特許第6293885号(P6293885)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6293885
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】ネコの水和レベルの向上
(51)【国際特許分類】
   A23K 50/40 20160101AFI20180305BHJP
   A23K 20/158 20160101ALI20180305BHJP
【FI】
   A23K50/40
   A23K20/158
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-527339(P2016-527339)
(86)(22)【出願日】2013年11月12日
(65)【公表番号】特表2017-500844(P2017-500844A)
(43)【公表日】2017年1月12日
(86)【国際出願番号】US2013069659
(87)【国際公開番号】WO2015072972
(87)【国際公開日】20150521
【審査請求日】2016年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】502329223
【氏名又は名称】ヒルズ・ペット・ニュートリシャン・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100117422
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 かおり
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー ブロックマン
(72)【発明者】
【氏名】デニス ジュエル
【審査官】 門 良成
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−510404(JP,A)
【文献】 特開平08−038063(JP,A)
【文献】 特表2008−531483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 10/00−50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネコの水和レベルを向上させることにより、治療を必要とする、低水和より生じるネコの疾患または状態を治療する方法であって、この疾患または状態は、尿路結石、猫特発性膀胱炎、及びFLUTDの進行から選択されるものであり、該方法は、前記ネコにアラキドン酸及びエイコサペンタエン酸を含む食事を提供することを含みエイコサペンタエン酸に対するアラキドン酸の比率は、乾燥重量基準で3:1またはこれより大きく、前記食事中のω−3脂肪酸に対するω−6脂肪酸の比率は、乾燥重量基準で10:1〜20:1未満であり、前記アラキドン酸の量が前記食事の乾燥重量の0.05〜0.5%であり、また、前記食事は、総脂肪の0.01%未満のエイコサペンタエン酸を含む前記方法。
【請求項2】
前記食事はと、ネコにとって味がよく、栄養が完全なキャットフード組成物からなり、前記キャットフード組成物はアラキドン酸及びエイコサペンタエン酸を含み、エイコサペンタエン酸に対するアラキドン酸の比率は、乾燥重量基準で3:1またはこれより大きく前記組成物中のω−3脂肪酸に対するω−6脂肪酸の比率は、乾燥重量基準で10:1〜20:1未満であり、前記アラキドン酸の量が前記組成物の乾燥重量の0.05〜0.5%であり、また、前記組成物は、総脂肪の0.01%未満のエイコサペンタエン酸を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記食事が、栄養が完全なキャットフードと共に、アラキドン酸を含む有効量の栄養補助食品を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記方法の実践の1ヶ月後の、前記ネコの尿比重が、前記ネコの初期尿比重と比較して低下している請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記ネコが前記食事を少なくとも1ヶ月間継続する請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記食事または前記組成物が、乾燥重量で少なくとも5の家禽肝と、乾燥重量で未満の魚油を含む請求項1〜5のいずれかに記載の方法
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
イエネコ(Felis domesticus)は砂漠条件で正常に生息し、他の多くの動物と比較して、非常に濃縮した尿を生成することにより水を保持することに適応している。しかし、非常に濃縮した尿を生成することは、尿路結石、及び猫特発性膀胱炎等の、明確でない他の尿路状態の進行の促進等の悪影響を有する可能性がある。不十分な水和によるネコの尿路状態は、猫下部尿路疾患(FLUTD)と呼ばれることもある。FLUTDはネコの生命を脅かす状態となる場合がある。特に、ネコの飼い主がFLUTDで直面する問題は、症状に飼い主が気づく時までに、この疾患はネコの生命を脅かしているということである。結晶がネコの尿路中で石として沈殿し、尿路を遮断する可能性がある。石の種類としてはスツルバイト、シュウ酸カルシウム、尿酸、シスチン、リン酸カルシウム、及びケイ酸塩が挙げられる。スツルバイト及びシュウ酸カルシウム石が、ネコにおいて群を抜いて最も一般的である。未治療のままでいると、尿が滞り腎臓を損傷し、毒素が血中に蓄積するため、「ブロックされた」ネコは死に至る。
【0002】
ネコに一層水を飲ませるようにすることができると、これにより尿を希釈することにより、低水和により生じるネコの尿路状態を緩和することができる。この希釈は2つの段階:まず、尿内の電解質濃度を低下させることにより(ネコがより多くの食塩を補うために、それ以上水を飲まないと仮定する)、及び次に、排尿頻度を増加させることによって膀胱中の尿を消化するのにかかる時間を減少させることにより、作用する。ネコは1日あたり、体重1kgあたりわずか約30ミリリットルの水しか飲まず、自然に飲水を増加させることは難しい。湿性食物を提供することは、水を大変多く飲まない動物の水分摂取の増加に役立つが、依然として摂取する水が十分でない、または利尿を十分に増加させないといういずれかの理由により、湿性食物の提供は不十分である。加えて、泌尿器症候群を示すネコは多くの場合肥満であるか、または過剰体重を有している。したがって、尿路障害、及び特にFLUTDを治療するのが望ましい場合、湿性食物を提供することは好ましい場合があるが、十分ではない。即ち、その食物は十分な水和をもたらさず、ネコには許容されない場合があるか、または分配される水分量が十分に制御されない場合、更なる過剰体重及び/もしくは肥満を誘発する場合がある。
【0003】
ドコサヘキサエン酸(「DHA」)及びエイコサペンタエン酸(「EPA」)等の、ある種のω−3ポリ不飽和脂肪酸を含有するある種のキャットフードは、例えば米国特許第8,252,742号に記載されているように、既知である。米国特許第6,946,488号に記載されているように、ある種のキャットフードもまた、ω−3及びω−6ポリ不飽和の両方を、特定の量及び比率で含有することが知られている。しかし、水和に関する、食事におけるかかる脂肪酸の任意の効果について、先行技術では開示が存在しない。
【0004】
したがって、ネコの水和を増加させることにより、FLUTD等の尿路状態を治療、低下、阻害または緩和するための方法及び組成物の必要性が、今日存在する。
【発明の概要】
【0005】
驚くべきことに、キャットフードにおける、ある種のω−3及びω−6ポリ不飽和脂肪酸の比率、特に、EPAに対するアラキドン酸(「AA」)の比率を制御することにより、ネコの水和の増加をもたらすことが見出されている。我々は、子ネコ及び成熟した大人のネコの両方において、動物を脱水することなく尿の比重を測定することにより、EPAに対するAAの高い比率が尿の流れを増加させることを見出した。血液の浸透圧モル濃度は、動物が、殆どの場合水分摂取の増加により、増加した水和を有することを示す。
【0006】
我々の研究では、高いAA:EPA比を有する食事と低いAA:EPA比を有する食事の、尿比重及び相対過飽和度(RSS)の両方を測定した。高いRSSは、石が一層形成しやすい(石を形成する溶質が多い)ことを意味する。尿比重はRSSと正に相関する。AA:EPAが高い食物を受けたネコは低い尿比重及び向上した(低下した)RSSを有し、これは石の形成のリスク低下に対応する。
【0007】
本発明はネコの水和レベルを向上させる方法であって、該方法は前記ネコにアラキドン酸及びエイコサペンタエン酸を含む食事を給餌することを含む、前記方法に関係し、ここで、エイコサペンタエン酸に対するアラキドン酸の比は3:1以上であり、かつアラキドン酸の量は0.05〜0.5乾燥重量%である。
【0008】
別の実施形態では、本発明は、低水和により生じるネコの疾患または状態の治療方法であって、該方法はアラキドン酸及びエイコサペンタエン酸を含む食物を前記ネコに給餌することを含む、前記方法に関し、ここで、エイコサペンタエン酸に対するアラキドン酸の比は3:1以上であり、かつアラキドン酸の量は0.05〜0.5乾燥重量%である。
【0009】
別の実施形態では、本発明はネコの水和を向上させるのに有効な量のアラキドン酸及びエイコサペンタエン酸を含む、味のよい、栄養が完全なキャットフード組成物に関し、ここで、食物組成物は水と組み合わせることで、味がよく、かつネコの単独の食事として栄養が完全であり、かつエイコサペンタエン酸に対するアラキドン酸の比率は、乾燥重量基準で3:1以上であり、かつ組成物中における、ω−3脂肪酸に対するω−6脂肪酸の乾燥重量基準での比率は、10:1〜20:1未満である。
【0010】
本発明を適用可能な更なる領域は、本明細書において提供する詳細の説明より明らかとなるであろう。詳細の説明及び特定の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しているものの、説明の目的のみとして意図されており、本発明の範囲を限定することを意図していないと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明は、詳細の説明及び添付図面より一層完全に理解されるであろう。
【0012】
図1】尿比重の単位あたりの、ネコの数の分布(実施例1を参照)。高い比重が異なる遺伝子型において、ネコを評価した(1.054超対1.054以下)。
図2】高いAA:EPA比(約3:1)と低いAA:EPA比(約0.5:1)を有する食事を給餌された成熟ネコの、尿比重を比較した棒グラフ(実施例2を参照)。
図3】高いAA:EPA比(約3:1)と低いAA:EPA比(約0.5:1)を有する食事を給餌された成熟ネコの、血液浸透圧を比較した棒グラフ(実施例2を参照)。
図4】高いAA:EPA比(16:1及び8:1)と低いAA:EPA比(0.4:1)を有する食事を給餌された、子ネコの尿比重を比較した棒グラフ (実施例3を参照)。
図5】高いAA:EPA比(約16:1及び8:1)と低いAA:EPA比(0.4:1)を有する食事を給餌された子ネコの、血液浸透圧を比較した棒グラフ(実施例3を参照)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の好ましい実施形態の説明は本質的に単に例示的なものであり、本発明、本願、又は使用をなんら限定するものではないものと意図される。
【0014】
全体を通して使用されている通り、範囲は、その範囲内にある各値及び全ての値を示すための省略表現として使用される。範囲内の任意の値は、その範囲の末端として選択されることが可能である。更に、本明細書内で引用される参照文献は全て、それら全体が参考として本明細書に組み込まれる。本開示における定義と、引用参照文献における定義に矛盾がある場合、本開示が優先する。特に断らない限り、本明細書内及び本明細書の他の箇所で表現される割合及び量は全て、重量パーセントを指すものと理解されなければならない。別途特に明記しない限り、本明細書内で表現される割合は全て、乾物基準重量である。
【0015】
本発明との関係において、用語「治療すること」または「治療」とは、本明細書で使用する場合、かかる用語が用いられる疾患もしくは状態の進行、またはかかる疾患もしくは状態の1つ以上の症状を逆転、緩和、軽減または阻害することを意味する。本発明で使用する場合、及び添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が別様を明確に規定しない限り、複数形を含む。
【0016】
尿比重は尿希釈の測定値である。比重値が大きければ大きいほど、尿は一層濃い/濃縮されている。ネコにおける尿比重の通常の範囲は、典型的には1.030〜1.060である。非常に小さい比重は腎不全を示す一方で、高い尿比重は尿が更に濃縮されているため、石が沈殿し、問題を一層生じやすくなることを意味する。
【0017】
尿比重は、(a)腎臓の集合管への糸球体濾過による尿の生成、及び(b)集合管から水を吸収し、血流に戻すことの組み合わせにより制御される。本プロセスは、部分的にはエイコサノイドプロスタグランジンE2(PGE2)により制御されている。PGE2は腎臓尿細管細胞のプロスタグランジンE受容体に結合し、セカンドメッセンジャーの活性化により、体内の水及びナトリウムバランスを調節する水及びナトリウムチャネルを制御する。
【0018】
発明者らは、ネコの遺伝子型と、それら個々の尿比重との間の全ゲノム関連研究を使用して、AAからPGE2を作製する経路中での鍵となる酵素である、プロスタグランジンEシンターゼ3遺伝子を含有する遺伝子座を発見した。更に、ネコの食事における、EPAに対するAA(PGE2の前駆体)の異なる比率は、ネコの尿比重と相関することも見出されている。したがって、食事におけるAAの量を制御することで、ネコの尿比重を低下させることができるということが見出されている。本発明の組成物を給餌されたネコは尿が一層薄いが、その血液浸透圧モル濃度もまた低下することが見出されており、このことは、これらの動物はより多くの水を飲み、全体の水のバランスが増加した、即ちより水和したことを示している。
【0019】
高い相対過飽和度(「RSS」)は、シュウ酸塩及びスツルバイト石の両方に関して、尿石を形成する傾向を示す。比重の低下はRSSの低下と相関していることが見出されている。したがって、ネコにおける、一層水和した尿の生物学的メリットは、石形成のリスク低下である。
【0020】
一実施形態では、本発明の組成物は栄養が完全な食料成分である。栄養が完全な組成物は、健康なネコにおける通常の健康を維持するのに十分な栄養素を含む食事を提供する。栄養が完全な組成物は味がよく、水と組み合わせることにより、健康なネコにおける通常の健康を維持するのに十分な全ての栄養素の、単一の供給源を提供する。栄養が完全な組成物は当業者によく知られている。例えば、動物用餌組成物に好適な、本明細書にて開示したもの、及び他のもの等の栄養素及び成分、並びにそれらの推奨量は、例えばOfficial Publication of the Associate of American Feed Control Officials(「AAFCO」),Inc.,Nutrient Requirements of Dogs and Cats,2006に見出されてよい。例えば、栄養が完全な食物はタンパク質、脂肪、炭水化物、食物繊維、アミノ酸、ミネラル、ビタミン、及び当業者に知られている量の他の成分を含有してよい。
【0021】
植物源、動物源、または両方を含む、当業者に既知の任意の種々の供給源により、タンパク質を供給してよい。動物源としては、例えば肉、食肉処理の副産物、魚介類、乳製品、卵等が挙げられる。肉としては例えば、家禽、魚、及び哺乳類(例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ等)の肉が挙げられる。食肉処理の副産物としては、例えば、肺、腎臓、脳、肝臓、並びに胃及び腸(取り出したもの全て、または本質的にこれらの内容全て)が挙げられる。タンパク質はインタクトであり、殆ど完全に加水分解されているか、部分的に加水分解されていることができる。本発明の組成物における典型的なタンパク質の量は、少なくとも約15%(または約15%〜約55%、または約30%〜約55%、または約33%〜約36%)である。
【0022】
肉、食肉処理の副産物、魚油、及び植物を含む、当業者に既知の任意の種々の供給源により、脂肪を供給することができる。植物性脂肪源としては、小麦、アマニン、ライ麦、大麦、コメ、サトウモロコシ、トウモロコシ、オート麦、雑穀、小麦胚、トウモロコシ胚、大豆、ピーナッツ、及び綿実、並びにこれら、及び他の植物性脂肪源由来の油が挙げられる。本発明の組成物は、典型的に少なくとも約9%(または約9%〜約35%、または約10%〜約25%、または約15%〜約22%)の総脂肪を含有する。
【0023】
AAは種々の天然源に由来してよい。肝臓、例えばニワトリの肝臓は、AAが比較的多い。他方、魚油はEPAが比較的多いため、高いAA:EPA比を避けるために魚油を添加しないことが好ましい。AA及びEPAに加えて、本発明の組成物中の脂肪成分の一部として含まれてよい脂肪酸としては、DHA、 αリノレン酸、 γリノレン酸、 リノール酸、 オクタデカテトラエン塩(ステアリドン酸)等の、他のω−3及びω−6脂肪酸、またはこれらの混合物が挙げられる。本発明の組成物における、乾燥重量基準でのω−3脂肪酸に対するω−6脂肪酸の比は、通常は10:1以上、別の実施形態では少なくとも10:1〜20:1未満、別の実施形態では約10:1〜18:1、別の実施形態では約12:1〜17:1である。
【0024】
オート麦繊維、セルロース、落花生殻、ビートパルプ、パーボイルド米、コーンスターチ、コーングルテンミール、及びこれらの供給源の任意の組み合わせを含む、当業者に既知の、任意の種々の供給源により、炭水化物を供給してよい。炭水化物を供給する穀物としては、小麦、トウモロコシ、大麦、及びコメが挙げられるが、これらに限定されない。食物における炭水化物の含有量は、当業者に既知の、任意の多数の方法により測定してよい。通常、炭水化物の割合は可溶性無窒素物(「NFE」)として計算してよく、これは以下の通りに計算してよい:NFE=100%−水分%−タンパク質%−脂肪%−灰分%−粗繊維%。
【0025】
食物繊維とは、動物の消化酵素による消化に耐性を有する食物成分を意味する。食物繊維としては、可溶性及び不溶性繊維が挙げられる。可溶性繊維、例えばビートパルプ、グアーガム、チコリー、オオバコ、ペクチン、ブルーベリー、クランベリー、カボチャ、リンゴ、オート麦、マメ、柑橘、大麦、またはエンドウ豆は小腸での消化及び吸収に対して耐性があり、大腸で完全に、または部分的に発酵される。セルロース、全麦製品、オート麦(wheatoat)、コーンブラン、亜麻仁、ブドウ、セロリ、インゲン豆、カリフラワー、ジャガイモの皮、果物の皮、野菜の皮、落花生殻、及び大豆繊維を含む不溶性繊維を、任意の種々の供給源により供給してよい。粗繊維としては、穀物、例えばコメ、トウモロコシ、及びマメ等の穀物の殻等の植物の細胞壁及び細胞含有物に含有される非消化性成分が挙げられる。本発明の組成物における典型的な繊維量は、約0〜10%、または約1%〜5%である。
【0026】
必須アミノ酸を含むアミノ酸を遊離アミノ酸として本発明の組成物に添加してよいか、または任意の数の供給源、例えば粗タンパク質により本発明の組成物に供給してよい。必須アミノ酸は、生命体により新規に合成できない、または不十分な量しか合成できないため、食事で供給しなければならないアミノ酸である。必須アミノ酸は、生命体の代謝に依存し、種間において異なる。例えば、イヌ及びネコ(並びにヒト)の必須アミノ酸はフェニルアラニン、ロイシン、メチオニン、リジン、イソロイシン、バリン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、及びアルギニンであると通常理解されている。また、専門的にはアミノ酸ではないがシステインの誘導体であるタウリンは、ネコの必須栄養素である。
【0027】
本発明の組成物はまた、欠乏症を回避し、健康を維持するのに必要な量の、1種以上のミネラル及び/または微量元素、例えばカルシウム、リン、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、銅、亜鉛、コリン、または鉄塩を含有してよい。これらの量は、例えばOfficial Publication of the Associate of American Feed Control Officials,Inc.(「AAFCO」),Nutrient Requirements of Dogs and Cats,2006で提供されているように、当業者に既知である。典型的なミネラル量は、約0.1〜約4%、または約1%〜約2%である。
【0028】
本発明の組成物はまた、欠乏症を回避し、健康を維持するのに必要な量のビタミンを含んでよい。これらの量、及び測定方法は当業者に既知である。例えば、Official Publication of the Associate of American Feed Control Officials,Inc.(「AAFCO」),Nutrient Requirements of Dogs and Cats,2006は、イヌ及びネコ用のかかる成分の推奨量を規定している。本明細書で想到される通り、有用なビタミンとしては、これらに限定されない。ビタミンA、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンH(ビオチン)、ビタミンK、葉酸、イノシトール、ナイアシン、及びパントテン酸が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の組成物における典型的なビタミンの量は、約0〜約3%、または約1%〜約2%である。
【0029】
本発明の組成物は、当業者によく知られている量及び組み合わせで、更に食味増強剤及び安定剤等の他の添加剤を含んでよい。安定物質としては、例えば、組成物の貯蔵寿命を増加させる傾向にある物質が挙げられる。本発明の組成物が含む、場合によって好適なかかる他の添加剤の他の例としては、例えば、防腐剤、着色剤、酸化防止剤、風味剤、相乗剤及び隔離剤、充填用ガス、安定剤、乳化剤、増粘剤、ゲル化剤、及び湿潤剤が挙げられる。乳化剤及び/または増粘剤の例としては、例えば、ゼラチン、セルロースエーテル、デンプン、デンプンエステル、デンプンエーテル、及び修飾デンプンが挙げられる。組成物中のかかる添加剤の濃度は典型的には、最大約5重量%であってよい。いくつかの実施形態では、かかる添加剤の濃度(特に、かかる添加剤がビタミン及びミネラル等の主要な栄養バランス剤である場合)は、約0〜約2.0重量%である。いくつかの実施形態では、かかる添加剤の濃度(また特に、かかる添加剤が主要な栄養バランス剤である場合)は約0〜約1.0重量%である。
【0030】
任意の濃度または含水量の食物が想到され、例えば本発明の組成物は例えば、乾燥、湿性または半湿性の動物食物成分であってよい。いくつかの実施形態では、含水量は組成物の総重量の約3%〜約90%である。「半湿性」とは、約25〜35%の水分を含有する食物組成物を意味する。「湿性」食物とは、約60〜約90%以上の含水量を有する食物組成物を意味する。「乾燥」食物とは、約3〜約11%の含水量を有する食物組成物を意味し、多くの場合小片またはキブル形態で製造される。
【0031】
湿性形態、または缶に詰めた形態で本発明の組成物を調製する際、任意成分(例えばAAまたはEPA)は通常例えば、組成物の他の成分の混合中、及び/または混合後等の、配合物の加工中に組成物中に組み込まれてよい。これらの成分の組成物中への分配は、従来の手段により達成することができる。一実施形態では、すりつぶした動物及び家禽のタンパク質組織を、魚油、穀物、他の栄養的バランスする成分、特別目的の添加剤(例えばビタミンとミネラルの混合物、無機塩、セルロース及びビートパルプ、充填剤等)を含む他の成分と混合し、加工に十分な量の水もまた加える。これらの成分は、構成成分のブレンド中に加熱を行うのに好適な容器中で混合するのが好ましい。例えば直接蒸気注入、または熱交換器を備えた容器の使用等の、任意の好適な方法を使用して、混合物の加熱を行ってよい。最後の成分を加えた後、混合物を約50°F(10℃)〜約212°F(100℃)の温度範囲で加熱する。いくつかの実施形態では、混合物を約70°F(21℃)〜約140°F(60℃)の温度範囲で加熱する。これらの範囲外の温度は一般的に許容されるが、他の加工助剤を使用しない場合、商業的に非実用的となる場合がある。適切な温度まで加熱をすると、材料は通常、粘性液体の形態となるであろう。粘性液体を缶に詰める。蓋を付け、容器を密閉する。次いで、密閉した缶を、内容物を滅菌するために設計した従来の装置の中に配置する。これは通常、約230°F(110℃.)を超える温度まで、適切な時間加熱することにより達成することができ、この時間は例えば、使用する温度及び組成物に依存する。
【0032】
あるいは、従来のプロセスを使用して、キャットフード組成物を乾燥形態で調製することができる。通常、動物性タンパク質、植物性タンパク質、穀物等を含む乾燥成分を粉砕して、共に混合する。次に、脂肪、油、動物性タンパク質、水等を含む湿性または液体成分をドライミックスに加え、混合する。次に、混合物をキブルまたは類似のドライピースに加工する。キブルは多くの場合、押出成形プロセスを使用して形成される。このプロセスでは、乾燥成分と湿性成分との混合物を、高圧及び高温にて機械操作にかけ、小径の開口部から押し出して、回転ナイフによりキブルに切断する。次に、湿性キブルを乾燥させて、所望により、例えばフレーバー、脂肪、油類、粉末等を含んでよい、1種以上の局所コーティング材でコーティングする。キブルはまた、押出成形ではなくベーキング法を用いてドウより作製することができ、この方法では、乾燥加熱プロセス前にドウをモールド内に配置する。
【0033】
ネコを水和するため、またはネコの疾患もしくは状態を治療するための本発明の方法において、投与した食物は栄養が完全なキャットフードとすることができるか、または、消費される全食事が、本発明の有益な効果をもたらすのに必要な量及び比のAA及びEPAを満たすように、必要量及び比のAA及びEPAを、例えば別々の成分として、もしくは別々の成分の一部、通常は栄養補助食品として別々に投与することができる。ネコの疾患または状態を治療する本発明の方法において、前記疾患または状態は例えば、尿路結石、猫特発性膀胱炎、またはFLUTDの進行であることができる。
【0034】
したがって、一実施形態において、本発明は、有効量のアラキドン酸を含む食事を前記ネコに提供することを含む、ネコの水和レベルを向上させる方法を提供し、ここで、前記食事はエイコサペンタエン酸より多くの量のアラキドン酸を含む(方法1)。例えば、本発明は、
1.1 前記食事が水、及びネコにとって味がよく栄養が完全なキャットフード組成物からなり、前記食物組成物がアラキドン酸及びエイコサペンタエン酸を含み、エイコサペンタエン酸に対するアラキドン酸の比が3:1以上、例えば少なくとも5:1、例えば少なくとも10:1であり、かつ前記組成物中のアラキドン酸の量が0.05〜0.5乾燥重量%である、方法1。
1.2 前記食事が、栄養が完全なキャットフードと共に、アラキドン酸を含む有効量の栄養補助食品を含む、方法1。
1.3 前記食事が、乾燥質量において、重量比で10:1以上の、ω−6及びω−3脂肪酸を含む、方法1、1.1、または1.2。
1.4 前記組成物中の、ω−3脂肪酸に対するω−6脂肪酸の、乾燥質量での比が10:1〜20:1、例えば12:1〜18:1である、方法1.3。
1.5 前記ネコが大人のネコである、前述の方法のいずれか。
1.6 前記ネコがオスネコである、前述の方法のいずれか。
1.7 前記ネコがかかる治療を必要とする、低水和より生じるネコの疾患または状態の治療方法である前述の方法のいずれか。
1.8 前記疾患または状態が、尿路結石(膀胱結石または腎臓結石を含む)、猫特発性膀胱炎、及びFLUTDの進行から選択される、方法1.7。
1.9 前記ネコは低水和より生じる疾患または状態、例えば尿路結石(膀胱結石もしくは腎臓結石を含む)、猫特発性膀胱炎、及びFLUTDの進行から選択される疾患または状態の、進行のリスクが増加したことが特定されており、前記リスクは(a)前記ネコの尿比重により評価され、少なくとも1.05、例えば1.06より大きい、例えば1.07より大きい尿比重を有するネコはリスクが増加したと考えられ、かつ/または(b)前記ネコはリスクの増加と関係するPTGES3遺伝子内でSNPもしくは変異を発現する、方法1.7または1.8。
1.10 前記ネコが、chrB4.101464677、chrB4.101341304及びchrB4.101438741から選択される1種以上の一塩基変異多型(SNP)を提示することに基づき、リスクが増加していると特定されている、方法1.9。
1.11 前記ネコの初期尿比重が1.055より大きい、例えば1.06より大きい、前述の方法のいずれか。
1.12 前記方法の実践の1ヶ月後、例えば3ヶ月後、例えば6ヶ月後における前記ネコの尿比重が、例えば前記ネコの初期尿比重と比較して、例えば1.055未満に低下している、前述の方法のいずれか。
1.13 前記ネコがPTGES3遺伝子中に変異を有する、前述の方法のいずれか。
1.14 前記ネコが、chrB4.101464677、chrB4.101341304及びchrB4.101438741から選択される1種以上の一塩基変異多型(SNP)を示す、前述の方法のいずれか。
1.15 前記ネコが少なくとも1ヶ月、例えば少なくとも3ヶ月、例えば少なくとも6ヶ月間、前記食事を維持する、前述の方法のいずれか。
1.16 前記ネコにおける前記向上した水和が、尿比重の低下として測定される、前述の方法のいずれか。
1.17 前記ネコにおける前記向上した水和が、血液浸透圧の低下として測定される、前述の方法のいずれか。
1.18 前記方法がプロスタグランジンE2レベルの増加を引き起こす、前述の方法のいずれか。
1.19 前記方法にしたがった食事を受ける前記ネコが水分摂取の増加を示すが、塩化ナトリウム摂取の増加を示さない、前述の方法のいずれか。
1.20 前記食事を受ける前記ネコが、少なくとも2歳、例えば少なくとも5歳である、前述の方法のいずれか。
1.21 前記ネコの食事が、以下で説明する組成物1(以下参照)のいずれかを含む、前述の方法のいずれか。
を提供する。
【0035】
別の実施形態において、本発明は、ネコの水和を向上させるのに有効な量のアラキドン酸及びエイコサペンタエン酸を含むキャットフード組成物を提供し、ここでこの食物は、水と組み合わせることで、味がよく、かつネコの単独の食事として栄養が完全であり、かつエイコサペンタエン酸に対するアラキドン酸の比率は、乾燥重量基準で3:1またはそれ以上であり、かつ組成物中の、ω−3脂肪酸に対するω−6脂肪酸の比率は乾燥重量で、10:1〜20:1未満である(組成物1)。例えば、本発明は、
1.1 アラキドン酸の量が0.05〜0.5乾燥重量%である、組成物1。
1.2 前記組成物が少なくとも5%、例えば少なくとも7乾燥重量%の家禽肝、例えばニワトリの肝臓、及び1乾燥重量%未満の魚油を含む、組成物1または1.1。
1.3 以下の実施例3の食事Bで説明する実質的な成分を含む、前述の組成物のいずれか(「説明する実質的な」とは、一覧表に記載されている各成分が、乾燥重量基準で説明した量の±5%、例えば±2%の量で前記組成物中に存在することを意味する)。
1.4 乾燥食物、例えばキブル製品の形態の、前述の組成物のいずれか。
1.5 方法1のいずれか(以下参照)での使用のための組成物1または1.1。
を提供する。
【0036】
別の実施形態において、本発明は、ネコの水和レベルを向上するため、例えば方法1(以下参照)のいずれかのための、アラキドン酸、またはアラキドン酸を含む成分または組成物、例えば組成物1(以下参照)の使用を提供する。
【0037】
別の実施形態において、本発明は、方法1(以下参照)のいずれかにしたがった方法で用いるための、キャットフード組成物の製造における、アラキドン酸、またはアラキドン酸を含む成分または組成物の使用を提供する。
【0038】
本発明はまた、低水和より生じる疾患または状態、例えば尿路結石(膀胱結石もしくは腎臓結石を含む)、猫特発性膀胱炎、及びFLUTDの進行から選択される、疾患または状態の進行のリスクが増加したネコを特定するための方法に関し、例えば、前記リスクは(a)前記ネコの尿比重を測定することにより評価され、少なくとも1.05,例えば1.06より大きい、例えば1.07より大きい尿比重を有するネコはリスクが増加したと考えられ、 かつ/または(b)前記ネコはリスクの増加と関係するPTGES3遺伝子内でSNPもしくは変異を発現する。
【0039】
例えば、一実施形態において、前記ネコは、chrB4.101464677、chrB4.101341304及びchrB4.101438741から選択される1種以上の一塩基変異多型(SNP)を示すことに基づき、リスクが増加していると特定されている。ネコがこれらのSNPの1つを有するかどうかは、従来のジェノタイピング手法により測定してよく、例えば、(i)配列特異的オリゴヌクレオチドプローブを利用するハイブリダイゼーション法(例えば動的対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション、分子ビーコン、またはSNPマイクロアレイ)、(ii)制限酵素断片長多型(RFLP)、ポリメラーゼ連鎖反応法(例えばSNPの検出を可能にさせる特異的プライマーを用いるテトラプライマーARMS−PCR)、単一のヌクレオチド不一致の検出を可能にするフラップエンドヌクレアーゼ、プライマー伸長技術(例えば、SNPヌクレオチドのすぐ上流の塩基にプローブをハイブリダイゼーションした後に、SNPヌクレオチドに対して相補的な塩基を添加することにより、DNAポリメラーゼがハイブリダイゼーションしたプライマーを伸長する「ミニシークエンシング」反応を行うこと)、SNPを含む領域を増幅するフォワード及びリバースPCRプライマーを使用する5’−ヌクレアーゼ、及びオリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ等の酵素系技術、並びに(iii)一本鎖高次構造多型、温度勾配ゲル電気泳動、変性高速液体クロマトグラフィー、増幅全体のHRM、DNA不一致結合タンパク質の使用、及びSNPlex(Applied Biosystems)等の商業用システム等の、DNAの物理的性質に基づくポスト増幅法から選択される。一実施形態では、SNPは、実施例1に記載したIllumina Feline SNP60アッセイ等のSNPマイクロアレイを使用して特定した。
【0040】
したがって、本発明の一実施形態は、低水和から生じる疾患または状態、例えば尿路結石(膀胱結石または腎臓結石を含む)、猫特発性膀胱炎、及びFLUTDの進行から選択される疾患または状態の、進行のリスクが増加したネコを特定する方法を提供し、上述のSNP検出方法のいずれかを用いて、前記ネコが、chrB4.101464677、chrB4.101341304及びchrB4.101438741から選択される1種以上の一塩基変異多型(SNP)を示すかどうかを試験することを含む。更なる実施形態において、本発明は、低水和から生じる疾患または状態、例えば、尿路結石(膀胱結石もしくは腎臓結石を含む)、猫特発性膀胱炎、及びFLUTDの進行から選択される疾患または状態、の進行のリスクが増加したネコを特定するための診断キットを提供し、使用取扱説明書と共に、chrB4.101464677、chrB4.101341304及びchrB4.101438741から選択される1種以上の一塩基変異多型(SNP)を認識する配列特異的オリゴヌクレオチドプローブを含む。
【実施例】
【0041】
実施例1:遺伝子研究
【0042】
Illumina Feline SNP60アッセイを使用してジェノタイピングした533匹のネコについて、尿比重値を測定した(完全説明表1)。
表1:ネコの尿比重の全ゲノム関連研究に使用したジェノタイピングアッセイの説明
【表1】

【0043】
所与の尿比重あたりの動物の分布を図1にプロットした。正規分布からの偏差を量的形質座位(QTL)分析に取ることを行った。マンハッタンプロットを構築し、ジェノタイピングした各一塩基変異多型(「SNP」)を、尿比重の表現型との相関の有意性に対してプロットした。SNPの1個のみのピークが、10(−6)の偽発見カットオフ上で有意に観察され、この遺伝子座は尿比重の決定に関与していることを示す。これらのSNPはネコ染色体B4の遺伝子座内に位置する。3つの最も有意なSNPに対する注及びp値を表2に示す。上述の生物学的関係性に基づくと、この遺伝子座内ではPTGES3が一番の候補遺伝子となるようである。この遺伝子は、2つが転写開始の上流、及び1つが転写された配列の下流にある、3つのSNPに隣接する。SNPの位置(複数)を、PTGES3の転写開始部位と比較して表3に示し、この分析に用いたネコゲノムアセンブリの構造を含む、ネコゲノム内でのPTGES3遺伝子の位置を表4に記載する。
表2:ネコの尿比重に関係する最も有意なSNP
【表2】


表3:ネコの尿比重に関係する最も有意な3つのSNPはプロスタグランジンEシンターゼ遺伝子(PTGES3)に隣接する
【表3】


表4:ネコゲノムにおけるプロスタグランジンEシンターゼ3(PTGES3)遺伝子の説明
【表4】

【0044】
3つのSNP配列、及び200個の塩基対フランキング配列を以下に示し、SNP ID番号、特異的SNP、及びSNPの配列に加えて200bpのフランキング配列を提供する
chrB4.101464677 [T/C]
ATTTTAGAAATCTACCACCGTATGGAGGCAAGTGTAGAGGGATTCTTAGCCGAGGGTAGAAGAACTATTAGGAAATGATAGCAATAGCCTGTTCAGGTGG[T/C]TCTCAGTTAAGGCAGTGGCATTAGGAATGAAGCAATGGGGGGATAAACAGAAAATATTTAGAAAGTAAATATAGTAGGGAATGGCTATGAAGAAGTCTGT(配列番号:1)
chrB4.101341304 [A/G]
ATAAATTAAACTTCTGTCCAAGATGATGAGTGCATGCAAGAAAGCACCACTCACAAAAAAATGGGATAGGGACACCATAATGGAGTGAGGACCTTTACTC[A/G]GGCTGGGAAATCTTCCCACCCTCCAGTCTGGAAGTTTTATTTTGGTGAACCCTCTAAAGATACAAGGTACAGGAACACCAGCTTCCAGCACCATAAAAAT(配列番号:2)
chrB4.101438741 [A/G]
CAGTGGAGAGTCGAAGTTTGTGGGAATGGGGAGATGAGATGAGGACACTCCTTGTCTTCAGGCACATCATTAGGGGGAGAAGGTTACCCATCTGTTTTCA[A/G]CCATTATCTCTTGAACTGCCGCTTTGTCCCTTGAACGTGGTTGGGCTGTAATGAGGGATAGTAACCAAGAGAATGAAAACAGTACTTACTGCCTATTGTA(配列番号:3)
実施例2:EPAに対するAAの異なる比率を使用した、成熟ネコの調査
【0045】
食事1ではEPAに対するAAの比率を3〜1にし、食事2ではEPAに対するAAの比率を0.5〜1にした。食事1は20.84%の総脂肪、0.10%のAA(総脂肪の0.48%)及び0.03%のEPA(総脂肪の0.14%)を含有する。試験食物は約31.5%のタンパク質を含有していた。高いAA比(脂肪濃度)は20.8%である一方で、低いEPAに対するAAの比は15.7%(脂肪)であった。食事1のω−3脂肪酸に対するω−6脂肪酸の比率は14.4である。動物には2つの食事を維持した(27匹のネコには高いAA:EPA比を給餌し、54匹のネコには低いAA:EPA比を給餌した)。0日目、及び180日目に尿を収集して尿比重を分析し、データを表5に示す(g/mL)。
表5:高齢のネコにおける尿比重の変化
【表5】

【0046】
高いAA比の食事(高)のネコの群は、180日後に著しく低下した尿比重を示す。低いAA比の食事(低)のネコの群では、尿比重の変化は示さなかった。尿比重に加えて、水和レベルの指標として血液浸透圧もまた測定し、データを表6に示す(mM/リットル):
表6:成熟したネコにおいて、EPAに対するAAの高い比率が血液浸透圧を低下させる
【表6】

【0047】
尿比重と同様に、高いAAの食事を給餌したネコでは血液浸透圧モル濃度が著しく低下しているが、小さなEPAに対するAAの比を給餌したネコでは変化が見られない(図3)。このことは、高レベルのAAが尿を一層薄くするだけでなく、血液もまた一層薄くなるということを示しており、これは、ネコはより多くの水を摂取し、全体の水バランスが増加したことを示している。換言すれば、ネコは一層水和している。
実施例3:EPAに対するAAの異なる比率を用いた子ネコの給餌調査
【0048】
対照食事では、EPAに対するAAの比は0.4:1であり、食事A(AA/EPAが増加した食事)では、EPAに対するAAの比は8:1を超え、かつ食事B(更にAA/EPAが増加した食事)では、EPAに対するAAの比は16:1を超える。対照食事は15.06%の総脂肪、0.09%のAA(総脂肪の0.6%)、及び0.23%のEPA(総脂肪の1.53%)を含有し、食事Aは14.67%の総脂肪、0.08%のAA(総脂肪の0.55%)、及び0.01%未満のEPA(総脂肪の0.01%未満)を含有し、食事Bは16.01%の総脂肪、0.16%のAA(総脂肪の1%)、及び0.01%未満のEPA(総脂肪の0.01%未満)を含有した。ω−3脂肪酸に対するω−6脂肪酸の比率は、食事Aでは18.1であり、食事Bでは17.5である。動物にはこれらの食事を与え続けた。0日目、28日目、及び56日目に尿を収集し、尿比重を分析した。結果を表3に記載する(g/mL):
表7:子ネコの尿比重の変化
【表7】

【0049】
食事A及びBの子ネコの群では、高いAA比の食事は、28日後に尿比重を著しく低下させた。対照食事の子ネコの群では、尿比重の変化がみられなかった。
【0050】
高齢のネコとは異なり、子ネコは血液浸透圧の有意差を示さなかった。表8を参照のこと(値はmM/リットル):
表8:子ネコでは、EPAに対するAAの高い比は血液浸透圧に影響を及ぼさない
【表8】

【0051】
これらのデータは、通常の浸透圧値を維持する能力は、食事に関係なく若い動物において良好である場合があることを示唆しており、これは動物が歳を取るにつれて石が発生しやすくなる理由を説明する一助となり得る。このことは、食事は、高齢の動物での石の形成に一層大きな影響力を有し得ることを示唆している。
【0052】
対照食事、食事A及び食事Bの配合は以下の通りである:
【表9】


実施例4
AA及びEPAと、シュウ酸カルシウムRSSとの相関関係
CORR手順
変数付き2つ:AA、EPA
1つの変数:シュウ酸カルシウムRSS
ピアソン相関係数
H0:Rho=0において、確率>|r|
観測結果の数
AA −0.44188
<.0001
97
GLMの手順
従属変数:シュウ酸カルシウムRSS
変数付き1つ:比率
1つの変数:シュウ酸カルシウムRSS
ピアソン相関係数
H0:Rho=0において、確率>|r|
観測結果の数
比率 −0.38885
<.0001
96
血液中のAAの増加はRSSの低下と関係がある一方、EPA濃度の増加はRSSの増加と関係があるという点で、有意な関係が存在する。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]