特許第6294057号(P6294057)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6294057
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】硬化性組成物及び硬化材料
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/18 20060101AFI20180305BHJP
   C08F 226/06 20060101ALI20180305BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20180305BHJP
   C08F 2/38 20060101ALI20180305BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   C08F220/18
   C08F226/06
   C08F290/06
   C08F2/38
   B60R16/02 620Z
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-240951(P2013-240951)
(22)【出願日】2013年11月21日
(65)【公開番号】特開2015-101603(P2015-101603A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】特許業務法人上野特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100095669
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 登
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 一雄
(72)【発明者】
【氏名】長谷 達也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 義人
(72)【発明者】
【氏名】溝口 誠
【審査官】 大木 みのり
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−060523(JP,A)
【文献】 特開2013−060522(JP,A)
【文献】 特開2009−210636(JP,A)
【文献】 特開2011−113692(JP,A)
【文献】 特開2010−235817(JP,A)
【文献】 特開2000−072833(JP,A)
【文献】 特開2006−117826(JP,A)
【文献】 特開2011−113693(JP,A)
【文献】 特開2011−113694(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0338327(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00 −301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ウレタン結合、尿素結合、イソシアネート基から選択される少なくとも1種を1個以上含む化合物と含金属化合物とを有する連鎖移動剤、
(B)下記の式に示すビニルラクタム化合物、
(C)(メタ)アクリレート成分、
(D)重合開始剤、
を少なくとも含む硬化性組成物であって、
前記(B)ビニルラクタム化合物の含有量が、(A)成分、(B)成分、(C)成分の合計量の中の(B)ビニルラクタム化合物の割合が20〜50質量%の範囲内であり、
記含金属化合物が、亜鉛、ニッケルから選択される少なくとも1種の金属を含む化合物であることを特徴とする硬化性組成物。
下記式中R4は、水素原子又はメチル基を示し、R5は、〔−(CH)n−〕、又は〔−CH−CH−NH−〕を示し、前記〔−(CH−〕のnは3〜5の範囲内である。
【化1】
【請求項2】
請求項1に記載の硬化性組成物を用いたことを特徴とする硬化材料。
【請求項3】
請求項1に記載の硬化性組成物を、接着剤、止水剤、ポッティング剤から選択されるいずれか1種に利用して作製されたことを特徴とするワイヤーハーネス材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車部材、電気・電子機器、航空機部材等に用いられる接着剤、止水剤、ポッティング剤、補強剤、コーティグ剤等に用いられる硬化性組成物、該硬化性組成物を用いた硬化材料、及びワイヤーハーネス等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば自己粘着性テープ等は、軟質塩化ビニル樹脂の支持体の表面に感圧接着剤(粘着剤)の層が積層されて構成される。軟質塩化ビニル樹脂は、塩化ビニル樹脂に可塑剤が添加されている。このように樹脂成分に可塑剤が含まれると、軟質塩化ビニル樹脂と接した状態で使用される接着剤層には、可塑剤が移行してしまうという問題がある。接着剤層へ可塑剤が移行すると、接着力が低下して剥離等の問題が生じる。
【0003】
そこで上記問題を解消するために、軟質塩化ビニル樹脂から接着剤層に可塑剤が移行しないようにした接着剤が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載の接着剤は、C1〜C18−アルキル(メタ)アクリレートを40質量%以上含有するポリアクリレート及びポリアルキルビニルエーテル、光重合開始剤等を含む硬化性樹脂から構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−317090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載された接着剤の組成物は、可塑剤の移行を防止又は減少させることが可能であり、UV硬化が可能な硬化材料であるが、ホットメルト接着剤であるため、使用時に高温で溶融させて使用する必要があった。ホットメルト接着剤は、使用時に加熱、冷却工程が必要となるため、作業に手間がかかり使用し難いという問題があった。
【0007】
本発明の課題は上記従来技術の欠点を解消しようとするものであり、高温で溶融させる必要がなく、可塑剤の移行を抑制することが可能である、硬化性組成物、該硬化性組成物を用いた硬化材料、及びワイヤーハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の硬化性組成物は、
(A)式(1)に示す構造を分子中に持つ連鎖移動剤、
(B)式(2)に示すビニルラクタム化合物、
(C)(メタ)アクリレート成分、
(D)重合開始剤、
を少なくとも含む硬化性組成物であって、
前記(B)ビニルラクタム化合物の含有量が、硬化性組成物中の樹脂成分の合計量100質量部に対し(B)ビニルラクタム化合物が1〜50質量部の範囲内であることを要旨とするものである。
式(1)中R1は、あっても無くても良く、ある場合は水素原子を示す。無い場合は隣の原子と二重結合を形成していても良い。式(1)中R2は、酸素原子、硫黄原子を示す。式(1)中R3は、あっても無くても良く、ある場合は炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子を示し、無い場合は式中炭素原子と窒素原子が二重結合を形成していても良い。
式(2)中R4は、水素原子又はメチル基を示し、R5は、〔−(CH−〕、又は〔−CH−CH−NH−〕を示し、前記〔−(CH−〕のnは3〜5の範囲内であることを要旨とする。
【化1】
【0009】
上記硬化性組成物において、更に(E)含金属化合物が配合されていることが好ましい。
【0010】
上記硬化性組成物において、上記連鎖移動剤の含金属化合物が、スズ、銅、亜鉛、コバルト、ニッケルから選択される少なくとも1種の金属を含む化合物であることが好ましい。
【0011】
本発明の硬化材料は、上記の硬化性組成物を用いたことを要旨とする。
【0012】
本発明のワイヤーハーネス材料は、上記の硬化性組成物を、接着剤、止水剤、ポッティング剤から選択されるいずれか1種に利用して作製されたものであることを要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の硬化性材料は、(A)式(1)に示す構造を分子中に持つ連鎖移動剤、(B)式(2)に示すビニルラクタム化合物、(C)(メタ)アクリレート成分、(D)重合開始剤、を少なくとも含み、前記(B)ビニルラクタム化合物の含有量が、硬化性組成物中の樹脂成分の合計量の中の(B)ビニルラクタム化合物の割合が1〜50質量%の範囲内であるように構成したことにより、(B)ビニルラクタム化合物の添加により、可塑剤を含むポリ塩化ビニル樹脂等の材料に硬化性組成物の硬化物が接触した状態であっても、上記硬化物に可塑剤が移行するのを良好に防止することができる。
【0014】
更に(B)ビニルラクタム化合物の添加量を特定の範囲内としたことにより、可塑剤の移行を低減するとともに、必要以上に吸水しすぎることがなく、移行防止特性と低吸水性を両立することがきできる。そのため、硬化性材料の硬化物を防水用途に利用可能である。
【0015】
また硬化性組成物は、(C)(メタ)アクリレート成分と(D)重合開始剤を含んでいることから、ホットメルト接着剤のような加熱溶融工程は必要がなく、紫外線の照射等により硬化させることが可能であり、硬化が容易である。
【0016】
また硬化性組成物は、(A)連鎖移動剤を含んでいるので、紫外線等の照射光の届かない部位でも確実に硬化させることが可能である。
【0017】
本発明の硬化材料は、上記の硬化性組成物を用いたものであるから、深部まで硬化した硬化物が得られ、可塑剤の移行を低減することが可能であり、吸水率の低い硬化物を簡便に短時間で得ることが可能である。特に、硬化材料は防水性が要求される接着剤、止水剤、ポッティング剤に最適である。
【0018】
本発明のワイヤーハーネス材料は、上記の硬化性組成物を接着剤、止水剤、ポッティング剤、から選択されるいずれか1種に用いて作製されたものであるから、例えば電線等の被覆材が可塑剤を含む樹脂と硬化材料の硬化物が接触した状態であっても可塑剤が前記硬化物に移行するのを抑制することが可能であるから、硬化材料の硬化物の物性が低下せず、良好な特性を長期間維持できる。また上記硬化性組成物は、深部まで硬化した硬化物が得られるため、物性の良好なワイヤーハーネス材料を得ることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。本発明の硬化性組成物は、例えば下記の(A)〜(E)成分を含有する組成物から構成することができる。以下、硬化性組成物の各成分について説明する。
(A)式(1)に示す構造を分子中に持つ連鎖移動剤、
(B)式(2)に示すビニルラクタム化合物、
(C)(メタ)アクリレート成分、
(D)重合開始剤、
(E)含金属化合物。
【0020】
【化2】
【0021】
上記(B)成分の式(2)に示すビニルラクタム化合物を含有することで、組成物の硬化物が、可塑剤を含む塩化ビニル樹脂の成形品等と接した状態で使用された際に成形品等に可塑剤が移行するのを低減させることが可能である。これはビニルラクタム化合物は極性が高く、一般に可塑剤の極性が低いことから、組成物と可塑剤が相溶し難くなるために、可塑剤の組成物側への移行が阻止される。
【0022】
また(B)成分のビニルラクタム化合物を、該ビニルラクタム化合物を含む樹脂成分の合計量の中の1〜50質量%含有するため、吸水性が高くなりすぎず、低吸水性と可塑剤の移行低減性を両立することができた。すなわち(B)成分のビニルラクタム化合物の含有量が1質量%未満では、可塑剤の移行低減効果が十分得られず、また含有量が50質量%を超えると、吸水性が高くなってしまい、耐水性等が低下してしまう恐れがある。
【0023】
上記(B)成分のビニルラクタム化合物の含有量は、硬化性組成物中の樹脂成分の合計量の中の(B)成分の含有量(質量%)で示すものである。上記樹脂成分とは、例えば上記組成では、(D)重合開始剤成分を除く(A)成分、(B)成分、(C)成分、(E)成分の合計量である。
【0024】
(B)成分の式(2)に示すビニルラクタム化合物としては、N−ビニルラクタムを用いることができる。N−ビニルラクタムは、例えば、式(2)中R5が〔−(CH−〕の化合物として、N−ビニルピロリドン(n=3)、N−ビニルカプロラクタム(n=5)、N−ビニルピペリジノン(n=4)等が挙げられ、式(2)中R5が、〔−CH2−CH2−NH−〕の化合物として、N−ビニルイミダゾリジノン、N−ビニル−5−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−6−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−6−エチル−2−ピペリドン、N−ビニル−7−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−7−エチル−2−カプロラクタム等が挙げられる。これらは1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。N−ビニルラクタムは、入手が容易である点から、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムを用いるのが好ましい。
【0025】
上記(A)成分の式(1)に示す構造を分子中に持つ連鎖移動剤は、式(1)に示す構造を分子中に持つ化合物であればよい。一般に紫外線硬化は、主に光照射によって発生するラジカルの連鎖反応を用いて硬化反応を開始、又は進行させるが、発生ラジカル種の寿命は非常に短い。そのため光が照射された部分では硬化反応が進むが、深部等の照射光が届かない部位等は、光が遮断されたり散乱されたりするため、硬化が阻害される。これに対し本発明では(A)連鎖移動剤が添加されていることにより、材料表面への光照射のみによって、光が透過しない深部まで硬化する材料が得られる。
【0026】
式(1)中R1は、あっても無くても良く、ある場合は水素原子を示す。無い場合は隣の原子と二重結合を形成していても良い。式(1)中R2は、酸素原子、硫黄原子を示す。式(1)中R3は、あっても無くても良く、ある場合は炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子を示し、無い場合は式中炭素原子と窒素原子が二重結合を形成していても良い。
【0027】
上記(A)連鎖移動剤は、紫外線照射によって光開始剤から発生する本来短寿命のラジカルをトラップして長寿命化、伝達して暗部におけるラジカル硬化を可能にする。そのため、硬化性組成物の表面への紫外線等の光照射のみで、光の届かない深部まで硬化させることができる。(A)連鎖移動剤は、式(1)に示す構造を有する化合物を、上記(E)成分の含金属化合物と組み合わせて使用することが、より効果を高めることが可能であることから好ましい。
【0028】
式(1)の構造を有する化合物として、具体的には、下記式(3)で示されるウレタン結合を有するウレタン結合含有化合物、下記式(4)で示される尿素結合部を有する尿素結合含有化合物、下記式(5)で示されるイソシアネート基を有するイソシアネート基含有化合物等が挙げられる。これらは、上記化合物から選択される少なくとも1種を1分子中に1個以上含有すればよい。
【0029】
式(3)
−NH−COO−
式(4)
−NH−CO−NH−
式(5)
−N=C=O
【0030】
上記式(3)、式(4)の構造を有する化合物は、例えば各種ポリウレタン、各種ポリ尿素、含イソシアネート化合物等が挙げられる。上記各種ポリウレタン、各種ポリ尿素は、それぞれ下記の含イソシアネート化合物と、水酸基(−OH)含有化合物、アミン(−NH)含有化合物等を反応させることで得られるものである。
【0031】
上記式(5)のイソシアネート基を含む化合物は、前述の含イソシアネート化合物を用いることができる、また含イソシアネート化合物は、以下に示す水酸基、アミン等と反応させて、各種ポリウレタン、各種ポリ尿素を形成するために用いる事ができる。
【0032】
上記含イソシアネート化合物としては、例えば、下記の化合物が挙げられる。メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート(LDI)、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート等の脂肪族イソシアネート。水素添加−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)、水素添加−キシリレンジイソシアネート(水添XDI)、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、水素添加−2,4−トリレンジイソシアネート(水添TDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)等の脂環族イソシアネート。キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等の芳香脂肪族イソシアネート。1,4−ジフェニルジイソシアネート、2,4又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,4又は4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、O−トリジンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート(粗製MDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート等の芳香族イソシアネート等のポリイソシアネート。含イソシアネート化合物としては、更にこれらポリイソシアネートを水と反応させて得られるビウレット型ポリイソシアネート、トリメチロールプロパン等の多価アルコールと反応させて得られるアダクト型ポリイソシアネート、多価イソシアネートを一部ポリエステルやポリエーテル誘導体と重合させた液状プレポリマー、イソシアヌレート化して得られる多量体等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
上記水酸基含有化合物は、各種ポリウレタンを得るために含イソシアネート化合物と反応させて用いられる。水酸基含有化合物としては、末端に水酸基を持つ炭素鎖1〜30のアルコール類、末端ジオールの(ポリ)エチレングリコール、末端ジオールの(ポリ)プロピレングリコール、末端ジオールの(ポリ)ヘキサメチレングリコール、末端ジオールの(ポリ)カプロラクトン、末端ジオールの(ポリ)エステル(ポリ)オール、末端ジオールの(ポリ)アミド、末端ジオールの(ポリ)エステル等が挙げられる。
【0034】
各種ポリウレタンは、最終的に硬化性材料中に混合された場合に溶解もしくは懸濁状態になればよいので、必ずしも液状である必要は無いが、混合のし易さから、液状であることが好ましく、この際に用いられる水酸基含有化合物としては、分子量10万以下の液状化合物である事が好ましい。
【0035】
上記アミン含有化合物は、各種ポリ尿素を得るために含イソシアネート化合物と反応させて用いられる。アミン含有化合物は、末端に1級又は2級のアミノ基を持つ炭素鎖1〜30のアミン類、末端ジアミンの(ポリ)エチレングリコール、末端ジアミンの(ポリ)プロピレングリコール、末端ジアミンの(ポリ)ヘキサメチレングリコール、末端ジアミンの(ポリ)カプロラクトン、末端ジアミンの(ポリ)エステル(ポリ)オール、末端ジアミンの(ポリ)アミド、末端ジアミンの(ポリ)エステル等が挙げられる。
【0036】
また、ポリウレタン、ポリ尿素化合物は、必要に応じて重合後に末端基を(チオ)エーテル、(チオ)エステル、アミド、(チオ)ウレタン、(チオ)尿素、N−アルキル結合等によって、アルキル基や(メタ)アクリル基、エポキシ基、オキサゾリル基、カルボニル基、チオール基、チオエーテル基、チオエステル基、リン酸(エステル)基、ホスホン酸(エステル)基、カルボン酸(エステル)基等で封止されていても良い。
【0037】
前記した、ウレタン結合、尿素結合、イソシアネート基は、複数の種類が結合されていても、或いは末端基が組み合わせられること等により分子中に含有されていても良い。
【0038】
上記(E)成分の含金属化合物は、スズ、銅、亜鉛、コバルト、ニッケルの中から選択される少なくとも1種類の金属を含む含金属化合物が好ましく用いられる。含金属化合物は、複数種の上記金属が金属塩又は金属錯体等の形態で構成分子中に含有されていれば、特に制限されることなく、従来から公知のものを用いることができる。
【0039】
上記金属塩としては、前記金属種のカルボン酸塩、りん酸塩、スルホン酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、(過)(亜)塩素酸塩等の形態が挙げられる。
【0040】
上記金属錯体としては、前記金属種と配位結合形成し得る有機配位子と1:1〜1:4(金属:配位子)で配位し安定化されたものであれば特に制限されることなく、従来から公知のものを用いることができる。
【0041】
上記(E)含金属化合物として具体的には、ビス(2,4−ペンタンジオナト)スズ、ジブチルスズビス(トリフルオロメタンスルホナート)、ジブチルスズジアセタ−ト、ジラウリン酸ジブチルスズ、ジブチルスズマレアート、フタロシアニンスズ(IV)ジクロリド、テトラブチルアンモニウムジフルオロトリフェニルスズ、フタロシアニンスズ(II)、トリブチル(2−ピリジル)スズ、トリブチル(2−チエニル)スズ、酢酸トリブチルスズ、トリブチル(トリメチルシリルエチニル)スズ、トリメチル(2−ピリジル)スズ、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)銅(II)、ビス(2,4−ペンタンジオナト)銅(II)、ビス(1,3−プロパンジアミン)銅(II)ジクロリド、ビス(8−キノリノラト)銅(II)、ビス(トリフルオロ−2,4−ペンタンジオナト)銅(II)、ビス(2−ヒドロキシエチル)ジチオカルバミン酸銅(II)、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸銅(II)、エチレンジアミン四酢酸銅(II)二ナトリウム、フタロシアニン銅(II)、ジクロロ(1,10−フェナントロリン)銅(II)、フタロシアニン銅、テトラー4−tert−ブチルフタロシアニン銅、テトラキス(アセトニトリル)銅(I)ヘキサフルオロホスファ−ト、ナフテン酸銅、ビス[2−(2−ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)、ビス[2−(2−ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)、ビス(2−ヒドロキシエチル)ジチオカルバミン酸亜鉛(II)、ビス(2,4−ペンタンジオナト)亜鉛(II)、ビス(8−キノリノラト)亜鉛(II)、ビス(テトラブチルアンモニウム)ビス(1,3−ジチオール−2−チオン−4,5−ジチオラト)亜鉛コンプレックス、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(II)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(II)、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、フタロシアニン亜鉛、ナフテン酸亜鉛、ビス(シクロペンタジエニル)コバルト(III)ヘキサフルオロホスファ−ト、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]コバルト(II)ジクロリド、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)コバルト(II)、(1R,2R)−N,N’−ビス[3−オキソ−2−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ブチリデン]−1,2−ジフェニルエチレンジアミナトコバルト(II)、(1S,2S)−N,N’−ビス[3−オキソ−2−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ブチリデン]−1,2−ジフェニルエチレンジアミナトコバルト(II)、ビス(2,4−ペンタンジオナト)コバルト(II)、ビス(トリフルオロ−2,4−ペンタンジオナト)コバルト(II)、フタロシアニンコバルト(II)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムコバルト、ヘキサアンミンコバルト(III)クロリド、N,N’−ジサリチラルエチレンジアミンコバルト(II)、[5,10,15,20−テトラキス(4−メトキシフェニル)ポルフィリナト]コバルト(II)、トリス(2,4−ペンタンジオナト)コバルト(III)、ナフテン酸コバルト、[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)ジクロリド、ビス(ジチオベンジル)ニッケル(II)、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ニッケル(II)、ビス(2,4−ペンタンジオナト)ニッケル(II)、ビス(テトラブチルアンモニウム)ビス(マレオニトリルジチオラト)ニッケル(II)コンプレックス、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ニッケル(II)ジクロリド、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)ジクロリド、ブロモ[(2,6−ピリジンジイル)ビス(3−メチル−1−イミダゾリル−2−イリデン)]ニッケルブロミド、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムニッケル(II)、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(II)、ジエチルジチオカルバミン酸ニッケル等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
上記(E)成分の含金属化合物は、混合のし易さ等から、有機酸塩又は金属錯体状であることが好ましい。
【0043】
上記(A)成分と上記(E)成分は、予め複合化しておくのが好ましい。複合方法は、両成分を常温、又は加温条件で混合すれば良い。具体的には、上記各成分を、減圧下または窒素等の不活性ガス雰囲気下で、適当な温度にて、混合ミキサー等のかくはん装置を用いて十分に攪拌または混練し、溶解させるか均一に分散させる方法が好ましい。
【0044】
上記(A)成分と(E)成分の配合比としては、質量比で、(A)成分:(E)成分=100:0.001〜100:10の範囲内であることが好ましく、更に好ましくは、(A)成分:(E)成分=100:0.005〜100:5の範囲内である。(A)成分の含金属化合物の配合量が多過ぎると、含金属化合物が不溶物となり、(メタ)アクリレートと混合した時に照射光の透過を抑制し硬化反応を阻害してしまう結果となる虞がある。一方(E)成分の含金属化合物の配合量が少な過ぎると、複合体として作用しきれずに連鎖移動剤としての機能が低下してしまう虞がある。
【0045】
(A)連鎖移動剤の含有量は、硬化性材料の用途、含有する(メタ)アクリレートの種類、要求される硬化性等に応じて、適宜、選択することができる。(A)連鎖移動剤の含有量は、硬化性材料全体の1〜80質量%であるのが、硬化後に十分な材料強度を得ることが可能であることから好ましい。
【0046】
上記(D)成分の重合開始剤は、光重合開始剤を用いることができる。光重合開始剤は、(メタ)アクリレート成分の光重合を開始させることが可能なものであればよく、特に限定されず用いることができる。
【0047】
上記光重合開始剤は、具体的には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、エチルアントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
上記光重合開始剤の含有量は、硬化性材料の樹脂成分100質量部に対し0.1〜20質量部の範囲内であるのが、硬化後に十分な材料物性を得ることが可能であることから好ましい。
【0049】
上記(C)成分の(メタ)アクリレート成分は、分子中に1つ以上の(メタ)アクリレート基を有する化合物であれば特に制限されることなく、従来から公知の(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリレートポリマー等を用いることができる。本発明において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの意味である。
【0050】
上記(メタ)アクリレートは、具体例として、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ベンジル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルアクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、等のモノ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレンングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンポリオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンポリオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのEO付加物又はPO付加物のポリオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテル物、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO付加物トリ(メタ)アクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルフォスフェート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラフルフリルアルコールオリゴ(メタ)アクリレート、エチルカルビトールオリゴ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンオリゴ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールオリゴ(メタ)アクリレート、(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレート、(ポリ)ブタジエン(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
硬化性組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、他の添加剤を配合することができる。上記他の添加剤としては、例えば、安定化剤、軟化剤、顔料、染料、帯電防止剤、難燃剤、増感剤、分散剤、溶剤、抗菌抗カビ剤等が挙げられる。
【0052】
硬化性組成物は、例えば、上記各成分を混合して均一にすることで得られる。混合に用いる装置等は特に限定されず、例えば、温度可変式の混合ミキサー、ヘンシェルミキサー等を用いることができる。
【0053】
硬化性組成物は、常温で液状で流動性を有するように、各成分の物性、配合割合等を調節するのが好ましい。硬化性組成物は、(メタ)アクリレート成分等が配合されているので常温で流動性を有するように調節することが容易である。このように調節することで、ホットメルト接着剤と比較して、塗布する際に加熱、溶融させる必要がなく、組成物の塗布等を容易に行うことができる。
【0054】
本発明の硬化材料は、上記の硬化性組成物を硬化させてなるものである。硬化性組成物の硬化は、照射装置から紫外線等の光を照射して組成物全体を光重合により硬化させることができる。紫外線照射装置は、従来公知の各種照射装置を用いることができる。また紫外線等の照射光の照射条件も、形状等に応じて、適宜設定することができる。
【0055】
紫外線照射装置は、例えば、Hg、Hg/Xeやメタルハライド化合物等を封入したバルブ式のUVランプ、LED−UVランプ等の光源等が挙げられる。また紫外線照射装置は、上記光源からの光を反射ミラーによって集光して照射する集光型UV照射装置を用いてもよい。
【0056】
本発明の硬化材料は、自動車部材、電機・電子機器、航空機部材等の、接着剤、コーティング剤、封止剤(ポッティング剤)、止水剤、モールド成型剤、補強剤等において、可塑剤と含む樹脂と接する用途に用いた場合に、樹脂からの可塑剤が硬化材料の硬化物等に移行するのを低減できるという効果を発揮できる。特に硬化材料は接着剤、止水剤、ポッティング剤から選択されるいずれか1種として用いることが好ましい。
【0057】
本発明のワイヤーハーネス材料は、上記の硬化性組成物を、接着剤、止水剤、ポッティング剤から選択されるいずれか1種以上に用いて作製されたものである。ワイヤーハーネス材料はワイヤーハーネスに使用される材料であればよく、例えば、ワイヤーハーネス保護材、電線被覆材、コネクタ等が挙げられる。
【0058】
接着剤は、例えばワイヤーハーネスの保護材やコネクタ等の接着用途に用いることができる。止水剤は、例えばワイヤーハーネスの電線分岐部分等で止水が必要な部分の止水用途に用いることができる。ポッティング剤は、コネクタ等の接続部分に生じる隙間を封止する封止材料の形態で用いることができる。
【0059】
本発明の硬化性組成物が接する状態で用いられる可塑剤を含む樹脂としては、特に限定されないが、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC樹脂と記載することもある)、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0060】
本発明の硬化性組成物が接する樹脂の可塑剤としては、トリブトキシエチルフォスフェート、ジオクチルセバケート、トリオクチルトリメリテート、フタル酸系ポリエステル等が好ましい。
【0061】
ワイヤーハーネスは、被覆電線の端末に端子が接続された端子付き電線が1本、或いは複数本組み合わされて構成される。ワイヤーハーネスの被覆電線は、導体の周囲が被覆材により被覆されている。被覆電線の被覆材は、軟質塩化ビニル樹脂等の可塑剤入りの樹脂が用いられる。更にワイヤーハーネスは、被覆電線と接する部分に上記硬化性組成物を用いて硬化された硬化物からなる硬化材料が接するように硬化されている。
【実施例】
【0062】
以下、本発明の実施例、比較例を示す。尚、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0063】
実施例1〜6、比較例1〜4
〔硬化性組成物〕
表1、表2に示す各成分を、それぞれの表に示す組成量(単位、質量部)で、攪拌機を用いて混合し溶解又は分散させて実施例1〜6、比較例1〜4の硬化性組成物を調製した。各成分の詳細、試験方法等は以下の通りである。特にメーカー表示していないものは東京化成社製の試薬グレードのものを用いた。
【0064】
<(メタ)アクリレート>
・IBA:イソボルニルアクリレート
・IBMA:イソボルニルメタクリレート
・HPA:ヒドロキシプロピルアクリレート
・HPGA:ヘプタプロピレングリコールジアクリート
・TEGA:テトラエチレングリコールジアクリレート
・UP−1:変性ポリテトラメチレンエーテルグリコールを用い合成したウレタンアクリレート(合成品、合成法後述)
【0065】
<連鎖移動剤>
・CT−1、CT−2
ウレタンアクリレートUP−1(合成法後述)100gを攪拌しながら50℃に加温し、含金属化合物として銅アセチルアセトン又は亜鉛アセチルアセトンを5g加え、50℃を保ったまま30分間攪拌分散させた。銅アセチルアセトンを用いたものをCT−1、亜鉛アセチルアセトンを用いたものをCT−2とした。
【0066】
<光開始剤>
・HCHPK:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
【0067】
<UP−1の合成>
攪拌機を備えた反応容器に、数平均分子量が1030の変性ポリテトラメチレングリコール21.3g(20.7mmol)、イソホロンジイソシアネート5.5g(24.7mmol)とジブチルすずジラウレート0.05gを仕込み、攪拌しながら液温度を室温から50℃まで1時間かけて上げた。その後少量をサンプリングしFT−IRを測定して2300cm−1付近のイソシアネートの吸収を確認しながら、50℃にて攪拌を続けた。FT−IRの吸収面積から残留イソシアネート基の含有量を計算し、反応前と比較して約15%まで減少して変化が無くなった時を反応終了とし、無色透明粘調性液体を得た。更にヒドロキシプロピルアクリレート1.10g(8.5mmol)、ジブチルすずジラウレート0.05g、ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]0.02gを仕込み、攪拌しながら液温度を室温から50℃まで1時間かけて上げた。その後少量をサンプリングしFT−IRを測定して2300cm−1付近のイソシアネートの吸収を確認しながら、50℃にて攪拌を続けた。FT−IRの吸収面積から残留イソシアネート基の含有量見積り、その吸収が消失した時を反応終了とし、無色透明粘調性液体を得た。これをUP−1とする。両末端がアクリレートのウレタンアクリレートである。
【0068】
〔可塑剤移行性評価〕
可塑剤としてトリメット酸トリス(2-エチルヘキシル)(TOTM)を含む直径3.6mmのPVC樹脂製の丸棒2本を平行に並べ、その上に硬化性組成物を塗布し、UVランプ(SEN特殊光源社製100mW/cm)で25秒間紫外線照射を行った。その後、室温まで戻すため20分間室温で放置した後、裏側にも同様に硬化性組成物を硬化させT型剥離試験の試験片を作製した。この試験片を引張速度を20mm/分で引き裂き試験(Tピール試験)を行い引き裂き強度を測定した。引き裂き強度は、引裂き時の剥離観測時の応力をPVC樹脂接着半円状の合計の長さで割った値とした。この引き裂き強度を、初期の試験片と耐熱評価120℃×5日後の試験片の測定について比較した。初期の引裂き強度を100%とし、初期の強度に対する耐熱評価後の強度の割合を保持率として可塑剤移行性の評価を行った。評価結果を表1、及び表2に示す。耐熱評価後の保持率が大きいほど、可塑剤の移行が少なく、物性の低下が小さいことを示している。またFT-IRを用いて、耐熱評価後の硬化材料に対する可塑剤の移行量を測定した。
【0069】
〔吸水率評価〕
硬化性組成物をシート状に硬化させて作製した厚さ0.5mmのシートを作製した。硬化性組成物は、UVランプ(SEN特殊光源社製100mW/cm)で25秒間紫外線照射を行い硬化させた。このシートから、ダンベル打ち抜き刃を用いて3号ダンベル片を作製して試験片とした。試験片を25℃の蒸留水に24時間浸漬させた後、表面の水分をしっかりふき取り、重量を測定した。浸漬前の重量に対する浸漬後の重量変化から吸水率を算出した。また、試験片を50mm/分で引張試験を行い、初期の伸びを100%として、初期の伸びに対する浸漬後の伸びの割合を算出して保持率とした。
【0070】
〔非照射部硬化性評価〕
硬化性材料を、内径5mm高さ50mmのガラス管に液面の高さが20mmになるように入れ、内容物の上部半分(10mm)をアルミ箔で包み、遮光部分を作成した。その後、側面からUVランプ(SEN特殊光源社製100mW/cm)で25秒間紫外線照射を行った。その後、室温まで戻すため20分間室温で放置した後、上部から1.5mm径のガラス棒を挿入し指触にて判断できる硬化部の確認を行うことによって、紫外線照射面と遮光面の境界から上部(非照射部)に進んだ硬化部の距離を計測した。
【0071】
<評価結果>
表1に示すように実施例1〜6は、可塑剤移行評価でのTピール試験でも初期と耐熱後で引き裂き強度の低下もなく、可塑剤移行量も5%以下であり、可塑剤移行を低減する効果が得られた。また、実施例1〜6は吸水性評価での浸漬後の伸びも初期と比較してほとんど低下もなく、吸水率も低く抑制できている。
【0072】
表2に示すように比較例1は、N−ビニルラクタム成分が1質量%未満であり、可塑剤移行量が多く、耐熱後の引裂き強度が低下していた。また比較例2、3はN−ビニルラクタム成分が50質量%を超えているため、可塑剤移行量の低減効果は得られたが、吸水性が高く浸漬後の破断伸びが低下している。また比較例4は連鎖移動剤を含まないため、非照射部の硬化性がない。
【0073】
このように表1の実施例1〜6は、本願発明の硬化性組成物が可塑剤の移行抑制と低吸水率を両立でき、硬化性に優れていることを示している。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。