特許第6293802号(P6293802)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6293802血中アミロイドベータ代謝回転の測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6293802
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】血中アミロイドベータ代謝回転の測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20060101AFI20180305BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20180305BHJP
   G01N 33/58 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   G01N27/62 VZNA
   G01N33/68
   G01N33/58 Z
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-23884(P2016-23884)
(22)【出願日】2016年2月10日
(62)【分割の表示】特願2013-512165(P2013-512165)の分割
【原出願日】2011年5月24日
(65)【公開番号】特開2016-153788(P2016-153788A)
(43)【公開日】2016年8月25日
【審査請求日】2016年2月10日
(31)【優先権主張番号】61/347,554
(32)【優先日】2010年5月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597025806
【氏名又は名称】ワシントン・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】Washington University
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100138900
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ランドール・ジェイ・ベイトマン
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・エム・ホルツマン
(72)【発明者】
【氏名】カワシ・ジー・マウエンイェガ
【審査官】 吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−517904(JP,A)
【文献】 特表2008−509421(JP,A)
【文献】 特開2004−157124(JP,A)
【文献】 特表2008−538811(JP,A)
【文献】 Randall J Bateman,Human amyloid-b synthesis and clearance rates as measured in cerebrospinal fluid in vivo,NATURE MEDICINE,2006年 6月25日,Vol.12/No.7,PP.856-861
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/60−70、92
G01N 33/48−98
MEDLINE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)被験者から得た血液サンプル中の標識Aβの量、または標識Aβおよび非標識Aβの量を質量分析により決定すること;
(b)(i)被験者への少なくとも1つの安定な非放射性同位体で標識されたアミノ酸の9時間の輸液による静脈内投与が開始された後、10時間〜20時間の間に得られたサンプル中の標識Aβの量、または標識Aβおよび非標識Aβの量から計算するか;または(ii)被験者への少なくとも1つの安定な非放射性同位体で標識されたアミノ酸の経口ボーラスまたは静脈内ボーラス投与が開始された後、4、5、6、7、8、9または10時間後に得られたサンプル中の標識Aβの量、または標識Aβおよび非標識Aβの量から計算することによって、ステップ(a)で決定した標識Aβの量、または標識Aβおよび非標識Aβの量を用いてAβのクリアランス速度を計算すること;を含む、被験者の血中Aβのインビボ代謝回転速度のインビトロ測定方法。
【請求項2】
標識されたアミノ酸が経口投与された、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
0.05g〜8gの安定な非放射性同位体で標識されたアミノ酸が投与された、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
標識されたアミノ酸が静脈内投与された、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
標識されたアミノ酸が、輸液にて、0.01mg/kg/時〜3 mg/kg/時で投与された、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(a)が、最初に血液サンプルからAβを単離することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
標識Aβまたは非標識Aβが、総Aβ、Aβ38、Aβ40およびAβ42から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
Aβ代謝回転が、少なくとも2つの血液サンプルから計算される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
安定な非放射性同位体が、2H、13C、15N、17O、18O、33S、34Sおよび36Sから選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
安定な非放射性同位体が、13Cである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
標識されたアミノ酸が、13C6-ロイシンまたは13C6-フェニルアラニンである、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の権利
本発明は、国立衛生研究所によって授与される政府援助K-23-AG03094601およびR-01-NS065667下で行われた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
配列表への参照
紙およびコンピュータで可読形式の配列表が、以下に添付されるが、これは、全体として参照することにより本発明に援用される。コンピュータ可読形式で記録された情報は、37 C.F.R. 1.821 (f)にしたがって書かれた配列表と同一である。
技術分野
本発明は、血中Aβの代謝回転の測定方法を包含する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(AD)は、認知症の最も一般的な原因であり、増加する公衆衛生上の問題である。アメリカ合衆国で、現在およそ500万人の人々が苦しんでいると推定され、2050年までに1300万人に増加することが予測される。ADは、記憶、認知機能そして最終的に自立性の喪失につながる。ADは、患者およびその家族に、耐え難い人格的および財政的損害をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
集団中のこの疾患の重篤度および増加する有病率のせいで、この疾患の最も早いステージにおけるより良い治療の開発および提供が緊急の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
カラー図面への参照
本出願書類は、少なくとも1つのカラー写真を含んでいる。カラー写真を含む本願公報のコピーは、要求および必要な手数料の支払いのうえ、庁によって提供されるであろう。
発明の詳細な記載
本発明は、血液サンプル中のAβの代謝回転を測定することによるAβ代謝の測定方法を提供する。本明細書で用いる「代謝回転」は、後記するように、1つの実施態様において、標識Aβ生成速度、標識Aβクリアランス速度またはその両方の組合せを意味する。しかし、各例において、Aβ代謝の測定は、サンプル中の標識Aβの測定を必要とする。もう1つの実施態様において、「代謝回転」は、血中Aβの半減期を意味する。本明細書で用いる「Aβ」は、総アミロイドβ;Aβ38、Aβ40もしくはAβ42またはその組合せなどのアミロイドβイソ体を意味する。有利なことに、本発明方法は、Aβの代謝を測定するために、得るのがより困難であり、侵襲的な中枢神経系サンプルを必要としない。
【0005】
I.血中Aβ代謝の測定方法
本発明の1つの態様は、血中Aβ代謝の測定方法である。重要なことには、血中Aβの代謝回転は、中枢神経系のAβの代謝を反映する(このことは、中枢神経系Aβに正常に相関しない定常状態血中Aβレベルとは対照的である。)。一般的に言えば、血中Aβの代謝回転の測定は、被験者に標識を投与すること、被験者から血液サンプルを採取すること、およびサンプルを分析してサンプル中のAβの代謝回転を測定することを含む。各ステップを以下に詳述する。
【0006】
(a)標識の投与
本発明方法は、その一部として、被験者に標識を投与することを含む。適当な標識および適当な投与方法を以下に詳述する。
【0007】
i.標識
適当な標識は、血中Aβの代謝回転の測定を可能にする。適当な標識の非限定的な例として、標識アミノ酸または標識アミノ酸前駆体が挙げられる。1つの実施態様において、標識は、少なくとも1つの標識アミノ酸を含む。アミノ酸は、天然アミノ酸、合成アミノ酸またはアミノ酸類縁体であってよい。しかしながら、各例において、アミノ酸は、血中Aβの代謝回転の検出および定量を可能にするために、Aβに組込むことが可能であるべきである。天然アミノ酸の非限定的な例として、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシンまたはバリンが挙げられる。1つの実施態様において、アミノ酸は、必須アミノ酸(たとえば、体内で生成されないアミノ酸)であってもよい。もう1つの実施態様において、アミノ酸は、非必須アミノ酸であってもよい。さらにもう1つの実施態様において、標識は、少なくとも1つの必須アミノ酸と少なくとも1つの非必須アミノ酸を含んでもよい。一般的に、アミノ酸の選択は、(1)アミノ酸が、目的のタンパク質またはペプチドの少なくとも1つの残基に存在するかどうか;(2)アミノ酸が、タンパク質合成のサイトにすぐに到達できるかどうか;(3)標識アミノ酸が、目的のタンパク質の代謝に影響を及ぼすかどうか(たとえば、ロイシンの非常に多い用量は、筋肉代謝に影響を及ぼす場合がある);および(4)所望のアミノ酸の利用可用性が考慮されるかもしれない(すなわち、いくつかのアミノ酸は、はるかに高価であるか、または他のものよりも製造が困難である);などの様々な因子に基づくものであってもよい。
【0008】
いくつかの実施態様において、標識は、少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、少なくとも9種、少なくとも10種、少なくとも11種、少なくとも12種、少なくとも13種、少なくとも14種、少なくとも15種、少なくとも16種、少なくとも17種、少なくとも18種、少なくとも19種、少なくとも20種、あるいは20種以上の異なる種類の標識アミノ酸を含んでもよい。
【0009】
アミノ酸は、Aβに組み込まれ、血中Aβの代謝回転を検出することができさえすれば、当業界で周知のいずれの方法で標識されてもよい。標識は、放射性であっても非放射性であってもよい。たとえば、1つの実施態様において、アミノ酸は、安定な非放射性同位体で標識されてもよい。非限定的例として、2H、13C、15N、17O、18O、33S、34Sまたは36Sが挙げられる。さらに、天然型で多く見られる、中性子の数の増減により原子の質が変わる、多くの他の安定な同位体もまた有効である。もう1つの実施態様において、アミノ酸は、1つ以上の標識で標識されてもよい(たとえば、13Cと15N)。
【0010】
1つの実施態様において、6つの13C原子を含む13C6-フェニルアラニンを用いてAβを標識してもよい。例示的実施態様において、13C6-ロイシンを用いてAβを標識してもよい。さらにもう1つの実施態様において、表Aに挙げる、安定な非放射性同位体とアミノ酸の組合せを用いてAβを標識してもよい。
【0011】
数多くの標識アミノ酸が市販されている。一般に、標識アミノ酸は、生物学的または合成的に生成される。生物学的に生成されたアミノ酸は、生物がタンパク質を生成するのでアミノ酸に組み込まれる13C、15Nまたはその他の同位体の富化混合物の混合物中で成長させた生物(たとえば、昆布/海藻)から得ることができる。次いで、アミノ酸は、分離され、精製される。別法として、アミノ酸は公知の合成的化学プロセスで製造されてもよい。
【0012】
表A
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
ii.投与方法
適当な標識の投与方法としては、血中Aβの代謝回転を測定することができるいずれの方法も包含される。1つの実施態様において、標識は、たとえば、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内または筋肉内などの非経口で投与される。さらにもう1つの実施態様において、標識は、経口で投与される。
【0019】
標識は、標識のタイプに応じて、いくつかの異なる方法で投与される。1つの実施態様において、標識は、時間をかける点滴として投与される。たとえば、標識は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、23、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119または120分間の点滴によって投与される。別法として、標識は、約2、2.25、2.5、2.75、3、3.25、3.5、3.75、4、4.25、4.5、4.75、5、5.25、5.5、5.75、6、6.25、6.5、6.75、7、7.25、7.5、7.75、8、8.25、8.5、8.75、9、9.25、9.5、9.75、10、10.25、10.5、10.75、11、11.25、11.5、11.75、12、12.25、12.5または12.75時間の点滴によって投与される。さらに他の実施態様において、標識は、13時間以上の点滴として投与される。例示的実施態様において、標識は、IV点滴として投与される。
【0020】
また、標識は、1回以上のボーラス投与で投与されてもよい。たとえば、標識は、1回、2回、3回、4回、5回または5回以上のボーラス投与で投与することができる。一般的に言えば、ボーラス投与は、約1時間を超えない期間の個別の投与である。1つの実施態様において、ボーラス投与は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、23、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119または120秒で投与される。もう1つの実施態様において、ボーラス投与は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、23、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59または60分で投与される。ボーラス投与の間隔は、秒、分、時間または日であってもよい。たとえば、ボーラス投与の間隔は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、23、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119または120秒であってもよい。あるいは、ボーラス投与の間隔は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、23、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119または120分であってもよい。他の例では、ボーラス投与の間隔は、約1、1.25、1.5、1.75、2、2.25、2.5、2.75、3、3.25、3.5、3.75、4、4.25、4.5、4.75、5、5.25、5.5、5.75、6、6.25、6.5、6.75、7、7.25、7.5、7.75、8、8.25、8.5、8.75、9、9.25、9.5、9.75、10、10.25、10.5、10.75、11、11.25、11.5、11.75、12、12.25、12.5、12.75、13、13.25、13.5、13.75、14、14.25、14.5,14.75、15、15.25、15.5、15.75、16、16.25、16.5、16.75、17、17.25、17.5、17.75、18、18.25、18.5、18.75、19、19.25、19.5、19.75、20、20.25、20.5、20.75、21、21.25、21.5、21.75、22、22.25、22.5、22.75、23、23.25、23.5、23.75、24、24.25、24.5、24.75、25、25.25、25.5、25.75、26、26.25、26.5、26.75、27、27.25、27.5、27.75、28、28.25、28.5、28.75、29、29.25、29.5、29.75、30または30時間以上であってもよい。
【0021】
1つの実施態様において、標識は、少なくとも1回の経口またはIVボーラス投与で投与されてもよい。特定の実施態様において、標識は、ボーラス投与と輸液の組合せで投与されてもよい。たとえば、被験者は、標識のボーラス投与、次いで、標識の輸液を受けてもよい。
【0022】
当業者は、標識の量(または用量)が、投与経路および用いる標識に応じて変化しうることを理解するであろう。一般的に言えば、量は、血中Aβの代謝回転の測定を可能にするのに十分な量であるべきである。いくつかの実施態様において、標識が輸液で投与される場合、その量は、約0.01 mg/kg/時間〜約4.5 mg/kg/時間の間である。たとえば、その量は、約0.001、0.005、0.01、0.15、0.2、0.25、0.5、0.75、1、1.25、1.5、1.75、2、2.25、2.5、2.75、3、3.25、3.5、3.75、4、4.25または4.5 mg/kg/時間であってもよい。他の実施態様において、標識がボーラス投与で投与される場合、その量は、約0.01 g〜約8 gの間である。たとえば、その量は、0.001、0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、7または8 gであってもよい。
【0023】
(b)血液サンプルの採取
本発明方法は、被験者から少なくとも1つの血液サンプルを採取することを含む。血液サンプルは、典型的に、標識されたAβを含む。サンプルは、また、非標識Aβを含んでもよい。本明細書で用いる「血液」は、全血、血漿または血清を意味する。血液サンプルを採取する方法は、当業界で周知である。1つの実施態様において、カテーテルによるか、またはかてーてるなしでの静脈穿刺を用いて、血液サンプルを採取してもよい。もう1つの実施態様において、手掌での採血または等価物を用いて、血液サンプルを採取してもよい。
【0024】
一般的に言えば、血液サンプルは、上記セクションI(a)で記載したように、標識の投与後に採取される。当業者は、血液サンプルが採取される時間(標識の投与後)が、標識および標識の投与方法に応じて変化しうることを理解するであろう。1つの実施態様において、血液サンプルは、標識の投与後、約1分〜約48時間の間に採取される。たとえば、血液サンプルは、約1分〜48時間、約1分〜10時間または約1分〜30時間の間に採取されてもよい。もう1つの実施態様において、血液サンプルは、標識の投与後、約10分〜約24時間の間に採取されてもよい。さらにもう1つの実施態様において、血液サンプルは、標識の投与後、約10分〜約10時間の間に採取されてもよい。たとえば、血液サンプルは、約15分〜8時間、約15分〜6時間、約15分〜4時間、約30分〜5時間、約1時間〜5時間、約1時間〜4時間、約2時間〜4時間または約2時間〜6時間の間に採取されてもよい。もう1つの実施態様において、血液サンプルは、標識の投与後、約10時間〜約20時間の間に採取されてもよい。たとえば、血液サンプルは、約12時間〜20時間、約14時間〜20時間、約16時間〜20時間または約18時間〜20時間の間に採取されてもよい。もう1つの実施態様において、血液サンプルは、標識の投与後、約20時間〜約30時間の間に採取されてもよい。たとえば、血液サンプルは、約22時間〜28時間または約24時間〜28時間の間に採取されてもよい。別の実施態様において、血液サンプルは、標識の投与後、30時間後に投与されてもよい。たとえば、血液サンプルは、標識の投与後、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48時間または48時間以上後に採取されてもよい。
【0025】
いくつかの実施態様において、血液サンプルは、標識の投与後、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、23、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119または120秒後に採取されてもよい。他の実施態様において、血液サンプルは、標識の投与後、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、23、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119または120分後に採取されてもよい。特定の実施態様において、血液サンプルは、標識の投与後、約1、1.25、1.5、1.75、2、2.25、2.5、2.75、3、3.25、3.5、3.75、4、4.25、4.5、4.75、5、5.25、5.5、5.75、6、6.25、6.5、6.75、7、7.25、7.5、7.75、8、8.25、8.5、8.75、9、9.25、9.5、9.75、10、10.25、10.5、10.75、11、11.25、11.5、11.75、12、12.25、12.5、12.75、13、13.25、13.5、13.75、14、14.25、14.5,14.75、15、15.25、15.5、15.75、16、16.25、16.5、16.75、17、17.25、17.5、17.75、18、18.25、18.5、18.75、19、19.25、19.5、19.75、20、20.25、20.5、20.75、21、21.25、21.5、21.75、22、22.25、22.5、22.75、23、23.25、23.5、23.75、24、24.25、24.5、24.75、25、25.25、25.5、25.75、26、26.25、26.5、26.75、27、27.25、27.5、27.75、28、28.25、28.5、28.75、29、29.25、29.5、29.75または30時間後に採取されてもよい。
【0026】
例示的実施態様において、標識が約9時間静脈内投与される場合、血液サンプルは、標識の投与後、約1時間〜約15時間、約5時間〜約13時間または約8時間〜約10時間採取されてもよい。1つの例示的実施態様において、標識が静脈内投与される場合、血液サンプルは、標識の投与後、約9時間採取されてもよい。他の例示的実施態様において、標識が経口投与される場合、血液サンプルは、標識の投与後、約30分〜約5時間または約1時間〜4時間の間に採取されてもよい。
【0027】
1つ以上の血液サンプルを被験者から採取してもよい。たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、23、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40または40以上の血液サンプルを1人の被験者から採取してもよい。サンプリングの間隔は、秒、分、時間または日であってもよい。たとえば、サンプリングの間隔は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、23、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119または120秒であってもよい。あるいは、サンプリングの間隔は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、23、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119または120分であってもよい。もう1つの別の実施態様において、サンプリングの間隔は、約1、1.25、1.5、1.75、2、2.25、2.5、2.75、3、3.25、3.5、3.75、4、4.25、4.5、4.75、5、5.25、5.5、5.75、6、6.25、6.5、6.75、7、7.25、7.5、7.75、8、8.25、8.5、8.75、9、9.25、9.5、9.75、10、10.25、10.5、10.75、11、11.25、11.5、11.75、12、12.25、12.5、12.75、13、13.25、13.5、13.75、14、14.25、14.5,14.75、15、15.25、15.5、15.75、16、16.25、16.5、16.75、17、17.25、17.5、17.75、18、18.25、18.5、18.75、19、19.25、19.5、19.75、20、20.25、20.5、20.75、21、21.25、21.5、21.75、22、22.25、22.5、22.75、23、23.25、23.5、23.75、24、24.25、24.5、24.75、25、25.25、25.5、25.75、26、26.25、26.5、26.75、27、27.25、27.5、27.75、28、28.25、28.5、28.75、29、29.25、29.5、29.75、30時間または30時間以上であってもよい。
【0028】
血液サンプルは、典型的には、Aβ代謝回転の測定を可能にするのに十分な大きさがあるべきである。1つ以上のサンプルを特定の時点のためにプールしてもよい。1つの実施態様において、血液サンプルは、約50μL〜約3000μLであってもよい。たとえば、血液サンプルは、約50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500、1550、1600、1650、1700、1750、1800、1850、1900、1950、2000、2050、2100、2150、2200、2250、2300、2350、2400、2450、2500、2550、2600、2650、2700、2750、2800、2850、2900、2950または3000 μLであってもよい。他の実施態様において、血液サンプルは、3000μL以上であってもよい。
【0029】
(c)Aβの代謝回転決定するためのサンプルの分析
本発明方法は、サンプルを分析して血中Aβの代謝回転を決定することを含む。一般的に言えば、サンプルを分析することは、(a)血液サンプル中の標識および非標識Aβを検出し、定量すること;および(b)血液サンプル中の標識および非標識Aβの量からAβの代謝回転を導き出すこと;を含む。各ステップを以下により詳細に議論する。
【0030】
i.血液サンプル中の標識および非標識Aβの検出および定量
血液サンプル中の標識および非標識Aβを検出および定量する方法はさまざまでありうる。たとえば、検出方法は、使用する標識のタイプ(たとえば、放射性または非放射性など)によって変わる。1つの実施態様において、非放射性標識を用いる場合、検出方法は、非標識タンパク質に関して標識タンパク質の質量の変化を検出するのに十分感受性がある方法であるべきである。たとえば、標識および非標識Aβは、質量分析によって検出されうる。1つの実施態様において、実施例に概略する質量分析プロトコルを用いる。
【0031】
追加のテクニックを用いて、血液成分から標識および非標識Aβを分離してもよく、またはサンプル中の標識および非標識Aβを濃縮してもよい。たとえば、標識および非標識Aβを血液サンプルから免疫沈降させてもよい。免疫沈降のためのプロトコルは、当業界で知られている。1つの実施態様において、ビーズまたは樹脂などの固体支持体に免疫沈降抗体を結合させてもよい。もう1つの実施態様において、実施例に詳述する免疫沈降プロトコルを用いてもよい。Aβを分離または濃縮する他の方法として、クロマトグラフィーが挙げられる。特に、クロマトグラフィーステップと質量分析ステップを結ぶテクニックを用いることができる。
【0032】
標識および非標識Aβの検出および定量を補助するために、該Aβをより小さいペプチドに分割してもよい。たとえば、Aβをプロテアーゼで切断して、小さいペプチドを生成することができる。1つの実施態様において、トリプシンを用いて、Aβを切断する。
【0033】
一般的に言えば、標識および非標識Aβを検出する方法はまた、標識および非標識Aβの定量に用いることもできる。いくつかの実施態様において、定量は、標識および非標識Aβの割合を決定することを含む。
【0034】
ii.Aβの代謝回転の導出
上に概説した検出および定量ステップから、Aβの代謝回転を導き出す。1つの実施態様において、本明細書で用いる「代謝回転」は、標識Aβ生成の速度、標識Aβクリアランスの比速度またはその両方の組合せを意味する。もう1つの実施態様において、「代謝回転」は、血中Aβの半減期を意味する。さらにもう1つの実施態様において、「代謝回転」は、Aβ標識パーセントと、Aβの絶対定量値の積を意味する。たとえば、「代謝回転」は、Aβ42標識パーセントと、Aβ42の絶対定量値の積を意味することもできる。
【0035】
代謝回転は、標識、非標識Aβにおける経時変化ま、たは非標識Aβに対する標識Aβの割合から計算されてもよい。他の実施態様において、代謝回転は、標識Aβのピークから決定されてもよい。さらに他の実施態様において、分画合成率、分画クリアランス率、絶対合成率、絶対クリアランス率、半減期、崩壊率またはコンパートメントモデリングを用いて、代謝回転を決定してもよい。各実施態様において、インビボ標識Aβ、インビボ非標識Aβ、エクスビボ内部標準(絶対量測定)またはそれらの組合せを用いて代謝回転を計算してもよい。
【0036】
II.キット
本発明の別の実施態様は、キットを包含する。キットは、典型的に、少なくとも1つの標識アミノ酸の溶液を含む。1つの実施態様において、溶液は、経口摂取されてもよいシェイクまたはドリンクである。キットは、標識アミノ酸溶液を投与し、次いで少なくとも1つの血液サンプルを採取するための説明書も含む。キットは、血液サンプルを採取し、保管するための容器および/または付属品を含んでもよい。さらに、キットは、血液サンプルがAβの代謝回転ならびに標識および非標識Aβの絶対量測定について分析されるのに十分な品質であることを確実にするための内部標準を含んでもよい。
【0037】
本願のさらにもう1つの態様は、ビジネス方法を包含する。一般的に言えば、該方法は、本発明のキットを医師または個人のいずれかに配布することを含む。キットに含まれる用法にしたがって、キットを用いて被験者からサンプルを採取した後、次いで、本発明方法を用いて処理するために、サンプルを実験室に戻す。
【0038】
後記実施例は、本発明の好ましい実施態様を説明するために記載される。ことが当業者には理解されるべきである。以下の実施例に開示された技術は、本発明の実施において良好に機能するように、本発明者らによって発見された技術を表す。

しかしながら、当業者であれば、本開示に照らして、多くの変更が、開示された特定の実施形態で行われ、本発明の精神および範囲から逸脱することなく同様または類似の結果を得ることができることを理解するべきであり、したがって、すべての記載された事項または添付の図面に示された事項は、例示として解釈されるべきであり、限定的な意味ではないと解釈されるべきである。
【0039】
定義
本明細書で用いる「ボーラス投与」は、標識の個別の投与を意味する。1回以上のボーラス投与を標識の投与に用いることができるが、各ボーラス投与は、個別の用量である。これは、時間をかけて継続投与される輸液とは対照的である。
【0040】
本明細書で用いる「中枢神経系」は、Aβが見出されうる、脳、脳脊髄液または中枢神経系のいずれかの他の組織もしくは液体を意味する
【0041】
本明細書で用いる「輸液」は、時間をかけた標識の継続投与を意味する。いくつかの実施態様において、投与の速度を経時変化させることができる。
【0042】
本明細書で用いる「代謝」は、生体分子の合成、輸送、分解、修飾またはクリアランス速度のいずれかの組合せを意味する。
【0043】
本明細書で用いる「被験者」は、中枢神経系を有するいずれかの被験者を意味する。例示的実施態様において、「被験者」は、アミロイドプラークを特徴とする疾患または障害の影響を受けやすい、いずれかの被験者を意味する。1つの例示的実施態様において、「被験者」は、ADを有する個人またはADのリスクがある個人を意味する。もう1つの例示的実施態様において、「被験者」は、高齢の個人を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】6人の参加者についての36〜48時間にわたる標識血中総Aβのパーセント(青丸)および12人の参加者におけるCSF中総Aβのパーセント(赤四角)を示すグラフである。血中の急速なクリアランス速度による9時間までのプラトーへの急速な上昇に注目すべきであり、一方CSFは、18時間経ってもプラトーに到達しない。また、CSFAβと比べて血中Aβのより急速なクリアランスにも注目すべきである。20〜30時間の間に、標識血中Aβの第二のピークもある(〜26時間ピーク)。
図2A】静脈標識後40時間にわたる標識血中Aβのパーセントを示す。
図2B】口腔標識後40時間にわたる標識血中Aβのパーセントを示す。
図3】40時間にわたる血中Aβイソ体の絶対量測定を示す。処理する前に、標識N15アミロイドベータ内部標準(ISTD)をサンプルに加えた。実施例において記載したようにサンプルを処理し、アミロイドベータイソ体の絶対量をプロットする。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下の実施例は、本発明の様々な繰り返しを示す。
【実施例】
【0046】
生きているヒトの中枢神経系におけるAβ代謝を直接測定するために、近年、先駆的なアプローチが開発された(Batemanら、2006)。この方法は、参加者が研究病室に入院していることを必要とし、血液および脳脊髄液の時間毎のサンプルが得られるように設置された2つのIVカテーテルと腰椎カテーテルを有する。この方法を用いて、近年の研究は、Aβが、ヒトの脳および脳脊髄液(CSF)中で迅速に代謝されること(半減期8-10時間)を実証している。
【0047】
しかしながら、これまでは血中の標識Aβを測定する方法がなかったので、血中Aβ動力学は、十分に理解されていない。もしそのような方法が利用可能であったならば、Aβの生理学(および病態生理学)は、血中Aβ生成、血液および濃脊髄液への輸送ならびに血液からのクリアランスの定量的尺度としてより良く理解されることが可能であったであろう。血中標識Aβアッセイは、侵襲脊髄カテーテルなしで測定されるAβの生理学および病態生理学を可能にするであろう。
【0048】
標識血中Aβを測定するために安定同位体標識動態免疫沈降−質量分析アプローチが開発された。これは、ヒトにおける血中Aβ生成、コンパートメント間の輸送およびクリアランス速度を測定するのを可能にする。
【0049】
血中/血漿Aβの半減期は、CNS/CSF中のものとは明確に異なり、生成においてt1/2は1〜3時間である(図1)。これは、CSF中で測定される8〜10時間の半減期と対照的である(Batemanら、2006)。図1のために、被験者らに、標識アミノ酸を投与し(13C6 ロイシン;9時間かけて注入+10分間のプライムド注入(primed infusion) 2 mg/kg、次いで、2 mg/kg/時間で8時間〜50分)、次いで、0〜15時間の間は毎時、35時間までは奇数時間に、そして36および48時間の時点で、血液サンプルを採取した。合計28個のサンプルを採取した。サンプルを凍結保存した。次いで、サンプルを解凍し、プロテアーゼインヒビターカクテルを加えた。サンプルを遠心分離し、次いで、すべての時点において、2つの血漿サンプルからプールした(合計2 ml)。次に、以下のように、サンプルからAβを免疫沈降させた:
【0050】
第1日:
1. サンプルを氷上で解凍した。
2. 20 μlのコンプリートプロテアーゼインヒビター(Roche、1 mlの水に1錠を溶解したもの)を添加した。
3. 14,000 RPM、4℃にて15分間遠心分離して、粒子を除去した。
4. 上清をプールした。
5. 標準培地をPBSで希釈した。
6. HJ5.1 (Aβ特異的抗体)ビーズを、1x PBS+0.02% アジドで2回洗浄した。最後に、50%ビーズスラリーを調製した。
7. 220 μlの5M グアニジン塩酸塩溶液を加えた。
8. 20 μlのTween-20 (5% PBS溶液、最終0.05%)を加えた
9. 5 μlのISTD (N15-Aβ)を加えた。
10. 30 μlの抗体ビーズ(〜20ng Aβに十分な50%スラリー)を加えた。
11. 4℃にて一夜インキュベートした。
【0051】
第2日:
12. ビーズを4500 RPMにて5分間遠心分離した。
13. 新しいチューブに上清を移し、保存した(血漿のみ)。
14. 1 ml 0.5M グアニジン塩酸塩溶液を加えた。
15. 最終0.05% Tween-20となるように10μlの5% Tween-20を加えた。
16. 一度再懸濁したビーズを1.5 mlチューブに移した。
17. ビーズを4500 RPMにて5分間遠心分離した。
18. 上清を捨てた。
19. ビーズを1x AmBiCリンスで2回洗浄した。上清を捨て、ビーズを乾燥した。
20. 50 μl(ビーズ体積)の98%ギ酸(溶出液)を加え、ビーズを遠心分離した。上清を除去し、1.5 mlチューブに入れた。
21. 溶出液をspeedvacで1時間乾燥して、ギ酸を除去した(37℃)。
23. 20 μgのトリプシンを解凍した。トリプシンを再懸濁させるために、1 mlの25mM AmBiC溶液を加え、最終濃度を20 ng/μlにした。
24. 25 mM AmBiCの10 μl溶液に。タンパク質を再懸濁させた。
25. 消化用ビーズに、10 μlの20 ng/μlトリプシン溶液を加えた。
26. インキュベーター内で37℃にてO/N(オーバーナイト)消化した(16時間)。
【0052】
第3日:
27. サンプルのショートスピンを行って、凝縮液をチューブの底に沈殿させた。
28. 消化物に、2 μlのギ酸を加えた(タンパク質を沈殿させるため)
29. サンプルを混合した。
30. トリプシン消化物を14,000 RPM、4℃にて15分間遠心分離した。
31. オートサンプラーバイアルに移し、次いで、speedvacを用いてサンプルをスピンダウンし、冷蔵庫内で4℃にて保管した。
【0053】
次いで、質量分析によってサンプルを分析した:
Aβ 1-42のアミノ酸配列は、DAEFRHDSGYEVHH QKLVFFAEDVGSNKGAIIGLMVGGVVIA (配列番号:1)であり、Aβ 1-40は、DAEFRHDSGYEVH HQKLVFFAEDVGSNKGAIIGLMVGGVV (配列番号:2)である。トリプシンなどのプロテアーゼで消化される場合、4つの小さいペプチドが、Aβ 1-5 DAEFR (配列番号:3)、Aβ 6-16 HDSGYEVHHQK (配列番号:4)、Aβ 17-28 LVFFAEDVGSNK (配列番号:5)、およびAβ 29-42 GAIIGLMVGGVVIA (配列番号:6)として生成される。ので、これらのペプチドのうち2つの配列がロイシン残基を包含するので、それらだけがインビボで標識できるロイシン標識でのSILK技術(Stable Isotope Labeling Kinetics - Batemanら、2009)を用いる定量に関連する。これらのペプチドは、Aβ17-28 LVFFAEDVGSNK (配列番号:5)とAβ29-42 GAIIGLMVGGVVIA (配列番号:6)であるが、Aβ17-28 LVFFAEDVGSNK (配列番号:5)ペプチドが、血中Aβの総量を表し、より高いシグナルを生成するので、我々は、それのみを用いる。もちろん、血中c-末端(Aβ 29-42 GAIIGLMVGGVVIA (配列番号:6)もしくはAβ 29-40 GAIIGLMVGGVV (配列番号:7))またはn-末端フラグメントも同様に定量するために有用である。一般に、任意のアミノ酸標識を用いることができ、Aβを標識し、血中標識を定量するのに任意のエンドペプチダーゼを用いることができる。
【0054】
ナノフローESI源およびナノ-20液体クロマトグラフィー(NanoLC-2D)に結合したTSQ Vantage質量分析計で実験を行った。オートサンプラートレイにて、サンプルを4℃に維持した。Ace 5 C18 ARカラム充填材(MAC-MOD Analytical、Chadds Ford、PA)を15cmまでを充填したプロドラッグルドチップ(pulled tip)を供えた自家製ナノカラム(直径150-mm)にサンプルを注入した。Nano2D-LC(Eksigent、Inc. Ultra NanoLC-2D)によって、流速1 mL/分でペプチドを分離した。溶媒Aは、0.1%ギ酸水溶液であり、溶媒Bは、で0.1%ギ酸アセトニトリル溶液である。勾配は、15% B〜25% Bで10分間、次いで、25% B〜95% Bで5分間であり、次いで、勾配を2分間で15% Bに下降させ、オートサンプラーが注入のためにもう1つのサンプルを掴み上げながら、カラムを3分間再平衡化させた。
【0055】
ペプチドを用いたチューニングから最適化されたパラメータと1.2 kVのスプレー電圧を用い、TSQ Vantage質量分析計(MS)を正イオンモードで運転した。データは、マルチプルリアクションモニタリング(MRM)モードにおいて得た。このMRM実験中、ペプチドの質量は、まず、第一次元で、またはMS1として検出した。MS1を用いて定量を行う間、技術は、血液などの非常に複雑なマトリックスにおいて、そして多くのペプチドが同じ完全な質量を有するという事実により、特に特異性の欠如に苦しむ。ペプチドイオンは、フラグメント化され、質量分析計で検出され、この第二次元のMSフラグメント化(MS2)が、独特のフラグメントを提供した。特異的前駆体質量と独特のフラグメントイオンの組合せを用いて、定量されるペプチドを選択的にモニターした。この場合、複数のフラグメントイオン(反応としても知られる)を選択的にモニターして、Aβ 17-28を定量し、独特のMRM実験を得た。Aβ 17-28は、内因性ペプチドの質量電荷比663.340および標識組込みペプチドの質量電荷比666.340である前駆体質量(MS1)を有する。MS2フラグメント化後に、3つの各フラグメントイオンをモニターした。モニターされる遷移イオンとしても知られるフラグメントイオンは、質量電荷比19.38、966.45および1113.52を有する。MRM実験を検出し、計測器制御ソフトウェアであるXcaliburによって処理された単一のクロマトグラフィーピークとしてプロットする。
【0056】
図2は、経口標識投与(B)と静脈内標識投与(A)の間の差異を示す。試験したイソ体のそれぞれについて、標識ピークは、経口投与では約1〜5時間、静脈内投与では約5〜10時間の間で起こった。標識およびサンプルは、上述のように、それぞれ投与され、採取された。
【0057】
図3は、上記プロトコルを用いて再度測定された、血漿Aβイソ体の絶対量測定を示す。処理前に、標識N15アミロイド-ベータ内部標準(ISTD)をサンプルに加えた。上記の通りサンプルを処理した。
図1
図2A
図2B
図3
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]