特許第6294079号(P6294079)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6294079膵臓幹細胞及び前駆細胞のためのマーカーとしてのZSCAN4及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6294079
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】膵臓幹細胞及び前駆細胞のためのマーカーとしてのZSCAN4及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/074 20100101AFI20180305BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20180305BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20180305BHJP
   A61K 35/39 20150101ALI20180305BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   C12N5/074ZNA
   G01N33/53 D
   C12N15/00 A
   A61K35/39
   A61P3/10
【請求項の数】21
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2013-551312(P2013-551312)
(86)(22)【出願日】2012年1月25日
(65)【公表番号】特表2014-506457(P2014-506457A)
(43)【公表日】2014年3月17日
(86)【国際出願番号】US2012022575
(87)【国際公開番号】WO2012103235
(87)【国際公開日】20120802
【審査請求日】2015年1月23日
(31)【優先権主張番号】61/436,068
(32)【優先日】2011年1月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】314000637
【氏名又は名称】ミノル シル ホン コー
(73)【特許権者】
【識別番号】314000648
【氏名又は名称】洪 繁
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100164563
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 貴英
(72)【発明者】
【氏名】ミノル エス.エイチ.コー
(72)【発明者】
【氏名】洪 繁
【審査官】 戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−522565(JP,A)
【文献】 特表2003−523323(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/070413(WO,A1)
【文献】 Nature,2010年,vol.464, no.7290,pp.858-863
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00−5/28
G01N 33/53
C12N 15/00−15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/
WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膵臓組織を含むサンプルからの膵臓幹細胞若しくは膵臓前駆細胞、又はそれらの両者の単離方法であって、
(i)前記サンプルの細胞中におけるZSCAN4の発現を検出し;そして
(ii)ZSCAN4を発現する細胞を単離し、それにより、前記サンプルから膵臓幹細胞若しくは膵臓前駆細胞、又はそれらの両者を単離すること
を含んで成る、前記方法。
【請求項2】
ZSCAN4の発現の検出が、ZSCAN4と同時発現される遺伝子の発現を検出することを含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ZSCAN4と同時発現される前記遺伝子が、SSEA3又はTcstv1/3である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ZSCAN4の発現の検出が、ZSCAN4によりコードされるタンパク質に対して特異的な抗体、又はZSCAN4により同時発現される遺伝子によりコードされるタンパク質に対して特異的な抗体と、前記サンプルとを接触させることを含んで成る、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体が、ZSCAN4によりコードされるタンパク質に対して特異的である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体が、SSEA3によりコードされるタンパク質に対して特異的である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体が、Tcstvl/3によりコードされるタンパク質に対して特異的である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
ZSCAN4の発現の検出が、レポーター遺伝子又は選択マーカーに操作可能に連結されたZSCAN4プロモーターを含むベクターを用いて、サンプル中の細胞をトランスフェクトすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ZSCAN4プロモーターがマウスZscan4cプロモーターである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記Zscan4cプロモーターが、配列番号15のヌクレオチド906〜4468として示される核酸配列を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記レポーター遺伝子が蛍光タンパク質をコードする、請求項8〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記蛍光タンパク質が、緑色蛍光タンパク質又はその変異体である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ベクターが、配列番号15として示される核酸配列を含む、請求項8〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記選択マーカーが、抗生物質耐性遺伝子である、請求項8〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記抗生物質耐性遺伝子が、ピューロマイシン耐性遺伝子である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記サンプルが、生検により得られるヒト膵臓組織を含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
サンプルの細胞中において、LGR5若しくはBMI1、又はそれらの両者の発現を検出し、そして、LGR5若しくはBMI1、又はそれらの両者を発現する細胞を単離することをさらに含んで成る、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
対象における糖尿病を治療するためのインビトロでZSCAN4を発現する膵臓幹細胞又は膵臓前駆細胞を含んでなる医薬であって、当該膵臓幹細胞又は膵臓前駆細胞は下記のステップを含む方法で調製され:
i)前記膵臓幹細胞又は膵臓前駆細胞を単離するステップ、ここで前記膵臓幹細胞又は膵臓前駆細胞の単離はZSCAN4を発現する膵臓組織中の細胞を検出するステップを含む;
ii)インビトロでZSCAN4を発現する膵臓幹細胞又は膵臓前駆細胞を増殖させるステップ、
ここで前記増殖された膵臓幹細胞又は膵臓前駆細胞は前記対象に移植され、それにより、前記対象における糖尿病を治療する、
前記医薬。
【請求項19】
前記ステップ(i)の膵臓幹細胞又は膵臓前駆細胞が、治療される対象から単離された細胞である、請求項18に記載の医薬。
【請求項20】
前記膵臓幹細胞又は膵臓前駆細胞が、前記対象へ前記細胞を移植する前に、膵臓β細胞へ分化される、請求項18又は19に記載の医薬。
【請求項21】
対象における糖尿病を治療するためのZSCAN4を発現する膵臓幹細胞又は膵臓前駆細胞を含んでなる医薬であって、当該ZSCAN4を発現する膵臓幹細胞又は膵臓前駆細胞は下記のステップを含んでなる方法により膵臓組織を含むサンプルから単離され:
(i)前記サンプルの細胞中におけるZSCAN4の発現を検出し;そして
(ii)ZSCAN4を発現する細胞を単離し、それにより、前記サンプルから膵臓幹細胞若しくは膵臓前駆細胞、又はそれらの両者を単離するステップ;
ここで前記膵臓幹細胞又は膵臓前駆細胞は前記対象に移植され、それにより、前記対象における糖尿病を治療する、前記医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒト膵臓におけるZSCAN4発現幹細胞及び前駆細胞の同定、膵臓幹細胞及び前駆細胞のためのマーカーとしてのZSCAN4の使用、及び糖尿病を治療するためのそのような膵臓幹細胞及び前駆細胞の使用に関する。
【0002】
ASCIIテキストファイルとしての配列表の提出
ASCIIテキストファイルの次の提出の内容物は、その全体を参照により本明細書に組込まれる:配列表(ファイル名称:699442000340SeqList.txt、記録された日付:2012年1月25日、サイズ:52KB)のコンピューター読み取り可能フォーム(CRF)。
【背景技術】
【0003】
Zscan4遺伝子は、大規模cDNA配列決定プロジェクト(Ko et al. , Development 127: 1737-1749, 2000; Sharov et al., PLoS Biol 1:E74, 2003)及びDNAマイクロアレイ分析(Hamatani et al, Dev Cell 6:117-131, 2004)を用いて、マウス胚のすべての着床前段階の発現プロファイリングにより同定された。マウスにおいては、Zscan4は、第7染色体の約850kb領域上にクラスター化される、6種のパラログ遺伝子(Paralog genes)(Zscan4a−Zscan4f)及び3種の擬遺伝子(Zscan4−ps1−Zscan4−ps3)から成る。前記6種のパラログの中で、Zscan4c、Zscan4d及びZscan4fのオープンリーディングフレーム(open reading frames)は、SCANドメイン及びすべての4種の亜鉛フィンガードメインをコードしている。これは、転写因子としてのそれらの潜在的な役割を示唆している。Zscan4の高い発現ピークは、マウス胚の後期2細胞期を示す。通常、胚盤胞における検出閾値以下のZscan4発現は、培養中のごく一部のES細胞においてインビトロで再活性化される。すべての6種のZscan4パラログはES細胞において発現されるが、Zscan4aが優勢パラログであり、そしてZscan4dは2細胞胚において優勢パラログである(Falco et al., Dev Biol 307:539-550, 2007; PCT Publication No. WO 2008/118957)。
【0004】
Zscan4は、他の2細胞胚特異的遺伝子が活性化される末分化ES細胞における固有の遷移過程(transient state)と関連付けられていることは、以前に実証されている。Zscan4は、ゲノム完全性の長期維持、及び通常の未分化ES細胞における調整されたテロメア組換えの仲介のために必須である(Zalzman et al., Nature 464(7290):858-863, 2010)。
【0005】
I型糖尿病は、インスリンを生産する膵臓細胞が補充される場合、潜在的に治療され得るので、膵臓は再生医療における集中的研究の焦点となってきた。したがって、成体ヒト膵臓の内分泌及び外分泌細胞を生じることができる前駆細胞の同定が所望される。膵管内の前駆細胞の存在が、すべての膵臓細胞が胚膵臓において膵管のような構造体を形成する前駆細胞から発生する観察に基づいて以前は推測されてきた(Oliver-Krasinski and Staffers, Genes Dev 22:1998-2021, 2008)。しかしながら、末分化前駆細胞が膵管に存在するか、又は分化細胞が他の細胞型に再分化することができるかについては、ほとんど知られていない(Aguayo-Mazzucato and Bonner- Weir, Nat Rev Endocrinol 6:139-148, 2010)。膵臓における存在する幹細胞の同定に対する1つの主なハードルは、この組織型は非常に遅い自発的自己再生速度を有し、したがって、膵臓幹細胞の数は、存在するなら、非常に低いことが予測されることである(Barker and Clevers, Gastroenterology 138:1681-1696, 2010)。存在する幹細胞を識別する別の課題は、特定の組織幹細胞マーカーの欠如であり、これがヒト膵臓組織において希少である細胞型を同定する進展を妨げてきた。
【発明の概要】
【0006】
ZSCAN4は、成体ヒト膵臓において、希少である幹/前駆細胞のためのマーカーとして作用するという発見が本明細書に開示される。したがって、サンプル、例えば膵臓組織サンプルから、膵臓幹細胞又は膵臓前駆細胞、又は両者を単離する方法が本明細書中で提供される。ある実施形態によれば、前記方法は、サンプルの細胞中におけるZSCAN4の発現を検出し、そしてZSCAN4を発現する細胞を単離することを含む。
【0007】
対象における糖尿病を治療するための方法もまた提供される。ある実施形態によれば、前記方法は、(i)膵臓幹細胞又は膵臓前駆細胞を単離し、ここで前記膵臓幹細胞又は膵臓前駆細胞の単離が、ZSCAN4を発現する膵臓組織中の細胞を検出することを含み;(ii)インビトロで、ZSCAN4を発現する、前記単離された膵臓細胞又は前駆細胞を増殖させ;そして(iii)前記増殖された膵臓幹細胞又は前駆細胞を、前記対象中に移植することを含む。特定の例によれば、膵臓幹細胞又は前駆細胞は、治療されるべき対象から単離される。
【0008】
さらに、対象において膵臓幹細胞又は前駆細胞集団をインビボで増殖させる方法が提供される。ある実施形態によれば、前記方法は、ZSCAN4タンパク質;ZSCAN4核酸配列;又はZSCAN4の発現又はZSCAN4細胞の数を増大させる剤を、対象の膵臓に送達することを含む。
【0009】
前述及び他の目的、及び開示の特徴は、添付図面を参照して進行する次の詳細な記載からより明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1のA〜Hは、ヒト膵臓におけるZSCAN4の免疫局在化を示す一連の画像を示す。(A)ランゲルハンス島におけるZSCAN4+細胞の存在。強い核染色がこの細胞に観察される。(B)ZSCAN4+細胞は、膵島の周辺領域に位置する。弱い細胞質染色は内分泌細胞で明らかであった。ZSCAN4+細胞もまた、腺房(C)及び膵管(C)に位置する。楕円形細胞(「膵臓卵形細胞」(pancreatic oval cells))はまた、ZSCAN4に対して陽性である(E)。抗マウスZscan4抗体(F及びH)及び抗ヒト(ZSCAN4)抗体(G及びH)は、ヒト膵臓(卵形細胞)において同一細胞を染色した。i、ランゲルハンス島;a、腺房;d、膵管。
図2図2のA〜Nは、ヒト膵臓におけるBMI1及びLGR5の免疫局在化を示す一連の画像を示す。BMI1+細胞は、ランゲルハンス島(A)、膵管(B)及び腺房(C)に位置する。LGR5+細胞はまた、ランゲルハンス島(D)、膵管(E)及び腺房(F)に位置する。少数の細胞のみがBMI1又はLGR5に対して陽性であり、これは図1におけるZSCAN4の染色パターンに類似する。膵臓腺房間の膵臓卵形細胞もまた、BMI1及びLGR5(C及びF)に対して陽性である。細胞の二重免疫蛍光ラベリングを、ランゲルハンス島において実施した(G〜N)。BMI1及びLGR5は、膵島において同一の細胞を示す(G〜J)。ZSCAN4は、LGR5陽性細胞のサブセットのみを示す(K〜N)。d、膵管;a、腺房;星印のマーク、卵形細胞;i、ランゲルハンス島。
図3図3のA〜Hは、膵島におけるインスリン及びLGR5の免疫局在化を示す一連の画像を示す(A〜D)。インスリン+細胞及びLGR5+細胞は同時局在化されない。外分泌細胞にけるアミラーゼ及びLGR5の免疫局在化を実施した(E〜H)。アミラーゼ+細胞及びLGR+細胞は同時局在化されない。
図4図4のA〜Nは、ヒト膵臓の一連の画像を示す。(A〜C):ヒト膵臓におけるアクアポリン1水路(AQP1)の免疫局在化。AQP1は、腺房中心細胞(ca)から中位のサイズの小葉間ダクトに位置する細胞において発現される。膵臓星状細胞(黒の矢印)及び卵形細胞(星印マーク)の両者は、AQP1に対して陽性である。(D〜G):膵管におけるZSCAN4+細胞はAQP1に対して陽性である。長方形状のZSCAN4+細胞は、AGP1に対して陰性である(星印マーク)。(H〜K):BMI1+細胞も、AQP1に対して陽性である。BMI1+細胞は、DIC顕微鏡により隣接細胞から明白に区別できる(H)。(L−N):CD163+細胞の局在化。腺房間の膵臓星状細胞(矢印)及び卵形細胞(星印マーク)のほとんどは、CD163に対して陽性である。膵管細胞(M,2つの黒の矢印間)及び膵管の基底膜(N)のサブセットはまた、CD163に対して陽性である。
図5図5のA〜Fは、慢性アルコール性膵炎及び自己免疫性膵炎を有する患者から採取された組織におけるZSCAN4発現パターンを示す一連の画像を示す。(A)影響されていない個人からの膵臓の代表的ZSCAN4−免疫染色(矢印、ZSCAN4+細胞)。(B)慢性アルコール性膵炎を有する患者からの膵臓の代表的ZSCAN4−免疫染色。(C)コルチコステロイド治療の前、自己免疫性膵炎を有する患者からの膵臓の膵管領域の代表的ZSCAN4−免疫染色。ZSCAN4+細胞は、慢性炎症上の組織において上昇する(矢印、ZSCAN4+細胞)。(D)コルチコステロイド治療の前、自己免疫性膵炎を有する患者からの膵臓の腺房領域の代表的ZSCAN4−免疫染色。(E)コルチコステロイド治療の開始の3ヶ月後、自己免疫性膵炎を有する患者からの膵臓の腺房領域の代表的ZSCAN4−免疫染色。多数のZSCAN4+細胞が、膵管、ランゲルハンス島及び再生された腺房において見られる。(F)維持されたコルチコステロイド治療の1年後、自己免疫性膵炎を有する患者からの膵臓の腺房領域の代表的ZSCAN4−免疫染色。少数のZSCAN4+細胞のみがここに見られる。a、腺房;d、膵管;i、ランゲルハンス島。
図6図6のA〜Lは、マウス及びヒト膵臓におけるZSCAN4+細胞の免疫局在化を示す一連の画像を示す。(A、D、G及びJにおける)抗マウスZscan4抗体、及び(B、E、H及びKにおける)抗ヒトZSCAN4抗体は、ヒト(C)及びマウス(F、I及びL)の両者において同一細胞を示す。
図7図7のA〜Lは、ヒト膵臓における膵臓内分泌ホルモン及びLGR5の免疫局在化を示す一連の画像を示す。グルカゴン(A〜D)、ソマトスタチン(E〜N)及びグレリン(I〜L)についての染色が示される。
図8図8のA〜Lは、ヒト膵臓における内分泌ホルモンの免疫局在化を示す一連の画像を示す。インスリン(A〜C)、グルカゴン(D〜F)、ソマトスタチン(G〜I)及びグレリン(J〜L)についての染色が示される。内分泌ホルモン陽性細胞は、膵島においてのみならず、また、膵管(C、F、I、L)及び膵臓腺房(B、E、H、K)においても見られない。a,腺房;d,膵管。
図9図9のA〜Fは、ヒト膵臓におけるインスリン及びアミラーゼの免疫局在化を示す一連の画像を示す。(A〜C):内分泌細胞は消化酵素アミラーゼを生成し、そしてランゲルハンス島の内分泌細胞はインスリンを産生する。これらの細胞は、膵臓で互いに排他的である。(D〜F):膵臓腺房における少数の細胞は、インスリン及びアミラーゼに対して二重陽性である(矢印)。
図10図10のA〜Kは、ヒト膵臓における嚢胞性線維症トランスメンブランコンダクタンスレギュレーター(CFTR)の免疫局在化を示す一連の画像を示す。CFTRは、腺房中心細胞(ca)から小葉間膵管の小さな膵管における細胞の先端形質膜において発現される(A)。AQP1に比較して、CFTRは膵臓星状細胞においては発現されない(矢印)(B)。しかしながら、膵臓卵形細胞はその形質膜においてCFTRを発現する(C)。(D〜H):抗−CFTR及び抗−LGR5抗体による細胞の二重染色。CFTR及びLGR5発現は互い排他的である(G及びK)。a、腺房;ic、介在管;星印は膵臓卵形細胞を示す。
図11図11は、Zscan4、SSEA3、LGR5及びBMIlの発現を検出するためにマウス膵臓組織の免疫組織化学的染色を示す一連の画像を示す。対照動物及びセルレイン誘発膵炎を有する動物からの組織断片が示される(D1、セルレイン処理の1日後;D4、セルレイン処理の4日後)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
配列表
添付配列表に列挙される核酸及びアミノ酸配列は、37C.F.R.1.822に定義されるように、ヌクレオチド塩基についての標準の文字略語及びアミノ酸についての3文字コードを用いて示される。個々の核酸配列の1つの鎖のみが示されるが、しかしその相補鎖が示される鎖に対して参照により含まれるものとして理解される。添付配列表においては、次の通りである:
【0012】
配列番号1及び2は、ヒトZSCAN4のヌクレオチド及びアミノ酸配列である。
【0013】
配列番号3及び4は、マウスZscan4aのヌクレオチド及びアミノ酸配列である。
【0014】
配列番号5及び6は、マウスZscan4bのヌクレオチド及びアミノ酸配列である。
【0015】
配列番号7及び8は、マウスZscan4cのヌクレオチド及びアミノ酸配列である。
【0016】
配列番号9及び10は、マウスZscan4dのヌクレオチド及びアミノ酸配列である。
【0017】
配列番号11及び12は、マウスZscan4eのヌクレオチド及びアミノ酸配列である。
【0018】
配列番号13及び14は、マウスZscan4fのヌクレオチド及びアミノ酸配列である。
【0019】
配列番号15は、Zscan4cプロモーター−エメラルド発現ベクターのヌクレオチド配列である(9396bp)。Zscan4cプロモーター配列の開始ヌクレオチドは906であり、そして最終ヌクレオチドは4468である。
【0020】
詳細な説明
I.略語
AQP1:アクアポリン1(aquaporin 1)
BMI1:ポリコーム環フィンガー腫瘍遺伝子(polycomb ring finger oncogene)
CFTR:嚢胞性線維症トランスメンブランコンダクタンスレギュレーター(cystic fibrosis transmembrane conductance regulator)
ES:胚性幹(embryonic stem)
FACS:蛍光活性化セルソーティング(fluorescence−activated cell sorting)
iPS:誘発多能性幹(induced pluripotent stem)
LGR5:ロイシンに富んでいる反復体含有Gタンパク質−共役型受容体5(leucine−rich repeat−containing G−protein−coupled receptor 5)
SSEA3:段階−特異的胚抗原3(stage−specific embryonic antigen−3)
【0021】
II.用語及び方法
特にことわらない限り、技術用語は、従来の用法に応じて使用される。分子生物学における共通用語の定義は、Benjamin Lewin, Genes V, Oxford University Pressにより出版された, 1994 (ISBN 0-19-854287-9); Kendrew et al. (eds.), The Encyclopedia of Molecular Biology, Blackwell Science Ltd. により出版された, 1994 (ISBN 0-632-02182-9); 及び Robert A. Meyers (ed.), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, VCH Publishers, Inc. により出版された, 1995 (ISBN 1-56081-569-8)において見出され得る。
【0022】
本開示の様々な実施形態の検討を容易とするために、特定用語の以下の説明が提供される:
投与(administration):化合物又は組成物、例えばZSCAN4、ZSCAN4タンパク質又は核酸を発現する細胞、又はZSCAN4の発現を増大させる剤を、いずれかの効果的経路により、対象に提供するか又は付与することである。投与の典型的な経路としては、注射(例えば、皮下、筋肉内、皮膚内、腹腔内、静脈内、動脈内又は膵臓内)を挙げることができるが、但しそれらだけには限定されない。
【0023】
成体幹細胞(Adult stem cell):死細胞を補充し、そして損傷組織を再生するために、細胞分裂により増加する胚発生の後、体内に見出される末分化細胞。成体幹細胞は、体性幹細胞としても知られている。
【0024】
剤(Agent):任意のタンパク質、核酸分子、化合物、小分子、有機化合物、無機化合物又は他の対象分子。ある実施形態によれば、「剤」とは、ZSCAN4の発現を増大させる剤である。特定の例によれば、剤はZSCAN4又はレチノイドをコードする核酸分子である。
【0025】
抗生物質耐性遺伝子(Antibiotic resistane gene):抗生物質に対する耐性を付与する微生物由来のいずれかの剤。ある実施形態によれば、抗生物質耐性遺伝子は、ピューロマイシンに対する耐性を付与する。
【0026】
抗体(Antibody):抗原のエピトープを特異的に認識し、そしてそれと結合する、軽鎖又は重鎖免疫ブロブリン可変領域を少なくとも含むポリペプチドリガンド。抗体は、重鎖及び軽鎖から構成され、それらの個々は、可変重鎖(VH)領域及び可変軽鎖(VL)領域と呼ばれる可変領域を有する。一緒に、VH領域及びVL領域は、抗体により認識される抗原の結合を担当する。
【0027】
抗体は、損なわれていない免疫グロブリン及び当業界においてよく知られている抗体の変異体及び一部、例えばFab断片、Fab’断片、F(ab)’2断片、一本鎖Fvタンパク質(「scFv」及びジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)を含む。scFvタンパク質は、融合タンパク質であり、ここで免疫グロブリンの軽鎖可変領域及び免疫グロブリンの重鎖可変領域はリンカーにより結合されているが、dsFvにおいては、前記鎖は、鎖の会合を安定化するためのジスルフィド結合を導入するために突然変異誘発されている。その用語はまた、遺伝子組み換え形、例えばキメラ抗体(例えば、ヒト化マウス抗体)及びヘテロ共役抗体(例えば、二重特異的抗体)も含む。また、Pierce Catalog and Handbook, 1994-1995 (Pierce Chemical Co., Rockford, IL); Kuby, J., Immunology, 3rd Ed., W. H. Freeman & Co., New York, 1997も参照のこと。
【0028】
典型的には、天然に存在する免疫グロブリンは、ジスルフィド結合により相互結合される重鎖(H鎖)及び軽鎖(L鎖)を有する。2種のタイプの軽鎖、すなわちλ及びκが存在する。抗体分子の機能的活性を決定する次の5種の主要重鎖クラス(又はイソタイプ)が存在する:IgM、IgD、LgG、IgA及びIgE。
【0029】
個々の重鎖及び軽鎖は、不変領域及び可変領域(領域はまた、「ドメイン」(domains)としても知られている。一緒になって、重鎖及び軽鎖可変領域は抗原を特異的に結合する。軽鎖及び重鎖可変領域は、「相補性決定領域」(complementarity−determining regions)又は「CDRs」とも呼ばれる、3種の超可変領域により中断される「フレームワーク」(framework)を含む。フレームワーク領域及びCDRの範囲は定義されている(Kabat et al, Sequences of Proteins of Immunological Interest, U.S. Department of Health and Human Services, 1991を参照のこと)。Kabatデータベースは現在、オンラインで維持されている。異なった軽鎖及び重鎖のフレームワーク領域の配列は、種、例えばヒト内で比較的保存されている。抗体のフレームワーク領域、すなわち構成成分の軽鎖及び重鎖の一緒になったフレームワーク領域は、三次元空間においてCDRを配置し、且つ整列させるために役に立つ。
【0030】
「VH」又は「VH」とは、Fv、scFv、dsFv又はFabの可変領域を含む、免疫グロブリン重鎖の可変領域のことである。「VL」又は「VL」とは、Fv、scFv、dsFv又はFabの可変領域を含む、免疫グロブリン軽鎖の可変領域のことである。
【0031】
「モノクローナル抗体」(monoclonal antibody)とは、Bリンパ球の単一クローンにより、又は単一抗体の軽鎖及び重鎖遺伝子がトランスフェクトされている細胞により産生される抗体である。モノクローナル抗体は、当業者に知られている方法により、例えば免疫脾臓細胞と骨髄腫細胞との融合体からハイブリッド抗体形成を製造することにより産生される。モノクローナル抗体は、ヒト化モノクローナル抗体を含む。本明細書において使用される場合、「モノクローナル抗体」はさらに、抗原結合断片、例えばFv、scFv、dsFv又はFab断片を含む。
【0032】
「キメラ抗体」(chimeric antibody)は、1つの種、例えばヒト由来のフレームワーク残基、及び別の種、例えばネズミ抗体由来の(一般的に抗原結合を付与する)CDRを有する。
【0033】
「ヒト化」(humanized)免疫グロブリンは、ヒトフレームワーク領域及び非ヒト(例えば、マウス、ラット又は合成)免疫グロブリン由来の1又は2以上のCDRを含む免疫グロブリンである。CDRを提供する非ヒト免疫グロブリンは、「ドナー」(donor)と呼ばれ、そしてフレームワークを提供するヒト免疫グロブリンは、「アクセプター」(acceptor)と呼ばれる。一実施形態によれば、すべてのCDRは、ヒト化免疫グロブリンにおけるドナー免疫グロブリンからである。不変領域は存在する必要はないが、しかしそれらが存在する場合、それらはヒト免疫グロブリン不変領域に対して実質的に同一、すなわち少なくとも約85〜90%、例えば約95%又はそれ以上、同一であるべきである。したがって、おそらくCDRを除く、ヒト化免疫グロブリンのすべての部分は、天然のヒト免疫グロブリン配列の対応する部分に対して実質的に同一である。「ヒト化抗体」(humanized antibody)は、ヒト化軽鎖及びヒト化重鎖免疫グロブリンを含む抗体である。ヒト化抗体は、CDRを提供するドナー抗体と同じ抗原に結合する。ヒト化免疫グロブリン又は抗体のレセプターフレームワークから取られたアミノ酸による限定数の置換を有することができる。ヒト化又は他のモノクローナル抗体は、抗原結合又は他の免疫グロブリン機能に対する効果を実質的に有さない追加の保存性アミノ酸置換を有することができる。ヒト免疫グロブリンは、遺伝子工学により構成され得る(例えば、米国特許第5,585,089号を参照のこと)。
【0034】
「ヒト」(human)抗体(また、「完全ヒト」(fully human)抗体とも呼ばれる)は、ヒトフレームワーク領域、及びヒト免疫グロブリンからのCDRのすべてを含む抗体である。1つの例によれば、そのフレームワーク及びCDRは、同じ起源のヒト重鎖及び/又は軽鎖アミノ酸配列からである。しかしながら、1つのヒト抗体からのフレームワークは、異なったヒト抗体からのCDRを含むよう構築され得る。ヒト免疫グロブリンのすべての部分は、天然のヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同一である。
【0035】
BMI1(polycomb ring finger oncogene)(ポリコーム環フィンガー腫瘍遺伝子):既知組織幹細胞マーカー。BMI1は成熟マウス造血管細胞の効果的自己再生細胞分裂のために必要である(Raaphorst, Trends Immunol 24:522-524, 2003)。単一のBMI1発現細胞は、腸上皮内のすべての細胞系統を形成することが示されており(Ootani et al, Nat Med 15:701-706, 2009)、そしてBMI1−系統トレーシングは、膵臓器官ホメオスタシスが可能な自己再生性膵臓腺房細胞を同定している(Sangiorgi and Capecchi, Proc Natl Acad Sci USA 106:7101-7106, 2009)。
【0036】
接触(contacting):直接的な物理的会合下での配置;固体形態及び液体形態のいずれの場合も含む。
【0037】
同時発現される(co−expressed):本開示においては、ZSCAN4と「同時発現される」遺伝子は、ES細胞及び/又は組織幹細胞、例えば膵臓幹細胞又は前駆細胞において、胚発生の間、ZSCAN4と類似する発現パターンを示す遺伝子である。ZSCAN4と同時発現される多くの遺伝子、例えばAF067063、Tcstvl/3、Tho4、アルギナーゼII(Arginase II)、BC061212 及びGm428、Eif1a、EG668777 及び Pif1は、以前に記載されている(参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2008/118957号を参照のこと)。さらに、SSEA3が膵臓細胞においてZSCAN4と同時発現されることが本明細書に開示されている(実施例3を参照のこと)。本明細書に開示される特定の実施形態によれば、ZSCAN4と同時発現される遺伝子は、SSEA3又はTcstv1/3である。
【0038】
縮重変異体(Degenerate variant):遺伝子コードの結果として縮重する配列を含むポリペプチド、例えばZSCAN4ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。20個の天然アミノ酸が存在し、それらのほとんどは、複数のコドンにより特定される。したがって、ヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列が変更されない限り、すべての縮重ヌクレオチド配列が含まれる。
【0039】
検出可能なラベル(Detectable label):別の分子、例えば抗体又はタンパク質に対して直接的に又は間接的に複合体化され、前記分子の検出を容易とする、検出可能な化合物又は組成物。検出可能なラベルの特定の非制限的例として、蛍光標識、酵素結合及び放射性同位体を挙げることができる。ポリペプチド及び他の分子をラベリングする種々の方法は、周知であり、そして使用され得る。ポリペプチドに対する検出可能なラベルの例としては、次のものを挙げることができるが、但しそれらだけには限定されない:放射性同位体又は放射性ヌクレオチド(例えば、35S又は131I)、蛍光ラベル(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン、ランタニド蛍光体)、酵素ラベル(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光マーカー、発色団(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ)、ビオチニルグループ、二次レポーターにより認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体のための結合部位、金属結合ドメイン、エピトープ標識)、又は磁気剤、例えばガドリニウムキレート。
【0040】
糖尿病:制御されていない炭水化物代謝を導くインスリンの相対的又は絶対的不足により引起される疾病。本明細書において使用される場合、「糖尿病」(diabetes)とは、真性糖尿病のことである。1型糖尿病(時々、「インスリン依存性糖尿病」又は「若年発症性糖尿病」とも呼ばれる)は、インスリンの全体的な又はほぼ全体的な不足を導く膵臓β細胞の破綻により特徴づけられる自己免疫疾患である。2型糖尿病(時々、「非インスリン依存性糖尿病」又は「成人発症型糖尿病」とも呼ばれる)においては、インスリンが存在するが、身体はそのインスリンに応答していない。
【0041】
糖尿病の症状は次のものを含む:過度の口渇(多飲);頻尿(多尿症);極端な飢餓又は一定の食欲(多食);原因不明の体重減少;尿中にグルコースの存在(糖尿);疲労感又は倦怠感;視力の変化;四肢(手、足)のしびれやうずき;遅い治癒傷やただれ;及び異常に高い頻度の感染症。糖尿病は、75gの負荷で、経口グルコース耐性試験(OGTT)の後、約2時間で、7.0mモル/L(126mg/dL)以上か又はそれに等しい空腹時血糖値(FPG)又は11.1mモル/L(200mg/dL)以上か又はそれに等しい血漿グルコース濃度により、臨床的には診断され得る。糖尿病についてのより詳細な説明は、Cecil Textbook of Medicine, J.B. Wyngaarden, et al, eds. (W.B. Saunders Co., Philadelphia, 1992, 19th ed.)に見出され得る。
【0042】
分化(Differentiation):細胞が特定の種類の細胞(例えば、筋肉細胞、膵臓細胞、皮膚細胞等)へと発達する工程のことである。細胞がより分化されるにつれて、細胞効能、又は複数の異なる細胞型になる能力を失う。
【0043】
カプセル化される(Encapsulated):本明細書において使用される場合、ナノ粒子に「カプセル化された」分子(例えば、核酸又はポリペプチド)又は細胞は、ナノ粒子内に包含されるか、又はナノ粒子の表面へ付着されるか、又はそれらの組合せである、分子又は細胞のことである。
【0044】
蛍光タンパク質(Fluorescent protein):特定波長の光に照射されると蛍光を示す、遺伝的にコードされたタンパク質。ほとんど全ての可視光スペクトルに及ぶ、蛍光発光スペクトルプロフィールを特徴とする、種々の蛍光タンパク質の遺伝的変異体が開発されてきた。それらの例として次のものを挙げることができる:花虫類蛍光タンパク質、緑色蛍光タンパク質(GFP)(青色光を照射されると、緑色蛍光を示す)、及びそれらの変異体、例えばEGFP、青色蛍光タンパク質(EBFP、EBFP2、アズライト、mkalamal(Y66H置換を含むmkalama1を除く)、シアン蛍光タンパク質(ECFP、Cerulean、Cypet、ここで、それらはY66W置換を含む)、及び黄色蛍光タンパク質(YFP、Citrine,Vennus、YPet、ここで、それらはT203Y置換を含む)。他の特定の例としては、エメラルドグリーン蛍光タンパク質(EmGFP)及びストロベリー(Strawberyy)を挙げることができる。概要に関しては、Shaner et al, Nat. Methods 2(12):905-909, 2005を参照のこと。
【0045】
蛍光団(Fluorophore):特定波長の光への照射により励起される場合、例えば異なった波長で光(すなわち、蛍光)を発する化合物。
【0046】
本明細書に開示される方法に使用され得る蛍光団の例としては、次のものを挙げることができる(米国特許第5,866,366号(Nazarenko et al.)に提供される):4−アセトアミド−4’−イソチオシアネートスチルベン−2、2’−ジスルホン酸、アクリジン及びその誘導体、例えばアクリジン及びアクリジンイソチオシアネート、5−(2’−アミノエチル)アミノナフチレン−1−スルホン酸(EDANS)、4−アミノ−N−[3−ビニルスルホニル)フェニル]ナフタルイミド−3,5−ジスルホネート(ルシファーイエローVS)、N−(4−アニリノ−l−ナフチル)マレイミド、アントラニルアミド、ブリリアントイエロー(Brilliant Yellow)、クマリン及び誘導体、例えばクマリン、 7−アミノ−4−メチルクマリン (AMC、 Coumarin 120)、7−アミノ−4−トリフルオロメチルコウルアリン(couluarin)(Coumarin 151);シアノシン(cyanosine); 4’、6−ジアミニジノ−2−フェニルインドール (DAPI); 5',5''−ジブロモピロガロール(dibromopyrogallol)−スルホンフタレイン(ブロモピロガロールレッド); 7−ジエチルアミノ−3−(4'−イソチオシアナートフェニル)−4−メチルクマリン; ジエチレントリアミンペンタアセテート; 4、4'−ジイソチオシアナートジヒドロ−スチルベン−2、2'−ジスルホン酸;4、4'−ジイソチオシアナートスチルバン−2、2'−ジスルホン酸; 5−[ジメチルアミノ]ナフタレン−1−スルホニルクロリド(DNS、 塩化ダンシル); 4−(4'−ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸 (DABCYL); 4−ジメチルアミノフェニルアゾフェニル−4'−イソチオシアナート (DABITC);エオシン及び誘導体、例えばエオシン及びエオシンイソチオシアネート; エリトロシン及び誘導体、例えばエリトロシンB及びエリトロシンイソチオシアネート; エチジウム; フルオレセイン及び誘導体、例えば 5−カルボキシフルオレセイン (FAM)、 5−(4、6−ジクロロトリアジン−2−イル)アミノフルオレセイン(DTAF)、 2’7'−ジメトキシ−4’5'−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(JOE)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアナート(FITC)、 及びQFITC (XRITC); フルオレサミン; IR144; IR1446; マラカイトグリーン(Malachite Green)イソチオシアナート; 4−メチルウムベリフェロン; オルト クレゾールフタレイン; ニトロチオシン; パラローザニリン; フェノールレッド; B−フィコエリトリン; R−フィコエリトリン; o−フタルジアルデヒド; ピレン及び誘導体、例えばピレン、ピレンブチレート及びスクシンイミジル1 −ピレンブチレート; Reactive Red 4 (Cibacron .RTM. Brilliant Red 3B−A); ローダミン及び誘導体、例えば6−カルボキシ−X−ローダミン (ROX)、 6−カルボキシローダミン(R6G)、 リザミン(lissamine)ローダミンBスルホニルクロリド、 ローダミン (Rhod)、 ローダミン B、ローダミン 123、 ローダミンX イソチオシアナート、 スルホローダミン B、スルホローダミン 101 及びスルホローダミン101のスルホニルクロリド誘導体 (Texas Red); N、N、N’、N'−テトラメチル−6−カルボキシローダミン (TAMRA); テトラメチルローダミン; テトラメチルローダミンイソチオシアナート(TRITC);リボフラビン;ロゾール酸及びテルビウムキレート誘導体。他の適切な蛍光団としては、約617nmで発するチオール反応性ユーロピウムキレートを挙げることができる(Heyduk and Heyduk, Analyt. Biochem. 248:216-27, 1997; J. Biol. Chem. 274:3315-22, 1999)。他の適切な蛍光団としては、GFP、リサミン(Lissamine)(商標)、ジエチルアミノクマリン、フルオレセインクロロトリアジニル、ナフトフルオレセイン、4,7−ジクロロローダミン及びキサンテン(米国特許第5,800,996(Lee et al.)に記載されるような)及びそれらの誘導体を挙げることができる。当業者に知られている他の蛍光団、例えば、Mlecular Probes(Eugene,OR)から入手できるそれらのものもまた使用され得る。
【0047】
異種(Heterologous):異種ポリペプチド又はポリヌクレオチドは、異なった源又は種に由来するポリペプチド又はポリヌクレオチドのことである。
【0048】
宿主細胞:ベクターが繁殖し、そしてそのDNAが発現される細胞。細胞は原核生物であっても、又は真核生物であっても良い。この用語はまた、対象宿主細胞のいずれかの子孫も含む。すべての子孫は、複製の間に発生する突然変異が存在し得るので、親細胞とは同一ではないことが理解される。しかしながら、そのような子孫は、用語「宿主細胞」(host cell)が使用される場合に包含される。
【0049】
単離された(Isolated):単離された核酸、タンパク質又は細胞は、前記核酸、タンパク質又は細胞が天然において存在する他の成分から実質的に分離されるか又は精製されている。したがって、「単離された」核酸又はタンパク質は、標準の生化学的精製方法により精製された核酸又はタンパク質を含む。この用語はまた、宿主細胞において組換え発現により調製された核酸及びタンパク質、及び化学的に合成された核酸及びタンパク質を含む。同様に、「単離された」細胞、例えばZSCAN4を発現するそれらの細胞は、他の細胞型(例えば、ZSCAN4を発現しない細胞)から実質的に分離されている。本開示においては、「単離された」とは、核酸、タンパク質又は細胞の100%純度を必要としないが、しかし少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の純度である核酸タンパク質及び細胞を含む。
【0050】
LGR5(leucine−rich repeat−containing G−protein−coupled receptor5)(ロイシンに富んでいる反復体含有G−タンパク質共役型受容体5):腸上皮及び毛包の幹細胞マーカー。LGR5タンパク質は、いくつかの器官で発現され(Barker and Clevers, Gastroenterology 138: 1681-1696, 2010)、そしてLGR5+細胞の遺伝子マーキングは、マウスにおける腸及び皮膚組織細胞についてのマーカーとしてこの膜タンパク質を同定した(Barker et al., Nature 449:1003-1007, 2007; Snippert et al, Science 327:1385-1389, 2010)。LGR5はまた、Wntシグナル伝達の役割を果たすことが知られている。LGR5配列は公的に入手できる。例えば、GenBank受託番号 NM_003667 及び NP_003658はLGR5のヒトmRNA及びタンパク質配列である。ヒトLGR5についてのNCBI Gene IDは8549である。
【0051】
多能性細胞(Multipotent cell):複数の細胞系統を形成できるが、しかしすべての細胞系統は形成できない細胞のことである。
【0052】
ナノ粒子(Nanoparticle):直径約1000ナノメーター(nm)未満の粒子。本明細書において提供される方法への使用のための典型的なナノ粒子は、生物適合性及び生物分解性ポリマー材料から製造される。ある実施形態によれば、ナノ粒子はPLGAナノ粒子である。本明細書において使用される場合、「ポリマーナノ粒子」(polymeric nanoparticle)は、特定物質又は物質類の反復サブユニットから製造されるナノ粒子である。「ポリ(乳酸)ナノ粒子」(Poly(lactic acid) nanoparticles)は、反復乳酸サブユニットを有するナノ粒子である。同様に、「ポリ(グリコール酸)ナノ粒子」(Poly(glycolic acid) nanoparticles)は、反復グリコール酸サブユニットを有するナノ粒子である。
【0053】
操作可能に連結された(Operably linked):第1核酸配列が第2核酸配列と機能的関係を持って配置されている場合、当該第1核酸配列は、その第2核酸配列と操作可能に連結されている。例えば、プロモーターがコード配列の転写又は発現に影響を及ぼす場合、そのプロモーターはコード配列と操作可能に連結されている。一般的に、操作可能に連結された核酸配列は隣接しており、そして2種のタンパク質コード領域を連結する必要がある場合は、同じリーディングフレーム内に存在する。
【0054】
膵臓(Pancreas):内分泌腺と外分泌腺との混合物を含む腹部の結節器官。小内分泌部分は、血流中に多くのホルモンを分泌するランゲルハンス島から成る。大外分泌部分は、十二指腸中に注ぐ膵管系中に、いくつかの消化酵素を分泌する複合腺房腺である。
【0055】
膵臓β細胞(又はβ細胞)(Pancreatic beta cell):ランゲルハンス島に見られる膵臓中の種々のタイプの細胞。β細胞は、インスリンを生成し、そして放し、これが血液中のグルコースレベルを制御する。
【0056】
医薬的に許容できる担体(Pharmaceutically acceptable carriers):医薬的に許容できる担体の使用は、従来のことである。Remington's Pharmaceutical Sciences, by E. W. Martin, Mack Publishing Co., Easton, PA, 15th Edition (1975)は、Zscan4タンパク質、Zscan4核酸分子、又は本明細書に開示される細胞の医薬送達のために適切な組成物及び製剤を記載する。
【0057】
一般的に、担体の性質は、使用される特定の投与モードに依存する。例えば、非経口製剤は通常、医薬的に及び生理学的に許容できる流体、例えば水、生理食塩水、平衡化塩溶液、水性デキストロース、グリセロール又は同様のものを、ビヒクルとして含む注射用流体を含む。固体組成物(例えば、粉末、ピル、錠剤又はカプセル形)に関しては、従来の非毒性固体担体は、例えば医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン又はステアリン酸マグネシウムを含む。生物学的に中性担体の他に、投与される医薬組成物は、少量の非毒性補助物質、例えば湿潤剤又は乳化剤、保存剤、及びpH緩衝剤及び同様のもの、例えば酢酸ナトリウム又はソルビタンモノラウレートを含むことができる。
【0058】
医薬剤(Pharmaceutical agent):対象又は細胞に正しく投与される場合、所望する治療又は予防効果を誘発できる、化合物、小分子、細胞又は他の組成物。「インキュベーティング」(incubating)とは、細胞と相互作用する薬物についての十分な時間を含む。「接触させる」(contacting)とは、固体又は液体形での薬物を細胞と共にインキュベートすることを含む。
【0059】
多能性細胞(Pluripotent cell):生殖細胞を含むすべての生物の細胞系(内胚葉、中胚葉及び外胚葉)を形成できるが、しかし自立的には完全な生物を形成できない細胞。
【0060】
ポリヌクレオチド(polynucleotide):少なくとも6個のヌクレオチド、例えば少なくとも12、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも1000、又は少なくとも10,000個のヌクレオチドの核酸配列(例えば、線状配列)。したがって、ポリヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドを含み、染色体において見られる遺伝子配列も含む。「オリゴヌクレオチド」(oligonucleotide)は、天然のホスホジエステル結合により連結される多くの連結オリゴヌクレオチドである。オリゴヌクレオチドは、6〜300個の長さのヌクレオチドのポリヌクレオチドである。オリゴヌクレオチド類似体は、オリゴヌクレオチド類似して機能するが、しかし天然には存在しない部分を有する成分のことである。例えば、オリゴヌクレオチド類似体は、天然に存在しない部分、例えば糖成分又は糖間結合、例えばホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチドを含むことができる。天然に存在するポリヌクレオチドの機能的類似体は、RNA又はDNAに結合でき、そしてペプチド核酸(PNA)分子を含む。
【0061】
ポリペプチド(Polypeptide):モノマーがアミド結合を通して一緒に連結されるアミノ酸残基であるポリマー。アミノ酸がα−アミノ酸である場合、L−光学異性体又はD−光学異性体のいずれか使用され得、L−異性体が好ましい。用語「ポリペプチド」又は「タンパク質」とは、本明細書において使用される場合、任意のアミノ酸配列を含むことが意図され、そして修飾された配列、例えば糖タンパク質を含む。用語「ポリペプチド」は特に、天然に存在するタンパク質、及び、組み換えで又は合成により産生されるタンパク質を含むことが意図されている。
【0062】
用語「ポリペプチド断片」(polypeptide fragment)とは、少なくとも1つの有用なエピトープを示すポリペプチドの一部のことである。用語「ポリペプチドの機能的断片」(functional fragments of polypeptide)とは、ポリペプチド、例えばZSCAN4の活性を保持する、ポリペプチドのすべての断片のことである。例えば、生物学的な機能的断片は、抗体分子と結合できるエピトープと同じくらい小さなポリペプチド断片から、細胞増殖又は分化への影響を含む、細胞内での表現型変化の特徴的誘発又はプログラミングに関与することができる大きなポリペプチドまで、その大きさを変化することができる。したがって、ZSCAN4の生物学的活性、又はZSCAN4の保存的バリアント(conservative variant)を含む、より小さなペプチドが、役に立つものとして包含される。
【0063】
用語「実質的に精製されたポリペプチド」(substantially purified polypoptide)とは、本明細書において使用される場合、天然ンおいて付随する、他のタンパク質、脂質、炭水化物又は他の物質を実質的に有さないポリペプチドのことである。一実施形態によれば、ポリペプチドは、天然においては付随する、他のタンパク質、脂質、炭水化物又は他の物質を、少なくとも50%、例えば少なくとも80%有さない。別の実施形態によれば、ポリペプチドは、天然においては付随する、他のタンパク質、脂質、炭水化物又は他の物質を、少なくとも90%有さない。さらに別の実施形態によれば、ポリペプチドは、天然においては付随する、他のタンパク質、脂質、炭水化物又は他の物質を、少なくとも95%有さない。
【0064】
保存的置換は、1つのアミノ酸を、サイズ及び疎水性等が類似する別のアミノ酸と置換する。天然のZSCAN4タンパク質(例えば、配列番号2)でなされ得る保存的置換の例が、下記に示される:
【0065】
【化1】
【0066】
アミノ酸変化をもたらすcDNA配列の変動は、保存性であろうと又はなかろうと、コードされるタンパク質の機能的及び免疫学的同一性を保存するために最小化されるべきである。したがって、いくつかの非制限的な例において、ZSCAN4ポリペプチド又は本明細書に開示される他のポリペプチドは、最大2個、最大5個、最大10個、最大20個又は最大50個の保存的置換を含む。タンパク質の免疫学的同一性は、それが抗体により認識されるかどうかを決定することにより評価され得;そのような抗体により認識される変異体は免疫学的に保存される。例えば、変異体のアミノ酸は、天然のアミノ酸配列(例えば、天然のZSCAN4配列)に対して、少なくとも80%、90%又は、95%又は98%同一であり得る。
【0067】
前駆細胞(Progenitor cells):特定の種類の細胞又は細胞系に分化する多能性(oligopotent)又は単能性(unipotent)細胞。前駆細胞は、幹細胞に類似するが、より分化されており、そして制限された自己再生を示す。
【0068】
プロモーター(Promoter):核酸の転写へ向かわせる核酸制御配列。プロモーターは、転写の開始部位近くの必要な核酸配列を含む。プロモーターはまた、場合により、遠位エンハンサー又はリプレッサー要素を含む。「構成プロモーター」(constitutive promoter)は、継続的に活性的であり、そして外部シグナル又は分子による調節の対象ではないプロモーターである。対照的に、「誘発性プロモーター」(inducible promoter)の活性は、外部シグナル又は分子(例えば、転写因子)により調節される。
【0069】
レポーター遺伝子(Reporter gene):関心のある別の遺伝子又は核酸配列(例えば、プロモーター配列)と操作可能に連結された遺伝子。レポーター遺伝子は、関心のある遺伝子又は核酸が細胞において発現されるか、又は細胞において活性化されているかどうかを決定するために使用される。レポーター遺伝子は典型的には、容易に同定できる特徴、例えば蛍光、又は容易に検出される産物、例えば酵素を有する。レポーター遺伝子はまた、宿主細胞に抗生物質耐性を付与することができる。典型的なレポーター遺伝子として、蛍光及び発光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)及び遺伝子dsRedからの赤色蛍光タンパク質)、酵素ルシフェラーゼ(光を生成するためにルシフェリンとの反応を触媒する)、lacZ遺伝子(基質類似体X−galを含む培地上で増殖される場合、遺伝子を発現する細胞の青色への出現を引起すタンパク質β−ガラクトシダーゼをコードする)、及びクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子(抗生物質クロラムフェニコールに対する耐性を付与する)を挙げることができる。一実施形態によれば、レポーター遺伝子は蛍光タンパク質Emeraldをコードする。別の実施形態によれば、レポーター遺伝子は蛍光タンパク質Strawberryをコードする。
【0070】
レチノイド(Retinoids):ビタミンAに化学的に関連する種類の化合物。レチノイドは、主にそれらが上皮細胞成長を調節するので、医薬に使用される。レチノイドは、視覚における役割、細胞増殖及び分化の調節、骨組織の成長、免疫機能、及び腫瘍抑制遺伝子の活性を含む、身体を通しての多くの重要且つ多様な機能を有する。レチノイドの例として、オール−トランス型(all−trans)レチノイン酸(atRA)、9−シスレチノイン酸(9−cisRA)、13−シスRA及びビタミンA(レチノール)を挙げることができるが、それらだけには限定されない。
【0071】
サンプル(Sample):対象から得られる、ゲノムDNA、RNA(mRNAを含む)、タンパク質、細胞、組織又はそれらの組み合わせを含む生物学的試料。例としては、次のものを挙げることができるが、それらだけには限定されない:末梢血液、尿、唾液、脳脊髄液、組織生検(例えば、膵臓組織)、外科用試料及び剖検材料。1つの例によれば、サンプルはヒト膵臓組織サンプルである。
【0072】
選択マーカー(Selectable marker):細胞の選択又は単離を可能にする形質を付与する、細胞へ導入される遺伝子のことである。例えば、選択マーカーとしては、抗生物質耐性遺伝子を挙げることができる。
【0073】
配列同一性/類似性(Sequence identity/similarity):複数の核酸配列、又は複数のアミノ酸配列間の同一性/類似性は、配列間の同一性又は類似性の観点から表される。配列同一性は、%同一性の点から測定され得;百分率(%)が高いほど、配列の同一性は高くなる。配列類似性は、%類似性(保存性アミノ酸置換を考慮する)の点から測定され得;百分率が高いほど、配列の類似性は高くなる。核酸又はアミノ酸配列の相同体(Homologs)又は相同分子(orthologs)は、標準方法を用いて整列される場合、比較的高度の配列同一性/類似性を有する。
【0074】
比較のための配列のアラインメント法は、当業界においてよく知られている。種々のプログラム及びアラインメントアルゴリズムは、次に記載されている:Smith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482, 1981 ; Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443, 1970; Pearson & Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444, 1988; Higgins & Sharp, Gene, 73:237-44, 1988; Higgins & Sharp, CABIOS 5Λ51-3, 1989; Corpet et al, Nuc. Acids Res. 16:10881-90, 1988; Huang et al. Computer Appls. in the Biosciences 8, 155-65, 1992;及びPearson et al., Meth. Mol. Bio. 24:307-31, 1994。Altschul et al, J. Mol. Biol. 215:403-10, 1990は、配列アラインメント法及び相同性計算の詳細な考慮を提供する。
【0075】
NCBI基本的局所アラインメントサーチツール(NCBI Basic Local Alignment Search Tool)(BLAST)(Altschul et al, J. Mol. Biol. 215:403-10, 1990)は、配列分析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastn 及びtblastxに関しての使用のために、いくつかのソース、例えばNational Center for Biological Information (NCBI, National Library of Medicine, Building 38A, Room 8N805, Bethesda, MD 20894)から及びインターネット上で入手できる。追加の情報は、NCBIウェブサイトで見出され得る。
【0076】
BLASTは、核酸配列を比較するために使用され、そしてBLASTPはアミノ酸配列を比較するために使用される。2種の比較される配列が相同性を共有する場合、作成される出力ファイルは、整列された配列として相同性のそれらの領域を提供する。2種の比較される配列が相同性を共有しない場合、作成される出力ファイルは整列された配列を提供しない。
【0077】
当業者は、特定の配列同一性の範囲が唯一の指針として提供されていることを理解する;提供される範囲外にある、極めて有意な相同体が得られ得る。
【0078】
SSEA3(段階−特異的胚抗原−3):炭水化物エピトープ認識モノクローナル抗体により本来同定された分子。SSEA3は、特にヒト多能性幹細胞のための既知幹細胞マーカーである(Shevinsky et al. , Cell 30(3):697-705, 1982; Kannagi et al., EMBO / 2(12):2355-2361, 1983; Kannagi et al., J Biol Chem 258(14):8934-8942, 1983)。
【0079】
幹細胞(Stem cell):変更されていない娘細胞を産生し(自己再生;細胞分析は、親細胞と同一である少なくとも1つの娘細胞を産生する)、そして特殊化された細胞型を生ぜしめる(効能)固有の能力を有する細胞。幹細胞として、次のものを挙げることができるが、それらだけには限定されない:ES細胞、EG細胞、GS細胞、MAPC、maGSC、USSC及び成体幹細胞。一実施形態によれば、幹細胞は複数の所定の細胞型の十分に分化された機能的細胞を産生することができる。インビボでの幹細胞の役割は、動物の通常の生活の間に破壊される細胞を置き換えることである。一般的に、幹細胞は制限なしに分裂することができる。分裂の後、幹細胞は、幹細胞として存続し、前駆細胞になるか、又は最終分化に進み得る。前駆細胞は、少なくとも1つの所定の細胞型の十分に分化された機能的細胞を産生できる細胞である。一般的に、前駆細胞は分裂できる。分裂の後、前駆細胞は、前駆細胞のまま存続するか、又は最終分化へ進行できる。
【0080】
対象(Subject):生存多細胞脊椎動物。ヒト及び非ヒト哺乳類を含むカテゴリー。
【0081】
Tcstv1/3(2細胞期、種々のグループ、メンバー1及び3):ZSCAN4と同時発現することが以前に示されている遺伝子(国際公開第2008/118957号)。Tcstv1及びTcstv3はスプライスバリアントである。
【0082】
治療量(Therapeutic amount):意図される目的を達成するのに十分な治療剤の量。例えば、ZSCAN4+膵臓幹細胞又は前駆細胞の治療量は、そのような治療から恩恵を受けることができる疾患、例えば糖尿病の障害又は症状を軽減するのに十分な量である。治療量は、ある例においては、疾患又は症状を100%治療することはできない。しかしながら、治療剤の投与から恩恵を受けることができる疾患のいずれか既知特徴又は症状の軽減、例えば少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%又はそれ以上の軽減が、治療でなされ得る。所定の治療剤の治療量は、要因、例えば剤の性質、投与経路、治療剤を受ける動物の大きさ及び種、及び投与の目的により変化する。それぞれの場合において、治療量は、当該技術分野において確立された方法に従って、当業者により過度の実験を行うことなく実験的に決定され得る。
【0083】
全能細胞(Totipotent cell):完全な生命体を自動的に形成できる細胞のことである。受精卵(卵母の細胞)のみがこの能力を有する(幹細胞にはない)。
【0084】
トランスフェクティング(Transfecting)又はトランスフェクション(toransfection):細胞又は組織中に核酸を導入する工程のことである。トランスフェクションは、多くの方法のいずれか1つ、例えばリポソーム介在性トランスフェクション、エレクトロポレーション及び注入(但し、それらだけには限定されない)により達成され得る。
【0085】
移植(Transplanting):対象中に器官、組織又は細胞を移植する工程のことである。
【0086】
ベクター(Vector):宿主細胞中に導入され、それにより、形質転換された宿主細胞を産生するような核酸分子。ベクターは、宿主細胞において複製を可能にする核酸配列、例えば複数の起点(DNA合成の開始に関与するDNA配列)を含むことができる。例えば、発現ベクターは、挿入された遺伝子又は遺伝子類の転写及び翻訳を可能にするために、必要な調節配列を含む。ベクターはまた、1又は2以上の選択マーカー遺伝子及び当業界において知られている他の遺伝要素を含むことができる。例えば、ベクターは、ウィルスベクター及びプラスミドベクターを含む。
【0087】
ZSCAN4:2−細胞特異的発現及びES細胞特異的発現を示すものとして以前に同定されており(国際公開第2008/118957号)、そしてテロメア伸長及びゲノム安定性を促進することが示されている(Zalzman et al, Nature 464(7290):858-863, 2010)遺伝子群、本開示によれば、「ZSCAN4」は、ヒトZSCAN4及びマウスZscan4の両者を含む。マウスにおいては、用語「Zscan4」は、3個の偽遺伝子(Zscanl−psl、Zscan4−ps2及びZscan4−ps3)及び6個の発現された遺伝子(Zscan4a、Zscan4b、Zscan4c、Zscan4d、Zscan4e及びZscan4f)を含む遺伝子の集合体のことである。ZSCAN4は、ZSCAN4ポリペプチド、及びZSCAN4ポリペプチドをコードするZSCAN4ポリヌクレオチドのことである。典型的な配列が本明細書に提供される。
【0088】
特に断らない限り、本明細書に使用される全ての技術及び化学用語は、本開示が属する技術分野の当業者により通常理解されるのと同じ意味を有する。単数形の用語、不定冠詞「a」、「an」及び定冠詞「the」は、特に明白に示されない限り、複数形も含む。同様に、用語「又は」(or)は、特に明白に示されない限り、「及び」(and)を含むことを意図される。したがって、「A又はBを含む」(comprising A or B)とは、A又B、又はA及びBを含むことを意味する。核酸又はポリペプチドについて与えられる、すべての塩基サイズ又はアミノ酸サイズ、及びすべての分子量又は分子質量値はおおよそであり、そして説明のために提供されることがさらに理解されるべきである。本明細書に記載されるそれらの方法及び材料に類似するか又はそれと同等の方法及び材料が本開示の実施又は試験に使用され得るが、適切な方法及び材料が下記に記載される。GenBank受託番号を含む、全ての出版物、特許出願、特許及び他の引例は、それらの全体を参照により組み込まれる。競合の場合、用語の説明を含む本明細書が支配する。さらに、材料、方法及び実施例は単なる例示であり、制限されることを意図していない。
【0089】
III .いくつかの実施形態の概要
適切なマーカーの欠如が、成人膵臓における幹細胞及び前駆細胞の同定及び単離を妨げてきた。Zscan4、すなわちネズミ胚幹(ES)細胞において断続的に発現される遺伝子が、それらの細胞におけるテロメア伸長及びゲノム安定性を調節することは、これまで開示されている。成人ヒト膵臓において、少数のZSCAN4陽性細胞が、ランゲルハンス島、腺房及び膵管に位置する細胞間に存在することが本明細書に開示されている。ZSCAN4が、膵臓星状細胞がまた位置する、腺房間の間質に位置する卵形状細胞のいくつかにおいて発現されることをもまた決定されている。多くの場合、それらのZSCAN4陽性細胞もまた、他の組織幹細胞マーカー、例えばBMI1及びLGR5に対して陽性であった。さらに、ZSCAN4陽性細胞の数は、慢性膵炎を有する患者、特にコルチコステロイド処理の後、活動的に再生する膵臓組織において劇的に上昇した。しかしながら、処置の1年後、ZSCAN4陽性細胞の数は、影響を受けていない膵臓中のその数に匹敵する非常に低いレベルに戻った。本明細書に開示されるデータは、ZSCAN4の発現が成人ヒト膵臓における希少な幹/前駆細胞のためのバイオマーカーとして役立つことを示唆する。
【0090】
したがって、サンプル、例えば膵臓組織サンプルから膵臓幹細胞又は膵臓前駆細胞、又はそれらの両者を単離する方法が、本明細書に提供される。ある実施形態によれば、前記方法は、サンプルの細胞中におけるZSCAN4の発現を検出し、そしてZSCAN4を発現する細胞を単離することを含む。
【0091】
膵臓の疾病又は障害を有する対象の治療方法もまた提供される。膵臓の疾病又は障害は、膵臓の内分泌機能又は外分泌機能に関連付けられ得る。ある場合、膵臓の内分泌機能に関連する疾病又は障害が糖尿病である。したがって、対象における糖尿病を治療する方法が本明細書に提供される。ある実施形態によれば、前記方法は、(i)膵臓幹細胞又は膵臓前駆細胞を単離し、ここで前記膵臓幹細胞又は膵臓前駆細胞の単離がZSCAN4を発現する、膵臓組織中の細胞を検出することを含み;(ii)インビトロで、ZSCAN4を発現する、前記単離された膵臓細胞又は前駆細胞を増殖し;そして(iii)前記増殖された膵臓幹細胞又は前駆細胞を、前記対象中に移植し、それにより対象における糖尿病を治療することを含む。特定の例によれば、膵臓幹細胞又は前駆細胞は、治療される対象から単離される。
【0092】
さらに、対象において膵臓幹細胞又は前駆細胞集団をインビボで増殖させる方法が提供される。ある実施形態によれば、前記方法は、ZSCAN4タンパク質;ZSCAN4核酸配列;又はZSCAN4の発現を高めるか、又はZSCAN4+細胞の数を増大させる剤を対象の膵臓に送達することを含む。
【0093】
ZSCAN4の発現を高める剤を同定することにより、外分泌及び内分泌細胞(インスリン分泌性膵臓β細胞を含む)を再生するよう膵臓幹細胞を刺激する剤を同定するためのスクリーニングアッセイがまた提供される。
【0094】
A.膵臓幹細胞及び前駆細胞の単離方法
サンプルから膵臓幹細胞又は膵臓前駆細胞、又は両者を単離するための方法が、本明細書に提供される。ある実施形態によれば、前記方法は、サンプルの細胞中においてZSCAN4の発現を検出し(例えば、配列番号2として示される配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する配列の存在を検出し)、そしてZSCAN4を発現する細胞を単離することを含む。特定の例においては、サンプルはヒト膵臓組織を含む。
【0095】
開示される方法のある実施形態によれば、ZSCAN4の発現の検出は、ZSCAN4と同時発現される遺伝子の発現の検出を含む。SSEA3、すなわち既知幹細胞マーカーが、膵臓組織において、ZSCAN4と類似する発現パターンを示す発現が本明細書に記載される(図11を参照のこと)。したがって、特定の例によれば、ZSCAN4と同時発現される遺伝子はSSEA3である。他の遺伝子が、ZSCAN4と同時発現されるものとして同定されている。例えば、国際公開第2008/118957号は、AF067063、Tcstvl/3、Tho4、Arginase II、 BC061212 及び Gm428、Eifla、EG668777 及びPiflが同時発現された遺伝子であることを開示する。したがって、ある態様によれば、ZSCAN4と同時発現される遺伝子は、AF067063、Tcstvl/3、Tho4、Arginase II、 BC061212 及び Gm428、Eifla、EG668777 及びPiflから成る群から選択される。1つの非制限的な例によれば、ZSCAN4と同時発現される遺伝子は、Tcstv1/3である。
【0096】
同時発現された遺伝子は、ZSCAN4と同一の発現パターンを示す必要はないが、しかし一般的に、ZSCAN4と非常に類似する発現パターンを示し、その結果、ZSCAN4と同時発現される遺伝子を検出することにより単離される大部分の細胞(例えば、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも90%又は少なくとも約95%)はまた、ZSCAN4を発現する。
【0097】
ある実施形態によれば、ZSCAN4と同時発現される遺伝子は、タンパク質の抗体に基づく検出を促進するために膜タンパク質をコードする。
【0098】
ある実施形態によれば、ZSCAN4の発現の検出は、ZSCAN4によりコードされるタンパク質に対して特異的な抗体、又はZSCAN4と同時発現される遺伝子によりコードされるタンパク質に対して特異的な抗体とサンプルとを接触することを含む。特定の例によれば、抗体はZSCAN4によりコードされるタンパク質に対して特異的である。他の例によれば、抗体はSSEA3によりコードされるタンパク質に対して特異的である。さらに他の例によれば、抗体はTcstv1/3によりコードされるタンパク質に対して特異的である。ZSCAN4、SSEA3 及びTcstvl/3によりコードされるタンパク質に対して特異的な抗体は、市販されており、そして/又は当業者によく知られている方法を用いて産生することができる(ZSCAN4抗体の例については、表1を参照のこと)。
【0099】
抗体介在性検出及び単離方法は当業者によく知られている。ある場合、ZSCAN4に対して特異的な抗体、又はZSCAN4と同時発現される遺伝子によりコードされる遺伝子産物は、検出可能なラベル、例えば蛍光団に結合される。したがって、特定の実施形態によれば、蛍光団と複合体化したZSCAN4特異的抗体は、サンプル中の細胞と接触される。ZSCAN4+細胞は、抗体を結合し、そして例えば蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)により単離され得る。同様に、ZSCAN4と同時発現される遺伝子の遺伝子産物に対して特異的な蛍光団接合抗体が、サンプル中の細胞と接触され、ZSCAN4と同時発現される遺伝子を発現する細胞が単離され、それにより、ZSCAN4+細胞が単離される。抗体はまた、他の検出可能なマーカー、例えば磁気ビーズ(ZSCAN4+細胞の磁気分離を可能にする)と複合体化され得る。
【0100】
他の実施形態によれば、ZSCAN4の発現の検出は、異種核酸配列、例えばレポーター遺伝子又は選択マーカーに操作可能に連結されたZSCAN4プロモーターを含むベクターによりサンプル中の細胞をトランスフェクトすることを含む。異種核酸配列は、ZSCAN4を発現する細胞の検出及び/又は選択を可能にするいずれかのタイプの分子をコードすることができる。ある例によれば、異種核酸配列は、レポーター遺伝子である。例えば、レポーター遺伝子は蛍光タンパク質又は酵素であり得る。特定の非制限的な例によれば、蛍光タンパク質として、GFP又はその誘導体、例えばエメラルド(Emerald)を挙げることができる。蛍光マーカーの使用は、例えばFACSを用いての細胞の単離を可能にする。
【0101】
他の例によれば、異種核酸分子は、選択マーカーである。ある例によれば、選択マーカーは、抗生物質耐性遺伝子である。適切な抗生物質耐性遺伝子としては、ピューロマイシン、ブラストサイジン、ヒグロマイシン、ゲンタマイシン、G418及び同様のものに対する耐性を付与する遺伝子を挙げることができるが、それらだけには限定されない。当業者は、哺乳類細胞及び対応する抗生物質のための適切な選択マーカーを容易に選択でき、ZSCAN4を発現する細胞を選択できる。ベクターが抗生物質耐性遺伝子を含む場合、そのベクターによりトランスフェクトされた細胞は、対応する抗生物質の存在下で培養され得る。ZSCAN4を発現する細胞はまた、抗生物質耐性遺伝子を発現し、そして抗生物質の存在下で生存し;ZSCAN4を発現しない細胞は死滅し、それにより、ZSCAN4+細胞の単離を可能にする。
【0102】
ある実施形態によれば、プロモーターは、ヒトZSCAN4プロモーターの少なくとも一部を含む。特定の例によれば、プロモーターはヒトZSCAN4プロモーターを含む。他の実施形態によれば、ZSCAN4プロモーターは、マウスZscan4aプロモーターの少なくとも一部を含む。特定の例によれば、Zscan4cプロモーターは、配列番号15のヌクレオチド906−4468として示される核酸配列を含む。
【0103】
ある実施形態によれば、ZSCAN4+細胞の検出のためのベクターは、配列番号15として示される配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含み、そしていつか例においては、配列番号15を含む。
【0104】
本明細書に開示されるある実施形態によれば、前記方法はさらに、既知組織幹細胞マーカー、例えばLGR5又はBMI1(但しそれらだけには限定されない)の発現の検出を含む。したがって、特定の例によれば、前記方法はさらに、LGR5又はBMI1、又は両者の発現の検出、及び、LGR5又はBMI1、又は両者を発現する細胞の単離を含む。
【0105】
B.膵臓の疾患又は障害の治療方法
膵臓の疾患又は障害を有する対象の治療方法もまた、本明細書において提供される。膵臓の疾患又は障害は、膵臓の内分泌機能又は膵臓の外分泌機能に関連付けられ得る。ある場合、膵臓の内分泌機能に関連する疾患又は障害は糖尿病である。
【0106】
ドナー膵臓からインビトロで単離された、インスリン産生ランゲルハンス島細胞、又はそのような細胞に分化できる膵臓幹/前駆細胞の移植が、1型及び、幾つかの場合の2型糖尿病を治療する能力を有する(Serup et al, BMJ 322:29-32, 2001)。しかしながら、十分なドナー細胞の欠乏、及び治療の必要な対象中に同種細胞を都合よく移植するのに必要とされる免疫抑制治療の副作用が、この治療の選択肢の可能性を制限してきた。膵臓幹細胞及び前駆細胞を単離するための本明細書に開示される方法は、それらの困難性を克服するための手段を提供する。
【0107】
対象における糖尿病の治療方法が本明細書に提供される。ある実施形態によれば、前記方法は、(i)膵臓幹細胞又は膵臓前駆細胞を単離し、ここで前記膵臓幹細胞又は膵臓前駆細胞の単離がZSCAN4(例えば、配列番号2として示される配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有するZSCAN4配列)を発現する、膵臓組織中の細胞を検出することを含み;(ii)インビトロで、ZSCAN4を発現する、前記単離された膵臓細胞又は前駆細胞を増殖し;そして(iii)前記増殖された膵臓幹細胞又は前駆細胞を、前記対象中に移植することを含む。特定の例によれば、膵臓幹細胞又は前駆細胞は、治療される対象から単離される。ある実施形態によれば、前記方法は、治療の必要な対象、例えば糖尿病(1型又は2型糖尿病を含む)を有するものとして診断された対象の選択をさらに含む。
【0108】
膵臓組織は、標準的な方法、例えば手術又は生検を用いて、治療される対象から、又はドナー対象から得られる。膵臓の生検は、いずれかの標準的な方法、例えば細針吸引(FNA)、コア生検又は腹腔鏡検査に従って実施され得る(Paulsen et al., Interventional Radiology 187:769-772, 2006; Freeny et al, West J Med 132:283-287, 1980)。特定の例によれば、膵臓組織は、超音波内視鏡の視覚ガイダンス下で、19ゲージのTRU−CUT(商標)生検針を用いて得られる。
【0109】
ある実施形態によれば、前記方法はさらに、膵臓幹細胞又は前駆細胞を、対象に移植する前、膵臓β細胞に分化させることを含む。インビトロで膵臓細胞を培養し、そして膵臓幹細胞又は前駆細胞を(例えばβ細胞に)分化させる方法は記載されている(例えば、Ramiya et al. , Nat Med 6:278-282, 2000; Bonner- Weir et al. , Proc Natl Acad Sci USA 97(14):7999-8004, 2000;米国特許出願公開番号2005/0069529号及び2008/0274090号を参照のこと)。
【0110】
治療の必要な対象中への膵臓細胞(幹細胞、前駆細胞又は分化された細胞)の移植は、当業界において知られているいずれかの適切な方法を用いて達成され得る。ある実施形態によれば、膵臓細胞は膵臓中に直接的な注入により送達される。1つの例として、膵臓細胞は、皮下注射針により腎臓カプセルを穿刺し、前記腎臓中に穿刺部位を介して細い毛細管を通し、そして膵臓の皮質領域中に細胞を注入することにより移植され得る(例えば、米国特許出願公開第2008/0274090号に記載される)。別の例によれば、膵臓細胞は、上腹部を介して、肝臓の門脈中にカテーテルを配置することにより移植される。次に、膵臓細胞は、徐々に肝臓内に注入される。
【0111】
ある実施形態によれば、増殖された膵臓幹細胞、前駆細胞又はβ細胞は、単独で、医薬的に許容できる担体(例えば、適切なポリマーにカプセルを封入されている)の存在下で、又は他の治療剤の存在下で投与される。
【0112】
1つの例によれば、膵臓細胞は、糖尿病患者に移植される半透性ポリマー膜及びポリマー膜にカプセル封入される(化合物及び細胞のカプセル封入の説明については、米国特許第5,573,528号を参照のこと)。
【0113】
半透性ポリマー膜は、合成物であっても、又は天然物であっても良い。使用され得るポリマーの例としては、次のものを挙げることができる:ポリエーテルスルホン(PES)、アクリロニトリル−塩化ビニル共重合体(polyacrylonitrile-co-vinyl chloride)(P[AN/VC])、ポリ(乳酸)、乳酸−グリコール酸共重合体(poly(lactic-co-glycolic acid))、メチルセルロース、ヒアルロン酸、コラーゲン及び同様のもの。ポリマー膜内のカプセル封入された膵臓細胞の送達は、細胞に対する宿主の拒絶及び免疫応答、及び拒絶及び炎症に関連する問題を回避できる。さらに、ポリマー膜内に含まれる細胞は、細胞生存性を維持し、そしてポリマー壁を通して分子、栄養物及び代謝生成物の輸送を可能にしながら、免疫監視機構から、ポリマー壁(すなわち、個々の繊維、フィブリル、フィルム、スプレー、液滴、粒子等の壁)により保護される。ポリマーカプセル封入された細胞の移植は、Aebischer et al. (Transplant, 111:269-275, 1991)により開発されており、そして非ヒト霊長類及びヒトの両者により都会良く使用されてきた(Aebischer et al, 1994, Transplant, 58:1275-1277;米国特許第6,110,902号)。
【0114】
1つの例によれば、増殖された膵臓細胞は、最初に、コラーゲン、アガロース又はPVA(ポリビニルアルコール)のいずれかのマトリックス中にそれらの細胞を埋めることによりカプセル封入される。続いて、埋められた細胞は、ポリアクリルニトリル:ポリ塩化ビニルの60:40のコポリマーのポリプロピレンから製造された中空繊維中に注入される。前記繊維は、移植のために断片に切断され、そして末端−密封される。
【0115】
C.インビボでの膵臓幹/前駆細胞の増殖方法
さらに、対象において膵臓幹細胞又は前駆細胞集団をインビボで増殖させる方法が本明細書に提供される。ある実施形態によれば、前記方法は、ZSCAN4タンパク質;ZSCAN4核酸配列;又はZSCAN4の発現を増大させるか又はZSCAN4+細胞の数を増大させる剤を、対象の膵臓に送達することを含む。ある実施形態によれば、前記方法はさらに、膵臓幹細胞又は前駆細胞の増殖の必要な対象を選択することを含む。例えば、対象は糖尿病を有する対象であり得る。
【0116】
ある実施形態によれば、ZSCAN4タンパク質又は核酸配列は、ヒトZSCAN4タンパク質又は核酸配列である。他の実施形態によれば、ZSCAN4タンパク質又は核酸配列は、ネズミ科のZscan4配列である。
【0117】
ある実施形態によれば、ZSCAN4タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一である。ある例によれば、ZSCAN4タンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列を含む。特定の非制限的な例によれば、ZSCAN4タンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列から成る。他の例によれば、ZSCAN4タンパク質は、配列番号2の機能的断片、又は配列番号2の保存的バリアントを含む。
【0118】
ある実施形態によれば、ZSCAN4核酸配列は、配列番号1の核酸配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一である。ある例によれば、ZSCAN4核酸配列は、配列番号1のヌクレオチド配列を含む。特定の非制限的例によれば、ZSCAN4核酸配列は、配列番号1のヌクレオチド配列から成る。他の例によれば、ZSCAN4核酸配列は、配列番号2の機能的断片、又は保存的バリアントをコードする。
【0119】
ある実施形態によれば、ZSCAN4核酸配列の送達は、ZSCAN4核酸配列を含むべきベクターの投与を含む。ZSCAN4発現ベクターの作製及び使用方法は、本出願の他のセクションに記載されている。
【0120】
ある実施形態によれば、ZSCAN4タンパク質又はZSCAN4核酸配列(例えば、ZSCAN4核酸配列を含むベクター)の送達は、ナノ粒子にカプセル封入されるZSCAN4タンパク質又は核酸の投与を含む。ナノ粒子を用いてのタンパク質及び核酸分子の送達方法は、当業者において良く知られており、そして下記セクションV.Dに記載される。
【0121】
本発明者は、レチノイドがマウスES細胞培養物においてZscan4+細胞を過渡的に高めることができることを以前示している(2010年9月2日に出願されたPCT/US2010/047644号)。したがって、ある実施形態によれば、ZSCAN4の発現を高める剤はレチノイドである。典型的なレチノイドとして、atRA、9−cisRA、B−cisRA及びビタミンAを挙げることができるが、それらだけには限定されない。
【0122】
ZSCAN4タンパク質、ZSCAN4核酸、又はZSCAN4の発現を増大させる(又はZSCAN4+細胞の数を増大させる)剤の送達は、当業界において知られているいずれかの適切な方法を用いて達成され得、そして送達される分子又は組成物に依存して変化する。ある実施形態によれば、ZSCAN4タンパク質、ZSCAN4核酸、又はZSCAN4の発現を高めるか、又はZSCAN4+細胞の数を高める剤は、注入により対象の膵臓に送達される。他の実施形態によれば、剤は、局部又は全身血液循環中に注入され、膵臓への剤の送達が可能にされる。さらに他の実施形態によれば、剤は経口投与される。
【0123】
D.スクリーニングアッセイ
所定の細胞集団(例えば、膵臓における細胞)においてZSCAN4の発現を増大させるか又はZSCAN4+細胞の数を増大させる剤を同定することにより、内分泌及び外分泌細胞(インスリン分泌膵臓β細胞を含む)を再生するよう膵臓幹細胞を刺激する剤を同定するスクリーニングアッセイがさらに本明細書に提供される。ある実施形態によれば、前記方法は、細胞培養物と、候補剤とを接触させ、そしてZSCAN4の発現を検出することを含む。対照と比較して細胞培養物へ剤を添加した後におけるZSCAN4の発現の上昇は、剤が内分泌及び外分泌細胞を再生するよう膵臓幹細胞を刺激できることを示唆する。例えば、対照は、剤の添加前のZSCAN4発現レベル、対照細胞培養物におけるZSCAN4の発現、又は基準値、例えば外因性剤の不在下で類似する細胞培養物におけるZSCAN4発現の代表値であり得る。
【0124】
ある実施形態によれば、細胞培養物は、膵臓細胞、例えば一次膵臓細胞、又は膵臓細胞系の細胞を含む。他の実施形態によれば、細胞培養物は、多能性幹細胞、例えば胚幹細胞を含む。
【0125】
ある実施形態によれば、アッセイは、例えばPCRによるZSCAN4mRNAの発現の検出を含む。他の実施形態によれば、アッセイは、例えばELISAによるZSCAN4タンパク質の発現の検出を含む。さらに他の実施形態によれば、アッセイは、ZSCAN4プロモーターの制御下でのレポーター(例えば、GFP)の発現の検出を含む。
【0126】
例えば、開示されるスクリーニングアッセイを用いて同定される剤を用いて、対象に投与し、膵臓幹/前駆細胞をインビボで増殖できる。
【0127】
IV.Zscan4プロモーター配列及び発現ベクター
ZSCAN4プロモーター及びレポーター遺伝子を含む発現ベクターはこれまでに記載されている(国際公開第2008/118957号を参照のこと)。異種ポリペプチド(例えば、レポーター遺伝子又は選択マーカー)をコードする核酸配列に操作可能に連結されたZSCAN4プロモーター配列を含む発現ベクターを用いて、ZSCAN4を発現する細胞を同定できる。レポーター遺伝子の発現を検出する方法、したがって、ZSCAN4+細胞を検出する方法は、レポーター遺伝子の種類に依存して変化し、そしてこのことは、当業界においてよく知られている。例えば、蛍光レポーターが使用される場合、発現の検出は、FACS又は蛍光顕微鏡により達成され得る。他の例によれば、選択マーカー、例えば抗生物質耐性遺伝子が使用される場合、細胞は、ZSCAN4を発現しない全ての細胞を死滅させる、適切な選択剤(例えば、抗生物質)の存在下でインキュベートされる。
【0128】
ある例によれば、異種核酸配列(例えば、レポーター分子)は、ZSCAN4プロモーター(例えば、ベクター)の制御下で発現される。ある実施形態によれば、ZSCAN4プロモーターは、マウスZscan4cプロモーターである。例えば、Zscan4cプロモーターは、配列番号15のヌクレオチド906−4468として示される核酸配列を含むことができる。ある例によれば、Zscan4cプロモーターは、Zscan4cエキソン及び/又はイントロン配列を含む。他の発現制御配列、例えば適切なエンハンサー、転写ターミネーター、タンパク質コード遺伝子の前の開始コドン(すなわち、ATG)、イントロンのためのスプライシングシグナル、及び停止コドンが、発現ベクターにおいて、ZSCAN4プロモーターと共に含まれ得る。一般的に、プロモーターは、異種核酸配列の転写へ向かわせるために十分な最小配列を少なくとも含む。いくつかの例によれば、異種核酸配列は、レポーター分子又は選択マーカー(例えば、抗生物質耐性遺伝子)をコードする。
【0129】
異種核酸配列によりコードされる異種タンパク質は典型的には、レポーター分子又は選択マーカー、マーカー、酸素、蛍光タンパク質、細胞に抗生物質耐性を付与するポリペプチド、又は従来の分子生物学方法を用いて同定され得る抗原である。レポーター分子を用いて、関心のある細胞又は細胞集団、例えばZSCAN4+膵臓細胞を同定できる。1つの実施形態によれば、異種タンパク質は、蛍光マーカー(例えば、緑色蛍光タンパク質又はその変異体、例えばエメラルド(Emerald)(Invitorogen、Carlsbad、CA));抗原マーカー(例えば、ヒト成長ホルモン、ヒトインスリン、ヒトHLA抗原);細胞表面マーカー(例えば、CD4又はいずれかの細胞表面受容体);又は酸素マーカー(例えば、lacZ、アルカリホスファターゼ)である。レポーター遺伝子の発現は、細胞がZscan4を発現することを示唆する。レポーター遺伝子の発現の検出方法は、レポーター遺伝子のタイプに依存して変化し、そして当業界においてよく知られている。例えば、蛍光レポーターが使用される場合、発現の検出はFACS又は蛍光顕微鏡により達成され得る。
【0130】
別の実施形態によれば、異種タンパク質は、抗生物質耐性、例えばピューロマイシン耐性を付与する。したがって細胞は、適切な抗生物質(例えば、ピューロマイシン)の存在下でインキュベートされ、ZSCAN4を発現する細胞が選択される。
【0131】
発現ベクターは典型的には、複製の起点、及び形質転換された細胞の表現型選択を可能にする特定遺伝子を含む。使用に適したベクター、例えばウィルスベクター及びプラスミドベクター(例えば、下記セクションVに記載されるそれら)は、当業界においてよく知られている。1つの例によれば、エンハンサーはZSCAN4プロモーターの上流に位置するが、しかしエンハンサー要素は一般的に、ベクター上の任意の位置に配置され、そしてまだ、増強効果を有する。しかしながら、増強された活性の量は一般的に、距離と共に減少し得る。さらに、エンハンサー配列の複数のコピーが、プロモーター活性のさらなる増大を生成するために、次々と操作可能に連結され得る。
【0132】
ZSCAN4プロモーターを含む発現ベクターを用いて、宿主細胞、例えば膵臓細胞(但し、それらだけには限定されない)を形質転換できる。宿主において発現及び複製できる生物学的に機能的なウィルス及びプラスミドDNAベクターは、当業界において知られており、そして興味あるいずれかの細胞をトランスフェクトするために使用され得る。
【0133】
「トランスフェクトされた細胞」(transfected cell)は、核酸分子(例えば、DNA分子)、例えばZSCAN4プロモーター要素を含むDNA分子を導入されている宿主細胞(又は祖先(ancestor))である。組換え核酸分子による宿主細胞のトランスフェクションは、当業者によく知られているような従来の技法により実施され得る。本明細書において使用される場合、トランスフェクションは、リポソーム介在性トランスフェクション、エレクトロポレーション、注入、又は核酸分子を細胞中に導入するためのいずれか他の適切な技法を含む。
【0134】
V.Zscan4ポリヌクレオチド及びポリペプチド配列
ZSCAN4核酸及びアミノ酸配列は、当業界においてこれまで記載されている(例えば、国際公開第2008/118957号(この開示は参照により本明細書に組込まれる);Falco et al, Dev. Biol. 307(2):539-550, 2007; 及びCarter et al., Gene Expr. Patterns. 8(3): 181-198, 2008)。本明細書において使用される場合、用語「ZSCAN4」は、ヒトZSCAN4、2−細胞胚段階又はES細胞−特異的発現を示すマウス遺伝子群のいずれか1つ(Zscan4a、Zscan4b、Zscan4c、Zscan4d、Zscan4e 及び Zscan4fを含む)、又はZSCAN4いずれか他の種の相同分子を含む。
【0135】
A.ZSCAN4アミノ酸配列
典型的なZSCAN4アミノ酸配列は、配列番号2 (ヒトZSCAN4)、配列番号4 (Zscan4a)、配列番号6 (Zscan4b)、配列番号8 (Zscan4c)、配列番号10 (Zscan4d)、配列番号12 (Zscan4e) 及び配列番号14 (Zscan4f)として配列表に示されている。当業者は、それらの配列に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも98%の配列同一性を有し、そしてZSCAN4活性(例えば、ゲノム安定性を増強し、そしてES細胞においてテロメア長を増大する能力)を保持する配列が、本明細書に提供される方法に使用され得ることを理解する。
【0136】
他の種からのZSCAN4アミノ酸配列、例えばイヌZSCAN4 (GenBank受託番号XP_541370 及び XP_853650); ウシZSCAN4 (GenBank受託番号XP_001789302); 及びウマZSCAN4 (GenBank受託番号XP_001493994)は、公的に入手できる。上記に列挙されるGenBank受託番号の個々は、2011年1月14日のGenBankデータベースに表示されるように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0137】
細胞(例えば、膵臓細胞)において発現されるか、又は本明細書に提供される方法に従ってインビボで(例えば膵臓に)送達され得る、ZSCAN4ポリペプチドの特定の非制限の例として、配列番号2、4、6、8、10、12又は14で示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%相同であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを挙げることができる。更なる実施形態によれば、ZSCAN4ポリペプチドは、配列番号2、4、6、8、10、12又は14の保存的バリアントであり、その結果、それは、配列番号2、4、6、8、10、12又は14において50以下の保存性アミノ酸置換、例えば2以下、5以下、10以下、20以下又は50以下の保存性アミノ酸置換を含む。別の実施形態によれば、ZSCAN4ポリペプチドは、配列番号2、4、6、8、10、12又は14で示されるアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を有する。別の実施形態によれば、ZSCAN4ポリペプチドは、配列番号2、4、6、8、10、12又は14で示されるアミノ酸配列から成るアミノ酸配列を有する。
【0138】
ZSCAN4ポリペプチドの断片及び変異体は、分子技法を用いて、当業者により容易に調製され得る。一実施形態によれば、ZSCAN4ポリペプチドの断片は、ZSCAN4ポリペプチドの少なくとも50、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも350、少なくとも400、少なくとも450又は少なくとも500の連続アミノ酸を含む。さらなる実施形態によれば、ZSCAN4の断片は、関心のある細胞中へと移行される場合、ZSCAN4の機能を付与する断片である。
【0139】
ZSCAN4ポリペプチドの一次アミノ酸配列のマイナー修飾は、本明細書に記載される修飾されていない対応ポリペプチドに比較して、実質的に同等の活性を有するペプチドをもたらすことができる。このような修飾は、部位特異的突然変異誘発によるものとして考えられても、又は自発的であるものとしても考えられる。それらの修飾により産生されるペプチドのすべては、本明細書に含まれる。
【0140】
当業者は、ZSCAN4ポリペプチド及び関心のある第二のポリペプチドを含む融合タンパク質を容易に産生できる。場合により、リンカーが、ZSCAN4ポリペプチドと、興味ある第ニポリペプチドとの間に含まれ得る。融合タンパク質としては、ZSCAN4ポリペプチド及びマーカータンパク質を含むポリペプチドを挙げることができるが、但しそれだけには限定されない。一実施形態によれば、マーカータンパク質を用いて、ZSCAN4ポリペプチドを同定するか又は精製できる。典型的な融合タンパク質として、緑色蛍光タンパク質、6種のヒスチジン残基、又はmyc及びZSCAN4ポリペプチドを挙げることができるが、それらだけには限定されない。
【0141】
当業者は、開示される方法のために有用なZSCAN4のそのような変異体、断片及び融合体は、ZSCAN4活性を保持するそれらであることを理解する。
【0142】
B.ZSCAN4核酸配列
Zscan4ポリペプチドをコードする核酸分子は、Zscan4ポリヌクレオチド又は核酸分子と呼ばれる。それらのポリヌクレオチドは、ZSCAN4タンパク質をコードするDNA、cDNA及びRNA配列を含む。ZSCAN4ポリペプチドをコードする全てのポリヌクレオチドもまた、それらが認識されるZSCAN4活性、例えば、ES細胞におけるゲノム安定性又はテロメア長をモジュレートする能力を有するポリペプチドをコードする限り、本明細書に包含されることが理解される。ポリヌクレオチドは、遺伝子コードの結果として縮重している配列を含む。20の天然アミノ酸が存在し、それらのほとんどは1以上のコドンにより特定される。したがって、すべての縮重ヌクレオチド配列は、ヌクレオチド配列によりコードされるZSCAN4ポリペプチドのアミノ酸配列が機能的に変更されない限り、包含される。ZSCAN4ポリヌクレオチドは、本明細書に開示されるように、ZSCAN4ポリペプチドをコードする。本明細書に提供される方法を用いて、細胞において発現されるか、又は細胞又は組織に送達されるZSCAN4コードする典型的なポリヌクレオチド配列は、配列番号1 (ヒト ZSCAN4)、配列番号3 (Zscan4a)、配列番号5 (Zscan4b)、配列番号7 (Zscan4c)、配列番号9 (Zscan4d)、配列番号11 (Zscan4e)、及び配列番号13 (Zscan4f)として配列表に示される。
【0143】
他の種からのZSCAN4核酸配列、例えばイヌZSCAN4 (GenBank 受託番号XM_541370 及びXM_848557);ウシZSCAN4 (GenBank 受託番号XM_001789250);及びウマ ZSCAN4 (GenBank 受託番号XM_001493944)は公的に入手できる。上記に列挙されるGenBank受託番号の個々は、それが2011年1月14日におけるGenBankデータベースで見られるように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0144】
ある実施形態によれば、本明細書において提供される方法に従って細胞(例えば、膵臓細胞)において発現されるか又はその細胞に送達されるZSCAN4ポリヌクレオチド配列は、配列番号1、3、5、7、9、11又は13に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一である。ある実施形態によれば、ZSCAN4ポリヌクレオチド配列は、配列番号1、3、5、7、9、11又は13で示される核酸配列を含む。ある実施形態によれば、Zscan4ポリヌクレオチド配列は、配列番号1、3、5、7、9、11又は13で示される核酸配列から成る。
【0145】
ZSCAN4ポリヌクレオチドの断片及び変異体は、分子技法を用いて、当業者により容易に調製され得る。一実施態様によれば、ZSCAN4ポリヌクレオチドの断片は、ZSCAN4ポリヌクレオチドの少なくとも250個、少なくとも500個、少なくとも750個、少なくとも1000個、少なくとも1500個又は少なくとも2000個の連続核酸を含む。さらなる実施形態によれば、ZSCAN4の断片は、興味ある細胞において発現される場合、ZSCAN4の機能を付与する断片である。
【0146】
ZSCAN4ポリヌクレオチド配列のマイナーな修飾は、本明細書に記載される修飾されていない対応ポリヌクレオチドに比較して、実質的に同等の活性を有するペプチドの発現をもたらすことができる。そのような修飾は、部位特異的突然変異誘発によるものとして考えられても、又は自発的であっても良い。それらの修飾により生成されるポリヌクレオチドのすべては、本明細書に包含される。
【0147】
C.ZSCAN4をコードするベクター
ZSCAN4ポリヌクレオチドは、ベクター中に;自律的に複製するプラスミド又はウィルス中に;又は原核生物又は真核生物のゲノムDNA中に組み込まれるか、又は他の配列とは無関係に独立した分子(例えば、cDNA)として存在する組み換えDNAを含む。ヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、又はいずれかのヌクレオチドの修飾形であり得る。この用語は、DNAの一本鎖及び二本鎖を含む。
【0148】
上記いくつかのZSCAN4核酸及びタンパク質配列の提供により、標準的な実験技法を用いて、細胞(例えば、膵臓細胞)におけるいずれかのZSCAN4タンパク質(例えば、異種ZSCAN4タンパク質)の発現が可能となる。ある例によれば、ZSCAN4核酸配列はプロモーターの制御下にある。ある例によれば、ベクター系、例えばプラスミド、バクテリオファージ、コスミド、動物性ウィルス及び酵母人工染色体(YAC)が、ZSCAN4を発現するために使用される。それらのベクターはその後、膵臓細胞中に導入され得る。
【0149】
ZSCAN4コード配列は、異種プロモーターに操作可能に連結され、ZSCAN4コード核酸配列の転写へと向かう。プロモーターは、転写の開始部位近くの必要な核酸配列、例えばポリメラーゼII型プロモーターの場合、TATA要素を含む。プロモーターはまた、場合により、転写の開始部位から数千塩基対ほど離れて位置する遠位エンハンサー又はリプレッサー要素を含む。1つの例によれば、プロモーターは、構成プロモーター、例えばCAG−プロモーター(Niwa et al., Gene 108(2):193-9, 1991)、又はホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)−プロモーターである。別の例によれば、プロモーターは、誘発性プロモーター、例えばテトラサイクリン誘発性プロモーターである(Masui et al., Nucleic Acids Res. 33:e43, 2005)。ZSCAN4発現を駆動するために使用され得る他の典型的なプロモーターは、次のものを含むが、それらだけには限定されない:lacシステム、trpシステム、tacシステム、trcシステム、λファージの主要オペレーター及びプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、SV40の初期及び後期プロモーター、ポリオーマ、アデノウィルス、レトロウィルス、バキュロウィルス及びシミアンウィルス由来のプロモーター、3−ホスホグリセリン酸キナーゼのためのプロモーター、酵母酸性ホスホターゼのプロモーター、及び酵母α−核合因子のプロモーター。ある例によれば、天然のZSCAN4プロモーターが使用される。
【0150】
ベクター系を用いて、ZSCAN4を発現できる。細胞においてZscan4を発現するために使用され得る典型的なベクターとしては、プラスミド及びウィルスベクターを挙げることができるが、それらだけには限定されない。1つの例によれば、SV40のプロモーター及びエンハンサー領域、ラウス肉腫ウィルスの長い末端反復体(LTR)、及びSV40からのポリアデニル化及びスプライシングシグナルを含むベクター(Mulligan and Berg, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2072-6; Gorman et al, 1982, Proc. Natl. Acad. Sci USA 78:6777-81)から使用される。1つの例によれば、ベクターは、ウィルスベクター、例えばアデノウィルスベクター、アデノ随伴ウィルス(AAV)(米国特許第4,797,368号(Carter et al.)及びMclaughlin et al.(J.Virol.62:1963−73、1988)に記載される)、例えばタイプ4AAV(Chiorini et al. J. Virol. 71:6823-33, 1997)及びタイプ5AAV(Chiorini et al. J. Virol. 73:1309-19, 1999)、又はレトロウィルスベクター(例えば、モロニーマウス白血病ウィルス、脾臓壊死ウィルス、及びレトロウィルス、例えばラウス肉腫ウィルス、ハーベイ肉腫ウィルス、鳥類白血病ウィルス、ヒト免疫不全ウィルス、骨髄増殖性肉腫ウィルス、及び乳腺腫瘍ウィルス由来のベクター)である。他のウィルストランスフェクション系、例えばワクシニアウィルス(Moss et al, 1987, Annu. Rev. Immunol. 5:305-24)、ウシ乳頭腫ウィルス(Rasmussen et al, 1987, Methods Enzymol 139:642-54)又はヘルペスウィルス群のメンバー、例えばエプスタイン・バー・ウィルス(Margolskee et al., 1988, Mol. Cell Biol. 8:2837-47)がまた、使用され得る。さらに、ベクター(したがって、ZSCAN4核酸)の安定した長期発現を示す、トランスフェクトされた細胞の選択を可能にするために、抗生物質選択マーカー(例えば、ネオマイシン、ヒグロマイシン又はミコフェノール酸)を含むことができる。
【0151】
D.ZSCAN4タンパク質及び核酸の送達のためのナノ粒子
ナノ粒子は、カプセル封入された薬物、例えば合成小分子、タンパク質、ペプチド、細胞及び核酸基材の急速又は調節された放出のための生物薬物を担持するサブミクロン(約1000nm以下)のサイズの薬物送達ビヒクルである。種々の分子(例えば、タンパク質、ペプチド及び核酸分子)が、当業界においてよく知られている方法を用いて、ナノ粒子に効果的にカプセル封入され得る。
【0152】
本明細書に記載される方法による使用のためのナノ粒子は、いずれかのタイプの生物適合性ナノ粒子、例えば生物分解性ナノ粒子、例えばポリマーナノ粒子、例えばポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルケン、ポリビニルエーテル及びセルロースエーテルナノ粒子であり得る。ある実施形態によれば、ナノ粒子は、生物適合性及び生物分解性材料から製造される。ある実施形態によれば、ナノ粒子は、ポリ(乳酸)又はポリ(グリコール酸)、又はポリ(乳酸)及びポリ(グリコール酸)の両者を含むが、但しそれらだけには制限されない。特定の実施形態によれば、ナノ粒子はD,L−乳酸−グリコール酸共重合体(poly(D,L−lactic−co−glycolic acid))(PLGA)ナノ粒子である。
【0153】
PLGAは、吸収性縫合糸及び生物分解性インプラントとして使用されてきた、FDA承認を受けた生物材料である。PLGAナノ粒子はまた、多くの投与経路、例えば皮下、静脈内、眼球、経口及び筋肉投与を通して種々の薬物のための薬物送達システムにも使用されてきた。PLGAはそのモノマー構成成分、すなわち乳酸及びグリコール酸に分解し、それらの成分は代謝の天然の副産物であり、前記材料を高い生物分解性にする。さらに、PLGAは、ナノ粒子の合成のための臨床グレードの材料として市販されている。
【0154】
他の生物分解性ポリマー材料、例えばポリ(乳酸)(PLA)及びポリグリコリド(PGA)が、本明細書に記載される組成物及び方法への使用のために検討される。追加の有用なナノ粒子としては、生物分解性ポリ(アルキルシアノアクリレート)ナノ粒子を挙げることができる(Vauthier et al., Adv. Drug Del. Rev. 55: 519-48, 2003)。
【0155】
ヒト用途のために現在使用されている生物分解性ポリマーの中で、PLA、PGA及びPLGAは、それらが無害な乳酸及びグリコール酸へのインビボ加水分解を受けるので、一般的に安全であることが知られている。それらのポリマーは、手術後の除去が必要とされない縫合糸の製造に、及びヒト使用のためにFDAにより承認されている、カプセル封入された酢酸ロイプロリドの配合に使用されてきた(Langer and Mose, Science 249:1527, 1990; Gilding and Reed, Polymer 20:1459, 1979; Morris, et ai, Vaccine 12:5, 1994)。それらのポリマーの分解速度は、グリコリド/ラクチド比及びその分子量により変化する。したがって、カプセル封入された分子(例えば、タンパク質又はポリペプチド)の放出は、ポリマーの分子量及びグリコリド/ラクチド比、並びに粒度及びカプセル配合物の被膜の厚さを調節することにより、数ヶ月にわたって持続され得る(Holland, et ai, J. Control. Rel. 4:155, 1986)。
【0156】
ある実施形態によれば、本明細書に記載される組成物及び方法への使用のためのナノ粒子は、直径約50nm〜約1000nmのサイズの範囲である。ある場合、ナノ粒子は約600nm以下である。ある実施形態によれば、ナノ粒子は直径約100〜約600nmである。ある実施形態によれば、ナノ粒子は直径約200〜約500nmである。ある実施形態によれば、ナノ粒子は直径約300〜約450nmである。当業者は、ナノ粒子のサイズが、調製方法、臨床応用及び使用される撮像物質に依存して変化できる。
【0157】
種々のタイプの生物分解性及び生物適合性ナノ粒子、そのようなナノ粒子、例えばPLGAナノ粒子の製造方法、及び種々の化合物、例えばタンパク質及び核酸のカプセル封入方法は、当業界においてよく知られている(例えば、米国特許出願公開第2007/0148074号、第2007/0092575号、及び第2006/0246139号;米国特許第5,753,234号及び第7,081,489号;及びPCT公開番号WO2006/052285号を参照のこと)。
【0158】
以下の実施例は、ある特定の特徴及び/又は実施形態を例示するために提供される。それらの実施例は、記載される特定の特徴又は実施形態に本開示を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0159】
実施例1:材料及び方法
この実施例は、実施例2に記載された試験のために使用される実験方法を記載する。
【0160】
対象
外科的に切除された膵臓組織及び膵臓生検サンプルを、免疫組織化学的分析のために使用した。胆道癌の治療のために切除された正常膵臓組織を用いた(n=3)。慢性アルコール性膵炎の治療のために切除された組織(n=3)を同様に用いた。自己免疫性膵炎を有する18人の患者からの膵臓生検サンプルは、これまで報告されている(Ko et al, Gastroenterology 138:1988-1996, 2010)。全ての膵臓生検は悪性腫瘍を排除するために行われ、そして書面によるインフォームドコンセントは、手順の前、各患者から得られた。超音波内視鏡検査の視覚的ガイダンス(GF−UCT240、Olympus)下で、膵臓組織を、19−ゲージTRU−CUT(商標)生検針(Wilson−Cook Inc.)を用いて、膵体から得た。患者は自己免疫性膵炎についての次の2006年改訂版日本臨床診断基準を満たした:膵臓の核酸性腫脹、主膵管の不規則な狭窄、及び自己抗体又は高IgG(≧1800mg/dl)/IgG4濃度(≧135mg/dl)についての陽性試験。自己免疫性膵炎を有する18人の患者のうち(Mizuno et al., J Gastroenterol 44:742-750, 2009)、3人の患者は、次の3種の異なった時点で悪性腫瘍を排除するために膵臓生検を行われた:診断の時点、コルチコステロイド治療の開始の3ヶ月後、及び治療の開始の1年後。経口コルチコステロイドについての標準プロトコールは次に応じて使用された:初期投与量として週30mg/日でのプレドニソロン、第2週の20mg/日、さらに4週間の10mg/日、及び観察期間を通してすべて維持用量として5mg/日(Ko et al, Gastroenterology 138:1988-1996, 2010)。
【0161】
免疫組織化学及び免疫蛍光
ヒト及びマウスの両膵臓を、10%ホルマリンに固定し、そしてパラフィンに包埋した。包埋された組織を、5μmで、ライカミクロトーム(Leica Microsystems GmbH, Wetzlar, Germany)により薄くスライスした。切片を脱パラフィン化し、透過性にし、そして免疫組織化学分析のために使用した。(Ko et al, Gastroenterology 138: 1988-1996, 2010)。この研究に使用される抗体は、表1に要約されている。
【0162】
【表1】
【0163】
抗体を、製造業者の推薦に従って希釈した。免疫反応を、Histofine Simple Stain MAX−PO (Nichirei Biosciences, Inc, Tokyo, Japan)を用いて強化した。免疫ラベリングを、ホースラディッシュペルオキシダーゼのための基質として3,3’−ジアミノベンジジンテトラヒドロクロリド(DAB)を用いて可視化した。切片をマイヤーヘマトキシリンで対比染色した。免疫蛍光に関しては、ALEXA FLUOR(商標) 488 (緑色) 又はALEXA FLUOR(商標)596 (赤色)によりラベルされた二次抗体を、二重染色のために使用した。免疫ラベリングを、オリンパス蛍光顕微鏡(AX80:Olympus、Tokyo,Japan)で撮影した。細胞核を、Hoechst 33342により対比染色した。
【0164】
材料
分子生物学グレードのすべての試薬は、特に断らない限り、Sigma-Aldrich (St. Louis, MO)から入手した。
【0165】
実施例2:成人ヒト膵臓におけるZSCAN4により標識された前駆体/幹細胞
この実施例は、少数のZSCAN4陽性細胞が、成人膵臓のランゲルハンス島、腺房及び膵管に位置する細胞間に存在するという発見を記載している。この実施例に記載される結果は、ZSCAN4発現が、成人ヒト膵臓において希少な幹/前駆細胞のマーカーであることを示唆する。
【0166】
成人ヒト膵臓におけるZSCAN4の発現及び局在化
ヒトZSCAN4に対して生じた特異的抗体による免疫染色は、大部分のヒト膵臓組織がZSCAN4染色に対して陰性であるが、しかし少数の細胞がZSCAN4に対して強い核染色を示したことを表した(図1A)。より特定には、ヒト膵臓の内分泌部分において、大部分のランゲルハンス島がいずれのZSCAN4染色も示さず、そしていくらか(<1%)のランゲルハンス島がZSCAN4染色を示し;強い核染色を有する少数の細胞及び残存細胞のいくらかが弱い細胞質染色を示した(図1B)。ヒト膵臓の外分泌部分においては、大部分の腺房細胞はいずれのZSCAN4染色も示さず、そしていくらか(<1%)の腺房細胞は、少数の細胞において時折強い核染色を伴って、弱いZSCAN4染色を示した(図1C)。さらに、少数のZSCAN4陽性(ZSCAN4+)細胞がまた、膵管に見出された(図1D)。ZSCAN4はまた、膵臓腺房間の領域に位置する卵形細胞にも発現された(図1E)。それらの位置及び細胞形態から、それらの卵形細胞(仮に、「膵臓卵形細胞」と呼ばれる)は、1つの形の膵臓星状細胞として同定され得る(Bachem et al, Gastroenterology 115:421-432, 1998; Apte et al, Gut 43:128-133, 1998)。
【0167】
ヒトZSCAN4抗体の検証として、ヒトZSCAN4及びマウスZSCAN4に対する両抗体がヒト(図1F〜1H及び図1A〜C)又はマウス(図6D〜6L)膵臓切片のいずれか上でほぼ同一の細胞を示したことが観察された。マウスZSCAN4は多能性ES細胞についての特異的マーカーであり(Falco et al, Dev Biol 307:539-550, 2007; Carter et al, Gene Expr Patterns 8:181-198, 2008)、そしてマウスES細胞におけるゲノム安定性に関与する(Zalzman et al, Nature 464:858-863, 2010)ので、それらの免疫組織学的データは、ZSCAN4+細胞が膵臓組織幹細胞のための優れた候補であることを示している。そのことは以前から推定されてきたが、まだ発見されていなかった(Aguayo-Mazzucato et al, Nat Rev Endocrinol 6: 139-148, 2010)。
【0168】
ヒト膵臓におけるLGR5及びBMI1の発現及び局在化
膵臓におけるZSCAN4+細胞をさらに調べるために、マウスにおいて組織幹細胞マーカーとして十分に確立されている次の2種の他のタンパク質を選択した:ポリコーム環フィンガー腫瘍遺伝子(BMI1)及びロイシンに富んでいる反復体含有G−タンパク質共役型受容体5(LGR5)。BMI1は、成熟マウス造血幹細胞の効果的自己再生細胞分裂のために必要である(Raaphorst, Trends Immunol 24:522-524, 2003)。単一のBMI1発現細胞が、腸上皮における全ての細胞系統を形成することが示されており(Ootani et al, Nat Med 15:701-706, 2009)、そしてBMI1系統のトレーシングは、膵臓器官ホメオスタシスが可能な自己再生膵臓腺房細胞を同定した(Sangiorgi and Capecchi, Proc Natl Acad Sci USA 106:7101-7106, 2009)。LGR5はいくつかの器官において発現され(Barker and Clevers, Gastroenterology 138:1681-1696, 2010)、そしてLGR5+細胞の遺伝子マーキングがマウスにおける腸及び皮膚組織幹細胞のためのマーカーとしてこの膜タンパク質を同定している(Barker et al, Nature 449:1003-1007, 2007; Snippert et al, Science 327:1385-1389, 2010)。
【0169】
免疫組織化学的分析は、BMI1及びLGR5の両者が、ランゲルハンス島(それぞれ、図2A及び2D)、膵管細胞(それぞれ、図2B及び2E)、膵臓腺房細胞(それぞれ、図2C及び2D)、及び隣接する腺房間に位置する膵臓卵形細胞(それぞれ、図2C及び2Fにおける星印)の少数の内部細胞に検出されたことを示した。結果的に、ZSCAN4+、BMI1+及びLGR5+細胞の局在化はお互い類似し;しかしながら、一般的に、BMI1+及びLGR5+細胞はZSCAN4+細胞よりも豊富であった。
【0170】
ヒト膵臓におけるZSCAN4、BMI1及びLGR5により同時染色された細胞の存在
ZSCAN4、BMI1及びLGR5が同じ細胞において発現されるかどうかを試験するために、免疫蛍光による二重染色を、同じ一連のヒトパラフィン切片において実施した。BMI1を発現する細胞及びLGR5を発現する細胞は、わずかに多くのLGR5+細胞がBMI1+細胞よりも認められているが、ヒト膵臓切片においてはほとんどオーバーラップした(図2G〜2J)。対照的に、ZSCAN4発現は、LGR+細胞のサブセット(5〜10%)においてのみ見出された(図2K〜2N)。それらの結果は、マウスES細胞においてZSCAN4タンパク質の発現パターンと良好に一致し、ここでZscan4は過渡的に発現され、そしてES細胞のわずか約5%が所定の時点でZscan4に対して陽性である(Zalzman et al, Nature 464:858-863, 2010)。用語「BMI1+LGR5+ZSCAN4+&-」は、BMI1及びLGR5の同時発現により示され、そしてZSCAN4を断続的に発現する能力を有する細胞を示すために使用される。
【0171】
BMIl+LGR5+ZSCAN4+&-細胞は膵臓内分泌ホルモンも外分泌酵素アミラーゼも発現しない
BMIl+LGR5+ZSCAN4+&-細胞が分化された細胞の表現型を有するかどうかを試験するために、蛍光ベースの共染色を、LGR5に対する抗体及び内分泌ホルモン又は外分泌酵素アミラーゼの1つに対する抗体の組合せにより実施した。
【0172】
膵島においては、LGR5+細胞は、インスリン(図3A〜3D及び3A〜8C)、グルカゴン(図7A〜7D及び8D〜8F)、ソマトスタチン(図7E〜7H及び8G〜8I)及びグレリン(図7I〜7L及び8J〜8L)に関してすべて陰性であった。それらの内分泌ホルモンの発現の欠如は、それらのBMIl+LGR5+ZSCAN4+&-細胞がランゲルハンス島に位置する既知の分化された細胞に属してないことを示唆し、このことは、新規細胞型、おそらく組織幹/前駆細胞の存在を示唆する。少数の内分泌ホルモン発現細胞をまた、膵管(図8C、8F、8I及び8L)及び膵臓腺房(図8B、8E、8H及び8K)において観察され、これは以前の報告と一致している(Bertelli and Bendayan, Am J Physiol 273:C1641-1649, 1997)(図9D〜9F)。
【0173】
膵臓腺房においては、BMIl+LGR5+ZSCAN4+&-細胞は、膵臓外分泌細胞のための消化酵素アミラーゼ−特異的マーカーに対して陰性であり(図3E−3H)、このことは、膵臓腺房に新規細胞型、おそらく組織幹/前駆細胞の存在を示唆する。
【0174】
膵管及び腺房間の間質中のいくつかのBMIl+LGR5+ZSCAN4+&-細胞におけるAQP1、CFTR及びCD163の発現
アクアポリン1水チャネル(AQP1)及び嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)クロライドチャンネルの両者が、ヒト膵管の形質膜で発現され、そして成熟膵管細胞についてのマーカーとして使用され得る(図4A及び図10A)(Ko et al, Gastroenterology 138:1988-1996, 2010)。膵島及び腺房における細胞に比較して、膵管に位置する少数のBMIl+LGR5+ZSCAN4+&-細胞はまた、AQP1に対して陽性であった(図4A及び図4D〜4G)。膵臓星状細胞はAQP1に対して陽性であるが、しかしCFTRに対して陽性ではなかったことがまた見出された(図4B及び4C)。他方では、膵臓卵形細胞は、AQP1及びCFTRの両者に対して陽性であった(図4C及び図10B及び10C)。膵臓卵形細胞及び膵臓星状細胞のほとんどは、造血幹細胞マーカーCD163に対して陽性であった(図4L)。膵臓星状細胞と造血幹細胞との間に関連性が存在することは推定されている(Sparmann et al, Cell Res 20:288-298, 2010)。さらに、いくつかのCD163+細胞もまた、膵管において(図4M)及び膵管周囲に、特にいくつかの膵管近くの基底膜(図4N)に見出された。免疫組織化学的分析がまた、表2に要約される。
【0175】
【表2】
【0176】
慢性膵炎におけるZSCAN4+細胞の増殖
次に、ZSCAN4発現を、コルチコステロイドホルモンによる3ヶ月間、患者を治療した後、慢性炎症から回復した膵臓組織により試験した(Ko et al, Gastroenterology 138:1988-1996, 2010)。影響されていない個々からの膵臓組織(図5A)と比較して、ZSCAN4+の劇的な増加が慢性炎症、すなわち慢性アルコール性膵炎(図5B)及び自己免疫性膵炎(図5C及び5D)下での組織において観察された。ZSCAN4+細胞のさらなる上昇が、3ヶ月のコルチコステロイド治療の後、再生した膵臓組織において観察された(図5E)。前述したように、正常ヒト膵臓においては、ZSCAN4+細胞は非常に希少であり、そして見つけるのはかなり難しく(図5A);しかしながら、再生した組織においては、ZSCAN4+細胞は豊富に存在した(図5E)。それらのZSCAN4+細胞は、治療後1年で、消出し、そして正常レベルに戻った(図5F)。それらのデータは、膵臓組織の炎症及び再生がZSCAN4+細胞の上昇に伴い、このことは、組織再生へのZSCAN4+細胞の関与を示唆する。
【0177】
議論
上記免疫組織化学分析は、幾つかの膵島、腺房、膵管及び腺房間の間質において、ZSCAN4、並びにLGR5及びBMI1の強い発現により特徴付けられる希少細胞を同定した。それらのデータは、それらの希少細胞が、いくつかの証拠に基づいて、成人ヒト膵臓における組織幹/前駆細胞であることを示す。
【0178】
最初に、それらの細胞における幹細胞マーカー遺伝子(ZSCAN4、LGR5及びBMI1)の同時発現が、希少ではあるが、それらの細胞が実在し、そして幹細胞の特徴を有する、という強い示唆を提供する。膵臓組織におけるそれらの希少な存在はまた、膵臓が活性組織ターンオーバー/再生を有さない器官である概念と一致する(Barker and Clevers, Gastroenterology 138:1681-1696, 2010)。さらに、所定の時点でのわずか約5%の未分化マウスES細胞における、マウスScan4の強い発現と一致して(Zalzman et al, Nature 464:858-863, 2010)、10%未満のLGR5陽性細胞がZSCAN4に対して陽性である。膵臓におけるZSCAN4発現のこの強く且つ特有なパターンは、ES細胞に類似する機能、すなわち膵臓におけるテロメア及びゲノム安定性を維持する特有のメカニズムの存在を示唆する。発明者の以前の研究は、2−細胞胚及び亜集団の未文化マウスES細胞においてのみのマウスZscan4の発現を示してきたので(Falco et al., Dev Biol 307:539-550, 2007)、この開示は、ヒト組織及び成人組織/器官におけるZSCAN4発現の最初の実証を提供する。
【0179】
第二に、腺房及び膵島における他の分化細胞間に位置するBMIl+LGR5+ZSCAN4+&-細胞における分化マーカー、例えばアミラーゼ及び膵臓ホルモンの欠如は、それらの細胞が未分化幹/前駆細胞であることを強く示唆する。対照的に、膵管に位置するBMIl+LGR5+ZSCAN4+&-細胞は、分化を示す遺伝子である、AQP1及びCFTRを発現する。膵管に位置するBMIl+LGR5+ZSCAN4+&-細胞の特定の特徴は、その膵管細胞がしばしば、膵臓での潜在的な幹/前駆細胞として選抜されている事実に関連しているかもしれない(Bonner-Weir et al, Pediatr Diabetes 5 Suppl 2:16-22, 2004)。
【0180】
第三に、ZSCAN4+細胞の数は、慢性炎症に起因する腺房の大量の消耗からコルチコステロイド治療の後に再生される膵臓組織において劇的に上昇し、続いて、1年間の治療の後、正常レベルまで急激に減少する。これは、膵臓再生の間、ZSCAN4+組織幹細胞プールの上昇、又はZSCAN4+推定組織幹細胞からの分化の直後の細胞におけるZSCAN4タンパク質の連続した存在のいずれかを示唆する。慢性膵炎におけるZSCAN4+の有意な上昇の観察は、炎症に対する免疫抑制療法による膵臓実質の再生への膵臓幹/前駆細胞の役割を示唆する。
【0181】
第四に、BMIl+LGR5+ZSCAN4+&-細胞はまた、隣接する膵臓腺房又は周囲の膵管間にも位置する。AQP1及び造血幹細胞マーカーCD163のそれらの位置及び発現に基づいて、それらの卵形状のZSCAN4細胞は、膵臓星状細胞に関連し(Apte et al, Gut 43: 128-133, 1998)、これらは慢性炎症での膵線維症に関連すると思われる(Masamune et al, Clin Gastroenterol Hepatol 7:S48-54, 2009)。そしてそれらの少なくともいくらかは、骨髄由来の幹/前駆細胞であると思われる(Sparmann et al, Cell Res 20:288-298, 2010; Marrache et al, Gut 57:1113-1120, 2008)。膵臓星状細胞のいくらかは、β様細胞を産生できる前駆細胞である最近の実証(Mato et al. , Biochem J 421:181-191, 2009)は、それらの細胞が膵臓星状細胞のための場所に位置する卵形状のBMIl+LGR5+ZSCAN4+&-細胞とオーバーラップすることを示唆する。
【0182】
機能的に不十分な量のインスリン産生膵臓β細胞が存在する場合に、1型糖尿病及び一部の2型糖尿病は発生する。糖尿病は、細胞置換療法のための十分なβ細胞を得る手段を見出すことが可能である場合、治癒され得る。死体膵島、ヒトES細胞、及び誘発された多能性幹(iPS)細胞は、移植のためのβ細胞源として良好な候補であると思われるが(Bonner-Weir and Weir, Nat Biotechnol 23:857-861, 2005)、好結果をもたらすβ細胞置換療法が利用できる前、克服するための大きな障害が存在する。本明細書に開示される膵臓幹/前駆細胞は、超音波誘導TRU−CUT(商標)生検による膵臓組織の小片を得ることが可能であるので(Mizuno et al , J Gastroenterol 44:742-750, 2009)、分化β細胞の新しい源として役立ち得る。
【0183】
実施例3:ZSCAN4及び幹細胞マーカーSSEA3の同時発現
セルレイン誘発された実験的膵炎が膵炎のためのモデルとして広く使用されてきた。ZSCAN4及び他のマーカー、例えば段階−特異的胚抗原−3(SSEA3)、炭水化物エピトープ及び既知幹細胞マーカーの発現パターンを、膵炎を受けている膵臓組織において実験した。免疫組織化学染色を、Zscan4、SSEA3、LGR5及びBMI1の発現を評価するために実施した。図11に示されるように、SSEA3はZscan4と類似する(但し、同一ではない)発現パターンを示す。したがって、それらの結果は、SSEA3が、場合によっては、ZSCAN4発現細胞のマーカーとして及び/又はZSCAN4+細胞の富化手段として使用され得ることを示唆する。
【0184】
開示される発明の原理が適用され得る多くの可能性ある実施形態を考慮して、例示される実施形態は本発明の単なる例であり、本発明の範囲を制限するものではないことが理解されるべきである。むしろ、本発明の範囲は、次の請求項により定義される。したがって我々は、それらの請求項の範囲及び趣旨内にある全てを我々の発明として主張する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]