特許第6294073号(P6294073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6294073
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】抵抗器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01C 17/28 20060101AFI20180305BHJP
【FI】
   H01C17/28
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-273081(P2013-273081)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-128104(P2015-128104A)
(43)【公開日】2015年7月9日
【審査請求日】2016年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092406
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 信太郎
(74)【復代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【復代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(74)【復代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(72)【発明者】
【氏名】亀子 健司
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 忠彦
【審査官】 中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−118701(JP,A)
【文献】 特開2004−327906(JP,A)
【文献】 特開2011−003694(JP,A)
【文献】 特開2009−216620(JP,A)
【文献】 特開2011−114038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 17/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗材料からなる金属材からなり、上面と下面を有する抵抗板材を準備する工程と、
該抵抗板材に穴あけ加工をして、キャリア部と、複数の個別抵抗体と、キャリア部と個別抵抗体を連結する連結部を形成する工程と、
前記個別抵抗体における上面と下面に、電極として用いる電極材を接合する工程と、
前記連結部を切断する工程と、からなることを特徴とする抵抗器の製造方法。
【請求項2】
前記抵抗材料よりも電気導電性のよい金属材からなり、上面と下面を有する複数の電極板材を準備する工程と、
該電極板材に穴あけ加工をして、キャリア部と、複数の個別電極材と、キャリア部と個別電極材を連結する連結部を形成する工程とを備え、
前記電極材を接合する工程は、前記抵抗板材の上面と下面に、前記電極板材を接合する工程であることを特徴とする請求項1に記載の抵抗器の製造方法。
【請求項3】
前記電極板材には、前記個別電極材から突出し、電圧検出端子として用いるための突部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の抵抗器の製造方法。
【請求項4】
前記抵抗板材の上面および下面には、予め金属膜が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の抵抗器の製造方法。
【請求項5】
前記抵抗板材と前記電極材または前記個別電極材の間に、前記抵抗材料よりも電気導電性のよい金属材を介在させることを特徴とする請求項1または2に記載の抵抗器の製造方法。
【請求項6】
前記抵抗板材と前記電極板材は、圧接により接合されることを特徴とする請求項2に記載の抵抗器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗器の製造方法に係り、特に抵抗体として金属材からなる抵抗材料を用いたシャント抵抗器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池の充放電電流を監視し、電池の充放電電流を制御する等の目的でシャント抵抗器が使用される。シャント抵抗器は、監視対象電流の経路に挿入され、該電流によってシャント抵抗器の抵抗体両端に生じる電圧を検出し、既知の抵抗値から電流を検出する。係るシャント抵抗器の構造として、円形または角形の金属抵抗体の両端面に円形または角形の金属電極を接合したものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記抵抗器は、その製造に当たり、まず抵抗体および電極を金属部材として製作し、次にそれらの端面同士を接触させ、圧接、溶接、ろう接等により接合して製作している。このため、抵抗器を個々の金属部材から単体で製造することになり、量産が難しいという問題がある。また、抵抗体および電極は電流が流れる方向にある程度の長さがないと、接合工程でそれらを保持できず、小型化に限界があるという問題がある。さらに、例えば線材を切断して抵抗体または電極とする場合、接合面の平坦性が得られ難く、接合面が平坦でないと十分な接合強度が得られ難いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2013/005824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述の事情に基づいてなされたもので、小型で且つ量産性に優れた金属材からなるシャント抵抗器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の抵抗器の製造方法は、抵抗材料からなる金属材からなり、上面と下面を有する抵抗板材を準備する工程と、該抵抗板材に穴あけ加工をして、キャリア部と、複数の個別抵抗体と、キャリア部と個別抵抗体を連結する連結部を形成する工程と、前記個別抵抗体における上面と下面に、電極として用いる電極材を接合する工程と、前記連結部を切断する工程と、からなることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、抵抗板材により抵抗体を構成するので、抵抗板材の厚みが抵抗体の電流方向長さとなる。そして、抵抗板材の上面と下面に、電極材を接合するので、両電極間の抵抗体が極めて薄い小型化したシャント抵抗器の製作が可能となる。抵抗板材は厚みの寸法精度を高く制御でき、抵抗体や電極の断面形状もプレス打ち抜き等のパターン加工により形成できるので、量産においても抵抗体の寸法精度が容易に確保でき、抵抗値精度の高い抵抗器が得られる。そして、多数の抵抗体や電極をパターン加工した金属板材を接合し、連結部を除去して個々の抵抗器を形成するので、様々な設計が可能となり、且つ高い量産性での製作が可能となる。
【0008】
さらに、パターン加工した抵抗板材と電極板材を重ねて接合することで、個々の抵抗体と電極との接合位置精度を容易に確保できる。そして、抵抗板材と電極板材を圧接(固相接合)により接合できるので、レーザーや電子ビームによる溶接に比べて接合が安定する。特に、レーザーや電子ビームによる溶接では、接合する界面で両金属が混在することになり、その界面は所定の幅で形成されるため、抵抗体の電流方向長さが小さい場合、抵抗体に電極材が溶け込んでしまい、本来の抵抗体の特性が得られないという問題があるが、圧接によれば均質な接合面が容易に得られ、本来の特性が容易に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】上記製造方法により製作した各種のシャント抵抗器の斜視図である。
図2A】本発明の第1実施例に係る抵抗板材のパターン形成例を示す左図は平面図であり、右図は左図のAA線に沿った断面図である。
図2B】本発明の第1実施例に係る電極板材のパターン形成例を示す左図は平面図であり、右図は左図のAA線に沿った断面図である。
図3】本発明の第1実施例の抵抗器の製造方法に係る、(a)は分解斜視図であり、(b)は積層状態の斜視図であり、(c)は(b)のAA線矢視方向の断面図である。
図4A】本発明の第2実施例に係る抵抗板材に金属膜を配置した状態を示す左図は平面図であり、右図は左図のAA線に沿った断面図である。
図4B】上記抵抗板材のパターン形成例を示す左図は平面図であり、右図は左図のAA線に沿った断面図である。
図5A】本発明の第3実施例に係る抵抗板材のパターン形成例を示す左図は平面図であり、右図は左図のAA線に沿った断面図である。
図5B】本発明の第3実施例に係る中間電極板材のパターン形成例を示す左図は平面図であり、右図は左図のAA線に沿った断面図である。
図5C】本発明の第3実施例に係る電極板材のパターン形成例を示す左図は平面図であり、右図は左図のAA線に沿った断面図である。
図6】本発明の第3実施例の抵抗器の製造方法に係る、(a)は分解斜視図であり、(b)は積層状態の斜視図であり、(c)は(b)のAA線矢視方向の断面図である。
図7A】本発明の第4実施例に係る抵抗板材のパターン形成例を示す左図は平面図であり、右図は左図のAA線に沿った断面図である。
図7B】本発明の第4実施例に係る電極板材のパターン形成例を示す左図は平面図であり、右図は左図のAA線に沿った断面図である。
図7C】本発明の第4実施例の抵抗器の製造方法に係る、(a)は分解斜視図であり、(b)は積層状態の斜視図であり、(c)は(b)のAA線矢視方向の断面図であり、(d)は上記製造方法により製作したシャント抵抗器の斜視図である。
図8】本発明の第5実施例の抵抗器の製造方法に係る分解斜視図である。
図9】本発明の第6実施例の抵抗器の製造方法に係る分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図1乃至図9を参照して説明する。なお、各図中、同一または相当する部材または要素には、同一の符号を付して説明する。
【0011】
図1(a)−(d)は本発明の製造方法で製作したシャント抵抗器の構造例を示す。図1(a)に示す抵抗器10aは、円柱状(または円板状)の抵抗体11の両端面に角形の電極12,12を固定した例である。抵抗体11は、Cu−Mn−Ni系、Cu−Ni系、Ni−Cr系、Fe−Cr系等の抵抗材料からなる金属材からなり、上面と下面を有する上記抵抗材料からなる抵抗板材を切り出して製作したものである。電極12も同様に、抵抗材料よりも電気導電性の良いCu等の金属材からなり、上面と下面を有する上記金属材料からなる電極板材を切り出して製作したものである。
【0012】
図1(b)に示す抵抗器は、図1(a)に示す抵抗器に比べて、抵抗体11の径を細くし、且つ電圧検出端子として用いるための突部14を電極12の端面に立設した構造である。突部14を電極12の抵抗体側端面に設けることで、抵抗体11の両端に形成される電圧を直近位置で検出することができ、電圧検出配線の接続も容易となる。図1(c)に示す抵抗器は、さらに、抵抗体11と電極12の間に、金属膜13を介在させた構造である。後述するが、金属膜13を介在させることで、抵抗体11と電極12の界面に製造工程において酸化膜の付着を防止し、良好な接合性が得られる。
【0013】
また、図1(d)に示す抵抗器は、角形(または角板状)の抵抗体11Aと電極12との間に、抵抗体の抵抗材料よりも電気導電性の良い金属材からなる中間電極12Aを介在させ、該中間電極12Aには該中間電極から突出する電圧検出端子として用いるための突部14が一体として設けられている。中間電極12Aは、抵抗体11Aおよび電極12と同一断面形状で、薄い角板状の電極で、抵抗体11Aと電極12の端面に接合して固定されている。これにより、抵抗体11の両端に形成される電圧を直近位置で検出することができ、電圧検出配線の接続も容易となることは上記実施例と同様である。
【0014】
これらの抵抗器は、抵抗材料からなる抵抗板材により抵抗体を構成するので、抵抗板材の厚みが抵抗体の電流方向長さとなる。そして、抵抗体における上面と下面に、電極として用いる電極材を接合するので、両電極間の抵抗体長さが極めて短い小型化したシャント抵抗器の製作が可能となる。
【0015】
一例として、厚みが0.7mmの抵抗板材を用いることで、電流の流れる方向の長さが0.7mmの抵抗体を実現でき、抵抗体11の直径を2mmとすると、概略0.1mΩの抵抗値を有する小型のシャント抵抗器を実現できる。なお、電極の長さは任意であるが、例えば2mmから5mmとすることで、抵抗器全体の長さが5mmから10mm程度の小型化したシャント抵抗器の製作が可能である。
【0016】
そして、本発明では、抵抗板材および電極板材等の無地のシートをパターニングして、穴あけ加工により多数個取りのパターンを形成し、これを圧接し、積層体からなる多数の抵抗器を一括して製造し、連結部を切断して個々の抵抗器にする。従って、抵抗器の断面形状をパターニングで設定でき、様々な形状の抵抗器の設計が可能となり、且つ高い量産性での製作が可能となる。
【0017】
ここで、抵抗板材は厚みの寸法精度を高く制御でき、断面形状もパターニングにより寸法精度を高く制御できるので、量産においても抵抗体の寸法精度が容易に確保でき、抵抗値精度の高い抵抗器が得られる。そして、抵抗板材と電極板材を圧接(固相接合)により接合できるので、レーザーや電子ビームによる溶接に比べて接合が安定し、電気的にも機械的にも安定した抵抗特性が得られる。
【0018】
次に、シャント抵抗器10a(図1(a)参照)に係る本発明の第1実施例の製造工程について説明する。図2Aは抵抗板材のパターン形成例を示す。まず、抵抗板材(シート)20aを準備する。この寸法は、一例として、大きさが100mm×100mm程度で、厚さが0.7mm程度である。そして、シートにパターニングにより穴あけ加工をして、キャリア部(枠部)21と、複数の個別抵抗体22と、キャリア部と個別抵抗体を連結する連結部23aを形成する。それ以外の部分は貫通孔になっている。なお、キャリア部(枠部)21には位置決め孔Hをその四隅に設ける。
【0019】
パターニングによる穴あけ加工は、プレス打ち抜き、エッチング、レーザービーム加工等を用いて行うことができる。図示の例では、個別抵抗体22は円板状であるが、図1(c)に示す抵抗器10cでは環状の個別抵抗体22aを形成し、図1(d)に示す抵抗器10dでは角状の個別抵抗体22bを形成する。このように、パターニングにより任意の形状・寸法に加工が可能である。連結部23aは多数の個別抵抗体22をキャリア部21に接続して固定する役割を果たし、後の切断を容易にするため、板材の厚みよりも薄く形成している。
【0020】
図2Bは電極板材のパターン形成例を示す。まずCu材等からなる電極板材(シート)20bを準備し、シート20bにパターニングにより穴あけ加工をして、キャリア部21と、複数の角形の個別電極材24と、キャリア部と個別電極材を連結する連結部23bを形成する。シートの厚みは任意であるが、抵抗体の厚みを0.7mm程度とすると、例えば2mmから5mm程度が適当である。
【0021】
パターニングによる穴あけ加工は、上記と同様に行うことができ、連結部を薄く形成することも同様であり、個別電極24を任意の形状・寸法に形成できることも同様である。また、キャリア部21の四隅に位置決め孔Hを設けることも同様である。ここで、板材20bにおける個別電極材24の配置は板材20aにおける個別抵抗体22の配置と一致するように形成する。
【0022】
板材20aおよび板材20bはパターン形成後に、機械研磨または化学研磨により表面仕上げを施すことが好ましい。これにより、抵抗体と電極の接合面となる面から酸化膜や異物が除去され、良好な接合が得られる。また、上記板材はシート状であるので、上記仕上げ加工が容易である。
【0023】
図3は、本発明の第1実施例の抵抗器の製造工程を示す。図2Aに示すパターンを形成した抵抗板材20aの上下両面に、図2Bに示すパターンを形成した電極板材20bを重ねて接合する(図3(a)参照)。この際、位置決め孔Hにピンを用いて位置合わせすることで、図2(c)に示すように、個別抵抗体22と個別電極材24の位置を合わせて固定することができる。
【0024】
接合は、真空雰囲気(10−4Pa程度)下で、400℃から1000℃に加熱し、1kNから10kNに加圧することで、圧接により拡散接合を形成することが好ましい。これにより、抵抗板材20aの個別抵抗体22と電極板材20bの個別電極材24を固相接合により全面を均質に接合できるので、レーザーや電子ビームによる溶接に比べて、機械的にも電気的にも接合が安定する。特に、抵抗体の電流方向長さが小さいものを接合する場合、レーザー等による溶接では、抵抗体が電極に溶け込んでしまい、本来の特性が得られない場合があるが、圧接によれば均質な接合面が容易に得られる。これにより、図3(b)(c)に示す積層体が得られる。
【0025】
次に、抵抗板材20aの連結部23aおよび電極板材20bの連結部23bをプレス等により切断して除去することで個々の抵抗器を形成する。従って、図1(a)に示す円柱状(円板状)抵抗体11の両端面に角柱状(角板状)電極12,12を備えた抵抗器10aが得られる。
【0026】
なお、図1(b)に示す抵抗器10bは上記工程を変更することで得られる。すなわち、電極板材20bは図2Bに示す構造のとおり、電極板材20bの一方の面と同一平面を構成するように連結部材23bを形成する。図3(a)から(c)に示す積層工程のとおり、抵抗板材20aの上下それぞれの面に、連結部材23bが形成された平面が接するように、電極板材20bを接合する。そして、連結部材23aは完全に除去し、連結部材23bは個別抵抗体22を挟んで一対となる部分を残して切断除去する。これにより、電極12の抵抗体側の端面から上方に突出する電圧検出端子である突部14を備えた抵抗器10bが得られる。なお、抵抗器10bは、図2Aの抵抗部材20aにおいて個別抵抗体22の直径を小さくするのであるが、これは任意である。
【0027】
次に、シャント抵抗器10c(図1(c)参照)に係る本発明の第2実施例の製造工程について説明する。まず、準備する抵抗板材20aに、図4Aに示すように、その上面および下面に、金属膜25を形成する。金属膜25は、Sn,Ni,Cu等の金属材料からなる膜であり、電解メッキ等により形成する。なお、Cuのナノペーストをスクリーン印刷し、これを加温硬化することで形成してもよい。
【0028】
そして、図4Bに示すように、板材20aにパターニングにより穴あけ加工をして、キャリア部(枠部)21と、複数の個別抵抗体22aと、キャリア部と個別抵抗体を連結する連結部23aを形成する。従って、個別抵抗体22aの上下の両表面には金属膜25が形成されている。ここで、個別抵抗体22aは、抵抗体内部に貫通孔を有する筒状体として形成している。
【0029】
次に、上記板材20aを用い、図3に示した積層・圧着工程により、パターン形成した板材20aの上下両面に、パターン形成した電極板材20b(図2B参照)を重ねて、位置決め孔Hをピンにより位置合わせして、圧力および熱を加えて圧接により接合する。そして、板材20aの連結部23aおよび板材20bの連結部23bを切断して除去することで、図1(c)に示す個々の抵抗器10cを形成する。
【0030】
抵抗器10cは、環状の抵抗体11を備え、その両側に金属膜13を備える。環状の抵抗体11は高周波電流が流れた時に表皮効果(skin effect)による電流経路の変動幅が小さく、従って、高周波電流の検出に好適なシャント抵抗器10cが得られる。
【0031】
積層・圧着工程において、抵抗板材として特にCu−Mn−Ni系の抵抗材料を用いた場合、電極との接合面が酸化していると、十分な接合強度が得られない場合がある。金属膜25を予め個別抵抗体22aの上下面に設けておくことで、Cu−Mn−Ni系の抵抗材料を用いた場合にもその表面の酸化を防止でき、個別電極材24の接合面に対して良好な接合性が得られ、上記不良品の発生を防止できる。
【0032】
次に、シャント抵抗器10d(図1(d)参照)に係る本発明の第3実施例の製造工程について説明する。抵抗器10dは角形の抵抗体11Aと角形の中間電極12Aと角形の電極12を備え、該中間電極12Aから突出し、電圧検出端子として用いるための突部14を備えている。
【0033】
まず、図5Aに示すように、抵抗板材20cにパターニングにより穴あけ加工をして、キャリア部(枠部)21と、複数の四角形状の個別抵抗体22bと、キャリア部と個別抵抗体を連結する連結部23cを形成する。同様に、図5Bに示すように、中間電極板材20dにパターニングにより穴あけ加工をして、キャリア部(枠部)21と、複数の個別中間電極25bと、キャリア部と個別中間電極を連結する連結部23eを形成する。個別中間電極25bは個別抵抗体22bと同一パターン形状の角形をなし、個別中間電極25bから突出した電圧検出端子として用いるための突部25cを備える。
【0034】
さらに、図5Cに示すように、電極板材20eにパターニングにより穴あけ加工をして、キャリア部(枠部)21と、複数の個別電極材24bと、キャリア部と個別抵抗体を連結する連結部23dを形成する。個別電極材24bも個別中間電極材25bも個別抵抗体22bと同一の四角形状のパターン形状をなしているが、板材の材料および厚さが異なっている。なお、中間電極板材20dは後に電極12の一部となるため、電極板材20eと同一金属材にすることが好ましい。
【0035】
そして、図6(a)(b)(c)に示すように、パターン形成した抵抗板材20cの上下両面に、パターン形成した中間電極板材20dを介在させ、パターン形成した電極板材20eを重ね、位置決め孔をピンにより位置合わせして積層し、圧力および熱を加えて圧接により接合する。そして、抵抗板材20cの連結部23c、中間電極板材20dの連結部23e、および電極板材20eの連結部23dを切断して除去することで、図1(d)に示す個々の抵抗器10dを形成する。
【0036】
従って、連結部23c、23d、23eの切断除去により、個別抵抗体22bが角形の抵抗体11Aとなり、個別電極材24bが角形の電極12となり、突部25cを備えた個別中間電極材25bが突部14を備えた角形の中間電極12Aとなる。突部14は電圧検出端子として用いるためのもので、抵抗体11Aの両端に生じる電圧を直近位置で検出することができる。
【0037】
次に、図7Aから7Cに係る本発明の第4実施例の製造工程について説明する。まず、図7Aに示すように、抵抗板材20fを準備し、これをパターニングすることで、長い貫通孔Eを形成する。従って、抵抗板材20fの外周に枠部(キャリア部)21が形成され、長い貫通孔Eによって仕切られた長い角板状の抵抗体22Sが形成される。そして、図7Bに示すように、電極板材20gを準備し、これをパターニングすることで、抵抗板材20fと同じ位置に長い貫通孔Eを形成する。従って、電極板材20gの外周に枠部(キャリア部)21が形成され、長い貫通孔Eによって仕切られた長い角柱状の電極材24Sが形成される。
【0038】
次に、図7C(a)(b)(c)に示すように、抵抗板材20fの上下両面に電極板材20gを位置合わせして積層し、圧力および熱を加えて圧接により接合する。これにより、長い貫通孔Eによって仕切られた長い角板状の抵抗体22Sとその両側に接合した長い角柱状の電極材24Sからなる積層体が形成される。そして、この積層体を切断線C(図7C(b)参照)に沿ってダイシング等で切断することで、図7C(d)に示す抵抗器10eが得られる。抵抗器10eは、角形の抵抗体11Aとその両側に配置した角形の電極12,12からなる。この実施例において連結部は部位として明確に区別されないが、ダイシング等で切断される部位が連結部として理解され、また枠部21と接する部位が連結部として理解される。
【0039】
次に、図8に係る本発明の第5実施例の製造工程について説明する。この製造工程は前述した第1実施例の変形例であり、抵抗板材20aの個別抵抗体22の上下両面に、断面四角形状の角形電極材24dを個別に(パターン形成した板材を用いることなく)、圧接等により接合するものである。
【0040】
すなわち、前述したように、抵抗板材20aは、キャリア部21と、複数の個別抵抗体22と、キャリア部と個別抵抗体を連結する連結部23aを備える。そして、個別抵抗体22の上面と下面に、単体の電極材24dを圧接等により接合し、連結部23aを切断する工程により、抵抗器10aが完成する。従って、個別電極材24と単体の電極材24dを同一とすることで、抵抗器10a(図1(a)参照)は第1実施例により製作されたものと同一のものが得られる。
【0041】
次に、図9に係る本発明の第6実施例の製造工程について説明する。第1から第5実施例では、1枚の抵抗板材を準備し、これに穴あけ加工をして、キャリア部と、複数の個別抵抗体と、キャリア部と個別抵抗体を連結する連結部を形成し、2枚の電極材を準備し、これを抵抗板材の個別抵抗体の上面と下面に、それぞれ接合していた。しかしながら、抵抗板材および電極板材は厚くなるに従い、パターニングによる穴あけ加工が難しくなるという問題がある。
【0042】
そこで、本実施例では、抵抗板材および電極板材を何層にも分けて積層した積層抵抗板材および積層電極板材を用いている。何層にも分けて積層することで、一層当たりの板材厚さを薄くでき、これによりパターニングが容易になるというメリットが生じる。特に、連結部は後で切断除去し易い厚さに制御する必要があるが、層数を分けることで、この制御が不要となる。また、抵抗板材の層数によって抵抗特性の調整が可能となるメリットも生じる。
【0043】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、抵抗体として金属材からなる抵抗材料を用いたシャント抵抗器の製造に好適に利用可能である。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9