(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
表面形状測定する技術は、例えば、特許文献1、特許文献2が公知である。
特許文献1の表面形状計測装置は、移動体と、測定物の被検面に接触する触針と、前記触針を移動体に対して支持する荷重制御機構と、前記荷重制御機構に含まれる弾性体と、移動体の変位を検出する変位検出手段を有する。また、前記表面形状計測装置は、前記変位検出手段の前記弾性体及び前記移動体の変位の検出に応じて前記荷重制御機構を制御する制御装置を有する。前記制御装置は、前記移動体の移動により前記被検面に前記触針を接触させつつ設定荷重まで荷重を印加して前記移動体の変位量と前記弾性体の変位量との差が前記設定荷重に相当する変位量と等しくなるように移動体の位置を制御するようにしている。特許文献1では、上記のように構成することにより、被検面の形状変化への追従性が向上する利点がある。
【0003】
特許文献2の表面形状計測装置は、被測定物表面を測定子が走査する際に前記測定子に作用する作用力を検出する作用力センサと、作用力センサが検出した作用力に基づいて前記測定子の変位情報を算出する変位情報算出回路を有する。また、特許文献2の表面形状計測装置は、前記変位情報算出回路により得られた前記測定子の前記変位情報に基づいて前記作用力が一定となるように前記測定子を変位させる駆動機構を駆動制御するようにしている。特許文献2では上記のように構成することにより、測定データのばらつき幅を小さくして測定速度を向上できる利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した一実施形態の表面形状計測装置を
図1〜
図3を参照して説明する。
【0013】
図1に示すように、表面形状計測装置10は、ホルダ20と、ホルダ20の下面に設けられた3つの脚30、40、50と、ホルダ20に取付けられた変位センサ60を有する。ホルダ20は、熱膨張が極めて低い低熱膨張材質にて形成されている。低熱膨張材質のものとしては、例えば、低熱膨張金属、低熱膨張ガラス、低熱膨張セラミックス等を挙げることができる。なお、前記低熱膨張材質の代わりに、常温付近では熱膨張がないゼロ熱膨張ガラスとしてもよい。また、低熱膨張ガラス、ゼロ熱膨張ガラスとしては、レンズガラスを挙げることができる。低熱膨張金属は、例えば、インバー、スーパーインバー、或いは、コバール等を挙げることができる。本実施形態では、ホルダ20はスーパーインバーにて構成されている。
【0014】
図2に示すように脚30、40、50は、三角形の頂点にそれぞれ位置するように配置されている。前記三角形は、正三角形、二等辺三角形に限ることなく、ホルダ20を測定物100の被検面100aに対して載置した場合、安定できる適宜の形状であればよい。
【0015】
前記脚30、40、50は、測定物100の被検面100aに対して点接触する形状が好ましい。点接触する形状としては、曲面を有するものが好ましく、球面を有する球形状(円球、半円球状等を含む)であれば、さらに好ましい。また、前記脚30、40、50は、円錐または角錐であってもよい。円錐または角錐の場合は、それらの頂点が、被検面100aに点接触するようにホルダ20の下面に対して円錐または角錐の底面を固定すればよい。本実施形態では、脚30、40、50は、球面を有する半球状に形成されている。
【0016】
また、前記脚30、40、50は、低熱膨張ガラス、低熱膨張セラミックスまたは低熱膨張金属等の熱膨張が極めて低い低熱膨張材質から形成されていることが好ましい。なお、低熱膨張材質の代わりに、常温付近では熱膨張がないゼロ熱膨張ガラスとしてもよい。低熱膨張ガラス、ゼロ熱膨張ガラスとしては、レンズガラスを挙げることができる。
【0017】
脚30、40、50が前述した低熱膨張材質から形成されているとともに、前記ホルダ20が低熱膨張金属により形成されていることにより、測定時の環境温度による熱膨張に起因した測定誤差をなくすることができる。
【0018】
図1、
図2に示されているX軸方向は、表面形状計測装置の走査方向と同一方向である。また、走査方向はホルダ20を後述する連結部材80を介して剛体部材70により引きずられる引きずり方向でもある。なお、XYZの直交座標は、右手系である。そして、脚30、40は、ホルダ20の走査方向において離間するように配置されている。また、変位センサ60は、被検面100aに対する脚30、40の点接触間を結ぶ直線上において、脚30、40間に位置するように配置されている。本実施形態では、変位センサ60は、脚30、40の点接触する部位の離間距離2Lの半分の位置に位置するように配置されている。変位センサ60は、接触式変位センサ、または非接触式変位センサのいずれであってもよい。接触式変位センサは、例えば電気マイクロメータで構成されたものがある。また、非接触式変位センサでは例えばレーザ式の変位センサ、静電容量型センサがある。これらの変位センサにより、測定物100の被検面100aの形状の高さを検出することが可能である。本実施形態では、非接触式変位センサであるレーザ式の変位センサからなる。
【0019】
図1に示すように前記ホルダ20は、引きずり方向側に位置する剛体部材70に対して有弾性の連結部材80を介して連結されている。前記連結部材80は、ホルダ20を重力方向に支持しないように剛体部材70に対して連結されている。
【0020】
図1に示す剛体部材70は、測定物100が載せられるテーブル200に対して相対移動可能な関係にあればよい。
例えば、テーブル200をXYテーブルにした場合、剛体部材70は、前記XYテーブルを移動自在に支持する図示しないベースと一体に固定されたものでよい。また、テーブル200を固定テーブルにした場合、X軸方向に往復動自在に設けられた図示しないガントリーと、前記ガントリーに対してY軸方向に往復動自在に設けられた図示しない移動部材に対して前記剛体部材70が装着されていてもよい。
【0021】
上記のように剛体部材70とテーブル200との相対移動の関係により、テーブル200に載せられた測定物100の被検面100aの形状測定が可能である。
前記連結部材80は例えば板バネからなる。連結部材80は、剛体部材70とテーブル200とが走査方向において相対移動した際、前記ホルダ20を引きずるとともに、前記剛体部材70からの振動を吸収するものである。
【0022】
本実施形態の表面形状計測装置10は、測定物100の被検面100aが曲面である形状を測定する曲面形状計測装置としている。
(実施形態の作用)
上記のように構成された表面形状計測装置10を逐次3点法で測定物100の被検面100aを測定する場合について説明する。
【0023】
まず、変位センサ60による出力値S(x)について説明する。
剛体部材70と、測定物100を載せたテーブル200とを走査方向に相対移動させた場合、測定物100の被検面100aに対する脚30、40の点接触のX座標は、それぞれ(x−L)と(x+L)となる。この脚30、40の点接触を結ぶ直線は、両点接触のZ軸方向の高さの差により決定される。ここで直線上の点xは、変位センサ60のX軸上における位置を示している。前記直線が予め設定された基準水平面に含まれる場合は、変位センサ60が位置するZ軸方向における原点位置となる。
【0024】
そして、測定時において前記基準水平面に対する前記直線の傾斜があって、点xにおける変位センサ60の原点の移動がある場合、変位センサ60の出力値S(x)と、測定物100の被検面100aの断面形状f(x)とは、式(1)の関係である。
S(x)=f(x)−{f(x−L)+f(x+L)}/2 +a ……(1)
上記式(1)は、逐次3点法を実行した場合において、3つの変位センサから取得した走査における運動誤差を除去して断面形状に関する量だけを示すときの差動出力と同じことを意味している。なお、逐次3点法で計測を行う場合、変位センサ60が脚30、40の点接触する部位の離間距離2Lの半分を移動する毎の出力値を採用すればよい。
【0025】
なお、上記式(1)中のaは、逐次3点法における変位センサ間のゼロ点誤差に相当するものである。このゼロ点誤差aは、既知である直線形状に沿って脚30、40、50を当接させて引きずり移動させた際に取得した変位センサ60の値に基づいて校正を行うことができる。
【0026】
次に、表面形状計測装置10を使用して、実物の測定物100の被検面100aの表面形状を測定した場合の、連結部材80による効果の確認を行った結果を
図3に示す。
変位センサ60は下記のものを使用した。
【0027】
SI−F01:株式会社KEYENCE製
測定範囲 :0.05〜1.1mm
スポット径 :φ20μm
分解能 :0.001μm
上記の変位センサ60をホルダ20に装着して、走査速度20mm/sで走査を行うとともに、サンプル間隔を1mm当たり1点とし、測定物100の被検面100aの同一箇所を20回計測した。測定物100の被検面100aは、凸形状の鏡面を有するものであるが、表面形状は未知のものである。
【0028】
なお、ホルダ20は、連結部材80を介して平面研削盤の上部構造物の剛体を剛体部材70として使用し、前記平面研削盤の可動テーブルをテーブル200として使用した。
図3は、測定物100上において、幅200mmの距離を前述した20回計測したときの測定値の平均値からのばらつきを示している。
図3において、横軸が走査距離で単位はmmである。また、縦軸は、計測した測定値の平均値からの偏差で単位はマイクロメートルである。
【0029】
図3において、40mm付近の形状が劣化している場所を除いて、標準偏差が0.5nmを実現している。これは、テーブル200と剛体部材70とを相対移動した場合に、連結部材80を介してホルダ20が引きずり移動するが、剛体部材70からの振動が連結部材80により吸収された結果によるものと思われる。
【0030】
本実施形態では、下記の特徴を有する。
(1) 本実施形態の表面形状計測装置10は、測定物100の被検面100aに点接触する3つの脚30,40、50を有するホルダ20を有する。前記ホルダ20には、測定時の走査方向において離間する2つの脚30、40間に位置するように被検面100aの形状を計測する変位センサ60を備える。また、ホルダ20に対し有弾性の連結部材80を介して連結される剛体部材70を有する。また、連結部材80は、ホルダ20と測定物100とが走査方向に相対移動する間、剛体部材70に連結状態でホルダを引きずるとともに剛体部材70からの振動を吸収するようにした。
【0031】
この結果、本実施形態によれば、測定物の被検面の形状検出を行う変位センサの力制御が必要でなく、簡単な構成により測定物の被検面を測定することができる。また、本実施形態では、ホルダ20を引きずるだけであるため、ホルダをガイドするガイド部材は必要でない。
【0032】
(2)本実施形態の表面形状計測装置10の連結部材80を板バネとした。この結果、本実施形態によれば、剛体部材70からの振動を連結部材80により吸収して、精度の高い計測を行うことができる。
【0033】
(3)本実施形態の表面形状計測装置10の脚30、40、50は、測定物100に点接触する部位に曲面を有するようにした。この結果、本実施形態によれば、測定時に脚30、40、50が測定物100の被検面100aに対して曲面で点接触するため、被検面100aに対して傷つきを抑制できる。
【0034】
(4)本実施形態の表面形状計測装置10のホルダ20及び脚30、40、50が、低熱膨張材質からなる。この結果、測定時の環境温度によるホルダ20及び脚30、40、50の熱膨張に起因した測定誤差をなくすることができる。
【0035】
(5)本実施形態の表面形状計測装置10を、曲面形状計測装置とした。この結果、本実施形態では、測定物100の被検面100aが曲面の形状を測定する際に、上記(1)の効果を奏することができる。
【0036】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の表面形状計測装置10を
図4を参照して説明する。なお、第1実施形態の表面形状計測装置10と同一または相当する構成については、同一符号を付してその詳細説明を省略し、異なる構成について説明する。
【0037】
第1実施形態の表面形状計測装置10は、連結部材80を板バネにより構成したが、本実施形態の連結部材180は、コイルバネにより構成されているところが異なっている。また、第1実施形態では、
図1に示すようにホルダ20は、引きずり方向側に位置する剛体部材70に対して有弾性の連結部材80を介して連結した。これに対して、本実施形態では、
図4に示すように、ホルダ20の上方に剛体部材70を配置するとともに、前記剛体部材70と連結部材180とを連結したところが異なっている。
【0038】
このように表面形状計測装置10を構成しても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
なお、本発明の実施形態は前記実施形態に限定されるものではなく、下記のように変更しても良い。
【0039】
・前記実施形態では、脚30、40、50を低熱膨張ガラスまたは低熱膨張金属から形成した。しかし、測定物100の被検面100aの測定環境温度が一定温度にコントロールされている環境下であれば、脚30、40、50の材質は、低熱膨張ガラスまたは低熱膨張金属に限定する必要はない。この場合は、測定環境温度が一定であるため、脚30、40、50が熱膨張の悪影響を受けることなく、測定物100の被検面100aの表面形状を測定できる。
【0040】
・前記実施形態では、変位センサ60を、脚30、40の点接触間を結ぶ直線上において、脚30、40間に位置するように配置するとともに、脚30、40から等距離となるように配置したが、この位置に限定するものではない。例えば、脚30、40の点接触間を結ぶ直線上において、脚30、40のいずれか一方が他方よりも近位となるように変位センサ60を配置してもよい。この場合は、前記式(1)において、脚30と変位センサ60間の距離と、脚40と変位センサ60の距離の比率に応じて、変位センサ60の出力値S(x)を算出すればよい。この場合においても、被検面100aが曲面である場合においても、断面形状の計測が可能である。
【0041】
・前記実施形態では、表面形状計測装置10を曲面形状計測装置としたが、測定物100の被検面100aが平面を計測することも可能である。この場合には、表面形状計測装置10は、平面形状計測装置になる。
【0042】
平面形状計測装置にする場合、脚30と脚50とを走査方向とは直交する線(以下、第1直線という)上に並べるとともに、脚40を前記第1直線とは直交する線(以下、第2直線という)上に配置してもよい。そして、第2直線上において、第2直線と第1直線の交点・脚40間に、変位センサ60を配置してもよい。
【0043】
・第1実施形態の連結部材80を板バネの代わりにコイルバネとしてもよい。また、第2実施形態の連結部材180をコイルバネの代わりに板バネとしてもよい。また、連結部材80、180は、板バネ、またはコイルバネに限定するものではなくこれら以外の他の弾性部材であってもよい。
【0044】
・第1実施形態では、被検面100aに対する脚30、40の点接触間を結ぶ直線上において、変位センサ60を脚30、40間に位置するように配置した。この代わりに、被検面100aに対する脚30、40の点接触間を結ぶ円弧線上において、変位センサ60を脚30、40間に位置するように配置してもよい。なお、前記円弧線は、予め曲率半径が設定されたものである。また、変位センサ60の前記円弧線上の位置は、脚30、40間において適宜の位置でよく、例えば、脚30、40間の円弧線上の離間距離の1/2となる位置に配置すればよい。
【0045】
このようにすると、脚30、変位センサ60、及び脚40が、前記円弧線上における被検面上の同じ点上に順に移動して、変位センサ60が前記同じ点を計測していくことにより、逐次3点法による被検面の断面形状の計測が可能となる。