最小限拡大するだけで、鑑別解析の実施を可能にするのに十分な画像の詳細が得られるようになり得る。したがって、レンズ24は、カメラレンズ2が宝石に合焦できるようにだけして、倍率は提供しなくてもよい。
【0020】
図示されるように、ビューワ本体22は、底面部16から概して垂直に突出する。ビューワ本体22の反対側の端部は、合焦ガラス26が保定リング28によって所定位置に保持される平面で終端する。合焦ガラス26とレンズ24は、ビューワ本体22によって互いに適正な距離で保持され、それにより、カメラレンズ2は、ビューワ本体の上にあるレンズを通して、合焦ガラスの外面に向き合わせて配置された宝石6の表面に適切に合焦される。ビューワ本体22は、合焦ガラス26上に配置された宝石を拡散周囲光が照明できるようにする任意の適切な透明材料からなる。
【0021】
図8図11は、本発明による宝石ビューワの別の実施形態を示す。この実施形態では、スマートフォンビューワ110が、基部112を有し、電子通信デバイス1の角部を受け入れる。ここで、カメラレンズ2は、電子通信デバイスの背面5に位置決めされている。基部112は、2つの隣接する側面部118、120によって離隔された上面部114と底面部116を有し、向かい合う2つの隣接する側面で開いており、2つの開いた側面を通して受け取られる電子通信デバイス1の厚さに対応する。基部112の上面部114、底面部116、および2つの側面部118、120は、追加の圧力または機械的手段を加えることなく主に摩擦によって基部を電子通信デバイスに固定できるように、電子通信デバイス1と接触するように正確に間隔を空けられる。デバイスの代替実施形態では、基部は、撮像カメラを含む任意の特定の電子通信デバイスを受け入れるように、デバイスの向きを正確に定められるように、様々な形状およびサイズでよい。
【0022】
図示される実施形態では、ビューワ本体122が、底面部116に取り付けられる。ビューワ本体122は、概して基部112の底面部116の高さで、しかし電子通信デバイスのカメラレンズ2からオフセットされた状態でレンズ124を収容するようにサイズ設定および位置決めされた構造である。底面部116は、妨害されない光路がビューワ110のチャネル本体128まで延びるように開口126を含む。チャネル本体128は、第1の45°ミラー130と第2の45°ミラー132を含む。ミラー130、132は、合焦管134およびレンズ124を通過した光を指向する。図示される実施形態では、レンズ124は、カメラレンズ2の視野内の物体を、補助なしのカメラレンズによって可能なよりも10倍大きく視覚的に拡大するように較正されたものである。また、上述したように、この実施形態では、レンズ124は、本発明から逸脱することなく、カメラの視野内の物体を任意の適切な量だけ拡大することもできる。ビューワ本体チャネル128は、レンズ124が位置決めされる基部底面部116の縁部に対して側方に延在する。合焦管134は、レンズ124の上に位置決めされ、合焦ガラス136の平面で終端し、合焦ガラス136は、保定リング138によって所定位置に保持される。表示画面が水平方向で平らな状態で(テーブル上に表向きに平らに置かれている場合と同様に)電子通信デバイス1が保持されるとき、合焦ガラス136は、宝石6のテーブル面が合焦ガラスに面する状態で宝石6を受け入れるように位置決めされる。合焦ガラス136とレンズ124は、ビューワ本体122によって互いに適正な距離で保持され、それにより、カメラレンズ2は、2つの45°ミラー130、132およびレンズを通して、合焦ガラスの表面に向き合わせて配置された宝石6の表面に適切に合焦される。(視線に関して)レンズ124とカメラ3との間のビューワ本体122の部分が、宝石が合焦ガラス136と接触して配置されるときに周囲光が宝石に直接当たるのを阻止する。
【0023】
ビューワ本体122は、暗色の不透明材料または黒色にコーティングされた不透明材料から構成される。合焦管134は、管内への拡散光の透過を可能にするように透明である。合焦管134の幾何形状は、ダイヤモンドを照明する光の特性が一貫し、再現性を有するように構成される。
【0024】
使用時、デバイス上のソフトウェアを使用して、宝石ビューワによって生成される既知の宝石の画像が、電子通信デバイス1のカメラ3によってキャプチャされ、メモリに記憶される。当然、既知の宝石の画像は、いつ生成されてもよく、例えば製造業者または宝石商によって他の機器を用いて撮影されてもよい。そのような例では、既知の宝石の画像を生成するために使用される機器は、宝石ビューワ10、110と同じ幾何学的特性および材料特性を有さなければならない。宝石商と顧客との間では信頼が非常に重要な要素であるので、製造業者または宝石商によって生成された画像があるにも関わらず、顧客は既知の宝石の画像を生成することを好むことがある。
【0025】
次に図14を見ると、本発明の「サーバ」の実施形態が示されている。ユーザ200は、電子通信デバイス1に着脱可能に取り付けられた宝石ビューワ110上に宝石を配置することによって、宝石6の参照画像300を生成する。次いで、参照画像300は、例えば電子通信デバイスに備えられているインターネット接続機能または任意の他の適切な手段を介して、遠隔サーバ上で実行されるソフトウェアにアップロードして記憶することができ、ここで、参照画像は、永久保存データベース302およびレジストリの一部として入力される。代替として、本発明の「ローカル」の実施形態では、参照画像300は、宝石6の参照画像として電子通信デバイス1のメモリ(データベースの形であってもそうでなくてもよい)に単に記憶される。次いで、参照画像の独特の鑑別特性を測定して較正するために参照画像300を処理することができ、迅速な検索および比較解析に使用することができる目録シリアル番号が生成されて割り当てられることが可能である。そのようにして参照画像300が取得されると、ユーザ200は、後で、例えば宝石商から返却された宝石6を比較して、その宝石が、宝石商に当初渡した宝石そのものであるか否か判断することができる。ユーザ200は、電子通信デバイス1と共に宝石ビューワ110を再び使用して、今保有している宝石の比較画像350を撮影する。次いで、比較画像350がソフトウェア(サーバの実施形態におけるサーバ上のソフトウェアでも、ローカルの実施形態における電子通信デバイス1上のアプリでもよい)によって解析され、元の宝石6の参照画像300と比較される。
【0026】
本発明によれば、ユーザ200は、電子通信デバイスから任意の宝石画像を検索して、後で閲覧することが可能である。また、ユーザは、割り当てられた目録シリアル番号を要求して、サーバデータベースからダウンロードすることもできる。
【0027】
好ましい実施形態では、特定の宝石(手元にある「比較宝石」)が前に所持していた宝石と本当に同じものであるかをユーザが検証する必要が生じたとき、ユーザは、電子通信デバイス1上でアプリを開き、「比較宝石」または同様のオプションを選択する。次いで、アプリは、既存の保存された画像との比較を行うために従うべきステップについてユーザに命令する。ユーザは、前に取得された元の宝石のときと同じステップを使用して、比較宝石の比較画像350の記録を行う。
【0028】
本発明の一実施形態では、電子通信デバイス上にあるソフトウェアは、宝石6が宝石ビューワ上で適切な位置にあるときにユーザ200に命令する。これは、宝石ビューワが様々な宝石形状およびサイズに対応できるようにする。例えば、ソフトウェアは、カメラセンサのライブビューを表示し、カメラビューの上にターゲットまたは同様の画像を重畳させることができる。それにより、ユーザは、合焦ガラス上に宝石を配置するときに、ターゲットを使用して宝石を位置合わせすることができる。また、ソフトウェアは、宝石が適切な位置にあるときに、ユーザに音声または視覚情報で示すこともできる。さらに、ソフトウェアは、宝石が適切に位置決めされると、自動的に画像をキャプチャすることもできる。
【0029】
サーバの実施形態では、比較画像350をサーバにアップロードした後、サーバソフトウェア304は、比較画像を解析し、その宝石に関する独特の鑑別特性を較正し、比較画像350からの較正されたデータを参照画像300と比較して、画像が同じ宝石から撮影されたものか、それとも2つの異なる宝石から撮影されたものかを判断する。次いで、サーバソフトウェアが、電子通信デバイス1に通知306を送信し、通知306は、画像が同じ宝石からのものか、それとも異なる宝石からのものかをユーザ200に通知し、および/または宝石が同一のものである可能性または確率をユーザに通知する。
【0030】
ローカル実施形態では、第2の画像を取得すると、電子通信デバイス1に搭載されたソフトウェアは、比較画像350を解析し、その宝石に関する独特の鑑別特性を較正し、比較画像からの較正されたデータを参照画像300と比較して、画像が同じ宝石から撮影されたものか、それとも2つの異なる宝石から撮影されたものかを判断する。次いで、電子通信デバイス1上のソフトウェアは、画像が同じ宝石からのものか、それとも異なる宝石からのものかをユーザ200に通知し、および/または宝石が同一のものである可能性または確率をユーザに通知する。次いで、ユーザは、十分な情報を得た上で、手元の宝石を、期待していた宝石である、またはすり替えられた宝石であると判断することが可能である。
【0031】
また、このシステムは、法執行員にも有用であり、法執行員は、特にサーバの実施形態に関連して、紛失した後または盗難された後に回収された宝石に関して、宝石ビューワ、ソフトウェア、およびサーバを使用することができる。対象の宝石がサーバによって事前に登録されている限り、法執行員は、サーバデータベース内の適合データを見つけ出すことができ、それにより、その宝石に関して宝石の所有者を特定することができる。
【0032】
本発明の撮像態様に関連して使用するためのソフトウェアには、パターンマッチングを採用する。一般に、パターンマッチングはよく知られているが、ここでのパターンマッチングの適用は特有のものであり、新規性がある。特に、ここでのパターンマッチングは、宝石の内包物または不純物、ならびに宝石の切子面の特定の寸法を探す。これらは、各宝石がハンドカットされているので各宝石に独特である。色や輝度など宝石のさらなる光学特性も測定して、データベースに記憶することができる。サーバの実施形態では、パターンマッチング機能のいくらかが電子通信デバイス上のソフトウェアにあり、機能のいくらかがサーバソフトウェアにある。当然、電子通信デバイスにある、または遠隔デバイスもしくはサーバにあるソフトウェアによって、パターンマッチング機能のいくらかまたは全てが実施されてもよい。例えば、サーバは画像のレポジトリとしてのみ働き、処理はすべて電子通信デバイス上のソフトウェアによって行われてよい。上述したように、ローカルの実施形態では、画像の記憶さえも電子通信デバイスの記憶域で完全に行われ、インターネット接続が利用可能でない場合でさえアプリによってアクセス可能である。
【0033】
上述したように、操作時、図12〜14に示されるように、システムは、既知の宝石の画像の撮影から始まり、この画像が、後の比較のために使用される。本発明による電子通信デバイスおよびビューワ10、110を使用して、図12に示される画像と同様の画像が撮影され、画素に分解され、それらの画素のデータが、後の比較のために記憶される。次いで、比較宝石が元の宝石と同じものか否か判断するとき、比較宝石の画像が撮影される。その画像は、画素に分解され、そこからデータファイルが生成される。
【0034】
第1に、予備的な、または大まかな比較が行われる。大まかな項目、例えば、石のサイズおよび形状、石の中心のサイズおよび形状、ならびに任意の内包物もしくは不純物の数、サイズ、および形状が比較される。大まかなパラメータのいずれかが異なる場合、比較宝石が元の宝石でないことがすぐに明らかになる。大まかなパラメータが全て同じである場合、画素毎のパターンマッチングが行われる。最も好ましい実施形態では、2つの画像が互いに重畳され、一連の角度にわたって互いに回転される。最大数の画素の適合を生成する相対角度で止められる。その相対角度に止めた後、適合する画素のパーセンテージが計算され、結果が生成される。例えば、結果は、89%の画素の適合といったものでよく、または、適合する画素の数に基づいて、元の宝石と比較宝石が同一である可能性が93%であるといったものでもよい。
【0035】
図13は、適合する画像の組および適合しない組の例を示すために提供される1群の画像である。図示されるように、適合しない対は、13A/B、13C/D、13E/F、および13G/Hである。適合する組は、13I/J、13K/L/M、および13G/Hである。肉眼では、組13A/Bおよび13C/Dの相違を見つけるのは難しい。しかし、本明細書で述べる画像比較アルゴリズムを使用して、ソフトウェアは、非常に類似した宝石同士を見分けることが可能である。例えば、一見すると、図13A図13Bは、ほぼ同一に見える。図13Aに示される石の中心をよく観察すると、明確な八角形の中心40を有することが分かり、図13Bの中心42は、全く明確でない。図13I/Jは、同じ石を示す。図13I/Jに示される石は、内包物50の独特なパターンを含む。図13Iでは、内包物は9時の位置で見られる。図13Jでは、同じ内包物50が11時の位置で見られる。本発明のソフトウェアは、宝石が同じ向きでない場合でさえ、同一パターンを認識することが可能である。元の宝石と比較宝石が同じ宝石であるか否か、確実に判断するために、何パーセントの類似性または確率、ならびにどの程度のグレースケールレベル、解像度、および同様のパラメータが必要であるかは、次第に経験から分かってくる。
【0036】
本発明は多くの異なる形態の実施形態を採ることができるが、本発明の好ましい実施形態の1つが図面に図示されており、本明細書で述べられている。図面および本明細書は、本発明の原理の例示とみなすべきであることを理解すべきである。それらは、本発明の広範な態様を、例示される実施形態に限定することは意図されていない。
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