特許第6293907号(P6293907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6293907プレクリーニング工程を用いた免疫グロブリンの精製
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6293907
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】プレクリーニング工程を用いた免疫グロブリンの精製
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/16 20060101AFI20180305BHJP
   C07K 1/18 20060101ALI20180305BHJP
   C07K 1/22 20060101ALI20180305BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20180305BHJP
【FI】
   C07K1/16
   C07K1/18
   C07K1/22
   !C07K16/00
【請求項の数】6
【全頁数】73
(21)【出願番号】特願2016-544089(P2016-544089)
(86)(22)【出願日】2015年3月9日
(65)【公表番号】特表2017-507907(P2017-507907A)
(43)【公表日】2017年3月23日
(86)【国際出願番号】EP2015054862
(87)【国際公開番号】WO2015135884
(87)【国際公開日】20150917
【審査請求日】2016年11月25日
(31)【優先権主張番号】P1400131
(32)【優先日】2014年3月10日
(33)【優先権主張国】HU
(31)【優先権主張番号】P1500053
(32)【優先日】2015年2月9日
(33)【優先権主張国】HU
(73)【特許権者】
【識別番号】310008859
【氏名又は名称】リヒター ゲデオン エヌワイアールティー.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】フェルフォルディ、フェレンツ
(72)【発明者】
【氏名】ベンコー、ジュジャ
(72)【発明者】
【氏名】ガースパール、メリンダ
【審査官】 松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2004/087761(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/071208(WO,A1)
【文献】 LUHRS, Keith A. et al.,Evicting hitchhiker antigens from purified antibodies,Journal of Chromatography B,2009年,Vol.877,Pages 1543-1552
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから前記免疫グロブリンを精製する方法であって、以下の順序で以下の工程:
(a)前記サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない前記免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られた前記フロースルーを、プロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、前記免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および前記プロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に前記免疫グロブリンを得る工程、または混合モードクロマトグラフィーに曝して、前記免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および前記混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に前記免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた前記溶出液を、2.5〜4.5の低いpHにおいて規定された時間にわたりインキュベートする工程
を含み、工程(a)および工程(c)について、エンベロープウィルスに関して少なくとも10の累積log10減少率をもたらす、方法。
【請求項2】
免疫グロブリンの製造プロセスにおいてウィルス安全性を高める方法であって、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝して、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない前記免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られた前記フロースルーをプロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、前記免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および前記プロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に前記免疫グロブリンを得る工程、または混合モードクロマトグラフィーに曝して、前記免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および前記混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に前記免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた前記溶出液を、2.5〜4.5の低いpHにおいて規定された時間にわたりインキュベートする工程
を含み、工程(a)および工程(c)について、エンベロープウィルスに関して少なくとも10の累積log10減少率をもたらす、方法。
【請求項3】
さらに以下の工程:
(d)工程(c)の前記インキュベーション後の前記溶出液、またはそれに由来しかつ工程(c)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、ナノ濾過に曝す工程
を含む、請求項またはに記載の方法であって、
工程(a)および工程(d)について、非エンベロープウィルスに関して少なくとも10の累積log10減少率をもたらし、または、工程(a)、工程(c)、および工程(d)について、エンベロープウィルスに関して少なくとも15の累積log10減少率をもたらし、あるいは、それらの両方をもたらす、方法。
【請求項4】
さらに以下の工程:
(c2)工程(c)において得られた前記溶出液、またはそれに由来しかつ工程(c)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、前記免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および前記陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に前記免疫グロブリンを得る工程
を含む、請求項のいずれか一項に記載の方法であって、
工程(a)、工程(c)、および工程(c2)について、エンベロープウィルスに関して少なくとも15の累積log10減少率をもたらす、方法。
【請求項5】
工程(a)、工程(c)、工程(c2)、および工程(d)について、エンベロープウィルスに関して少なくとも20の累積log10減少率をもたらし、または、工程(a)、工程(c2)、および工程(d)について、非エンベロープウィルスに関して少なくとも12の累積log10減少率をもたらし、あるいは、それらの両方をもたらす、請求項に記載の方法。
【請求項6】
工程(a)の前記陰イオン交換クロマトグラフィーは、メタクリレートポリマーマトリックスに結合するトリメチルアンモニウムエチル以外の強陰イオン交換クロマトグラフィーリガンドであるリガンドを含む強陰イオンクロマトグラフィーであり、前記リガンドは、四級アミノエチル(QAE)部分、四級アンモニウム部分、およびトリメチルアンモニウム部分からなる群から選択され、前記リガンドは好ましくはトリメチルアンモニウム(−N(CH)である、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捕捉工程、および/または捕捉工程に続く更なるポリッシング工程の前のプレクリーニング工程を用いて、細胞培養由来組成物から抗体を精製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
組換えDNA技術によって生産されるポリペプチドの精製について効率的かつ経済的な下流シーケンスの選択は、治療用途が意図されるあらゆる新しいバイオ医薬品の開発において重要な工程である。近年、医療用途における治療投与量が非常に高いために、より高い細胞密度およびより高い発現率をもたらす向上した細胞培養法を用いたモノクローナル抗体(mab:monoclonal antibody)の大規模精製プロセスの必要性がさらに高まっている。産物および夾雑物の培養液中の濃度上昇により、捕捉クロマトグラフィー、それに先行するサンプル清澄化工程、およびそれに続くポリッシングクロマトグラフィーの要求がより高く設定されている。下流プロセス全体が、(i)産物量の上昇を管理し、(ii)増大したプロセス関連不純物および生産関連不純物を、規定された容認基準未満にまで効率的に除去し、かつ(iii)mabの経済的な収率および十分な品質を維持しなければならない。通常、下流プロセスは、治療抗体の総製造コストの主要な部分を占める。
【0003】
粗画分中のmabは典型的に、不純物、例えば宿主細胞タンパク質(HCP:host
cell protein)、宿主細胞DNA、ウィルス、凝集体、他の不所望の産物変異体、およびプロセス材料由来の種々の浸出物を伴う。これらの不純物の存在は、患者にとっての潜在的な健康リスクであるため、最終産物からそれらを無くすことが規制要件となる。非常に低い残留量のみが許容されるであろう。
【0004】
細胞培養由来のポリペプチドを精製する従来の手順は、下流シーケンスの種々の位置での濾過工程、濃縮工程、または透析工程を伴う、捕捉−中間−ポリッシングクロマトグラフィーのシーケンスに従う。近年、mab精製の分野において、プラットホームアプローチの確立に成功している。mabは、共通の物理化学的性質を有する糖タンパク質の明確に規定されたクラスであるため、一般的なプラットホームプロセスの使用が妥当である(非特許文献1)。そのような一般的なプロセスは、多かれ少なかれ産物特異的な適応があり、多くのmab、とりわけ、同じクラスまたはサブクラスの免疫グロブリン、例えばIgG1に適用され得る。
【0005】
mab精製に最もよく用いられる捕捉工程の1つが、プロテインAによる親和性クロマトグラフィーである。この捕捉は、Fc含有分子に対する特別な選択性を提供することによって、単一工程において夾雑物を99.5%超除去する。しかしながら、その利点の他に、2つの不利点もまた言及されるべきである。一方の欠点は、毒性であることが知られているプロテインAまたはプロテインAのフラグメントの不所望の浸出である(非特許文献2)。他方の不利点は、特に治療抗体を精製するのに必須の工業規模での、このタイプの樹脂のコストが高いことである。プロテインA樹脂は、イオン交換樹脂よりもおよそ30倍高価である。10mの細胞培養の下流プロセシングについて、プロテインA親和性クロマトグラフィーのコストは、約400万〜500万USDであると算出された(非特許文献3)。
【0006】
浸出プロテインAの問題を克服する多くの解決策が公開されている(非特許文献2;非特許文献4)。いくつかのアプローチが、浸出プロテインAを除去するポストプロテインAクロマトグラフィー工程、例えば結合モード(特許文献1)またはフロースルーモード
(特許文献2)で用いられる陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー(特許文献3)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(特許文献4)、またはクロマトグラフィーの組合せ、例えばイオン交換クロマトグラフィーに続く疎水性相互作用クロマトグラフィー(特許文献5)、陰イオン交換クロマトグラフィーに続く陽イオン交換クロマトグラフィー(特許文献6)、もしくは任意の順序の陽イオン交換クロマトグラフィーおよび混合モードクロマトグラフィー(特許文献7)と関連した。治療抗体に必要とされる純度の全体的な程度は極めて高いため、典型的なプラットホーム精製スキームは、陽イオン交換クロマトグラフィー、フロースルーの陰イオン交換クロマトグラフィー、および疎水性相互作用クロマトグラフィーから通常選択される少なくとも2つのポストプロテインAクロマトグラフィーからなる(非特許文献4、非特許文献1、特許文献4、特許文献8、特許文献5、特許文献9、特許文献6)。
【0007】
他のアプローチは、免疫グロブリンを溶出する前に、浸出したプロテインAを除去する特別な洗浄工程を用いることによって、プロテインA親和性クロマトグラフィー中において既に浸出物を減らすものである。塩または付加的な構成要素、例えば、塩化テトラメチルアンモニウム等の疎水性電解質を含有する多くの中間洗浄バッファが開発された(非特許文献4)。
【0008】
プロテインA溶出の源により近いいくつかの方法は、サンプルに由来するタンパク質分解活性を直接引き下げることによって効果を発揮するものである。プロテインA溶出の主要な部分は、タンパク質分解によって引き起こされる。そのような溶出の引下げは、低温によって、かつ/またはバッファへのプロテアーゼ阻害剤の添加によって達成された(特許文献10)。
【0009】
プロテインA浸出を回避する、または引き下げる特別な方法は、表面活性化合物、例えば、ウレアまたはグアンジン−HCl等のカオトロピック物質によるプロテインA樹脂のプレ処理を含む(特許文献11)。長い間、様々なタイプのプロテインA樹脂が、様々な程度の浸出を示すことが知られてきた(非特許文献5)。そのため、プロテインA材料の選択は、重要な要因である。リガンド自体の他に、骨格マトリックスもまた、浸出、結合能力、および流速に影響する(非特許文献4)。これらのパラメータは共に、カラムサイズと、プロセス時間と、従って親和性捕捉工程の経済性とを規定する。さらに、先の10年の間に、クロマトグラフィーの供給者は、天然の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)プロテインA配列の遺伝子工学によって提供されるよりロバストなプロテインAリガンドを開発した。この向上した樹脂は、耐アルカリ性、高い結合能力、および低いリガンド漏出を可能にするように特に操作された向上組換えリガンドタンパク質と組み合わせた硬質マトリックスからなる。1つの例が、GEヘルスケア・ライフ・サイエンス(GE Healthcare Life Sciences)のマブセレクト・シュア(MabSelect SuRe)(商標)である(特許文献8)。この材料は、ランの後、最大0.5M NaOHで迅速かつ効率的にクリーニングされ得る。しかしながら、これらの利点は相当な代償を伴う。マブセレクト・シュア(MabSelect SuRe)および匹敵する最新の樹脂は、以前のプロテインA樹脂世代よりもかなり高価である。従って、これらの新しい親和性媒体にもかかわらず、経済的な利益はなく、むしろ、真実は逆である。プロテインAベースの親和性捕捉と関連する非常に高いコストを考慮すれば、免疫グロブリンの精製のために親和性クロマトグラフィーのあらゆる使用を完全に回避する代替戦略が開発されてきたことは、驚くべきことではない。1つの例が、非親和性クロマトグラフィー(例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、または混合モードクロマトグラフィー(特許文献12))と組み合わせた高性能タンジェント流濾過の使用である。
【0010】
多くの場合、捕捉工程は、粗インプット(ロード)材料で実行され、これにより親和性カラム樹脂の汚染(親和性カラム樹脂上への不純物の蓄積)が生じるおそれがある。適切な再生工程の不在下では、これは、捕捉樹脂の正常な再使用を妨げるおそれがある。プロテインAによる親和性捕捉の場合、リガンド浸出がプロテインA樹脂の寿命を制限する主要な要因ではないと強調されなければならない。脂質、オキシダント、凝集体または粒子、金属イオン、および他の物質等の、粗培養液中の夾雑物が、樹脂の汚染を促進する。プロテインA結合部分に及ぼす直接的な影響の他に、マトリックスも不可逆的に汚染されるおそれがある。ランからランまでの収容能力および流速の低下が、その結果である。この問題は、プロテインA樹脂に限られない。その稼動寿命にわたるクロマトグラフィー樹脂の汚染は、市販のバイオ分離の一般的な重大問題である。疎水性相互作用クロマトグラフィーおよび混合モードクロマトグラフィーに用いられる疎水性リガンドは、細胞培養由来の免疫グロブリンの捕捉工程として用いられる場合、培養液からの親油性夾雑物のトラップについて、とりわけ感受性である。ポストランクリーニング工程の洗練されたプロトコルにもかかわらず、捕捉カラムの寿命は制限される。捕捉カラムの寿命は、サイクル数、ランニングおよびクリーニングの稼働条件、ならびにサンプルの純度によって決まる。
【0011】
混合モードクロマトグラフィーは、プロテインAに対する下流のポリッシング工程の選択肢として、主に記載された(非特許文献1、特許文献12)。mab精製のための結合モードでのカプトMMC(Capto(商標)MMC)の使用が知られている。特別な溶出条件が開発された(特許文献13)。同様に、カプトアドヒア(CaptoAdhere)が、好ましくはフロースルーモードで、プロテインA親和性クロマトグラフィー後に実行されるフロースルー陰イオン交換クロマトグラフィー後の適切なポリッシング工程であることが示された(特許文献14)。さらに、いくつかの様々な混合モード樹脂が、オーバーロードおよび溶出クロマトグラフィーモードで調査され、カプトアドヒア(CaptoAdhere)が最も好まれた(特許文献15)。
【0012】
かなり汚染された培養液を清澄にするために、細胞残渣および凝集体のほとんどを除去する機械的分離工程が利用されてきた。遠心分離および濾過が、捕捉樹脂へのサンプルのロード前に実行される最も共通したプレ処理工程である。大容量では、遠心分離は細胞セパレータによって実行され、濾過工程はデプスフィルタおよび/またはミクロフィルタによって実行される。結果として生じた培養液はその場合、「清澄な細胞培養上澄み」と呼ばれる(非特許文献6)。収集された培養液のプロテインA樹脂上への直接的なロードが、頻繁に選択される方法であるが(非特許文献4)、捕捉カラムを保護するため、他のプラットホーム技術は、清澄化工程、すなわち遠心分離、デプス濾過、および/または精密濾過を利用している(非特許文献6、特許文献4、特許文献16)。
【0013】
遠心分離/濾過に対して代替的に、または付加的に実行されるプレクリーニングクロマトグラフィー工程は、散発的にのみ報告されている。結合モードでの固定金属(Zn2+)キレートクロマトグラフィー(IMAC:immobilized metal chelate chromatography)の使用が、非常に小規模に、プロテインAに先立って用いられた(非特許文献7、非特許文献8)。対照的に、DEAEセルロース上での弱陰イオン交換クロマトグラフィーは、遠心分離、濾過、および濃縮の後に用いられ、得られたフロースルーはその後、プロテインA上にロードされた(特許文献17)。最後に、プロテインAに先立つ培養液のプレ処理用のデプス濾過の利点が調査され、フロースルーモードのTMAEフラクトゲル(TMAE Fractogel(商標))上で効果のより低い陰イオン交換クロマトグラフィーと比較された(非特許文献9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許第0345549号明細書
【特許文献2】国際公開第2004076485号
【特許文献3】国際公開第2009058812号
【特許文献4】国際公開第9522389号
【特許文献5】国際公開第2010141039号
【特許文献6】国際公開第2011090720号
【特許文献7】国際公開第2011150110号
【特許文献8】国際公開第2009138484号
【特許文献9】国際公開第2011017514号
【特許文献10】国際公開第2005016968号
【特許文献11】国際公開第03041859号
【特許文献12】国際公開第03102132号
【特許文献13】国際公開第2011049798号
【特許文献14】国際公開第2013066707号
【特許文献15】国際公開第2013067301号
【特許文献16】国際公開第2001150110号
【特許文献17】欧州特許第0550400号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】ケリー(Kelly)B、2009年
【非特許文献2】ギャニオン(Gagnon)P、1996年
【非特許文献3】ファリド(Farid)SS、2009年
【非特許文献4】ファーナ(Fahrner)RL、2001年
【非特許文献5】フグリスタラー(Fueglistaller)P、1989年
【非特許文献6】リウ(Liu)HF、2010年
【非特許文献7】ヴァンダーム(VanDamme)A.−M.、1990年
【非特許文献8】ビュレンズ(Bulens)F、1991年
【非特許文献9】イグソー(Yigsaw)Y、2006年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、免疫グロブリンの精製と、効率的で対費用効果が高くかつ満足のいく純度および収率で免疫グロブリンを精製する方法を提供する問題とに関する。特に、本発明は、かなりコストがかかるクロマトグラフィー材料の再使用の態様、特に下流プロセスの捕捉工程に用いられるクロマトグラフィー材料の寿命、および、精製プロセスの技術的複雑性を軽減しつつクロマトグラフィー材料の寿命を延長し得る方法について、対処する。
【0017】
細胞培養液からの免疫グロブリンの精製のための従来の下流クロマトグラフィー法は、通常、免疫グロブリンを不純物と共に含むサンプルから免疫グロブリンが捕捉されなければならない捕捉クロマトグラフィー工程で始まる。免疫グロブリンは捕捉クロマトグラフィー樹脂に選択的に結合する一方で、不純物は樹脂に結合しないため、フロースルー中に得られるが、免疫グロブリンは溶出液中に得られ、この結果として、免疫グロブリンは大部分が不純物から分離される。
【0018】
この捕捉クロマトグラフィー工程は、通常、免疫グロブリンの精製において最も高価な工程であり、下流プロセスのコスト全体の40〜50%に達する。捕捉工程は特に、プロテインA親和性クロマトグラフィーが用いられる場合に、よりコストがかかる。免疫グロブリンの精製において捕捉クロマトグラフィー工程として代わりに用いられ得る混合モードクロマトグラフィーカラムも同様である。
【0019】
大容量の細胞培養液および発酵ブロスからの、およびそのような液またはブロスに由来
するサンプルからの免疫グロブリンの対費用効果の高い精製の必要性が、継続して存在する。特に、純度および収率に関して、対費用効果が高く、なお効率的で満足のいく精製法の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
捕捉クロマトグラフィー工程の上流に付加的なクロマトグラフィー工程を組み込むことによって、精製プロセスの全体的な出費がかなり引き下げられ得ることが分かった。捕捉クロマトグラフィー工程の上流の付加的なクロマトグラフィー工程は、コストがかかる捕捉クロマトグラフィー材料が曝される不純物負担を軽減する。このいわゆる「プレクリーニング」工程は、以降の捕捉工程に用いられるクロマトグラフィー材料と比較して、それほど高価でなく、かつよりロバストなクロマトグラフィー材料を用いて実行され、および再生するのが容易である。
【0021】
精製プロセスをできるだけ単純に保つために、好ましい実施形態において、プレクリーニング工程は、フロースルーモードで実行される。すなわち、精製されるべき免疫グロブリンは、樹脂によって結合されないため、フロースルー画分中に得られる一方で、不純物は大部分が樹脂上に保持されることによって、免疫グロブリンから分離される。
【0022】
さらに好ましい実施形態において、プレクリーニング工程および捕捉工程は、プレクリーニング工程のフロースルーが、採取管中に一時的に貯蔵されず、捕捉クロマトグラフィー樹脂に直ちに通されるように直列に接続される。
【0023】
治療的使用が意図される免疫グロブリンの必要とされる高い純度を達成するために、プレクリーニング工程および捕捉クロマトグラフィー工程は、捕捉クロマトグラフィー工程後に、1つまたは複数のクロマトグラフィーポリッシング工程が続く。
【0024】
本発明の根底にある問題は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法の提供によって解決され、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを、プロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程、または混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0025】
本発明はさらに、免疫グロブリンの製造プロセスにおいてウィルス安全性を高める問題を解決する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1A】免疫グロブリンの従来の精製法のプロセススキームであって、大容量の細胞培養物からの免疫グロブリンの精製のための一般的プロセススキームを示す図。収集された培養液の遠心分離および/または濾過の後に得られる清澄なバルク材料から始めたプロセスは、プロテインA捕捉工程および以降の2つのポリッシング工程からなる。このスキームは、2つの典型的なウィルス安全性工程を含む。ウィルス不活性化工程が、プロテインA溶出液を低いpHに維持することによって実行され、ウィルス除去のためのナノ濾過工程が、最後のポリッシング工程の後に実行される。最終工程は、通常、免疫グロブリンの所望の濃度、および調合成分の濃度を設定するタンジェント流限外濾過および/または透析濾過(UF/DF−TFF)である。
図1B】免疫グロブリンの従来の精製法のプロセススキームであって、3つのクロマトグラフィーからなる、大容量の細胞培養物からの免疫グロブリンの精製のための従来のプロセススキームを示す図(例えば、ファーナ(Fahrner)R.L.、2001年またはケリー(Kelly)B.、2009年に従う)。ポリッシング工程が、陽イオン交換クロマトグラフィー(ポリッシング工程1)に続く陰イオン交換クロマトグラフィー(ポリッシング工程2)であることが開示されていること以外は、図1Aと同じプロセスである。陽イオン交換クロマトグラフィーが結合モードで実行されるが、陰イオン交換クロマトグラフィーはフロースルーモードで実行されることが強調されなければならない。この従来のスキームの頻繁に適用される均等な変形形態が、ポリッシング工程1およびポリッシング工程2の順序を単に変えることであることが言及されるべきである。
図2A】プレクリーニング工程を用いた本発明の例示的なプロセススキームであって、プロテインA捕捉工程の前のプレクリーニング工程による大規模プロセススキームを示す図。収集された細胞培養液は、セパレータを用いた分取遠心分離に続くデプス濾過および精密濾過によって清澄化される。プレクリーニングクロマトグラフィー工程は、陰イオン交換カラムをフロースルーモードで用いることによって実行される。好ましい構成において、プレクリーニングカラムは、プロテインAである捕捉クロマトグラフィーカラムに直接連結される。2つのポリッシング工程は、結合モードおよび溶出モードで利用される陽イオン交換クロマトグラフィー(ポリッシング工程1)に続く混合モードクロマトグラフィー(ポリッシング工程2)である。混合モード樹脂は、正に帯電するリガンドを有し、結合モードでもフロースルーモードでも実行され得る。この第2のポリッシング工程は任意選択的である。ウィルス安全性工程および最終UF/DF−TFFは、図1Aの下で記載されている。
図2B】プレクリーニング工程を用いた本発明の例示的なプロセススキームであって、プレクリーニング陰イオン交換クロマトグラフィーとプロテインA親和性クロマトグラフィーとの間に、更なる混合モードクロマトグラフィーが挿入されていること以外は、図2Aのプロセスと類似する代わりの大規模プロセススキームを示す図。この混合モードクロマトグラフィーは、負に帯電するリガンドを含有する樹脂(例えばカプトMMC(Capto MMC))で、または正に帯電しているもしくは帯電していないリガンドを含有する樹脂(例えばMEPハイパーセル(MEP HyperCel))で実行され、および結合モードで実行される。従って、混合モードクロマトグラフィーは、このプロセスにおいて捕捉工程として機能するが、プロテインA親和性クロマトグラフィーは、より適切には、このスキーム内で中間工程として規定される。最後のクロマトグラフィーとしての第2の混合モードクロマトグラフィー工程は任意選択的である。他の全ての工程は図2Aの下で記載されている。
図2C】プレクリーニング工程を用いた本発明の例示的なプロセススキームであって、プロテインA捕捉クロマトグラフィーが混合モード捕捉クロマトグラフィーと置き換えられていること以外は、図2Aのプロセスと類似する代わりの更なる大規模プロセススキームを示す図。この混合モードクロマトグラフィーは、負に帯電するリガンドを含有する樹脂(例えばカプトMMC(Capto MMC))で、または正に帯電しているもしくは帯電していないリガンドを含有する樹脂(例えばMEPハイパーセル(MEP HyperCel))で実行され、および結合モードで実行される。このプロセスは、図2Bに示されるプロセスと対照的に、プロテインA親和性クロマトグラフィーを欠いている。他の全ての工程は図2Aの下で記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書中で用いられる「サンプル」または「免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプル」は、注目する免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含む。サンプルは、免疫グロブリンを産生する宿主細胞または生物から直接的に得ることができる。サンプルは、収集された細胞培養液、細胞培養上澄み、またはプレ処理された細胞培養上澄みであってよい。サンプルは、遠心分離および/または濾過、例えば精密濾過、ダイアフィルトレーション、限外濾過、およびデプス濾過によって部分的に清澄化または精製されていてよい。
【0028】
本明細書中で用いられる用語「プレ処理されたサンプル」は、例えば、本発明の方法において用いられるクロマトグラフィー工程用に、例えばサンプルを、バッファ交換、希釈、塩、洗剤、カオトロピック物質、または有機化合物の添加、pHおよび/または導電率範囲および/または緩衝能力を調整するためのpH滴定または濾過からなる1つまたは複数の調整にかけることによって、所望のクロマトグラフィー性能を達成するように、かつ免疫グロブリンを安定させるように調製された細胞培養上澄みである。哺乳類細胞から発現される免疫グロブリンは通常、培養プロセス中に細胞培養液中に分泌されるため、培養プロセス終了後の産物収集は、細胞培養液を細胞から分離することによって起こる。細胞分離法は、細胞崩壊を最小にするほど穏やかにして、細胞残渣の増大、ならびに免疫グロブリン産物の品質に影響を及ぼし得るプロテアーゼおよび他の分子の放出を回避するべきである。通常、哺乳類細胞培養物からの収集は、遠心分離に続いて濾過を受ける。拡張ベッド吸着クロマトグラフィーが、遠心分離/濾過法を回避する代替法である。クロマトグラフィー工程を介した精製に先立つサンプルの他の処理として、細胞培養上澄みの、特定の免疫グロブリン濃度、pHの範囲、導電率、およびバッファ種濃度への濃縮および/またはダイアフィルトレーションがあり得る。
【0029】
用語「不純物」および「夾雑物」は、本明細書中で互換的に用いられ、注目する免疫グロブリンと異なるあらゆる材料を指す。例として、細胞培養液構成要素、宿主細胞タンパク質、エンドトキシン、ウィルス、脂質、DNA、RNA、プロセス材料からの浸出物、および凝集体、またはそれらのフラグメントがあり得る。また、不純物として考えられるのは、凝集体、電荷変異体、誤って折りたたまれた分子、または精製されるべき注目する免疫グロブリンのフラグメントである。
【0030】
本明細書中で用いられる用語である1つまたは複数の「クロマトグラフィー媒体」は、ビーズ、プレート、結晶、モノリス、膜、繊維、繊維のメッシュワーク、またはあらゆる他の固体相の形態のクロマトグラフィー材料または媒体として理解されなければならない。「媒体」は、「マトリックス」と呼ばれる骨格に結合する「リガンド」と呼ばれる官能基を有する。例外は、典型的にはいかなるリガンドも付着していない、サイズ排除クロマトグラフィー用のゲルクロマトグラフィー樹脂である。従って、用語「媒体」は、本発明の方法を、クロマトグラフィー樹脂を利用するカラムクロマトグラフィーにのみ限定するのではない。他のタイプのクロマトグラフィー、例えば、膜吸着体を利用する膜クロマトグラフィーもまた挙げられる。特に、陰イオン交換クロマトグラフィーでは、陰イオンクロマトグラフィー交換樹脂または陰イオン交換クロマトグラフィー膜吸着体は両方とも本発明に含まれる。
【0031】
「樹脂」は、タンパク質または少なくとも1つの夾雑物と相互作用し得る官能基(リガンド)が結合したマトリックスを含む、ビーズの形態のあらゆるクロマトグラフィー材料または媒体を意味する。例外は、典型的にはいかなるリガンドも付着していない、サイズ排除クロマトグラフィー用のゲルクロマトグラフィー樹脂である。樹脂は、異なるサイズ
のビーズとして供給されて、カラム内に充填されてよい。あるいはまた、プレ充填カラムが購入されてもよい。
【0032】
用語「結合モード」または「結合および溶出モード」は、精製されるべき免疫グロブリンを含有するサンプルが、クロマトグラフィー媒体に適用されて、免疫グロブリンがクロマトグラフィー媒体に結合するクロマトグラフィー状態を指す。そのため、免疫グロブリンは、クロマトグラフィー媒体上に保持されるが、サンプルの不純物は、フロースルー画分とも呼ばれる非結合画分中に存在し得る。クロマトグラフィー工程が結合モードで実行される場合、1つまたは複数の洗浄工程が、クロマトグラフィー媒体への免疫グロブリンの結合後に、および培地からの免疫グロブリンの溶出前に実行されてよい。免疫グロブリンを得るために、免疫グロブリンはその後、溶出されて溶出液中に得られ、これはその後、必要に応じて、更なるクロマトグラフィー工程においてさらに精製されてよい。免疫グロブリンの溶出は、夾雑物を媒体に結合させたままにすることが可能でありながら、免疫グロブリンが溶出する選択的条件を用いて実行されてよい。
【0033】
「結合モード」でクロマトグラフィー工程を実行することは、注目する免疫グロブリンの100%が結合することを必ずしも意味するわけではない。本発明に関連して、「クロマトグラフィー樹脂に結合する」または「クロマトグラフィー媒体に結合する」は、樹脂または媒体に、免疫グロブリンの少なくとも50%が結合すること、好ましくは、免疫グロブリンの少なくとも75%が結合すること、より好ましくは、免疫グロブリンの少なくとも85%が結合すること、最も好ましくは、免疫グロブリンの95%超が結合することを意味する。
【0034】
用語「フロースルーモード」、「クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得ること」、および「クロマトグラフィー媒体に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得ること」は、注目する免疫グロブリンを含有するサンプルが、クロマトグラフィー樹脂または媒体に適用されて、免疫グロブリンが、クロマトグラフィー樹脂に結合しないが、主に、樹脂または媒体に結合しない画分中に存在し、従ってフロースルー中に含有されるクロマトグラフィー条件を指す。
【0035】
「フロースルーモード」でクロマトグラフィー工程を実行することは、注目する免疫グロブリンの100%が結合せずにフロースルー中に含有されることを必ずしも意味するわけではない。本発明に関連して、「クロマトグラフィー樹脂に結合しない」または「クロマトグラフィー媒体に結合しない」は、樹脂または媒体に、免疫グロブリンの少なくとも50%が結合しないこと、好ましくは、免疫グロブリンの少なくとも75%が結合しないこと、より好ましくは、免疫グロブリンの少なくとも85%が結合しないこと、最も好ましくは、免疫グロブリンの95%超が結合しないことを意味する。不純物は、このモードで樹脂または媒体に結合し得る。
【0036】
本発明に関連して、本発明のプレクリーニングクロマトグラフィー工程は、フロースルーモードで実行されると理解されるが、捕捉工程は、結合モードで実行される第1のクロマトグラフィー工程であると考えられる。
【0037】
本発明に至る実験において、細胞フリーの収集材料(清澄な上澄み)はなお、精製されるべき免疫グロブリンと共に、捕捉樹脂に強く結合するいくつかの物質を含有することが観察された。これは、樹脂の再使用に影響を及ぼす。本発明の発見に従えば、適切なプレクリーニングカラムの挿入が、清澄な培養液の更なる迅速な精製の良好な解決策を表す。更なる不純物を結合することによって、プレクリーニングカラムは、サンプルの純度を向上させ、重大な汚染を縮小し、かつ高価な親和性カラムを保護する。プレクリーニングカラムは再使用可能であるべきであり、その再生は単純な手段によって可能であるべきであ
る。最も適しているのは、例えばヌヴィアQ(Nuvia(商標)Q)によって提供されるような、マトリックスがロバストであり、四級アミノエチル、四級アンモニウム、またはトリメチルアンモニウム部分の群から選択されるリガンドを有する、強陰イオン交換クロマトグラフィー媒体である。フロースルーモードでプレクリーニング陰イオン交換カラムを用いることは、いくつかの利点がある:カラムは比較的小さく維持され得、かつ捕捉カラムに直接連結され得る。この構成は、陰イオン交換溶出液の一時的な採取および貯蔵を回避し、工程数を減らし、かつプロセス経済を向上させる。陰イオン交換カラムは、プロテインA樹脂、または混合モード樹脂(例えば、ベーカーボンドABx(BakerbondABx(商標))、カプトMMC(Capto(商標)MMC)、カプトアドヒア(CaptoAdhere)、またはMEPハイパーセル(MEP HyperCel(商標)))が続いてもよく、または再生するのが困難であるあらゆる他の高価な樹脂が続いてもよい。
【0038】
用語「以下の順序で」は、言及するプロセス工程が、示された順序で実行されることを意味すると理解されるべきである。更なるプロセス工程は、示されるプロセス工程の前に、後に、および間に組み込まれてよい。
【0039】
本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを、プロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程、または混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0040】
本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを、免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程、または混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー
樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0041】
本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換媒体に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを、プロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程、または混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0042】
本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換媒体に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを、免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程、または混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0043】
用語「更なるプロセシング工程」は、タンパク質精製プロトコル内、例えば濾過、透析、ウィルス不活化、希釈、濃縮、pHの調整、導電率の調整、または中間クロマトグラフィー工程内で通常適用されるあらゆる工程を指す。更なるプロセシング工程が、本発明の全てのクロマトグラフィー工程間で適用されてよい。中間クロマトグラフィー工程は、サンプルを工程(a)の陰イオン交換クロマトグラフィーに曝す工程と、工程(a)において得られたフロースルーを工程(b)のクロマトグラフィーに曝す工程との間以外、あらゆるクロマトグラフィー工程間で適用されてよい。特に、用語「更なるプロセシング工程」は、捕捉クロマトグラフィーと陽イオン交換クロマトグラフィーとの間で適用される中間クロマトグラフィー工程を指す。中間クロマトグラフィー工程は、あらゆるクロマトグ
ラフィー媒体で実行されてよい。中間クロマトグラフィー工程は、あらゆるクロマトグラフィータイプを利用してよく、カラムクロマトグラフィーおよび膜クロマトグラフィーが挙げられる。
【0044】
一実施形態において、サンプルを工程(a)の陰イオン交換クロマトグラフィーに曝す工程と、工程(a)において得られたフロースルーを工程(b)のクロマトグラフィーに曝す工程との間で、更なるプロセシング工程は適用されない。
【0045】
別の実施形態において、サンプルを工程(a)の陰イオン交換クロマトグラフィーに曝す工程と、工程(a)において得られたフロースルーを工程(b)のクロマトグラフィーに曝す工程との間で、濾過、例えば滅菌濾過は適用されない。
【0046】
プレクリーニング工程:陰イオン交換クロマトグラフィー
本発明の方法は、プレクリーニング工程として、捕捉工程の前にフロースルーモードの陰イオン交換クロマトグラフィー工程を含む。陰イオン交換クロマトグラフィー媒体は、強陰イオン交換クロマトグラフィー媒体であっても弱陰イオン交換クロマトグラフィー媒体であってもよく、陰イオン交換膜が挙げられる。
【0047】
このプレクリーニング陰イオン交換クロマトグラフィー工程は、通常であれば酸性pHにおいて沈殿を生じるおそれがある不純物を効率的に保持すること、かつDNAおよびRNA等の宿主核酸分子を結合し得ることが見出された。さらに、クロマトグラフィー捕捉カラム中の汚染を促進する粗サンプル由来の物質が、プレクリーニング陰イオン交換カラムによってプレ捕捉されて、以降の捕捉カラムに入ることが妨げられることが見出された。加えて、プレクリーニング工程は、プロテインA浸出に大きな影響を及ぼし、プロテインA浸出は、プレクリーニングクロマトグラフィーを用いることによって大いに引き下げられ得る。最後に、沈殿および/または混濁が、ウィルス不活化のためのプロテインA溶出液の保持工程中に観察される場合、この影響は、プレクリーニング陰イオン交換クロマトグラフィーを用いた場合に完全に回避されることが観察された。プレクリーニング工程のクロマトグラフィー媒体が、クロマトグラフィープロセスにおいて不純物の最大ロードに曝されると、速くて、安価で、かつ効率的な再生およびクリーニング手順が、プレクリーニング工程のクロマトグラフィー媒体に必要とされる。陰イオン交換クロマトグラフィー媒体(例えば、樹脂または膜)の再生は、数工程のみを含む、速くて、安価で、かつ効率的なプロトコルで効率的に実行され得ることが見出された。陰イオン交換クロマトグラフィー媒体の再生のために、機能を損なうことなく短時間のクロマトグラフィー媒体のクリーニングを可能とする厳しい条件が使用されてよい。イオン交換クロマトグラフィーは、結合することになる分子とマトリックス上に固定された電荷との間の電荷−電荷相互作用に依存する。陰イオン交換クロマトグラフィーにおいて、結合することになる分子は負に帯電しており、固定された官能基(リガンド)は正に帯電している。通常用いられる陰イオン交換クロマトグラフィー媒体は、Q媒体(四級アミンリガンド)、TMAE樹脂(トリメチルアミノエチルリガンド)、およびDEAE樹脂(ジエチルアミノエチルリガンド)である。しかしながら、一般に、陰イオン交換クロマトグラフィー工程は、市販される通常の全ての陰イオン交換媒体で実行されてよい。陰イオン交換媒体は、プレ充填カラムの形態で、または膜として用いられてよい。あるいはまた、樹脂は、バルク材料、およびユーザによって充填されるカラムとして購入されてよい。収容能力およびカラムの寸法に関して、特異的な限定は、通常のもの以外にない。当業者は、用いられるべき陰イオン交換クロマトグラフィー媒体の量およびカラムのサイズを知っている。これは、プロセスの全体的な規模によって決まる。
【0048】
本発明の目的に用いられ得る典型的な強陰イオン交換クロマトグラフィー媒体は、官能基、例えば:四級アミノエチル(QAE:quaternary aminoethyl
)部分(樹脂として、例えば、トヨパール(登録商標)QAE(Toyopearl(登録商標)QAE)(独国トーソー・バイオサイエンス(Tosoh Bioscience)から入手可能)、セレクタセルQAE(Selectacel(商標)QAE)(セルロースの四級アミノエチル誘導体、米国ペンシルバニア州ポリサイエンシズ社(Polysciences Inc.)から入手可能)、QAEセファデックス(QAE Sephadex(登録商標))(独国GEヘルスケア(GE Healthcare)から入手可能)およびその他が挙げられる);四級アンモニウム(Q)部分(樹脂として、例えば、QセファロースXL(Q Sepharose(登録商標)XL)、QセファロースFF(Q Sepharose FF)、QセファロースHP(Q Sepharose HP)、QセファロースCL−4B(Q Sepharose CL−4B)、Qセファロース・ビッグ・ビーズ(Q Sepharose Big Beads)、ソースQ(Source Q)、リソースQ(Resource Q)、カプトQ(Capto(商標)Q)、カプトQインプレス(Capto Q ImPres)(全て独国GEヘルスケア(GE Healthcare)から入手可能)、ポロスHQ(Poros(商標)HQ)(独国アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems))、Qハイパーセル(Q HyperCel(商標))、バイオセプラQセラミック・ハイパーD(Biosepra(商標)Q Ceramic HyperD)(米国ニューヨーク州ポール(Pall)から入手可能)、マクロ・プレップ・ハイQ(Macro Prep(商標) High Q)(米国カリフォルニア州バイオ−ラッド(Bio−Rad))、トヨパール・スーパQ(Toyopearl(登録商標)Super Q)(独国トーソー・バイオサイエンス(Tosoh Bioscience)から入手可能)、ウノスフェアQ(UNOsphere(商標)Q)(米国カリフォルニア州バイオ−ラッド(Bio−Rad)から入手可能)が挙げられ、トリメチルアンモニウムエチル(TMAE)として、例えば、フラクトゲルEMD TMAE(Fractogel(商標)EMD TMAE)(独国メルク(Merck)KgaA)が挙げられ、およびトリメチルアンモニウム樹脂として、例えば、ヌヴィアQ(Nuvia(商標)Q)(米国カリフォルニア州バイオ−ラッド(Bio−Rad)から入手可能)が挙げられる)を含む。
【0049】
特に、強陰イオン交換クロマトグラフィー媒体は、通常であれば酸性pHにおいて沈殿を生じるであろう不純物を保持するのに、かつDNAおよびRNA等の宿主核酸分子を結合するのに効果的であることが見出された。
【0050】
好ましくは、四級アミノエチル(QAE)部分、四級アンモニウム部分、および、メタクリレートポリマーマトリックスに結合するトリメチルアンモニウムエチル以外のトリメチルアンモニウム部分からなる群から選択されるリガンドを含む強陰イオン交換クロマトグラフィー媒体が用いられる。
【0051】
より好ましくは、陰イオン交換クロマトグラフィーは、−N(CH(トリメチルアンモニウム;米国カリフォルニア州バイオ−ラッド(Bio−Rad)から入手可能なヌヴィアQ(Nuvia Q))官能基(リガンド)を有する強陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂、または類似の特徴を有する媒体を用いて実行される強陰イオン交換クロマトグラフィーであってよい。
【0052】
そのため、本発明の好ましい実施形態は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを強陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および強陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを、プロテインA親和性クロマトグラフ
ィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程、または混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0053】
強陰イオン交換体であるヌヴィアQ(Nuvia Q)の特徴は、以下の通りである。
官能基: −N(CH
総イオン収容能力 100〜170μmol/ml(100〜170μeq/ml)
動的結合能力 ≧170mg/ml
出荷時のカウンターイオン Cl
メジアン粒子サイズ 85±15μm
推奨線形流速範囲 50〜600cm/時
化学的安定性
1.0M NaOH(20℃) 最長1週
1.0M HCl(20℃) 最長5週
ゲルベッド圧縮比 1.10〜1.15(固定ベッド容量/充填ベッド容量)
pH安定性
短期間 2〜14
長期間 4〜12
出荷時の溶液20% エタノール+NaCl
再生 1〜2M NaCl
衛生 0.5〜1.0 NaOH
貯蔵条件 20%エタノールまたは0.01 NaOH
好ましい実施形態において、プレクリーニング陰イオン交換カラムの直径は、捕捉カラムの直径よりも大きい。別の好ましい実施形態において、プレクリーニング陰イオン交換カラムのベッド高は、捕捉カラムのベッド高よりも短い。最も好ましい実施形態において、プレクリーニングカラムの直径は、捕捉カラムの直径よりも大きく、およびプレクリーニング陰イオン交換カラムのベッド高は、捕捉カラムのベッド高よりも短い。不純物の最適な捕捉のために、プレクリーニング陰イオン交換カラムについて最低でも約10cmのベッド高が必要とされる。
【0054】
一部のタイプの不純物が、イオン性相互作用を介してだけでなく、疎水性相互作用を介して媒体に結合し得る。複合体形成も起こり得る。プレクリーニングクロマトグラフィー工程は、媒体に密に吸着される不所望の夾雑物用のフィルタとして機能するため、効果的な再生およびクリーニング手順を開発することが必須である。強陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂(例えば、ヌヴィアQ(Nuvia Q)等の−N(CH3+リガンドを有する)から不純物のほとんどを除去するために、その使用後、以下の再生手順(定位置(in place)クリーニング)が、以下の順序で用いられてよい:(a)溶液A:40mMリン酸Na、2Mウレア、1.5M NaCl、10mM EDTA、pH7〜8。(b)溶液B:2M NaCl、100mMクエン酸。(c)溶液C:水。(d)溶液D:1M NaOH。(e)溶液E:10mM NaOH。溶液A〜溶液Eは、カラ
ムを連続的に通過する。溶液Eは貯蔵用に用いられてよい。逆流で再生を実行することが推奨される。
【0055】
好ましくは、プレクリーニング工程および捕捉工程のカラムは、直列に連結されてよい。これは、プレクリーニング工程のフロースルーが、採取管内に一時的に保存されずに、捕捉クロマトグラフィーカラムに直ちに通されることを意味する。好ましい方法において、2つのカラムは、ランの後に連結を断たれて、別々に再生される(定位置クリーニング)。最も好ましい再生工程は、逆流で実行される。
【0056】
捕捉工程
用語「捕捉工程」は、結合モードで行われる第1のクロマトグラフィー工程と理解される。培養液からの免疫グロブリンの精製のための捕捉工程は、通常、親和性クロマトグラフィー工程として実行される。プロテインAまたはその誘導体が、ほとんどの場合、親和性捕捉として用いられる。しかしながら、他のクロマトグラフィー原理が、捕捉工程として用いられてもよい。本発明に従えば、混合モードクロマトグラフィーが、免疫グロブリンを捕捉するのに問題なく用いられ得る。
【0057】
好ましい実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーをプロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0058】
別の好ましい実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換媒体に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを、免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0059】
別の好ましい実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換媒体に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーをプロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0060】
別の好ましい実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換媒体に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0061】
別の好ましい実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを強陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および強陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーをプロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を曝して、陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0062】
さらに好ましい実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の
順序で以下の工程:
(a)サンプルを、強陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂のリガンドが−N(CHである強陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および強陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーをプロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0063】
プロテインA親和性クロマトグラフィー
陰イオン交換プレクリーニングクロマトグラフィー工程の後の捕捉工程としてプロテインA親和性クロマトグラフィー工程を用いることによって、本発明の方法は、対費用効果の高い免疫グロブリン精製法を提供すると同時に、免疫グロブリンの精製におけるプロテインA親和性クロマトグラフィーの大きな結合特異性を利用する。
【0064】
本明細書中で用いられる用語「免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィー」は、微生物起源(例えば、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、連鎖球菌属(Streptococcus)、ペプトストレプトコッカス・マグヌス(Peptostreptococcus magnus))の組換えタンパク質もしくはそれに由来する変異体、または免疫グロブリンに結合する能力を有する、微生物起源であってよい合成ペプチドをリガンドとして利用する親和性クロマトグラフィーを指す。例示的な免疫グロブリン結合タンパク質として、プロテインA、プロテインG、プロテインL、またはプロテインA/Gがあり得る。好ましくは、免疫グロブリン結合タンパク質またはペプチドは、プロテインAである。リガンドは、プロテインAのE、D、A、B、およびCドメインの1つまたは複数を含んでよい。より好ましくは、リガンドは、プロテインAまたは操作したプロテインZのドメインBを含む。出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)により組換えにより生産された2.32×10−23kg(14kD)のペプチドをリガンドとして利用する例示的な樹脂が、Igセレクト(IgSelect)(GEヘルスケア(GE Healthcare))である。更なる情報が入手可能でないこのリガンドは、全てのタイプのヒトFcに対して親和性が高いように特異的に設計されている。
【0065】
プロテインA親和性クロマトグラフィー材料に、厳しいクリーニング条件に対するより強い耐性を持たせるために、かつラン間の交差汚染の影響からの保護を提供するために、耐アルカリ性、高い結合能力、および低いリガンド漏出を確実にするように特異的に操作されたリガンドを有する向上したプロテインA親和性樹脂を用いることが今日一般的である。しかしながら、これらの向上した樹脂の1つの主要な欠点は、従来のプロテインA樹脂よりもかなりコストがかさむということである。従来のプロテインA樹脂、およびより最近の新世代プロテインA樹脂産物の両方が用いられ得ることが、本発明の方法の重要な利点である。プロテインA樹脂が曝される不純物負担はより低いため、従来のより安価なプロテインA樹脂が、かなり穏やかな再生条件に制限されるにもかかわらず、許容可能となる。しかしながら、本発明のプレクリーニング工程の結果として、かつ、選択されるプロテインA樹脂と独立して、従来のおよび新世代の樹脂の両方が、より長い寿命で用いられ得る。さらに、プロテインAカラムのクリーニングがより容易になるという事実により
、プロセスもより節約される。
【0066】
本発明の目的に用いられ得る共通のプロテインA樹脂の例として、限定されないが、ウノスフェア・スープラ(Unosphere(商標)SUPrA)(バイオ−ラッド(Bio−Rad))、プロテインAセラミック・ハイパーD F(Protein A Ceramic HyperD(商標) F)(ポール・コーポレーション(Pall Corporation))、ポロス・マブキャプチャA(Poros(商標)MabCapture A)(アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems))、プロセップHC(ProSep(商標)HC)、プロセップ・ウルトラ(ProSep Ultra)およびプロセップ・ウルトラ・プラス(ProSep Ultra Plus)(EMDミリポア(EMD Millipore))、プロテインAセファロースFF(Protein A Sepharose(商標)FF)、アールプロテインAセファロースFF(rProtein A Sepharose FF)、rmpプロテインAセファロースFF(rmp Protein A Sepharose FF)、マブセレクト(MAbSelect(商標))、マブセレクト・シュア(MabSelect SuRe)、マブセレクト・シュアLX(MabSelect SuRe LX)およびマブセレクト・エキストラ(MabSelect Xtra)(GEヘルスケア(GE Healthcare))、ならびにトヨパール・アールプロテインA(Toyopearl(商標)rProtein A)(トーソー・バイオサイエンス(Tosoh Bioscience))が挙げられる。
【0067】
本明細書中で用いられる場合、用語「プロテインA」は、CH2/CH3領域を有するタンパク質を結合する能力を保持する、天然のプロテインA源から回収されるプロテインA、合成的に、または生合成的に(例えば、ペプチド合成によって、または組換え技術によって)生産されるプロテインA、およびそれらの変異体を包含する。好ましくは、高い結合能力および/またはアルカリ安定性を有する樹脂が用いられてよい。例えば、プロテインA、プロテインA誘導体、アルカリ安定化プロテインA由来親和性媒体(大腸菌(E.coli))が用いられてよい。好ましくは、アルカリ安定化プロテインA由来(大腸菌(E.coli))リガンドが用いられ得る。アルカリ安定化プロテインA由来リガンドは、高度に架橋されたアガロースマトリックスにカップリングされてよく、好ましくは、化学的に安定したチオエーテル結合により固定されてよい。1つの例が、ラン後、最大0.5M NaOHで迅速かつ効率的にクリーニングされ得る、GEヘルスケア・ライフ・サイエンス(GE Healthcare Life Sciences)のマブセレクト・シュア(MabSelect SuRe)である。マブセレクト・シュア(MabSelect SuRe)のアルカリ安定化リガンドは、プロテインAのBドメインに由来し、より高い溶出pHを与えるVH3結合ドメインを本質的に欠いている。好ましい産物はマブセレクト・シュアLX(MabSelect SuRe LX)であり、これはマブセレクト・シュア(MabSelect SuRe)よりも高い結合能力を有する。
【0068】
プロテインA樹脂マブセレクト・シュアLX(MabSelect SuRe LX)の特徴は、以下の通りである:
マトリックス 硬質、高度に架橋されたアガロース
リガンド アルカリ安定化プロテインA由来(大腸菌(E.coli))
リガンドカップリング 単一点付着
リガンドカップリング エポキシ
平均粒子サイズ(d50v 85μm
動的結合能力 6分の滞留時間にておよそ60mgヒトlgG/ml媒体
最大移動相速度 500cm/時
pH作動(working)範囲 3〜12
化学的安定性 プロテインAクロマトグラフィーにおいて通常用いられる全ての水溶性バッファ中で安定
定位置クリーニング安定性 0.1〜0.5M NaOH
送達条件 20%エタノール
プロテインA親和性クロマトグラフィーとプロテインAカラムからの免疫グロブリンの溶出との間の、特別な洗浄バッファを利用する1つまたはいくつかの洗浄工程が含まれてよい。洗浄バッファは、プロテインA樹脂から不純物を除去するのに用いられるバッファであり、プロテインAに結合した注目する免疫グロブリンを著しい量除去することはない。洗浄バッファは、塩および洗剤(例えばポリソルベート);塩および溶媒(例えばヘキシレングリコール);高濃度塩(例えば高モル濃度トリスバッファ);または塩およびポリマー(例えばポリエチレングリコール)を含んでよい。さらに、洗浄バッファは、カオトロピック試薬(例えばウレアまたはアルギニン)および/またはプロテアーゼ阻害剤(例えばEDTA)を含んでよい。
【0069】
プロテインAカラムからの注目する免疫グロブリンの溶出のために、溶出バッファが適用される。好ましくは、溶出バッファは、pHが低いことによりタンパク質の配座を変えることによって、プロテインAと注目する免疫グロブリンとの相互作用を崩壊させる。好ましくは、低pH溶出バッファは、pHが約2〜約5の範囲、最も好ましくは約3〜約4の範囲である。この範囲内にpHを制御することになるバッファの例として、リン酸バッファ、酢酸バッファ、クエン酸バッファ、グリシンバッファ、およびアンモニウムバッファ、ならびにこれらの組合せが挙げられる。そのような好ましいバッファは、クエン酸バッファおよび酢酸バッファ、最も好ましくはクエン酸ナトリウムバッファまたは酢酸ナトリウムバッファである。高pHバッファ(例えば、pHが9以上のもの)、または注目する免疫グロブリンを溶出するためのMgCI(2mM)等の化合物または組成物を含むバッファが挙げられる他の溶出バッファが意図される。
【0070】
プロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂は、0.1〜0.5 NaOHにより、好ましくはカラム内で(定位置クリーニング)、再生され得る。
特定の実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを、プロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂のリガンドがアルカリ安定化プロテインA誘導体(例えばマブセレクト・シュア(MabSelect SuRe))であるプロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0071】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを、強陰イオン交換クロマトグラフィーのリガンドが−N(CHである強陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および強陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを、プロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂のリガンドがアルカリ安定化プロテインA誘導体(例えばマブセレクト・シュア(MabSelect SuRe))であるプロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0072】
捕捉工程としての混合モードクロマトグラフィー
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0073】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを強陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および強陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0074】
混合モードクロマトグラフィー(MMC:Mixed Mode Chromatog
raphy)は、リガンドとサンプルの分子との間の複数の形態の相互作用を利用する。混合モード樹脂と呼ばれる樹脂は、帯電した疎水性イオン交換リガンド、または結晶質ミネラル、例えばヒドロキシアパタイトからなる官能基を有するクロマトグラフィー材料である。「混合モードクロマトグラフィー」の代わりに、用語「マルチモードクロマトグラフィー」または「疎水性帯電誘導クロマトグラフィー」がときに用いられている。混合モードクロマトグラフィーは、通常、少なくとも2つの原理の相互作用、疎水性相互作用およびイオン交換、または金属親和性相互作用およびイオン交換である。混合モードクロマトグラフィーは、イオン交換または疎水性相互作用クロマトグラフィー等の単一モードのクロマトグラフィー法によってそれぞれ再現され得ない、あまり予想できない選択性を提供する。正に帯電する疎水性リガンドは、陰イオン交換体混合モード(例えばカプトMMC(Capto(商標)MMC))のグループに属し、負に帯電するリガンドは、陽イオン交換体混合モード(例えばカプトアドヒア(CaptoAdhere))に属する。一部の混合モード樹脂は、双極性イオン特性(例えばベーカーボンドABx(Bakerbond ABx(商標)))を有する。他の混合モード樹脂は、イオン化可能であり、かつpHを低くすることによって非帯電から正に帯電するように変換される疎水性リガンドを有する(例えばMEPハイパーセル(MEP HyperCel(商標)))。最後に、ヒドロキシアパタイト樹脂は、正に帯電するカルシウムイオンおよび負に帯電するリン酸基を有することによって、混合モード機能がより複雑となる。
【0075】
好ましくは、イオン性および疎水性の機能性を示す混合モード樹脂が利用され、例えば、ベーカーボンドABx(Bakerbond ABx)(J.T.ベーカーBaker)、カプトMMC(Capto MMC)、カプトアドヒア(CaptoAdhere)(GEヘルスケア(GE Healthcare))、PPAハイパーセル(PPA HyperCel(商標))、またはMEPハイパーセル(MEP Hypercel)(ポール・コーポレーション(Pall Corporation))がある。より好ましくは、混合モードクロマトグラフィー樹脂MEPハイパーセル(MEP HyperCel)が利用される。
【0076】
混合モードクロマトグラフィー樹脂MEPハイパーセル(MEP HyperCel)の特徴は、以下の通りである。
粒子サイズ(平均) 80〜100μm
ヒトIgGに対する動的結合能力(10%破過) ≧20mg/ml
リガンド 4−メルカプト−エチル−ピリジン
リガンド密度 80〜125μmo1/mL
作動pH(長期) 2〜12
クリーニングpH(6時間未満) 2〜14
耐圧性 <300kPag(3barg(44psig))
典型的な作動圧 <100kPag(1barg(14psig))
リガンドとして4−メルカプト−エチル−ピリジンを含む混合モードクロマトグラフィー樹脂(MEPハイパーセル(MEP HyperCel))は、pHが約6.5〜9.9であるバッファ、例えばPBS、pH7.4または50mMトリス−HCl、pH8で平衡化されてよい。
【0077】
リガンドとして4−メルカプト−エチル−ピリジンを含む混合モードクロマトグラフィー樹脂(MEPハイパーセル(MEP HyperCel))からの注目する免疫グロブリンの溶出のために、溶出バッファが適用される。好ましくは、溶出バッファは、注目する免疫グロブリンとMEP HyperCelカラムとの相互作用を崩壊させるpHを有する。好ましくは、溶出バッファは、pHが、約pH3〜約pH7、好ましくは約pH3
.5〜約pH6、より好ましくは約pH4〜約pH5.5の範囲にある。アルギニン(0.1〜1.0M、0.2〜0.8M、0.4〜0.6M)が溶出バッファ(MEP HyperCel溶出バッファ等)に加えられて、免疫グロブリンの凝集を減らし、かつ酸性pHにおいて溶解度のロスを防止し得る。
【0078】
混合モードクロマトグラフィーの利点は、樹脂に結合した免疫グロブリンが、例えば、従来の疎水性相互作用クロマトグラフィーを用いる場合に必要な、大量の塩(硫酸アンモニウム等)の添加を必要としないということである。
【0079】
混合モードクロマトグラフィー(リガンドとして4−メルカプト−エチル−ピリジンを備える樹脂を利用する混合モードクロマトグラフィー等)の穏やかな溶出条件は、凝集を減らし得、かつ免疫グロブリンの生物活性を保存し得る。
【0080】
混合モードクロマトグラフィー樹脂は、10〜200mMクエン酸、10mM HC1、0.5〜1.0M NaOH、6M塩酸グアニジン、2〜8Mウレア、または40%プロパノールによって再生され得る。好ましくは、プレクリーニング工程を適用することによって、混合モードクロマトグラフィー樹脂は、100mMクエン酸に続く0.5〜1.0M NaOHによって簡単に再生され得る。
【0081】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを、リガンドが4−メルカプト−エチル−ピリジンである混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0082】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを強陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および強陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを、リガンドが4−メルカプト−エチル−ピリジンである混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0083】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを、リガンドが−N(CHである強陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および強陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを、リガンドが4−メルカプト−エチル−ピリジンである混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0084】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(b2)工程(b)において得られたフロースルーをプロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b2)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b2)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0085】
好ましくは、工程(b)工程の混合モードクロマトグラフィーについて、負に帯電するリガンドを含む混合モードクロマトグラフィー樹脂が用いられてよい。より好ましくは、負に帯電するリガンドを含む樹脂は、以下の式を有するマルチモード弱陽イオン交換体(カプトMMC(Capto MMC))である。
【0086】
【化1】
【0087】
マルチモード弱陽イオン交換体カプトMMC(Capto MMC)の特徴は、以下の通りである。
イオン収容能力 0.07〜0.09mmol H+/ml媒体
化学的安定性 通常用いられる全ての水溶性バッファ、1M酢酸、1M水酸化ナトリウム、8Mウレア、6M塩酸グアニジン、および70%エタノール1)
貯蔵条件 4〜30℃、20%エタノール
pH安定性作動範囲 2〜12
マトリックス 高度に架橋されたアガロース
pH安定性定位置クリーニング(CIP:Cleaning−in−Place) 2〜14
イオン交換体タイプ マルチモード弱陽イオン交換体
結合能力/mlクロマトグラフィー媒体 30mS/cm2にて>45mgBSA/ml媒体)
マルチモード弱陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からの注目する免疫グロブリンの溶出のために、バッファのpHおよび/または塩濃度が上げられてよい。好ましくは、pHおよび塩濃度の両方が上げられてよい。溶出バッファの塩濃度は、0.25M〜1.75M、好ましくは0.5M〜1Mに及んでよい。溶出に用いられる例示的な塩/バッファは、リン酸ナトリウム、トリス−HCl、NaCl、および/またはNHC1であってよい。イオン強度は、0.02〜0.3Mに及んでよい。バッファのpHは、pH6〜pH9、好ましくはpH7〜8に及んでよく、より好ましくは、pHが5.5〜7.5である付加的な洗浄工程が溶出前に適用される。
【0088】
代替の実施形態において、更なるポリッシング工程が利用されてよい。更なるポリッシング工程は、ポリッシング工程に適したあらゆるクロマトグラフィー法であってよく、例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、または混合モードクロマトグラフィーがある。
【0089】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを、混合モードクロマトグラフィー樹脂のリガンドが負に帯電している混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー
樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(b2)工程(b)において得られたフロースルーをプロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b2)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b2)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0090】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(b2)工程(b)において得られたフロースルーをプロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b2)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b2)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含み、工程(b)の混合モードクロマトグラフィー樹脂のリガンドは、以下の式を有する。
【0091】
【化2】
【0092】
ポリッシング工程としての陽イオン交換クロマトグラフィー
陽イオン交換クロマトグラフィーは、サンプル中のタンパク質と樹脂上に固定された電荷との間の電荷−電荷相互作用に依存する。陽イオン交換クロマトグラフィーにおいて、結合することになる分子は正に帯電しており、固定された官能基(リガンド)は負に帯電
している。通常用いられる陽イオン交換樹脂は、S−樹脂(スルホネート)、SP樹脂(スルホプロピル)、SE樹脂(スルホエチル)、およびCM樹脂(カルボキシメチル)である。
【0093】
しかしながら、一般に、陽イオン交換クロマトグラフィー工程は、市販される通常の全ての陽イオン交換樹脂または膜で実行されてよい。陽イオン交換樹脂は、プレ充填カラム、または、官能基、例えばスルホン酸が固定されている膜の形態で用いられてよい。あるいはまた、樹脂は、バルク材料、およびユーザによって充填されるカラムとして購入されてよい。収容能力およびカラムの寸法に関して、特異的な限定は、通常のもの以外にない。当業者は、用いられるべき陽イオン交換樹脂の量およびカラムのサイズを知っている。これは、プロセスの全体的な規模によって決まる。
【0094】
典型的な市販の製品として、例えば、マクロ−プレップ・ハイS(Macro−Prep(商標)High S)、マクロ−プレップCM(Macro−Prep CM)、ウノスフェア・ラピッドS(Unosphere(商標)Rapid S)、ウノスフェア・ラピッドS40(Unosphere Rapid S40)、ヌヴィアS(Nuvia S)、およびヌヴィアHR−S(Nuvia(商標)HR−S)(米国カリフォルニア州バイオ−ラッド(Bio−Rad))、トヨパールCM(Toyopearl(登録商標)CM)、トヨパールSP(Toyopearl SP)、およびトヨパール・ギガキャップS(Toyopearl GigaCap S)(独国トーソー・バイオサイエンス(Tosoh Bioscience))、ミリポア・プロレスS(Millipore ProRes S)、フラクトゲルEMD COO−(Fractogel(商標)EMD COO−)、フラクトゲルEMDSO3−(Fractogel EMD SO3−)(独国メルク(Merck)KGaA)、バイオセプラCMセラミック・ハイパーD(Biosepra(商標)CM Ceramic HyperD)、バイオセプラSセラミック・ハイパーD(Biosepra(商標)S Ceramic HyperD)、Sハイパーセル(S HyperCel(商標))(米国ニューヨーク州ポール・コーポレーション(Pall Corporation))、ポロスHS(Poros HS)、ポロスXS(Poros(商標)XS)(独国アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems))、YMCバイオプロ30S(YMC BioPro 30S)、YMCバイオプロ70S(YMC BioPro 70S)(欧州YMC)、CM−セファロースFF(CM−Sepharose(登録商標)FF)、SP−セファロースFF(SP−Sepharose FF)、S−セファロースFF(S−Sepharose FF)、SP−セファロースHP(SP−Sepharose HP)、SP−セファロースXL(SP−Sepharose XL)、SP−セファロース・ビッグ・ビーズ(SP−Sepharose Big Beads)、CM−セファデックス(CM−Sephadex(登録商標))、カプトS(Capto(商標)S)、カプトSPインプレス(Capto SP ImpRes)、およびソースS(Source S)(全て独国GEヘルスケア(GE Healthcare))が挙げられる。通常、4〜7のpH値にてバッファを用いる陽イオン交換クロマトグラフィーが実行される。
【0095】
本発明の好ましい陽イオン交換樹脂は、スルホネートまたはスルホプロピルリガンドを用いる強陽イオン交換体である。最も好ましいのは、高度に架橋されたアガロース等の硬質マトリックスにリンクされたスルホネートまたはスルホプロピルリガンドであり、例えばヌヴィアHR−S(Nuvia HR−S)またはポリ(スチレンビニルベンゼン)、例えばポロス50HS(Poros 50 HS)がある。
【0096】
陽イオン交換体ポロス50HS(Poros 50 HS)の特徴は、以下の通りである。
サポートマトリックス 架橋ポリ(スチレンジビニルベンゼン)
表面機能性 スルホプロピル(−CHCHCHSO
1000cm/時における動的結合能力 リゾチーム、pH6.2 55mg/ml
収縮/膨化 0〜100%溶媒で<1%
粒子サイズ 50μm
10cmベッド長での推奨最大流速 1,000cm/時
機械的抵抗性 10MPa(1500psi、100bar)
媒体背圧 1,000cm/時(10cmベッド高)にて<300kPa(3bar)
ポロス50HS(Poros 50 HS)の代わりの好ましい材料が、スルホネート基および高度に架橋されたアガロースマトリックスに基づく強陽イオン交換体ヌヴィアHR−S(Nuvia HR−S)である。
【0097】
陽イオン交換クロマトグラフィーは、pHが約pH4〜約pH8であるバッファで平衡化されてよい。バッファ濃度は、10mM〜100mMの範囲、好ましくは20mM〜50mMの範囲であってよい。
【0098】
陽イオン交換クロマトグラフィーに用いられるバッファの例として、クエン酸、乳酸、ギ酸、ブタン二酸、酢酸、マロン酸、グリシン、MES、リン酸、HEPES、またはそれらの混合物がある。
【0099】
陽イオン交換クロマトグラフィー工程は、免疫グロブリンの電荷変異体を分離し得、かつ、残留する宿主細胞タンパク質、凝集体、および浸出プロテインAを除去し得る。
免疫グロブリンは、免疫グロブリンの等電点(pI)未満のpH値、かつ低い導電率にて、樹脂に結合し得る。
【0100】
溶出のために、単一の工程または勾配によって提供される溶出バッファのイオン強度の上昇が用いられてよい。陽イオン交換クロマトグラフィーの溶出に用いられる例示的な塩として、NaCl、KCl、硫酸塩、リン酸塩、ギ酸塩、または酢酸塩がある。好ましくは、NaClまたはKClが用いられる。イオン強度は、最大1Mまで上昇してよい。
【0101】
あるいはまた、単一の工程または勾配によって提供される溶出バッファのpHの上昇が用いられてよい。
陽イオン交換クロマトグラフィーの性能に好ましい実施形態は、4〜6のpH作動範囲であり、より好ましくは4.5〜5.5のpH範囲である。バッファ物質として炭酸が用いられてよい。クエン酸が最も好ましい。
【0102】
さらに好ましい実施形態において、陽イオン交換樹脂に結合した免疫グロブリンの溶出は、pH値の変化、すなわちpHの上昇によって実行される。これは、2つの異なるバッファ溶液の混合によって提供される低pHから高pHへの勾配によって達成され得る。好ましいのは、低pH用のクエン酸バッファおよび高pH用のリン酸バッファである。最も好ましい実施形態において、pH勾配は、約pH5〜6のクエン酸バッファを約pH7〜9のリン酸バッファと混合することによって形成される。バッファは、10〜50mMの濃度の酸のNa塩を用いることによって調製されてよい。
【0103】
あるいはまた、単一の工程または勾配によって提供される溶出バッファのpHおよびイオン強度の両方の上昇が、溶出に用いられてよい。
陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂は、3〜5カラム容量の1M NaClにより再生され得る。さらに、以下の工程を含む定位置クリーニング手順が適用されてよい:(a)1〜5カラム容量の1M NaOH、1M NaClによる洗浄、(b)1〜5カラム
容量の1M酢酸またはTFAによる洗浄、(c)再平衡化。
【0104】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを、プロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程、または混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂のリガンドがスルホプロピルである陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0105】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを強陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および強陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーをプロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂のリガンドがスルホプロピルである陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0106】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを、強陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂のリガンドが−N(CHである強陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および強陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーをプロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に
実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂のリガンドがスルホプロピルである陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0107】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを、強陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂のリガンドが−N(CHである強陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および強陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを、プロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂のリガンドがアルカリ安定化プロテインA誘導体(例えばマブセレクト・シュア(MabSelect SuRe))であるプロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂のリガンドがスルホプロピルである陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0108】
別の実施形態において、本発明のプレクリーニング工程の後に、結合モードで実行される混合モードクロマトグラフィーが続き、結合モードで実行されるタンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィーが続く。
【0109】
別の実施形態において、本発明のプレクリーニング工程の後に、結合モードで実行される混合モードクロマトグラフィーが続き、結合モードで実行されるプロテインA親和性クロマトグラフィーが続く。
【0110】
プロテインA親和性クロマトグラフィーについての詳細が、先に提供されており、およびまた混合モードクロマトグラフィーに続くプロテインAクロマトグラフィーに当てはまる。
【0111】
免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィーについての詳細が、先に提供されており、およびまた混合モードクロマトグラフィーに続くプロテインA親和性クロマトグラフィーに当てはまる。
【0112】
付加的なポリッシング工程としての混合モードクロマトグラフィー
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを、プロテインA親和性クロマトグラフ
ィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程、または混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
(d)工程(c)において得られた溶出液を混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0113】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーをプロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(d)工程(c)において得られた溶出液を混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0114】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー
樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(d)工程(c)において得られた溶出液を混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0115】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換媒体に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーをプロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(d)工程(c)において得られた溶出液を混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0116】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換媒体に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(d)工程(c)において得られた溶出液を混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0117】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を
含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを、プロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程、または混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(d)工程(c)において得られた溶出液を混合モードクロマトグラフィーに曝して、混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程
を含む。
【0118】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーをプロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(d)工程(c)において得られた溶出液を、混合モードクロマトグラフィー樹脂のリガンドがマルチモード強陰イオン交換体である混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0119】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーをプロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによっ
て溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(d)工程(c)において得られた溶出液を、混合モードクロマトグラフィー樹脂のリガンドがマルチモード強陰イオン交換体である混合モードクロマトグラフィーに曝して、混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程
を含む。
【0120】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを、陰イオン交換クロマトグラフィーのリガンドが−N(CHである陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを、プロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂のリガンドがアルカリ安定化プロテインA誘導体であるプロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーのリガンドがスルホプロピルである陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(d)工程(c)において得られた溶出液を、混合モードクロマトグラフィー樹脂のリガンドがマルチモード強陰イオン交換体である混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0121】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを、陰イオン交換クロマトグラフィーのリガンドが−N(CHである陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーのリガンドがスルホプロピルである陽イオン交換クロマトグラ
フィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(d)工程(c)において得られた溶出液を、混合モードクロマトグラフィー樹脂のリガンドがマルチモード強陰イオン交換体である混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0122】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換媒体に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを、プロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂のリガンドがアルカリ安定化プロテインA誘導体であるプロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーのリガンドがスルホプロピルである陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(d)工程(c)において得られた溶出液を、混合モードクロマトグラフィー樹脂のリガンドがマルチモード強陰イオン交換体である混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0123】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換媒体に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーのリガンドがスルホプロピルである陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(d)工程(c)において得られた溶出液を、混合モードクロマトグラフィー樹脂のリガ
ンドがマルチモード強陰イオン交換体である混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0124】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを、陰イオン交換クロマトグラフィーのリガンドが−N(CHである陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを、プロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂のリガンドがアルカリ安定化プロテインA誘導体であるプロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーのリガンドがスルホプロピルである陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(d)工程(c)において得られた溶出液を、混合モードクロマトグラフィー樹脂のリガンドがマルチモード強陰イオン交換体である混合モードクロマトグラフィーに曝して、混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程
を含む。
【0125】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを、陰イオン交換クロマトグラフィーのリガンドが−N(CHである陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーのリガンドがスルホプロピルである陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(d)工程(c)において得られた溶出液を、混合モードクロマトグラフィー樹脂のリガンドがマルチモード強陰イオン交換体である混合モードクロマトグラフィーに曝して、混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程
を含む。
【0126】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換媒体に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを、プロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂のリガンドがアルカリ安定化プロテインA誘導体であるプロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーのリガンドがスルホプロピルである陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(d)工程(c)において得られた溶出液を、混合モードクロマトグラフィー樹脂のリガンドがマルチモード強陰イオン交換体である混合モードクロマトグラフィーに曝して、混合モードクロマトグラフィー媒体に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程
を含む。
【0127】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換媒体に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーのリガンドがスルホプロピルである陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(d)工程(c)において得られた溶出液を、混合モードクロマトグラフィー樹脂のリガンドがマルチモード強陰イオン交換体である混合モードクロマトグラフィーに曝して、混合モードクロマトグラフィー媒体に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程
を含む。
【0128】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマト
グラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(b2)工程(b)において得られたフロースルーをプロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b2)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b2)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(d)工程(c)において得られた溶出液を混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0129】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(b2)工程(b)において得られたフロースルーをプロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b2)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b2)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(d)工程(c)において得られた溶出液を混合モードクロマトグラフィーに曝して、混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程
を含む。
【0130】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを、リガンドが4−メルカプト−エチル−ピリジンである混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モード
クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(d)工程(c)において得られた溶出液を混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0131】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを、リガンドが4−メルカプト−エチル−ピリジンである混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(d)工程(c)において得られた溶出液を混合モードクロマトグラフィーに曝して、混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程
を含む。
【0132】
混合モード媒体または樹脂と呼ばれる媒体は、帯電した疎水性イオン交換リガンド、または結晶質ミネラル、例えばヒドロキシアパタイトからなる官能基を有するクロマトグラフィー媒体である。「混合モードクロマトグラフィー」の代わりに、用語「マルチモードクロマトグラフィー」または「疎水性帯電誘導クロマトグラフィー」がときに用いられている。混合モードクロマトグラフィーは、少なくとも2つの原理の相互作用、疎水性相互作用およびイオン交換、または金属親和性相互作用およびイオン交換である。混合モードクロマトグラフィーは、イオン交換または疎水性相互作用クロマトグラフィー等の単一モードのクロマトグラフィー法によってそれぞれ再現され得ない、あまり予想できない選択性を提供する。正に帯電する疎水性リガンドは、陰イオン交換体混合モード(例えばカプトMMC(Capto MMC))のグループに属し、負に帯電するリガンドは、陽イオン交換体混合モード(例えばカプトアドヒア(CaptoAdhere))に属する。一部の混合モード媒体は、双極性イオン特性(例えばベーカーボンドABx(Bakerbond ABx))を有する。他の混合モード媒体は、イオン化可能であり、かつpHを低くすることによって非帯電から正に帯電するように変換される疎水性リガンドを有する(例えばMEPハイパーセル(MEP HyperCel))。最後に、ヒドロキシアパタイト媒体は、正に帯電するカルシウムイオンおよび負に帯電するリン酸基を有することによって、混合モード機能がより複雑となる。
【0133】
好ましくは、陽イオン交換クロマトグラフィーに続く混合モードクロマトグラフィー工程は、正に帯電するリガンドを含む媒体で実行される。より好ましくは、正に帯電するリガンドは、以下の式を有するN−ベンジル−N−メチルエタノールアミンである。
【0134】
【化3】
【0135】
(例えば、独国GEヘルスケア(GE Healthcare)のカプトアドヒア(CaptoAdhere))。
混合モードクロマトグラフィー樹脂カプトアドヒア(CaptoAdhere)の特徴は、以下の通りである。
【0136】
マトリックス 高度に架橋されたアガロース
官能基 マルチモード強陰イオン交換体
総イオン収容能力 0.09〜0.12mmol Cl−/ml媒体
粒子サイズ 75μm(d50v)
流速 粘性が<0.3MPa(3bar)にて水と同じプロセスバッファを用いて、20cmベッド高の1m直径カラム内で20℃にて少なくとも600cm/時。
【0137】
pH安定性
−短期間 2〜14
−長期間 3〜12
作動温度 4〜30℃
化学的安定性 通常用いられる全ての水溶性バッファ、1M酢酸、1M水酸化ナトリウム
回避 酸化剤、陰イオン性洗剤
混合モードクロマトグラフィー樹脂カプトアドヒア(CaptoAdhere)を結合端部溶出モードでロードする場合に、以下の条件が適用されてよい:pH6〜pH9、好ましくはpH7.0〜8.5;導電率0.5〜10mS/cm、好ましくは1〜4mS/cm。1つまたは複数の洗浄工程が用いられてよい。条件は、免疫グロブリンのpIによって決まる。
【0138】
カプトアドヒア(CaptoAdhere)クロマトグラフィーに好ましいローディング条件は、以下の通りであってよい:樹脂は、0.5Mリン酸Na、pH8.2に続いて20mMリン酸Na、pH8.2で平衡化される。サンプル(陽イオン交換プール)は、pH8.0〜8.5、導電率1〜4mS/cmに調整されて、カラム上にロードされる。平衡バッファ20mMリン酸Na、pH8.2での洗浄後、注目する免疫グロブリンは、カプトアドヒア(CaptoAdhere)樹脂から、例えば20mMリン酸Na、pH5〜7、優先的にはpH5.5〜6.5で溶出され得る。
【0139】
フロースルーモードにおいて、pHおよびイオン強度は、免疫グロブリンが混合モードのリガンドに結合しない一方で、一掃されるべき残留夾雑物(DNA、凝集体、浸出プロテインA、宿主細胞タンパク質)が結合したままであるように調整されなければならない。条件は、免疫グロブリンのpIによって決まる。好ましくは、リン酸バッファまたはトリスバッファが6.5〜8.5のpH範囲、より好ましくはpH7〜8で用いられる。導電率は、NaCl等の塩で、またはバッファ濃度によって調整される。最も好ましいのは、50〜200mMの濃度範囲でNaClが補われた10〜50mMの濃度範囲のリン酸Naバッファである。塩濃度が高いと、イオン性相互作用を脱離させるが、疎水性相互作用を促進すると考えられなければならない。好ましい方法において、陽イオン交換クロマトグラフィーからの溶出液は、pH7.5〜8に調整され、導電率は、NaClで10〜12mS/cmになるように高められた。
【0140】
混合モード樹脂の再生(定位置クリーニング)は、低pH、高塩、および高pHで実行され得、例えば10〜200mMクエン酸、0.5〜2M NaCl、および10mM〜1M NaOHである。
【0141】
好ましい再生手順は、溶液A〜Dで連続的に洗浄することによって実行される:溶液A:100mMクエン酸、2M NaCl;溶液B:2M NaCl;溶液C:1M NaOH;溶液D:10mM NaOH。樹脂の貯蔵は、溶液D中で実行されてよい。
【0142】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを、陰イオン交換クロマトグラフィーのリガンドが−N(CHである陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを、プロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂のリガンドがアルカリ安定化プロテインA誘導体であるプロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーのリガンドがスルホプロピルである陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(d)工程(c)において得られた溶出液を、混合モードクロマトグラフィー樹脂のリガンドがN−ベンジル−N−メチルエタノールアミンである混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0143】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを、陰イオン交換クロマトグラフィーのリガンドが−N(CHである陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹
脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーのリガンドがスルホプロピルである陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(d)工程(c)において得られた溶出液を、混合モードクロマトグラフィー樹脂のリガンドがN−ベンジル−N−メチルエタノールアミンである混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0144】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換媒体に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを、プロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂のリガンドがアルカリ安定化プロテインA誘導体であるプロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーのリガンドがスルホプロピルである陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(d)工程(c)において得られた溶出液を、混合モードクロマトグラフィー樹脂のリガンドがN−ベンジル−N−メチルエタノールアミンである混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0145】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換媒体に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを免疫グロブリン結合タンパク質/ペプチド親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および免疫グロブリン結合タン
パク質/ペプチド親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーのリガンドがスルホプロピルである陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(d)工程(c)において得られた溶出液を、混合モードクロマトグラフィー樹脂のリガンドがN−ベンジル−N−メチルエタノールアミンである混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0146】
ポリッシング工程として、他のクロマトグラフィータイプが利用されてもよい。例えば、陰イオン交換カラムクロマトグラフィーおよび陰イオン交換膜クロマトグラフィーが、最も好ましくはフロースルーモードで、ポリッシング工程として利用されてよい。
【0147】
タンパク質の等電点すなわちpIは、タンパク質の全体的な純電荷がゼロに等しいpH、すなわちタンパク質の陽電荷および負電荷の数が等しいpHを指す。pIの決定は、等電点電気泳動等の、先行技術において確立された技術に従って達成され得る。
【0148】
更なる実施形態において、精製は、第1のクロマトグラフィー工程の前に1つまたは複数の遠心分離工程を含んでよい。
別の実施形態において、精製は、第1のクロマトグラフィー工程の前に1つまたは複数の濾過工程を含んでよい。さらに好ましい実施形態において、精製は、1つの遠心分離工程および1つまたは複数の濾過工程を含んでよい。好ましい実施形態において、第1のクロマトグラフィー工程は、デプス濾過および精密濾過工程の後にある。より好ましい実施形態において、第1のクロマトグラフィー工程は、細胞分離工程、デプス濾過工程、および精密濾過工程の後にある。
【0149】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(i)サンプルを遠心分離して、上澄み中に免疫グロブリンを得る工程;
(ii)工程(i)において得られた上澄みをデプス濾過して、濾液中に免疫グロブリンを得る工程;
(iii)工程(ii)において得られた免疫グロブリンを精密濾過して、濾液中に免疫グロブリンを得る工程;
(a)工程(iii)の濾液を陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;(b)工程(a)において得られたフロースルーを、プロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程、または混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に
実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0150】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(i)サンプルを遠心分離して、上澄み中に免疫グロブリンを得る工程;
(ii)工程(i)において得られた上澄みをデプス濾過して、濾液中に免疫グロブリンを得る工程;
(iii)工程(ii)において得られた免疫グロブリンを精密濾過して、濾液中に免疫グロブリンを得る工程;
(a)工程(iii)の濾液を陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;(b)工程(a)において得られたフロースルーを混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(b2)工程(b)において得られたフロースルーをプロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b2)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b2)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(d)工程(c)において得られた溶出液を混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含む。
【0151】
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法を提供し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(i)サンプルを遠心分離して、上澄み中に免疫グロブリンを得る工程;
(ii)工程(i)において得られた上澄みをデプス濾過して、濾液中に免疫グロブリンを得る工程;
(iii)工程(ii)において得られた免疫グロブリンを精密濾過して、濾液中に免疫グロブリンを得る工程;
(a)工程(iii)の濾液を陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;(b)工程(a)において得られたフロースルーを混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(b2)工程(b)において得られたフロースルーをプロテインA親和性クロマトグラフ
ィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b2)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b2)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(d)工程(c)において得られた溶出液を混合モードクロマトグラフィーに曝して、混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程
を含む。
【0152】
デプス濾過
さらに、本発明の方法は、1つまたは複数のデプス濾過工程を含んでよい。膜の表面上に粒子を保持することによって分離する膜フィルタと対照的に、デプスフィルタは、繊維またはビーズのマトリックスからなり、表面上というよりもむしろマトリックスの全体を通して分離が行われる。デプスフィルタの例として、限定されないが、SXLP700416およびSXLPDE2408SPフィルタカプセル(ポール・コーポレーション(Pall Corporation))、ミリスタックプラス(Millistak+)XOHC、FOHC、DOHC、AIHCおよびBIHCポッド(Pod)フィルタ(EMDミリポア(EMD Millipore))、またはゼータ20プラス(Zeta 20 Plus)30ZA/60ZA、60ZN90ZA、デリピド(delipid)、VR07およびVR05フィルタ(3M)が挙げられる。
【0153】
好ましくは、デプスフィルタは、プレ抽出済み無機フィルタ助剤、セルロース、および強陽電荷をフィルタマトリックスに与える樹脂系で構成され、例えば英国スリーエム(3M)のゼータ・プラス(Zeta Plus(商標))である。
【0154】
本発明に用いられる最も好ましいデプスフィルタは、ポール・コーポレーション(Pall Corporation)のPDE2およびP700シリーズのフィルタカプセルである。
【0155】
限外濾過、ウィルス濾過、精密濾過
さらに、本発明の方法は、1つまたは複数の精密濾過、限外濾過、および/またはナノ濾過工程を含んでよい。限外濾過は、静水圧が液体を半透膜に押しつける膜濾過の形態である。高分子量の懸濁固体および溶質が保持される一方で、水および低分子量の溶質が膜を通過する。限外濾過は、巨大分子溶液、とりわけタンパク質溶液を分離、精製、かつ濃縮する、通常使用される方法である。限外濾過は、透析濾過と組み合わされてよい。このモードは、反復される、または連続的な希釈および再濃縮を介して溶液から塩および他の小種を除去するためのバッファ交換に適している。限外濾過は、とりわけ大サンプル容量をプロセシングするためのタンジェント流濾過系またはクロスタンジェント流濾過系(TFFまたはTF−UF)における積層膜で実行されてよい。あるいはまた、中空の繊維系が限外濾過に通常用いられる。膜カットオフサイズは、約1.66×10−24〜4.98×10−22kg(1〜300kD)に及ぶ。免疫グロブリンについて、限外濾過膜の典型的なカットオフは約1.66×10−23〜1.66×10−22kg(10〜100kD)である。本発明の枠組みにおいて、UF膜について、約4.98×10−23または8.30×10−23kg(30または50kD)の分子量カットオフが好ましい。精密濾過は、孔サイズが約0.1〜10μmである膜を用いる粒子濾過法である。環境に特別な要件を与える滅菌濾過について、孔サイズが約0.2μmである滅菌済みミクロフ
ィルタが用いられる。孔サイズがより大きい(0.45μm、3μm)付加的なプレフィルタの使用が一般的である。これは、小さな孔サイズのフィルタの迅速なブロッキングによって、流の減少を防止する。最後に、生物薬剤生産において、ナノ濾過が主にウィルス濾過に用いられ、哺乳類の細胞培養において生産される治療タンパク質の安全性に必要とされる。ナノ濾過工程は通常、大半が精製済み免疫グロブリンで満たされているダウンストリーミングの終わりに実行される。頻繁に用いられるナノフィルタの孔サイズは、15〜35nmに及ぶ(プラノバ(Planova(商標))、日本旭化成株式会社(Asahi Kasei);またはビレソルブ(Viresolve(商標))、独国EMD−ミリポア(EMD−Millipore))。
【0156】
本発明の好ましい実施形態において、精製のプロセスは、1つまたは複数の限外濾過/透析濾過および/またはナノ濾過工程を含む。これらの濾過工程は、市販の濾過装置を用いて実行されてよく、例えばポール・コーポレーション(Pall Corporation)、GEヘルスケア(GE Healthcare)、EMD−ミリポア(EMD−Millipore)、またはザルトリウス(Sartorius)から入手可能である。
【0157】
別の実施形態において、本方法は、プロテインA親和性クロマトグラフィーの溶出液を、2.5〜4.5の低いpH、好ましくはpH3〜4にて、規定された時間、好ましくは30〜90分間にわたりインキュベートする更なる工程を含む。
【0158】
別の実施形態において、本方法は、混合モードクロマトグラフィーの溶出液を、2.5〜4.5の低いpH、好ましくはpH3〜4にて、規定された時間、好ましくは30〜90分間にわたりインキュベートする更なる工程を含む。
【0159】
更なる実施形態において、本方法は、陽イオン交換クロマトグラフィー工程から得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ陽イオン交換クロマトグラフィー工程の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、ナノ濾過に曝す更なる工程を含む。好ましくは、孔サイズが15〜35nm、最も好ましくは20nmであるフィルタが、ナノ濾過に適用されてよい。
【0160】
フロースルーモードの陰イオン交換クロマトグラフィー工程は、ウィルスに関して、少なくとも5、少なくとも5.5、少なくとも6、少なくとも6.5のlog10減少率をもたらし得る。
【0161】
溶出液(プロテインA親和性クロマトグラフィー工程または混合モードクロマトグラフィー工程から得られた)の低いpHでのインキュベーション工程は、エンベロープウィルスに関して、少なくとも5、好ましくは少なくとも5.5のlog10減少率をもたらし得る。
【0162】
陽イオン交換クロマトグラフィー工程は、エンベロープウィルスに関して少なくとも5のlog10減少率をもたらし得る。
ナノ濾過工程は、エンベロープウィルスに関して少なくとも4のlog10減少率を、かつ/または非エンベロープウィルスに関して少なくとも5のlog10減少率をもたらし得る。
【0163】
陽イオン交換クロマトグラフィー工程、および溶出液(プロテインA親和性クロマトグラフィー工程または混合モードクロマトグラフィー工程から得られた)の低いpHでのインキュベーション工程は、エンベロープウィルスに関して少なくとも10のlog10減少率をもたらし得る。
【0164】
陰イオン交換クロマトグラフィー工程、および溶出液(プロテインA親和性クロマトグラフィー工程または混合モードクロマトグラフィー工程から得られた)の低いpHでのインキュベーション工程は、エンベロープウィルスに関して少なくとも10の、好ましくは少なくとも11の、より好ましくは少なくとも12の累積log10減少率をもたらし得る。
【0165】
陰イオン交換クロマトグラフィー工程、溶出液(プロテインA親和性クロマトグラフィー工程または混合モードクロマトグラフィー工程から得られた)の低いpHでのインキュベーション工程、およびナノ濾過工程は、エンベロープウィルスに関して少なくとも15、好ましくは少なくとも16の累積log10減少率をもたらし得る。
【0166】
陰イオン交換クロマトグラフィー工程、溶出液(プロテインA親和性クロマトグラフィー工程または混合モードクロマトグラフィー工程から得られた)の低いpHでのインキュベーション工程、および陽イオン交換クロマトグラフィー工程は、エンベロープウィルスに関して、少なくとも15の、好ましくは少なくとも16の、より好ましくは少なくとも17の累積log10減少率をもたらし得る。
【0167】
陰イオン交換クロマトグラフィー工程、溶出液(プロテインA親和性クロマトグラフィー工程または混合モードクロマトグラフィー工程から得られた)の低いpHでのインキュベーション工程、陽イオン交換クロマトグラフィー工程、およびナノ濾過工程は、エンベロープウィルスに関して、少なくとも20の、好ましくは少なくとも21の累積log10減少率をもたらし得る。
【0168】
陰イオン交換クロマトグラフィー工程、陽イオン交換クロマトグラフィー工程、およびナノ濾過工程は、非エンベロープウィルスに関して、少なくとも12の、好ましくは少なくとも13の累積log10減少率をもたらし得る。
【0169】
特定の実施形態は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法に関し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーをプロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液を2.5〜4.5の低いpHにおいて、規定された時間にわたりインキュベートする工程
を含み、この方法は、工程(a)および工程(c)について、エンベロープウィルスに関して少なくとも10の累積log10減少率をもたらす。
【0170】
更なる実施形態は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法に言及し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーをプロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液を2.5〜4.5の低いpHにおいて、規定さ
れた時間にわたりインキュベートする工程;
(d)工程(c)のインキュベーション後の溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(c)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、ナノ濾過に曝す工程
を含み、この方法は、工程(a)および工程(d)について、非エンベロープウィルスに関して少なくとも10の累積log10減少率をもたらし、かつ/またはこの方法は、工程、(a)、工程(c)および工程(d)について、非エンベロープウィルスおよび/もしくはエンベロープウィルスに関して少なくとも15の累積log10減少率をもたらす。
【0171】
更なる実施形態は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法に言及し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーをプロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液を2.5〜4.5の低いpHにおいて、規定された時間にわたりインキュベートする工程;
(c2)工程(c)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(c)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程
を含み、この方法は、工程(a)、工程(c)および工程(c2)について、エンベロープウィルスに関して少なくとも15の累積log10減少率をもたらす。
【0172】
更なる実施形態は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法に言及し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーをプロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c)工程(b)において得られた溶出液を2.5〜4.5の低いpHにおいて、規定された時間にわたりインキュベートする工程;
(c2)工程(c)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(c)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(d)工程(c2)のインキュベーション後の溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(c2)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、ナノ濾過に曝す工程
を含み、この方法は、工程(a)、工程(c)および工程(c2)について、エンベロープウィルスに関して少なくとも15の累積log10減少率をもたらし、かつ/または工程(a)、工程(c)、工程(c2)および工程(d)について、エンベロープウィルスに関して少なくとも20の累積log10減少率をもたらし、かつ/または工程(a)、
工程(c2)および工程(d)について、非エンベロープウィルスに関して少なくとも12の累積log10減少率をもたらす。
【0173】
更なる実施形態は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法に言及し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーを、プロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程、または混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;および
工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、ナノ濾過に曝す工程
を含み、この方法は、工程a)および工程d)について、エンベロープウィルスおよび/または非エンベロープウィルスに関して少なくとも10の累積log10減少率をもたらす。
【0174】
更なる実施形態は、免疫グロブリンおよび少なくとも1つの不純物を含むサンプルから免疫グロブリンを精製する方法に言及し、この方法は、以下の順序で以下の工程:
(a)サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーに曝し、および陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合しない免疫グロブリンをフロースルー中に得る工程;
(b)工程(a)において得られたフロースルーをプロテインA親和性クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンをプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させ、およびプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程、または混合モードクロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させ、および混合モードクロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;
(c2)工程(b)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(b)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーに曝して、免疫グロブリンを陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させ、および陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂からタンパク質を溶出することによって溶出液中に免疫グロブリンを得る工程;および
工程(c2)において得られた溶出液、またはそれに由来し、かつ工程(c2)の後に実行される1つもしくは複数の更なるプロセシング工程の後に得られた組成物を、ナノ濾過に曝す工程
を含み、この方法は、工程a)、工程c2)および工程d)について、エンベロープウィルスに関して少なくとも15の累積log10減少率をもたらし、および/またはこの方法は、工程(a)、工程(c2)および工程(d)について、非エンベロープウィルスに関して少なくとも13の累積log10減少率をもたらす。
【0175】
先に記載された方法はまた、免疫グロブリンの製造プロセスにおけるウィルス安全性を高めることにも役に立つ。
本明細書中で言及する用語「規定された時間」のインキュベーションは、少なくとも30分間、少なくとも40分間、少なくとも50分間、少なくとも60分間のインキュベーション、好ましくは30分〜90分間、より好ましくは45分〜75分間、最も好ましく
は60分間のインキュベーションを指す。
【0176】
工程「低いpHでのインキュベーション」のpHは、2.5〜4.5のpHだけでなく、3〜4、好ましくは3.25〜3.75のpH、より好ましくは3.5のpHを指す。
用語「エンベロープウィルス」は、リポタンパク質エンベロープがウィルスの核タンパク質コアを取り囲んでいるあらゆるウィルスを、例えば、ヘルペスウィルス(Herpesvirus)、サイトウィルス(Cytovirus)、ポックスウィルス(Poxvirus)、アレナウィルス(Arenavirus)、アルテリウィルス(Arterivirus)、ヘパドナウィルス(Hepadnavirus)、フラビウィルス(Flavivirus)、トガウィルス(Togavirus)、コロナウィルス(Coronavirus)、オルソミクソウィルス(Orthomyxovirus)、パラミクソウィルス(Paramyxovirus)、ラブドウィルス(Rhabdovirus)、ブニアウィルス(Bunyavirus)、フィロウィルス(Filovirus)、バキュロウィルス(Baculovirus)、イリドウィルス(Iridovirus)、およびレトロウィルス(Retrovirus)を指し、ヒト病原体、および実験に用いられたモデルウィルスのマウス白血病ウィルス(MuLV:Murine Leukemia Virus)が挙げられる。
【0177】
用語「非エンベロープウィルス」は、ウィルスエンベロープを欠いているあらゆるウィルスを、例えば、アデノウィルス(Adenovirus)、カリモウィルス(Caulimovirus)、マイオウィルス(Myovirus)、フィコドナウィルス(Phycodnavirus)、テクティウィルス(Tectivirus)、パポーバウィルス(Papovavirus)、サーコウィルス(Circovirus)、パーボウィルス(Parvovirus)、ビルナウィルス(Birnavirus)、レオウィルス(Reovirus)、アストロウィルス(Astrovirus)、カリチウィルス(Calicivirus)、ピコルナウィルス(Picornavirus)、ポティウィルス(Potyvirus)、トバマウィルス(Tobamavirus)、カーラウィルス(Carlavirus)、アネロウィルス(Anellovirus)、およびヘペウィルス(Hepevirus)を指し、ヒト病原体、および実験に用いられたモデルウィルスのマウス微小ウィルス(MVM:Minute Virus of Mice)が挙げられる。
【0178】
出発材料中の、および関連する産物画分中のウィルス力価の算出比は、log10減少率(LRF:log10 reduction factor)、log10減少値(LRV:log10 reduction value)、またはときに、単にlog10クリアランスと呼ばれるウィルスの減少を規定する。LRF計算モードは、ウィルスのクリアランス研究に関連するガイドラインにおいて概説されている(例えば、EMAガイドライン(EMA guideline)CPMP/BWP/268/95(1996年)「ウィルスバリデーション研究に関するガイダンス:ウィルスの不活化および除去を確認する研究の設計、寄与、および解釈(Note for guidance on virus validation studies:the design,contribution and interpretation of studies validating the inactivation and removal of viruses)」の別表II)。
【0179】
【数1】
【0180】
「洗浄工程」は、サンプルがクロマトグラフィーカラム上にロードされた後であるが、タンパク質がカラムから溶出される前に実行される工程である。洗浄工程は追加的に、マトリックスに、免疫グロブリンに、かつ/またはリガンドにそれほど緊密に結合していない、または非特異的に結合している夾雑物を除去するが、注目する免疫グロブリンを樹脂から大幅に溶出することはない。洗浄工程において、樹脂は、所望の洗浄バッファで洗浄される(例えば、洗浄バッファは、カラムの出口において測定されるUV吸収がベースラインに戻るまで、クロマトグラフィーカラムを通される)。
【0181】
用語「溶出」は、バッファ構成要素がクロマトグラフィー樹脂上のリガンド部位を注目する分子と競合するように溶液条件を変更することによって、クロマトグラフィー樹脂から注目する免疫グロブリンを脱離させるプロセスと理解される。別の溶出モードは、親和性クロマトグラフィーにおいて、例えばプロテインAを用いて起こる。この場合、溶出バッファは、リガンドまたは免疫グロブリンの配座を変えることによって、結合を緩めることができる。注目する免疫グロブリンは、移動相中のバッファイオンがイオン交換樹脂の帯電イオン部位を分子と競合するように、イオン交換材料を取り囲むバッファのイオン強度を変更することによって、イオン交換樹脂から溶出され得る。あるいはまた、pHの変化が、両性タンパク質に影響を及ぼし、タンパク質のpIを上回るpHの上昇が、陽イオン交換樹脂への結合をこれ以降防止し、タンパク質が溶出する。pHがタンパク質のpI未満に低下すると、陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂上で同じ効果が起こる。
【0182】
本明細書中で理解される用語「溶出」は、先行する洗浄工程の有無にかかわらず、無勾配溶出、単一工程の溶出、および勾配溶出を含む。注目する免疫グロブリンの溶出は、移動相中のイオン強度または導電率を上げることによって行われてよく、これは、バッファ溶液中の塩濃度の上昇に影響される。あるいはまた、pH値の上昇または低下が適していることがあり得る。不連続な工程勾配、線形勾配、非線形勾配、またはそれら勾配の適切な組合せが利用されてよい。
【0183】
洗浄および溶出に適したバッファが、リン酸塩、硫酸塩、または塩化物、例えばNaClもしくはKCl等の塩を加えた、酢酸、クエン酸、トリス/HCl、トリス/酢酸、リン酸、コハク酸、マロン酸、MES、HEPES、ビストリス、グリシン、および他の適切なバッファから選択されてよい。溶出が達成されるイオン強度および塩濃度は、バッファ溶液のpH値およびタンパク質のpIに左右される。洗浄バッファはさらに、洗剤(例えばポリソルベート)、溶媒(例えばヘキシレングリコール、イスプロパノール、またはエタノール)、またはポリマー(例えばポリエチレングリコール)を含んでよい。さらに、洗浄バッファは、カオトロピック試薬(例えばウレアまたはアルギニン)および/またはプロテアーゼ阻害剤(例えばEDTA)を含んでよい。
【0184】
本明細書中で用いられる用語「バッファ」は、共役酸−塩基構成要素の作用によるpHの変化に耐える溶液を指す。
用語「免疫グロブリン」および「抗体」は、本明細書中で互換的に用いられる。免疫グロブリンは、所望の抗原結合活性を示す、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異的抗体(例えば二重特異的抗体)、およびそれらのフラグメントであってよい。天然の抗体は、様々な構造を有する分子である。例えば、天然のIgG抗体は、ジスルフィド
結合によって連結される2つの同じ軽鎖および2つの同じ重鎖で構成される約150,000グラム/モル(150,000ダルトン)のヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端まで、各重鎖は、可変ドメイン(VH)を有し、3つまたは4つの定常ドメイン(CH1、CH2、CH3、および場合によってはCH4)が続く可変重ドメインまたは重鎖可変ドメインとも呼ばれる。同様に、N末端からC末端まで、各軽鎖は、可変ドメイン(VL)を有し、定常軽鎖(CL)ドメインが続く可変軽ドメインまたは軽鎖可変ドメインとも呼ばれる。抗体の軽鎖は、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2タイプの1つに割り当てられ得る。
【0185】
「抗体フラグメント」は、一般にはその抗原結合領域または可変領域である、完全長の抗体の一部を含む。抗体フラグメントの例として、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFvフラグメント;単鎖抗体分子;二機能性抗体;線形抗体;ならびに抗体フラグメントから形成される多特異的抗体が挙げられる。
【0186】
好ましくは、免疫グロブリンはモノクローナル抗体である。本明細書中で用いられる用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指す。すなわち、集団を構成する個々の抗体は、微量に存在し得る天然の突然変異を除いて、同一である。様々な決定要素(エピトープ)に向けられる様々な抗体を典型的に含む従来の(ポリクローナル)抗体の調製と対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定要素に向けられる。修飾子「モノクローナル」は、抗体の実質的に均質な集団から得られる抗体の特性を示しており、特定のあらゆる方法による抗体の生産を必要とすると解釈されない。
【0187】
免疫グロブリンは、マウスのクラスIgG1、IgG2a、IgG2b、IgM、IgA、IgDもしくはIgE、ヒトのクラスIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgDもしくはIgE、またはそれらの組合せもしくはフラグメントであってよい。
【0188】
免疫グロブリンは、タンパク質の任意の1つまたは組合せを認識し得、限定されないが、以下の抗原が挙げられる:CD2、CD3、CD4、CD8、CD11a、CD14、CD18、CD20、CD22、CD23、CD25、CD33、CD40、CD44、CD52、CD80(B7.1)、CD86(B7.2)、CD147、CD152、IL−1a、IL−1β、IL−1、IL−2、IL−3、IL−7、IL−4、IL−5、IL−8、IL−10、IL−12、IL−23、IL−2受容体、IL−4受容体、IL−6受容体、IL−12受容体、IL−13受容体、IL−18受容体サブユニット、PDGF−β、およびそれらの類似体、PLGF、VEGF、TGF、TGF−β2、TGF−pl、EGF受容体、PLGF受容体、VEGF受容体、血小板受容体gpIIb/IIIa、トロンボポエイチン受容体、アポトーシス受容体PD−1、肝細胞増殖因子、オステオプロテゲリンリガンド、インターフェロンガンマ、Bリンパ球刺激因子BLyS、T細胞活性化調節因子CTLA−4、C5相補体、IgE、腫瘍抗原CA125、腫瘍抗原MUC1、PEM抗原、ErbB2/HER−2、患者の血清中に高レベルで存在する腫瘍関連エピトープ、乳房、結腸、扁平上皮細胞、前立腺、膵臓、肺および/もしくは腎臓の癌細胞上に、かつ/または黒色腫、神経膠腫もしくは神経芽細胞腫細胞上に発現する癌関連エピトープまたはタンパク質、腫瘍の壊死性コア、インテグリンアルファ4ベータ7、インテグリンVLA−4、B2インテグリン、α4β1およびα4β7インテグリン、TRAIL受容体1、2、3および4、RANK、RANKリガンド(RANKL:RANK ligand)、TNF−α、接着分子VAP−1、上皮細胞接着分子(EpCAM:epithelial cell adhesion molecule)、細胞間接着分子−3(ICAM−3:intercellular adhesion
molecule−3)、ロイコインテグリン接着因子、血小板糖タンパク質gp I
lb/IIIa、心臓ミオシン重鎖、副甲状腺ホルモン、スクレロスチン、MHC I、癌胚抗原(CEA:carcinoembryonic antigen)、アルファ−フェトプロテイン(AFP:alpha−fetoprotein)、腫瘍壊死因子(TNF:tumour necrosis factor)、Fc−y−1受容体、HLA−DR 10ベータ、HLA−DR抗原、L−セレクチン、ならびにIFN−γ。
【0189】
免疫グロブリンは、例えば、アフェリモマブ、アブシキシマブ、アダリムマブ、アレムツズマブ、アルシツモマブ、ベリムマブ、カナキヌマブ、セツキシマブ、デノスマブ、トラスツズマブ、イムシロマブ、カプロマブ、インフリキシマブ、イピリムマブ、アブシキシマブ、リツキシマブ、バシリキシマブ、パリビズマブ、ナタリズマブ、ニボルマブ、ノフェツモマブ、オマリズマブ、ダクリズマブ、イブリツモマブ、ムロモナブ−CD3、エドレコロマブ、ゲムツズマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブ、エクリズマブ、ウステキヌマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オビヌツズマブ、パニツムマブ、ペルツズマブ、ラニビズマブ、ロモソズマブ、トシリズマブ、トシツモマブ、クレノリキシマブ、ケリキシマブ、ガリキシマブ、フォラビルマブ、レクサツムマブ、ベバシズマブ、およびベドリズマブであってよい。
【0190】
本発明の免疫グロブリンは、好ましくは、IgG分子、例えばIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4分子である。より好ましくは、免疫グロブリンはIgG1である。さらにより好ましくは、免疫グロブリンは、少なくともFc部がヒトであるIgG1である。免疫グロブリンは、IgG1のFc部がヒトであるマウス−ヒトキメラIgG1であってよい。最も好ましくは、キメラ免疫グロブリンは、リツキシマブまたはインフリキシマブである。リツキシマブは、例えば国際公開第9411026号に詳細に記載されるキメラ抗cd20抗体である。インフリキシマブは、例えば国際公開第9216553号に詳細に記載されるキメラ抗TNFα抗体である。
【0191】
免疫グロブリンは、マウスが祖先のヒト化IgG1であってよい。最も好ましくは、ヒト化抗体は、トラスツズマブまたはベバシズマブである。トラスツズマブは、例えば国際公開第9222653号に詳細に記載されるヒト化抗HER2抗体である。ベバシズマブは、例えば国際公開第9845331号に詳細に記載されるヒト化抗VEGF抗体である。
【0192】
免疫グロブリンは、完全ヒトIgG1抗体であってよい。最も好ましくは、ヒト抗体は、アダリムマブまたはデノスマブである。アダリムマブは、例えば国際公開第9729131号に詳細に記載されるヒト抗TNFα抗体である。デノスマブは、例えば国際公開第03002713号に詳細に記載されるヒト抗RANKL抗体である。
【0193】
一実施形態において、抗体はリツキシマブであってもアダリムマブであってもよい。
本明細書中のモノクローナル抗体は、具体的に、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来する、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一である、あるいは相同である一方で、鎖の残りが、別の種に由来する、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一である、あるいは相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、ならびに、所望の生物活性を示す限りにおいて、そのような抗体のフラグメントを含む。
【0194】
さらに、本明細書中のモノクローナル抗体はまた、「ヒト化」抗体を含む。そのような抗体は、非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」によって得られ、動物性免疫グロブリンに由来するシーケンスを最小限含有する。ほとんどの分子はヒト配列である。ヒトレシピエント抗体の超可変領域由来の残基が、所望の結合特性を有する非ヒトドナー抗体の超可変領域由来の残基と置き換えられる。
【0195】
最後に、本明細書中のモノクローナル抗体はまた、ヒト抗体ライブラリのスクリーニングによって得ることができる完全ヒト抗体を含む。
好ましい実施形態において、サンプルは、組換えCHO細胞培養から得られる細胞培養上澄みに由来する。好ましくは、サンプルは、増殖相にある組換え細胞培養から得られる。
【0196】
クロマトグラフィー媒体は使い捨て可能であっても再使用可能であってもよい。一実施形態において、クロマトグラフィー媒体は再使用可能である。
特異的な実施形態において、工程(a)の陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂は、再使用可能である。
【0197】
再使用可能なクロマトグラフィー媒体は、使い捨て可能品として構成されるクロマトグラフィー媒体と比較して、対費用効果が高い。特に第1のプレクリーニング工程について、大量のクロマトグラフィー媒体が用いられる。従って、再使用可能なクロマトグラフィー媒体、例えば、プレクリーニング工程用の再使用可能な陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂を用いることは、特に有利である。
【0198】
本明細書中で用いられる用語「再使用可能な」は、媒体または樹脂が、複数回の精製サイクル、すなわち少なくとも2、5、10、50、100、200、300、400、500回以上の精製サイクルに再使用されるように構成されていることを意味する。各サイクル間で、クロマトグラフィー媒体または樹脂は、洗浄され、かつ/または再生され、かつ/または保存され得る。
【0199】
別の特異的な実施形態において、全てのクロマトグラフィー工程のクロマトグラフィー媒体は、再使用可能である。
用語「マトリックス」または「固相」が意味するところは、リガンドが付着し得る非水性マトリックスである。本明細書中の注目するマトリックスは、通常、ガラス、セラミック、シリカ、セルロース、アガロース、メタクリレートポリマー、またはポリスチレンを含むものである。
【0200】
「リガンド」が意味するところは、タンパク質と、または少なくとも1つの夾雑物と相互作用し、かつ「マトリックス」に共有結合するあらゆる官能基である。
「樹脂」は、タンパク質または少なくとも1つの夾雑物と相互作用し得る官能基(リガンド)が結合したマトリックスを含む、ビーズの形態のあらゆるクロマトグラフィー材料を意味する。例外は、典型的にはいかなるリガンドも付着していない、サイズ排除クロマトグラフィー用のゲルクロマトグラフィー樹脂である。樹脂は、異なるサイズのビーズとして供給されて、カラム内に充填されてよい。あるいはまた、プレ充填カラムが購入されてもよい。
【0201】
本発明の方法は、小規模および大規模での免疫グロブリン精製に用いられ得る。好ましくは、本方法は大規模に実行される。
「小規模」(「研究室規模」とも表される)は、免疫グロブリンを50g未満、免疫グロブリンを10g未満、または免疫グロブリンを1g未満含有するサンプルの精製を指す。「小規模」はまた、捕捉工程のカラムから溶出されたタンパク質が免疫グロブリン50g未満、免疫グロブリン10g未満、または免疫グロブリン1g未満になる精製プロセスを指す。
【0202】
「大規模」(「生産規模」または「製造規模」とも呼ばれる)は、免疫グロブリンを50g超、免疫グロブリンを100g超、免疫グロブリンを200g超、または免疫グロブ
リンを300g超含有するサンプルの精製を指す。「大規模」はまた、捕捉工程のカラムから溶出されたタンパク質が免疫グロブリン50g超、免疫グロブリン100g超、免疫グロブリン200g超、または免疫グロブリン300g超になる精製プロセスを指す。
【0203】
(実施例)
免疫グロブリンを精製する本発明の方法は、以下の実施例を参照することによって支持され、かつ例示される。これらの実施例が本発明の範囲を限定するものとして決して解釈されるべきでないことが強調されなければならない。
【0204】
実施例1:免疫グロブリンおよび細胞培養
本発明の方法は、特定の抗体や、免疫グロブリンの発現のために用いる特定の宿主細胞には依存しない。収集における最大収率のために最適化された発現モードおよび選択された培養条件についても同様である。様々なモノクローナル抗体が、本発明の方法の開発中に用いられた。これらは、本発明の方法に従って、種々の規模で成功裡に精製された。表に示される選択実験のほとんどが、リツキシマブ、マウス−ヒトキメラ、抗CD20、IgG1抗体で実行された。また、一部の他の実験が、アダリムマブ、完全ヒト、抗TNFα、IgG1抗体で実行された。抗体は両方とも、様々な規模の流加培養において増殖するCHO細胞において、組換えにより発現させた。開発段階の実験は、主に、100Lの研究室規模から収集した培養液で実行した。実施例において用いた生産規模および最大培養容量は、1000Lであった。特に明記しない限り、規模は常に培養容量を指す。
【0205】
実施例2:細胞培養液の収集およびプレクリーニング濾過工程
以下の方法は、1000L規模について記載する。細胞および細胞残渣は、9600rpmにて100L/時の流速のLAPX404セパレータ(アルファ・ラヴァル(Alfa Laval))を用いて分離することによって除去した。分離した培養液は、以下のフィルタ(ポール・コーポレーション(Pall Corporation))によって順次濾過した:(i)フィルタカプセルSXLP700416SP、(ii)フィルタカプセルSXLPDE2408SP、および(iii)再度、フィルタカプセルSXLPDE2408SP。デプス濾過および精密濾過の両方の原理は、このフィルタ構成によって達成される。第1のクロマトグラフィーに先立って、濾過した培養液は、追加的に、ザルトポア(Sartopore)(商標)2/0.2μm膜フィルタ装置(ザルトリウス(Sartorius))を用いて、精密濾過にかけた。
【0206】
実施例3:クロマトグラフィー樹脂の選択(表1および表2)
様々な供給者からの一般的で潜在的に有用なプロセスクロマトグラフィー樹脂の比較的大きなコレクションを、プレクリーニング工程、捕捉工程、およびポリッシング工程としての広いスクリーニングプログラムにおける効率について、試験した(図2Aおよび図2C参照)。これは、本発明の開発の初期のステージ中に実行した。小さなカラム(10〜20ml)内に樹脂を充填し、リツキシマブを含むサンプルを、100Lの研究室規模から、分離および濾過(プレクリーニングおよび捕捉工程)後に直接的に、または、プロテインA溶出液(結合モードのポリッシング工程)からとった。プロテインAおよびプレクリーニングクロマトグラフィーの後に得られた陽イオン交換クロマトグラフィープールを、フロースルーモードのポリッシング工程に用いた。クロマトグラフィーランは、アクタ浄化システム(Akta Purifier System)(GEヘルスケア(GE Healthcare))で実行した。
【0207】
プレクリーニング樹脂:8つの異なる陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂をフロースルーモードで試験し、比較した。樹脂は、カプトQ(Capto Q)、Q−セファロースFF(Q−Sepharose FF)、ウノスフェアQ(Unosphere Q)、ヌヴィアQ(Nuvia Q)、フラクトゲルTMAE(Fractogel TMA
E)、ポロスHQ(Poros HQ)、Qハイパーセル(Q HyperCel)、およびトヨパール・スーパQ650(Toyopearl Super Q 650)であった。充填カラムは、10mMトリスHCl、pH8.0で平衡化した。試験基準は、(i)夾雑物の破過までの通過サンプル容量に関する最大収容能力、(ii)再生(退色を含む)、および(iii)採取フロースルーのpH5.0未満の酸性化後の沈殿の程度であった。4つの樹脂が、プレクリーニング工程に用いるのに最も適していることが分かり(表1)、ヌヴィアQ(Nuvia Q)以外は類似した結果をもたらした。しかしながら、ヌヴィアQ(Nuvia Q)が明らかに優れていると判明し、好ましい樹脂である(表2)。
【0208】
プロテインAによる親和性捕捉クロマトグラフィー樹脂:合計9つの異なるプロテインA樹脂について、洗浄工程を適用せずに、結合および溶出モードで試験し、比較した。カラムサイズ、流速、および滞留時間に関して同じ条件を用いた。カラム平衡バッファは、40mMリン酸Na、150mM NaCl、pH7.4であった。溶出は、100mMクエン酸Na、pH3.5で実行した。試験した樹脂は、マブセレクト(MabSelect)、マブセレクト・エキストラ(MabSelect Xtra)、マブセレクト・シュア(MabSelect SuRe)、マブセレクト・シュアLX(MabSelect SuRe LX)、ウノスフェア・スープラ(Unosphere Supra)、プロセップ・ウルトラ・プラス(ProSep Ultra Plus)、プロテインAセラミック・ハイパーD F(Protein A Ceramic HyperD F)、ポロス・マブキャプチャA(Poros MabCapture A)、およびトヨパール・アールプロテインA(Toyopearl rProtein A)であった。基準は、(i)動的かつ特異的な結合能力(破過判定)、(ii)必要とされる再生手順、(iii)厳しいクリーニング(NaOH、ウレア、Gu−HCl)に対する感度、(iv)溶出液(残留HCP、浸出プロテインA)の純度、および(iv)コスト計算であった。総合すると、3つの樹脂が優れており、かつ最も有用であることが分かった(表1)。ポロス・マブキャプチャA(Poros MabCapture A)、およびGEヘルスケア(GE Healthcare)の2つのマブセレクト・シュア(MabSelect SuRe)樹脂が、大規模プロセスの最も有望な樹脂候補であった。マブキャプチャA(MabCapture A)は、マブセレクト・シュア(MabSelect SuRe)と比較して、HCP除去能力が15%低く、第2の選択肢である。最も好ましい樹脂は、結合能力がマブセレクト・シュア(MabSelect SuRe)よりもやや高かったマブセレクト・シュアLX(MabSelect SuRe LX)である(表2)。
【0209】
非親和性捕捉クロマトグラフィー樹脂:このカテゴリーでは合計5つの異なる樹脂を試験した。樹脂は、カプトMMC(Capto MMC)(混合モード)、カプトS(Capto S)(陽イオン交換体)、MEPハイパーセル(MEP HyperCel)(混合モード)、PPAハイパーセル(PPA HyperCel)(混合モード)、およびトヨパールAFレッド(Toyopearl AF Red)(プロシオン・レッドHE−3B(Procion Red HE−3B)に基づく染色リガンド)であった。基準は、(i)動的かつ特異的な結合能力(破過判定)、(ii)必要とされる溶出基準、(iii)再生手順(0.5M NaOH)、および(iv)溶出液の純度(HCP)であった。これらの全ての樹脂(表1)は、精製力は異なるが、効率的な捕捉能力を示した。溶出液中のHCPは、質的かつ量的に異なった。非親和性捕捉工程は、続くプロテインA親和性クロマトグラフィーに先立って適用することができ(図2B参照)、その場合原理上は、高価なプロテインAカラムの負荷をさらに低減する第2のプレクリーニング工程として機能する。しかしながら、2つの混合モード樹脂が優れていることが分かり、いかなるプロテインA親和性工程も欠く下流シーケンス内の捕捉工程としても用いられ得る(図2C参照)。これらの有望な樹脂は、カプトMMC(Capto MMC)およびME
Pハイパーセル(MEP HyperCel)であった(表2)。
【0210】
結合モードのポリッシングクロマトグラフィー用樹脂:このカテゴリーについて、1つの混合モードクロマトグラフィー樹脂を除いて、陽イオン交換体のみを考えた。多数(n=14)の共通する陽イオン交換体を試験した:ポロスHS(Poros HS)、ポロスXS(Poros XS)、SPセファロースHP(SP Sepharose HP)、カプトSPインプレス(Capto SP Impres)、YMCバイオプロ30S(YMC BioPro 30S)、YMCバイオプロ70S(YMC BioPro
70S)、ウノスフェア・ラピッドS(Unosphere Rapid S)、ウノスフェア・ラピッドS40(Unosphere Rapid S40)、ヌヴィアS(Nuvia S)、ヌヴィアHR−S(Nuvia HR−S)、トヨパールSP650S(Toyopearl SP 650S)、トヨパール・ギガキャップS650S(Toyopearl GigaCap S 650S)、ミリポア・プロレスS(Millipore ProRes S)、およびフラクトゲルEMD SO(Fractogel EMD SO)。リツキシマブおよび少量の夾雑物を含み、平衡バッファで10mg/mlタンパク質濃度に調整したプロテインA(マブセレクト・シュア(MabSelect SuRe))溶出液をカラムにロードした。全ての樹脂を同程度に試験したわけではなかった。動的かつ特異的な結合能力(破過判定)の他にも、残留HCPおよび生産関連不純物(凝集体、不所望の電荷変異体)を分離する能力もまた研究した。溶出は、塩および/またはpH勾配を上げることで実行した。樹脂は、酸(電荷変異体)画分および塩基(凝集体)画分中の不純物の分離に関して、著しい差異を示した。この基準は、免疫グロブリンポリッシング工程の意図する目的であるため、重きを置いた。合計6つの樹脂が、ポリッシング工程に適していることが分かった(表1)。ポロス50HS(Poros 50 HS)、SPセファロースHP(SP Sepharose HP)、カプトSPインプレス(Capto SP ImpRes)、ヌヴィアHR−S(Nuvia
HR−S)、トヨパールSP650S(Toyopearl SP 650S)、およびフラクトゲルEMDSO3(Fractogel EMD SO3)の内、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)の陽イオン交換体、ポロスHS50(Poros HS 50)、およびバイオ−ラッド(Bio−Rad)の一樹脂、ヌヴィアHR−S(Nuvia HR−S)が、夾雑物のHCP、凝集体、不所望の電荷変異体、および浸出プロテインAの最良の除去可能性を示した。加えて、GEヘルスケア(GE Healthcare)の正に帯電する混合モード樹脂であるカプトアドヒア(CaptoAdhere)を、結合モードのポリッシング工程としての有用性について研究した。陽イオン交換体と同じようにして、同じサンプル、カラムサイズ、および基準を適用した。平衡バッファは、20mMリン酸Na、pH8.2であり、サンプルのpHをNaOHで8.2に調整し、さらに平衡バッファで希釈した。樹脂は、より多い量を結合し得るが、効率的な分離には、20〜23mg/mlのリツキシマブのロードが必要とされる。結合タンパク質の溶出は、20mMリン酸Na、pH6.0で実行した。結合モードのカプトアドヒア(CaptoAdhere)樹脂は、夾雑物について非常に有望な除去力を示し、ポリッシング工程に好ましい樹脂として選択した(表2)。
【0211】
非結合モードのポリッシングクロマトグラフィー用樹脂:このカテゴリーにおいて、陰イオン交換体および1つの混合モード樹脂のみを考えた。合計7つの様々な共通する陰イオン交換体を試験した:ポロスHQ(Poros HQ)、カプトQ(Capto Q)、ウノスフェアQ(Unosphere Q)、ヌヴィアQ(Nuvia Q)、トヨパール・ギガキャップQ650(Toyopearl GigaCap Q 650)、Qハイパーセル(Q HyperCel)、およびフラクトゲルEMD TMAE(Fractogel EMD TMAE)。基準は:残留凝集体、HCDNA、およびHCPに特別焦点を合わせた、得られたフロースルー中のリツキシマブの最大純度であった。プロテインA(マブセレクト・シュア(MabSelect SuRe))工程後の陽イオン
交換体(ポロスHS(Poros HS))プールをカラムにロードした。
【0212】
3つの陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂、ポロスHQ(Poros HQ)、カプトQ(Capto Q)、およびヌヴィアQ(Nuvia Q)が、フロースルーモードのポリッシング工程に用いるのに最も適していることが分かった(表1)。加えて、GEヘルスケア(GE Healthcare)の正に帯電する混合モード樹脂であるカプトアドヒア(CaptoAdhere)を、フロースルーモードのポリッシング工程の有用性について研究した。陰イオン交換体と同じようにして、同じサンプル、カラムサイズ、および基準を適用した。平衡バッファは、20mMリン酸Na、100mM NaCl、pH7.8であった。カプトアドヒア(CaptoAdhere)樹脂は、フロースルーモードでも注目に値する夾雑物除去力を示し、陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂よりも僅かに優れていた。これは、陰イオン交換機能を補う付加的な疎水性相互作用によって容易に説明される。そのため、カプトアドヒア(CaptoAdhere)は、フロースルーモードのポリッシング工程に好ましい樹脂として選択した(表2)。
【0213】
表1:プレクリーニング工程、捕捉工程、およびポリッシングクロマトグラフィー工程として用いるのに適したプロセス樹脂[AEX=陰イオン交換クロマトグラフィー;CEX=陽イオン交換クロマトグラフィー;MMC=混合モードクロマトグラフィー]:
【0214】
【表1】
【0215】
表2:好ましいクロマトグラフィー樹脂[AEX=陰イオン交換クロマトグラフィー;CEX=陽イオン交換クロマトグラフィー;MMC=混合モードクロマトグラフィー]:
【0216】
【表2】
【0217】
実施例4:プレクリーニング陰イオン交換クロマトグラフィー工程
図2A図2Cに示す下流シーケンスによって、100L規模(リツキシマブまたはアダリムマブ)および1000L規模(リツキシマブ)を精製した。プレクリーニングクロマトグラフィー工程に好ましい樹脂は、フロースルーモードで実行するヌヴィアQ(Nuvia Q)である。このプロセス工程は、実施例2に記載したプレクリーニング濾過手順の後に得られた培養液で実行した。プレクリーニングクロマトグラフィーは、以降の捕捉工程のために、不純物のロード(HCP、HCDNA、凝集体、脂質、色素その他)を減らすためのヌヴィアQ(Nuvia Q)陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂によりフロースルーモードで実行した。樹脂を充填したカラム(1000L規模の寸法=60cm直径×16cm高、充填容量約45L;100L規模の寸法=14cm直径×27cm高、充填容量約4.1L)は、WFI(2CV)、1Mトリス酢酸pH6.0(3CV)、および20mMトリス酢酸pH7.2(4CV)で連続的に平衡化した。産物溶液が、カラム(17g/L樹脂)を通過し、約200cm/時の流速のWFI(2CV)が続く。ヌヴィアQ(Nuvia Q)樹脂の再生は、(i)40mM NaHPO、10mM EDTA、2Mウレア、1.5M NaCl、pH7.2(4CV)、(ii)100mMクエン酸、2M NaCl(10CV)、(iii)WFI(4CV)、(iv)1M NaOH(4CV)、および(v)10mM NaOH(2CV)で連続的に逆方向に洗浄することによって、実行した。カラムはその後、10mM NaOH溶液中に貯蔵した。
【0218】
実施例5:捕捉樹脂として用いたMEPハイパーセル(MEP HyperCel)の再使用に及ぼす、プレクリーニング陰イオン交換クロマトグラフィー工程の効果(表3)
MEPハイパーセル(MEP HyperCel)は、以降にプロテインA親和性工程があっても(図2B)なくても(図2C)、大規模プロセスに適用し得る捕捉工程にとって好ましい非親和性樹脂である。MEPハイパーセル(MEP HyperCel)カラムの汚染(ファウリング)は、極めて不利益であることが分かった。しかしながら、これは、本実施例ではヌヴィアQ(Nuvia Q)であったプレクリーニング陰イオン交換カラムを適用することによって、抑制または強く軽減し得る。ヌヴィアQ(Nuvia Q)プレカラムがないと、MEPハイパーセル(MEP HyperCel)の再使用は、苛酷で、長期にわたり、かつ費用のかかる再生手順を必要とし、その場合には寿命も制限される。表2の実験は、ヌヴィアQ(Nuvia Q)およびMEPハイパーセル(MEP HyperCel)をそれぞれ充填した小さなモデルカラム(20ml)で実行する。ヌヴィアQ(Nuvia Q)クロマトグラフィーのサンプルロードおよび性能は、実施例4に記載した。フロースルーは、MEPハイパーセル(MEP HyperCel
)上に調整なく直ちにロードした。並行して、第2の捕捉カラムに直接、すなわち、ヌヴィアQ(Nuvia Q)工程をバイパスして、実施例2に従う培養液をロードした。捕捉カラムは、最大収容能力に達し、および産物がフロースルー中に現れる(破過)まで、ロードした。結合したIgGは、pHの低下(pH4)によって、MEPハイパーセル(MEP HyperCel)カラムから溶出した。結合能力は、破過までの容量から算出した。混合モード樹脂は、次のランのために簡単に再生かつ再平衡化した。MEPハイパーセル(MEP HyperCel)の再生は、100mMクエン酸溶液に続いて1M NaOHを逆流で通すことによって実行した。NaOHとの接触時間は60分であり、その後カラムを、次の使用のために、再平衡化およびNaOH(pH制御)の完全除去によって調製した。ヌヴィアQ(Nuvia Q)カラムは、実施例4に記載するようにして再生した。合計8サイクルを実行した(7回の再使用)。結果は表3に要約した。結果は、ヌヴィアQ(Nuvia Q)工程の優位性を支持している。ヌヴィアQ(Nuvia
Q)プレクリーニングを適用した場合に結合能力の変化はなかった。対照的に、そのような工程がないと、ランからランで結合能力が低下し、8サイクル後には64%にまで下がった。
【0219】
表3:捕捉工程として用いる混合モード樹脂MEPハイパーセル(MEP HyperCel)の再使用に及ぼす、プレクリーニング工程としてのフロースルーモードの陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)の効果(ml樹脂あたりのIgG結合能力):
【0220】
【表3】
【0221】
実施例6:カプトMMC(Capto MMC)捕捉クロマトグラフィー
カプトMMC(Capto MMC)樹脂は、負に帯電する混合モードクロマトグラフィー媒体であり(表2参照)、図2B(5カラムプロセス)および図2C(4カラムプロセス)のプロセスフロースキームにおいて示す下流シーケンス内で適用した。これらのシーケンスにおいて、カプトMMC(Capto MMC)は、原理上、サンプルを精製し、かつ、以降のプロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂を害するおそれがあるプロテアーゼ等の重大な夾雑物を取り除く、第2のプレクリーニング工程として機能する。また、この工程は、著しいサンプル濃縮を可能にするため、プロテインAクロマトグラフィーのプロセス時間を引き下げる。カプトMMC(Capto MMC)クロマトグラフィーは、結合モードで実行し、酢酸でpH5に調整された実施例4に記載したヌヴィアQ(Nuvia Q)フロースルーをロードした。リツキシマブの100L規模および1000L規模の両方を、この方法に従って精製した。1000L規模のカラム寸法は、60cm直径×15cm高(充填容量約42L)であり、100L規模について、20×14cm(充填容量約4.4L)であった。樹脂は、20mM酢酸Na(pH5.0)で平衡化し、リツキシマブ結合カラムは、40mMリン酸Na(pH6.5)で洗浄した。溶出は、回収が最大になるように最適化し、40mMリン酸Na、250mM NaCl、pH7
.5で実行した。流速は150〜200cm/時であった。溶出液は、プロテインAカラム上に直接ロードした。
【0222】
実施例7:プロテインA捕捉クロマトグラフィー
プロテインA捕捉クロマトグラフィーは、マブセレクト・シュア(MabSelect
SuRe)(100L規模)またはマブセレクト・シュアLX(MabSelect SuRe LX)(1000L)で実行した。カラムの規模を除いて、プロセシングパラメータは同じであった。サンプルは、実施例4において適用した方法(図2Aのプロセス、ヌヴィアQ(Nuvia Q)フロースルー)の後に、または実施例6において適用した方法(図2Bのプロセス、カプトMMC(Capto MMC)溶出液)の後に採った。1000L規模のカラム寸法は、40cm直径×30cm高(充填容量約38L)であり、100L規模について、20×10.4cm(充填容量約3.2L)であった。プロテインAカラムは、40mMリン酸Na、150mM NaCl、pH7.4で平衡化した。特に明記しない限り、産物溶液は、20gタンパク質/L樹脂(100L規模)または35gタンパク質/L樹脂(1000L規模)でロードした。カラムは、平衡バッファ(2CV)に続いて、40mMリン酸Na、1.5M NaCl、2Mウレア、10mM
EDTA、pH7.4で洗浄した。溶出は、100mMクエン酸Na(pH3.5)で実行した。流速は140cm/時であった。マブセレクト・シュア(MabSelect
SuRe)樹脂またはマブセレクト・シュアLX(MabSelect SuRe LX)樹脂の再生は、(i)0.2M NaOH(2CV)、(ii)WFI(2CV)、3.5%酢酸、100mM硫酸Na(2CV)、および(iii)WFI(2CV)で連続的に逆方向に洗浄することによって実行した。カラムは次のランのために再平衡化し、または20%エタノール中に貯蔵した。
【0223】
実施例8:浸出プロテインAに及ぼすプレクリーニング陰イオン交換クロマトグラフィーの効果(表4)
プロテインA(マブセレクト・シュアLX(MabSelect SuRe LX))の浸出に及ぼす、プレクリーニングクロマトグラフィー(ヌヴィアQ(Nuvia Q))および温度の効果を調査するために、規模を縮小したプロテインA親和性クロマトグラフィーにおいて一連の実験を実行した。用いたカラムは、容量が12mlであった。クロマトグラフィーランにアクタ浄化システム(Akta Purifier System)(GEヘルスケア(GE Healthcare))を適用した。サンプルは、リツキシマブの1000Lバッチから採った小アリコートであった。サンプルは、実施例2に記載した手順(ヌヴィアQ(Nuvia Q)プレクリーニング工程前)の後に得られたプロセス工程から、または実施例3に記載した手順(ヌヴィアQ(Nuvia Q)プレクリーニング工程後)の後に、採った。プロテインA親和性クロマトグラフィー法は、実施例7に従って実行した。カラムは、25〜30mgタンパク質/ml樹脂でロードした。サンプルおよびプロテインA親和性クロマトグラフィーは、室温(20〜25℃)にて維持し、または冷却チャンバ(2〜8℃)内に置いた。2つの並行サンプルは、2つの異なるアリコートからそれぞれ採り、並行して精製かつ試験した。結果は、表4に示す。先行するヌヴィアQ(Nuvia Q)工程のない室温での浸出の2つの並行ランの平均値は、23.4ng/mg(1mg IgGあたりのプロテインA当量)であった。プレクリーニング工程の効果は明らかである(表4)。室温にて、サンプルがプロテインA工程の前にヌヴィアQ(Nuvia Q)カラムを通過した場合、わずか9.1ng/mg(=39%)の浸出を生じた。その効果は、浸出に及ぼす著しい効果をそれ自体が有している低温においても見られる。平均して、ヌヴィアQ(Nuvia Q)なしでの浸出は5.0ng/mgであり、ヌヴィアQ(Nuvia Q)ありでの浸出は3.4ng/mg(68%)であった(表4)。ヌヴィアQ(Nuvia Q)工程により、プロテインA浸出は著しく低下し、親和性クロマトグラフィー工程にとってより好ましい室温を用いることができる。プロテインA浸出に及ぼすヌヴィアQ(Nuvia Q)の効果は、ヌヴィ
アQ(Nuvia Q)樹脂に結合するタンパク質分解活性能の捕捉によって、最も説明される。
【0224】
表4:プロテインA溶出液中で測定される(マブセレクト・シュアLX(MabSelect SuRe LX)からの)浸出プロテインAに及ぼす、プレクリーニング陰イオン交換(ヌヴィアQ(Nuvia Q))クロマトグラフィー工程の効果。2つの異なる温度にて2つのクロマトグラフィーを並行して実行した:
【0225】
【表4】
【0226】
実施例9:プレクリーニングカラムおよび捕捉カラムの連結
ヌヴィアQ(Nuvia Q)によるプレクリーニング陰イオン交換工程をフロースルーで実行するとともに、続くプロテインA親和性樹脂(マブセレクト・シュアLX(MabSelect SuRe LX))がこのフロースルーから免疫グロブリンを効率的に捕捉することが可能であるため、ヌヴィアQ(Nuvia Q)カラムをマブセレクト・シュアLX(MabSelect SuRe LX)カラムと直接連結することが可能であった。図2Aおよび図2Bにおいて要約した下流プロセスは、1000L規模(リツキシマブ)から、このようなプレクリーニングカラムおよび捕捉カラムを連結してランした。しかし、100L規模のプロセスも、特に明記しない限り、連結カラムで実行した。2つのカラムは別々に平衡化し、その後、バルブスイッチングによって連結した。産物溶液は、ヌヴィアQ(Nuvia Q)について実施例4に記載したように、約100L/時(1000L規模)または約10L/時(100L規模)でアップフロー方向に連結カラム上にロードした。WFI(2CV)による洗浄後、ヌヴィアQ(Nuvia Q)カラムは、クロマトグラフィースキッドにてバルブスイッチングによってバイパスし、実施例4に記載したように、逆流で再生した。プロテインAカラムの更なるプロセシング、すなわち洗浄、溶出、および再生は、実施例7に記載した、連結を断った構成において実行した。
【0227】
実施例10:ウィルス不活化
図1および図2に示すように、プロテインA親和性クロマトグラフィー後に、ウィルスの不活化工程を行う。親和性マトリックスからの低pH溶出を利用する。そのような水性酸環境では、多くのウィルス、とりわけエンベロープタイプのウィルスは不安定であり、分解する。本発明について開発したプロテインA法は、pHが3.5である溶出液が生じる(実施例7参照)。同様に、混合モード捕捉カラム(MEPハイパーセル(MEP HyperCel)またはカプトMMC(Capto MMC))の溶出液は、pHが4と低い(実施例5および実施例6参照)。以降、マブセレクト・シュアLX(MabSelect SuRe LX)溶出液(1000L規模、リツキシマブ)のための不活化を記載する。プロテインAカラムからモノクローナル抗体を、100mMクエン酸Naバッファ、pH3.5中で、ウィルス不活化タンクA内に直接溶出した。タンクA内で直接、WFIによって溶出液を約2倍に希釈した。溶液のpHは、必要に応じて、100mMクエン酸で制御して3.5に再調整し、続いて溶液をウィルス不活化タンクBに移し、そこで
、65rpmで20〜24℃の温度にて60分間撹拌した。その後、50mM NaOHで溶液のpHをpH4.5に調整して、以降の陽イオン交換クロマトグラフィー工程のための出発条件を与えた。
【0228】
実施例11:ポロス50HS(Poros 50 HS)による陽イオン交換クロマトグラフィー(ポリッシング1)
夾雑物および生産関連物質、例えば電荷変異体の分離は、第1のポリッシング工程である陽イオン交換クロマトグラフィーによって実行した。この工程は、全ての精製シーケンス(100Lリツキシマブおよびアダリムマブ、1000Lリツキシマブ)に含まれた。ポロス50HS(Poros 50 HS)樹脂による充填カラム(1000L規模の寸法=60cm直径×32cm高、充填容量約90L;100L規模の寸法=25cm直径×15cm高、充填容量約約7.3L)は、(i)WFI(注射用水、2CV)および(ii)20mMクエン酸Na、pH5.5(4CV)によって連続的に平衡化した。実施例10に記載したウィルス不活化およびサンプル調整(pH4.5)後に得た産物溶液を、約8gタンパク質/L樹脂でカラム上にロードすることによって、0.45μmクリーンパック・ノバ(Kleenpak Nova)プレフィルタ(ポール・コーポレーション(Pall Corporation))に通した。続く勾配溶出の前に、カラムをWFI(1CV)で洗浄した。20mMクエン酸Na、pH5.5(バッファA)、および40mMリン酸Na、pH7.8(バッファB)を以下の比率およびシーケンスで混合することによって、勾配を形成した:(i)100% A(0.2CV)、(ii)40%
A+60% B(2CV)への線形勾配;(iii)100% B(6CV)への線形勾配;(iv)100% B(2CV)。流速は150cm/時であった。溶出液は、画分に分離して、特異的プーリングを可能にした。ポロス50HS(Poros 50 HS)樹脂の再生は、(i)2M NaCl(1CV)および(ii)1M NaOH(2CV)で連続的に洗浄することによって実行した。カラムはその後、10mM NaOH中に貯蔵した。
【0229】
実施例12:カプトアドヒア(CaptoAdhere)による混合モードクロマトグラフィー(ポリッシング2)
第2のポリッシング工程は任意選択的であり、リツキシマブの100L規模および1000L規模に適用した。2つのポリッシング工程があるプロセス(図2Aおよび図2B)において最終クロマトグラフィーに選択した樹脂は、カプトアドヒア(CaptoAdhere)であった。これは、リガンドN−ベンジル−N−メチルエタノールアミンを使用する。リガンドは、正に帯電する基を有するため、疎水性相互作用に加えて、陰イオン交換体の機能も実現する。クロマトグラフィーは、残っている微量の夾雑物、例えばHCDNAおよびHCPをさらに減らすことが可能である。残留浸出プロテインA、産物凝集体、および産物フラグメントもまた、この工程によって除去し得る。カプトアドヒア(CaptoAdhere)ポリッシング工程は、フロースルーモードおよび結合モードで実行した。
【0230】
フロースルーモードのカプトアドヒア(CaptoAdhere)クロマトグラフィー:この最終クロマトグラフィー用のサンプルは、実施例11に記載した手順の後のポロス50HS(Poros 50 HS)プールであった。1000L規模用の充填カラムのサイズは、14cm直径×13cm高(充填容量約2L)であり、100L規模について、5×13cm(充填容量約0.2L)であった。カラムは、20mMリン酸Na、100mM NaCl、pH7.8で平衡化した。プールした画分のpHは、0.2M NaOHで7.8に調整し、導電率は、1M NaClで10〜12mS/cmに上げた。調整したプールは、250〜275gタンパク質/L樹脂のロードでカプトアドヒア(CaptoAdhere)カラムを通過し、フロースルー全体を採取した。流速は300cm/時であった。カプトアドヒア(CaptoAdhere)樹脂の再生は、(i)100
mMクエン酸、2M NaCl(2CV)、(ii)2M NaCl(1CV)、(iii)1M NaOH(2CV)、および(iv)10mM NaOH(2CV)で連続的に洗浄することによって実行した。カラムはその後、10mM NaOH中に貯蔵した。
【0231】
結合モードのカプトアドヒア(CaptoAdhere)クロマトグラフィー:実施例11に記載した手順の後に得られたポロス50HS(Poros 50 HS)プールのpHおよび導電率を、pH8.2および3.2mS/cmにそれぞれ調整した。1000L規模用の充填カラムのサイズは、40cm直径×28cm高(充填容量約35L)であり、100L規模について、14×27cm(充填容量約4.1L)であった。樹脂は、20mMリン酸Na、pH8.2で平衡化した。産物溶液は、15〜20gタンパク質/L樹脂でカラム上にロードした。溶出は、20mMリン酸Na、pH6.0で実行した。流速は300cm/時であった。フロースルーモードの方法について記載したように、カラムを再生した。
【0232】
実施例13:最終の濾過工程
最後のクロマトグラフィーと、最終バルクの薬剤物質の充填との間に、選択した貯蔵バッファ中に調合し、所望の濃度を固定し、かつウィルスを除去するために要求される、いくつかの濾過工程がある。免疫グロブリン用の本発明の精製法は、これらの濾過法には依存しない。従って、本実施例における方法、装置、および選択した膜は、ほんの1つの選択肢と理解されなければならず、自由裁量の変更が可能である。2つのポリッシング工程があるプロセスについての1000L規模用の方法を、以下で簡潔に記載する。
【0233】
タンジェント流限外濾過/透析濾過(UF/DF:ultrafiltration/diafiltration)によるバッファ交換:カプトアドヒア(CaptoAdhere)カラムからの溶出液は、UF/DFスキッドのタンク内に採取して、オメガ・セントラセッティ(Omega Centrasette)膜カセット(ポール・コーポレーション(Pall Corporation)、30kDカットオフ)を用いて、8g/Lに濃縮した。残留産物は、10容量の調合バッファ(25mMクエン酸Na、154mM NaCl、pH6.5)を用いて限外濾過した。
【0234】
ナノ濾過によるウィルス除去:ナノ濾過は、ナノメートル範囲のサイズ排除に基づいて機能する、最も厳しく、かつ最も信頼性が高いウィルス除去工程である。限外濾過した産物溶液は、移動可能なタンク中に移してから、バイアソルブ・プロ・モダス1.3(Viresolve Pro Modus 1.3)フィルタ(ミリポア(Millipore)、20nm孔サイズ)を用いたナノ濾過にかけた。フィルタは、産物溶液の濾過前に、25mMクエン酸Na、154mM NaCl、pH6.5で調整した。ナノフィルタの保護のために、ザルトポア2ミディキャプス(Sartopore 2 MidiCaps)プレフィルタ(ザルトリウス(Sartorius)、0.2μm孔サイズ)を適用した。濾過は、最大200kPa(2bar)の過剰圧によって実行した。
【0235】
タンジェント流限外濾過/透析濾過(UF/DF)による濃縮および最終調合:ナノ濾過した産物溶液は、UF/DFスキッドのタンク内に採取して、オメガ・セントラセッティ(Omega Centrasette)膜カセット(ポール・コーポレーション(Pall Corporation)、30kDカットオフ)を用いて、約10.2g/Lに濃縮した。濃縮した産物溶液は、移動可能なタンクに移した。層流空気流下にタンクを置いて、トゥイーン80を加えて最終濃度を0.09%(w/w)にした。
【0236】
最終の精密濾過(滅菌濾過):最終の精密濾過は、0.2μmミニ・クリーンパック(Mini Kleenpak)フィルタカプセル(ポール・コーポレーション(Pall
Corporation))で実行した。
【0237】
実施例14:異なるプロセスによって得たバッチの最終純度(表5)
図2Aの従来のプロセス(例えば、ファーナRL(Fahrner RL)2001年に従う)および図2Bの新たなプロセスによって生産した2つの代表的なバッチの最終純度に関する結果を、表5に要約する。免疫グロブリンはリツキシマブであり、100L規模から精製した。従来の精製法のプロセス工程(プロセス1B)は、3つのクロマトグラフィー、(i)マブセレクト・シュア(MabSelect SuRe)(捕捉)、(ii)ポロス50HS(Poros 50 HS)(結合モード)、および(iii)ポロス50HQ(Poros 50 HQ)(フロースルーモード)からなる。新たなプロセス(プロセス2B)のクロマトグラフィーシーケンスは、(i)ヌヴィアQ(Nuvia
Q)(プレクリーニング)、(ii)カプトMMC(Capto MMC)(捕捉)、(iii)マブセレクト・シュア(MabSelect SuRe)(中間)、(iv)ポロス50HS(Poros 50 HS)(結合モード、ポリッシング1)、および(v)カプトアドヒア(CaptoAdhere)(フロースルーモード、ポリッシング2)からなる。個々の工程は、実施例1、2、4、6、7、および10〜13に記載したように実行した。表5について、選択した純度パラメータは、(i)IgGモノマーの相対量(%)、(ii)残留宿主細胞タンパク質(HCP、ng/mg IgG)、および(iii)残留宿主細胞DNA(HCDNA、pg/g IgG)である。分析方法は、以下の実施例15に記載する。新たなプロセス2Bに従って精製したバッチは、3つ全てのパラメータで見られるように、従来のプロセス1Bに従って精製したバッチと比較して、純度がより高かった(表5)。
【0238】
表5:2つの異なるプロセスである従来のプロセス(1B)および発明したプロセスの1つ(2B)によって得た2つの精製バッチの品質の比較。「プロセス1B」は、図1Bに示す、プレクリーニングクロマトグラフィー工程のない標準的なプロセスを指す。「プロセス2B」は、プレクリーニングクロマトグラフィー工程(ヌヴィアQ(Nuvia Q)フロースルー)および混合モードクロマトグラフィー捕捉工程(カプトMMC(Capto MMC))に続くプロテインA(マブセレクト・シュア(MabSelect SuRe))を含む、図2Bに示す発明したプロセスを指す。試験方法は:サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SEC−HPLC:Size exclusion−high performance liquid chromatography)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA:enzyme−linked immunosorbent assay)、および定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR:quantitative polymerase chain reaction)であった。試験パラメータは、モノマーIgGパーセント、1mg IgGあたりの宿主細胞タンパク質(HCP:host cell protein)、および1g IgGあたりの宿主細胞DNA(HCDNA:host cell DNA)であった。
【0239】
【表5】
【0240】
実施例15:分析方法
精製した免疫グロブリンの品質を特徴付けるために、プロセス中およびプロセス終了後の両方にていくつかの分析方法を適用した。これらの方法は、標準的な方法であり、例え
ばユーロ・ファーム(Eur.Pharm)といった文献に記載されていた。表の結果をもたらした方法の原理を、以下で簡潔に記載する。
【0241】
高速サイズ排除クロマトグラフィー(SEC−HPLC):SEC−HPLC法は、分子量が免疫グロブリンの分子量と異なる不純物の判定のために適用した。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC:Size−exclusion chromatography)は、サイズと比例する流体力学的径に基づく分子の分離に基づく技術である。解像度が従来のSECよりもかなり良好な、SEC用の高速液体クロマトグラフィー系(SE−HPLC)を用いた。クロマトグラフィーは、免疫グロブリンのモノマー、ダイマー、凝集体、およびフラグメントを定量化するために、文献(例えば国際公開第2013067301号)に記載されているようにして、実行した。タンパク質の検出は、UV吸収に基づいた。相対純度は、一体にしたモノマーピークの面積の、全ピークの総面積の%を指す。試験結果は、反復測定値の平均から算出した。
【0242】
宿主細胞タンパク質(HCP)を定量化する酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA):測定は、サンドイッチELISA法によって実行した。CHO宿主細胞タンパク質は、標準的な96ウェルマイクロテストプレートのポリスチレン表面上に固定された特異的抗CHO抗体に結合した後、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP:horseradish peroxidase)で標識した二次抗体に結合する。3,3’,5,5’テトラメチルベンジジン(TMB:tetramethylbenzidine)基質をウェルに加えることによって酵素反応を実行した後、抗体−ペルオキシダーゼ結合体の存在に依存して、VIS光吸収によって検出可能な有色の産物がもたらされる。マイクロテストプレートは、450nm(620nmの参照波長)にて読んだ。
【0243】
浸出プロテインAを定量化する酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA):測定は、レプリジェン(Repligen)から市販されているマブセレクト・シュア・リガンドELISAキット(MabSelect Sure Ligand ELISA kit)を用いて実行した。浸出したマブセレクト・シュア(MabSelect SuRe)リガンドは、標準的な96ウェルマイクロテストプレートのポリスチレン表面上に固定された特異的抗プロテインAウサギ抗体に結合した後、ビオチンで標識した二次抗体に結合する。結合したビオチンの存在は、ストレプトアビジン−ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合体と共にウェルをインキュベートすることによって検出した。3,3’,5,5’テトラメチルベンジジン(TMB)基質をウェルに加えることによって酵素反応を実行した後、抗体−ペルオキシダーゼ結合体の存在に依存して、VIS光吸収によって検出可能な有色の産物がもたらされる。マイクロテストプレートは、450nm(620nmの参照波長)にて読んだ。アッセイ感度は、0.1ng/mlサンプルであった。
【0244】
宿主細胞DNA(HCDNA)を定量化する定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR):測定は、タックマン(TaqMan)化学(アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems))に基づくリアルタイム定量的PCR法によって実行した。この方法は、DNA汚染の検出に非常に敏感であり、かつ特異的である。アッセイは、配列特異的プライマー(SSP:sequence−specific primer)および蛍光標識ハイブリダイゼーションプローブ(タックマン(TaqMan)(登録商標))を用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による配列特異的増幅および明確なDNAフラグメントのリアルタイム蛍光検出に基づく。測定器、試薬、サンプリング、およびソフトウェアベースの計算を含む方法全体は、供給者の説明書に従って実行した。PCR反応において、大量の二本鎖DNAは、特異的プライマーによって決定される出発DNA領域から合成される。リポーターおよびクエンチャー色素で標識したオリゴヌクレオチドプローブは、増幅されるテンプレートDNAの領域に結合する。PCR反応中にDNAポリメラーゼがプローブを分解する結果、2つの色素の物理的接近が途切れ、リポーター
色素は、PCR反応の合成産物に比例する蛍光を発する。測定では、CHO宿主細胞DNAの適切な領域の量を増幅させるCHO特異的なプローブおよびプライマーが測定に用いられる。この工程中に、蛍光シグナルは増大して、あるサイクル数の後、蛍光は閾値を上回る。このサイクル数は、DNAの出発量に比例する。サンプルで得たサイクル数を較正曲線と比較することによって、サンプル中の宿主細胞DNAの絶対量を判定することが可能である。
【0245】
実施例16:ウィルスの除去および不活化のバリデーション
細胞培養によって生産されるモノクローナル抗体等の組換えタンパク質薬剤の製造工程には、ウィルスの除去および/または不活化が必要とされる。なぜなら、原材料または生産工程からのウィルスによる汚染が懸念されるためである。結果として、細胞培養に由来する生物学的治療タンパク質をもたらす製造プロセス毎のウィルス安全性について相当な規制要求がある。下流プロセスは、それぞれの規制当局、例えば欧州医薬品庁(EMA:European Medicine Agency)および米国食品医薬品局(FDA:Food And Drug Administration)の既存のガイドラインに従って、潜在的ウィルス汚染を除去かつ/または不活化する能力が確認されなければならない。実行するウィルスクリアランス研究の目的は、細胞培養源からの組換えタンパク質薬剤の安全性全体の実証の一部として、製造プロセス中のウィルスの有効な除去および不活化を実証することであった。
【0246】
プロセス工程の選択:IgGl抗体リツキシマブの下流プロセスを、選択した工程について確認した。分析したプロセス工程は、先の実施例において記載した対応する大規模工程の代表的な規模縮小バージョンであった。4つのプロセス工程を選択した。
【0247】
a)ヌヴィアQ(Nuvia Q)によるプレクリーニング陰イオン交換クロマトグラフィー(実施例4参照)
b)低いpHのプロテインA溶出液のウィルス不活化(実施例10参照)
c)ポロスHS(Poros HS)による陽イオン交換クロマトグラフィー(実施例11参照)
d)バイアソルブ・プロ(Viresolve Pro)によるナノ濾過(実施例13参照)
ウィルスの選択:頻繁に用いられる2つのモデルウィルスを選択した。
【0248】
a)マウス白血病ウィルス(MuLV)
b)マウス微小ウィルス(MVM)
MuLVは、レトロウィルス科のメンバであり、エンベロープを有し、約80〜100nmのサイズである一本鎖RNAウィルスである。MVMは、パーボウィルス科のメンバであり、非エンベロープ一本鎖DNAウィルスである。パーボウィルスは、知られている最も小さなウィルスに属し、サイズが20〜24nmである。両方のウィルスとも、米国菌培養採取所(ATCC:American Type Culture Collection)から得られる。
【0249】
実験の性能:1つの大規模バッチ由来の基準中間プロセスサンプルを凍結貯蔵した(≦−15℃)。実験前に20mlのアリコートを解凍して、高ウィルス力価のMuLVまたはMVMでそれぞれスパイクした。プロセス工程b)「低いpHのプロテインA溶出液のウィルス不活化」(実施例10参照)は、MuLVについてのみ試験した。裸のウィルスカプシドの形態構造のために、パーボウィルスは低pH処理に対する耐性が知られている。従って、MVMは低pHインキュベーションについて試験しなかった。スパイクした出発材料およびプロセス済みサンプルは、ウィルス特異的細胞ベースの感染性アッセイおよびqPCRを用いて量的に分析し、減少率は、log10値として算出した。アッセイに
対する干渉について、全ての試験材料をプレ調査し、並行制御インキュベーションにより、実験の期間中のウィルスの安定性が証明される。感染性アッセイは、感染性ウィルスのみを検出するが、qPCRは、感染性ウィルスおよび不活化ウィルスの両方を含む。プロセス工程毎およびウィルスタイプ毎に、二重のランを実行した。プロセス済みサンプルが、検出可能なウィルス力価を含有しなかった場合、アッセイの算出検出限界を最大力価として用いた。その場合、減少率は、少なくともlog10「≧」と表した。
【0250】
ウィルスクリアランス研究の結果:個々の実験の結果は、表6において、各ラン、工程、およびウィルスについて示した。フロースルーモードの単純な陰イオン交換クロマトグラフィー(樹脂ヌヴィアQ(Nuvia Q))に基づくプレクリーニング工程の高い減少率は、驚くべきものであった。MuLVについて少なくとも6.5〜6.7、およびMVMについて6.6のLog10減少率が見出された。この工程は、試験した4つの内、最も優れた工程であった。とりわけ、困難なパーボウィルスMVMの場合には、このことは予想されなかった。さらに、プレクリーニング陰イオン交換クロマトグラフィーおよび単純な60分の保持工程の組合せをプロテインA溶出液(pH3.5)に用いることによって、MuLV等のエンベロープウィルスについて、少なくとも12.3の累積減少率を得ることができた。総累積log10減少率は、MuLVおよび4つの工程について21.7、およびMVMおよび3つの工程について少なくとも13.3であった。
【0251】
表6:2つのモデルウィルスであるマウス白血病ウィルス(MuLV)およびマウス微小ウィルス(MVM)を減少させる異なるプロセス工程のLog10減少率。工程およびウィルスあたり2ランを実行した。
【0252】
【表6】
【0253】
参照文献のリスト
【0254】
【表7】
【0255】
【0256】
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C