(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6293758
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】4−クロロ−2,5−ジメトキシピリミジンから2−アミノ−5,8−ジメトキシ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−c]ピリミジンを調製するための方法
(51)【国際特許分類】
C07D 487/04 20060101AFI20180305BHJP
C07D 239/52 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
C07D487/04 146
C07D239/52CSP
【請求項の数】21
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-531996(P2015-531996)
(86)(22)【出願日】2013年9月10日
(65)【公表番号】特表2015-531783(P2015-531783A)
(43)【公表日】2015年11月5日
(86)【国際出願番号】US2013058941
(87)【国際公開番号】WO2014043087
(87)【国際公開日】20140320
【審査請求日】2016年8月29日
(31)【優先権主張番号】61/701,250
(32)【優先日】2012年9月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501035309
【氏名又は名称】ダウ アグロサイエンシィズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ブランド ダグラス シー.
(72)【発明者】
【氏名】ロス,ギャリー
(72)【発明者】
【氏名】ボト,クレイグ
(72)【発明者】
【氏名】ハミルトン,クリストファー ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ノマン,ジョセフ
【審査官】
齋藤 光介
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第08143395(US,B1)
【文献】
Bell, B. M. et al.,Organic Process Research & Development,2006年,vol.10,p.1167-1171
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A01N
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化14】
(式中、Rが、C
1−C
4アルキルである)
の2−アミノ−5,8−ジアルコキシ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−c]ピリミジンを調製するための方法であって、
i)式
【化15】
(式中、Rが、先に規定された通りである)
の4−クロロ−2,5−ジアルコキシピリミジンを、極性非プロトン性溶媒中で、シアナミドの塩と接触させて、式
【化16】
(式中、Rが、先に規定された通りである)
の2,5−ジアルコキシ−4−シアノアミノピリミジンを提供する工程;
ii)前記2,5−ジアルコキシ−4−シアノアミノピリミジンを、遊離塩基としてのヒドロキシルアミンまたは塩基の存在下におけるヒドロキシルアミン塩のいずれかと接触させて、式
【化17】
(式中、Rが、先に規定された通りである)
の2,5−ジアルコキシ−4−ヒドロキシグアニジニルピリミジンを提供する工程;および、
iii)前記2,5−ジアルコキシ−4−ヒドロキシグアニジニルピリミジンを、アルキルクロロホルメートで処理することにより環化して、前記2−アミノ−5,8−ジアルコキシ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−c]ピリミジンを提供する工程
を含
み、(iii)が、極性非プロトン性溶媒中で行われる、方法。
【請求項2】
Rが、CH3である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程ii)の2,5−ジアルコキシ−4−ヒドロキシグアニジニルピリミジンが、前記工程iii)における2−アミノ−5,8−ジアルコキシ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−c]ピリミジンを提供するために、単離することなく使用される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記シアナミドの塩が、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記シアナミドの塩が、ナトリウム水素シアナミドである、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記(i)の極性非プロトン性溶媒が、アセトニトリルまたはN−メチル−2−ピロリジノンである、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
(i)が、0℃から60℃の温度で行われる、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記(ii)のヒドロキシルアミン塩の遊離塩基が、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたはトリアルキルアミン塩である、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
(ii)が、極性溶媒中で行われる、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記溶媒が、メタノール、酢酸エチルまたはアセトニトリルである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
(ii)が、0℃から80℃の温度で行われる、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記(iii)のアルキルクロロホルメートが、メチルクロロホルメートである、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
(iii)が、塩基の存在下で行われる、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記塩基が、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたはトリエチルアミンである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
(iii)が、45℃から100℃の温度で行われる、請求項1から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記溶媒が、酢酸エチルまたはアセトニトリルである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
式(I)
【化18】
(式中、Rが、C
1−C
4アルキルである)
の2−アミノ−5,8−ジアルコキシ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−c]ピリミジンを調製するための方法であって、
式
【化19】
(式中、Rが、先に規定された通りである)
の2,5−ジアルコキシ−4−ヒドロキシグアニジニルピリミジンを、
極性非プロトン性溶媒中でアルキルクロロホルメートで処理することにより環化して、前記2−アミノ−5,8−ジアルコキシ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−c]ピリミジンを提供する工程を含む、方法。
【請求項18】
前記2,5−ジアルコキシ−4−ヒドロキシグアニジニルピリミジンが、式
【化20】
(式中、Rが、先に規定された通りである)
の2,5−ジアルコキシ−4−シアノアミノピリミジンを、遊離塩基としてのヒドロキシルアミンまたは塩基の存在下におけるヒドロキシルアミン塩のいずれかと接触させて、2,5−ジアルコキシ−4−ヒドロキシグアニジニルピリミジンを提供することにより形成される、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
前記2,5−ジアルコキシ−4−シアノアミノピリミジンが、式
【化21】
(式中、Rが、先に規定された通りである)
の4−クロロ−2,5−ジアルコキシピリミジンを、極性非プロトン性溶媒中で、シアナミドの塩と接触させることにより形成される、請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
式
【化22】
(式中、Rが、C
1−C
4アルキルを表す)
の化合物。
【請求項21】
式
【化23】
(式中、Rが、C
1−C
4アルキルを表す)
の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願明細書において、4−クロロ−2,5−ジメトキシピリミジンから2−アミノ−5,8−ジメトキシ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−c]ピリミジンを調製するための方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
米国特許第6,005,108号には、特定の置換されている2−アミノ−5,8−ジアルコキシ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−c]−ピリミジン化合物、および、スルホンアミド除草剤の調製用の中間体としてのその使用が記載されている。2−アミノ−5,8−ジメトキシ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−c]ピリミジンは、ペノキススラムの調製に有用な中間体である。Monatsh. Chem. 1983, 114, 789には、ヒドロキシルアミンとの反応による特定の(アミノ)カルボノチオイルカルバメートの調製、および、それに続く[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリミジン−2−アミンへの環化が記載されている。国際公開第2009/047514号には、ヒドロキシルアミンとの反応による特定の(アミノ)カルボノチオイルカルバメートの調製、および、[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジンおよびそれに続く[1,2,4]トリアゾロ[1,5−c]ピリミジンの化合物への環化が記載されている。米国特許第6,559,101号には、ヒドロキシルアミンとの反応による特定の(アミノ)カルボノチオイルカルバメートの調製、および、それに続くピリミジン置換されている[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリミジン−2−アミンへの環化が記載されている。
米国特許第6,362,335号には、ヒドラジンおよびハロゲン化シアンの両方が関与する複数工程の方法における、2,4−ジクロロ−5−メトキシピリミジンまたは4−クロロ−2,5−ジメトキシピリミジンからの、2−アミノ−5,8−ジメトキシ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−c]ピリミジンの製造が記載されている。ヒドラジンには、重度の爆発の危険が存在し、摂取、吸入および皮膚吸着により毒性である。それは、発ガン物質として分類され、空気中において、0.lppmの許容限界値(TLV)を有する。ハロゲン化シアンは、非常に刺激性であり、非常に毒性である。2−アミノ−5,8−ジアルコキシ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−c]ピリミジンを、ヒドラジンおよびハロゲン化シアンを避ける製造法により、効率的かつ高収率に製造するのが有益であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,005,108号
【特許文献2】国際公開第2009/047514号
【特許文献3】米国特許第6,559,101号
【特許文献4】米国特許第6,362,335号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Monatsh. Chem. 1983, 114, 789
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願明細書において、4−クロロ−2,5−ジアルコキシピリミジンから2−アミノ−5,8−ジアルコキシ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−c]ピリミジンを調製するための方法が提供される。より具体的には、本願明細書において、式(I)
【化1】
(式中、Rが、C
1−C
4アルキルを表す)
の2−アミノ−5,8−ジアルコキシ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−c]ピリミジンを調製するための方法であって、
i)式
【化2】
(式中、Rが、先に規定された通りである)
の4−クロロ−2,5−ジアルコキシピリミジンを、極性非プロトン性溶媒中で、シアナミドの塩と接触させて、式
【化3】
(式中、Rが、先に規定された通りである)
の2,5−ジアルコキシ−4−シアノアミノピリミジンを提供する工程;
ii)2,5−ジアルコキシ−4−シアノアミノピリミジンを、遊離塩基としてのヒドロキシルアミンまたは塩基の存在下におけるヒドロキシルアミン塩のいずれかと接触させて、式
【化4】
(式中、Rが、先に規定された通りである)
の2,5−ジアルコキシ−4−ヒドロキシグアニジニルピリミジンを提供する工程;および、
iii)2,5−ジアルコキシ−4−ヒドロキシグアニジニルピリミジンを、アルキルクロロホルメートで処理することにより環化して、2−アミノ−5,8−ジアルコキシ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−c]ピリミジン(I)を提供する工程を含む、方法が提供される。
【0006】
本発明の別の実施形態では、2,5−ジアルコキシ−4−シアノアミノピリミジンは、2,5−ジアルコキシ−4−ヒドロキシグアニジニルピリミジンを単離することなく、工程ii)およびiii)を組み合わせることにより、対応する2−アミノ−5,8−ジアルコキシ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−c]ピリミジンに変換され得る。
【0007】
本発明の別の実施形態は、式
【化5】
(式中、Rが、C
1−C
4アルキルを表す)
の2,5−ジアルコキシ−4−シアノアミノピリミジンを含む。
【0008】
本発明の更なる実施形態は、式
【化6】
(式中、Rが、C
1−C
4アルキルを表す)
の2,5−ジアルコキシ−4−ヒドロキシグアニジニルピリミジンを含む。
【0009】
材料は、一対の幾何異性体(EおよびZ)として、および、種々の互変異性体において存在してもよい。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願明細書で使用するとき、アルキルの用語および派生語、例えば、アルコキシは、直鎖または分岐鎖の基を意味する。典型的なアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1,1−ジメチルエチルおよび1−メチルプロピルである。メチルおよびエチルが、多くの場合好ましい。
【0011】
本発明は、4−クロロ−2,5−ジアルコキシピリミジンからの2−アミノ−5,8−ジアルコキシ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−c]ピリミジンの調製に関する。
【化7】
【0012】
第1工程(a)は、RがC
1−C
4アルキルを表す4−クロロ−2,5−ジアルコキシピリミジン(1)の、2,5−ジアルコキシ−4−シアノアミノピリミジン(2)への変換に関する。これは、少なくとも1当量のシアナミドの塩を使用して、極性非プロトン性溶媒中で達成される。一部の実施形態では、1から約2.5モル当量のシアナミドの塩を使用する。特定の実施形態では、シアナミドの塩は、ナトリウムもしくはカリウム等のアルカリ金属の塩、または、マグネシウムもしくはカルシウム等のアルカリ土類金属の塩である。一部の実施形態では、塩は、ナトリウム水素シアナミドである。極性非プロトン性溶媒の例としては、アセトニトリルおよびアミド、例えば、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)があげられる。更なる希釈剤、例えば、クラウンエーテルおよびグリコールエーテルの存在下において、反応を行うことも可能である。ただし、それらの希釈剤は、所望の反応と干渉せず、反応物質に対して化学的に不活性である。4−クロロ−2,5−ジアルコキシピリミジンおよびシアナミドの塩を、約0℃から約60℃の温度で反応させる。生成物を、従来技術により、例えば、沈殿または結晶化させた材料のろ過により単離する。
【0013】
一部の実施形態では、ナトリウム水素シアナミドを、NMPに懸濁させ、ついで、適切な量の4−クロロ−2,5−ジメトキシピリミジンにより処理する。加熱後、反応混合物を冷却し、酸により中和して、2,5−ジメトキシ−4−シアノアミノピリミジンを沈殿させ、ろ過により収集し、乾燥させる。
【0014】
第2工程(b)は、2,5−ジアルコキシ−4−シアノアミノピリミジン(2)の、2,5−ジアルコキシ−4−ヒドロキシグアニジニルピリミジン(3)への変換に関する。これは、少なくとも当量の、遊離塩基としてのヒドロキシルアミンまたは、ヒドロキシルアミンの塩および塩基、例えば、ナトリウムもしくはカリウムの炭酸塩、ナトリウムもしくはカリウムの水酸化物またはトリアルキルアミンの、いずれかを使用して、極性溶媒中で達成される。一部の実施形態では、トリアルキルアミン、例えば、トリエチルアミンを、補助塩基として使用する。一部の実施形態では、2当量のヒドロキシルアミンおよび塩基を、この反応に使用する。一部の実施形態では、反応物質を、極性溶媒中に懸濁させ、混合物を、約0℃から約80℃の温度で攪拌する。極性溶媒は、プロトン性または非プロトン性(aprotoic)のいずれかであり得る。プロトン性極性溶媒の例としては、アルコール、例えば、メタノールがあげられる。非プロトン性極性溶媒の例としては、エステルまたはニトリル、例えば、酢酸エチルまたはアセトニトリルがあげられる。生成物の混合物を冷却し、水で処理する。2,5−ジアルコキシ−4−ヒドロキシグアニジニルピリミジンを、従来技術、例えば、ろ過による収集および乾燥により単離する。材料は、E/Z異性体の混合物として、および/または、種々の互変異性体において存在し得る。
【0015】
一部の実施形態では、2,5−ジメトキシ−4−シアノアミノピリミジンおよびヒドロキシルアミンの塩を、極性溶媒中でスラリー化し、トリエチルアミンを添加する。反応混合物を、約45℃で数時間攪拌し、水で処理する。2,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシグアニジニルピリミジンを、ろ過により収集し、乾燥させる。
【0016】
第3工程(c)は、2,5−ジアルコキシ−4−ヒドロキシグアニジニルピリミジン(3)の、2−アミノ−5,8−ジアルコキシ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−c]ピリミジン(I)への変換に関する。これは、少なくとも当量のC
1−C
4アルキルクロロホルメートおよび塩基、例えば、ナトリウムもしくはカリウムの炭酸塩、ナトリウムもしくはカリウムの水酸化物またはトリアルキルアミンを使用して、極性非プロトン性溶媒中で達成される。一部の実施形態では、トリアルキルアミン、例えば、トリエチルアミンを、補助塩基として使用する。一部の実施形態では、メチルクロロホルメートを使用する。一部の実施形態では、2当量のアルキルクロロホルメートおよび塩基を、この反応に使用する。一部の実施形態では、反応物質を、極性非プロトン性溶媒中に懸濁させ、混合物を、約45℃から約100℃の温度で攪拌する。極性非プロトン性溶媒の例としては、エステルまたはニトリル、例えば、酢酸エチルまたはアセトニトリルがあげられる。生成物の混合物を冷却し、水で処理する。2−アミノ−5,8−ジアルコキシ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−c]ピリミジン(I)を、従来技術、例えば、ろ過による収集および乾燥により単離する。
【0017】
一部の実施形態では、2,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシグアニジニルピリミジンおよびメチルクロロホルメートを、極性溶媒中でスラリー化し、トリエチルアミンを添加する。反応混合物を、約80℃で数時間攪拌し、水で処理する。2−アミノ−5,8−ジメトキシ[1,2,4]−トリアゾロ[1,5−c]ピリミジンを、ろ過により収集し、乾燥させる。
【0018】
一部の実施形態では、工程bおよびcを組み合わせ、2,5−ジアルコキシ−4−ヒドロキシグアニジニルピリミジンの単離(b+c)’を行わない。工程bおよびcを組み合わせる場合、反応を、極性非プロトン性溶媒、例えば、酢酸エチルまたはアセトニトリル等中で行う必要がある。
【0019】
一部の実施形態では、2,5−ジメトキシ−4−シアノアミノピリミジンおよびヒドロキシルアミン・塩酸を、アセトニトリル中でスラリー化し、トリエチルアミンを添加する。反応混合物を、約45℃で数時間攪拌し、約5℃に冷却する。外部冷却をしながら、更なる当量のトリエチルアミン、続けて、メチルクロロホルメートを添加する。環境温度において簡単に攪拌した後、反応混合物を、完了するまで還流において攪拌し、水で処理する。固体状の2−アミノ−5,8−ジメトキシ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−c]ピリミジンを、ろ過により収集し、乾燥させる。
【0020】
下記実施例は、本発明を説明するのに提供される。
【実施例】
【0021】
記載された実施形態および下記実施例は、例証目的のためであり、特許請求の範囲の範囲を限定することを意図していない。本願明細書に記載された構成要素に対する他の変更、使用または組み合わせは、特許請求の範囲の主題の精神および範囲から逸脱することなく、当業者に明らかであろう。
【0022】
実施例1:
2,5−ジメトキシ−4−シアノアミノピリミジン(2)の調製
工程a:
【化8】
100ミリリットル(mL)の三頸丸底フラスコに、連続して、7.8グラム(g)(121.53ミリモル(mmol)のナトリウム水素シアナミドおよび34.2gのN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)を一度に添加した。スラリー状の混合物を、環境温度の水浴中で冷却した。この混合物に、10.0g(54.99mmol)の、96% 4−クロロ−2,5−ジメトキシピリミジン(1;CDMP)を一度に添加した。混合物を、環境温度(<20℃)において攪拌した。65時間(h)後、3.55g(59.11mmol)の氷酢酸を、一度に添加した。内部ポット温度が、18℃から23℃に上昇した。この反応スラリーを、87.1gの砕氷上にピペットし、氷を溶かした。この混合物に、10.3gの塩化ナトリウムを添加した。混合物を、砕氷が完全に溶けるまで静置した。溶けた時点で、冷えたスラリーを、吸引ろ過した。ろ過ケークを、10mLの水で1回、ついで、20mLの水で2回洗浄した。湿ったケークを単離して、9.39g(ベンジルアセテートを使用したNMRアッセイによる純度80.2%)の2,5−ジメトキシ−4−シアノアミノピリミジン(2)を、収率76%において、融点164−171℃淡い黄色の固形物として得た。
1H NMR(DMSO−d
6,400MHz)δ 3.72(s,3H),3.94(s,3H),7.46(s,1H),12.48(br s,〜1H);
13C NMR(DMSO,100MHz)δ 55.21,56.60,116.20,121.8(br s),138.9,153.9,162.6(br s)。
【0023】
実施例2.
2,5−ジメトキシ−4−シアノアミノピリミジン(2)の調製
工程a:
【化9】
100mLの三頸丸底フラスコに、連続して、7.8g(121.53mmol)のナトリウム水素シアナミドおよび、ついで、34.2gのN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)を一度に添加した。スラリー状の混合物を、環境温度の水浴中で冷却した。この混合物に、10.0g(54.99mmol)の、96% 4−クロロ−2,5−ジメトキシピリミジン(1;CDMP)を一度に添加した。混合物を、環境温度(<20℃)において攪拌した。48時間(h)後、3.78g(62.95mmol)の氷酢酸を、一度に添加した。内部ポット温度が、19℃から23℃に上昇した。この反応スラリーを、85gの砕氷上に注ぎ、氷を溶かした。この混合物に、10gの塩化ナトリウムを添加した。混合物を、16分(min)間静置した。溶けた時点で、冷えたスラリーを、吸引ろ過した。ろ過ケークを、20mLの水で2回、最後に10mLの水で洗浄した。湿ったケークを、乾燥皿に移し、48時間風乾させて、6.78g(ベンジルアセテートを使用したNMRアッセイによる純度98.8%)の2,5−ジメトキシ−4−シアノアミノピリミジン(2)を、収率68%において淡い黄色の固形物として得た。
1Hおよび
13C NMRスペクトルは、実施例1において報告したものと同一であった。
【0024】
実施例3.
2,5−ジメトキシ−4−シアノアミノピリミジン(2)の調製
工程a:
【化10】
4−クロロ−2,5−ジメトキシピリミジン(CDMP;15g、0.086mol)を、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP;62.5g)中に、環境温度において溶解させた。ナトリウム水素シアナミド(12.1g、2.2当量)を、一度に全て添加した。混合物を、攪拌しながら、50℃に2.5時間加熱した。得られたスラリーを、25℃に冷却し、150mLの水を添加した。濃塩酸を、5.5のpHに達するまで、滴下して添加した。粘性のスラリーをろ過し、10mLの水で2回洗浄して、2,5−ジメトキシ−4−シアノアミノピリミジン(2)を、白色の固形物として得た(11.83g、収率76%)。
【0025】
実施例4.
2−アミノ−5,8−ジメトキシ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−c]ピリミジン(I)の調製
工程(b+c)’:
【化11】
25mLの三頸丸底フラスコに、1.11g(5.55mmol)の、90wt% 2,5−ジメトキシ−4−シアノアミノピリミジン(2)、463mg(6.66mmol)のヒドロキシルアミン・塩酸および9.8gのアセトニトリルを添加した。この混合物に、681mg(6.72mmol)のトリエチルアミンを、一度に添加した。反応混合物を、穏やかな還流(約45℃)に2時間加熱した。反応混合物を、氷水浴中で約5.8℃に冷却した。そのタイミングで、更なる716mg(7.08mmol)のトリエチルアミンを、一度に添加した。この混合物に、662mg(7.01mmol)のメチルクロロホルメートを、一度に添加した。そのタイミングで、内部反応温度が、5.8℃から12.1℃に上昇した。氷水浴を取り外し、混合物を、環境温度において1時間、ついで、還流(約76℃)において約3時間攪拌した。反応混合物を、環境温度に冷却した。更なる100μLのトリエチルアミンを添加して、反応pHを約7〜8に調節した。この混合物に、11.3gの水を添加した。混合物を、100mLの丸底フラスコに移した。アセトニトリルを、60mmHgおよび30℃の真空下において除去した。ついで、水性スラリーを、中ぐらいのガラスフリットを通して吸引ろ過した。フラスコからの残渣を、約2gの水で移した。ケークを脱水した後、別の1g容量の洗浄水を、ケークを通過させた。ケークを30分間吸引風乾させた後、混合物を、窒素パッドで一晩乾燥させた。これにより、588mg(液体クロマトグラフィー(LC)分析による純度約97%)の2−アミノ−5,8−ジメトキシ[1,2,4]−トリアゾロ[1,5−c]ピリミジン(I)を、2,5−ジメトキシ−4−シアノアミノピリミジン(2)から開始して収率52.8%の淡い黄色の固形物として得た。
1H NMR(DMSO−d
6,400MHz)δ 3.90(s,3H),4.06(s,3H),6.28(br s,2H),7.48(s,1H);
13C NMR(DMSO−d
6,100MHz)δ 55.37,57.04,123.07,138.60,143.73,148.50,166.02。
【0026】
実施例5.
2,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシグアニジニルピリミジン(3)の調製
工程b:
【化12】
2,5−ジメトキシ−4−シアノアミノピリミジン(CDMP;2;10g、0.055mol)およびヒドロキシルアミン・塩酸(5.09g、1.33当量)を、メタノール(60ml)中に分散させた。トリエチルアミン(7.59g、1.36当量)を添加した。スラリーを、攪拌しながら、45℃に加熱した。45℃で3時間後、スラリーを、室温に冷却し、60mLの水を添加し、続けて、20分の間温浸した。スラリーをろ過し、固形物を一定重量に乾燥させて、2,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシグアニジニルピリミジン(3)を、淡い黄褐色の固形物として得た(8.70g、74%)。融点159〜168℃(dec);
1H NMR(DMSO−d
6,400MHz)δ 3.78(s,3H),3.82(br s,3H),6.58(br s,2H),7.85(s,1H),8.66(br s,2H);
13C NMR(DMSO−d
6,100MHz)δ 54.01,56.78,136.51(br s),138.20,150.50(br s),153.42(br s),157.69。
【0027】
実施例6.
2−アミノ−5,8−ジメトキシ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−c]ピリミジン(I)の調製
工程c:
【化13】
2,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシグアニジニルピリミジン3(6g、0.028mol)を、酢酸エチル中に分散させた(24g)。エチルクロロホルメート(3.7g、0.034mol)を、スラリーに添加し、続けて直ちに、トリエチルアミン(3.4g、0.034mol)を添加した。スラリーの温度は、48℃に上昇し、さらに、加熱の適用により、78℃に調節した。スラリーを加熱した際、スラリーの粘度が薄くなり、固形物が白色からクリーム色になった。Iへの変換がゆっくりであったため、水(20g)を、3時間を目処に添加した。水の添加は、反応速度を向上させなかったが、9時間後、スラリーは、LC分析による84.4%の生成物Iを含んだ。混合物を、22℃に冷却し、ろ過した。湿ったケークを、水(15g)で洗浄した。乾燥により、2−アミノ−5,8−ジメトキシ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−c]ピリミジン(I)を、LC面積割合による純度91.9%であった、クリーム色の固形物として得た(3.57g)。収率は、3に基づいて60%であった。
本願は以下の発明に関するものである。
(1)
式(I)
【化14】
(式中、Rが、C1−C4アルキルである)
の2−アミノ−5,8−ジアルコキシ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−c]ピリミジンを調製するための方法であって、
i)式
【化15】
(式中、Rが、先に規定された通りである)
の4−クロロ−2,5−ジアルコキシピリミジンを、極性非プロトン性溶媒中で、シアナミドの塩と接触させて、式
【化16】
(式中、Rが、先に規定された通りである)
の2,5−ジアルコキシ−4−シアノアミノピリミジンを提供する工程;
ii)前記2,5−ジアルコキシ−4−シアノアミノピリミジンを、遊離塩基としてのヒドロキシルアミンまたは塩基の存在下におけるヒドロキシルアミン塩)のいずれかと接触させて、式
【化17】
(式中、Rが、先に規定された通りである)
の2,5−ジアルコキシ−4−ヒドロキシグアニジニルピリミジンを提供する工程;および、
iii)前記2,5−ジアルコキシ−4−ヒドロキシグアニジニルピリミジンを、アルキルクロロホルメートで処理することにより環化して、前記2−アミノ−5,8−ジアルコキシ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−c]ピリミジンを提供する工程
を含む、方法。
(2)
Rが、CH3である、上記(1)に記載の方法。
(3)
前記工程ii)の2,5−ジアルコキシ−4−ヒドロキシグアニジニルピリミジンが、前記工程iii)における2−アミノ−5,8−ジアルコキシ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−c]ピリミジンを提供するために、単離することなく使用される、上記(1)または(2)に記載の方法。
(4)
前記シアナミドの塩が、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である、上記(1)から(3))のいずれかに記載の方法。
(5)
前記シアナミドの塩が、ナトリウム水素シアナミドである、上記(1)から(4))のいずれかに記載の方法。
(6)
前記(i)の極性非プロトン性溶媒が、アセトニトリルまたはN−メチル−2−ピロリジノンである、上記(1)から(5)のいずれかに記載の方法。
(7)
(i)が、約0℃から約60℃の温度で行われる、上記(1)から(6)のいずれかに記載の方法。
(8)
前記(ii)のヒドロキシルアミン塩の遊離塩基が、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたはトリアルキルアミン塩である、上記(1)から(7)のいずれかに記載の方法。
(9)
(ii)が、極性溶媒中で行われる、上記(1)から(8)のいずれかに記載の方法。
(10)
前記溶媒が、メタノール、酢酸エチルまたはアセトニトリルである、請求項(9)に記載の方法。
(11)
(ii)が、約0℃から約80℃の温度で行われる、上記(1)から(10)のいずれかに記載の方法。
(12)
前記(iii)のアルキルクロロホルメートが、メチルクロロホルメートである、上記(1)から(11)のいずれかに記載の方法。
(13)
(iii)が、塩基の存在下で行われる、上記(1)から(12)のいずれかに記載の方法。
(14)
前記塩基が、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたはトリエチルアミンである、請求項(13)に記載の方法。
(15)
(iii)が、約45℃から約100℃の温度で行われる、上記(1)から(14)のいずれかに記載の方法。
(16)
(iii)が、極性非プロトン性溶媒中で行われる、上記(1)から(15)のいずれかに記載の方法。
(17)
前記溶媒が、酢酸エチルまたはアセトニトリルである、請求項(16)に記載の方法。
(18)
式(I)
【化18】
(式中、Rが、C1−C4アルキルである)
の2−アミノ−5,8−ジアルコキシ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−c]ピリミジンを調製するための方法であって、
式
【化19】
(式中、Rが、先に規定された通りである)
の2,5−ジアルコキシ−4−ヒドロキシグアニジニルピリミジンを、アルキルクロロホルメートで処理することにより環化して、前記2−アミノ−5,8−ジアルコキシ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−c]ピリミジンを提供する工程を含む、方法。
(19)
前記2,5−ジアルコキシ−4−ヒドロキシグアニジニルピリミジンが、式
【化20】
(式中、Rが、先に規定された通りである)
の2,5−ジアルコキシ−4−シアノアミノピリミジンを、遊離塩基としてのヒドロキシルアミンまたは塩基の存在下におけるヒドロキシルアミン塩)のいずれかと接触させて、2,5−ジアルコキシ−4−ヒドロキシグアニジニルピリミジンを提供することにより形成される、請求項(18)に記載の方法。
(20)
前記2,5−ジアルコキシ−4−シアノアミノピリミジンが、式
【化21】
(式中、Rが、先に規定された通りである)
の4−クロロ−2,5−ジアルコキシピリミジンを、極性非プロトン性溶媒中で、シアナミドの塩と接触させることにより形成される、請求項(19)に記載の方法。
(21)
式
【化22】
(式中、Rが、C1−C4アルキルを表す)
の化合物。
(22)
式
【化23】
(式中、Rが、C1−C4アルキルを表す)
の化合物。