(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数のスイッチング素子を備え、前記複数のスイッチング素子のオンオフによってバッテリから供給される直流電力を変調して、回転によりワイパブレードを払拭動作させるワイパモータに供給する電力供給部と、
前記バッテリから供給される直流電力の電圧を検出する検出部と、
速度指令に応じた回転速度で前記ワイパモータが回転する大きさの電力が前記ワイパモータに供給される周期で前記複数のスイッチング素子をオンオフ制御し、かつ前記ワイパモータが停止している状態で前記検出部により閾値以上の電圧が検出された場合には、前記ワイパブレードが払拭動作を開始しない大きさの電力が前記ワイパモータに供給される周期で前記複数のスイッチング素子をオンオフ制御する制御部と、
を含むワイパ制御装置。
前記ワイパブレードが払拭動作を開始しない大きさの電力が前記ワイパモータに供給される周期は、前記ワイパモータが回転を開始しない大きさの電力が供給される周期である請求項1に記載のワイパ制御装置。
前記制御部は、前記ワイパモータが停止している状態で前記検出部により閾値以上の電圧が検出された場合には、前記電力供給部が前記ワイパモータに電力を供給したことにより前記検出部が検知した電圧が前記閾値より低い通常値未満となった状態が所定時間維持された場合に前記電力供給部から前記ワイパモータへの電力の供給を停止させる請求項1又は2記載のワイパ制御装置。
前記制御部は、前記ワイパモータが停止している状態で前記検出部により前記閾値以上の電圧が検出された場合には、前記ワイパモータへ供給する電力の極性を所定の間隔で交互に切り替えるように前記電力供給部を制御する請求項3記載のワイパ制御装置。
前記制御部は、前記ワイパモータが停止している状態で前記検出部により前記閾値以上の電圧が検出された場合には、前記スイッチング素子を前記ワイパモータが回転を開始しない大きさの電力が供給される周期よりも短い間隔でオンオフさせて生成した電力を前記ワイパモータに供給させる請求項3又は4記載のワイパ制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施の形態]
図1は、本実施の形態に係るワイパ制御装置10を含むワイパ装置100の構成を示す概略図である。ワイパ装置100は、例えば、乗用自動車等の車両に備えられたウィンドシールドガラス12を払拭するためのものであり、一対のワイパ14,16と、ワイパモータ18と、リンク機構20と、ワイパ制御装置10とを備えている。
【0020】
ワイパ14,16は、それぞれワイパアーム24,26とワイパブレード28,30とにより構成されている。ワイパアーム24,26の基端部は、後述するピボット軸42、44に各々固定されており、ワイパブレード28,30は、ワイパアーム24,26の先端部に各々固定されている。
【0021】
ワイパ14,16は、ワイパアーム24,26の動作に伴ってワイパブレード28,30がウィンドシールドガラス12上を往復動作し、ワイパブレード28,30がウィンドシールドガラス12を払拭する。
【0022】
ワイパモータ18は、主にウォームギアで構成された減速機構52を介して、正逆回転可能な出力軸32を有している。リンク機構20は、クランクアーム34と、第1リンクロッド36と、一対のピボットレバー38、40と、一対のピボット軸42、44と、第2リンクロッド46とを備えている。
【0023】
クランクアーム34の一端側は、出力軸32に固定されており、クランクアーム34の他端側は、第1リンクロッド36の一端側に動作可能に連結されている。また、第1リンクロッド36の他端側は、ピボットレバー38のピボット軸42を有する端とは異なる端寄りの箇所に動作可能に連結されており、ピボットレバー38のピボット軸42を有する端とは異なる端及びピボットレバー40におけるピボットレバー38の当該端に対応する端には、第2リンクロッド46の両端がそれぞれ動作可能に連結されている。
【0024】
また、ピボット軸42,44は、車体に設けられた図示しないピボットホルダによって動作可能に支持されており、ピボットレバー38,40におけるピボット軸42,44を有する端は、ピボット軸42,44を介してワイパアーム24,26が各々固定されている。
【0025】
本実施の形態に係るワイパ制御装置10を含むワイパ装置100では、出力軸32が所定の範囲の回転角θ1で正逆回転されると、この出力軸32の回転力がリンク機構20を介してワイパアーム24,26に伝達され、このワイパアーム24,26の往復動作に伴ってワイパブレード28,30がウィンドシールドガラス12上における下反転位置P2と上反転位置P1との間で往復動作をする。θ1の値は、ワイパ制御装置のリンク機構の構成等によって様々な値をとり得るが、本実施の形態では、一例として140°である。
【0026】
本実施の形態に係るワイパ制御装置10を含むワイパ装置100では、
図1に示されるように、ワイパブレード28,30が格納位置P3に位置された場合には、クランクアーム34と第1リンクロッド36とが直線状をなす構成とされている。
【0027】
格納位置P3は、下反転位置P2の下方に設けられている。ワイパブレード28,30が下反転位置P2にある状態から、出力軸32がθ2回転することにより、ワイパブレード28,30は格納位置P3に動作する。θ2の値は、ワイパ装置のリンク機構の構成等によって様々な値をとり得るが、本実施の形態では、一例として10°とする。
【0028】
なお、θ2が「0」の場合は、下反転位置P2と格納位置P3は一致し、ワイパブレード28,30は、下反転位置P2で停止し、格納される。
【0029】
ワイパモータ18には、ワイパモータ18の回転を制御するためのワイパ制御装置10が接続されている。本実施の形態に係るワイパ制御装置10は、ワイパモータ18の出力軸32の回転速度及び回転角を検知する回転角度センサ54の検知結果に基づいてワイパモータ18の回転速度を制御する。回転角度センサ54は、ワイパモータ18の減速機構52内に設けられ、出力軸32に連動して回転するセンサマグネットの磁界(磁力)を電流に変換して検出する。
【0030】
本実施の形態に係るワイパモータ18は、前述のように減速機構52を有しているので、出力軸32の回転速度及び回転角は、ワイパモータ本体の回転速度及び回転角と同一ではない。しかしながら、本実施の形態では、ワイパモータ本体と減速機構52は一体不可分に構成されているので、以下、出力軸32の回転速度及び回転角を、ワイパモータ18の回転速度及び回転角とみなすものとする。
【0031】
ワイパ制御装置10は、回転角度センサ54が検出した出力軸32の回転角からワイパブレード28,30のウィンドシールドガラス12上での位置を算出可能で当該位置に応じて出力軸32の回転速度が変化するようにワイパモータ18の回転速度を制御する。
【0032】
また、ワイパ制御装置10には、電源である車両のバッテリからワイパモータ18に供給される電力をオン又はオフするワイパスイッチ50が接続されている。ワイパスイッチ50は、ワイパブレード28,30を、低速で動作させる低速作動モード選択位置、高速で動作させる高速作動モード選択位置、一定周期で間欠的に動作させる間欠作動モード選択位置、格納(停止)モード選択位置に切替可能である。また、各モードの選択位置に応じた回転速度の指令の信号をワイパ制御装置10に出力する。
【0033】
ワイパスイッチ50から各モードの選択位置に応じて出力された信号がワイパ制御装置10に入力されると、ワイパ制御装置10がワイパスイッチ50からの出力信号に対応する制御を用いて行う。
【0034】
図2は、本実施の形態に係るワイパ制御装置10の構成の一例の概略を示すブロック図である。また、
図2示したワイパモータ18は、一例として、ブラシ付きDCモータである。
【0035】
図2に示したワイパ制御装置10は、ワイパモータ18の巻線の端子に印加する電圧を生成する駆動回路56と、駆動回路56を構成するスイッチング素子のオン及びオフを制御するマイクロコンピュータ58とを含んでいる。マイクロコンピュータ58には、ダイオード68を介してバッテリ80の電力が供給されると共に、供給される電力の電圧は、ダイオード68とマイクロコンピュータ58との間に設けられた電圧検出回路60によって検知され、検知結果はマイクロコンピュータ58に出力される。また、ダイオード68とマイクロコンピュータ58との間に一端が接続され、他端(−)が接地された電解コンデンサC1が設けられている。電解コンデンサC1は、マイクロコンピュータ58の電源を安定化するためのコンデンサである。電解コンデンサC1は、例えば、サージ等の突発的な高電圧を蓄え、接地領域にバイパスすることにより、マイクロコンピュータ58を保護する。
【0036】
マイクロコンピュータ58には信号入力回路62を介してワイパスイッチ50からワイパモータ18の回転速度を指示するための信号が入力される。ワイパスイッチ50から出力された信号はアナログ信号なので、当該信号は信号入力回路62においてデジタル化されてマイクロコンピュータ58に入力される。
【0037】
また、マイクロコンピュータ58には、出力軸32の回転に応じて変化するセンサマグネット70の磁界を検知する回転角度センサ54が接続されている。マイクロコンピュータ58は、回転角度センサ54が出力した信号に基づいて、出力軸の回転角度を算出することにより、ワイパブレード28,30のウィンドシールドガラス12上での位置を特定する。
【0038】
さらに、マイクロコンピュータ58は、メモリ48に記憶されているワイパブレード28,30の位置に応じて規定されたワイパモータ18の回転速度のデータを参照して、ワイパモータ18の回転が、特定したワイパブレード28,30の位置に応じた回転数になるように駆動回路56を制御する。
【0039】
駆動回路56は、
図2に示すように、スイッチング素子にN型のFET(電界効果トランジスタ)であるトランジスタTr1,Tr2,Tr3,Tr4を用いている。トランジスタTr1及びトランジスタTr2は、ドレインがノイズ防止コイル66を介してバッテリ80に各々接続されており、ソースがトランジスタTr3及びトランジスタTr4のドレインに各々接続されている。また、トランジスタTr3及びトランジスタTr4のソースは接地されている。
【0040】
また、トランジスタTr1のソース及びトランジスタTr3のドレインは、ワイパモータ18の巻線の一端に接続されており、トランジスタTr2のソース及びトランジスタTr4のドレインは、ワイパモータ18の巻線の他端に接続されている。
【0041】
トランジスタTr1及びトランジスタTr4の各々のゲートにハイレベル信号が入力されることにより、トランジスタTr1及びトランジスタTr4がオンになり、ワイパモータ18には例えばワイパブレード28,30を車室側から見て時計回りに動作させるCW電流72が流れる。さらに、トランジスタTr1及びトランジスタTr4の一方をオン制御しているとき、他方をPWM(Pulse Width Modulation)制御により、小刻みにオンオフ制御することにより、CW電流72の電圧を変調できる。
【0042】
また、トランジスタTr2及びトランジスタTr3の各々のゲートにハイレベル信号が入力されることにより、トランジスタTr2及びトランジスタTr3がオンになり、ワイパモータ18には例えばワイパブレード28,30を車室側から見て反時計回りに動作させるCCW電流74が流れる。さらに、トランジスタTr2及びトランジスタTr3の一方をオン制御しているとき、他方をPWM(Pulse Width Modulation)制御により、小刻みにオンオフ制御することにより、CCW電流74の電圧を変調できる。
【0043】
本実施の形態では、電源であるバッテリ80と駆動回路56との間には逆接続保護回路64及びノイズ防止コイル66が設けられると共に、駆動回路56に対して並列になるように電解コンデンサC2が設けられている。ノイズ防止コイル66は、駆動回路56のスイッチングによって発生するノイズを抑制するための素子である。
【0044】
電解コンデンサC2は、駆動回路56から生じるノイズを緩和すると共に、サージ等の突発的な高電圧を蓄え、接地領域にバイパスすることにより、当該高電圧の駆動回路56に過大な電流が入力されるのを防止するための素子である。
【0045】
逆接続保護回路64は、バッテリ80の正極と負極が
図2に示した場合とは逆に接続された場合に、ワイパ制御装置10を構成する素子を保護するための回路である。逆接続保護回路64は、一例として、自身のドレインとゲートを接続した、いわゆるダイオード接続されたFET等で構成される。
【0046】
以下、本実施の形態に係るワイパ制御装置10の作用及び効果について説明する。本実施の形態に係るワイパ制御装置10は、ワイパブレードが上反転位置P1又は下反転位置P2で一時的に停止している場合等のワイパモータ18の一時的な停止時に発生したサージによる過電圧を解消するための制御を行う。
【0047】
図3は、本実施の形態に係るワイパ制御装置10のサージ発生時における、サージ波形、マイクロコンピュータ58に印加される電圧Vsの変化、サージ発生に対応したトランジスタTr1〜Tr4の動作状況の一例を示した概略図である。
図3に示したように、サージ波形は、鋭い三角波状で、突発的に電圧が上昇した後、急激に電圧が下降する。
図3に示したサージ波形では、急激な電圧の変化が複数回繰り返されている。
【0048】
サージ発生に伴って、ダイオード68を介してマイクロコンピュータ58に印加される電圧Vsも上昇する。仮に、何らの保護の制御を行わない場合では、電圧Vsは、破線で示した非制御時電圧82のようになり、場合によってはマイクロコンピュータ58等の素子が耐えられる素子耐圧を超え、素子を損傷するおそれが生じる。
【0049】
本実施の形態では、
図2に示した電圧検出回路60により、電圧Vsの変化を検知している。電圧検出回路60が検知した電圧Vsが正常検出値Vb以上かつ過電圧検出値Vaを超えた場合には、駆動回路56のトランジスタTr1,TR4をオンにしてワイパモータ18にCW電流72を通電して、過電圧を解消する。
【0050】
図3では、時間t1にサージが発生して、電圧Vsが上がり始めている。電圧検出回路60は、時間t2で電圧Vsが過電圧検出値Vaを超えたことを検知し、マイクロコンピュータ58は、時間t2からトランジスタTr1,Tr4をオンにすることにより、ワイパモータ18の巻線の端子に通電してサージによる電圧Vsの上昇を抑制する。
【0051】
電圧検出回路60は、電圧Vsの変化を検知する。マイクロコンピュータ58は、検知された電圧Vsが正常検出値Vb未満となった時間t3以降、電圧Vsが正常検出値Vb未満の状態が所定の時間T継続している場合には、トランジスタTr1,Tr4をオフにしてワイパモータ18への通電を停止する。
図3では、時間t4において所定の時間Tに達したことにより、トランジスタTr1,Tr4がオフになっている。
【0052】
トランジスタTr1,Tr4が、時間t2から時間t4までの周期でオンになることで、ワイパモータ18には当該オンに基づいたデューティ比の電圧が印加されるが、当該デューティ比による電圧はワイパモータ18を回転させない程度の電圧である。本実施の形態では、電圧Vsが正常検出値Vb未満となった状態が所定の時間T継続するまでトランジスタTr1,Tr4をオン状態にさせることにより、ワイパモータ18が停止した状態で、サージ由来の電圧の上昇を解消することができる。
【0053】
所定の時間Tは、発生するサージの電圧値、ワイパモータ18の定格等によって最適値が異なるので、モデリングによるシミュレーション及び実機による実験を通じて、ワイパモータ18が回転しない状態であると共に、過電圧を解消できる時間として決定する。所定の時間Tは、一例として、5〜10m秒である。
【0054】
図3では、トランジスタTr1,Tr4をオンにしたことにより、電圧Vsは、
図3において実線で示した制御時電圧84のようになり、電圧Vsがサージによって素子耐圧を超えるおそれを回避できる。そして、時間t5において、サージによる電圧上昇が終わったことを電圧検出回路60が検知した場合には、トランジスタTr1,Tr4をオンにする制御も終了する。
【0055】
図4は、本実施の形態に係るワイパ制御装置10のサージ発生時における、サージ波形、マイクロコンピュータ58に印加される電圧Vsの変化、サージ発生に対応したトランジスタTr1〜Tr4の動作状況の変形例を示した概略図である。
図4に示した変形例では、トランジスタTr4をPWM制御により時間t2から時間t4までの周期よりも短い周期で小刻みにオンオフさせている点が、
図3の場合と相違するが、その他については
図3の場合と同様である。
【0056】
図4では、時間t1にサージが発生して、電圧Vsが上がり始めている。電圧検出回路60は、時間t2で電圧Vsが過電圧検出値Vaを超えたことを検知し、マイクロコンピュータ58は、時間t2から時間t4においてトランジスタTr1,Tr4をオンにすることにより、サージによる電圧Vsの上昇を解消する。トランジスタTr1は、時間t2から時間t4までオンになる。トランジスタTr4は、
図4に示したように小刻みにオンオフが繰り返される。
【0057】
本実施の形態では、トランジスタTr1,Tr4をオンにすることにより、ワイパモータ18が回転しない程度の電圧をワイパモータの巻線の端子に印加する。しかしながら、トランジスタTr1及びトランジスタTr4がオン状態を継続すると、ワイパモータ18が意図せずして回転するおそれがある。
図4に示した変形例では、トランジスタTr4を小刻みにオンオフさせることにより、ワイパモータ18の巻線の端子に印加する電圧を
図3の場合よりも抑制し、ワイパモータ18を回転させずにサージに伴う過電圧を解消する。
【0058】
なお、
図3,4ではトランジスタTr1,Tr4をオンにしたが、トランジスタTr2,Tr3をオンにして、ワイパモータ18の巻線の端子にCCW電流74を通電するようにしてもよい。CCW電流74をワイパモータの巻線の端子に通電する場合も、トランジスタTr2又はトランジスタTr3のどちらかを小刻みにオンオフすることにより、ワイパモータ18が動くおそれを低減させることができる。
【0059】
図5は、本実施の形態に係るワイパ制御装置10での過電圧に対する処理の一例を示したフローチャートである。ステップ500では、電圧Vsが過電圧検出値Vaを超えたか否かを判定し、肯定判定の場合には、ステップ502で、トランジスタTr1,Tr4をオンにすることにより、ワイパモータ18にCW電流72を通電する。
【0060】
ステップ502で、トランジスタTr4がオン状態を継続すると、
図3に示した場合になり、トランジスタTr4が小刻みにオンオフを繰り返すと、
図4に示した変形例の場合となる。
【0061】
ステップ504では、電圧Vsが正常検出値Vb未満になり、かつ電圧Vsが正常検出値Vb未満の状態が所定の時間T継続されたか否かを判定し、肯定判定の場合には、ステップ506でワイパモータ18への通電をオフにして処理を終了する。また、ステップ504で否定判定の場合には、手順をステップ502に戻して、ワイパモータ18への通電を継続する。
【0062】
以上説明したように、本実施の形態では、電圧検出回路60によって過電圧を検知した場合に、駆動回路56を構成するスイッチング素子を暫時オンにして、ワイパモータ18に通電することにより、過電圧を解消すると共に、当該過電圧が解消したか否かを電圧検出回路60によって検出している。その結果、本実施の形態によれば、サージによる過電圧の有無を検知して過電圧解消の処理をすることにより、素子の損傷を回避することができる。
【0063】
ワイパモータ18の巻線の端子に通電することで、駆動回路56と並列に接続した電解コンデンサC2、及びダイオード68とマイクロコンピュータ58との間の電流を接地領域に流す電解コンデンサC1の耐圧を特に高くする必要もなくなる。その結果、サージによる素子の損傷を回避できるワイパ制御装置を低コストで製造できる。
【0064】
[第2の実施の形態]
続いて、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態に係るワイパ制御装置10の構成は、基本的には、
図2で示した第1の実施の形態と同様なので、詳細な説明は省略する。
【0065】
図6は、本実施の形態に係るワイパ制御装置10のサージ発生時における、サージ波形、マイクロコンピュータ58に印加される電圧Vsの変化、サージ発生に対応したトランジスタTr1〜Tr4の動作状況の一例を示した概略図である。
【0066】
図6では、時間t2に電圧Vsが過電圧検出値Vaを超えた場合に、トランジスタTr1,Tr4を通電時間Taでオンにした後、トランジスタTr1,Tr4をオフにすると共にトランジスタTr2,Tr3を通電時間Taでオンにする。以後、電圧Vsが正常検出値Vb未満になった状態が所定の時間T継続されるまで、トランジスタTr1,Tr4とトランジスタTr2,Tr3とを通電時間Taの間隔で交互にオンオフさせる。その結果、ワイパモータ18の巻線の端子には、通電時間Taの間隔でCW電流72とCCW電流74とが通電される。
【0067】
通電時間Taは、例えば2m秒程度であれば、ワイパモータ18は回転しない。また、ワイパモータ18の巻線の端子には、通電時間Taの間隔で通電される電流の極性が入れ替わるので、ワイパモータ18が不用意に回転するおそれは、第1の実施の形態よりもさらに少なくなる。そして、時間t5において、サージによる電圧上昇が終わったことを電圧検出回路60が検知した場合には、トランジスタTr1,Tr4及びトランジスタTr2,Tr3をオンにする制御も終了する。
【0068】
図7は、本実施の形態に係るワイパ制御装置10のサージ発生時における、サージ波形、マイクロコンピュータ58に印加される電圧Vsの変化、サージ発生に対応したトランジスタTr1〜Tr4の動作状況の変形例を示した概略図である。
図7に示した変形例では、トランジスタTr3,Tr4をPWM制御により時間t2から時間t4までの周期よりも短い周期で小刻みにオンオフさせている点が、
図6の場合と相違するが、その他については
図6の場合と同様である。
【0069】
図7では、時間t1にサージが発生して、電圧Vsが上がり始めている。電圧検出回路60は、時間t2で電圧Vsが過電圧検出値Vaを超えたことを検知し、マイクロコンピュータ58は、トランジスタTr1,Tr4を通電時間Taでオンにすることにより、サージによる電圧VSの上昇を抑制する。
【0070】
マイクロコンピュータ58は、トランジスタTr1,Tr4を通電時間Taでオンにした後、トランジスタTr1,Tr4をオフにすると共にトランジスタTr2,Tr3を通電時間Taでオンにする。以後、電圧Vsが正常検出値Vb未満になった状態が所定の時間T継続されるまで、トランジスタTr1,Tr4とトランジスタTr2,Tr3とを通電時間Taの間隔で交互にオンオフさせる。
【0071】
図7では、トランジスタTr1,Tr2は通電時間Taにおいてオン状態が継続されるが、トランジスタTr3,Tr4は通電時間Taにおいてオンオフが小刻みに切り替えられる。
【0072】
図7に示した変形例では、トランジスタTr3,Tr4を小刻みにオンオフすることにより、通電時間Taを
図6の場合よりも長くしても、ワイパモータ18は回転しない。
図7に示した変形例では、通電時間Taは、一例として10m秒である。
【0073】
図7に示した変形例では、トランジスタTr3,Tr4を小刻みにオンオフさせることにより、ワイパモータ18の巻線の端子に印加する電圧を
図6の場合よりも抑制し、ワイパモータ18を回転させずにサージに伴う過電圧を解消する。なお、トランジスタTr3,Tr4に代えて、トランジスタTr1,Tr3を通電時間Taにおいて小刻みにオンオフさせてもよい。
【0074】
図8は、本実施の形態に係るワイパ制御装置10での過電圧に対する処理の一例を示したフローチャートである。ステップ800では、電圧Vsが過電圧検出値Vaを超えたか否かを判定し、肯定判定の場合には、ステップ802で、トランジスタTr1,Tr4をオンにすることにより、ワイパモータ18にCW電流72を通電する。
【0075】
ステップ802で、トランジスタTr4がオン状態を継続すると、
図6に示した場合になり、トランジスタTr4が小刻みにオンオフを繰り返すと、
図7に示した変形例の場合となる。
【0076】
ステップ804では、電圧Vsが正常検出値Vb未満になり、かつ電圧Vsが正常検出値Vb未満の状態が所定の時間T継続されたか否かを判定し、肯定判定の場合には、ステップ806でワイパモータ18への通電をオフにして処理を終了する。また、ステップ804で否定判定の場合には、ステップ808で通電時間Taが経過したか否かを判定し、肯定判定の場合には、ステップ810で、トランジスタTr2,Tr3をオンにすることにより、ワイパモータ18にCCW電流74を通電する。ステップ808で否定判定の場合には、手順をステップ802に戻す。
【0077】
ステップ810で、トランジスタTr3がオン状態を継続すると、
図6に示した場合になり、トランジスタTr3が小刻みにオンオフを繰り返すと、
図7に示した変形例の場合となる。
【0078】
ステップ812では、電圧Vsが正常検出値Vb未満になり、かつ電圧Vsが正常検出値Vb未満の状態が所定の時間T継続されたか否かを判定し、肯定判定の場合には、ステップ806でワイパモータ18への通電をオフにして処理を終了する。また、ステップ812で否定判定の場合には、ステップ814で通電時間Taが経過したか否かを判定し肯定判定の場合には、手順をステップ802に戻す。ステップ814で否定判定の場合には、手順をステップ810に戻す。
【0079】
以上説明したように、本実施の形態では、電圧検出回路60によって過電圧を検知した場合に、駆動回路56を構成するスイッチング素子をオンオフすることにより、所定の時間間隔でワイパモータ18の巻線の端子に通電する電流の極性を変更している。かかる制御により、ワイパモータ18を回転させずにサージによる過電圧をワイパモータ18で解消させることが可能になり、素子の損傷を回避することができる。