【文献】
大成建設株式会社,「除染サポートシステム「T−DECOS」を開発」,[online],日本,2013年 9月20日,[平成29年7月20日検索],インターネット<URL:http://www.taisei.co.jp/about_us/release/2013/1353290354100.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
除染をする対象となる家屋を構成する部材には、さまざまな種類がある。例えば、壁の種類には、漆喰、塩化ビニールの波板、サイディング、タイル等がある。また、家屋を構成する各部位の状態も個々に異なっている。例えば、雨樋の有無、屋根や壁の損傷の有無、庭や駐車場の地面の状態等は、家屋ごとに異なっている。
【0005】
また、除染方法にもさまざまな種類がある。例えば、人力により清掃する方法、低圧洗浄をする方法、高圧洗浄をする方法等が知られている。それぞれの部位の状態に適した洗浄方法を用いないと、家屋を構成する部材を破壊してしまったり、十分な洗浄効果を得られなかったりする。したがって、作業者は、家屋の状態に応じて除染方法を慎重に選定する必要があり、現場で除染方法を選択することは困難であった。
【0006】
ところで、どのような除染方法を適用するかについては、家屋の持ち主に承諾を得る必要がある。ところが、作業者が、家屋の調査をした現場で除染方法を選択することができないと、作業者は、家屋の持ち主と除染方法についての協議をするために、資料等を作成した上で、家屋の調査をした日と異なる日に再び現場に来なければならないので、作業効率が悪かった。
【0007】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、除染作業の効率を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に係る除染情報管理システムは、携帯端末と、前記携帯端末と通信可能な除染情報管理装置と、を備え、前記携帯端末は、除染対象の家屋を構成する複数の部位の状態に関する状態情報を、前記部位に関連付けて取得する取得部と、前記状態情報を前記除染情報管理装置に送信する端末通信部と、情報を表示する表示部と、を有し、前記除染情報管理装置は、前記状態情報に基づいて、それぞれの前記部位で使用可能な除染方法を複数の除染方法から選択する選択部と、前記選択部が選択した前記除染方法を前記携帯端末に送信する装置通信部と、を有し、前記表示部は、前記装置通信部から受信した前記除染方法を前記家屋の前記部位に関連付けて表示する。
【0009】
除染情報管理システムが上記の構成を備えることにより、除染を行う作業者は、除染対象の家屋を調査すると、家屋の状態に適した除染方法を速やかに把握することができるので、除染作業の効率が向上する。
【0010】
前記除染情報管理装置は、前記選択部が選択した前記除染方法を、前記家屋の前記部位に関連付けて記憶部に記憶させる情報管理部、及び前記家屋を特定するための家屋情報と、前記部位と、前記選択部が選択した前記除染方法とを関連付けた情報を含む帳票を作成する帳票作成部をさらに備えてもよい。
除染作業を行う際には、発注者(環境省等)に除染内容及び結果を詳細に記載した帳票書類を提出する必要があるが、除染情報管理装置が上記の情報管理部及び帳票作成部を備えることにより、作業者が調査した結果を持ち帰ってから帳票を作成する時間を要しないので、作業効率が大幅に向上する。
【0011】
上記の取得部は、除染を実施する対象の除染領域を撮影した除染領域画像と、前記除染領域の除染前後の放射線量を示す線量情報とを取得し、前記除染情報管理装置は、前記除染領域画像に基づいて、除染を実施した領域の面積である除染面積を算出する算出部を有し、前記情報管理部は、前記線量情報と前記除染面積とを関連付けて前記記憶部に記憶させてもよい。
【0012】
除染情報管理システムが上記の構成を備えることにより、除染を実施する対象の領域の面積を測定するために、除染を実施する現場で測量をする必要がなくなるので、除染工事の出来形管理が迅速になり効率性が向上する。
【0013】
前記取得部は、除染により生じた廃棄物が収容された容器を識別する廃棄物識別情報と、前記廃棄物の状態を示す廃棄物状態情報と、前記廃棄物の処理工程を示す処理モードとを取得し、前記端末通信部は、前記取得部が取得した前記廃棄物状態情報及び前記処理モードを、前記廃棄物識別情報に関連付けて前記除染情報管理装置に送信し、前記除染情報管理装置は、前記端末通信部から送信された前記廃棄物状態情報及び前記処理モードを、前記廃棄物識別情報に関連付けて記憶部に記憶させる情報管理部を備えてもよい。
【0014】
除染情報管理システムが上記の構成を備えることにより、廃棄物の管理者等が、廃棄物の状態をリアルタイムで把握することができるので、放射性物質が含まれている廃棄物の管理の安全性を高めることができる。
【0015】
前記情報管理部は、前記廃棄物状態情報を伴わないで前記廃棄物識別情報を前記携帯端末から受信した場合、前記記憶部に記憶されている、前記携帯端末から受信した前記廃棄物識別情報に対応する前記廃棄物状態情報を、前記携帯端末に送信してもよい。
【0016】
除染情報管理システムが上記の構成を備えることにより、廃棄物を処理する作業者は、例えば廃棄物が収容された容器の番号を携帯端末に入力するだけで、廃棄物の内容を把握することができるので、作業者の安全性を高めることができる。
【0017】
本発明の第2の態様に係る除染情報管理方法は、除染対象の家屋を構成する複数の部位の状態に関する状態情報を、前記部位に関連付けて取得する手順と、前記状態情報に基づいて、それぞれの前記部位で使用する除染方法を複数の除染方法から選択する手順と、前記選択する手順において選択した前記除染方法を、前記家屋の前記部位に関連付けて表示させる手順と、を備える。除染の作業者は、上記の除染情報管理方法を用いることにより、除染対象の家屋を調査すると、家屋の状態に適した除染方法を速やかに把握することができるので、除染作業の効率が向上する。
【0018】
本発明の第3の態様に係る携帯端末は、除染対象の家屋を構成する複数の部位の状態に関する状態情報を、前記部位に関連付けて取得する取得部と、前記状態情報を除染情報管理装置に送信する端末通信部と、前記状態情報に基づいて前記除染情報管理装置において選択された除染方法を、前記家屋の前記部位に関連付けて表示する表示部と、を備える。
【0019】
本発明の第4の態様に係る携帯端末は、除染対象の家屋を構成する複数の部位の状態に関する状態情報を、前記部位に関連付けて取得する取得部と、前記状態情報に基づいて、それぞれの前記部位で使用する除染方法を複数の除染方法から選択する選択部と、前記選択部が選択した除染方法を、前記家屋の前記部位に関連付けて表示する表示部と、を備える。
【0020】
除染の作業者は、これらの携帯端末を用いることにより、除染対象の家屋を調査すると、家屋の状態に適した除染方法を速やかに把握することができるので、除染作業の効率が向上する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、除染作業の効率を向上させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[除染情報管理システムSの基本構成]
図1は、本実施形態に係る除染情報管理システムSの構成を示す図である。除染情報管理システムSは、携帯端末1と、携帯端末1と通信可能な除染情報管理装置2と、を備える。携帯端末1と除染情報管理装置2とは、携帯電話網の基地局3、及びインターネット等のネットワークNを介して、互いに情報を送受信する。携帯端末1は、例えばスマートフォン又はタブレット端末である。除染情報管理装置2は、例えばサーバである。
【0024】
携帯端末1は、放射性物質が付着した家屋や土壌の除染をする作業者、及び除染後に生じた廃棄物を扱う作業者が携帯する端末である。作業者は、携帯端末1を操作することにより、作業に必要な情報を除染情報管理装置2から取得することができる。
以下、携帯端末1及び除染情報管理装置2の構成及び機能について図面を参照しながら説明する。
【0025】
図2は、携帯端末1及び除染情報管理装置2の構成を示す図である。
携帯端末1は、記憶部11と、端末通信部12と、制御部13と、取得部14と、表示部15と、撮影部16とを有する。
【0026】
記憶部11は、RAM及びROM等の記憶媒体から構成される。記憶部11は、制御部13が実行することで携帯端末1の各種機能を実現するためのプログラムを記憶している。
端末通信部12は、無線通信モジュールである。端末通信部12は、制御部13の制御により、基地局3及びネットワークNを介して、除染情報管理装置2との間で各種情報を送受信する。
【0027】
制御部13は、例えばCPUにより構成される。制御部13は、記憶部11に記憶されているプログラムを実行することにより、携帯端末1の各部の制御を司り、携帯端末1の各種機能を実現する。
取得部14は、例えば、表示部15に重ねて設けられるタッチパネルにより構成される。取得部14は、携帯端末1のユーザが入力した情報を取得する。取得部14は、例えば、ユーザにより入力された、携帯端末1の動作モードを選択するための選択情報を取得する。また、取得部14は、それぞれの動作モードにおいてユーザが入力する各種情報を取得する。
【0028】
表示部15は、例えば液晶ディスプレイにより構成される。表示部15は、制御部13が記憶部11から読み出した情報、及び除染情報管理装置2から受信した情報等を表示する。
撮影部16は、例えば撮像素子により構成される。撮影部16は、ユーザの操作に応じて、除染の対象となる家屋を撮像する。
【0029】
続いて、除染情報管理装置2の構成について説明する。除染情報管理装置2は、記憶部21と、装置通信部22と、制御部23と、表示部24とを有する。
【0030】
記憶部21は、RAM及びROM等の記憶媒体から構成される。記憶部21は、制御部23が実行することで除染情報管理装置2の各種機能を実現するためのプログラムを記憶している。
装置通信部22は、例えばLANコントローラである。装置通信部22は、制御部23の制御により、ネットワークN及び基地局3を介して、携帯端末1との間で各種情報を送受信する。
【0031】
制御部23は、例えばCPUにより構成される。制御部23は、記憶部21に記憶されているプログラムを実行することにより、除染情報管理装置2の各部の制御を司り、除染情報管理装置2の各種機能を実現する。制御部23は、記憶部21に記憶されたプログラムを実行することにより、選択部231と、情報管理部232と、帳票作成部233と、算出部234と、評価部235として機能する。これらの各部の機能の詳細については、後述する。
【0032】
表示部24は、例えば液晶ディスプレイにより構成される。表示部24は、制御部23が記憶部21から読み出した情報、及び携帯端末1から受信した情報を表示する。
【0033】
[動作モードの種類]
除染情報管理システムSは、ユーザに対して、除染作業を支援するための複数の動作モードを提供することができる。具体的には、除染情報管理システムSは、(a)土地家屋調査モード、(b)除染方法レビューモード、(c)除染工事管理サポートモード、(d)放射性廃棄物トレースモードの4つのモードを提供する。携帯端末1を使用する作業者は、表示部15に表示されたモード選択画面において、これらのモードのうち、どのモードを実行するかを選択することで、それぞれのモードの動作を開始することができる。
【0034】
[土地家屋調査モード]
家屋調査モードは、作業者が、除染作業に先立って、除染作業を行う対象である家屋や建物の調査を行う場合に使用するモードである。家屋調査モードにおいて、除染情報管理システムSは、作業者が調査した家屋の状態に基づいて、除染する方法の候補を作業者に提示することができる。
【0035】
以下、家屋調査モードの詳細について説明する。
携帯端末1を使用する作業者が家屋調査モードを使用するのに先立ち、除染情報管理装置2の管理者は、除染情報管理装置2と通信可能な複数の携帯端末1のうち、家屋調査を行う携帯端末1を指定する。除染情報管理装置2は、家屋調査を行わせる作業者の携帯端末1を指定する要求を管理者から受けると、除染情報管理装置2と通信可能な携帯端末1の一覧を表示する。管理者が、一覧表示された複数の携帯端末1から1以上の携帯端末1を選択すると、制御部23は、選択された携帯端末1を特定する情報を、調査対象の家屋を特定するための調査家屋情報に関連付けて記憶部21に記憶させる。
【0036】
続いて、携帯端末1において、作業者が家屋調査モードを起動すると、携帯端末1は、携帯端末1の識別情報を除染情報管理装置2に送信する。除染情報管理装置2は、受信した識別情報を有する携帯端末1に関連付けて記憶されている調査家屋情報を携帯端末1に送信する。携帯端末1は、除染情報管理装置2から受信した調査家屋情報に基づいて、調査すべき家屋を特定する情報(例えば、家屋の持ち主の氏名、及び家屋の住所)を表示部15に表示する。
【0037】
携帯端末1を使用する作業者が、表示部15に表示された複数の家屋から一の家屋を選択すると、表示部15は、選択した家屋の周辺の地図を表示する。表示部15は、携帯端末1に内蔵されたGPS機能がオン状態である場合、GPS機能部から取得した位置情報に基づいて、携帯端末1の現在地も表示する。また、携帯端末1は、家屋の調査状況を示す情報を除染情報管理装置2から取得し、家屋の調査状況に応じて、地図上で色分け表示をする。このようにすることで、携帯端末1のユーザは、調査すべき家屋の場所、及び調査すべき家屋の調査状況を速やかに把握することができる。なお、調査状況は、例えば未調査、調査済、協議済の3種類により表される。本明細書における協議とは、家屋の住人との間で行われる、採用する除染方法についての確認と承諾のことである。
【0038】
図3及び
図4は、家屋調査モードで携帯端末1に表示される画面の一例である。表示部15には、地図表示領域151、及び調査対象リスト152が表示される。地図表示領域151の中心付近には、作業者が選択した調査対象の家屋Aが示されている。地図表示領域151には、協議が終了した家屋B、及び調査が終了した家屋Cも表示されている。家屋A、B、Cの詳細情報は、調査対象リスト152に表示されている。作業者は、
図3に示される情報を参照することにより、どの家屋を調査すべきかを容易に把握することができる。
【0039】
続いて、作業者が調査モードボタン153を押すと、
図4に示す調査モードが表示される。調査モードにおいては、調査する部位の方向を選択するための方向選択画面154と、指示入力画面155とが表示される。作業者は、方向選択画面154を用いて、調査対象家屋を選択した後に玄関の方位を設定する。続いて、作業者が、指示入力画面155において調査を行う方向を選択し、選択した方向の「調査開始」ボタンを押すと、表示部15は、選択された方向での調査結果を入力する画面を表示する。作業者は、調査結果を入力する画面において、調査結果を順次入力する。
【0040】
図5は、調査を開始してから除染方法の選択が完了するまでの間の、携帯端末1と除染情報管理装置2との間の通信シーケンスを示す図である。以下、
図5を参照して、除染方法を選択するまでの手順を説明する。
【0041】
取得部14が、作業者が選択した方向を示す情報とともに、調査開始を指示する情報を取得すると(S1)、表示部15は、家屋の状態について質問する画面を表示する(S2)。例えば、表示部15は、作業者が選択した方向にある家屋の壁、樋、柱等の複数の部位の状態と、それぞれの構成部位の汚染レベルを質問する画面を表示する。取得部14は、質問に応じて作業者が入力した、除染対象の家屋を構成する複数の部位の状態に関する状態情報を、部位に関連付けて取得する(S3)。取得部14は、例えば、それぞれの部位の破損状態を示す情報と、放射線量に対応する汚染レベルを示す情報を状態情報として取得する。
【0042】
続いて、取得部14が、調査した結果を除染情報管理装置2に送信するための操作を作業者から受けると、端末通信部12は、取得部14が取得した状態情報を、作業者が調査した家屋の部位に関連付けて除染情報管理装置2に送信する(S4)。なお、携帯端末1は、作業者が一つの部位を調査するたびに調査結果を除染情報管理装置2に送信してもよく、調査結果を記憶部11に蓄積しておいて、家屋全体の調査が終了してから調査結果を除染情報管理装置2に送信してもよい。
【0043】
除染情報管理装置2においては、端末通信部12から状態情報を受信すると、情報管理部232が、状態情報を、家屋の部位を特定する情報に関連付けて記憶部21に記憶させる(S5)。情報管理部232は、携帯端末1から家屋の複数の部位の調査結果を受信すると、それぞれの部位に対応する状態情報を記憶部21に記憶させる。
【0044】
なお、作業者は、撮影部16を用いて家屋の外観を撮影して除染情報管理装置2に送信することもできる。取得部14が、作業者から撮影指示を取得すると、撮影部16は、家屋を撮影し、端末通信部12は、撮影して得られた家屋画像を、家屋を特定する情報に関連付けて除染情報管理装置2に送信する。
除染情報管理装置2が画像を受信すると、情報管理部232は、状態情報及び家屋を特定する情報に関連付けて、家屋画像を記憶部21に記憶させる。
【0045】
続いて、装置通信部22は、状態情報が記憶部21に記憶されたことを示す登録完了情報を携帯端末1に送信する。端末通信部12が登録完了情報を受信すると、表示部15は、指示入力画面155における「調査開始」ボタンを「協議開始」ボタンに切り替え、作業者に対して、除染方法を決定するための協議を開始することが可能であることを示す。
【0046】
取得部14が、作業者が「協議開始」ボタンを押すことにより生成される協議開始情報を取得すると(S6)、端末通信部12は、協議開始情報を除染情報管理装置2に送信する(S7)。装置通信部22が協議開始情報を受信すると、選択部231は、記憶部21に記憶された状態情報に基づいて、それぞれの部位で使用する除染方法を複数の除染方法から選択する。選択部231が除染方法を選択する手順の詳細については後述する。
【0047】
選択部231が除染方法を選択すると、装置通信部22は、選択された除染方法を示す情報を携帯端末1に送信する(S9)。端末通信部12が除染方法を示す情報を受信すると、表示部15は、選択部231が選択した除染方法を家屋の部位に関連付けて表示する。例えば、表示部15は、選択部231が選択した除染方法の複数の候補を表示する協議画面を表示する(S10)。作業者は、家屋の持ち主と協議をして、表示された除染方法の複数の候補から一の除染方法を選択する。
【0048】
図6は、表示部15に表示される協議画面の一例である。協議画面には、協議の対象となる家屋の部位(
図6においては、北側壁)を特定する情報、及び作業者が入力した調査結果とともに、選択部231が選択した除染方法の候補が表示されている。作業者は、家屋の持ち主と協議し、採用する除染方法を特定する情報と署名とを入力する。
取得部14が、作業者が選択した除染方法を特定する情報及び署名を示す画像情報を取得すると、端末通信部12は、選択された除染方法を特定する情報及び署名を示す画像情報を除染情報管理装置2に送信する(S11)。
【0049】
装置通信部22が、協議により選択された除染方法を特定する情報を受信すると、情報管理部232は、選択部231が選択した除染方法を、家屋の部位に関連付けて記憶部21に記憶させる。また、帳票作成部233は、家屋を特定するための家屋情報と、部位と、選択部231が選択した除染方法とを関連付けた情報を含む帳票を作成する(S12)。帳票作成部233は、撮影部16により撮影された、家屋情報に関連付けられた撮影画像を含む帳票を作成してもよい。
【0050】
図7は、選択部231が、複数の除染方法から一以上の除染方法を選択する際に用いるテーブルの一例である。除染情報管理装置2においては、
図7に示すような、除染対象部位の状態を示す状態情報と、複数の除染方法の優劣を示す情報と、選択する除染方法を示す情報とを関連付けたテーブルが記憶部21に記憶されている。状態情報は、除染対象部位の汚染レベル、損傷の有無、材料種別を含む。除染方法優劣情報は、除染対象部位における人力洗浄、高圧洗浄、高圧温水洗浄、高圧中性洗剤洗浄、低圧洗浄等の優劣を示す評価値を含む。除染方法選択情報は、携帯端末1に対して提案する除染方法と、協議において採用された除染方法とを含む。
【0051】
選択部231は、
図7に示すテーブルと記憶部21に記憶された状態情報とを用いて、除染対象部位の状態に適した除染方法を選択して携帯端末1に通知する。なお、選択部231は、
図7に示した以外のさまざまな情報を用いて除染方法を選択することができる。例えば、除染対象部位の状態情報は、高所作業者の使用可否、樋の有無、雨水の排水状況、路面状態等を含むことができる。また、除染方法優劣情報は、草むしり、表土剥ぎ取り、庭木の洗浄、固化材散布等の除染方法の優劣を示す情報を含むことができる。
【0052】
以上のとおり、家屋調査モードにおいて、除染情報管理システムSは、除染対象の家屋を構成する複数の部位の状態に関する状態情報を、部位に関連付けて取得し、状態情報に基づいて、それぞれの部位で使用する除染方法を複数の除染方法から選択し、選択部が選択した除染方法を家屋の部位に関連付けて携帯端末1に表示することができる。したがって、除染を行う作業者は、家屋を調査すると、速やかに、家屋の状態に適した除染方法を決定することができる。
【0053】
[除染方法レビューモード]
続いて、各除染方法の適否を確認する際に用いられる除染方法レビューモードについて説明する。
除染方法レビューモードにおいて、除染情報管理システムSは、家屋の個々の部位において各除染方法を使用できるか否かを作業者や家屋の持ち主がレビューした結果を収集し、レビュー結果を管理することができる。
【0054】
具体的には、取得部14が、レビューの開始指示を取得すると、表示部15は、レビューを行う対象部位を選択するための画面を表示する。当該画面においては、雨樋、1階屋根、2回屋根、側壁、ガラス窓等の家屋の部位の名称が表示される。
【0055】
取得部14が、作業者により選択された部位を取得すると、端末通信部12は、選択された部位を特定する情報を除染情報管理装置2に送信する。除染情報管理装置2は、選択された部位に関連付けて記憶部21に記憶されている、選択された部位に適した除染方法の候補を送信する。
【0056】
端末通信部12が除染方法の候補を受信すると、表示部15は、それぞれの除染方法をレビューする画面を表示する。レビュー画面において、作業者は、それぞれの除染方法の適否を入力する。取得部14は、作業者が除染方法をレビューした結果を取得して、端末通信部12を介して除染情報管理装置2に、除染方法の適否を示すレビュー結果を送信する。
【0057】
携帯端末1及び除染情報管理装置2は、家屋の部位及び除染方法に関連付けて、レビュー結果の一覧を表示することができる。作業者は、除染方法レビューモードを用いることにより、それぞれの部位にどの除染方法を使用するかを容易に決定するとともに、一覧表示画面を見ることにより、除染作業の全体像を把握できるようになるので、作業計画と除染方法の見直し、変更の有無を把握することができる。
【0058】
[除染工事管理サポートモード]
続いて、除染工事管理サポートモード(以下、「管理サポートモード」という)について説明する。管理サポートモードにおいて、除染情報管理システムSは、除染工事の実績管理を支援する。具体的には、管理サポートモードにおいて、除染情報管理システムSは、除染結果を管理し、除染の効果を評価することができる。
【0059】
携帯端末1において管理サポートモードが起動されると、携帯端末1は、管理サポートモードが起動されたことを除染情報管理装置2に通知し、除染情報管理装置2から、除染対象となる家屋のリストを取得する。
作業者が、除染を実施する家屋を選択すると、表示部15は、選択された家屋において除染を実施する除染領域の写真を撮影するための操作画面を表示する。撮影部16は、取得部14が作業者による撮影指示を取得すると、除染領域を撮影して除染領域画像を生成する。
【0060】
また、表示部15は、測定した放射線量を入力する画面を表示する。作業者は、除染作業の実施前後の放射線量を測定し、測定した結果を入力する。取得部14が、除染領域画像と放射線量とを取得すると、端末通信部12は、これらを除染情報管理装置2に送信する。
【0061】
装置通信部22が撮影画像を受信すると、算出部234は、除染領域画像に基づいて、除染を実施した領域の面積である除染面積を算出する。情報管理部232は、線量情報と除染面積とを関連付けて記憶部21に記憶させる。
【0062】
算出部234は、以下の手順で除染面積を算出する。まず、算出部234は、撮影画像内のエッジを検出し、エッジにより囲まれた複数の領域を特定する。算出部234は、特定された複数の領域のうち、最も面積が大きい領域を除染対象の領域であると特定する。
【0063】
続いて、算出部234は、撮影画像に含まれる複数の領域の形状又はエッジの角度に基づいて、撮影画像を撮影したときの携帯端末1の位置と除染対象部位の位置との距離及び撮影方向を算出する。算出部234は、撮影画像に含まれる除染対象部位までの距離及び撮影方向と、撮影画像における除染対象領域の大きさとに基づいて、除染対象部位の面積を算出することができる。さらに、算出部234は、窓やドアを認識して、算出した面積から窓やドアの面積を差し引くことにより、さらに高い精度で除染面積を算出してもよい。
【0064】
なお、算出部234は、家屋の1階分の高さを所定の高さ(例えば3m)と仮定し、仮定した1階分の高さに基づいて除染面積を算出することもできる。具体的には、算出部234は、撮影画像における壁の水平方向の辺の長さ及び確度と垂直方向の長さとに基づいて、壁の水平方向の長さを算出し、垂直方向の長さと水平方向の長さとを乗算することにより、除染面積を算出してもよい。
【0065】
続いて、評価部235は、除染前の放射線量と除染後の放射線量との差分値を除染対象部位の面積で除算し、除算した結果を所定の基準値と比較する。評価部235は、除算した結果が所定の基準値よりも小さい場合には、除染の効果が不足していると評価し、除算した結果が所定の基準値以上である場合には、除染の効果が十分であると評価する。評価部235は、装置通信部22を介して、評価結果を携帯端末1に送信する。
【0066】
このようにすることで、作業者は、除染が十分に行われたかどうかを速やかに把握することができるので、除染が足りない場合に、その日のうちに追加作業を実施することができる。したがって、作業者は、除染が足りない場合に別の日に現場に来る必要がないので、除染の作業効率が向上する。また、除染情報管理装置2が除染前後の放射線量や除染領域の撮影画像を記憶しているので、作業者は、除染作業終了後に作成する必要がある帳票を容易に作成できる。したがって、除染に関連する作業の効率も向上する。
【0067】
[廃棄物トレースモード]
廃棄物トレースモードにおいて、除染情報管理システムSは、除染により生じた廃棄物の詳細データを表示し、廃棄物の収集場所や仮置場所を地図に表示することができる。
【0068】
図8は、除染により生じた廃棄物を収集して仮置きするまでの工程を示す図である。廃棄物の処理工程は、収集工程(S21〜S23)、運搬工程(S24〜S26)、及び仮置工程(S27〜S29)から構成される。
図9は、収集工程及び運搬工程における携帯端末1と除染情報管理装置2との間の通信シーケンスを示す図である。
【0069】
以下、
図8及び
図9を参照しながら、廃棄物トレースモードにおける除染情報管理システムSの動作について説明する。
作業者により廃棄物トレースモードが選択されると、表示部15は、廃棄物の複数の処理工程に対応する複数の処理モードから一の処理モードをユーザに選択させる選択画面を表示する。続いて、作業者が処理モードを選択すると、作業者により選択された処理モードにおいて入力する必要がある廃棄物状態情報を入力する情報入力画面とを表示する。処理モードは、例えば、廃棄物を収集する工程で用いられる収集モード、廃棄物を運搬する工程で用いられる運搬モード、廃棄物を仮置きする工程で用いられる仮置モードである。
【0070】
まず、廃棄物を収集する作業者が収集モードを選択した場合について説明する。収集工程において、収集作業者は、廃棄物を容器に収容する(S21)。続いて、収集作業者は、携帯端末1において、廃棄物を収容した容器の番号を入力する(S22)。容器の番号は、廃棄物を識別するための廃棄物識別情報として用いられる。続いて、収集作業者は、廃棄物状態情報を入力する(S23)。廃棄物状態情報は、容器の種類、廃棄物の種類、廃棄物の収集日、廃棄物の収集場所、廃棄物容器の表面における空間線量率(μSv/h)等の情報である。廃棄物状態情報の入力手順の詳細については後述する。
【0071】
廃棄物を収容する容器には、容器ごとに異なる識別情報を含む画像(例えば、QRコード画像)が印刷されたプレートが取り付けられていてもよい。例えば、QRコード(登録商標)が印刷されたプレートが容器に取り付けられている場合、S22において、収集作業者が携帯端末1のQRコードリーダーによりQRコードを読み取り、取得部14は、読み取られたQRコードに含まれる容器番号を取得してもよい。
【0072】
S23において、取得部14が廃棄物状態情報を取得すると、端末通信部12は、処理モード及び容器番号と廃棄物状態情報とを関連付けて除染情報管理装置2に送信する。除染情報管理装置2は、受信した処理モード及び容器番号と廃棄物状態情報とを関連付けて記憶部21に記憶させる(S31)。
【0073】
収集工程が終了すると、運搬工程に移行する。運搬工程は、収集工程を行う収集作業者と異なる運搬作業者により行われてもよい。運搬工程を担当する運搬作業者は、携帯端末1を操作して運搬モードを起動して、表示された画面において容器番号を入力する(S24)。容器にQRコードが印刷されたプレートが取り付けられている場合、作業者は、携帯端末1のQRコードリーダーによりQRコードを読み取ることで、容器番号を入力してもよい。
【0074】
運搬作業者が容器番号を入力すると、端末通信部12は、容器番号を除染情報管理装置2に送信する。装置通信部22は、廃棄物状態情報を伴わないで容器番号を携帯端末1から受信した場合、記憶部21に記憶されている、携帯端末1から受信した廃棄物識別情報に対応する廃棄物状態情報を携帯端末1に送信する。
【0075】
記憶部21は、除染情報管理装置2に送信した容器番号に対応する廃棄物状態情報を除染情報管理装置2から受信する。表示部15は、受信した廃棄物状態情報を表示し、運搬作業者は、表示された廃棄物状態情報を確認する(S25)。続いて、運搬作業者は、廃棄物状態情報を更新する(S26)。具体的には、運搬作業者は、廃棄物状態情報が表示された画面において、廃棄物の積込日と運搬作業者の署名を入力することにより廃棄物状態情報を更新する。取得部14が、更新された廃棄物状態情報を取得すると、端末通信部12は更新された廃棄物状態情報を除染情報管理装置2に送信する。装置通信部22が廃棄物状態情報を受信すると、情報管理部232は、更新された廃棄物状態情報を記憶部21に記憶させる(S32)。
【0076】
続いて、運搬作業者は、廃棄物を仮置場所まで運搬する。この際、運搬作業者は、廃棄物とともに携帯端末1も運搬する。仮置場所に到着すると、仮置場所で作業をする仮置作業者は、運搬作業者がS24からS26において行った手順と同様の手順を行う。すなわち、仮置作業者は、携帯端末1を操作して仮置モードを起動して、表示された画面において容器番号を入力し(S27)、表示部15に表示される廃棄物状態情報を確認し(S28)、仮置日、仮置場所の緯度・経度、仮置作業者の署名を入力する。
【0077】
図10は、廃棄物状態情報を入力する手順を示す図である。
図11は、収集モードにおいて廃棄物状態情報を入力する画面の一例を示す図である。
【0078】
表示部15は、予め定められた廃棄物状態情報の入力画面を順次表示する。具体的には、まず、容器番号を入力する画面を表示する(S41)。続いて、表示部15は、容器の種類を選択する画面を表示する(S42)。容器の種類は、耐候性、耐水性、フレキシブルコンテナ等である。続いて、表示部15は、除去土壌種別を選択する画面を表示する(S43)。除去土壌種別は、例えば、草木類、土壌類、コンクリート類、石膏ボード類、その他の可燃廃棄物、その他の不燃物等である。
【0079】
続いて、表示部15は、収集日を入力する画面を表示する(S44)。続いて、表示部15は、除染対象区分を選択する画面を表示する(S45)。除染対象区分は、住宅地、学校、公園、道路、農地、森林等である。
続いて、表示部15は、収集場所を入力する画面(S46)、空間線量率を入力する画面(S47)、署名を入力する画面(S47)を表示する。
【0080】
図12は、廃棄物トレースモードにおいて、除染情報管理装置2の表示部24が表示する画面の一例である。表示部24は、データ操作領域251、データ表示領域252及び地図表示領域253を表示する。データ操作領域251には、位置を探索する対象の廃棄物の容器番号や、地図表示領域253に表示させる場所を特定する位置情報を入力する画面が表示される。データ表示領域252には、位置を探索する対象の廃棄物に対応する廃棄物状態情報が表示される。地図表示領域253には、データ操作領域251において入力された情報に基づいて、探索する対象の廃棄物の位置が表示される。表示部24は、廃棄物が収集された場所と、仮置場所とを表示する。
【0081】
なお、帳票作成部233は、廃棄物トレースモードにおいて収集された廃棄物状態情報に基づいて、所定の帳票を作成することができる。この場合、帳票作成部233は、ユーザにより選択される形式の帳票を作成する。例えば、帳票作成部233は、役所により指定された形式のデータに廃棄物状態情報を変換し、変換した情報に基づいて帳票を作成する。
【0082】
除染情報管理システムSは、廃棄物トレースモードを備えることにより、従来は、離れた位置において把握することが難しかった廃棄物の処理の進捗状況をリアルタイムで把握することを可能にする。特に、廃棄物の容器に取り付けられたQRコードが印刷されたプレートを用いて管理することにより、作業者が携帯端末1を用いてQRコードを読み取るだけで、作業者は、放射性物質が含まれる廃棄物が収容された容器を開封することなく、容易に廃棄物の内容を確認して作業をすることができるので、安全性が高まる。
【0083】
(変形例1)
上記の実施形態においては、携帯端末1と除染情報管理装置2との間で情報を送受信することにより、携帯端末1を用いる作業者が速やかに除染方法を決定することができた。しかし、携帯端末1が、除染情報管理装置2が有する各機能を備えることにより、携帯端末1が除染情報管理装置2と情報を送受信することなく、同等の効果を得ることもできる。
【0084】
(変形例2)
上記の実施形態に係る除染情報管理システムSは、工程管理機能をさらに備えてもよい。例えば、家屋調査モードにおいて、家屋の各部位の状況に適した除染方法が選択されると、除染情報管理装置2は、複数の家屋の複数の部位で用いられる除染方法の種類に基づいて、作業を行う順番を決定し、携帯端末1に通知してもよい。
【0085】
近隣の家屋で、同じ種類の除染方法が実施される場合、同一の家屋で、異なる種類の除染方法を順次実施するよりも、同じ種類の除染方法を複数の家屋で順次実施する方が、効率が良いことがある。そこで、このような場合、除染情報管理装置2は、除染対象領域の面積に基づいて、それぞれの部位の除染に要する時間を推定し、算出した推定時間に基づいて、所定の期間内(例えば、1日間)に、どの家屋のどの部位の除染を行うかを決定する。除染情報管理装置2は、家屋のそれぞれの位置に基づいて家屋間の移動に要する時間も推定し、移動時間にさらに基づいて、除染を行う順序を決定してもよい。
【0086】
また、除染情報管理システムSは、廃棄物トレースモードにおいて、携帯端末1から取得した廃棄物状態情報に基づいて、廃棄物の運搬工程及び仮置工程の作業計画を決定してもよい。除染情報管理装置2は、廃棄物状態情報に基づいて、廃棄物の種類、廃棄物の量、廃棄物が収集された場所等を把握することができる。そこで、除染情報管理装置2は、これらの情報に基づいて、運搬効率が比較的良い運搬順序を決定したり、仮置場所を決定したりしてもよい。除染情報管理装置2は、決定した運搬順序や仮置場所を携帯端末1に通知することで、携帯端末1を使用する作業者の運搬作業や仮置作業の効率を向上させることができる。
【0087】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。