(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6293973
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】計時器のバランス車ばねアセンブリー
(51)【国際特許分類】
G04B 17/06 20060101AFI20180305BHJP
【FI】
G04B17/06 A
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-510864(P2017-510864)
(86)(22)【出願日】2015年8月19日
(65)【公表番号】特表2017-525967(P2017-525967A)
(43)【公表日】2017年9月7日
(86)【国際出願番号】EP2015069085
(87)【国際公開番号】WO2016030257
(87)【国際公開日】20160303
【審査請求日】2017年2月23日
(31)【優先権主張番号】14182777.4
(32)【優先日】2014年8月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599040492
【氏名又は名称】ニヴァロックス−ファー ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】グラフ,エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ストランツル,マルク
【審査官】
藤田 憲二
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭36−016192(JP,B1)
【文献】
スイス国特許出願公開第705238(CH,A3)
【文献】
特開2013−108891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 17/00,17/06,17/22,18/00
G04C 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのバランス車(1)及び少なくとも1つのばね(2)を有するバランス車ばねシステム(100)であって、
前記バランス車(1)は、バランス車軸(40)を介して回転軸(P)のまわりを振動し、このバランス車軸(40)は、底プレート(13)とブリッジ(9)の間でマウントされており、前記回転軸(P)と軸一致しており、
前記ばね(2)の1つの内側のらせんは、前記バランス車軸(40)又はこのバランス車軸(40)と一体的にマウントされているコレット(7)に固定されており、
前記ばね(2)の1つの外側のらせんは、前記バランス車軸(40)を支える前記ブリッジ(9)と一体化されているスタッド(8)に固定されており、
前記バランス車(1)は、バランス車のハブ(3)と、リム(4)と、前記ハブ(3)を前記リム(4)に接続する少なくとも1つのアーム(5)と、皿穴(11)がある正面(10)と、及び裏面(12)とを有し、
前記少なくとも1つのアーム(5)には、少なくとも1つのフライウェイト(30)を受け保持するハウジング(6)があり、
前記フライウェイト(30)は、頭部(31)及びロッド(32)を有し、
前記ばね(2)は、前記バランス車の前記正面(10)に対向するようにマウントされており、
前記少なくとも1つのフライウェイト(30)は、前記バランス車(1)の前記裏面(12)上における前記バランス車(1)の前記少なくとも1つのアーム(5)上にてマウントされ、
前記頭部(31)は、前記バランス車(1)の前記裏面(12)に対抗するように配置され、前記ロッド(32)は、前記皿穴(11)の底部と同じ高さまで延在し、
前記バランス車(1)の前記正面(10)の前記皿穴の底部と前記ばね(2)との間の距離は、0.05mm〜1.50mmである所定間隔(V)である
ことを特徴とするバランス車ばねシステム(100)。
【請求項2】
前記所定間隔の値は、0.10mm〜0.70mmである
ことを特徴とする請求項1に記載のバランス車ばねシステム(100)。
【請求項3】
前記ロッド(32)は、前記ハウジング(6)内に配置される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のバランス車ばねシステム(100)。
【請求項4】
前記少なくとも1つのフライウェイト(30)の前記頭部(31)は、前記バランス車(1)の前記裏面(12)から前記少なくとも1つのフライウェイト(30)を調整するための制御手段を有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のバランス車ばねシステム(100)。
【請求項5】
前記少なくとも1つのフライウェイト(30)の前記ロッド(32)の直径は、前記ハウジング(6)の幅以上である
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のバランス車ばねシステム(100)。
【請求項6】
前記少なくとも1つのアーム(5)、前記リム(4)及び前記ハブ(3)は、一体鋳造要素を形成している
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のバランス車ばねシステム(100)。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のバランス車ばねシステム(100)を有する
ことを特徴とする計時器用ムーブメント。
【請求項8】
請求項7に記載の計時器用ムーブメントを有する
ことを特徴とする計時器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バランス車が慣性を調整する手段を有するバランス車ばねアセンブリーに関する。
【0002】
また、本発明は、このようなシステムを有する計時器用ムーブメント及びこのようなムーブメントを装備した計時器に関する。
【背景技術】
【0003】
スイス特許CH705238によって、慣性及び/又はバランスの調整を可能にするクランプされたフライウェイトを用いるバランス車が知られている。このバランス車には、2つのアームがあり、それぞれのアームには、フライウェイトのロッドを受け適切な位置にクランプするハウジングがある。ムーブメントにおけるバランス車のアセンブリーの方向に応じて、バランス車の皿穴側に位置するフライウェイトへのアクセスが困難であったり不可能であったりして、分解することが必要であることがある。また、スタッドとリムの内径との間の距離が小さすぎる場合には、フライウェイトがスタッドをたたいてしまい、バランス車の良好な動作を妨げてしまうことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、既知の従来技術の様々な短所を実際に改善することである。
【0005】
具体的には、本発明の目的の1つは、コンパクトな計時器用ムーブメントを得ることを可能にするバランス車を提供することである。
【0006】
本発明の別の目的の1つは、フライウェイトを収容した後に慣性を調整するために、フライウェイトへのアクセスが単純であるようなバランス車ばねシステムを提供することである。
【0007】
また、本発明は、少なくとも1つの特定の実施形態において、実装が容易でありあまり高コストではないようなバランス車ばねシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これらの目的や下の説明を読むことによって明白となる他の目的は、本発明にしたがって、少なくとも1つのバランス車及び少なくとも1つのばねを有するバランス車ばねシステムによって達成される。前記バランス車は、バランス車軸を介して回転軸のまわりを振動し、このバランス車軸は、底プレートとブリッジの間でマウントされており、前記回転軸と軸一致しており、前記ばねの1つの内側のらせんは、前記バランス車軸又はこのバランス車軸と一体的にマウントされているコレットに固定されており、前記ばねの1つの外側のらせんは、前記バランス車軸を支える前記ブリッジと一体化されているスタッドに固定されており、前記バランス車は、バランス車のハブと、リムと、前記ハブを前記リムに接続する少なくとも1つのアームと、皿穴がある正面と、及び裏面とを有し、前記少なくとも1つのアームには、少なくとも1つのフライウェイトを受け保持するハウジングがあり、前記フライウェイトは、頭部及びロッドを有し、前記ばねは、前記バランス車の前記正面に対向するようにマウントされている。
【0009】
本発明によると、フライウェイトは、前記バランス車の前記少なくとも1つのアームに、バランス車の裏面の側にてマウントされ、前記頭部は、前記バランス車の裏面に対抗するように配置され、前記ロッドは、皿穴の底部と同じ高さまで延在しており、バランス車の前面の皿穴の底部とばねとの間の距離は、0.05mm〜1.50mmであるような所定間隔Vである。
【0010】
本発明の他の好ましい変形実施形態によると、
− 前記所定間隔の値は、0.10mm〜0.70mmである。
− 前記ロッドは、前記ハウジング内に配置される。
− 前記少なくとも1つのフライウェイトの前記頭部は、前記バランス車の前記裏面から前記少なくとも1つのフライウェイトを調整するための制御手段を有する。
− 前記少なくとも1つのフライウェイトの前記ロッドの直径は、前記ハウジングの幅以上である。
− 前記少なくとも1つのアーム、前記リム及び前記ハブは、一体鋳造要素を形成している。
【0011】
本発明は、さらに、本発明に係る振動するバランス車ばねシステムを有する計時器用ムーブメントに関する。
【0012】
また、本発明は、本発明に係る計時器用ムーブメントを有する計時器に関する。
【0013】
このように、本発明の主題は、上記の様々な機能的及び構造的な特徴によって、慣性を調整する手段へのアクセスが特に単純であるようなバランス車ばねシステムを有する計時器用ムーブメントを得ることを可能にする。
【0014】
添付図面を参照しながら本発明の1つの特定の実施形態(例示的であってこれに制限されない)についての以下の説明を読むことによって、本発明の他の特徴及び利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1aは、本発明に係るバランス車の底面図である。
図1bは、本発明に係るバランス車の
図1の線A−Aにおける断面図である。
【
図2】計時器用ムーブメントを備える本発明に係るバランス車ばねシステムの
図1の線B−Bにおける断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1a、1b及び2を同時に参照しながら、一実施形態に係るバランス車ばねアセンブリーについて説明する。
【0017】
このようにして、本発明は、計時器用ムーブメントの中心部における発振機構に組み入れられるように意図された計時器バランス車ばねシステムに関し、これは、回転軸Pと軸一致しているバランス車軸40を介して回転軸Pのまわりを振動する少なくとも1つのバランス車1と、及び少なくとも1つのばね2とを有する。
【0018】
図2に示すように、バランス車軸40は、底プレート13とブリッジ9の間でマウントされ、このバランス車軸40は、その両端に、摩擦を抑えつつ、バランス車軸40が回転軸Pのまわりを回転することを可能にする円錐形のピボット41を有する。ばね2の内側のらせん(図では見えない)は、バランス車軸40又はコレット7に固定される。このコレット7は、ばね2と一体鋳造されていることができ、このばね2は、バランス車軸40と一体化されるようにマウントされ、ばね2の外側のらせん21は、ブリッジ9と一体化されたスタッド8に固定される。
【0019】
単一のバランス車及び単一のばね調整要素を用いる特定の場合について、ここで本発明を説明するが、当業者であれば、本発明を複数のバランス車及び/又は複数のばねを用いる場合にも適用することができるであろう。
【0020】
図面に示すように、バランス車1は、バランス車軸40を支えるハブ3と、リム4と、ハブ3をリム4に接続する少なくとも1つのアーム5と、皿穴11がある前面10と、及び平坦な裏面12とを有する。この裏面12にも、皿穴があってもよい。アーム5には、少なくとも1つのフライウェイト30を受け保持するハウジング6があり、ばね2は、バランス車1の前面10に対向するようにマウントされる。この前面10に、皿穴11が形成される。
【0021】
図1a及び1bに示すように、バランス車1は、ハブ3と、リム4と、及びハブ3にリム4を接続するアーム5とによって形成される剛体部を有する。ハウジング6の境界は、一方では、バランス車1の剛体部によって、他方では、弾性変形可能な部分61によって定められている。
【0022】
アーム5には、フライウェイト30のロッド32を受け適切な位置にクランプするハウジング6がある。このフライウェイト30は、制御手段を有する頭部31を有する。この制御手段は、例えば、ねじ回しのような工具と連係するように設けられる調整用輪郭33である。したがって、バランス車1の裏面12からフライウェイト30を調整することができる。フライウェイト30のロッド32は、頭部31から延在しており、この頭部31の直径は、ロッド32の直径よりも大きい。
【0023】
フライウェイト30のロッド32の直径は、ロッド32が弾性変形可能な部分61によって保持されるように、ハウジング6の幅よりも大きな幅であるように選ばれる。この弾性変形可能な部分61は、復元力を与える。
【0024】
好ましいことに、ロッド32の長さは、ロッド32が突き出ずムーブメントの中心部における部品の構成を最適化するように、アーム5の厚みを超えない。これによって、よりコンパクトにすることができる。
【0025】
このように頭部31とロッド32のみによって形成されるフライウェイト30が単純な構成であることは、バランス車1の底部からのバランス車1に対するフライウェイトの組み付けのために有利である。
【0026】
フライウェイト30は、ハウジング6内にクランプされた後に、ばね2又は小さな利用可能な空間によって妨げられずに、工具の付勢によって角度的に向きを合わせられることができる。フライウェイト30には、
図1aに示すように、頭部31に設けられた扁平部34によってアンバランスがあり、これによって、バランス車1の慣性の調整が可能になる。
【0027】
本発明によると、フライウェイト30は、バランス車1の裏面12の側にマウントされ、頭部31は、アーム5の下にて、バランス車1の裏面12に対抗するように配置され、バランス車1の前面10の皿穴の底部とばね2との間の距離は、0.05mm〜1.50mmであるような所定間隔Vである。より好ましい形態では、この所定間隔Vは、0.10mm〜0.70mmである。このような構成によって、コンパクトな構成となり、計時器用ムーブメントのかさばりを減らすことが可能になる。
【0028】
特に好ましくは、ロッド32は、皿穴11に突き出る要素がないように、バランス車1の前面10の皿穴11の底部と同じ高さまで延在する。したがって、スタッド8をリム4の最も近くに設けることができ、さらに、スタッド8を皿穴11の底部の最も近くに位置させることができる。
【0029】
アーム5、リム4及びハブ3は、同じ一体鋳造要素を形成しており、バランス車1は、金属性の材料で作ることができる。
【0030】
また、本発明は、本発明に係るバランス車ばねシステムを備える計時器用ムーブメント及び計時器に関する。
【0031】
これらの本発明の様々な態様のおかげで、コンパクトなバランス車ばねシステムが利用可能となる。このことによって、計時器用ムーブメントの厚み、そして、暗黙的に、腕時計ケースの厚みを減らすことが可能になる。これによって、比較的薄い腕時計を提供することができる。
【0032】
もちろん、本発明は、図示した例に制限されず、当業者に明白な様々な変形実施形態及び改変が可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 バランス車
2 ばね
21 外側のらせん
3 ハブ
4 リム
5 アーム
6 ハウジング
61 弾性部分
7 コレット
8 スタッド
9 ブリッジ
10 正面
11 皿穴
12 裏面
13 底プレート
30 フライウェイト
31 頭部
32 ロッド
33 調整用輪郭
34 扁平部
40 バランス車軸
41 ピボット
P 回転軸
V 所定の値