特許第6294076号(P6294076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6294076
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】多量体ペプチド
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20180305BHJP
   A61K 39/145 20060101ALI20180305BHJP
   C07K 14/11 20060101ALI20180305BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20180305BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20180305BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20180305BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20180305BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   A61K39/145
   C07K14/11
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   G01N33/543 545A
【請求項の数】13
【全頁数】67
(21)【出願番号】特願2013-547811(P2013-547811)
(86)(22)【出願日】2012年1月6日
(65)【公表番号】特表2014-509838(P2014-509838A)
(43)【公表日】2014年4月24日
(86)【国際出願番号】DK2012050010
(87)【国際公開番号】WO2012092934
(87)【国際公開日】20120712
【審査請求日】2014年12月15日
【審判番号】不服2016-16559(P2016-16559/J1)
【審判請求日】2016年11月4日
(31)【優先権主張番号】11150323.1
(32)【優先日】2011年1月6日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/475,988
(32)【優先日】2011年4月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512003825
【氏名又は名称】ビオノール イミュノ エーエス
【氏名又は名称原語表記】BIONOR IMMUNO AS
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】ランゲ,エイナー トネス
(72)【発明者】
【氏名】グロンヴォルド,マハ ソメルフェルト
(72)【発明者】
【氏名】ソレンセン,ビージャー
(72)【発明者】
【氏名】ラウィッツ,カロリーナ
【合議体】
【審判長】 大宅 郁治
【審判官】 中島 庸子
【審判官】 高堀 栄二
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/000962(WO,A2)
【文献】 特開平1−301699(JP,A)
【文献】 特表平9−505301(JP,A)
【文献】 特表2003−522961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C12N 15/00-15/90
C07K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】
の、単離された免疫原性二量体ペプチドであって、配列番号121の配列中のC10と配列番号147の配列中のK2と連結がチオエーテル結合を介する連結である、抗HIV免疫応答を惹起することができる免疫原性ペプチド。
【請求項2】
単量体ペプチドのN又はC末端がアミド化又はアセチル化により修飾されている、請求項に記載の単離された免疫原性二量体ペプチド。
【請求項3】
単量体ペプチドのC末端がアミドである、請求項1又は2に記載の単離された免疫原性二量体ペプチド。
【請求項4】
式:
【化2】
(式中、単量体ペプチドはC(2-オキソ-エチル)10とK2との間のチオエーテル結合を介して連結している)
の、請求項1に記載の単離された免疫原性二量体ペプチド。
【請求項5】
トリフルオロ酢酸塩の形態である、請求項1〜のいずれか1項に記載の単離された免疫原性二量体ペプチド。
【請求項6】
配列GAKRRVVGGCGGAKRRVVQREKRAGEREKRAからなる保護ペプチドモノマーと配列GK(ブロモアセチル)GGIEEEGGRDRDRGGQDRDRからなる保護ペプチドモノマー(ここで、両保護ペプチドモノマーのC末端はアミドである)との反応を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の免疫原性二量体ペプチドの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の免疫原性二量体ペプチドを含んでなる組成物。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載の免疫原性二量体ペプチドを、医薬的に許容し得る希釈剤又はビヒクル及び随意に免疫学的アジュバントとの組合せで含んでなる免疫原性組成物。
【請求項9】
ワクチン組成物の形態である請求項に記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
注射可能組成物の形態である請求項に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
インビトロ診断アッセイで使用するための請求項1〜5のいずれか1項に記載の免疫原性二量体ペプチド。
【請求項12】
免疫リコール応答の評価方法で使用するための請求項1〜5のいずれか1項に記載の免疫原性二量体ペプチド。
【請求項13】
ワクチン治療を受けた患者から得た末梢血単球細胞(PBMC)サンプルを請求項1〜5のいずれか1項に記載の免疫原性二量体ペプチドで刺激することを含んでなり、該ワクチンの免疫原性を、PBMCサンプルにおけるエピトープ特異的CTL又はHTLの存在により示す、ワクチン効力の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、例えばHCV、HIV、CMV及びインフルエンザ感染を含む感染性疾患に関連する病原体並びに自己免疫疾患に関連する抗原への感染の治療、診断及び予後における、体液性又はB細胞免疫を刺激するための新規ペプチド及び方法に関する。本発明は更に、例えば前記疾患の治療及び診断において、体液性又はB細胞免疫の刺激に有用なペプチドを同定し提供する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ワクチン接種は、感染に先立って特定病原体に対する免疫応答を刺激することを目的とする。個体が当該病原体に曝されると、感染の確立を防止するメモリー応答が誘引される。したがって、ワクチンは、生得免疫とは異なり、長期持続性であり記憶を有する適応免疫応答を刺激する。適応免疫系には2つの主要な武器が存在する;ウイルス粒子に結合することができる抗体及び感染を中和することができる或る種の抗体の発生が関与する体液性免疫と、HLAクラスIと関連してウイルスエピトープを露出する感染細胞を殺傷し、こうして感染細胞を消滅させる細胞傷害性T-細胞の発生を導く細胞媒介免疫。
【0003】
成功したワクチン接種キャンペーンのおかげで消滅した唯一の疾患は、天然痘である。ポリオ撲滅キャンペーンが現在進行中である。ワクチン接種により消滅させることができるウイルス感染の特徴は、それらが安定なウイルス抗原を有する(すなわち、変異頻度が非常に低く、サブタイプがほとんどない)ウイルスによって引き起こされ、他の動物種に感染貯蔵庫がなく、一旦感染が終了した身体で生き残れず、そしてワクチン接種が長期持続性免疫を導くことである。ポリオ及び麻疹のようなウイルスはこれらの基準を満たす一方、タンパク質配列を変化させるインフルエンザウイルス、HCV及びHIVのようなウイルスは満たさない。これら疾患用のワクチンの開発に新たな代替のアプローチが必要とされるのはこの理由からである。
【0004】
C型肝炎は、C型肝炎ウイルス(HCV)感染から生じる肝臓疾患である。この疾患は、重篤度が、数週間持続する軽度の病的状態から生涯にわたる重度の病的状態までの範囲であり得る。C型肝炎は血液を介して伝播する;伝染の最も一般的な形態は、薬剤の注入に使用した注射針その他の機器の共有による。感染は「急性」又は「慢性」のいずれかであり得る。急性HCV感染は、C型肝炎ウイルスへの曝露後最初の6ヶ月以内に生じる無症状性で短期の病的状態である。ほとんどの人々について、急性感染は、長期の合併症及び死さえももたらすことがある慢性感染に至る。
世界中で、世界人口の約3%に相当する170百万人がHCVに感染していると推定される。毎年約3〜4百万人が感染する;これら新たな感染患者の80%が慢性感染に進行すると推定される。
【0005】
HCVは、感染細胞の細胞質で複製する、フラビウイルス科ヘパシウイルス属に属する、直径約50nmの、エンベロープを有するプラス鎖リボ核酸(RNA)ウイルスである。HCVについて唯一の既知の感染貯蔵庫はヒトであるが、実験的にこのウイルスをチンパンジーに伝染させた。HCVの天然の標的は肝細胞であり、B-リンパ球もその可能性が高い。2008年時点で、6つの異なる遺伝子型及び100を超えるウイルスサブタイプが知られている。複製は、較正機能を欠くRNA-依存性RNAポリメラーゼにより起こり、このことにより非常に高率の変異が生じる。エンベロープタンパク質をコードするHCVゲノムの超可変領域での急速な変異により、ウイルスは、宿主による免疫監視から逃れることができる。結果として、ほとんどのHCV-感染者は慢性感染に進行する。
6つのHCV遺伝子型は異なる地形学的分布を有する。初期ステージの疾患は、一般に、無症状である;慢性感染患者の多数は、最終的に、肝線維症及び肝硬変のような合併症に進行し、1〜5%の症例では、肝細胞ガンに進行する。
HCVは、世界中の非A非B型肝炎の主要な原因である。急性HCV感染は、頻繁に、慢性肝炎及び末期の肝硬変に至る。HCV慢性キャリアの20%までが約20年の期間にわたって肝硬変を発症する可能性があり、肝硬変を有するHCV慢性キャリアの1〜5%が肝臓ガンを発症するリスクにあると推定される。
【0006】
インフルエンザは、世界中の死亡及び罹患の重要な原因のままである。世界保健機関(WHO)は、年に3〜5百万人が季節的流行性疾患に罹患し、250,000〜500,000人が死亡していると推定している。インフルエンザは、マイナス鎖RNAウイルスであるオルソミクソウイルス科のウイルスにより引き起こされる。インフルエンザウイルスは3つのタイプ、A型、B型及びC型として存在し、そのうちA型のみがパンデミックに関係する。A型ウイルスはヒト及び動物(特にトリであるがブタのような他の哺乳動物も)の両方で見出される。A型ウイルスは、更に、ウイルス表面タンパク質の種類及び組合せに応じてサブタイプに分けられる。2009年には、多くのサブタイプのうち、インフルエンザA(H1N1)及びA(H3N2)サブタイプがヒトに広まった。インフルエンザA及びBは季節ワクチンに含まれる一方、インフルエンザCは稀にしか発生しないので季節ワクチンには含まれない。B型ウイルスはヒト特異的であり、C型ウイルスは非常に軽度の疾患を引き起こす。オルソミクソウイルスのゲノムはセグメント化されている。A型及びB型インフルエンザウイルスは8セグメントを有する一方、C型は7セグメントを有する。パンデミックは、2つの異なるA型ウイルスが同一細胞に感染したときに遺伝子セグメントの再結合(re-assortment)の結果として起こり得る。人々には、この新規の再結合ウイルスに対する免疫はない。20世紀には3回のパンデミックが発生した:1918年の「スペインインフルエンザ」、1957年の「アジアインフルエンザ」、及び1968年の「香港インフルエンザ」。1918年のパンデミックでは、世界中で推定40〜50百万人が死亡したとされる。その後のパンデミックは、遥かにより軽度であり、1957年には推定2百万人が死亡し、1968年には推定1百万人が死亡したとされる。2009年6月に、WHOは、インフルエンザウイルスH1N1(ブタインフルエンザ)によるパンデミックを宣言し、2010年8月に終結宣言をした。
【0007】
ヒトパピローマウイルスは、皮膚及び粘膜に感染するパピローマウイルス科DNAウイルス群で構成されている。100を超える種々の同定されたサブタイプに由来する2つの群は、医学的関心事の主要な原因である:いぼ(良性及び性器いぼの両方)を引き起こすものと、子宮頸ガンを生じることがある12の「ハイリスク」サブタイプ群。後者の群は、ほとんど全てのタイプの子宮頸ガンの発症における一要因と考えられている。世界中で、子宮頸ガンは、女性において2番目に多い悪性腫瘍のままであり、発展途上国では女性のガン関連死亡の主原因である。HPV 16及び18が、主に、子宮頸ガンと関連付けられている;しかし、このウイルスはまた、男性及び女性の両方における咽喉ガンの原因でもある。HPVは接触により伝染し、擦過傷を通して皮膚に侵入する。初期タンパク質のみが発現する不稔感染は、ガン発症に関連付けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明の目的
対象者において体液性免疫を刺激する免疫原として使用し得るペプチド(二量体のような多量体ペプチドを含む)を提供することが本発明の実施形態の1つの目的である。
詳細には、Bリンパ球系統の細胞(B-細胞)を刺激して後記抗原に対する抗体を分泌させる抗原のエピトープを含んでなるペプチド(二量体のような多量体ペプチドを含む)を提供することが本発明の実施形態の1つの目的である。
【0009】
本発明によるペプチドが提供するB-細胞活性化は、T細胞-非依存性及びT細胞-依存性の両方であり得る。したがって、本発明によるペプチド又はその部分は、B-細胞レセプターと相互作用して、Tヘルパー細胞依存性又は非依存性の様式のいずれかでB-細胞を活性化し、特異抗体の産生を導き得る。更に、ペプチドは、抗原提示細胞(マクロファージ及び/又は樹状細胞)により取り込まれ得、その結果、該ペプチド内のエピトープが正確にプロセッシングされT-リンパ球(例えば、ヘルパーT細胞)に提示される(Tリンパ球は、次に、B細胞を活性化して効果的な免疫応答を刺激することを助ける)。ペプチドはまた、抗原提示細胞としても作用し得る活性化B-細胞により取り込まれ得る。ペプチドは、B-細胞レセプターを通じてB-細胞と相互作用し、その後当該細胞中に内在化される。ペプチド内のエピトープは、プロセッシングされT-リンパ球(例えば、ヘルパー細胞)に提示される。
【0010】
しかし、本発明の幾つかの重要な観点では、本発明によるペプチドは、効果的に透過せず抗原提示細胞に取り込まれないようにデザインされる。したがって、本発明のこれら観点では、本発明によるペプチドは、細胞表面でB-細胞レセプターを介する相互作用によりB-細胞活性化を提供し得る。持続性のB-細胞刺激を提供するためには、本発明によるペプチドは、対象者で効果的な体液性免疫を持続させることができるCD4+ T-ヘルパー細胞を刺激するように、抗原提示細胞に取り込まれ得るヘルパーエピトープを含んでなるようにデザインされることが好ましいことを理解すべきである。
更に、抗原として使用し得るペプチドを提供すること、対象者において抗原に対する免疫応答を誘導する免疫原性組成物及び方法を提供することが本発明の実施形態の1つの目的である。
更に、診断アッセイにおいて標的として働くことができる抗原として使用し得るペプチドを提供することが本発明の実施形態の1つの目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の概要
本発明は、含んでいる抗原に対する体液性免疫応答の効率的活性化を促進するペプチドデザインに関する。
本発明者は、ペプチド構築物−特定のパターン又は骨格デザインを有するアミノ酸配列、具体的には、このデザインのペプチドの二量体のような多量体−が、これらペプチドの投与に応答して、対象者で体液性免疫応答を効果的に惹起する能力を有することを見出した。
本発明によるペプチド構築物は、細胞表面に付着又は結合することができるようにデザインされる。次いで、ペプチド構築物又はその部分は、抗原提示細胞(例えば、マクロファージ及び樹状細胞)により取り込まれ、ヘルパーT-細胞を刺激して、効率的で長期持続性のT-細胞依存性B-細胞活性化を惹起し得る。或いは、B-細胞自体がB-細胞を活性化する援助の誘導を提供し得る。
したがって、本発明によるペプチドは、細胞を透過し得、免疫原的有効量のペプチド又はマクロファージ及び樹状細胞によって提示され得る該ペプチドのフラグメントを細胞に搭載(load)するために使用し得る。したがって、これらペプチド構築物は、細胞傷害性T-リンパ球(CTL)免疫応答及び/又は体液性免疫応答の両方を惹起し得る。
【0012】
そうであるので、第1の観点では、本発明は、下記の構造:
X1-X2-X3-X4-X5-X6 (式I)
(式中、X1、X3及び任意成分X5は各々独立して、グリシン、アルギニン、ノルロイシン、グルタミン、セリン、リジン、トリプトファン、システイン又はそれらの誘導体から独立して選択される1、2、3、4又は5アミノ酸の直鎖配列を規定し;X2、X4及び任意成分X6は各々独立して、各々が特定の天然抗原に対して50%を超える配列同一性を有する5〜17アミノ酸の直鎖配列を規定する)
を有する、60を超えないアミノ酸からなる単離された単量体ペプチドに関する。
【0013】
第2の観点では、本発明は、2以上の単量体ペプチドを含んでなり、各単量体ペプチドが独立して、下記の構造:
X1-X2-X3-X4-X5-X6 (式I)
(式中、X1、X3及び任意成分X5は各々独立して、グリシン、アルギニン、ノルロイシン、グルタミン、セリン、リジン、トリプトファン、システイン又はそれらの誘導体から独立して選択される1、2、3、4又は5アミノ酸の直鎖配列を規定し;X2、X4及び任意成分X6は各々独立して、各々が特定の天然抗原に対して50%を超える配列同一性を有する5〜17アミノ酸の直鎖配列を規定する)
を有する60を超えないアミノ酸からなり、該単量体ペプチドが1以上の分子間結合により共有結合されている、単離された多量体ペプチドに関する。
【0014】
第3の観点では、本発明は、下記の構造:
X1-X2-X3-X4-X5-X6 (式I)
(式中、X1、X3及び任意成分X5は各々独立して、グリシン、アルギニン、ノルロイシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、セリン、リジン、トリプトファン、システイン、オルニチン、ジアミノプロピオン酸又はそれらの誘導体から独立して選択される1、2、3、4又は5アミノ酸の直鎖配列を規定し;X2、X4及び任意成分X6は各々独立して、各々が特定の天然抗原に対して50%以上の配列同一性を有する5〜17アミノ酸の直鎖配列を規定する)
を有する、60を超えないアミノ酸からなる単離された単量体ペプチドに関する。
【0015】
更なる観点では、本発明は、2以上の単量体ペプチドを含んでなり、各単量体ペプチドが独立して、下記の構造:
X1-X2-X3-X4-X5-X6 (式I)
(式中、X1、X3及び任意成分X5は各々独立して、グリシン、アルギニン、ノルロイシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、セリン、リジン、トリプトファン、システイン、オルニチン、ジアミノプロピオン酸又はそれらの誘導体から独立して選択される1、2、3、4又は5アミノ酸の直鎖配列を規定し;X2、X4及び任意成分X6は各々独立して、各々が特定の天然抗原に対して50%以上の配列同一性を有する5〜17アミノ酸の直鎖配列を規定する)
を有する60を超えないアミノ酸からなり、該単量体ペプチドが1以上の分子間結合により共有結合されている、単離された多量体ペプチドに関する。
【0016】
更なる観点では、本発明は、本発明による単量体ペプチド及び本発明による単離された多量体ペプチドから選択される2以上の化合物を含んでなる組成物に関する。
更なる観点では、本発明は、対象者において体液性免疫応答を誘導するための、本発明による単量体ペプチド及び本発明による単離された多量体ペプチドから選択されるペプチドの使用に関する。
更なる観点では、本発明は、本発明によるペプチドをコードする単離された核酸又はポリヌクレオチドに関する。
更なる観点では、本発明は、本発明によるペプチドをコードする核酸又はポリヌクレオチドを含んでなるベクターに関する。
更なる観点では、本発明は、本発明によるペプチドをコードする核酸又はポリヌクレオチドを含むベクターを含んでなる宿主細胞に関する。
【0017】
更なる観点では、本発明は、本発明による単量体ペプチド、単離された多量体ペプチド、ペプチド組成物、核酸若しくはポリヌクレオチド、又はベクターを少なくとも1つ、医薬的に許容され得る希釈剤若しくはビヒクルと、随意に免疫学的アジュバントとも組み合わせて含んでなる免疫原性組成物に関する。更なる観点では、この免疫原性組成物はワクチン組成物の形態である。
【0018】
更なる観点では、本発明は、本発明による単量体ペプチド、単離された多量体ペプチド、ペプチド組成物、核酸若しくはポリヌクレオチド、又はベクター、又は組成物を少なくとも1つ投与することを含んでなる、対象者において抗原に対する免疫応答を誘導する方法に関する。
【0019】
更なる観点では、本発明は、有効量の、本発明による単量体ペプチド、単離された多量体ペプチド、ペプチド組成物、核酸若しくはポリヌクレオチド、又はベクター、又は組成物を少なくとも1つ投与することを含んでなる、感染因子のような疾患抗原の病理学的影響を、該因子に感染したか又は該疾患抗原により引き起こされる疾患を有する対象者において減少及び/又は遅延させる方法に関する。
【0020】
更なる観点では、本発明は、医薬として使用するための、又は感染因子のような疾患抗原の病理学的影響を、該因子に感染したか若しくは該疾患抗原により引き起こされる疾患を有する対象者において治療するための本発明によるペプチドに関する。
更なる観点では、本発明は、診断アッセイにおいて使用するための本発明によるペプチドに関する。更なる観点では、本発明は、インビトロアッセイにおいて使用するための本発明によるペプチドに関する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な開示
定義
「1(つ)の(one)」、「a」又は「an」のような用語を本開示で使用する場合、それらは、特に示さない限り、「少なくとも1つ」又は「1以上」を意味する。更に、用語「含んでなる」は「含む」を意味するものとし、よって明示されたもの以外のその他の構成要素、特徴、条件又は工程の存在を許容する。
本明細書で使用する場合、「多量体ペプチド」又は「オリゴマーペプチド」とは、好ましくはリンカーの1以上の化学結合により相互接続されたか又は組み立てられた、2以上の異なる又は同一の直鎖ペプチド配列又はサブユニットのアセンブリをいう。好ましくは、ペプチド配列は1以上の共有結合、例えば、2つのCys残基間の分子間ジスルフィド(S-S)結合、N-ε-メチル化Lys側鎖とAsp又はGlu残基の側鎖との間のメチル化ペプチド結合、オキシム結合又はチオエーテル結合のような1つの共有結合により相互接続される。この用語には、2つの直鎖ペプチド配列の化学的連結により適切に形成された二量体ペプチドが含まれる。用語「多量体ペプチド」には、更に、2、3、4、5、6、7、8、9又は10の異なる又は同一のペプチド配列のアセンブリが含まれる。幾つかの実施形態では、多量体ペプチドは二量体ペプチドである。
【0022】
本明細書で使用する場合、「リンカー」とは、2以上の異なる又は同一の直鎖ペプチド配列又はサブユニットの多量体ペプチドへの組立てに適切な任意の化合物である。この用語には、ペプチド化学で有用であることが判明している任意のリンカーが含まれる。多量体ペプチドは直鎖様式での標準ペプチド結合により組み立てられるか又は接続され得るので、用語 リンカー は、「ペプチドスペーサー」(「スペーサー」とも呼ぶ)をも含む。
幾つかの実施形態では、リンカーはペプチド配列ではない。幾つかの実施形態では、リンカーは分岐ペプチド配列ではない。
幾つかの実施形態では、リンカー自体は、天然抗原に由来するか又はこれと同一であるペプチド配列を含有しない。
【0023】
幾つかの実施形態では、リンカーは、9kDa未満のような、8kDa未満のような、7kDa未満のような、6kDa未満のような、5kDa未満のような、4kDa未満のような、3kDa未満のような、2kDa未満のような、1.5kDa未満のような、1kDa未満のような、0.5kDa未満のような、0.2kDa未満のような、10kDa未満の分子量を有する。幾つかの実施形態では、多量体ペプチドが二量体ペプチドであれば、リンカーは、2つのペプチド配列を、第1のペプチド中の或る末端システインから第2のペプチド中の第2の末端システインへ連結しているものではない。
幾つかの実施形態では、リンカーは、2以上のペプチド配列を、いずれか一方のペプチド中の末端システインを介して連結しているものではない。
幾つかの実施形態では、リンカーはシステイン残基から連結しているものではない。
【0024】
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、同一ペプチド中のX1、X3及び任意成分X5は、配列が同じでない。
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、同一ペプチド中のX2、X4及び任意成分X6は、配列が同じでない。
幾つかの実施形態では、本発明による多量体ペプチドにおいて、1つのペプチド中のX1、X3及び任意成分X5は、他のいずれのペプチド中のX1、X3及び任意成分X5とも配列が同じでない。
幾つかの実施形態では、本発明による多量体ペプチドにおいて、1つのペプチド中のX2、X4及び任意成分X6は、他のいずれのペプチド中のX2、X4及び任意成分X6とも配列が同じでない。
【0025】
「HIV」は、一般には、ヒト免疫不全ウイルスIを指称する。
「HIV疾患」は、しばしばインフルエンザ様感染として顕在化する急性HIV感染並びに早期及び中間期ステージの症候性疾患(皮疹、疲労、寝汗、若干の体重減少、口の潰瘍並びに皮膚及び爪の真菌感染のような幾つかの非特徴的症状を有する)を含む幾つかのステージから構成される。ほとんどのHIV感染者は、これらのような軽度症状を、より重篤な病的状態を発症する前に経験する。一般には、最初の軽度症状が現れるには5〜7年かかると考えられている。HIV疾患が進行するにつれ、未だAIDS(HIV疾患の後期ステージ)と診断されなくとも病的状態になり得る個体もある(下記参照)。典型的な問題として、口又は膣の慢性鵞口瘡(真菌発疹又は斑)、口(口唇ヘルペス)又は生殖器の再発性ヘルペス水疱、持続的発熱、持続性下痢及び顕著な体重減少が挙げられる。「AIDS」は、後期ステージのHIV疾患であり、免疫系の有効性を進行性に低下させ、個体を日和見感染及び腫瘍に感染し易くする状態である。
【0026】
本明細書で使用する用語「細胞透過性ペプチド」とは、外見上エネルギー非依存的に、真核生物及び/又は原核生物細胞の形質膜を横切って、細胞質、核、リソソーム、小胞体、ゴルジ装置、ミトコンドリア及び/又は葉緑体のような細胞質区画及び/又は核区画中に転位する能力を有するペプチドをいう。形質膜を横切って転位する「細胞透過性ペプチド」のこの能力は、非侵襲性、エネルギー非依存性、非飽和性及び/又はレセプター非依存性であり得る。1つの実施形態では、用語「細胞透過性ペプチド」とは、実施例に提供されるアッセイによって決定されるように、形質膜を横切って転位することが証明されているペプチドをいう。本明細書で使用する場合、用語「非細胞透過性ペプチド」とは、細胞透過性ペプチドではないペプチドをいう。
【0027】
本明細書で使用する(ウイルスなどのような)供給源に由来するペプチドに言及する場合、用語「抗原に由来する」は、当該供給源から得られた(例えば、単離された、精製された、など)ペプチドをいうものとする。通常、該ペプチドは、元の供給源から適合又は改変されている。好ましくは、ペプチドは、当該供給源の天然型ペプチドと本質的に同一であるように遺伝子操作及び/又は化学合成されていてもよい。この用語には、既知の天然型ペプチド配列のバリアント(例えば、天然型ペプチド配列の1、2、3、4、5、6又は7アミノ酸が他の任意のアミノ酸で置換されている(例えば保存的に置換されている)ペプチド配列)の使用が含まれる。或いは、1、2、3、4、5、6又は7アミノ酸が、天然型ペプチド配列から除去されているか又は天然型ペプチド配列に付加されている。したがって、幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドは、抗原に由来する5〜17アミノ酸の配列として規定される配列X2及び/又はX4及び/又はX6を含んでなり、ここで、抗原のペプチド配列は、抗原に対して1、2、3、4、5、6又は7の置換、付加又は欠失、例えば、X2及び/又はX4及び/又はX6のアミノ酸配列のN-又はC-末端におけるアルギニンの付加を含んでなる。本発明によるアミノ酸配列に使用するアミノ酸は、L-体及び/又はD-体の両方であり得る。L-体及びD-体の両方を同じペプチド配列内で異なるアミノ酸について使用し得ると理解すべきである。幾つかの実施形態では、ペプチド配列内のアミノ酸は、天然アミノ酸のようなL-体である。任意の既知の抗原を本発明による構築物で使用し得ると理解すべきである。
【0028】
幾つかの具体的実施形態では、本発明によるアミノ酸配列のN-末端における最初の1、2又は3アミノ酸はD-体である。N-末端切り取り(trimming)及びそれによるペプチドの分解は、これら細胞透過性ペプチドのN-末端にD-体のアミノ酸を有することにより幾らか遅延すると推定される。或いは、又は幾つかの実施形態では、本発明によるアミノ酸配列のN-末端における最初の1、2又は3アミノ酸は、β又はγ型のアミノ酸である。βアミノ酸は、アミノ基が20の標準的な天然アミノ酸中のようにα炭素ではなく、むしろβ炭素に結合している。アミノ酸残基を表す文字の後の下付き大文字Dは、本明細書では、D体であると特定されたアミノ酸を指称し、例えばWDとはD体のトリプトファンをいう。アミノ酸残基を表す文字の後の下付き大文字Lは、本明細書では、L体であると特定されたアミノ酸を指称し、例えばWLとはL体のトリプトファンをいう。
或いは、本発明によるアミノ酸配列のN-末端における最初の1、2又は3アミノ酸は、フッ素の組込みにより改変され得る。或いは、環状アミノ酸又は他の適切な非天然アミノ酸が使用される。
【0029】
多量体ペプチドについて、1以上(例えば、全て)のペプチド鎖は、アミノ酸配列のN-末端に改変アミノ酸を有し得ることを理解すべきである。2以上のペプチド鎖を連結するリンカーは、特に1以上のペプチド鎖がアミノ酸配列のN-末端に改変アミノ酸を有する場合、ペプチド鎖内のいずれかに位置し得る。リンカーはまた、ペプチドを分解(これは、しばしば、N-末端からの分解である)から保護するために働き得る。したがって、リンカーは、一方又は両方のペプチド鎖が分解から保護されている場合、より自由に位置し得る。
ペプチドの「バリアント」又は「アナログ」とは、参照ペプチドと、代表的には天然型又は「親」ポリペプチドと実質的に同一であるアミノ酸配列を有するペプチドをいう。ペプチドバリアントは、天然型アミノ酸配列内の或る位置に1以上のアミノ酸置換、欠失及び/又は挿入を有していてもよい。
【0030】
「保存的」アミノ酸置換は、アミノ酸残基が類似の物理化学的性質の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当該分野において公知であり、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分枝側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。保存的アミノ酸置換の特定の形態は、遺伝子コードによってコードされる通常の20アミノ酸ではないアミノ酸での置換を含む。本発明の好適な実施形態は合成ペプチドの使用を包含するので、本明細書中に開示されたペプチドにおいてこのような「天然に存在しない」アミノ酸残基を提供することに問題はなく、よってアミノ酸残基の側鎖中の天然の飽和炭素鎖を、より短い又はより長い飽和炭素鎖と交換することが可能である−例えば、リジンは側鎖-(CH2)nNH3(式中、nは4ではない)を有するアミノ酸で置換し得、アルギニンは側鎖(CH2)nNHC(=NH2)NH2(式中、nは3ではない)を有するアミノ酸で置換し得る、など。同様に、酸性アミノ酸であるアスパラギン酸及びグルタミン酸は側鎖-(CH2)nCOOH(式中、n>2)を有するアミノ酸残基で置換し得る。
【0031】
2つのアミノ酸配列に関して、用語「実質的に同一」は、該両配列が、最適に整列されたとき(例えばデフォルトのギャップウェイトを用いるプログラムGAP又はBESTFITにより)、少なくとも約50、少なくとも約60、少なくとも約70、少なくとも約80、少なくとも約90、少なくとも約95、少なくとも約98又は少なくとも約99パーセントの配列同一性を有することを意味する。幾つかの実施形態において、2つの異なるペプチド配列間の配列同一性を測定する場合、2つのペプチド配列を整列させるときには、配列同一性の値に影響しない1又は2アミノ酸のギャップが許容される。幾つかの実施形態において、同一でない残基位置は僅か1つの保存的アミノ酸置換でのみ異なる。配列同一性は、代表的には、配列分析ソフトウェアを使用して測定する。タンパク質分析ソフトウェアは、種々の置換、欠失及びその他の改変(保存的アミノ酸置換を含む)に割り当てられた類似性の尺度を使用して類似する配列を適合させる。例えば、公衆に利用可能なGCGソフトウェアは、デフォルトのパラメータで使用して、密接に関連するポリペプチド(例えば、異なる生物種からの相同ポリペプチド)間又は野生型タンパク質とそのムテインとの間の配列相同性又は配列同一性を決定することができる「Gap」及び「BestFit」のようなプログラムを含む。例えば、GCG Version 6.1を参照。ポリペプチド配列はまた、デフォルト又は推奨されるパラメータを適用してFASTA又はClustalWを用いて比較することができる。GCG Version 6.1.中のプログラムFASTA(例えば、FASTA2及びFASTA3)は、クエリー配列とサーチ配列との間で最良のオーバーラップ領域の整列(alignment)及びパーセント配列同一性を提供する(Pearson, Methods Enzymol. 1990;183:63-98;Pearson, Methods Mol. Biol. 2000;132:185-219)。配列を種々の生物からの多数の配列を含むデータベースと比較するときに好適な別のアルゴリズムは、デフォルトパラメータを用いるコンピュータプログラムBLAST、特にblastpである。例えば、Altschulら,J. Mol. Biol. 1990;215:403-410;Altschulら,Nucleic Acids Res. 1997;25:3389-402(1997)(参照により本明細書中に組み込む)を参照。2つの実質的に同一のアミノ酸配列中の「対応する」アミノ酸位置は、本明細書で言及したタンパク質分析ソフトウェアのいずれかにより(代表的には、デフォルトパラメータを用いて)整列させたときの位置である。
【0032】
「単離(した)」分子は、それが見出される組成物中で、それが属する分子クラスに関して優勢な種である分子である(すなわち、該分子は、該組成物中で当該分子タイプの少なくとも約50%を構成し、代表的には該組成物中の当該分子種(例えばペプチド)の少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又はそれ以上を構成する)。通常、特異的ペプチド配列の組成物は、該組成物中に存在する全てのペプチド種との関連ではペプチドに関して又は提案する使用との関連では少なくとも実質的に活性なペプチド種に関して、98%〜99%の同質性を示す。
本明細書で使用する場合、用語「直鎖配列」とは、標準的なN-末端→C-末端方向で、標準的なペプチド結合により接続されたアミノ酸の具体的配列をいう。ペプチドはペプチド結合のみを含み得る。しかし、幾つかの実施形態において、ペプチド配列の第2の部分が、アミノ酸配列の第1の部分における末端アミノ酸の側鎖に結合し、該側鎖から続いていてもよい。また、この用語は、配列内(例えばX1、X2、X3、X4及び/又はX5内)のアミノ酸が、ペプチド配列内の遠位(例えばX1、X2、X3、X4及び/又はX5内の遠位)で別のアミノ酸と、例えば側鎖により、接続されている可能性を排除しない。
【0033】
本発明に関して、「治療」又は「治療する(こと)」とは、文脈と矛盾しない限り、疾患又は障害の1以上の症状又は臨床的に関連する症状発現を予防し、緩和させ、管理し(managing)、治癒させ又は減少させることをいう。例えば、疾患又は障害の症状も臨床的に関連する症状発現も同定されていない患者の「治療」は、予防治療である一方、疾患又は障害の症状又は臨床的に関連する症状発現が同定されている患者の「治療」は、一般的には、予防治療を構成しない。
用語「抗原」は、免疫系の特異的認識成分(抗体、T細胞)によって認識される物質を指称する。
用語「免疫原」は、本発明に関しては、該免疫原を標的する適応免疫応答を個体において誘導し得る物質を指称するものとする。本発明との関連では、免疫原は、体液性及び/又は細胞媒介免疫応答を誘導する。換言すれば、免疫原は、免疫を誘導し得る抗原である。
【0034】
用語「エピトープ」、「抗原決定基」及び「抗原部位」は、本明細書で互換可能に使用され、抗原又は免疫原中の、抗体が認識する領域(抗体結合性エピトープの場合には、「B細胞エピトープ」としても知られる)又はエピトープがMHC分子と複合体化している場合にはT細胞レセプターが認識する領域(T細胞レセプター結合性エピトープの場合には、「T細胞エピトープ」)を指称する。
「B細胞抗原」は、B細胞が天然に認識するか又は認識するように工学的に操作され得、B細胞において免疫応答を誘引する任意の抗原(例えば、B細胞上のB細胞レセプターにより特異的に認識される抗原)を意味する。
用語「免疫原的有効量」は、当該分野における通常の意味を有する。すなわち、免疫原と免疫学的特徴を共有する病原因子と顕著に戦う(engage)免疫応答を誘導し得る該免疫原の量を意味する。
用語「ワクチン」は、免疫原を含んでなり、病的状態の発症リスクを減少させ得るか又は病的状態の治癒(又は少なくともその症状の緩和)に役立つ治療的に有効な免疫応答を誘導し得る免疫応答を誘導することができる組成物に使用される。
【0035】
用語「医薬的に許容され得る」は当該分野における通常の意味を有する。すなわち、この用語は、問題の疾患の治療時にヒトに使用される医薬の一部として受容され得る物質に使用される。よって、この用語は、事実上、治療対象者の状態を改善するというよりむしろ悪化させる高度に毒性の物質の使用を排除する。
「Tヘルパーリンパ球エピトープ」(THエピトープ)、「Tヘルパーエピトープ」又は「ヘルパーエピトープ」は、MHCクラスII分子に結合し、該MHCクラスII分子に結合した抗原提示細胞(APC)の表面に提示され得るペプチドである。「免疫学的キャリア」は、一般には、1つ又は多くのTHエピトープを含み、それと組み合わされる抗原に対する免疫応答を、Tヘルパーリンパ球を確実に活性化し増殖させることによって増大させる物質である。公知の免疫学的キャリアの例は、破傷風及びジフテリア毒素並びにキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)である。
【0036】
本発明による骨格デザインにおいて、X2、X4及びX6は、抗原に由来する5〜17アミノ酸の配列を規定する。抗原に由来するアミノ酸のこの配列は、本明細書でエピトープと呼ばれ得る。
本発明によるペプチドは、ヘルパーTリンパ球(HTL)エピトープを含んでなるHTL誘導性ペプチドであり得る。「HTL誘導性ペプチド」は、HTL応答を誘導し得るHLAクラスII結合性ペプチドである。また、本発明によるペプチドは、他の実施形態において、HTL誘導性ペプチドにあることに加えて又はHTL誘導性ペプチドであることの代わりにCTLエピトープを含んでなるCTL誘導性ペプチドであり得る。「CTL誘導性ペプチド」は、CTL応答を誘導し得るHLAクラスI結合性ペプチドである。
【0037】
他の代替の実施形態では、トリプトファン又はトリプトファン誘導体は、X1、X3又はX5により規定される配列中で使用される。任意の適切なトリプトファン誘導体が使用され得る。本明細書で使用する場合、「トリプトファン誘導体」は、非天然の改変トリプトファンアミノ酸残基を意味し、米国特許第7,232,803号に開示されたもの、例えばトリtert-ブチルトリプトファン、ジ-tert-ブチルトリプトファン、7-ベンジルオキシトリプトファン、ホモトリプトファン、5'-アミノエチルトリプトファン(RSP Amino Acids Analogues Inc, Boston, Mass., USAから側鎖Boc及びN-αFMOC誘導体として入手可能)、N-アセチルホモトリプトファン(Toronto Research)、7-ベンジルオキシトリプトファン(Toronto Research)、ホモトリプトファン(Toronto Research)及びインドール環の1-、2-、5-及び/又は7-位で置換されているトリプトファン残基(1-又は2-位が好ましい、例えば5'-ヒドロキシトリプトファン)を含む。
【0038】
用語「アミノ酸誘導体」(これは、時に、特定のアミノ酸に言及して「そ(れら)の誘導体」の文脈で使用される)は、元のアミノ酸(当該アミノ酸化合物はこのアミノ酸の誘導体である)と比較して、1以上の化学基が改変、付加又は除去されている一方で、依然としてアミン基及びカルボン酸基並びにアミノ酸の側鎖を有し、依然としてペプチド結合を形成することができるアミノ酸化合物を意味する。幾つかの実施形態では、アミノ酸誘導体は、アミノ酸の側鎖でのみ改変されている標準的なアミノ酸である。幾つかの実施形態では、アミノ酸誘導体は、Dprのような非-天然アミノ酸である。幾つかの実施形態では、アミノ酸は、化学合成されたペプチド又はポリペプチド中に組み込まれる改変部分であって、活性化後に別のペプチドと連結可能な活性化可能な基を含んでなる部分(例えば、Dpr(Ser)、Lys(Ser)又はオルニチン(Ser))である。
用語「抗体応答」とは、興味対象の抗原に結合する抗体(例えば、IgM、IgA、IgG)の産生をいう。この応答は、例えば、抗原ELISAにより血清をアッセイすることにより測定される。
【0039】
用語「アジュバント」とは、本明細書で使用する場合、抗原と一緒に又は同時に送達されるとき、当該抗原に対する免疫応答を非特異的に増強する任意の化合物をいう。例示のアジュバントとしては、水中油及び油中水アジュバント、アルミナ-ベースのアジュバント(例えば、AIOH、AIPO4など)及びMontanide ISA 720が挙げられるが、これらに限定されない。
用語「患者」及び「対象者」とは、本発明の方法を使用して治療し得る任意のヒト又は哺乳動物をいう。
本明細書で使用する場合、用語「免疫応答」とは、抗原に応答する、生物の免疫系の反応性をいう。脊椎動物では、これには、抗体産生、細胞媒介免疫の誘導及び/又は補体活性化(例えば、微生物による感染の脊椎動物免疫系による予防及び解決に関係する現象)が含まれ得る。好適な実施形態において、用語 免疫応答 は、「リンパ球増殖応答」、「サイトカイン応答」及び「抗体応答」の1つ以上を包含するが、これらに限定されない。
【0040】
ペプチド配列に言及して本明細書で使用する用語「正味電荷」は、ペプチド配列中の各個のアミノ酸の電荷の総和により表されるペプチド配列の総電荷をいう。ここで、各塩基性アミノ酸には+1の電荷が与えられ、各酸性アミノ酸には−1の電荷が与えられ、各中性アミノ酸には0の電荷が与えられる。したがって、正味電荷は荷電アミノ酸の数及び正体(identity)に依存する。
【0041】
本明細書で使用する場合、用語「塩基性アミノ酸」とは、Kice及びMarvell「Modern Principles of organic Chemsitry」(Macmillan, 1974)又はMatthews及びvan Holde「Biochemistry」Cummings Publishing Company, 1996に従って測定するときに6.3を超える(例えば7.4を超える)等電点を有する天然及び非天然の両方のアミノ酸を含む任意のアミノ酸をいう。この定義には、アルギニン、リジン、ホモアルギニン(Har)及びヒスチジン、並びにそれらの誘導体が含まれる。適切な非天然の塩基性アミノ酸は、例えば、米国特許第6,858,396号に記載されているとおりである。適切な正荷電アミノ酸には、Bachem AGから入手可能な非天然αアミノ酸が含まれ、α-アミノ-グリシン、α,γ-ジアミノ酪酸、オルニチン、α,β-ジアミノプロピオン酸、α-ジフルオロメチル-オルニチン、4-アミノ-ピペリジン-4カルボン酸、2,6-ジアミノ-4-ヘキサン酸、β-(1-ピペラジニル)-アラニン、4,5-デヒドロ-リジン、δ-ヒドロキシ-リジン、ω-ヒドロキシ-ノルアルギニン、ホモアルギニン、ω-アミノ-アルギニン、ω-メチル-アルギニン、α-メチル-ヒスチジン、2,5-ジヨード-ヒスチジン、1-メチル-ヒスチジン、3-メチル-ヒスチジン、β-(2-ピリジル)-アラニン、β-(3-ピリジル)-アラニン、β-(2-キノリル)-アラニン、3-アミノ-チロシン、4-アミノ-フェニルアラニン及びスピナシン(spinacine)が挙げられる。
【0042】
用語「中性アミノ酸」とは、本明細書で使用する場合、Kice及びMarvell「Modern Principles of organic Chemsitry」(Macmillan, 1974)に従って測定するときに4.8〜6.3の等電点を有するアミノ酸をいう。用語「酸性アミノ酸」とは、本明細書で使用する場合、Kice及びMarvell「Modern Principles of organic Chemsitry」(Macmillan, 1974)に従って測定するときに4.8を下回る等電点を有するアミノ酸をいう。
【0043】
抗原
本発明によるペプチド構築物において使用される特定の天然抗原は、任意のB細胞抗原に由来する、例えば感染因子のような任意の疾患抗原に由来する、タンパク質又はペプチド配列であり得る。本発明に従って使用されるべき適切な抗原としては、細菌、マイコバクテリア、ウイルス、原虫のような寄生体、真菌に由来する抗原、ガン遺伝子のようなガン抗原、プリオン、アトピー性疾患抗原、常習性若しくは乱用物質又は毒素又は慢性関節リウマチ、インスリン依存性糖尿病、多発性硬化症のような自己免疫疾患の抗原などが挙げられる。
本明細書で使用する場合、「疾患抗原」とは、特定疾患に関与することが確証されているか又は疑われている任意の抗原をいう。
【0044】
幾つかの実施形態では、抗原は、乱用されるか若しくは常習性の物質又はその部分であり、ニコチン、麻酔薬、鎮咳薬、トランキライザー及び鎮静薬を含むが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、抗原は、化学兵器若しくは天然源に由来する毒又は汚染物質のような毒素である。
抗原を提供し得る細菌の例には、M.ツベルクローシス、マイコバクテリア、マイコプラズマ、ナイセリア及びレジオネラが挙げられるが、これらに限定されない。寄生体の例としては、リケッチア及びクラミジアが挙げられるが、これらに限定されない。
感染性疾患抗原の例は、TbH9(Mtb 39Aとしても知られる)、ツベルクローシス抗原である。他のツベルクローシス抗原には、DPV(Mtb8.4としても知られる)、381、Mtb41、Mtb40、Mtb32A、MΛ9.9A、Mtb9.8、Mtblo、Mtb72f、Mtb59f、Mtb88f、Mtb71f、Mtb46f及びMtb31f(「f」は融合体又は2以上のタンパク質であることを示す。)が含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
ガン抗原の例は、HER2、HER3若しくはHER4レセプターのような腫瘍関連抗原又は米国出願公開第20080171040号又は同第20080305044号(共に参照によりその全体が組み込まれる)に開示される1以上の腫瘍関連抗原若しくは細胞表面レセプターであり得る。
本発明により使用され得る他の適切なガン抗原としては、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD8、CD11、CD14、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD25、CD26、CD27、CD28、CD30、CD33、CD36、CD37、CD38、CD40、CD44、CD52、CD55、CD56、CD70、CD79、CD80、CD81、CD103、CD105、CD134、CD137、CD138及びCD152のようなCDタンパク質;EGFレセプター、HER2、HER3又はHER4レセプターのようなErbBレセプターファミリーメンバー;LFA-I、Mac1、pi 50.95、VLA-4、ICAM-I、VCAM、EpCAM、α4/β7インテグリン及びαv/β3インテグリン(そのα又はβサブユニットのいずれかを含む)(例えば、抗-CD11a、抗-CD18又は抗-CD11b抗体)のような細胞接着分子;VEGFのような成長因子;組織因子(TF);TGF-β;αインターフェロン(α-IFN);IL-8のようなインターロイキン;IgE;血液型抗原Apo2、死亡レセプター;flk2/flt3レセプター;肥満(OB)レセプター;mplレセプター;CTLA-4;プロテインCなどが挙げられる。幾つかの実施形態では、抗原は、IGF-IR、CanAg、EphA2、MUC1、MUC16、VEGF、TF、CD19、CD20、CD22、CD27、CD33、CD37、CD38、CD40、CD44、CD56、CD138、CA6、Her2/neu、EpCAM、CRIPTO(ヒト乳ガン細胞の多数において上昇レベルで産生されるタンパク質)、ダルピン(darpins)、αv3インテグリン、αv5インテグリン、αy/βインテグリン、TGF-β、CD11a、CD18、Apo2及びC242から選択される。幾つかの実施形態では、抗原は、CD3、CD4、CD8、CD19、CD20、CD27、CD34、CD37、CD38、CD46、CD56、CD70及びCD138のようなCDタンパク質;EGFレセプター、HER2、HER3又はHER4レセプターのようなErbBレセプターファミリーメンバー;LFA-I、Mac1、pl50.95、VLA-4、ICAM-I、VCAM、EpCAM、α4/β7インテグリン及びαv/β3インテグリン(そのα又はβサブユニットのいずれかを含む)(例えば、抗-CD11a、抗-CD18又は抗-CD11b抗体)のような細胞接着分子;VEGFのような成長因子;組織因子(TF);TGF-β;αインターフェロン(α-IFN);IL-8のようなインターロイキン;IgE;血液型抗原Apo2、死亡レセプター;flk2/flt3レセプター;肥満(OB)レセプター;mplレセプター;CTLA-4;プロテインCなどから選択される。本発明において最も好適な標的は、IGF-IR、CanAg、EGF-R、EGF-RvIII、EphA2、MUC1、MUC16、VEGF、TF、CD19、CD20、CD22、CD27、CD33、CD37、CD38、CD40、CD44、CD56、CD70、CD138、CA6、Her2/neu、CRIPTO(ヒト乳ガン細胞の多数において上昇レベルで産生されるタンパク質)、αv3インテグリン、αv5インテグリン、TGF-β、CD11a、CD18、Apo2、EpCAM及びC242である。幾つかの実施形態では、抗原はras又はmycのような細胞ガン遺伝子から選択される。
【0046】
本発明での使用のためのウイルス抗原の例としては、例えば、HIV、HCV、CMV、HPV、インフルエンザ、アデノウイルス、レトロウイルス、ピコルナウイルスなどが挙げられるが、これらに限定されない。レトロウイルス抗原の非限定例としては、例えば、gag、pol及びenv遺伝子の遺伝子産物、Nefタンパク質、逆転写酵素その他のHIV成分のようなヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗原に由来するレトロウイルス抗原;B型肝炎ウイルスのS、M及びLタンパク質、B型肝炎ウイルスのプレ-S抗原その他の肝炎ウイルス成分、例えば、A型、B型及びC型肝炎ウイルス成分(例えばC型肝炎ウイルスRNA)のような肝炎ウイルス抗原に由来するレトロウイルス抗原;ヘマグルチニン及びノイラミニダーゼその他のインフルエンザウイルス成分のようなインフルエンザウイルス抗原に由来するレトロウイルス抗原;麻疹ウイルス融合タンパク質その他の麻疹ウイルス成分のような麻疹ウイルス抗原に由来するレトロウイルス抗原;タンパク質El及びE2その他の風疹ウイルス成分のような風疹ウイルス抗原に由来するレトロウイルス抗原;VP7scその他のロタウイルス成分のようなロタウイルス抗原に由来するレトロウイルス抗原;エンベロープ糖タンパク質Bその他のサイトメガロウイルス抗原成分のようなサイトメガロウイルス抗原に由来するレトロウイルス抗原;RSV融合タンパク質、M2タンパク質その他の呼吸器合胞体ウイルス抗原成分のような呼吸器合胞体ウイルス抗原に由来するレトロウイルス抗原;前初期タンパク質、糖タンパク質Dその他の単純ヘルペスウイルス抗原成分のような単純ヘルペスウイルス抗原に由来するレトロウイルス抗原;gpl、gpllその他の水痘帯状疱疹ウイルス抗原成分のような水痘帯状疱疹ウイルス抗原に由来するレトロウイルス抗原;タンパク質E、M-E、M-E-NSl、NSl、NS1-NS2A、80% Eその他の日本脳炎ウイルス抗原成分のような日本脳炎ウイルス抗原に由来するレトロウイルス抗原;狂犬病糖タンパク質、狂犬病核タンパク質その他の狂犬病ウイルス抗原成分のような狂犬病ウイルス抗原に由来するレトロウイルス抗原が挙げられる。ウイルス抗原の更なる例については、Fundamental Virology、第2版、Fields, B. N.及びKnipe, D. M.編(Raven Press、New York、1991)を参照。
【0047】
本発明による骨格デザインに組み込まれるべきエピトープは、アデノウイルス科、レトロウイルス科、ピコルナウイルス科、ヘルペスウイルス科、ロタウイルス(レオウイルス科)、ハンタウイルス(ブンヤウイルス科)、コロナウイルス科、トガウイルス科、フラビウイルス科、ラブドウイルス科、パラミクソウイルス科、オルソミクソウイルス科、ブンヤウイルス科、アレナウイルス科、レオウイルス科、パピローマウイルス科、パルボウイルス科、ポックスウイルス科、ヘパドナウイルス科、又は海綿状ウイルスの科のようなウイルス科のウイルスに由来し得る。或る特定の非制限例において、ウイルス抗原は、HIV、CMV、A型、B型及びC型肝炎、インフルエンザ、麻疹、ポリオ、天然痘、風疹;呼吸器合胞体、単純ヘルペス、水痘帯状疱疹、エプスタイン-バー、日本脳炎、狂犬病、インフルエンザ及び/又は風邪ウイルスの少なくとも1つから得られるペプチドである。
【0048】
HCV:
本発明によるペプチドは既知の抗原を含んでなり得る。HCVに由来する抗原については、これら抗原は、C型肝炎ウイルス(HCV)のコア、E1、E2、P7、NS2、NS3、NS4(NS4A及びNS4B)及びNS5(NS5A及びNS5B)タンパク質に由来し得る。エピトープは、免疫した宿主においてHLAクラスI及び/又はクラスII制限Tリンパ球応答を誘発するものである。本発明のより具体的なHLAクラスI制限ペプチドは、以下のHLAクラスI群:HLA-A*01、HLA-A*02、HLA-A*03、HLA-A*11、HLA-A*24、HLA-B*07、HLA-B*08、HLA-B*35、HLA-B*40、HLA-B*44、HLA-Cw3、HLA-Cw4、HLA-Cw6又はHLA-Cw7の少なくとも1つのHLA分子に結合し得る。本発明のHLAクラスII制限ペプチドは、以下のHLAクラスII群:HLA-DRB1、-DRB2、-DRB3、-DRB4、-DRB5、-DRB6、-DRB7、-DRB8又は-DRB9の少なくとも1つのHLA分子に結合する。
【0049】
本発明に従ってエピトープとして使用し得るMHC結合性HCVペプチドは、例えば、WO02/34770(Imperial College Innovations Ltd)、WO01/21189及びWO02/20035(Epimmune)、WO04/024182(Intercell)、WO95/25122(The Scripps Research Institute)、WO95/27733(Government of the USA、Department of Health and Human Services)、EP 0935662(Chiron)、WO02/26785(Immusystems GmbH)、WO95/12677(Innogenetics N.V)、WO97/34621(Cytel Corp)及びEP 1652858(Innogenetics N.V.)に開示されている。
他の実施形態において、本発明による骨格デザインは、PADREペプチド、例えばWO95/07707(Epimmune)(この内容は参照により本明細書に取り込まれる)に開示されているようなPADREと呼ばれるユニバーサルT細胞エピトープを含んでなる。「PanDR結合性ペプチド又はPADREペプチド」は、1より多いHLAクラスII DR分子に結合する分子ファミリーのメンバーである。PADREはほとんどのHLA-DR分子に結合し、インビトロ及びインビボでヒトヘルパーTリンパ球(HTL)応答を刺激する。或いは、破傷風毒素のような、普遍的に使用されるワクチンからのT-ヘルパーエピトープが使用され得る。
【0050】
更なる実施形態において、組成物中のペプチド又はポリエピトープ性ペプチドは、HCVタンパク質に由来すること、より特定的にはコア、E1、E2/NS1、NS2、NS3、NS4A、NS4B、NS5A及びNS5Bからなる群より選択される少なくとも1つのHCV領域に由来することを特徴とする。ペプチドは遺伝子型1a、1b及び/又は3aのHCVコンセンサス配列に存在することを特徴とすることが、尚更に好適である。
本発明に従って使用し得る他のHLAクラスI及びII結合性ペプチドは、WO03/105058(Algonomics)に記載のような方法、WO01/21189においてEpimmuneにより記載されているような方法及び/又は3つの公開データベース予知サービスSyfpeithi、BIMAS及びnHLAPredにより同定され得る。各ペプチドを、多反復のような同一ペプチド又は任意の他のペプチド若しくはエピトープとの組合せで本発明の骨格デザインで使用し得ることもまた本発明の1つの観点である。
【0051】
CMV:
本発明による骨格デザインに組み込むべきエピトープは、CMV糖タンパク質gB及びgHを含むサイトメガロウイルス(CMV)に由来し得る。
【0052】
インフルエンザ:
本発明による骨格デザインに組み込むべきエピトープは、H1N1、H2N2又はH3N2のようなサブグループの各々についてのインフルエンザヘマグルチニン(HA)又はインフルエンザノイラミニダーゼ(NA)、核タンパク質(NP)、M1、M2、NS1、NEP、PA、PB1、PB1-F2、PB2のフラグメント又は一部分に由来し得る。
【0053】
適切なエピトープは、1以上のサブタイプのHAタンパク質(H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15又はH16を含む)又はそれらのフラグメント若しくは一部分に由来し得る。このようなHAタンパク質を含むサブタイプの例としては、A/New Caledonia/20/99(H1N1)、A/Indonesia/5/2006(H5N1)、A/chicken/New York/1995、A/herring gull/DE/677/88(H2N8)、A/Texas/32/2003、A/mallard/MN/33/00、A/duck/Shanghai/1/2000、A/northern pintail/TX/828189/02、A/Turkey/Ontario/6118/68(H8N4)、A/shoveler/Iran/G54/03、A/chicken/Germany/N/1949(H10N7)、A/duck/England/56(H11N6)、A/duck/Alberta/60/76(H12N5)、A/Gull/Maryland/704/77(H13N6)、A/Mallard/Gurjev/263/82、A/duck/Australia/341/83(H15N8)、A/black-headed gull/Sweden/5/99(H16N3)、B/Lee/40、C/Johannesburg/66、A/PuertoRico/8/34(H1N1)、A/Brisbane/59/2007(H1N1)、A/Solomon Islands 3/2006(H1N1)、A/Brisbane 10/2007(H3N2)、A/Wisconsin/67/2005(H3N2)、B/Malaysia/2506/2004、B/Florida/4/2006、A/Singapore/1/57(H2N2)、A/Anhui/1/2005(H5N1)、A/Vietnam/1194/2004(H5N1)、A/Teal/HongKong/W312/97(H6N1)、A/Equine/Prague/56(H7N7)、A/HongKong/1073/99(H9N2))が挙げられる。
【0054】
本発明の幾つかの実施形態では、HAタンパク質は、H1、H2、H3、H5、H6、H7又はH9サブタイプであり得る。他の実施形態において、H1タンパク質は、A/New Caledonia/20/99(H1N1)、A/PuertoRico/8/34(H1N1)、A/Brisbane/59/2007(H1N1)又はA/Solomon Islands 3/2006(H1N1)系統に由来し得る。H3タンパク質はまた、A/Brisbane 10/2007(H3N2)又はA/Wisconsin/67/2005(H3N2)系統に由来し得る。他の実施形態において、H2タンパク質は、A/Singapore/1/57(H2N2)系統に由来し得る。H5タンパク質は、A/Anhui/1/2005(H5N1)、A/Vietnam/1194/2004(H5N1)又はA/Indonesia/5/2005系統に由来し得る。他の実施形態において、H6タンパク質はA/Teal/HongKong/W312/97(H6N1)系統に由来し得る。H7タンパク質はA/Equine/Prague/56(H7N7)系統に由来し得る。他の実施形態において、H9タンパク質はA/HongKong/1073/99(H9N2)系統に由来する。他の実施形態において、HAタンパク質は、B/Malaysia/2506/2004又はB/Florida/4/2006を含むB型ウイルスであり得るインフルエンザウイルスに由来し得る。インフルエンザウイルスHAタンパク質はH5 Indonesiaであり得る。
【0055】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV):
HIVについて、本発明による骨格デザインに組み込むべきエピトープは、種々の遺伝子サブタイプのメンバーを含むHIVに由来するgp120、gp160、gp41、p24gag又はp55gagからなるウイルスタンパク質、調節タンパク質(例えばTat、Rev、Nef)及びウイルス酵素(例えばポリメラーゼ、インテグラーゼ又はプロテアーゼ)に由来し得る。
【0056】
ヒトパピローマウイルス(HPV):
HPVについて、本発明による骨格デザインに組み込むべきエピトープは、E1、E2、E3、E4、E6及びE7、L1及びL2タンパク質からなる群に由来し得る。エピトープは、タイプ8、11、16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58及び59を含む任意のタイプに由来し得る。
【0057】
キャリア、アジュバント及びビヒクル − 送達
本発明によるペプチドは、種々の手段により、種々の組成物(これらは、本明細書で、「組成物」、「ワクチン組成物」又は「医薬組成物」と呼ぶ)中で送達され得る。本発明のペプチド並びに本発明の医薬及びワクチン組成物は、ウイルス感染の治療及び/又は予防のための、哺乳動物のような動物、及び特にヒトの両方への投与に有用である。本発明のペプチドを含むワクチン組成物は、特定の抗原に対する免疫応答を惹起することによって当該患者自身の免疫応答能力を増強するために、問題のウイルスに感染した患者、又はウイルス感染に罹患し易いかそうでなければウイルス感染のリスクにある個体に投与される。
当該分野において認識されている種々の送達システムが、適切な細胞へペプチドを送達するために使用され得る。ペプチドは、医薬的に許容され得るキャリア中又はコロイド懸濁物として、又は粉体として、希釈剤を伴って又は伴わずに送達することができる。これらは、「裸(naked)」であるか又は送達ビヒクルとの組合せであり得、当該分野で公知の送達システム(例えば、組換えウイルス粒子、ナノ金のようなナノ粒子又はシクロチド)を用いて送達され得る。
【0058】
「医薬的に許容され得るキャリア」又は「医薬的に許容され得るアジュバント」は、それ自体は該組成物を投与される個体に対して有害な抗体の産生を誘導せず、保護も惹起しない任意の適切な賦形剤、希釈剤、キャリア及び/又はアジュバントである。好ましくは、医薬的に許容され得るキャリア又はアジュバントは、抗原により惹起された免疫応答を増強する。適切なキャリア又はアジュバントは、代表的には、以下の不完全なリストに挙げられる1以上の化合物を含んでなる:タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマー性アミノ酸、アミノ酸コポリマー及び不活性ウイルス粒子のような、緩徐に代謝される大きな高分子;水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム(国際特許出願公開第WO93/24148を参照)、ミョウバン(KAl(SO4)2.12H2O)又はこれらの1つと3-0-脱アシル化モノホスホリルリピドA(国際特許出願公開第WO93/19780号を参照)との組合せ;N-アセチル-ムラミル-L-スレオニル-D-イソグルタミン(米国特許第4,606,918号を参照)、N-アセチル-ノルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミル-L-アラニン2-(1',2'-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ)エチルアミン;RIBI(ImmunoChem Research Inc.、Hamilton、MT、USA)、これは、2%スクアレン/Tween 80エマルジョン中にモノホスホリルリピドA(すなわち、無毒化エンドトキシン)、トレハロース-6,6-ジミコレート及び細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)を含む。3成分MPL、TDM又はCWSは単独でも、2つずつの組合せでも用い得る;Stimulon(Cambridge Bioscience、Worcester、MA、USA)、SAF-1(Syntex)のようなアジュバント;QS21と3-デ-O-アセチル化モノホスホリルリピドAとの組合せ(国際出願第WO94/00153号を参照)(これは更に、代謝可能油及びサポニン又は代謝可能油、サポニン及びステロールを含んでなる油中水エマルジョン(例えば、国際出願第WO95/17210号、同第WO97/01640号及び同第WO9856414号を参照)又はサイトカイン(国際出願第WO98/57659号を参照)を補充され得る)のようなアジュバント;MF-59(Chiron)又はポリ[ジ(カルボキシラトフェノキシ)ホスファゼン]ベースのアジュバント(Virus Research Institute)のようなアジュバント;Optivax(Vaxcel、Cytrx)のようなブロックコポリマーベースのアジュバント、又はAlgammulin及びGammalnulin(Anutech)のようなイヌリンベースのアジュバント;完全又は不完全フロイントアジュバント(それぞれCFA又はIFA)又はGerbu調製物(Gerbu Biotechnik);QuilAのようなサポニン、QS21、QS7又はQS17、エスシン又はジギトニンのような精製サポニン;[プリン-プリン-CG-ピリミジン-ピリミジン]オリゴヌクレオチドのような非メチル化CpGジヌクレオチドを含んでなる免疫刺激性オリゴヌクレオチド。これら免疫刺激性オリゴヌクレオチドには、CpGクラスA、B及びC分子(Coley Pharmaceuticals)、ISS(Dynavax)、Immunomers(Hybridon)が含まれる。免疫刺激性オリゴヌクレオチドはまた、例えばRiedlら(2002)により記載されるようなカチオン性ペプチドと組み合わせ得る;サポニン、例えば、Quil Aを含んでなる免疫刺激複合体(ISCOMS);水、生理食塩水、グリセロール、エタノール、イソプロピルアルコール、DMSO、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝化物質、防腐剤などのような本来的に非毒性及び非治療性である賦形剤及び希釈剤;例えば1〜10%又は2,5〜5%の濃度のスクアラン、スクアレン、エイコサン、テトラテトラコンタン、グリセロール、ピーナッツ油、植物油のような生分解性及び/又は生体適合性の油;ビタミンC(アスコルビン酸又はその塩若しくはエステル)、ビタミンE(トコフェロール)又はビタミンAのようなビタミン;カロテノイド、又は天然若しくは合成のフラバノイド;セレンのような微量元素;Barton及びMedzhitov(2002)で概説されるような任意のToll-様レセプターリガンド。
【0059】
3-デ-O-アセチル化モノホスホリルリピドAを含んでなる任意の前記アジュバントにおいて、該3-デ-O-アセチル化モノホスホリルリピドAは、小粒子を形成していてもよい(国際出願第WO94/21292号を参照)。
任意の前記アジュバントにおいて、MPL又は3-デ-O-アセチル化モノホスホリルリピドAは、RC-529と呼ばれる合成アナログ又は他の任意のアミノ-アルキルグルコサミニド4-ホスフェート(Johnsonら,1999、Persingら,2002)で置き換えることができる。或いは、OM-197(Bylら,2003)のような他のリピドAアナログで置き換えることができる。
【0060】
「医薬的に許容され得るビヒクル」は、水、生理食塩水、生理学的な塩溶液、グリセロール、エタノールなどのようなビヒクルを含む。湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝化物質、防腐剤のような補助的な物質を、該ビヒクルに含ませ得る。当該分野で公知の送達システムは、例えばリポペプチド、ポリ-DL-ラクチド-コ-グリコリド(「PLG」)中にカプセル化されたペプチド組成物、ミクロスフェア、免疫刺激複合体(ISCOMS)に含まれるペプチド組成物、多抗原ペプチドシステム(MAPs)、ウイルス送達ベクター、ウイルス又は合成起源の粒子、アジュバント、リポソーム、脂質、微粒子又は微小カプセル、金粒子、ナノ粒子、ポリマー、縮合剤、多糖、ポリアミノ酸、デンドリマー、サポニン、QS21、吸着増強材、脂肪酸、又は裸若しくは粒子に吸着させたcDNAである。
ペプチドは、EndocineTM及びMontanideTM(Eurocine) - MontanideTM ISA 51 VG又はMontanideTM ISA 720 VG (Seppic)のような油中で送達され得る。
アジュバントは、ロイコトリエンB4(LTB4)及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)(例えばSargramostim/Leukine(グリコシル化GM-CSF)及びMolgramostim(非グリコシル化GM-CSF))のような、ペプチドとは別途に与えることができる先天性免疫系の刺激物質であり得る。
代表的には、ワクチン又はワクチン組成物は、液体溶液又は懸濁液のような注射液として調製される。注射は、皮下、筋肉内、静脈内、腹腔内、髄腔内、皮内又は表皮内であり得る。他のタイプの投与は、エレクトロポレーション、移植、坐剤、経口摂取、腸管適用、吸入、エーロゾル適用又は鼻スプレー又は点鼻を含む。注射前に液体ビヒクルに溶解又は懸濁するに適切な固体形態でも調製され得る。調製物はまた、アジュバント効果を増強するために、リポソーム中にカプセル化されるか又は乳化され得る。
【0061】
液体製剤は、油、ポリマー、ビタミン、炭水化物、アミノ酸、塩、緩衝剤、アルブミン、界面活性剤又は充填剤を含み得る。好適な炭水化物としては、単糖、二糖、三糖、オリゴ糖若しくは多糖のような糖若しくは糖アルコール又は水溶性グルカンが挙げられる。糖又はグルカンは、フルクトース、デキストロース、ラクトース、グルコース、マンノース、ソルボース、キシロース、マルトース、スクロース、デキストラン、プルラン、デキストリン、α及びβシクロデキストリン、可溶性デンプン、ヒドロキシエチルデンプン及びカルボキシメチルセルロース又はそれらの混合物を含むことができる。スクロースが最も好ましい。「糖アルコール」は、-OH基を有するC4〜C8炭化水素として定義され、ガラクティトール、イノシトール、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、グリセロール及びアラビトールを含む。マンニトールが最も好ましい。これら上記糖又は糖アルコールは、個々に又は組合せで使用し得る。糖又は糖アルコールが水性調製物に可溶である限り、使用する量に定められた限度はない。好ましくは、糖又は糖アルコールの濃度は、1,0%(w/v)〜7,0%(w/v)、より好ましくは2,0〜6,0%(w/v)である。好ましくは、アミノ酸には、左旋(L)型のカルニチン、アルギニン及びベタインが含まれる;しかし、他のアミノ酸も加え得る。好適なポリマーには、平均分子量2,000〜3,000のポリビニルピロリドン(PVP)又は平均分子量3,000〜5,000のポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。凍結乾燥前又は再構成後に溶液中のpH変化を最小化するために組成物中に緩衝剤を使用することもまた好適である。任意の生理学的緩衝剤を使用し得るが、シトレート、ホスフェート、スクシネート及びグルタメート緩衝剤又はそれらの混合物が好ましい。最も好適な緩衝剤はシトレート緩衝剤である。好ましくは、濃度は0,01〜0,3モル濃度である。製剤に添加し得る界面活性剤は、欧州特許出願EP 0 270 799及びEP 0 268 110に示されている。
【0062】
追加的に、ポリペプチドは、ポリマーとの共有接合により、例えば循環半減期を増大させるように、化学的に改変することができる。それらをペプチドに付着させるための好適なポリマー及び方法は、米国特許第4,766,106号;同第4,179,337号;同第4,495,285号;及び同第4,609,546号に示されている。好適なポリマーはポリオキシエチル化ポリオール及びポリエチレングリコール(PEG)である。PEGは室温で水に可溶であり、下記の一般式を有する:
R(O-CH2-CH2)nO-R
ここで、Rは、水素、又はアルキル若しくはアルカノール基のような保護基で有り得る。好ましくは、保護基は1〜8炭素を有し、より好ましくはメチルである。記号nは正の整数であり、好ましくは1〜1.000、より好ましくは2〜500である。PEGは、好適な平均分子量1000〜40.000、より好ましくは2000〜20.000、最も好ましくは3.000〜12.000を有する。好ましくは、PEGは少なくとも1つのヒドロキシ基を有し、ヒドロキシ基はより好ましくは末端ヒドロキシ基である。好ましくは、活性化されているのは、このヒドロキシ基である。しかし、反応基のタイプ及び量は、共有結合したPEG/本発明のポリペプチドを達成するように変化させ得ることが理解される。
【0063】
水溶性ポリオキシエチル化ポリオールもまた本発明において有用である。これらには、ポリオキシエチル化ソルビトール、ポリオキシエチル化グルコース、ポリオキシエチル化グリセロール(POG)などが含まれる。POGが好ましい。1つの理由は、ポリオキシエチル化グリセロールのグリセロール骨格が、例えば動物及びヒトにおいて、モノ-、ジ-、トリ-グリセリド中に天然に存在する骨格と同じであるからである。したがって、この分岐分子は、身体において必ずしも外来因子として見られない。POGは、PEGと同じ範囲の好適な分子量を有する。POGの構造はKnaufら,1988に示されており、POG/IL-2接合体の議論は米国特許第4,766,106号に見出される。
【0064】
循環半減期を増大させる別の薬物送達システムはリポソームである。本発明のペプチド及び核酸はまた、ペプチド及び核酸組成物の半減期を増大させると共に、リンパ組織のような特定の組織を標的するか又は感染細胞を選択的に標的するために働くリポソームを介して投与され得る。リポソームとしては、エマルジョン、フォーム、ミセル、不溶性単分子膜、液晶、リン脂質分散物、ラメラ層などが挙げられる。これらの調製物において、送達すべきペプチド又は核酸は、リポソームの一部として組み込まれるか、或いは単独で又はリンパ様細胞で優勢なレセプターに結合する分子(例えば、CD45抗原に結合するモノクローナル抗体)若しくは他の治療若しくは免疫原性組成物との組合せで埋め込まれる。よって、本発明の所望のペプチド又は核酸を充填されるか又はこれらで装飾されたリポソームは、リンパ球様細胞の部位(ここに、リポソームはペプチド及び核酸組成物を送達する)に指向させ得る。本発明による使用のためのリポソームは、標準的なベシクル形成性脂質(一般には中性及び負に荷電したリン脂質及びコレステロールのようなステロールが含まれる)から形成される。脂質の選択は、一般には、例えば、リポソームサイズ、酸不安定性及び血流中でのリポソームの安定性の考慮を指針にする。例えば、Szokaら,1980、及び米国特許第4,235,871号、同第4,501,728号、同第4,837,028号及び同第5,019,369号に記載のような種々の方法がリポソームの調製に利用可能である。
【0065】
免疫系の細胞を標的するためには、リポソームに組み込むべきリガンドとしては、例えば、所望の免疫系細胞の細胞表面決定基に特異的な抗体又はそのフラグメントを挙げることができる。ペプチドを含有するリポソーム懸濁液は、静脈内に、局所的に、局部的になどで、とりわけ投与様式、送達されるペプチド及び治療される疾患のステージに従って変化する用量にて投与され得る。例えば、免疫原性ポリペプチドを有するリポソームは、インビボでCTL応答を惹起することが知られている(Reddyら,1992;Collinsら,1992;Friesら,1992;Nabelら,1992)。
液体医薬組成物は、調製後、好ましくは凍結乾燥して、分解を予防し、無菌性を保存する。液体組成物を凍結乾燥する方法は当業者に公知である。使用の直前に、組成物は、追加の成分を含んでいてもよい滅菌希釈剤(例えば、リンゲル液、蒸留水又は滅菌生理食塩水)で再構成され得る。再構成に際して、組成物は、好ましくは、当業者に公知である方法を用いて、対象者に投与され得る。
【0066】
免疫応答を評価するためのペプチドの使用:
本発明によるペプチドは診断試薬として使用し得る。例えば、本発明のペプチドは、該ペプチド又は関連ペプチドを用いる治療レジメンに対する特定個体の感受性を決定するために使用し得、よって罹患個体について現行の治療プロトコールの改変又は予後の決定の助けとなり得る。加えて、ペプチドはまた、どの個体が慢性ウイルス感染を発症する実質的リスクを生じるかを予知するために使用し得る。
したがって、本発明は、対象者が1以上の本発明によるペプチドに対する免疫応答を有するかどうかを決定する工程を含んでなる、感染因子(例えば病原体)のような疾患抗原に曝された対象者に関する転帰を決定する方法に関する。
【0067】
本発明の好適な実施形態において、本明細書に記載のようなペプチドは、免疫応答を評価する試薬として使用することができる。評価すべき免疫応答は、免疫原として、前記試薬として用いるペプチドを認識しこれに結合する抗原-特異的CTL又はHTLの産生をもたらし得る任意の因子を使用することによって誘導することができる。ペプチド試薬は、免疫原として使用される必要はない。このような分析に使用することができるアッセイ系には、テトラマー、細胞内リンホカイン用の染色及びインターフェロン放出アッセイ又はELISPOTアッセイのような比較的最近の技術開発品が含まれる。
【0068】
例えば、本発明のペプチドは、抗原又は免疫原の曝露後の抗原-特異的CTLの存在に関して末梢血単核細胞(PBMC)を評価するテトラマー染色アッセイにおいて使用し得る。HLA-テトラマー複合体は、抗原-特異的CTLを直接可視化するため(例えば、Oggら,1998;及びAltmanら,1996を参照)及び末梢血単核細胞サンプル中の抗原-特異的CTL集団の頻度を決定するために使用される。本発明のペプチドを用いるテトラマー試薬は、以下のように作製され得る:HLA分子に結合するペプチドは、対応するHLA重鎖及びβ2-ミクログロブリンの存在下に再構成されて三分子複合体を生じる。この複合体は、事前に遺伝子工学的操作によりタンパク質中に組み込まれた部位にて重鎖のカルボキシ末端部でビオチン化される。その後、ストレプトアビジンの添加によりテトラマー形成が誘導される。蛍光標識したストレプトアビジンを用いて、テトラマーを、抗原-特異的細胞を染色するために使用する。次いで、例えばフローサイトメトリにより、細胞を同定し得る。このような分析は、診断又は予後目的に使用し得る。この手順により同定された細胞はまた、治療目的にも使用することができる。テトラマーの代替物として、ペンタマー又はダイマーも使用することができる(Current Protocols in Immunology(2000) unit 17.2 supplement 35)。
【0069】
本発明のペプチドはまた、免疫リコール応答を評価する試薬として使用し得る(例えば、Bertoniら,1997及びPermaら,1991を参照)。例えば、特異ペプチドを用いて、HCV感染個体からの患者PBMCサンプルを抗原-特異的CTL又はHTLの存在について分析し得る。PBMCを培養し、本発明のペプチドで細胞を刺激することにより単核細胞を含む血液サンプルを評価し得る。適切な培養期間後、拡大した細胞集団を、例えば細胞傷害(CTL)活性又はHTL活性について分析し得る。
ペプチドはまた、ワクチンの効力を評価する試薬として使用し得る。
【0070】
免疫原をワクチン接種した患者から得たPBMCを、例えば上記方法のいずれかを用いて分析し得る。患者はHLAタイプを決定され、当該患者に存在する対立遺伝子-特異的分子を認識するペプチドエピトープ試薬が、この分析のために選択される。ワクチンの免疫原性は、PBMCサンプル中のエピトープ-特異的CTL及び/又はHTLの存在によって示される。
本発明のペプチドはまた、当該分野において周知の技法を用いて、抗体を作製するために使用され得る(例えば、CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY、Wiley/Greene、NY;及びAntibodies, A Laboratory Manual、Harlow and Lane、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989を参照)。このような抗体には、HLA分子との関連でペプチドを認識するもの、すなわちペプチド-MHC複合体に結合する抗体が含まれる。
或る特定の実施形態では、第1の単量体ペプチド及び少なくとも1つの第2の単量体ペプチドは、リンカーにより結合している;リンカーは、グリシン、リジン又はアルギニンリンカー/スペーサー、ポリヒスチジニルタグ、Gタンパク質及びプロテインAのような任意のペプチドリンカー又はペプチドスペーサーを含んでなり得るが、ビス-マレイミドリンカー/スペーサー、ジスルフィドリンカー又はポリエチレングリコール(PEG)リンカーを使用することもまた可能である。実際には、ペプチド化学で有用であると判明している任意のリンカーもまた、本発明によるリンカーとして有用である。よって、本発明は、互いに接合しているか又は融合している「単純な」直鎖ペプチドの使用だけでなく天然抗原に由来する個々のペプチドが非-ペプチドリンカーにより連結されているペプチド組合せの使用も企図する。多リンカータイプの使用もまた本発明の範囲内であり、例えば、鎖内ジスルフィドリンカーを含む直鎖ペプチドを使用することもまた本発明の一部である。
【0071】
特に興味深い本発明のペプチド組合せは、実施例の前の文章に記載されている。
或る特定の実施形態では、ペプチド組合せ中の少なくとも1つの第1の及び少なくとも1つの第2のペプチドは、アミド化、アシル化又はアセチル化のようなN-又はC-末端改変を含む。
ペプチド組合せは、ワクチン用薬剤又は診断用薬剤として企図されるので、或る特定の実施形態では、免疫原性キャリアのようなキャリア分子にカップリングされる。よって、ペプチド組合せのペプチドは、(例えば、CLIP技術による)組換え融合体として又は配向性様式(例えば、ヘテロ二官能性架橋剤を用いる)若しくは非配向性様式での化学的連結により他の分子に連結され得る。例えばジフテリア毒素、ラテックスビーズ(診断的及び予後的実施形態で好都合)及び磁性ビーズ(これも診断的及び予後的実施形態で好都合)、ポリリジン構築物などのようなキャリア分子への連結は、全て本発明により可能である。
【0072】
免疫原性キャリアは、当該分野において従来使用されるもの(例えば、ジフテリア又は破傷風毒素、KLHなど)のようなキャリアタンパク質から好都合に選択されるが、集団中のより大きな割合でT-細胞免疫を誘導することができるより短いペプチド(T-ヘルパーエピトープ)を使用することもまた可能である。このようなT-ヘルパーエピトープについての詳細は、例えば、WO 00/20027(これは、参照により本明細書中に組み込まれる)に見出すことができる−そこで議論されている全ての免疫原性キャリア及び「無差別」(すなわち、普遍性)T-ヘルパーエピトープが本発明における免疫原性キャリアとして有用である。
或る特定の実施形態では、キャリアは、ウイルス様粒子(すなわち、感染性であることを除いてビリオンと性質を共有する粒子)である。このようなウイルス-様粒子は、化学的に(例えば、Jennings and Bachmann Ann Rev Pharmacol. Toxicol. 2009. 49:303-26 Immunodrugs: Therapeutic VLP-based vaccines for chronic diseases)、又はクローニング技法を使用して融合タンパク質を作製することにより(例えば、Peabodyら,J. Mol. Biol. 2008; 380: 252-63. Immunogenic display of diverse peptides on virus-like particles of RNA phage MS2)提供され得る。別の例は、「Remune」(Immune Response Corporationが最初に製造したHIVワクチン;これは、放射線照射してウイルスゲノムを破壊したホルマリン不活化HIVからなる)である。
【0073】
1つの実施形態では、核酸は、本発明による二量体のような多量体ペプチドの1以上の単量体ペプチドをコードする。ここで、多量体ペプチドのコードされた第1のペプチド及びコードされた少なくとも1つの第2のペプチドは、ペプチドリンカー(ペプチドスペーサーを含む)及び/又はジスルフィド橋架けにより結合している。ペプチドリンカー/スペーサーは、代表的には、グリシン、アルギニン、リジンリンカー/スペーサー又はグリシン-リジンリンカー/スペーサーからなる群より選択されるが、当該分野において公知の任意のペプチドリンカーが有用であり得る。よって、用語 ペプチドリンカー は、第1のペプチドと第2のペプチドとの間のペプチド結合を介するカップリングをも指称するものとする。第1のペプチドと第2のペプチドとの間を標準的なペプチド結合により連結するペプチドリンカーは、ペプチドスペーサーとも呼び得る。また、第1及び第2のペプチドは、鎖内ジスルフィド結合が確立される場合のように、ペプチドリンカー及びジスルフィド結合を介して連結され得る。
1つの実施形態では、本発明による核酸は、免疫原性キャリアのようなキャリア分子に(融合により)カップリングされているペプチド組合せをコードする;有用なキャリアは上記で議論されている。
【0074】
幾つかの実施形態では、リンカーは、ビス-マレイミドリンカー、ジスルフィドリンカー、ポリエチレングリコール(PEG)リンカー、グリシンリンカー/スペーサー、リジンリンカー/スペーサー及びアルギニンリンカー/スペーサーからなる群より選択される。
幾つかの実施形態では、二量体ペプチドのような多量体ペプチドは、単量体ペプチドのN-末端の遊離アミノ基に、該単量体ペプチドを別の単量体ペプチドに連結するリンカーを含む。
幾つかの実施形態では、二量体ペプチドのような多量体ペプチドは、単量体ペプチドのC-末端の遊離カルボキシ基に、該記単量体ペプチドを別の単量体ペプチドに連結するリンカーを含む。
このようなリンカーについての少なくとも2つのオプションは、A.R Jacobsonら,J. Med. Chem. 1989, 32, 1708-1717及びD Giannottiら,Journal of Medicinal Chemistry, 2000, Vol. 43, No. 22(これらの開示は参照により組み込まれる)に記載されている。
或いは、ペプチドのN末端間の連結は、Br-(CH2)n-Brとの反応により確立され得る。
リンカーの長さは、グリシン残基の付加により変化し得る。例えば、Fmoc-NH-CH2CH2-NH-Gly-NH2を使用し得る。
【0075】
二量体ペプチドがコハク酸を介する接合により製造されるこのような合成の例は、以下のとおりであり得る:
(H-Gly-Gly-Ala-Lys-Arg-Arg-Val-Val-Gln-Arg-Glu-Lys-Arg-Ala-Gly-Glu-Arg-Glu-Lys-Arg-Ala-NH2)E(H-Gly-Gly-Ile-Glu-Glu-Glu-Gly-Gly-Arg-Asp-Arg-Asp-Arg-Gly-Gly-Glu-Gln-Asp-Arg-Asp-Arg-NH2)F (Gly1EとGly1Fとの間のコハク酸リンカー)
この二量体は、以下の2つの単量体の反応から生じた。
単量体E
H-Gly-Gly-Ala-Lys-Arg-Arg-Val-Val-Gln-Arg-Glu-Lys-Arg-Ala-Gly-Glu-Arg-Glu-Lys-Arg-Ala-NH2 (配列番号143)
単量体F
H-Gly-Gly-Ile-Glu-Glu-Glu-Gly-Gly-Arg-Asp-Arg-Asp-Arg-Gly-Gly-Glu-Gln-Asp-Arg-Asp-Arg-NH2 (配列番号144)
【0076】
この2つの単量体を下記に概説する反応スキームに従って反応させてヘテロ二量体を得る;連結は鎖EのGly1のN-末端と鎖FのGly1のN-末端との間である。
単量体E及びFをSieberアミド樹脂上に別個に合成する。ペプチドを樹脂上に残したまま、N-末端GlyのFmoc-基を除去する。ペプチドを樹脂から切断する。得られる保護ペプチドEを無水コハク酸と反応させた後、保護ペプチドFと反応させる。その後、95% TFAで保護基を除去する。形成したヘテロ二量体は、当業者に公知の従来の精製法により、未反応単量体から精製してもよい。
【0077】
二量体ペプチドがジ-アミノプロパンを介する接合により製造される合成の例は、以下のとおりであり得る:
(H-Gly-Gly-Ala-Lys-Arg-Arg-Val-Val-Gln-Arg-Glu-Lys-Arg-Ala-Gly-Glu-Arg-Glu-Lys-Arg-Ala-Gly-Gly)G(H-Gly-Gly-Ile-Glu-Glu-Glu-Gly-Gly-Arg-Asp-Arg-Asp-Arg-Gly-Gly-Glu-Gln-Asp-Arg-Asp-Arg-Gly-Gly)H トリフルオロ酢酸塩(Gly23とGly23との間のジアミノプロパンリンカー)
この二量体は、下記の2つの保護単量体の反応から製造した。
単量体G
H-Gly-Gly-Ala-Lys-Arg-Arg-Val-Val-Gln-Arg-Glu-Lys-Arg-Ala-Gly-Glu-Arg-Glu-Lys-Arg-Ala-Gly-Gly-COOH (配列番号145)
単量体H
H-Gly-Gly-Ile-Glu-Glu-Glu-Gly-Gly-Arg-Asp-Arg-Asp-Arg-Gly-Gly-Glu-Gln-Asp-Arg-Asp-Arg-Gly-Gly-COOH (配列番号146)
【0078】
この2つの単量体G及びHを下記に概説する反応スキームに従って反応させてヘテロ二量体を得る;連結は鎖GのGly23のC-末端と鎖HのGly23のC-末端との間である。
単量体G及びHを2-クロロトリチル樹脂上に別個に合成する。樹脂から切断する前に、Boc-Gly-OHを樹脂上のペプチドに結合させる。次いで、得られるペプチドをBoc-保護する。或いは、樹脂から切断する前にアセチル化してもよい。得られる保護ペプチドGをFmoc-ジアミノプロパンと反応させる。Fmocを脱保護し、Gを保護ペプチドHのC末端にペプチド結合を介してカップリングする。その後、95% TFAで保護基を除去する。形成したヘテロ二量体は、当業者に公知の従来の精製法により、未反応単量体から精製してもよい。
【0079】
Cys-Lys橋架けの合成方法:
BI400-Bトリフルオロ酢酸塩の調製による例示
(H-Gly-Ala-Lys-Arg-Arg-Val-Val-Gly-Gly-Cys(2-オキソ-エチル)-Gly-Gly-Ala-Lys-Arg-Arg-Val-Val-Gln-Arg-Glu-Lys-Arg-Ala-Gly-Glu-Arg-Glu-Lys-Arg-Ala-NH2)A(H-Gly-Lys-Gly-Gly-Ile-Glu-Glu-Glu-Gly-Gly-Arg-Asp-Arg-Asp-Arg-Gly-Gly-Glu-Gln-Asp-Arg-Asp-Arg-NH2)B トリフルオロ酢酸塩(Cys(2-オキソ-エチル)9AとLys2Bとの間のチオエーテル結合)
この二量体は、下記の2つの保護単量体の反応から製造した。
単量体A
H-Gly-Ala-Lys-Arg-Arg-Val-Val-Gly-Gly-Cys-Gly-Gly-Ala-Lys-Arg-Arg-Val-Val-Gln-Arg-Glu-Lys-Arg-Ala-Gly-Glu-Arg-Glu-Lys-Arg-Ala-NH2 (配列番号121)
単量体B
H-Gly-Lys(ブロモアセチル)-Gly-Gly-Ile-Glu-Glu-Glu-Gly-Gly-Arg-Asp-Arg-Asp-Arg-Gly-Gly-Glu-Gln-Asp-Arg-Asp-Arg-NH2;(配列番号122)
【0080】
又は、400-Seq Bトリフルオロ酢酸塩の調製による例示
(H-Gly-Ala-Lys-Arg-Arg-Val-Val-Gly-Gly-Cys(2-オキソ-エチル)-Gly-Gly-Ala-Lys-Arg-Arg-Val-Val-Gln-Arg-Glu-Lys-Arg-Ala-Gly-Glu-Arg-Glu-Lys-Arg-Ala-NH2)A(H-Gly-Lys-Gly-Gly-Ile-Glu-Glu-Glu-Gly-Gly-Arg-Asp-Arg-Asp-Arg-Gly-Gly-Gln-Asp-Arg-Asp-Arg-NH2)B トリフルオロ酢酸塩 (Cys(2-オキソ-エチル)9AとLys2Bとの間のチオエーテル結合)
この二量体は、下記の2つの保護単量体の反応から製造した。
単量体A
H-Gly-Ala-Lys-Arg-Arg-Val-Val-Gly-Gly-Cys-Gly-Gly-Ala-Lys-Arg-Arg-Val-Val-Gln-Arg-Glu-Lys-Arg-Ala-Gly-Glu-Arg-Glu-Lys-Arg-Ala-NH2 (配列番号121)
単量体B
H-Gly-Lys(ブロモアセチル)-Gly-Gly-Ile-Glu-Glu-Glu-Gly-Gly-Arg-Asp-Arg-Asp-Arg-Gly-Gly-Gln-Asp-Arg-Asp-Arg-NH2 (配列番号147)
この2つの単量体を下記に概説する反応スキームに従って反応させてヘテロ二量体を得る;鎖BのLys2(ブロモアセチル)側鎖と鎖AのCysとの間で連結がなされる。
【0081】
中性pH及び室温で、緩衝化水溶液中のブロモアセチル部分は、システイン中のチオール基のようなSH-含有部分に対して非常に反応性である。よって、システインが他のペプチド配列に存在する場合、SHはブロモアセチルを攻撃して分子間チオエーテル橋架けを形成する。反応が、NaHCO3のようなナトリウム-含有緩衝剤で緩衝化されていると、唯一の反応副産物は無害の塩であるNaBrである。
形成したヘテロ二量体は、当業者に公知の従来の精製法により、未反応単量体から精製してもよい。
【0082】
2つのペプチド配列間のオキシム結合(分子間結合)の合成方法:
400-Seq B*トリフルオロ酢酸塩の調製による例示
(H-Gly-Ala-Lys-Arg-Arg-Val-Val-Gly-Gly-Dpr(COCHO)-Gly-Gly-Ala-Lys-Arg-Arg-Val-Val-Gln-Arg-Glu-Lys-Arg-Ala-Gly-Glu-Arg-Glu-Lys-Arg-Ala-NH2)D(H-Gly-Lys(アミノオキシアセチル化)--Gly-Gly-Ile-Glu-Glu-Glu-Gly-Gly-Arg-Asp-Arg-Asp-Arg-Gly-Gly-Gln-Asp-Arg-Asp-Arg-NH2)C トリフルオロ酢酸塩(Dpr(COCHO)-)9DとLys(アミノオキシアセチル化)2Cとの間でオキシムが形成される)
この二量体は、下記の2つの単量体の反応から製造した。
単量体C
H-Gly-Lys(アミノオキシアセチル)-Gly-Gly-Ile-Glu-Glu-Glu-Gly-Gly-Arg-Asp-Arg-Asp-Arg-Gly-Gly-Gln-Asp-Arg-Asp-Arg-NH2 (配列番号148)
単量体D
H-Gly-Ala-Lys-Arg-Arg-Val-Val-Gly-Gly-Dpr(Ser)-Gly-Gly-Ala-Lys-Arg-Arg-Val-Val-Gln-Arg-Glu-Lys-Arg-Ala-Gly-Glu-Arg-Glu-Lys-Arg-Ala-NH2 (配列番号149)
【0083】
この2つの単量体を下記に概説する反応スキームに従って反応させてヘテロ二量体を得る;鎖CのLys2(アミノオキシアセチル化)側鎖と鎖Dの酸化Dpr(Ser)との間で連結がなされる。
LysからのMtt基の除去後、ペプチドが依然として樹脂に付着している間に、アミノオキシアセチル化(AoA)単量体Cを、アミノオキシ酢酸をLysにカップリングすることによって合成した。次いで、ペプチドを固相支持体から切断し、従来の精製法により精製した。単量体Dは、樹脂からの切断及び精製後、パーヨーデート(periodate)でのセリニルジアミノプロピオン酸残基(Dpr(Ser))のアルデヒド官能基への酸化により製造した。等モル量の単量体A及びBをアセトニトリル及びアセテート緩衝剤(pH4)中に溶解した。室温にて16時間の反応後、生成物C-オキシム-Dを当業者に公知の従来の精製法により単離した。
Dpr=ジアミノプロピオン酸
Fmoc-Dpr(Boc-Ser(tBu))-OH Merck 04-12-1186
【0084】
PEG-リンカーを用いる二量体の合成方法:
二量体のような多量体ペプチド(例えば、ヘテロ二量体ペプチド)は、下記のプロトコールによって合成し得るが、これに限定されない:
脱保護Asp又はGlu残基(単量体1)を含有するペプチジル樹脂に、DMF中のHBTU、DIPEA及びTrt-アミノPEGアミンを加える。この混合物を一晩カップリングさせる。樹脂を溶液から濾去し、標準的なプロトコルにより洗浄する。Trt基をTrt-PEG化ペプチドから除去する。次いで、HBTU及びDIPEAを用いて、脱保護Asp又はGlu残基を含有する単量体2を露出アミノ基にカップリングする。切断後、所望の生成物を、任意の適切な技法を用いて精製し、所望の多量体ペプチドを得る。
【0085】
幾つかの実施形態では、単離された単量体ペプチドは、分子内Cys-Cys結合の形態のような分子内結合を含有する。「分子内結合」(「鎖内結合」と交換可能に使用する)は、同じペプチド鎖内の2つの異なるアミノ酸間の結合である(が、これらアミノ酸はペプチド配列中で必ずしも互いに近接していない)ことを理解すべきである。したがって、幾つかの実施形態では、本発明による単離された多量体ペプチドは、1以上の単量体の分子内結合及び(二量体のような)多量体ペプチドの2つの鎖間の分子間結合の両方を含み得る。この分子内結合は、同じペプチド配列内のシステイン残基間で形成されるCys-Cys結合の形態であり得る。幾つかの実施形態では、単量体は、他の単量体ペプチド配列のアミノ酸残基とチオエーテル結合若しくはオキシム結合のような結合又はPEGリンカーを介するような結合をなすLys残基又は他のアミノ酸残基(例えば、Ser、Cys、Asp又はGlu)に由来する分子内結合を含む。
【0086】
ポリLys又はMAPSを用いる多量体ペプチドの合成方法:
ポリLys又はMAPS(多重抗原ペプチド)が、少なくとも20年にわたって、強力な免疫原性応答を生じさせるキャリアタンパク質として広く使用されている。MAPシステムは、標準の固相化学を用いて複数の興味対象のエピトープ配列を平行して構築することができる骨格を形成するために、放射状に3分岐以上に分岐したリジンコアのペプチド性コアを利用する。
MAPシステムは、AnaSpec, Bio-synthesis Inc.などのような幾つかの会社から入手可能な商品である。この製品は、カタログに提示されているように、単に、2つの(同一)ペプチド配列のポリLysコアへの付着を可能にする。しかし、2つの異なるペプチド配列のリジンのα-及びε-アミノ官能基に対して異なる保護基を用いることで2つの異なるペプチド配列を連結することも可能である。
MAPシステムの使用は下記を含む文献に記載されている:Wang, C. Yら,"Long-term high-titer neutralizing activity induced by octameric synthetic HIV antigen" Science 254, 285-288 (1991)、Posnett, D.ら,"A novel method for producing anti-peptide antibodies" J. Biol. Chem. 263, 1719-1725 (1988)及びTam, J. P. "Synthetic peptide vaccine design: synthesis and properties of a high-density multiple antigenic peptide system" PNAS USA 85, 5409-5413 (1988)。
【0087】
MAPシステムはまた、適切に官能化された4価又は8価ポリリジン構築物とペプチド抗原との化学的(チオエーテル、オキシム、ヒドラゾン)連結により製造され得る。この化学的連結の使用によれば、連結される2つのペプチド配列は、別々に合成されるので、同一でなくてもよい。
更に、MAP-ベースシステムの新規な適用は、固体支持体上で、MAPの樹状アームにポリ(エチレングリコール)(PEG)鎖を含有する「プローブ」を合成することである。
MAPシステムの使用は、多量体複合体のサイズを増大させ、免疫原性応答を増大させ得る。
【0088】
PEGを用いる多量体ペプチドの合成方法:
PEGリンカーに使用すべき適切な多重アーム活性化PEGは、例えば、下記の構造を有する化合物として市販されている:
【化1】
(式中、Xは、とりわけ、エタンチオール-CH2CH2SH(エピトープ又はチオエーテル連結とのS-S橋架けを形成するために使用し得る)又はプロピルアミン-CH2CH2CH2NH2であり得る。これらハンドル(handle)は、好ましくは、2つの同一ペプチド配列の連結を可能にし、ポリ-単量体エピトープを提示する構築物として見られ得る。しかし、二量体(連結された2つのエピトープ)を上記PEGに固着できる。
【0089】
ペプチド-ポリ-L-Lys(PLL)-ポリエチレングリコール(PEG)構築物の合成方法:
ペプチド-PLL-PEG構築物は、下記のプロトコールによって合成し得るが、これに限定されない:
Fmoc-ポリ-L-Lys-樹脂(市販品)を20%ピペリフィン-DMFで脱保護する。CH2Cl2-NMPの混合溶媒中にFmoc-NH-PEG4-COOHを、続いてHBTU及びDIPEAを加え、反応を24時間進行させる。得られるPEG化ポリ-L-Lys-樹脂を洗浄し、PEG化工程を繰り返す。カイザーニンヒドリン試験により、否定的な判断が得られるまで、反応をモニターする。Fmoc基の脱保護後、4つの同一ペプチド鎖を、段階的固相手順により分岐ポリ-L-Lys-ポリエチレングリコールコアに直接合成する。HBTU及びDIPEAで活性化した全ての残基を2時間カップリングさせる。このカップリングをカイザーニンヒドリン試験によりモニターし、必要であれば繰り返す。切断後、任意の適切な技法を用いて所望の生成物を精製して所望のペプチド構築物を得る。
【0090】
表1(下線を付したアミノ酸は二量体分子中でのリンカーの位置を示す;大文字のCは、同じペプチド配列中の別のシステイン残基との分子内結合に関与していてもよいシステイン残基を示す。ホモアルギニンは「Har」と略す。ノルロイシンは「Nle」と略すか、或いは一文字表記「Z」で表す。N-ε-メチル化Lysは「Lys(Me)」と略し、シトルリンは一文字表記「B」で表し、ジアミノプロピオン酸は「Dpr」と略し、セリニルジアミノプロピオン酸は「Dpr(Ser)」と略す。Flu;インフルエンザの略号)
【0091】
【表1-1】
【0092】
【表1-2】
【0093】
【表1-3】
【0094】
【表1-4】
【0095】
【表1-5】
【0096】
【表1-6】
【0097】
本発明の具体的実施形態
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、X1、X3及び任意成分X5は各々独立して1、2、3、4又は5アミノ酸の直鎖配列を規定する。
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、X1、X3及び任意成分X5は、グリシン、アルギニン、ノルロイシン、グルタミン、セリン、リジン、トリプトファン、システイン又はそれらの誘導体から選択される1以上のアミノ酸からなる。誘導体は、指定されたアミノ酸のいずれかについての誘導体であり得る。
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、X1、X3及び任意成分X5は、グリシン、アルギニン、ノルロイシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、セリン、リジン、トリプトファン、システイン、オルニチン、ジアミノプロピオン酸(Dpr)又はそれらの誘導体から選択される1以上のアミノ酸からなる。誘導体は、指定されたアミノ酸のいずれかについての誘導体であり得る。
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、X5及び/又は成分X6は存在しない。
【0098】
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、X2及び/又はX4及び/又はX6は、特定の天然抗原に対して、60%を超えるような、65%を超えるような、70%を超えるような、75%を超えるような、80%を超えるような、85%を超えるような、90%を超えるような、95%を超えるような、96%を超えるような、97%を超えるような、98%を超えるような、99%を超えるような、100%のような、55%を超える配列同一性を有する。
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、特定の天然抗原は、細菌、ウイルス、寄生体、真菌のような感染因子、又はガン遺伝子(肺、胃、乳ガン)のようなガン抗原、又は糖尿病、多発性硬化症(MS)、セリアック病、筋痛性脳脊髄炎(ME)、乾癬及び/若しくはクローン病のような自己免疫疾患を引き起こす抗原のような疾患抗原に由来するタンパク質又はペプチド配列である。
【0099】
したがって、該当する抗原が由来し得ると確証されたか又は疑われる自己免疫疾患としては、無酸症自己免疫性活動性慢性肝炎、急性播種性脳脊髄炎、急性出血性白質脳炎、アジソン病、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、筋萎縮性側索硬化症、強直性脊椎炎、抗-GBM/TBM腎炎、抗リン脂質抗体症候群、抗合成酵素抗体症候群、関節炎、アトピー性アレルギー、アトピー性皮膚炎、自己免疫性再生不良性貧血、自己免疫性心筋症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性末梢ニューロパシー、自己免疫性膵炎、自己免疫性多内分泌腺症候群タイプI、II及びIII、月経疹、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性ブドウ膜炎、バロー病/バロー同心円性硬化症、ベーチェット症候群、ベルガー病、ビッカースタフ脳炎、ブラウ(Blau)症候群、水疱性類天疱瘡、キャッスルマン病、シャーガス病、慢性疲労免疫機能不全症候群、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパシー、慢性再発性多巣状骨髄炎、慢性ライム病、慢性閉塞性肺疾患、チャーグ-ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、小児脂肪便症、コーガン症候群、寒冷血球凝集素病、補体成分2欠乏症、頭蓋動脈炎、CREST症候群、クローン病(特発性炎症性腸疾患「IBD」の2つのタイプのうちの1つ)、クッシング症候群、皮膚白血球破砕性血管炎、ドゴー病、ダーカム病、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、I型糖尿病、広汎性皮膚全身性硬化症、ドレスラー症候群、円板状エリテマトーデス、湿疹、エンドメトリオーシス、エンテシティス(Enthesitis)-関連関節炎、好酸球性筋膜炎、後天性表皮水疱症、結節性紅斑、本態性混合クリオグロブリン血症、エヴァンズ症候群、進行性骨化性線維形成異常症、線維筋痛症、線維筋炎、線維化肺胞炎、胃炎、胃腸類天疱瘡、巨細胞性動脈炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、グレーヴズ病、ギヤン-バレー症候群(GBS)、橋本脳炎、橋本甲状腺炎、溶血性貧血、ヘーノホ−シェーンライン紫斑病、妊娠性疱疹、化膿性汗腺炎、ヒューズ症候群(抗リン脂質症候群を参照)、低ガンマグロブリン血症、特発性炎症性脱髄疾患、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(自己免疫性血小板減少性紫斑病を参照)、IgA腎症(ベルガー病とも)、封入体筋炎、炎症性脱髄性多発ニューロパシー、間質性膀胱炎、過敏性腸症候群(IBS)、若年性特発性関節炎、若年性関節リウマチ、川崎病、ランバート-イートン筋無力症症候群、白血球破砕性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、線状IgA疾患(LAD)、ルー・ゲーリグ病(筋萎縮性側索硬化症とも)、ルポイド肝炎、エリテマトーデス、マジード症候群、メニエール病、顕微鏡的多発性血管炎、ミラー-フィッシャー症候群、混合結合組織病、限局性強皮症、ムッハ-ハーベルマン病、マックル-ウェルズ症候群、多発性骨髄腫、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、ナルコレプシー、視神経脊髄炎(ドヴィック病とも)、神経ミオトニー、眼瘢痕性類天疱瘡、眼球クローヌス筋クローヌス症候群、オード甲状腺炎、回帰性リウマチ、PANDAS(ストレプトコッカス関連小児自己免疫性神経精神疾患;Pediatric Autoimmune Neuropsychiatric Disorders Associated with Streptococcus)、腫瘍随伴性小脳変性、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、ペイリー-ロンベルグ症候群、パーソネージ-ターナー症候群、扁平部炎、天疱瘡、尋常性天疱瘡、悪性貧血、静脈周囲脳脊髄炎、POEMS症候群、結節性多発性動脈炎、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、進行性炎症性ニューロパシー、乾癬、乾癬性関節炎、壊疽性膿皮症、赤芽球ろう、ラスムッセン脳炎、レイノー現象、再発性多発性軟骨炎、ライター症候群、不穏下肢症候群、後腹膜線維症、慢性関節リウマチ、リウマチ熱、サルコイドーシス、精神分裂病、シュミット症候群、シュニッツラー症候群、強膜炎、強皮症、シェーグレン症候群、脊椎関節症(Spondyloarthropathy)、粘着血液症候群(Sticky blood syndrome)、スティル病、スティッフパーソン症候群、亜急性細菌性心内膜炎(SBE)、スザック症候群、スウィート症候群、シドナム舞踏病、交感性眼炎、高安動脈炎、側頭動脈炎(「巨細胞動脈炎」としても知られる)、トロサ-ハント症候群、横断脊髄炎、潰瘍性結腸炎(特発性炎症性腸疾患「IBD」の2つのタイプのうちの1つ)、未分化結合組織病、未分化脊椎関節症、脈管炎、白斑、ヴェーゲナー肉芽腫症、ウィルソン症候群及びヴィスコット‐オールドリッチ症候群が挙げられる。
【0100】
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、特定の天然抗原は、キャプシドタンパク質のような構造タンパク質、調節タンパク質、酵素タンパク質及びタンパク質分解性タンパク質のようなウイルスタンパク質である。
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、ウイルスタンパク質は、C型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス(例えば、M2タンパク質)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サイトメガロウイルス(CMV)及びヒトパピローマウイルス(HPV)から選択されるウイルスの構造タンパク質(例えば、コアタンパク質又はエンベロープタンパク質)のようなタンパク質である。
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、ウイルスタンパク質は、遺伝子型1(例えば、サブタイプ1a及び1b)、遺伝子型2(サブタイプ2a及び2b)、遺伝子型3(例えば、サブタイプ3a)、遺伝子型4、遺伝子型5及び遺伝子型6のような特定の遺伝子型の任意の1つのHCVコンセンサス配列から選択されるC型肝炎ウイルスのウイルスタンパク質である。
【0101】
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、X1-X2-X3-X4-X5-X6により規定されるアミノ酸配列は、前記天然抗原の天然型配列中には見出されない。
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、X1-X2-X3-X4により規定されるアミノ酸配列は、前記天然抗原の天然型配列中には見出されない。
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、X1-X2-X3により規定されるアミノ酸配列は、前記天然抗原の天然型配列中には見出されない。
【0102】
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、単量体ペプチドは、19〜60アミノ酸のような、20〜60アミノ酸のような、21〜60アミノ酸のような、22〜60アミノ酸のような、23〜60アミノ酸のような、24〜60アミノ酸のような、25〜60アミノ酸のような、26〜60アミノ酸のような、27〜60アミノ酸のような、28〜60アミノ酸のような、29〜60アミノ酸のような、30〜60アミノ酸のような、31〜60アミノ酸のような、32〜60アミノ酸のような、33〜60アミノ酸のような、34〜60アミノ酸のような、35〜60アミノ酸のような、36〜60アミノ酸のような、37〜60アミノ酸のような、38〜60アミノ酸のような、39〜60アミノ酸のような、40〜60アミノ酸のような、42〜60アミノ酸のような、44〜60アミノ酸のような、46〜60アミノ酸のような、48〜60アミノ酸のような、50〜60アミノ酸のような、52〜60アミノ酸のような、54〜60アミノ酸のような、56〜60アミノ酸のような、58〜60アミノ酸のような、18〜60アミノ酸のものである。
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、単量体ペプチドは、18〜58アミノ酸のような、18〜56アミノ酸のような、18〜54アミノ酸のような、18〜52アミノ酸のような、18〜50アミノ酸のような、18〜48アミノ酸のような、18〜46アミノ酸のような、18〜44アミノ酸のような、18〜42アミノ酸のような、18〜40アミノ酸のような、18〜39アミノ酸のような、18〜38アミノ酸のような、18〜37アミノ酸のような、18〜36アミノ酸のような、18〜35アミノ酸のような、18〜34アミノ酸のような、18〜33アミノ酸のような、18〜32アミノ酸のような、18〜31アミノ酸のような、18〜30アミノ酸のような、18〜29アミノ酸のような、18〜28アミノ酸のような、18〜27アミノ酸のような、18〜26アミノ酸のような、18〜25アミノ酸のような、18〜24アミノ酸のような、18〜23アミノ酸のような、18〜22アミノ酸のような、18〜21アミノ酸のような、18〜20アミノ酸のような、18〜19アミノ酸のような、18〜60アミノ酸のものである。
【0103】
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、単量体ペプチドは、約50アミノ酸を超えないような、約45アミノ酸を超えないような、約40アミノ酸を超えないような、約38アミノ酸を超えないような、約36アミノ酸を超えないような、約34アミノ酸を超えないような、約32アミノ酸を超えないような、約30アミノ酸を超えないような、約28アミノ酸を超えないような、約26アミノ酸を超えないような、約24アミノ酸を超えないような、約22アミノ酸を超えないような、約20アミノ酸を超えないような、約18アミノ酸を超えないような、約16アミノ酸を超えないような、約14アミノ酸を超えないような、約12アミノ酸を超えないような、約10アミノ酸を超えないような、約55アミノ酸を超えないアミノ酸からなる。
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、単量体ペプチドは、少なくとも約12アミノ酸のような、少なくとも約14アミノ酸のような、少なくとも約16アミノ酸のような、少なくとも約18アミノ酸のような、少なくとも約20アミノ酸のような、少なくとも約22アミノ酸のような、少なくとも約24アミノ酸のような、少なくとも約26アミノ酸のような、少なくとも約28アミノ酸のような、少なくとも約30アミノ酸のような、少なくとも約32アミノ酸のような、少なくとも約34アミノ酸のような、少なくとも約36アミノ酸のような、少なくとも約38アミノ酸のような、少なくとも約40アミノ酸のような、少なくとも約45アミノ酸のような、少なくとも約50アミノ酸のような、少なくとも約55アミノ酸のような、少なくとも約60アミノ酸のような、少なくとも約10アミノ酸からなる。
【0104】
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、X2、X4及び任意成分X6は各々独立して、5〜10アミノ酸のような、5〜8アミノ酸のような、5〜12アミノ酸の直鎖配列を規定する。
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、X1、X3及び任意成分X5は各々独立して、グリシン、アルギニン、トリプトファン及びシステイン並びにそれらの誘導体から独立して選択される1、2、3、4又は5アミノ酸の直鎖配列を規定する。幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、X1-X2-X3-X4-X5-X6の全体の正味電荷は、1、2、3、4又は5を上回るような0以上である。
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、X1、X3及び任意成分X5は各々独立して、グリシン、アルギニン、ノルロイシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、セリン、リジン、トリプトファン、システイン、オルニチン、ジアミノプロピオン酸(Dpr)及びそれらの誘導体から独立して選択される1、2、3、4又は5アミノ酸の直鎖配列を規定する。幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、X1-X2-X3-X4-X5-X6の全体の正味電荷は、1、2、3、4又は5を上回るような0以上である。
【0105】
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、X1、X3及び任意成分X5は各々独立して、グリシン、アルギニン、トリプトファン及びシステイン並びにそれらの誘導体から独立して選択される1、2、3、4又は5アミノ酸の直鎖配列を規定する。幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、X1-X2-X3-X4-X5-X6の全体の正味電荷は、1、2、3、4又は5を上回るような0以上である。
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、X1、X2、X3、X4、X5及びX6から選択される任意の1つの配列の全体の正味電荷は、1、2、3、4又は5を上回るような0以上である。
X1、X2、X3、X4、X5及びX6から選択される任意の1つの配列(例えばX3又はX5)のような単量体ペプチドの部分は、X1、X2、X3、X4、X5及びX6から選択される任意の他の配列のような単量体ペプチドの他の部分が0を上回る全体の正味電荷を有する場合には、0を下回る全体の正味電荷を有し得ることを理解すべきである。
単量体ペプチドの部分は、ヘルパー細胞のような細胞表面に付着することができることが必須であり、この結合は、細胞膜への結合位置で配列の正味電荷が正であることにより促進される。
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、単量体ペプチドは体液性免疫応答を誘導することができる。
【0106】
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、配列X1及び/又はX3及び/又はX5は、K、Lys(Me)、RRG、G(Dpr(Ser))G、Dpr、Dpr(ser)、GG(Dpr(Ser))GG(配列番号150)、GEG、CS、GDG、E、G(Lys(Me))G、D、RR、WWGC(配列番号54)、RRG、RRZC(配列番号55)、WWQC(配列番号56)、WW、RR-Har、Har、WDWGC(配列番号57)、CGG、CGGG(配列番号58)、GCGG(配列番号59)、G、GKG、GC、GG、C、R、GCG、CG、GRR、GGCGG(配列番号60)、CGGKG(配列番号61)、CGGKGG(配列番号62)、GGKGG(配列番号63)、KG及びGWKから選択される。
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、配列X2及び/又はX4及び/又はX6は、SLLTEVETP(配列番号64)、SLZTDIETP(配列番号65)、TDIET(配列番号66)、CSLLT(配列番号67)、SLLTEVQTPIRN(配列番号68)、TPIRSEWGCRSN(配列番号69)、IDTPIR(配列番号70)、AKRRV(配列番号71)、IEEEG(配列番号72)、AKRRVV(配列番号73)、DQQLL(配列番号74)、AEEEVV(配列番号75)、GIEEE(配列番号76)、IEEEGGRDRDR(配列番号77)、CAKRRVVC(配列番号78)、IEEEGGERDRDR(配列番号79)、IEEEGGQDRDR(配列番号80)、IEEEGGEQDRDR(配列番号81)、EEEIGGRDRD(配列番号82)、RLEPWKH(配列番号83)、FHSQV(配列番号84)、FITKGLGISY(配列番号85)、LLADARVCS(配列番号86)、GV(Nle)AGIAYFS(配列番号87)、VETPIR(配列番号88)、VETPIRN(配列番号89)、SNDSS(配列番号90)、TPIBQDWG(配列番号91)、AKRRVVQREKRA(配列番号92)、IEEEGGERDR(配列番号93)、AEEEIV(配列番号94)、RDRDR(配列番号95)、ERDRDR(配列番号96)、AKRRVVEREKRA(配列番号97)、QDRDR(配列番号98)、EQDRDR(配列番号99)、RDRDQ(配列番号100)、GSQPKTA(配列番号101)、FITKGLGISYGRK(配列番号102)、LLADARVSA(配列番号103)、GVLAGIAYYS(配列番号104)、TPIRNEWG(配列番号105)、SEWGSRSN(配列番号106)、SLZTDIETPG(配列番号107)、QREKRAV(配列番号108)、QREKR(配列番号109)、IEEEGG(配列番号110)、EREKRA(配列番号111)、QREKRA(配列番号112)、ERDRD(配列番号113)、HPGSQ(配列番号114)、TPIXQEW(配列番号151)、EQDRDRGG(配列番号152)、GNWAKVL(配列番号153)、LLADARV(配列番号154)、NWAKVI(配列番号155)及びSGADRV(配列番号156)から選択される。
【0107】
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、単量体ペプチドは、Cys、Lys、Ser、Asp及びGlu残基又はそれらの誘導体から選択される1、2、3、4又は5アミノ酸のような少なくとも1つのアミノ酸を含んでなる。
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、単量体ペプチドは、1、2、3、4又は5システインのような少なくとも1つのシステインを含んでなる。
システインは、分子内Cys-Cys結合に関与し得るものもある一方、別のペプチド単量体への結合(すなわち、分子間結合)に関与し得るものもある。
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、配列X1及び/又はX3及び/又はX5は表1に規定されるとおりである。
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、配列X2及び/又はX4及び/又はX6は表1に規定されるとおりである。
【0108】
幾つかの実施形態では、構造X1-X2-X3-X4-X5-X6を有するペプチドは表1に規定されるとおりである。
幾つかの実施形態では、本発明による多量体ペプチドは二量体ペプチドである。
幾つかの実施形態では、2、3、4、5、6、7、8、9又は10の構造X1-X2-X3-X4-X5-X6を有する単量体ペプチドを含んでなる多量体(例えば二量体)ペプチドは、表1に規定されるとおりである。
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、配列X2及び/又はX4及び/又はX6は、5〜16アミノ酸のような、5〜15アミノ酸のような、5〜14アミノ酸のような、5〜13アミノ酸のような、5〜12アミノ酸のような、5〜10アミノ酸のような、4〜17アミノ酸の配列を規定する。
【0109】
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、配列X2及び/又はX4及び/又はX6は、6アミノ酸より多いような、7アミノ酸より多いような、8アミノ酸より多いような、9アミノ酸より多いような、10アミノ酸より多いような、11アミノ酸より多いような、12アミノ酸より多いような、13アミノ酸より多いような、14アミノ酸より多いような、15アミノ酸より多いような、16アミノ酸より多いような、5アミノ酸より多い配列を規定する。
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、配列X2及び/又はX4及び/又はX6は、16アミノ酸未満のような、15アミノ酸未満のような、14アミノ酸未満のような、13アミノ酸未満のような、12アミノ酸未満のような、11アミノ酸未満のような、10アミノ酸未満のような、9アミノ酸未満のような、8アミノ酸未満のような、7アミノ酸未満のような、6アミノ酸未満のような、17アミノ酸未満の配列を規定する。
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、配列X1及び/又はX3及び/又はX5は、グリシン(G)、アルギニン(R)、ノルロイシン(Nle)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、グルタミン(Q)、セリン(S)、リジン(K)、トリプトファン(W)、システイン(C)、オルニチン、ジアミノプロピオン酸(Dpr)及びそれらの誘導体から選択される1以上のアミノ酸を含む配列を規定する。
【0110】
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、単量体ペプチドは、1以上のCys-Cys結合のような1以上の分子内結合を含む。
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドにおいて、単量体ペプチドは、例えば、N-末端に最初の1、2又は3アミノ酸がD体で組み込まれることにより、又はN-末端に最初の1、2又は3アミノ酸がβ型若しくはγ型で組み込まれることにより、N-末端でのタンパク質分解性分解が遅延されている。
幾つかの実施形態では、本発明による二量体のような多量体ペプチドにおいて、2以上の単量体ペプチドは配列が同一である。
幾つかの実施形態では、本発明による二量体のような多量体ペプチドにおいて、2以上の単量体ペプチドは配列が異なる。
【0111】
幾つかの実施形態では、本発明による二量体のような多量体ペプチドにおいて、二量体のような多量体ペプチドの1、2又はそれより多いペプチド鎖は、例えば、N-末端に最初の1、2又は3アミノ酸がD体で組み込まれることにより、又はN-末端に最初の1、2又は3アミノ酸がβ型若しくはγ型で組み込まれることにより、N-末端でのタンパク質分解性分解が遅延されている。
幾つかの実施形態では、本発明による二量体のような多量体ペプチドにおいて、リンカーは、第1の単量体ペプチドのX1、X2、X3、X4、X5及びX6から選択される任意の配列内(例えば、X1、X2又はX3中)から、少なくとも1つの第2の単量体ペプチドのどこか(例えば、X1、X2又はX3の配列内)へ配置される。
【0112】
幾つかの実施形態では、本発明による二量体のような多量体ペプチドにおいて、リンカーは、第1の単量体ペプチドの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60から選択されるアミノ酸位置から、少なくとも1つの第2の単量体ペプチドの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60から選択される位置へ配置される。
【0113】
幾つかの実施形態では、本発明による二量体のような多量体ペプチドにおいて、リンカーは、第1の単量体ペプチドのX1、X2又はX3中から、少なくとも1つの第2の単量体ペプチドのどこか(例えば、X1、X2又はX3の配列内)へ配置される。
幾つかの実施形態では、本発明による二量体のような多量体ペプチドにおいて、二量体のような多量体ペプチドは、少なくとも13、14、15又は17アミノ酸のような少なくとも12アミノ酸のヘルパーエピトープを含み、該ヘルパーエピトープは、第1の単量体ペプチドからの2〜12アミノ酸と少なくとも1つの第2の単量体ペプチドからの2〜12アミノ酸のような、第1の単量体ペプチドからのアミノ酸配列と少なくとも1つの第2の単量体ペプチドからのアミノ酸配列とである組合せのアミノ酸配列からなる。
エピトープは、単量体ペプチドの配列内にのみ存在しなくてもよいことを理解すべきである。エピトープはまた、二量体のような多量体ペプチド配列において、第1の単量体ペプチドのアミノ酸と少なくとも1つの第2の単量体ペプチドのアミノ酸との組合せ(このアミノ酸の組合せは、第1の単量体ペプチド配列から少なくとも1つの第2の単量体ペプチド配列にわたる配列を形成する)内に存在してもよい。このエピトープは、連続アミノ酸配列であってもよいし、両単量体ペプチド中に見出されるアミノ酸を有する三次元エピトープであってもよい。
【0114】
幾つかの実施形態では、本発明による二量体のような多量体ペプチドにおいて、分子間結合は、2つのCys残基間のジスルフィド(S-S)結合である。
幾つかの実施形態では、本発明による二量体のような多量体ペプチドにおいて、分子間結合は、N-ε-メチル化Lys側鎖とAsp又はGlu残基の側鎖との間のメチル化ペプチド結合である。
幾つかの実施形態では、本発明による二量体のような多量体ペプチドにおいて、分子間結合は、第1の単量体ペプチド中のCys残基と少なくとも1つの第2の単量体ペプチド中の改変Lys残基との間のチオエーテル結合である。
幾つかの実施形態では、本発明による二量体のような多量体ペプチドにおいて、分子間結合はオキシム結合である。
幾つかの実施形態では、本発明による二量体のような多量体ペプチドにおいて、分子間結合は、第1の単量体ペプチド中の誘導体化Lys残基と少なくとも1つの第2の単量体ペプチド中の誘導体化Ser残基との間のオキシム結合である。
【0115】
幾つかの実施形態では、本発明による二量体のような多量体ペプチドにおいて、分子間結合は、第1の単量体ペプチド中の誘導体化リジン、オルニチン又はジアミノプロピオン酸残基と、少なくとも1つの第2の単量体ペプチド中の(例えば、セリニルジアミノプロピオン酸残基中、セリニルリジン残基中又はセリニルオルニチン残基中の)誘導体化セリン成分(例えば、セリン残基)との間のオキシム結合である。
幾つかの実施形態では、本発明による二量体のような多量体ペプチドにおいて、単量体ペプチドは、例えば第1の単量体ペプチド中のAsp又はGlu残基及び少なくとも1つの第2の単量体ペプチド中のAsp又はGlu残基を介して、ポリエチレングリコール(PEG)リンカーにより連結される。
幾つかの実施形態では、本発明による二量体のような多量体ペプチドにおいて、単量体ペプチドはいずれも、独立して、本明細書に規定されるとおりである。
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドは、本質的には、非-細胞透過性ペプチドである。他の実施形態では、本発明によるペプチドは、細胞透過性ペプチドである。幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドは、抗原提示細胞の細胞膜に付着することができる。
【0116】
抗原提示細胞のような細胞に付着し、進入するペプチドの能力への言及は、該ペプチドの完全配列及びそのフラグメント(例えば、エピトープを提示するフラグメント)への言及であることを理解すべきである。したがって、全体配列は本質的に非-細胞透過性ペプチドであるが、該ペプチドのフラグメントが抗原提示細胞のような細胞に効率的に進入することができる場合も該当し得る。
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドは、国際特許出願PCT/DK2011/050460に具体的に開示されているようなペプチドでも二量体ペプチドでもない。
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドは、下記:
CGGAKRRVVGGAKRRVVGQREKRAV (配列番号115)
CGGGDQQLLGGAEEEIVGGIEEEGGERDRDR (配列番号116)
CGGAKRRVVGGAKRRVVGGQREKR (配列番号117)
CGGGDQQLLGGAEEEIVGGIEEEGG (配列番号118)
CGGAEEEVVGGDQQLL (配列番号119)
GCGGAKRRVVGGAKRRVV (配列番号120)
GAKRRVVGGCGGAKRRVVQREKRAGEREKRA (配列番号121)
GKGGIEEEGGRDRDRGGEQDRDR (配列番号122)
GAKRRVVGGCGGAKRRVVQREKRAGEREKRA (配列番号123)
GKGGIEEEGGERDRDRGGQDRDR (配列番号124)
GAKRRVVGGCGGAKRRVVEREKRAGQREKRA (配列番号125)
GKGGIEEEGGQDRDRGGRDRDR (配列番号126)
GAKRRVVGGCGGAKRRVVEREKRAGQREKRA (配列番号127)
GKGGIEEEGGEQDRDRGGERDRD (配列番号128)
から選択されるもののような、国際特許出願PCT/EP2010/059513に具体的に開示されているようなペプチドでも二量体ペプチドでもない。
【0117】
幾つかの実施形態では、本発明によるペプチドは、下記:
【化2-1】
【0118】
【化2-2】
【0119】
【化2-3】
(ペプチドは下線を付したアミノ酸を介して連結されている)から選択される二量体ペプチドではない。
【0120】
番号を付した本発明による実施形態:
1.下記の構造:
X1-X2-X3-X4-X5-X6 (式I)
(式中、X1、X3及び任意成分X5は各々独立して、グリシン、アルギニン、ノルロイシン、グルタミン、セリン、リジン、トリプトファン、システイン又はそれらの誘導体から独立して選択される1、2、3、4又は5アミノ酸の直鎖配列を規定し;X2、X4及び任意成分X6は各々独立して、各々が特定の天然抗原に対して50%を超える配列同一性を有する5〜17アミノ酸の直鎖配列を規定する)
を有する、60を超えないアミノ酸からなる単離された単量体ペプチド。
【0121】
2.X2及び/又はX4及び/又はX6が、特定の天然抗原に対して、60%を超えるような、65%を超えるような、70%を超えるような、75%を超えるような、80%を超えるような、85%を超えるような、90%を超えるような、95%を超えるような、96%を超えるような、97%を超えるような、98%を超えるような、99%を超えるような、100%のような、55%を超える配列同一性を有する、実施形態1に記載の単離された単量体ペプチド。
3.前記特定の天然抗原が、細菌、ウイルス、寄生体、真菌のような感染因子又はガン遺伝子のようなガン抗原(肺、胃、乳ガン)又は糖尿病、多発性硬化症(MS)、セリアック病、筋痛性脳脊髄炎(ME)、乾癬及び/若しくはクローン病のような自己免疫疾患を引き起こす抗原のような疾患抗原に由来するタンパク質又はペプチド配列である、実施形態1又は2に記載の単離された単量体ペプチド。
【0122】
4.前記特定の天然抗原が、キャプシドタンパク質のような構造タンパク質、調節タンパク質、酵素タンパク質及びタンパク質分解性タンパク質のようなウイルスタンパク質である、実施形態1〜3のいずれか1項に記載の単離された単量体ペプチド。
5.前記ウイルスタンパク質が、C型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス(例えば、M2タンパク質)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サイトメガロウイルス(CMV)及びヒトパピローマウイルス(HPV)から選択されるウイルスの、コアタンパク質のようなタンパク質である、実施形態1〜4のいずれか1項に記載の単離された単量体ペプチド。
6.前記ウイルスタンパク質が、サブタイプ1a及び1bのような遺伝子型1、サブタイプ2a及び2bのような遺伝子型2、サブタイプ3aのような遺伝子型3、遺伝子型4、遺伝子型5及び遺伝子型6のような特定の遺伝子型の任意の1つのHCVコンセンサス配列から選択されるC型肝炎ウイルスのウイルスタンパク質である、実施形態5に記載の単離された単量体ペプチド。
【0123】
7.X1-X2-X3-X4-X5-X6により規定されるアミノ酸配列が前記天然抗原の天然型配列中に見出されない、実施形態1〜3のいずれか1項に記載の単離された単量体ペプチド。
8.単量体ペプチドが、19〜60アミノ酸のような、20〜60アミノ酸のような、21〜60アミノ酸のような、22〜60アミノ酸のような、23〜60アミノ酸のような、24〜60アミノ酸のような、25〜60アミノ酸のような、26〜60アミノ酸のような、27〜60アミノ酸のような、28〜60アミノ酸のような、29〜60アミノ酸のような、30〜60アミノ酸のような、31〜60アミノ酸のような、32〜60アミノ酸のような、33〜60アミノ酸のような、34〜60アミノ酸のような、35〜60アミノ酸のような、36〜60アミノ酸のような、37〜60アミノ酸のような、38〜60アミノ酸のような、39〜60アミノ酸のような、40〜60アミノ酸のような、42〜60アミノ酸のような、44〜60アミノ酸のような、46〜60アミノ酸のような、48〜60アミノ酸のような、50〜60アミノ酸のような、52〜60アミノ酸のような、54〜60アミノ酸のような、56〜60アミノ酸のような、58〜60アミノ酸のような、18〜60アミノ酸のものである、実施形態1〜7のいずれか1項に記載の単離された単量体ペプチド。
【0124】
9.単量体ペプチドが、18〜58アミノ酸のような、18〜56アミノ酸のような、18〜54アミノ酸のような、18〜52アミノ酸のような、18〜50アミノ酸のような、18〜48アミノ酸のような、18〜46アミノ酸のような、18〜44アミノ酸のような、18〜42アミノ酸のような、18〜40アミノ酸のような、18〜39アミノ酸のような、18〜38アミノ酸のような、18〜37アミノ酸のような、18〜36アミノ酸のような、18〜35アミノ酸のような、18〜34アミノ酸のような、18〜33アミノ酸のような、18〜32アミノ酸のような、18〜31アミノ酸のような、18〜30アミノ酸のような、18〜29アミノ酸のような、18〜28アミノ酸のような、18〜27アミノ酸のような、18〜26アミノ酸のような、18〜25アミノ酸のような、18〜24アミノ酸のような、18〜23アミノ酸のような、18〜22アミノ酸のような、18〜21アミノ酸のような、18〜20アミノ酸のような、18〜19アミノ酸のような、18〜60アミノ酸のものである、実施形態1〜8のいずれか1項に記載の単離された単量体ペプチド。
【0125】
10.単量体ペプチドが、約50アミノ酸を超えないような、約45アミノ酸を超えないような、約40アミノ酸を超えないような、約38アミノ酸を超えないような、約36アミノ酸を超えないような、約34アミノ酸を超えないような、約32アミノ酸を超えないような、約30アミノ酸を超えないような、約28アミノ酸を超えないような、約26アミノ酸を超えないような、約24アミノ酸を超えないような、約22アミノ酸を超えないような、約20アミノ酸を超えないような、約18アミノ酸を超えないような、約16アミノ酸を超えないような、約14アミノ酸を超えないような、約12アミノ酸を超えないような、約10アミノ酸を超えないような、約55アミノ酸を超えないアミノ酸からなる、実施形態1〜9のいずれか1項に記載の単離された単量体ペプチド。
【0126】
11.単量体ペプチドが、少なくとも約12アミノ酸のような、少なくとも約14アミノ酸のような、少なくとも約16アミノ酸のような、少なくとも約18アミノ酸のような、少なくとも約20アミノ酸のような、少なくとも約22アミノ酸のような、少なくとも約24アミノ酸のような、少なくとも約26アミノ酸のような、少なくとも約28アミノ酸のような、少なくとも約30アミノ酸のような、少なくとも約32アミノ酸のような、少なくとも約34アミノ酸のような、少なくとも約36アミノ酸のような、少なくとも約38アミノ酸のような、少なくとも約40アミノ酸のような、少なくとも約45アミノ酸のような、少なくとも約50アミノ酸のような、少なくとも約55アミノ酸のような、少なくとも約60アミノ酸のような、少なくとも約10アミノ酸からなる、実施形態1〜10のいずれか1項に記載の単離された単量体ペプチド。
12.X1-X2-X3-X4-X5-X6の全体の正味電荷が、1、2、3、4又は5を上回るような0以上である、実施形態1〜11のいずれか1項に記載の単離された単量体ペプチド。
【0127】
13.単量体ペプチドが体液性免疫応答を誘導することができる、実施形態1〜12のいずれか1項に記載の単離された単量体ペプチド。
14.配列X1及び/又はX3及び/又はX5が、RR、WWGC(配列番号54)、RRG、RRZC(配列番号55)、WWQC(配列番号56)、WW、RR-Har、Har、WDWGC(配列番号57)、CGG、CGGG(配列番号58)、GCGG(配列番号59)、G、GKG、GC、GG、C、R、GCG、CG、GRR、GGCGG(配列番号60)、CGGKG(配列番号61)、CGGKGG(配列番号62)、GGKGG(配列番号63)、KG及びGWKから選択される、実施形態1〜13のいずれか1項に記載の単離された単量体ペプチド。
【0128】
15.配列X2及び/又はX4及び/又はX6が、SLLTEVETP(配列番号64)、SLZTDIETP(配列番号65)、TDIET(配列番号66)、CSLLT(配列番号67)、SLLTEVQTPIRN(配列番号68)、TPIRSEWGCRSN(配列番号69)、IDTPIR(配列番号70)、AKRRV(配列番号71)、IEEEG(配列番号72)、AKRRVV(配列番号73)、DQQLL(配列番号74)、AEEEVV(配列番号75)、GIEEE(配列番号76)、IEEEGGRDRDR(配列番号77)、CAKRRVVC(配列番号78)、IEEEGGERDRDR(配列番号79)、IEEEGGQDRDR(配列番号80)、IEEEGGEQDRDR(配列番号81)、EEEIGGRDRD(配列番号82)、RLEPWKH(配列番号83)、FHSQV(配列番号84)、FITKGLGISY(配列番号85)、LLADARVCS(配列番号86)、GV(Nle)AGIAYFS(配列番号87)、VETPIR(配列番号88)、VETPIRN(配列番号89)、SNDSS(配列番号90)、TPIBQDWG(配列番号91)、AKRRVVQREKRA(配列番号92)、IEEEGGERDR(配列番号93)、AEEEIV(配列番号94)、RDRDR(配列番号95)、ERDRDR(配列番号96)、AKRRVVEREKRA(配列番号97)、QDRDR(配列番号98)、EQDRDR(配列番号99)、RDRDQ(配列番号100)、GSQPKTA(配列番号101)、FITKGLGISYGRK(配列番号102)、LLADARVSA(配列番号103)、GVLAGIAYYS(配列番号104)、TPIRNEWG(配列番号105)、SEWGSRSN(配列番号106)、SLZTDIETPG(配列番号107)、QREKRAV(配列番号108)、QREKR(配列番号109)、IEEEGG(配列番号110)、EREKRA(配列番号111)、QREKRA(配列番号112)、ERDRD(配列番号113)、HPGSQ(配列番号114)から選択される、実施形態1〜14のいずれか1項に記載の単離された単量体ペプチド。
【0129】
16.単量体ペプチドがCys、Lys、Ser、Asp及びGlu残基又はそれらの誘導体から選択される少なくとも1つのアミノ酸を含んでなる、実施形態1〜15のいずれか1項に記載の単離された単量体ペプチド。
17.配列X1及び/又はX3及び/又はX5が表1に規定されるとおりである、実施形態1〜16のいずれか1項に記載の単離された単量体ペプチド。
18.配列X2及び/又はX4及び/又はX6が表1に規定されるとおりである、実施形態1〜17のいずれか1項に記載の単離された単量体ペプチド。
【0130】
19.配列X2及び/又はX4及び/又はX6が、5〜16アミノ酸のような、5〜15アミノ酸のような、5〜14アミノ酸のような、5〜13アミノ酸のような、5〜12アミノ酸のような、5〜10アミノ酸のような、4〜17アミノ酸の配列を規定する、実施形態1〜18のいずれか1項に記載の単離された単量体ペプチド。
20.単量体ペプチドが1以上のCys-Cys結合のような1以上の分子内結合を含む実施形態1〜19のいずれか1項に記載の単離された単量体ペプチド。
21.単量体ペプチドが、例えば、N-末端において最初の1、2又は3アミノ酸がD体で組み込まれることにより、又はN-末端において最初の1、2又は3アミノ酸がβ型若しくはγ型で組み込まれることにより、N-末端でのタンパク質分解性分解が遅延されている、実施形態1〜20のいずれか1項に記載の単離された単量体ペプチド。
【0131】
22.
2以上の単量体ペプチドを含んでなり、各単量体ペプチドが独立して、下記の構造:
X1-X2-X3-X4-X5-X6 (式I)
(式中、X1、X3及び任意成分X5は各々独立して、グリシン、アルギニン、ノルロイシン、グルタミン、セリン、リジン、トリプトファン、システイン又はそれらの誘導体から独立して選択される1、2、3、4又は5アミノ酸の直鎖配列を規定し;X2、X4及び任意成分X6は各々独立して、各々が特定の天然抗原に対して50%を超える配列同一性を有する5〜17アミノ酸の直鎖配列を規定する)
を有する60を超えないアミノ酸からなり、該単量体ペプチドが1以上の分子間結合により共有結合されている、単離された、二量体のような多量体ペプチド。
【0132】
23.2以上の単量体ペプチドが同一配列である、実施形態22に記載の単離された二量体ペプチド。
24.2以上の単量体ペプチドが異なる配列である、実施形態22に記載の単離された二量体ペプチド。
25.二量体のような多量体ペプチドの1以上のペプチド鎖が、例えば、N-末端において最初の1、2又は3アミノ酸がD体で組み込まれることにより、又はN-末端において最初の1、2又は3アミノ酸がβ型若しくはγ型で組み込まれることにより、N-末端でのタンパク質分解性分解が遅延されている、実施形態22〜24のいずれか1項に記載の単離された、二量体のような多量体ペプチド。
【0133】
26.リンカーが、第1の単量体ペプチドのX1、X2、X3、X4、X5及びX6から選択されるいずれかの配列内、例えばX1、X2又はX3中から、少なくとも1つの第2の単量体ペプチドのどこかへ、例えばX1、X2又はX3の配列内へ配置されている、実施形態22〜25のいずれか1項に記載の単離された、二量体のような多量体ペプチド。
27.二量体のような多量体ペプチドが、少なくとも13、14、15又は17アミノ酸のような少なくとも12アミノ酸のヘルパーエピトープを含み、該ヘルパーエピトープが、第1の単量体ペプチドの2〜12アミノ酸及び少なくとも1つの第2の単量体ペプチドからの2〜12アミノ酸のような、第1の単量体ペプチドからのアミノ酸配列及び少なくとも1つの第2の単量体ペプチドからのアミノ酸配列である組合せのアミノ酸配列からなる、実施形態22〜26のいずれか1項に記載の単離された、二量体のような多量体ペプチド。
【0134】
28.前記分子間結合が2つのCys残基間のジスルフィド(S-S)結合から選択される、実施形態22〜27のいずれか1項に記載の単離された、二量体のような多量体ペプチド。
29.前記分子間結合が、第1の単量体ペプチド中のCys残基と少なくとも1つの第2の単量体ペプチド中の改変Lys残基との間のチオエーテル結合である、実施形態22〜28のいずれか1項に記載の単離された、二量体のような多量体ペプチド。
30.前記分子間結合が第1の単量体ペプチド中の誘導体化Lys残基と少なくとも1つの第2の単量体ペプチド中の誘導体化Ser残基との間のオキシム結合である、実施形態22〜29のいずれか1項に記載の単離された、二量体のような多量体ペプチド。
31.前記分子間結合が、第1の単量体ペプチド中のN-メチル化Lys側鎖と少なくとも1つの第2の単量体ペプチド中のAsp又はGlu残基の側鎖との間のペプチド結合である、実施形態22〜30のいずれか1項に記載の単離された、二量体のような多量体ペプチド。
【0135】
32.前記単量体ペプチドが、第1の単量体ペプチド中のAsp若しくはGlu残基と少なくとも1つの第2の単量体ペプチド中のAsp若しくはGlu残基とを介するようなポリエチレングリコール(PEG)リンカーにより又はポリLysコアにより連結されている、実施形態22〜31のいずれか1項に記載の単離された、二量体のような多量体ペプチド。
33.前記単量体ペプチドのいずれか1つが、独立して、実施形態1〜21のいずれか1項に規定されているとおりである、実施形態22〜31のいずれか1項に記載の単離された、二量体のような多量体ペプチド。
34.実施形態1〜21のいずれか1項に規定の単量体ペプチド及び実施形態22〜33のいずれか1項に規定の単離された、二量体のような多量体ペプチドから選択される2以上の化合物を含んでなる組成物。
【0136】
35.実施形態1〜21のいずれか1項に規定の単量体ペプチド及び実施形態22〜33のいずれか1項に規定の単離された、二量体のような多量体ペプチドから選択されるペプチドの、対象者における体液性免疫応答の誘導のための使用。
36.実施形態1〜33のいずれか1項に記載のペプチドをコードする単離された核酸又はポリヌクレオチド。
37.実施形態36に記載の核酸又はポリヌクレオチドを含んでなるベクター。
38.実施形態37に記載のベクターを含んでなる宿主細胞。
【0137】
39.実施形態1〜21のいずれか1項に記載の単量体ペプチド、実施形態22〜33のいずれか1項に記載の単離された、二量体のような多量体ペプチド、実施形態34に記載のペプチド組成物、実施形態36に記載の核酸若しくはポリヌクレオチド又は実施形態37に記載のベクターの少なくとも1つを、医薬的に許容し得る希釈剤又はビヒクル及び随意に免疫学的アジュバントとの組合せで含んでなる免疫原性組成物。
40.ワクチン組成物の形態である実施形態39に記載の免疫原性組成物。
41.実施形態1〜21のいずれか1項に記載の単量体ペプチド、実施形態22〜33のいずれか1項に記載の単離された、二量体のような多量体ペプチド、実施形態34に記載のペプチド組成物、実施形態36に記載の核酸若しくはポリヌクレオチド又は実施形態37に記載のベクター、又は実施形態39若しくは40に記載の組成物の少なくとも1つを投与することを含んでなる、対象者において抗原に対する免疫応答を誘導する方法。
【0138】
42.実施形態1〜21のいずれか1項に記載の単量体ペプチド、実施形態22〜33のいずれか1項に記載の単離された、二量体のような多量体ペプチド、実施形態34に記載のペプチド組成物、実施形態36に記載の核酸若しくはポリヌクレオチド又は実施形態37に記載のベクター、又は実施形態39若しくは40に記載の組成物の少なくとも1つを有効量で投与することを含んでなる、感染因子のような疾患抗原の病理学的影響を、該因子に感染したか又は該疾患抗原により引き起こされる疾患を有する対象者において減少及び/又は遅延させる方法。
【0139】
43.医薬として使用するための実施形態1〜33のいずれか1項に記載のペプチド。
44.感染因子のような疾患抗原の病理学的影響を、該因子に感染したか又は該抗原により引き起こされる疾患を有する対象者において治療するための実施形態1〜33に記載のペプチド。
45.例えば診断目的のために、ELISAアッセイのようなインビトロアッセイで使用するための実施形態1〜33に記載のペプチド。
46.例えば診断目的での、ELISAアッセイのようなインビトロアッセイのための実施形態1〜33に記載のペプチドの使用。
【0140】
配列表(太字のアミノ酸は、本発明の式Iにおいて規定されるX2及び/又はX4及び/又はX6のいずれかとして使用し得る適切な抗原性配列を表す。)
【化3-1】
【0141】
【化3-2】
【0142】
【化3-3】
【0143】
【化3-4】
【0144】
【化3-5】
【0145】
【化3-6】
【0146】
【化3-7】
【0147】
【化3-8】
【0148】
【化3-9】
【0149】
【化3-10】
【0150】
【化3-11】
【実施例】
【0151】
実施例1
本発明によるペプチドは、Schafer-Nにより、Sheppard(1978)(J.Chem.Soc., Chem. Commun., 539)のFmoc-ストラテジを使用するC-末端アミドとして合成され得る。

細胞透過アッセイ
1セットのペプチドをN-末端でビオチン化し、(長さ及びタイプに関して)種々のアミノ酸の組合せを、下記の図式で説明するペプチド中の配列ボックスX1、X2、X3、X4、X5及びX6に加える。1人の供血個体からの増殖細胞でペプチドを試験する。
【0152】
本発明によるペプチドのアミノ酸配列の概略図(各Xはアミノ酸配列を規定する):
【化4】
【0153】
ビオチン化ペプチドの細胞内染色
96-ウェルU底ポリスチレンプレート(NUNC, cat no: 163320)をヒトPBMCの染色に使用する。簡潔には、表1によるN-又はC-末端ビオチン化ペプチド(すなわち、各ペプチドについて5mM、2.5mM及び1.25mMで試験)8μlを、37℃にて2時間、40μlの供血者PBMC(12.5×106細胞/ml)とインキュベートする。次いで、細胞を150μlのCellwash(BD, cat no: 349524)で3回洗浄し、続いて各細胞ペレットを100μlのトリプシン-EDTA(Sigma, cat no: T4424)で再懸濁後、37℃にて5分間インキュベートする。次いで、トリプシン処理細胞を150μlのCellwash(BD, cat no: 349524)で3回洗浄し、続いて製造業者の指示に従ってBD Cytofix/CytopermTM plus(BD, cat no: 554715)で再懸濁後、4℃にて20分間インキュベートする。その後、細胞を150μlのPermWash(BD, cat no: 554715)で2回洗浄する。次いで、ビオチン化ペプチド及び樹状細胞を可視化する目的で、細胞をそれぞれストレプトアビジン-APC(BD, cat no: 554067)及び抗-hCD11c(eBioscience, cat no: 12-0116)で製造業者の指示に従って4℃にて30分間染色する。次いで、細胞を150μlのPermWashで3回洗浄し、続いて染色緩衝液(BD, cat no: 554656)中に再懸濁後、フローサイトメトリに供する。樹状細胞をリンパ球領域の外側のCD11c+事象(すなわち、リンパ球より高いFSC及びSSCシグナル)としてゲーティングする。合計200,000細胞を、HTSローダーを備えるFACSCanto IIフローサイトメータで獲得し、ペプチド-蛍光(すなわち、GeoMean)に関する総細胞及び樹状細胞の両方のヒストグラムを作成する。
【0154】
ビオチン化ペプチドの細胞外染色
96-ウェルU底ポリスチレンプレート(NUNC, cat no: 163320)をヒトPBMCの染色に使用する。簡潔には、表1によるN-又はC-末端ビオチン化ペプチド(すなわち、各ペプチドについて5mM、2.5mM及び1.25mMで試験;全てのペプチドはSchaferが製造)8μlを、37℃にて2時間、40μlの供血者PBMC(12.5×106細胞/ml)とインキュベートする。次いで、細胞を150μlのCellwash(BD, cat no: 349524)で3回洗浄した後、ビオチン化ペプチド及び樹状細胞を可視化する目的で、細胞をそれぞれストレプトアビジン-APC(BD, cat no: 554067)及び抗-hCD11c(eBioscience, cat no: 12-0116)で製造業者の指示に従って4℃にて30分間染色する。次いで、細胞を150μlのCellwash(BD, cat no: 349524)で3回洗浄し、続いて染色緩衝液(BD, cat no: 554656)中に再懸濁後、フローサイトメトリに供する。樹状細胞をリンパ球領域の外側のCD11c+事象(すなわち、リンパ球より高いFSC及びSSCシグナル)としてゲーティングする。合計200,000細胞を、HTSローダーを備えるFACSCanto IIフローサイトメータで獲得し、ペプチド-蛍光(すなわち、GeoMean)に関する総細胞及び樹状細胞の両方のヒストグラムを作成する。
次いで、ペプチドが細胞に進入する能力を有するかどうかを観察してもよい。
【0155】
実施例2
陽性CTL応答はELISPOTアッセイにより評価してもよい。

ELISPOTアッセイによるヒトIFN-γ細胞傷害性T-細胞(CTL)応答
簡潔には、1日目に、HCV患者からのPBMCサンプルを、フラスコにおいて(430,000 PBMC/cm2)、L-グルタミン(MedProbe Cat. No. 13E17-605E)、10%胎仔ウシ血清(FBS)(Fisher Scientific Cat. No. A15-101)及びペニシリン/ストレプトマイシン(Fisher Acientific Cat. No. P11-010)を補充した被覆量の培養培地(RPMI 1640 Fisher Scientific;Cat No. PAAE15-039)中、37℃、5% CO2にて2時間インキュベートして、単球を接着させる。非接着性細胞を単離し、洗浄して、更なる使用までFBS中10% V/V DMSOにおいて凍結させる。接着性細胞を培養培地で注意深く洗浄し、続いて2μg/ml最終濃度のhrGM-CSF(Xiamen amoytop biotech co, cat no: 3004.9090.90)及び1μg/mlのhrIL-4(Invitrogen, Cat no: PHC0043)を含む培養培地中で37℃にて3日目までインキュベートする。その後、6日目に、この手順を繰り返す。7日目に、培養樹状細胞(5 000〜10 000/ウェル)を、解凍した自家非接着性細胞(200 000/ウェル)、抗原サンプル(ペプチド抗原については1〜8μg/mlの最終濃度;コンカナバリンA(Sigma, Cat no: C7275)又はPHA(Sigma, Cat no: L2769)については5μg/mlの最終濃度)及び抗-アネルギー抗体(抗-PD-1(eBioscience, cat no: 16-9989-82)及び抗-PD-L1(eBioscience, cat no: 16-5983-82)の両方について0.03〜0.05μg/mlの最終濃度)と共に、0.5μg/ウェルの抗-ヒトγインターフェロンでコートしたELISPOT(Millipore multiscreen HTS)プレートに添加する。プレートを一晩インキュベートし、スポットを製造業者の指示に従って発色させる。スポットをELISPOTリーダー(CTL-ImmunoSpot(登録商標) S5 UV Analyzer)で読み取る。
【0156】
実施例3
REVEAL & ProVE(登録商標) Rapid Epitope Discovery Systemの詳細
本発明によるペプチドについてのHLAへの結合特性を、以下のクラスI HLA-タイプ:HLA-A1、HLA-A2、HLA-A3、HLA-A11、HLA-A24、HLA-A29、HLA-B7、HLA-B8、HLA-B14、HLA-B15、HLA-B27、HLA-B35、HLA-B40及び以下のクラスII HLA-タイプ:HLA-DR1、HLA-DR3、HLA-DR4、HLA-DR7、HLA-DR11、HLA-DR13、HLA-DR15について試験し得る。ペプチドは、Prospector PEPscreen(登録商標):カスタムペプチドライブラリとして合成する。8〜15アミノ酸長のペプチドを0.5〜2mgの量で、高い平均純度で合成する。MALDI-TOF質量分析による品質管理を100%のサンプルについて実施する。
【0157】
REVEALTM結合アッセイにより、各候補ペプチドの1以上のMHCクラスI対立遺伝子に結合する能力及びMHC-ペプチド複合体を安定化する能力を決定する。この結合を高及び中親和性T細胞エピトープ結合と比較することにより、タンパク質配列中の最も可能性が高い免疫原性ペプチドを同定し得る。検出は、天然型コンホメーションのMHC-ペプチド複合体の存否に基づく。
各ペプチドに、既知のT細胞エピトープである陽性コントロールペプチドとの比較でスコアを付与する。試験ペプチドのスコアは、陽性コントロールペプチドで生じたシグナルのパーセンテージとして定量的に示す。ペプチドは、推定の合格又は不合格結果であると表示される。アッセイ性能は、試験対象の対立遺伝子に対してより弱い親和性で結合することが知られている中間コントロールペプチドを含ませることによって確認する。
【0158】
実施例4:二量体ペプチドの製造
2つの単量体ペプチド配列を連結するアミノ酸に下線を付す。

インフルエンザ(M2e):
インフルエンザタンパク質M2上の細胞外ドメイン(M2e-ドメイン)に由来する構築物

天然型ドメイン:
MSLLTEVETPIRNEWGCRCNDSSD
【0159】
下記の配列は製造済みであるか又は製造中である。種々の部分X1〜X6を括弧で分ける。
【化5】
この構築物は、単量体ペプチドを、第1のペプチド中のDpr(Aoa)を介して、第2のペプチド中のNaIO4酸化Dpr(Ser)残基に連結している。
Dpr(Aoa)=N-α-Fmoc-N-β-(N-t.-Boc-アミノ-オキシアセチル)-L-ジアミノプロピオン酸
【0160】
説明:
配列中で使用する括弧は異なる部分/ボックスを示すためのものとする。BI100_CGnat/BI100_CGについては、ボックスは下記のアミノ酸配列を有する:
【化6】
他の配列のボックスについても同様である。
【0161】
実施例C5-配列
【化7】
【0162】
ジスルフィド連結構築物の例は下記の連結ペプチド配列であり得るが、これらに限定されない:
【化8】
【0163】
上記ジスルフィド連結構築物は、例えば、チオール-未保護ペプチドでの2-ピリジンスルフェニル(SPyr)-保護システイン-含有ペプチドの滴定により合成され得る。これは、ジスルフィド-連結ペプチドヘテロ二量体を選択的に生成し、ホモ二量体の形成を防止する優れた手順であると証明されている(Schutz Aら,Tetrahedron, Volume 56, Issue 24, 9 June 2000, Pages 3889-3891)。配列番号115が配列番号118若しくは120にジスルフィド連結しているか、又は配列番号117が配列番号116若しくは120ジスルフィド連結しているか、又は配列番号119が配列番号116若しくは118にジスルフィド連結している同様な構築物を作製し得る。
【0164】
チオ-エステル連結構築物の例は下記の連結ペプチド配列であり得るが、これらに限定されない(これらは全てBachem (UK) Ltdから入手した):
【化9】
【0165】
Cys-Lysリンカーは、代表的には、一方のペプチド中のシステインと他方のペプチド中のブロモアセチル誘導体化リジンとの間にチオエーテル結合の形態で構築される。
配列番号121が配列番号126若しくは128にCys-Lys連結しているか、又は配列番号125が配列番号122若しくは124にCys-Lys連結している同様な構築物を作製し得る。
【0166】
他の連結構築物の例は下記の連結ペプチド配列であり得るが、これらに限定されない:
【化10】
Ser-Lysリンカーは、代表的には、一方のペプチド中の酸化(アルデヒド)セリンと他方のペプチド中の(アミノオキシアセチル化)誘導体化リジンとの間にオキシム結合の形態で構築される。
【0167】
実施例5
HCV二量体ペプチドの構築:
【化11】
この構築物は、単量体ペプチドを、第1のペプチド中のリジン残基を介して、第2のペプチド中のシステイン残基に、スルホ-SMCCリンカーを用いて連結している。
【0168】
【化12】
この構築物は、単量体ペプチドを、第1のペプチド中のDpr(Aoa)を介して、第2のペプチド中のNaIO4酸化Dpr(Ser)残基に連結している。
Dpr(Aoa)=N-α-Fmoc-N-β-(N-t.-Boc-アミノ-オキシアセチル)-L-ジアミノプロピオン酸
【0169】
或いは、K又はCをN-ε-メチル化Lysで置換し、これをAsp又はGluに連結してもよい。
したがって、N-ε-メチル化Lysは側鎖-側鎖ペプチド結合によりAsp又はGluに連結し得る(Nメチル化は該結合をより安定化する)。
【0170】
それから、配列は下記でもあり得る(Lys(Me)はN-ε-メチル化Lys残基を指す):
【化13】
【0171】
或いは、結合が逆になれば:
【化14】
【0172】
インフルエンザ二量体ペプチドの構築:
【化15】
Dprはジアミノプロピオン酸であり、Dpr(Ser)はセリニルジアミノプロピオン酸である(これらは、本明細書の別の箇所に記載したように、Dpr-Dpr(Ser)オキシム結合を形成する)。
【0173】
試験に使用したインフルエンザM2eタンパク質に由来する天然型配列ペプチド(上記構築物はこれを標的する):
BI100-cg2 MSLLTEVETPIRNEWGCRC (配列番号142)
【0174】
実施例6
免疫学的研究
ウサギ免疫化
雌性ニュージーランド白ウサギ(n=3)を、0週目、2週目及び6週目に、50% V/Vフロイントアジュバント(すなわち、初回免疫には完全フロイントアジュバント、追加免疫には不完全フロイントアジュバント)中500μgのBI400-Bからなる1mlのBI400-Bワクチンで皮内免疫した。個体の血清をELISA用に単離した。
【0175】
ヒト又はウサギ血清についての直接ELISA
(コーティングの1〜3日前に、各ペプチドについて16μg/mlで冷所でコーティング緩衝剤−0.05M Na2CO3 pH9.6;「CB」と呼ぶ−中でプレインキュベートした)50〜100μlのBI400-B又はCBのみ(バックグランドコントロール)を、4℃にて一晩、マイクロタイタープレートのウェルをコートするために使用する。次いで、マイクロタイタープレートを洗浄緩衝剤(PBS+1% v/v Triton-X100;「WB」と呼ぶ)で3回洗浄し、続いて2時間室温(RT)にて200μl/ウェルのブロッキング緩衝剤(PBS+1% w/v BSA)でブロックする。次いで、プレートをWBで3回洗浄し、続いて50〜70μl/ウェルの追加のヒト(又はウサギ)血清(希釈緩衝剤(PBS+1% v/v Triton-X100+1% w/v BSA;「DB」と呼ぶ)中1:1〜1:250の範囲の系列希釈物)と共に37℃にて1時間インキュベートする。次いで、プレートをWBで6回洗浄し、続いて70μl/ウェルのアルカリホスファターゼ-接合Gタンパク質(DB中3μg/ml;Calbiochem 539305)と共にRTにて1時間インキュベートする。次いで、プレートをWBで6回洗浄し、続いて100μl/ウェルの0.3% w/vのフェノールフタレインモノホスフェート(Sigma P-5758)と室温にて10〜60分間インキュベートする。最後に、100μl/ウェルのクエンチ溶液(0.1M TRIS+0.1M EDTA+0.5M NaOH+0.01% w/v NaN3;pH14)を加えてプレートをクエンチし、続いてELISAリーダー(ASYS UVM 340)で550nmにて読み取る。
【0176】
結果
BI400-Bを用いる免疫研究の結果は、効率的な抗体応答を惹起するペプチドを作製することが可能であることを証明する。これら抗体応答の特異性は競合Elisaで確証し得る。動物モデルにおいてBI400-Bに対して作製された抗体は、天然のHIV感染で惹起され、長期非進行に関係する抗体に匹敵する。結果は、これらペプチドが診断並びにHIV-誘導免疫活性化及び他の病原体を標的とするワクチン開発に適切であることを示す。
【0177】
実施例7
ELISPOTアッセイによるインフルエンザ特異的M2e応答
1日目に、供血者のPBMCサンプルを解凍して温培地で洗浄し、フラスコにおいて(250000PBMC/cm2)、被覆量の培養培地(ウルトラ-グルタミン,Lonza,BE12-702F701;10%胎仔ウシ血清(FBS),Fisher Scientific Cat. No. A15-101;ペニシリン/ストレプトマイシン,Fisher Scientific Cat. No. P11-010を含むRPMI 1640)中37℃、5% CO2にて24時間インキュベートして、細胞を解凍から回復させた。2日目に、細胞をFalcon Microtest組織培養プレート(96ウェル平底)に500 000細胞/ウェルにて200μlのトータル培地の容量で加えた。並列ウェルに、37℃、5% CO2にて6日間、指定した刺激を二連で加えるか又はコントロールとして培地のままとした。6日間のインキュベーション後、100μlの細胞懸濁物を、1μg/mlの天然型インフルエンザM2eタンパク質をコートしたELISPOT(Millipore multiscreen HTS)プレートに移した。24時間のインキュベーション後、プレートをPBS+0,05% Tween20で4回洗浄し、5回目はPBS(200μl/ウェル)で洗浄した。マウス抗-ヒトIgG又はIgMビオチン(Southern Biotech 9040-08及び9020-08)を、0.5% FBSを含むPBS中で希釈し、37℃にて90分間インキュベートした。洗浄を記載のとおり繰返した後、80μlのストレプトアビジン-アルカリホスファターゼ(Sigma Aldrich, S289)を各ウェルに加え、暗所にて室温で60分間インキュベートした。次いで、ウェルをPBS+0.05% Tween20で2回、PBS(200μl/ウェル)で4回洗浄した後、基質(Vector Blueアルカリホスファターゼ基質キットIII(Vector Blue, SK-5300)を加え、室温で7分間発色させた。反応を流水で停止させ、プレートを乾燥し、ELISPOTリーダー(CTL-ImmunoSpot(登録商標)S5 UV Analyzer)によりスポットを数えた。
【0178】
ELISAによるインフルエンザ特異的M2e応答
(8μg/mlで冷所で1〜3日間コーティング緩衝剤−0.05M Na2CO3 pH9.6;「CB」と呼ぶ−中でプレインキュベートした)100μlの指定抗原又はCBのみ(バックグランドコントロール)を、4℃にてマイクロタイタープレートのウェルをコートするために使用した。次いで、マイクロタイタープレートを洗浄緩衝剤(PBS+1% v/v Triton-X100;「WB」と呼ぶ)で3回洗浄し、続いて2時間室温(RT)にて200μl/ウェルのブロッキング緩衝剤(PBS+1% w/v BSA)でブロックする。次いで、プレートをWBで3回洗浄し、続いて50〜70μl/ウェルの追加のヒト(又はウサギ又はヒツジ)血清(希釈緩衝剤(PBS+1% v/v Triton-X100+1% w/v BSA;「DB」と呼ぶ)中1:5〜1:250の範囲の系列希釈物)と共に37℃にて1時間インキュベートする。次いで、プレートをWBで6回洗浄し、続いて70μl/ウェルのアルカリホスファターゼ-接合Gタンパク質(DB中3μg/ml;Calbiochem 539305)又はヤギ抗-マウスIgGビオチン(1μg/ml, Southern Biotech, 1030-08)と共にRTにて1時間インキュベートする。ヤギ抗-マウスIgGビオチンの場合には、プレートを、記載のとおりに1工程余分に洗浄した後、100μlのストレプトアビジン-アルカリホスファターゼ(1μg/ml, Sigma Aldrich, S289)を加え、RTにて1時間インキュベートした。次いで、プレートをWBで6回洗浄し、続いて100μl/ウェルの0.3% w/vのフェノールフタレインモノホスフェート(Sigma P-5758)と室温にて10〜60分間インキュベートする。最後に、100μl/ウェルのクエンチ溶液(0.1M TRIS+0.1M EDTA+0.5M NaOH+0.01% w/v NaN3;pH14)を加えてプレートをクエンチし、続いてELISAリーダー(ASYS UVM 340)で550nmにて測定する。次いで、血清の強度(すなわち、体液性免疫応答の大きさ)を、記載した光学密度(OD)値を生じる血清希釈率又は示した血清希釈率でのOD値として報告する。
【0179】
結果
表2は、非刺激PBMCのベースライン増殖に対する増殖B-細胞数の相対量を示す。この表は、応答がIgG特異的であったので、BI150-2modはヒトメモリー細胞に認識されたことを明確に示しており、このことは、BI150-2modが、その由来する天然型配列に結合する抗体を産生するように、クラススイッチしたB細胞を刺激可能であることを意味する。個々のドナー間に大きなバラツキが予測される。なぜならば、ヒト集団にインフルエンザM2タンパク質に対する既存の体液性メモリーに関する大きなバラツキが存在するからである。表2から、BI150-2modは、IgM B細胞の増殖も誘導できたことが分かる。
【0180】
【表2】
【0181】
BALB/cマウスのワクチン接種を、1.3% Alヒドロゲルの形態の1mgアルミニウムと共に100μgのペプチドを用いて1、3、7週目にs.c.で行い、9週目に血清を採集した。表3において、データは、BI350-1mod1がBALB/cマウスにおいて特異的免疫応答を誘導したことを示している。なぜならば、ワクチン抗原が認識されたからである。また、得られた免疫応答は、IgG特異的であるので、クラススイッチ事象の結果であることが明かであった。
【0182】
【表3】
【0183】
ヒツジのワクチン接種を、下記のアジュバントと共にPBS中500μgのペプチドを用いて行った:ISA51(1週目、2週目、3週目、4週目にワクチン接種、6週目に血清)及びフロイントアジュバント(1週目、12週目、26週目にワクチン接種、28週目に血清)。表4において、データは、アッセイバックグランドの3倍のOD値に対応する血清希釈率を示す。この表は、BI100-CG及びBI100-CGcycが、それ自体で又は2つの異なる標準的なアジュバントと共に、免疫応答を誘導したことを明確に示している。このことは、この構築物が、種々のアジュバントと組み合わせることができ、IgG応答(免疫学的メモリーがヒツジにおいて惹起されていることのシグナル)を誘導できることを示唆している。
【0184】
【表4】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]