(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0011】
図1、
図2、
図3、及び
図4は、発光装置100の平面図である。
図2は、
図1から封止部材180を取り除いた図であり、
図3は、
図2から第2電極140を取り除いた図であり、
図4は、
図3から有機層130及び絶縁層170を取り除いた図である。
図5は、
図3のA−A断面図であり、
図6は
図3のB−B断面図であり、
図7は
図3のC−C断面図であり、
図8は
図3のD−D断面図である。
【0012】
本実施形態に係る発光装置100は、基板110、発光部104、及び絶縁層170(構造物)を備えている。発光部104は、有機EL素子102を有している。有機EL素子102は、第1電極120、有機層130、及び第2電極140を有している。第2電極140は、第1電極120よりも基板110から離れている。有機層130は、第1電極120と第2電極140の間に位置している。絶縁層170は、発光部104を囲んでいる。そして絶縁層170は、第1領域(例えば
図5に示す第1端子対向領域174)、及び第1領域に対向する第2領域(例えば
図6に示す第1端子対向領域174)の双方において、外側の側面の絶縁層170の底面(又は上面)に対する角度θ
1は、内側の側面の絶縁層170の底面(又は上面)に対する角度θ
2よりも大きい。例えば、角度θ
1は90°超であり、90°未満である。以下、絶縁層170の側面の角度を絶縁層170の底面を基準に定義した場合を例に挙げて、詳細に説明する。
【0013】
発光装置100は、例えば矩形などの多角形であり、複数の有機EL素子102、第1端子150、及び第2端子160を有している。第1端子150及び第2端子160は、有機EL素子102に電力を供給するために設けられている。このため、第1端子150及び第2端子160には、発光装置100に電力を供給するための接続部材(例えばボンディングワイヤやリード部材)が接続される。
図1〜
図4に示す例では、第1端子150は、第1の方向(図中左右方向)に延在しており、第2端子160は第1の方向に交わる第2の方向(例えば図中上下方向)に延在している。
【0014】
有機EL素子102は、基板110に、第1電極120、有機層130、及び第2電極140を積層した構成を有している。本図に示す例では、基板110の上に、第1電極120、有機層130、及び第2電極140がこの順に積層されている。ただし、第1電極120と第2電極140は逆になっていてもよい。
【0015】
基板110は、たとえばガラス基板や樹脂基板などの透明基板である。基板110は、可撓性を有していてもよい。この場合、基板110の厚さは、例えば10μm以上10000μm以下である。この場合においても、基板110は無機材料及び有機材料のいずれで形成されていてもよい。基板110は、例えば矩形などの多角形である。
【0016】
有機層130は、発光層を有している。有機層130は、例えば、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層をこの順に積層させた構成を有している。第1電極120と正孔輸送層の間には正孔注入層が形成されていてもよい。また、電子輸送層と第2電極140の間には電子注入層が形成されていてもよい。有機層130の少なくとも一つの層は、塗布法によって形成されている。なお、有機層130の残りの層は、蒸着法によって形成されている。なお、有機層130の全ての層は塗布材料を用いて、インクジェット法、印刷法、スプレー法で形成しても構わない。
【0017】
第1電極120は、例えば有機EL素子102の陽極として機能し、第2電極140は、例えば有機EL素子102の陰極として機能する。第1電極120及び第2電極140は、いずれもスパッタリング法を用いて形成されている。第1電極120及び第2電極140の一方(本図に示す例では第1電極120)は、光透過性を有する透明電極である。有機EL素子102が発光した光は、第1電極120及び第2電極140のうち透明電極となっている電極(本図に示す例では第1電極120)を介して外部に出射する。透明電極の材料は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)等の無機材料、またはポリチオフェン誘導体などの導電性高分子を含んでいる。
【0018】
また、第1電極120及び第2電極140の他方(本図に示す例では第2電極140)は、Au、Ag、Pt、Sn、Zn、及びInからなる第1群の中から選択される金属、又はこの第1群から選択される金属の合金からなる金属層を含んでいる。
【0019】
より具体的には、第1電極120は、
図4に示すように、第1端子150に接続している。そして第1電極120は、基板110のうち、発光部104となる領域から第1端子150まで連続して形成されている。本図に示す例では、基板110は矩形であり、第1端子150は基板110のうち互いに対向する2辺に沿って設けられている。すなわち、第1端子150は配線となっている。そして、第1電極120は、この2辺の間に形成されている。
【0020】
第1電極120には複数の開口122が設けられている。開口122は複数の有機EL素子102の間を延在しており、第1電極120を、複数の有機EL素子102のそれぞれに分割している。そして、いずれの有機EL素子102が有する第1電極120も、第1端子150に接続している。このため、開口122が形成されていても、複数の有機EL素子102の第1電極120は互いにつながっており、共通の電極として機能する。なお、第1電極120のうち第1端子150の近くに位置している部分には、開口122がなくてもよい。
【0021】
また、
図2に示すように、複数の有機EL素子102の第2電極140は互いに繋がっている。言い換えると、第2電極140は、複数の有機EL素子102に共通の電極として形成されている。詳細には、第2電極140は、有機層130及び絶縁層170の上に形成されており、また、第2端子160に接続している。本図に示す例では、第2端子160は、基板110のうち第1端子150が形成されていない残りの2辺に沿って形成されている。
【0022】
図1〜
図4に示す例において、2つの第1端子150が第2の方向に互いに離れて配置されており、かつ、2つの第2端子160が第1の方向に互いに離れて配置されている。そして、絶縁層170及び発光部104は、2つの第1端子150の間、かつ2つの第2端子160の間に位置している。このようにすると、第1電極120には2つの第1端子150から電圧が供給され、かつ第2電極140には2つの第2端子160から電流又は電圧が供給されるため、発光部104の内部で電流又は電圧に分布が生じることを抑制できる。これにより、発光部104に輝度の分布が生じることを抑制できる。
【0023】
第1端子150は、第1電極120と同一の層(第1層152)の上に第2層154を積層した構成を有している。そして第1層152は第1電極120と一体になっている。このため、第1端子150と第1電極120の間の距離を短くして、これらの間の抵抗値を小さくすることができる。また、発光装置100の縁に存在する非発光領域を狭くすることができる。
【0024】
第2層154は、第1電極120よりも抵抗値が低い材料(例えばAlなどの金属、またはMo/Al/Moなどの金属の積層膜)によって形成されている。そして、第1端子150に電圧を供給する接続部材は、第2層154に接続している。なお、第2層154は、第1電極120よりも透光性が低い。
【0025】
また、第2端子160は、第1層162の上に第2層164を積層した構成を有している。第1層162は第1電極120と同様の材料により形成されている。ただし、第1層162は第1電極120から分離している。第2層164は、第2層154と同様の材料により形成されている。
【0026】
また、
図1及び
図4に示すように、複数の有機EL素子102は封止部材180によって封止されている。封止部材180は、基板110と同様の多角形の金属箔又は金属板(例えばAl箔又はAl板)の縁部の全周を押し下げた形状を有している。そして、縁部は接着材又は粘着材等で基板110に固定されている。このようにして、封止部材180の縁部の全周には、封止領域182が形成される。封止領域182は、基板110と同じ角数の多角形の各辺に沿った形状を有しており、発光部104を囲んでいる。ただし、封止部材180はガラスで形成されていてもよい。
【0027】
第1端子150の一部及び第2端子160の一部は、封止部材180の外に位置している。そして、第1端子150のうち封止部材180の外側に位置する部分、及び第2端子160のうち封止部材180の外側に位置する部分には、それぞれ導電部材が接続される。この導電部材は、例えばリードフレームやボンディングワイヤであり、第1端子150(又は第2端子160)を回路基板等に接続する。
【0028】
第1電極120には、補助電極124が接している。本図に示す例では、補助電極124は、第1電極120のうち基板110とは逆側の面に設けられている。補助電極124は、複数の有機EL素子102のそれぞれに設けられており、開口122の近くに位置している。補助電極124は、第1電極120よりも抵抗値の低い材料(例えばAlなどの金属)によって形成されている。補助電極124が形成されることにより、第1電極120の面内で電圧降下が生じることを抑制できる。これにより、発光装置100の輝度に分布が生じることを抑制できる。なお、補助電極124は設けられていなくてもよい。また、補助電極124は、透明導電材料、例えば第1電極120と同様の材料によって形成されていてもよい。
【0029】
なお、本図に示す例において、補助電極124は2つの第1端子150の間を延在しているが、2つの第1端子150の第2層154のいずれにも直接接続していない。ただし、補助電極124は、いずれかの第2層154に直接接続していてもよい。
【0030】
図3に示すように、第1電極120のうち第2層154で覆われていない領域の上には、絶縁層170が形成されている。絶縁層170は、例えばポリイミドなどの感光性の樹脂によって形成されている。絶縁層170には、複数の開口172が設けられている。開口172は、開口122及び補助電極124と平行に延在している。ただし、開口172は補助電極124及び第1電極120の開口122に重なっていない。このため、補助電極124は絶縁層170に覆われており、また、開口122のうち発光部104の内部に位置する部分も、絶縁層170によって覆われている。また、少なくとも開口172の内部には、上記した有機層130が形成されている。そして、第1電極120及び第2電極140の間に電圧又は電流が印加されることにより、開口172内に位置する有機層130は発光する。言い換えると、開口172のそれぞれの中に有機EL素子102が形成されている。
【0031】
絶縁層170は、第1端子150に対向する部分(第1領域及び第2領域:第1端子対向領域174)、及び第2端子160に対向する部分(第3領域:第2端子対向領域176)を有している。2つの第1端子対向領域174は、基板110の互いに対向する2辺に沿っており、2つ第2端子対向領域176は、基板110の残りの2辺に沿っている。また、互いに対向する2つの第1端子対向領域174の間には、内壁178(内部構造物)が形成されている。
【0032】
後述するように、第1端子対向領域174の断面形状及び第2端子対向領域176の断面形状は、互いに異なる。内壁178の断面形状は、第1端子対向領域174の断面形状と異なる。
【0033】
図5は、
図3のA−A断面図であり、
図6は、
図3のB−B断面図である。上記したように、第1端子150は、第1電極120の端部(第1層152)の上に第2層154を積層した構成を有している。また、有機層130は封止部材180によって封止されている。封止部材180の内側には、乾燥剤が配置されていてもよい。封止部材180の縁部は、絶縁性の接着層184を介して、基板110、又は基板110の上に形成された層に固定されている。これにより、封止領域182が形成されている。
【0034】
そして、
図5に示す第1端子対向領域174の断面形状(一方の第1端子対向領域174の断面形状)、及び
図6に示す第1端子対向領域174の断面形状(他方の第1端子対向領域174の断面形状)は、互いに同じ形状となっている。詳細には、2つの第1端子対向領域174において、外側の側面が底面に対して成す角度θ
1は90°超である。このようにすると、有機層130を形成するための塗布材料が第1端子対向領域174を超えて絶縁層170の外側にぬれ広がることを抑制できる。また、第1端子対向領域174において、内側の側面が底面に対して成す角度θ
2は90°未満である。このようにすると、絶縁層170の内側において、有機層130を形成するための材料は十分に濡れ広がる。
【0035】
図7は、
図3のC−C断面図であり、
図8は、
図3のD−D断面図である。上記したように、第2端子160は、第1層162の上に第2層164を積層した構成を有している。この断面においても、封止部材180の縁部は、絶縁性の接着層184を介して、第2端子160の一部に固定されている。これにより、封止領域182が形成されている。
【0036】
そして、
図7に示す第2端子対向領域176の断面形状(一方の第2端子対向領域176の断面形状)、及び
図8に示す第2端子対向領域176の断面形状(他方の第2端子対向領域176の断面形状)は、互いに同じ形状となっている。詳細には、2つの第2端子対向領域176において、外側の側面が底面に対して成す角度θ
3、及び内側の側面が底面に対してなす角度θ
4は、いずれも90°未満である。このようにすると、第2電極140を蒸着法、スパッタリング法で成膜する際に、第2端子対向領域176の側面で第2電極140が断線することを抑制できる。また、角度θ
4は90°未満であるため、絶縁層170の内側において、有機層130を形成するための材料は十分に濡れ広がる。
【0037】
また、内壁178において、2つの側面が底面に成す角度θ
5,θ
6は、いずれも90°未満である。このため、第2電極140を蒸着法、スパッタリング法で形成する際に、内壁178の側面で第2電極140が断線することを抑制できる。
【0038】
なお、角度θ
1は、90°超180°未満である。また、角度θ
2〜θ
6は、1°以上90°未満である。
【0039】
次に、本実施形態に係る発光装置100の製造方法を説明する。まず、基板110の上に第1電極120となる導電膜を、例えば蒸着法、スパッタリング法を用いて形成する。次いで、この導電膜上にレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとして導電膜をエッチングする。これにより、第1電極120(第1端子150の第1層152を含む)、及び第2端子160の第1層162が形成される。その後、レジストパターンを除去する。
【0040】
次いで、基板110上に、補助電極124となる導電膜を形成する。次いで、この導電膜上にレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとして導電膜をエッチングする。これにより、補助電極124、第1端子150の第2層154、及び第2端子160の第2層164が形成される。その後、レジストパターンを除去する。
【0041】
次いで、第1電極120の上に絶縁層170となる絶縁性の感光材料を、例えば塗布法により形成する。次いで、この感光材料を露光及び現像する。これにより、絶縁層170及び開口172が形成される。次いで、開口172内に有機層130を形成し、さらに、有機層130上及び絶縁層170上に、第2電極140を、スパッタリング法を用いて形成する。その後、基板110に封止部材180を取り付ける。
【0042】
図9は、絶縁層170を形成するときの露光方法を説明するための平面図である。本図に示すように、絶縁層170となる露光材料は、一方の第1端子対向領域174側から基板110に対して光が斜めに入射するように露光され、その後、残りの第1端子対向領域174側から斜めに露光される。これにより、絶縁層170の第1端子対向領域174、第2端子対向領域176、及び内壁178は、上記した形状になる。
【0043】
以上、本実施形態によれば、2つの第1端子対向領域174において、外側の側面が底面に対して成す角度θ
1は90°超である。このようにすると、有機層130を形成するための塗布材料が第1端子対向領域174を超えて絶縁層170の外側にぬれ広がることを抑制できる。また、第1端子対向領域174において、内側の側面が底面に対して成す角度θ
2は90°未満である。このようにすると、絶縁層170の内側において、有機層130を形成するための材料は十分に濡れ広がる。
【0044】
また、2つの第2端子対向領域176において、外側の側面が底面に対して成す角度θ
3、及び内側の側面が底面に対してなす角度θ
4は、いずれも90°未満である。このようにすると、第2電極140を蒸着法やスパッタリング法で形成する際に、第2端子対向領域176の側面で第2電極140が断線することを抑制できる。
【0045】
また、内壁178において、2つの側面が底面に成す角度θ
5,θ
6は、いずれも90°未満である。このため、第2電極140を蒸着法やスパッタリング法で形成する際に、内壁178の側面で第2電極140が断線することを抑制できる。
【0046】
また、有機層130を構成する材料(例えば正孔輸送層を構成する材料)を塗布法で形成した場合において、この有機層が絶縁層170の第1端子対向領域174を超えてぬれ広がると、第1端子対向領域174の上面において、有機層は第2電極140に接触し、また、絶縁層170の外側で有機層が第1端子150や補助電極124に接触する可能性が出てくる。ここでこの有機層が導電性を有している場合(例えば正孔輸送層)、この有機層を介して第1電極120と第1端子150が短絡する恐れが出てくる。本実施形態では、有機層130を形成するための塗布材料が第1端子対向領域174を超えて絶縁層170の外側にぬれ広がることを抑制できるため、このような短絡が生じることを抑制できる。
【0047】
また、有機層130を構成する材料が絶縁層170の第1端子対向領域174を超えてぬれ広がると、この有機層を介して複数の補助電極124が短絡する可能性が出てくる。複数の補助電極124が短絡すると、これら複数の補助電極124の抵抗値は、他の補助電極124の抵抗値と比較して低くなる。このようになると、発光部104のうち互いに短絡した補助電極124の近傍に位置する部分は、他の領域と比較して明るくなってしまう。すなわち発光部104内に輝度の分布が生じてしまう。本実施形態では、このような理由で輝度の分布が生じることを抑制できる。
【0048】
また、第1電極120には開口122が設けられている。これにより、複数の有機EL素子102のそれぞれに、予め定められた電流を分配することができる。ここで有機層を介して複数の補助電極124が短絡すると、複数の有機EL素子102への電流の分配割合が変化してしまう。本実施形態によれば、有機層が絶縁層170を超えることを抑制できるため、複数の有機EL素子102への電流の分配割合が変化することを抑制できる。
【0049】
以上、図面を参照して実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。