特許第6294128号(P6294128)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6294128-バンパ取付け構造 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6294128
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】バンパ取付け構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/24 20060101AFI20180305BHJP
【FI】
   B60R19/24 G
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-74934(P2014-74934)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-196443(P2015-196443A)
(43)【公開日】2015年11月9日
【審査請求日】2017年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 学
【審査官】 梶本 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−044892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジエータサポートを利用してバンパの取り付けを図るための構造であり、
前記ラジエータサポートは、ラジエータアッパサポートと、このラジエータアッパサポートの車幅方向両端寄り部分を支持する左右一対の側柱部とを有している、バンパ取り付け構造であって、
前記ラジエータアッパサポートから車両前方に突出するように前記ラジエータアッパサポートに一体成形され、かつ上下高さ方向に撓み変形可能な突出片部と、
前記一対の側柱部に別部材を取り付けることにより、または前記一対の側柱部に一体成形されることにより設けられた一対のバンパ受け部と、
を備えており、
前記バンパの上部の車幅方向中央寄り部分は、前記突出片部に連結されて支持されており、
前記バンパの上部の車幅方向両端寄り部分は、車両後方側に向けて突出するフランジ部を有し、かつこのフランジ部が、前記各バンパ受け部上に載せられて支持された構成とされ、
前記バンパに対してその前方から所定以上の負荷入力があったときには、前記突出片部が撓みを生じるとともに、前記フランジ部が前記各バンパ受け部から脱落し、前記バンパが後退可能とされていることを特徴とする、バンパ取付け構造。
【請求項2】
請求項1に記載のバンパ取付け構造であって、
前記フランジ部は、ヘッドランプの下方に配されており、
前記各バンパ受け部を備えたブラケットおよび前記ヘッドランプは、前記各側柱部に設けられた支持部に、共通の締結部材を用いた共締め状態で取り付けられている、バンパ取付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のバンパ取付け構造、さらに詳しくは、ラジエータサポートを利用してバンパの取り付けを図るための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のバンパ取付け構造として、特許文献1に記載されたものがある。
同文献に記載されたバンパ取付け構造においては、樹脂製のラジエータサポートに、金属製のバンパステーを固定して取付け、かつこのバンパステーに樹脂製のバンパの複数箇所を固定連結している。
【0003】
しかしながら、前記構造によれば、バンパへの軽衝突があった際に、金属製のバンパステーがバンパを突っ張ることとなり、軽衝突時のエネルギ吸収を十分に図ることが難しい。歩行者保護の観点からすると、軽衝突時においてもエネルギ吸収を好適に図り、障害値を低減することが要望される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3283426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、バンパへの軽衝突時においてもエネルギ吸収を好適に図り、障害値を低減することが可能なバンパ取付け構造を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0007】
本発明により提供されるバンパ取付け構造は、ラジエータサポートを利用してバンパの取り付けを図るための構造であり、前記ラジエータサポートは、ラジエータアッパサポートと、このラジエータアッパサポートの車幅方向両端寄り部分を支持する左右一対の側柱部とを有している、バンパ取り付け構造であって、前記ラジエータアッパサポートから車両前方に突出するように前記ラジエータアッパサポートに一体成形され、かつ上下高さ方向に撓み変形可能な突出片部と、前記一対の側柱部に別部材を取り付けることにより、または前記一対の側柱部に一体成形されることにより設けられた一対のバンパ受け部と、を備えており、前記バンパの上部の車幅方向中央寄り部分は、前記突出片部に連結されて支持されており、前記バンパの上部の車幅方向両端寄り部分は、車両後方側に向けて突出するフランジ部を有し、かつこのフランジ部が、前記各バンパ受け部上に載せられて支持された構成とされ、前記バンパに対してその前方から所定以上の負荷入力があったときには、前記突出片部が撓みを生じるとともに、前記フランジ部が前記各バンパ受け部から脱落し、前記バンパが後退可能とされていることを特徴としている。
【0008】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
第1に、バンパに対してその前方から所定以上の負荷入力があった際には、バンパの上部の車幅方向中央寄り部分を支持するラジエータアッパサポートの突出片部が撓むとともに、バンパの上部の車幅方向両端寄り部分に設けられているフランジ部が各バンパ受け部から脱落することにより、バンパを後退させることが可能である。このような態様による
バンパの後退動作は、バンパへの負荷入力が比較的小さい軽衝突時であっても、的確に行なわせることが可能である。また、バンパの後退動作は、突出片部の撓み変形作用により、バンパが回転することによりなされることとなるため、バンパの後退量を比較的大きくとることも可能である。このようなことから、バンパへの軽衝突時におけるエネルギ吸収を好適に図り、障害値を低減することができる。
第2に、バンパの上部の車幅方向中央寄り部分は、撓み変形可能な突出片部に連結されて支持されているものの、バンパの上部の車幅方向両端寄り部分は、この部分に設けられているフランジ部がバンパ受け部上に載せられて支持された状態にあるために、通常時におけるバンパの位置決め固定を適切に図ることが可能である。すなわち、バンパを撓み変形可能な突出片部によって支持させただけではバンパが不安定となるものの、本発明では、バンパの重量をバンパ受け部に負担させることにより突出片部の垂れ下がりを防止し、バンパを安定させることができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、前記フランジ部は、ヘッドランプの下方に配されており、前記各バンパ受け部を備えたブラケットおよび前記ヘッドランプは、前記各側柱部に設けられた支持部に、共通の締結部材を用いた共締め状態で取り付けられている。
【0010】
このような構成によれば、ヘッドランプとその下方に位置するバンパのフランジ部との位置合わせを高精度に行ない、それらの見切線を綺麗に仕上げることが可能となる。すなわち、バンパのフランジ部は、バンパ受け部上に載せられるために、これらの位置合わせは高精度に行なうことが可能である。一方、バンパ受け部を備えたブラケットおよびヘッドランプが側柱部の支持部に共締めされた構造によれば、バンパ受け部とヘッドランプとの位置合わせも高精度に行なうことが可能である。すると、バンパのフランジ部とヘッドランプとの位置合わせも高精度に行なえることとなり、それらの境界部の幅を一定に揃えるといったことが容易に達成できる。
【0011】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)は、本発明に係るバンパ取付け構造の一例を示す分解斜視図であり、(b)は、(a)に示すバンパ取付け構造の組立状態の要部断面図であり、(c)は、(a)に示すバンパ取付け構造の組立状態の他の部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
図面において、矢印Frは車両前方を示し、矢印Wは車幅方向を示し、矢印Upは上方を示している。
【0014】
図1に示すバンパ取付け構造Aは、ラジエータサポートSを利用してバンパ1の取り付けが図られる構造である。バンパ1は、フロントバンパであり、樹脂製である。
【0015】
ラジエータサポートSは、樹脂製のラジエータアッパサポート2、樹脂製の左右一対の側柱部3、および不図示のラジエータロアサポートを備えており、このラジエータサポートSには、後述する突出片部22やバンパ受け部50が設けられる。
ラジエータアッパサポート2は、車幅方向に延びる主要部20と、この主要部20の両端から車両後方に向けて延びた一対の補助部21とを有しており、各所の基本的な断面形状は、たとえばハット型あるいはコの字型などとされている。補助部21は、たとえばカウルやエプロンメンバなどとの連結が図られる。
【0016】
ラジエータアッパサポート2の主要部20の前部には、車両前方側に突出する突出片部22が一体成形されている。この突出片部22は、先端側が自由端とされた片もちの平板状であり、上下方向に撓み変形可能である。これに対し、バンパ1の上部の車幅方向中央寄り部分には、突出片部22の先端寄り部分との固定連結が図られるフランジ部12が設けられている。フランジ部12および突出片部22どうしの固定連結は、これらを上下に互いに重ね合わされ、かつこれらに設けられた孔部12a,22aにクリップ91またはビスなどのネジ体を挿通することにより行なわれる。
【0017】
バンパ1の上部の車幅方向両端寄り部分には、後述するバンパ受け部50に載せられて支持される左右一対のフランジ部13が設けられている。各フランジ部13は、バンパ1の上縁部から車両後方側に突出した形状である。なお、図1(b)の符号95は、バンパ1の略中央部に設けられた開口部19に対面して取付けられたグリルである(同図(a)では図示略)。
【0018】
一対の側柱部3は、ラジエータアッパサポート2の車幅方向両端寄り部分を支持する部位であり、上下高さ方向に延びている。各側柱部3には、車幅方向外方に突出した凸状の支持部30が一体的に形成されている。この支持部30は、本来的には、ヘッドランプ4の固定を図るための部分であるが、本実施形態においては、次に述べるように、フランジ部13を支持するためのバンパ受け部50を所定位置に設ける用途にも利用されている。
【0019】
バンパ受け部50は、ラジエータサポートSとは別体で形成されたブラケット5を用いて構成されている。ブラケット5は、ボルト止め用の孔部52が設けられた支持板部51の上側に、ブロック状またはこれに類する形状に形成されたバンパ受け部50が設けられたものである。図1(c)に示すように、ブラケット5の支持板部51、およびヘッドランプ4の下部の取付け片41は、支持部30の前面部に重ねられ、かつこれらに設けられているボルト止め用の孔部52,42,31にボルト90が一連に挿通された共締め状態とされている。ボルト90は、本発明でいう締結部材の一例に相当する。バンパ1のフランジ部13は、バンパ受け部50とヘッドランプ4との隙間8に対してその車両前方側から挿入され、かつバンパ受け部50の上面上に載せられている。バンパ1の重量の多くはバンパ受け部50によって受けられ、通常時においては、突出片部22にバンパ1の重量負担がない状態、または殆どない状態とされている。その一方、フランジ部13とバンパ受け部50とは、ボルトなどを用いた固定連結状態にはなく、フランジ部13がバンパ受け部50に単に掛止された状態にある。このことにより、後述するような車両前方からの負荷入力があった際には、同図(c)の仮想線で示すように、フランジ部13をバンパ受け部50上から脱落させることが可能となっている。
【0020】
次に、前記したバンパ取付け構造Aの作用について説明する。
【0021】
まず、図1(b)に示すように、バンパ1に対してその前方から所定以上の負荷Fが入力すると、突出片部22が下方に撓み、これに伴ってバンパ1が変形する結果、バンパ1のフランジ部13は車両前方側に変位し、バンパ受け部50から脱落する。このようなフランジ部13の脱落を生じると、バンパ1は、同図(b)の矢印D1で示すように、車両後方側下方へ容易に、かつ比較的大きなストロークで回転する後退動作を生じる。なお、このようなバンパ1の回転後退動作を適切かつ円滑に行なわせるための要件として、バンパ1の取り付け状態において、その重心G1は、突出片部22とバンパ1との連結箇所n1よりも車両前方側に位置している。
【0022】
前記したようなバンパ1の回転下降による後退動作を生じると、負荷Fの入力に対するエネルギ吸収が適切に行なわれる。突出片部22の撓みによるバンパ1の回転下降は、比較的弱い力で生じさせることが可能である。したがって、負荷Fが比較的小さい軽衝突時
においてもエネルギ吸収機能が適切に発揮されることとなり、歩行者保護を図るのに好ましいものとなる。
【0023】
前記した負荷入力時とは異なり、通常時においては、バンパ1の上部のフランジ部13がバンパ受け部50上に載せられていることにより、このバンパ受け部50によってバンパ1の重量が適切に受けられている。このため、突出片部22が下方へ垂れた状態でバンパ1が不安定に支持されることは適切に回避される。フランジ部13は、バンパ1の上部の車幅方向両端寄り部分のそれぞれに設けられているために、通常時におけるバンパ1の取り付け状態をより安定させることが可能である。
【0024】
バンパ1のフランジ部13は、ヘッドランプ4の下方に位置しているが、次に述べるように、それらの相互間の隙間8の寸法を所望の寸法Lに高い精度で設定し、それらの部分の見切線を綺麗な状態に仕上げることが可能である。すなわち、バンパ受け部50を有するブラケット5は、ボルト90を利用してヘッドランプ4と共締め状態とされているために、バンパ受け部50とヘッドランプ4との位置合わせ精度を高くすることが可能である。すると、バンパ受け部50上に載せられているバンパ1のフランジ部13と、ヘッドランプ4との位置合わせ精度も高いものとすることが可能となる。このことにより、フランジ部13とヘッドランプ4との隙間8の幅を一定に揃えるようなことが容易となり、この部分の外観体裁を良くすることができる。
【0025】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係るバンパの取付け構造の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0026】
上述した実施形態においては、バンパ受け部50が、側柱部3とは別体のブラケット5を用いて設けられているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、側柱部3にバンパ受け部を一体成形することもできる。具体的には、上向き水平面を有する凸状部を側柱部3に一体成形することにより、この凸状部をバンパ受け部とし、その上側にバンパ1のフランジ部13を載せる構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0027】
A バンパ取付け構造
S ラジエータサポート
1 バンパ
13 フランジ部
2 ラジエータアッパサポート
22 突出片部
3 側柱部(ラジエータサポートの)
30 支持部
4 ヘッドランプ
5 ブラケット
50 バンパ受け部
90 ボルト(締結部材)
図1