(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記立体網状構造部の下方に、前記立体網状構造部の下方から上方及び上方から下方のいずれかの方向に送風することが可能な送風部をさらに備える、請求項1〜9のいずれか1項に記載のクッション構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、立体網状構造部は、緩衝材として優れた特性を有し、通気性に優れる。しかし、接着剤や両面テープを用いた接着では、立体網状構造部と発泡体部との接合強度が不十分である。このため、立体網状構造部と発泡体部との接合強度を向上させたクッション構造を提供することが望まれている。また、クッション構造体を生産する際に、接着などによる加工費用が高くなってしまうことから、生産性の向上も望まれている。
【0005】
本発明は上記課題を考慮してなされたものであり、立体網状構造部と発泡体部との接合強度を向上させたクッション構造を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、弾性を有する複数の樹脂の線材が互いに絡み合いながら湾曲しつつ複数の接着点で互いに接着されることにより形成された立体網状構造部と、立体網状構造部の側面を囲繞するように配置され、液状の発泡体原料が発泡しつつ固化することにより形成された発泡体部とを備え、液状の発泡体原料が立体網状構造部に含浸した後に固化したことにより、立体網状構造部と発泡体部とが接合されているクッション構造である。
【0007】
この構成によれば、発泡体原料が立体網状構造部に含浸した後に固化したことにより、立体網状構造部と発泡体部とが接合されている。立体網状構造部に含浸させられた発泡体原料は、立体網状構造部の複数の線材と広い面積で接しつつ固化させられる。このため、立体網状構造部と発泡体部との接合強度を向上させたクッション構造を提供することができる。
【0008】
この場合、立体網状構造部と発泡体部との境界に配置された浸透膜をさらに備え、浸透膜は液状の発泡体原料が浸透可能であり、浸透膜を介して液状の発泡体原料が立体網状構造部に含浸した後に固化したことにより、立体網状構造部と発泡体部とが接合されていることができる。
【0009】
この構成によれば、立体網状構造部と発泡体部との境界に浸透膜が配置されている。浸透膜は液状の発泡体原料が浸透可能であり、浸透膜を介して発泡体原料が立体網状構造部に含浸した後に固化したことにより、立体網状構造部と発泡体部とが接合されている。よって、浸透膜の発泡体原料が浸透可能な量を調整することにより、発泡体原料が立体網状構造部に含浸した後に固化したことにより形成される含浸部の幅を調整することができる。また、例えば、浸透膜で発泡体との接合部である表面が被覆された立体網状構造部を発泡体原料を発泡させる型の中に配置した後に、発泡体原料を型の中で発泡させる通常の発泡工程を行うことにより、クッション構造の製品が完成するため、生産性を向上させることができる。
【0010】
この場合、浸透膜は、繊維により形成された布であり、布を形成する繊維は、表面が露出しないように樹脂により被覆されていることができる。
【0011】
この構成によれば、浸透膜は繊維により形成された布であり、布を形成する繊維は表面が露出しないように樹脂により被覆されている。このため、発泡体原料が浸透膜を介して立体網状構造部に含浸する際に、発泡体原料の気泡が布を形成する繊維の凹凸により消滅し難い。よって、発泡体原料の気泡が消滅することにより、立体網状構造部の発泡体原料が含浸した部分が他の部分に比べて硬化することを防止することができる。
【0012】
また、浸透膜は、モノフィラメントの繊維により形成された不織布であることができる。
【0013】
この構成によれば、浸透膜は、モノフィラメントの繊維により形成された不織布である。モノフィラメントの繊維は、マルチフィラメントの繊維のような表面の凹凸が無い。また、不織布は、織物の布に比べて発泡体原料が浸透する部分の凹凸が少ない。このため、発泡体原料が浸透膜を介して立体網状構造部に含浸する際に、発泡体原料の気泡が布を形成する繊維の凹凸により消滅し難い。よって、発泡体原料の気泡が消滅することにより、立体網状構造部の発泡体原料が含浸した部分が他の部分に比べて硬化することを防止することができる。
【0014】
また、浸透膜は、孔部及びスリット部のいずれかを有する樹脂のフィルムであることができる。
【0015】
この構成によれば、浸透膜は、孔部及びスリット部のいずれかを有する樹脂のフィルムである。樹脂のフィルムは、織物の布のような繊維による凹凸が無い。このため、発泡体原料が浸透膜を介して立体網状構造部に含浸する際に、発泡体原料の気泡が布を形成する繊維の凹凸により消滅しない。よって、発泡体原料の気泡が消滅することにより、立体網状構造部の発泡体原料が含浸した部分が他の部分に比べて硬化することを防止することができる。
【0016】
また、浸透膜は、頂部で曲がった複数のスリット部を有する樹脂のフィルムであり、複数のスリット部の中の一対のスリット部は、互いに反対の方向に曲がり、頂部同士が互いに対向するように配置されていることができる。
【0017】
この構成によれば、頂部同士が互いに対向する一対の頂部で曲がったスリット部は、互いに他のスリット部の方向に発泡体原料を浸透させる。そのため、一対の互いに頂部で対向するスリット部から浸透した発泡体原料は、少量であっても互いに他のスリット部から浸透した発泡体原料と結合し易くなる。そのため、より少ない含浸量により、より強い接合強度を得ることができる。
【0018】
また、浸透膜は、頂部で曲がった複数のスリット部を有する樹脂のフィルムであり、複数のスリット部の中の一対のスリット部は、互いに同じ方向に曲がり、頂部同士が互いに同じ方向に向くように配置されていることができる。
【0019】
この構成によれば、頂部同士が互いに同じ方向を向く一対の頂部で曲がったスリット部は、互いに同じ方向に発泡体原料を浸透させる。そのため、一対の互いに同じ方向を向く頂部を有するスリット部から浸透した発泡体原料は、浸透膜からより近い距離で固化し易くなる。そのため、より少ない含浸量により、より強い接合強度を得ることができる。
【0020】
また、立体網状構造部の内部に配置された含浸防止膜をさらに備え、含浸防止膜は液状の発泡体原料が浸透不可能であり、含浸防止膜により浸透不可能とされなかった立体網状構造部の部位に発泡体原料が含浸した後に固化したことにより、立体網状構造部と発泡体部とが接合されていることができる。
【0021】
この構成によれば、含浸防止膜は液状の発泡体原料が浸透不可能であり、含浸防止膜により浸透不可能とされなかった立体網状構造部の部位に発泡体原料が含浸した後に固化したことにより、立体網状構造部と発泡体部とが接合される。よって、含浸防止膜の配置を調整することにより、発泡体原料が立体網状構造部に含浸した後に固化したことにより形成される含浸部の幅を調整することができる。また、例えば、内部に含浸防止膜を配置された立体網状構造部を発泡体原料を発泡させる型の中に配置した後に、発泡体原料を型の中で発泡させる通常の発泡工程を行うことにより、クッション構造の製品が完成するため、生産性を向上させることができる。
【0022】
また、立体網状構造部の上面は、発泡体の気泡の膜が除去された無膜発泡体により覆われていることができる。
【0023】
この構成によれば、立体網状構造部の上面は、発泡体の気泡の膜が除去された無膜発泡体により覆われている。このため、通気性を維持しつつ、立体網状構造部の上面の柔軟性を高めることができる。
【0024】
また、立体網状構造部の上面は、空気が流通可能な通風孔部が形成された発泡体により覆われていることができる。
【0025】
この構成によれば、立体網状構造部の上面は、空気が流通可能な通風孔部が形成された発泡体により覆われている。このため、通気性を維持しつつ、立体網状構造部の上面の柔軟性を高めることができる。
【0026】
また、立体網状構造部の下方に、立体網状構造部の下方から上方及び上方から下方のいずれかの方向に送風することが可能な送風部をさらに備えることができる。
【0027】
この構成によれば、立体網状構造部の下方に、立体網状構造部の下方から上方及び上方から下方のいずれかの方向に送風することが可能な送風部をさらに備える。このため、通気性をさらに向上させることができる。
【0028】
一方、本発明は、弾性を有する複数の樹脂の線材が互いに絡み合いながら湾曲しつつ複数の接着点で互いに接着されることにより形成された立体網状構造部と、立体網状構造部の側面を囲繞するように配置され、発泡しつつ固化することにより発泡体を形成する液状の発泡体原料が浸透可能である浸透膜とを備えたクッション構造部品である。
【0029】
この構成によれば、クッション構造部品は、立体網状構造部と、立体網状構造部の側面を囲繞するように配置され、発泡しつつ固化することにより発泡体部を形成する液状の発泡体原料が浸透可能である浸透膜とを備える。このため、クッション構造部品の浸透膜に接するように液状の発泡体原料を配置し、浸透膜を介して発泡体原料を立体網状構造部に含浸させ、発泡体原料を固化させることにより、容易に立体網状構造部と発泡体部とがより強い接合強度で接合されたクッション構造を製造することができる。これにより、クッション構造の生産性を向上させることができる。
【0030】
この場合、浸透膜は、繊維により形成された布であり、布を形成する繊維は、表面が露出しないように樹脂により被覆されていることができる。また、浸透膜は、モノフィラメントの繊維により形成された不織布であることができる。また、浸透膜は、孔部及びスリット部のいずれかを有する樹脂のフィルムであることができる。また、浸透膜は、頂部で曲がった複数のスリット部を有する樹脂のフィルムであり、複数のスリット部の中の一対のスリット部は、互いに反対の方向に曲がり、頂部同士が互いに対向するように配置されていることができる。また、浸透膜は、頂部で曲がった複数のスリット部を有する樹脂のフィルムであり、複数のスリット部の中の一対のスリット部は、互いに同じ方向に曲がり、頂部同士が互いに同じ方向に向くように配置されていることができる。
【0031】
一方、本発明は、弾性を有する複数の樹脂の線材が互いに絡み合いながら湾曲しつつ複数の接着点で互いに接着されることにより形成された立体網状構造部と、立体網状構造部の内部に配置され、発泡しつつ固化することにより発泡体部を形成する液状の発泡体原料が浸透不可能である含浸防止膜とを備えたクッション構造部品である。
【0032】
また、本発明は、上記本発明の実施形態のクッション構造部品に接するように液状の発泡体原料を配置する工程と、発泡体原料を立体網状構造部に含浸させる工程と、発泡体原料を固化させる工程とを含むクッション構造の製造方法である。
【発明の効果】
【0033】
本発明のクッション構造、クッション構造部品及びクッション構造の製造方法によれば、立体網状構造部と発泡体部との接合強度を向上させたクッション構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】第1実施形態のクッション構造を示す斜視図である。
【
図4】第1実施形態の立体網状構造部を示す斜視図である。
【
図6】
図4の立体網状構造部の側面及び底面に浸透膜が配置された第1実施形態のクッション構造部品を示す斜視図である。
【
図8】
図7の浸透膜に対して空隙部をより小さくした浸透膜の例を示す拡大視である。
【
図9】モノフィラメント繊維により形成された不織布の浸透膜の例を示す拡大視である。
【
図10】発泡体原料が浸透可能な孔部を有する樹脂フィルムの浸透膜の例を示す拡大視である。
【
図11】発泡体原料が浸透可能なスリット部を有する樹脂フィルムの浸透膜の例を示す拡大視である。
【
図12】発泡体原料が互いに対向する方向に浸透可能な複数の屈曲したスリット部を有する樹脂フィルムの浸透膜の例を示す拡大視である。
【
図13】発泡体原料が互いに対向する方向に浸透可能な複数の湾曲したスリット部を有する樹脂フィルムの浸透膜の例を示す拡大視である。
【
図14】発泡体原料が同じ方向に浸透可能な複数の屈曲したスリット部を有する樹脂フィルムの浸透膜の例を示す拡大視である。
【
図15】発泡体原料が同じ方向に浸透可能な複数の湾曲したスリット部を有する樹脂フィルムの浸透膜の例を示す拡大視である。
【
図16】
図6のクッション構造部品が型の中に入れられた状態を示す断面図である。
【
図17】液状の発泡体原料が型の中に入れられた状態を示す断面図である。
【
図18】
図17の発泡体原料が発泡し、クッション構造部品の浸透膜に接している状態を示す断面図である。
【
図19】
図18の浸透膜を介して発泡体原料が立体網状構造部に含浸させられた状態を示す断面図である。
【
図20】
図12に示すスリット部を有する樹脂フィルムの浸透膜を発泡体材料が浸透する状態を示す図である。
【
図21】
図14に示すスリット部を有する樹脂フィルムの浸透膜を発泡体材料が浸透する状態を示す図である。
【
図22】
図19の発泡体原料が固化させられた後の立体網状構造部と発泡体部との接合体を示す断面図である。
【
図23】
図22の接合体に積層された表皮及び無膜発泡体を被せる工程を示す断面図である。
【
図24】
図23の積層された表皮及び無膜発泡体の拡大視である。
【
図26】
図23の凹部において、線材同士をCリングで締めることにより、接合体に表皮及び無膜発泡体を固定する工程を示す断面図である。
【
図27】第2実施形態のクッション構造を示す
図1のy−y線による断面図に相当する図である。
【
図28】
図27に記載のクッション構造を製造する際に、
図22の接合体を通風孔部が形成された発泡体により覆った後に、表皮及び無膜発泡体を被せる工程を示す断面図である。
【
図29】
図28の凹部において、線材同士をCリングで締めることにより、接合体に表皮を固定する工程を示す断面図である。
【
図30】第3実施形態のクッション構造を示す斜視図である。
【
図33】
図4の立体網状構造部の側面に浸透膜が配置された第3実施形態のクッション構造部品を示す斜視図である。
【
図34】
図33のクッション構造部品が型の中に入れられた状態を示す断面図である。
【
図35】厚みが薄くなったクッション構造を示す断面図である。
【
図36】第4実施形態のクッション構造を示す断面図である。
【
図37】
図36のクッション構造に搭乗者による荷重が加わった状態を示す断面図である。
【
図38】第5実施形態のクッション構造を示す斜視図である。
【
図40】第6実施形態のクッション構造を示す斜視図である。
【
図42】第7実施形態において、ノズルからゲル状防止膜原料を立体網状構造部の内部に滴下させることにより、立体網状構造部の内部に含浸防止膜を形成する工程を示す斜視図である。
【
図43】
図42の工程により立体網状構造部の内部に含浸防止膜が形成された第7実施形態のクッション構造部品を示す斜視図である。
【
図44】第8実施形態において、立体網状構造部を光硬化溶液に浸漬し、溶液表面に光を照射することにより、立体網状構造部の内部に含浸防止膜を形成する工程を示す斜視図である。
【
図45】
図44の工程により立体網状構造部の内部に含浸防止膜が形成された第8実施形態のクッション構造部品を示す斜視図である。
【
図46】第9実施形態において、低硬度部を形成した立体網状構造部を示す斜視図である。
【
図47】
図46の立体網状構造部の側面に浸透膜が配置された第9実施形態のクッション構造部品を示す斜視図である。
【
図48】
図47のクッション構造部品を用いて製造されたクッション構造の
図30のx−x線による断面図に相当する図である。
【
図49】
図47のクッション構造部品を用いて製造されたクッション構造の
図30のy−y線による断面図に相当する図である。
【
図50】第10実施形態のクッション構造部品を示す斜視図である。
【
図51】
図50のクッション構造部品を用いて製造されたクッション構造の
図30のx−x線による断面図に相当する図である。
【
図52】
図50のクッション構造部品を用いて製造されたクッション構造の
図30のy−y線による断面図に相当する図である。
【
図53】第11実施形態のクッション構造を示す斜視図である。
【
図55】第12実施形態のクッション構造を示す斜視図である。
【
図57】第13実施形態のクッション構造の製造方法を示す断面図である。
【
図58】第14実施形態のクッション構造の製造方法を示す断面図である。
【
図59】第15実施形態の自動車のシートに使われるクッション構造を示す斜視図である。
【
図61】第15実施形態の自動車のシートバックに使われるクッション構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るクッション構造、クッション構造部品及びクッション構造の製造方法について詳細に説明する。本発明の実施形態に係るクッション構造は、弾力性を用いる物品に適用される。
図1に示すように、本発明の第1実施形態のクッション構造100aは、自動車のシートに適用されるものである。クッション構造100aは、自動車の搭乗者の臀部及び脚部を支持する。クッション構造100aは、クッション中央部106として、搭乗者の脚部を主に支持するクッション前部102と、搭乗者の臀部を主に支持するクッション後部104とを備える。クッション構造100aは、クッション中央部106の左右の両端にクッション側部108を備える。
【0036】
図1、
図1のX−X線による断面視である
図2及び
図1のY−Y線による断面視である
図3に示すように、クッション構造100aは、クッション後部104に、弾性を有する複数の樹脂の線材が互いに絡み合いながら湾曲しつつ複数の接着点で互いに接着されることにより形成された立体網状構造部11を備えている。クッション構造100aは、クッション前部102及びクッション側部108に、立体網状構造部11の側面15Sを囲繞するように配置され、液状の発泡体原料が発泡しつつ固化することにより形成された発泡体部41を備えている。クッション構造100aは、立体網状構造部11の開口部17を除いた下面15Bを覆うように配置された発泡体部41を備えている。
【0037】
クッション構造100aは、立体網状構造部11と発泡体部41との境界に配置された浸透膜21aを備えている。浸透膜21aは、立体網状構造部11の側面15S及び開口部17を除いた下面15Bに配置されている。後述するように、浸透膜21aは発泡体部41の発泡体原料が浸透可能であり、浸透膜21aを介して液状の発泡体原料が立体網状構造部11に含浸した後に固化したことにより、立体網状構造部11と発泡体部41とが接合されている。浸透膜21aを介して発泡体部41の液状の発泡体原料が含浸した後に固化した部位には、含浸部51が形成されている。
【0038】
クッション構造100aの表面は、表皮112により覆われている。表皮112は、通気性を有する素材により形成されている。
図1、2及び3に示すように、表皮112は、線材導入部110に封入された金属線材等の線材111、113及び線材111、113を束ねるCリング114によって、表面に皺が寄らないように張力を与えられている。
【0039】
線材導入部110は、含浸部51の近傍に位置している。また、
図3に示すように、一対の線材導入部110及び含浸部51は、搭乗者Cの臀部の硬さを感じにくい部位である中央から互いに約150mm離れた部位に配置されている。含浸部51の硬度は、立体網状構造部11の硬度と発泡体部41の硬度とを加算した硬度よりも高くなる。しかしながら、硬度が高い線材導入部110及び含浸部51を搭乗者Cの臀部の硬さを感じにくい部位に一緒に配置することにより、搭乗者Cの着座時の感触を向上させることができる。
【0040】
表皮112の下面は、発泡体の気泡の膜が除去されたシート状の無膜発泡体120が、溶融された後に表皮112の下面に貼り付けられるフレームラミネートによって積層されている。そのため、立体網状構造部11の上面15Uは、発泡体の気泡の膜が除去された無膜発泡体120により覆われている。
【0041】
クッション構造100aは、立体網状構造部11の下面15Bの開口部17の下方に、立体網状構造部11の下方から上方及び上方から下方のいずれかの方向に送風することが可能な送風部140をさらに備える。本実施形態では、立体網状構造部11が通気性に優れるため、パーソナルコンピュータ等で用いられる10mm程度の厚さのプロペラにより送風するプロペラタイプの送風機を送風部140に適用することができる。
【0042】
以下、本実施形態のクッション構造100aの製造方法について説明する。
図4に示すように、本実施形態の立体網状構造部11は直方体形状を有する。本実施形態の立体網状構造部11は、上面15U、側面15S及び下面15Bを有する。
図4及び
図5に示すように、本実施形態の立体網状構造部11は、弾性を有する複数の樹脂線材12が互いに絡み合いながら湾曲しつつ複数の接着点13で互いに接着されることにより形成されている。樹脂線材12は、熱可塑性樹脂により形成されている。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系、ポリエステル系ポリマー、ポリエステルエラストマー及びポリウレタン系ポリマーを適用することができる。
【0043】
樹脂線材12の外周径は0.1〜7mmとすることができる。樹脂線材12は、内部が中空の線材とすることができる。樹脂線材12の内部の中空率は5〜80%とすることができる。樹脂線材12によって立体網状構造部11を形成する際には、熱可塑性樹脂が押出機により溶融される。溶融された熱可塑性樹脂は、ノズルより複数の樹脂線材12として射出され、自然落下させられる。未だ溶融状態の間に複数の樹脂線材12を互いに接着点13で接着させる。接着された樹脂線材12が固化されることにより、立体網状構造部11を製造することができる。
【0044】
本実施形態では、
図6に示すようなクッション構造部品150aを用いてクッション構造100aが製造される。クッション構造部品150aは、上述した立体網状構造部11と、立体網状構造部11の側面15Sを囲繞するように配置され、発泡しつつ固化することにより発泡体を形成する液状の発泡体原料が浸透可能である浸透膜21aとを備えている。浸透膜21aは、立体網状構造部11の開口部17を除いた下面15Bにも配置されている。
【0045】
図7に示すように、浸透膜21aは、繊維22が織り込まれて形成された布である。浸透膜21aの繊維22は、表面が露出しないように塩化ビニル等の樹脂による樹脂被覆23により被覆されている。繊維22と繊維22との間には、発泡体原料が浸透可能な空隙部24を有する。浸透膜22aには、例えば、発泡塩化ビニル等により製造された滑り止めシート等を適用することができる。
【0046】
発泡体原料の立体網状構造部11への含浸量を調整するために、単位時間当たりに浸透膜21aを浸透する発泡体原料の量は適宜調整される。例えば、発泡体原料の立体網状構造部11への含浸量を調整するために、浸透膜21aが複数枚に重ねて立体網状構造部11の側面15S及び下面15Bに配置されていても良い。また、浸透膜22aの空隙部24の大きさを変更することにより、単位時間当たりに浸透膜21aを浸透する発泡体原料の量を調整することができる。例えば、
図8に示す浸透膜21bのように、繊維22を被覆する樹脂被覆23の量を増加させることにより、空隙部24の大きさをより小さくした浸透膜21bを製造することができる。
【0047】
なお、本実施形態では、浸透膜21aの代わりに、
図9に示すように、モノフィラメント繊維26により形成された不織布25である浸透膜21cを適用することができる。また、本実施形態では、浸透膜21aの代わりに、
図10に示すように、発泡体原料が浸透可能な孔部28を有する樹脂フィルム27である浸透膜21dを適用することができる。また、本実施形態では、
図11に示すように、浸透膜21aの代わりに、発泡体原料が浸透可能なスリット部29aを有する樹脂フィルム27である浸透膜21eを適用することができる。
【0048】
また、
図12に示すように、浸透膜21aの代わりに、樹脂フィルム27の表面において、頂部29pで屈曲したスリット部29bを有する樹脂フィルム27である浸透膜21fを適用することができる。樹脂フィルム27の表面において、互いに反対の方向に屈曲する一対のスリット部29b同士は、それぞれの頂部29p同士が互いに対向するように配置されている。後述するように、頂部29pで互いに対向する一対のスリット部29bは、互いに発泡体原料を方向Dに向けて浸透させる。これにより、一対の頂部29pが互いに対向するスリット部29bから浸透した発泡体原料は、少量であっても互いに他のスリット部29bから浸透した発泡体原料と結合し易くなる。
【0049】
あるいは、
図13に示すように、浸透膜21aの代わりに、樹脂フィルム27の表面において、頂部29pで湾曲したスリット部29cを有する樹脂フィルム27である浸透膜21gを適用することができる。樹脂フィルム27の表面において、互いに反対の方向に湾曲する一対のスリット部29c同士は、それぞれの頂部29pが互いに対向するように配置されている。湾曲したスリット部29cを有する浸透膜21gは、上記浸透膜21fと同様の作用を有する。
【0050】
また、
図14に示すように、浸透膜21aの代わりに、樹脂フィルム27の表面において、頂部29pで屈曲したスリット部29dを有する樹脂フィルム27である浸透膜21hを適用することができる。樹脂フィルム27の表面において、互いに同じ方向に屈曲する一対のスリット部29d同士は、それぞれの頂部29pが互いに同じ方向に向くように配置されている。後述するように、頂部29pで互いに同じ方向を向くスリット部29dは、互いに発泡体原料を同じ方向Dに向けて浸透させる。これにより、一対の頂部29pが互いに同じ方向を向くスリット部29dから浸透した発泡体原料は、浸透膜21hからより近い距離で固化し易くなる。
【0051】
あるいは、
図15に示すように、浸透膜21aの代わりに、樹脂フィルム27の表面において、頂部29pで湾曲したスリット部29eを有する樹脂フィルム27である浸透膜21iを適用することができる。樹脂フィルム27の表面において、互いに同じ方向に湾曲する一対のスリット部29e同士は、それぞれの頂部29pが互いに同じ方向を向くように配置されている。湾曲したスリット部29eを有する浸透膜21iは、上記浸透膜21hと同様の作用を有する。
【0052】
クッション構造部品150aを用いてクッション構造100aを製造する際には、
図16に示すように、上面15Uが下方に向き、下面15Bが上方を向くように反転させられたクッション構造部品150aが、クッション構造100aの形状に対応した上型300a及び下型300bの中に配置される。クッション構造部品150aの側面15Sの下縁部は、下型300bに設けられた突起300cの内面と嵌合する。突起300cの直上には、線材113が配置されている。クッション構造部品150の開口部17は、上型300aに設けられた突起300dにより、発泡体原料が入らないように塞がれる。本実施形態では、クッション構造部品150a以外は、既存のクッション構造を製造するために用いられる上型300a及び下型300b等を用いてクッション構造100aを製造することができる。
【0053】
図17に示すように、発泡しつつ固化することにより発泡体部41を形成する液状の発泡体原料40が下型300bの中に入れられる。
図17中に破線で示すように、発泡体原料40は、発泡しつつ上型300aまで膨張する。発泡体原料40が発泡する際に、下型300bの突起300cは、未だ十分に発泡していない発泡体原料40がクッション構造部品150aの側面15Sの下縁部を伝って上面15Uの広範囲に達することを防ぐ堰の機能を果たす。
【0054】
図18に示すように、発泡体原料40は、発泡しつつ上型300aの内面を満たすまで膨張する。これにより、浸透膜21aに接するように液状の発泡体原料40が配置される。
図19に示すように、浸透膜21aを介して発泡体原料40の一部が立体網状構造部11に含浸させられる。浸透膜21aの重ね合せた枚数又は空隙部24の大きさに応じた厚さの含浸部51が形成される。なお、本実施形態では、必要とされるクッション構造100aの弾性に応じて、発泡体原料40の全てが立体網状構造部11に含浸させられても良い。
【0055】
ここで、
図12に示したような頂部29pで屈曲したスリット部29bを有する樹脂フィルム27を浸透膜21fとして使用した場合は、
図20に示すように、頂部29pで互いに対向するスリット部29b同士は、互いに発泡体原料を方向Dに向けて浸透させる。これにより、一対の互いに頂部29pで対向するスリット部29bから浸透した発泡体原料は、少量であっても互いに他のスリット部29bから浸透した発泡体原料と結合し易くなる。そのため、より少ない含浸量により、より強い接合強度を得ることができる。
【0056】
あるいは、
図14に示したような頂部29pで屈曲したスリット部29dを有する樹脂フィルム27の浸透膜21hを浸透膜21aに替えて使用した場合は、
図21に示すように、頂部29pで互いに同じ方向を向くスリット部29d同士は、互いに発泡体原料を同じ方向Dに向けて浸透させる。これにより、一対の頂部29pが互いに同じ方向を向くスリット部29dから浸透した発泡体原料は、浸透膜21hからより近い距離で固化し易くなる。そのため、より少ない含浸量の含浸部51により、より強い接合強度を得ることができる。
【0057】
図22に示すように、発泡体原料40が固化することにより、発泡体部41が形成される。立体網状構造部11の含浸部51に含浸させられた発泡体原料40が固化することにより、立体網状構造部11と発泡体部41とが接合される。立体網状構造部11と発泡体部41とが接合された接合体160が上型300a及び下型300bから取り出される。接合体160の下型300bの突起300cに対応した位置には、線材導入部110を形成するための凹部115が形成される。凹部115の直下の発泡体部41内には、線材113が封入される。接合体160の上型300aの突起300dに対応した位置には、送風部140を配置するための凹部116が形成される。
【0058】
図23及び
図24に示すように、下面にフレームラミネートによって無膜発泡体120が積層された表皮112が、接合体160の表面に取付けられる。表皮112の下面の凹部115に対応する位置には、線材111が垂下されている。
図25に示すように、無膜発泡体120は、発泡体の気泡の膜がセル膜除去部122において除去されている。発泡体の気泡それぞれは、セル壁121のみで接続されている。無膜発泡体120は、例えば、ポリウレタン発泡体を原料から発泡させた後に、ポリウレタン発泡体の気泡の膜に除膜処理を行うことによって製造される。除膜処理は、ポリウレタン発泡体に酸素を注入して点火することによって気泡の膜を爆破する爆破処理により行うことができる。
【0059】
図26に示すように、表皮112が接合体160の表面に取付けられる際に、表皮112の下面の線材111が、接合体160の凹部115に挿入される。柔軟性を有する発泡体部41の外部からCリング114が挿入される。発泡体部41の凹部115の直下に封入された線材113と線材111とを束ねるように、Cリング114が締められる。このようにして、表皮112は、線材導入部110に封入された線材111、113及びCリング114によって、表面に皺が寄らないように張力を与えられる。また、送風部140が、凹部116に取付けられる。
【0060】
本実施形態によれば、立体網状構造部11と発泡体部41との境界に浸透膜21aが配置されている。浸透膜21aは液状の発泡体原料40が浸透可能であり、浸透膜21aを介して発泡体原料40が立体網状構造部11に含浸した後に固化したことにより、立体網状構造部11と発泡体部41とが接合されている。立体網状構造部11に含浸させられた発泡体原料40は、立体網状構造部11の複数の樹脂線材12と広い面積で接しつつ固化させられる。このため、立体網状構造部11と発泡体部41との接合強度を向上させたクッション構造100aを提供することができる。すなわち、本実施形態では、立体網状構造部11と発泡体部41との接合強度は、母材である発泡体部41の強度以上となる。そのため、車両用のシートに要求される耐久性を確保することができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、浸透膜21a,21bは繊維22により形成された布であり、布を形成する繊維22は表面が露出しないように樹脂被覆23により被覆されている。このため、発泡体原料40が浸透膜21a,21bを介して立体網状構造部11に含浸する際に、発泡体原料40の気泡が布を形成する繊維22の凹凸により消滅し難い。よって、発泡体原料40の気泡が消滅することにより、立体網状構造部11の発泡体原料40が含浸した含浸部51が他の部分に比べて硬化することを防止することができる。そのため、クッション構造100aは全体として硬さのバラツキが少ないものとでき、クッション構造100aの感触を向上させることができる。
【0062】
あるいは、本実施形態では、浸透膜21cは、モノフィラメント繊維26により形成された不織布25である。モノフィラメント繊維26は、マルチフィラメントの繊維のような表面の凹凸が無い。また、不織布25は、織物の布に比べて発泡体原料40が浸透する部分の凹凸が少ない。このため、発泡体原料40が浸透膜21cを介して立体網状構造部11に含浸する際に、発泡体原料40の気泡が布を形成する繊維の凹凸により消滅し難い。よって、発泡体原料40の気泡が消滅することにより、立体網状構造部11の発泡体原料40が含浸した含浸部51が他の部分に比べて硬化することを防止することができる。
【0063】
あるいは、本実施形態では、浸透膜21dは孔部28を有する樹脂フィルム27である。また、浸透膜21e〜21iはスリット部29を有する樹脂フィルム27である。樹脂フィルム27は、織物の布のような繊維による凹凸が無い。このため、発泡体原料40が浸透膜21d〜21iを介して立体網状構造部11に含浸する際に、発泡体原料40の気泡が布を形成する繊維の凹凸により消滅しない。よって、発泡体原料40の気泡が消滅することにより、立体網状構造部11の発泡体原料40が含浸した含浸部51が他の部分に比べて硬化することを防止することができる。
【0064】
また、上述したように、屈曲したスリット部29bを有する樹脂フィルム27である浸透膜21f又は湾曲したスリット部29cを有する樹脂フィルム27である浸透膜21gを適用した場合は、一対の互いに対向するスリット部29b,29cから浸透した発泡体原料40は、少量であっても互いに他のスリット部29b,29cから浸透した発泡体原料40と結合し易くなる。そのため、より少ない含浸量の含浸部51により、より強い接合強度を得ることができる。そのため、含浸部51の幅を狭くすることができる。これにより、クッション構造100aにおいて、硬度の高い部分を少なくし、搭乗者Cの着座の感触を向上させることができる。
【0065】
あるいは、上述したように、屈曲したスリット部29dを有する樹脂フィルム27である浸透膜21h又は湾曲したスリット部29eを有する樹脂フィルム27である浸透膜21iを適用した場合は、一対の互いに同じ方向を向いているスリット部29d,29eから浸透した発泡体原料40は、浸透膜21h,21iからより近い距離で固化し易くなる。そのため、より少ない含浸量の含浸部51により、より強い接合強度を得ることができる。これにより、クッション構造100aにおいて、硬度の高い部分を少なくし、搭乗者Cの着座の感触を向上させることができる。
【0066】
また、本実施形態では、立体網状構造部11の上面15Uは、発泡体の気泡の膜が除去された無膜発泡体120により覆われている形態をとることもできる。このため、通気性を維持しつつ、立体網状構造部11の上面15Uの柔軟性を高めることができる。
【0067】
また、本実施形態では、立体網状構造部11の下方に、立体網状構造部11の下方から上方及び上方から下方のいずれかの方向に送風することが可能な送風部140をさらに備える。このため、通気性をさらに向上させることができる。従来の空調シート構造はシートの発泡体のパッドに溝を彫り、溝に空気を送り込む構造のものがある。このような構造では、空気を送り込む際の圧力損失が大きいため、通常のプロペラにより送風するプロペラタイプの送風機では送風が困難である。そのため、このような構造では、シロッコファンに代表される遠心ファンタイプの送風機が使用されている。しかし、遠心ファンタイプの送風機は、構造そのものがプロペラタイプの送風機に比べて大きく、重く、騒音が大きく、高価である。このような遠心ファンタイプの送風機を用いた場合、送風機がパッドの下面から大きく突起するため、樹脂のカバー等で送風機を覆うことが必要である。また、固定具や通風ダクトなど多数のパーツを追加する必要もでてくる。
【0068】
近年、環境への関心の高まりなどにより、自動車の低燃費技術の一つとして停車時にエンジンを停止することが提唱されている。停車時にエンジンが停止されると、停車時に空調装置も停止するため、搭乗者の暑苦しさを改善することが要求されている。本実施形態では、少ない消費電力で駆動させることが可能なプロペラタイプの送風機を送風部140として使用することができる。そのため、停車時にエンジンが停止されたとしても、安価な構成で搭乗者の暑苦しさを十分に改善することができる。また、騒音も小さくすることができる。また、プロペラタイプの送風機は小型であるため、空調が考慮されていない通常の車両用シートと同様の空間に本実施形態のクッション構造100aを配置することができる。
【0069】
また、本実施形態では、送風部140が備えられていなくとも、立体網状構造部11の通気性が優れるため、停車時にエンジンが停止されたとしても、さらに安価な構成で搭乗者の暑苦しさを改善することができる。さらに、本実施形態では、自動車に送風部140を備えないクッション構造100aを最初に搭載したとしても、ユーザの好みにより、容易に送風部140を追加することが可能である。
【0070】
本実施形態では、パーソナルコンピュータ等で用いられる10mm程度の厚さのプロペラタイプの送風機を送風部140として使用することができる。そのため、送風部140を配置するために発泡体部41をくり抜いた凹部116を小さくすることができる。そのため、送風部140を備えないクッション構造100a及び送風部140を備えないクッション構造100aのいずれも、一つの上型300a及び下型300bで製造することができる。なお、立体網状構造部11は、樹脂線材12が互いに溶着し合っているため、剛性が高い。そのため、送風部140を備えないクッション構造100aにおいて、後に送風部140を配置するために発泡体部41をくり抜いた凹部116があったとしても、搭乗者Cに凹部116があることを感じさせないことができる。
【0071】
また、本実施形態では、開口部17を除いた立体網状構造部11の下面15Bまで含浸部51が形成される。含浸部51は、立体網状構造部11よりも剛性を有するため、立体網状構造部11の下面15Bの凹部116による違和感が解消される。また、下面15Bの含浸部51により、送風部140により下方から上方に送風された空気が下方及び側方に逃げることを防止することができる。そのため送風部140の送風の効率を向上させることができる。
【0072】
さらに、本実施形態では、クッション構造部品150aは、立体網状構造部11と、立体網状構造部11の側面15Sを囲繞するように配置され、発泡しつつ固化することにより発泡体部41を形成する液状の発泡体原料40が浸透可能である浸透膜21aとを備える。このため、クッション構造部品150aの浸透膜21aに接するように液状の発泡体原料40を配置し、浸透膜21aを介して発泡体原料40を立体網状構造部11に含浸させ、発泡体原料40を固化させることにより、容易に立体網状構造部11と発泡体部41とがより強い接合強度で接合されたクッション構造100aを製造することができる。本実施形態では、クッション構造部品150aを用いることにより、既存の生産設備により、クッション構造100aを製造することができる。立体網状構造部11は加工し難いため、上記特許文献1のように立体網状構造部11を任意の形状に加工することは難しい。しかし、本実施形態では、立体網状構造部11を複雑な形状に加工する必要が無く、生産性に優れる。
【0073】
つまり、本実施形態では、クッション構造部品150aを上型300a及び下型300bの中に配置した後に通常の発泡工程を行うだけで、立体網状構造部11と発泡体部41との接合体160が完成する。このため、追加の工程が無く、必要な部分のみに空気透過性の良い立体網状構造部11を提供することができる。よって、クッション構造100aの生産性を向上させることができる。
【0074】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態について説明する。
図27に示すように、本実施形態のクッション構造100bでは、表皮112の下面に無膜発泡体120が積層されていない。無膜発泡体120の代わりに、クッション構造100bでは、立体網状構造部11の上面15Uは、空気が流通可能な通風孔部131が形成された発泡体130により覆われている。発泡体130は、例えば、厚さ10mm程度の板状のポリウレタン発泡体に、空気が流通可能な通風孔部131が穿設されたものとできる。
【0075】
図28に示すように、クッション構造100bの製造時には、上記第1実施形態と同様にして製造された接合体160の立体網状構造部11の上面15Uに発泡体130が配置される。発泡体130が配置された後に、下面に無膜発泡体120が積層されていない表皮112が接合体160の表面に取付けられる。上記第1実施形態と同様に、表皮112の下面の凹部115に対応する位置には、線材111が垂下されている。
【0076】
図29に示すように、表皮112が接合体160の表面に取付けられる際に、表皮112の下面の線材111が、接合体160の凹部115に挿入される。柔軟性を有する発泡体部41の外部からCリング114が挿入される。発泡体部41の凹部115の直下に封入された線材113と線材111とを束ねるように、Cリング114が締められる。このようにして、表皮112は、線材導入部110に封入された線材111、113及びCリング114によって、表面に皺が寄らないように張力を与えられる。また、送風部140が、凹部116に取付けられる。
【0077】
本実施形態では、立体網状構造部11の上面15Uは、空気が流通可能な通風孔部131が形成された発泡体130により覆われている。このため、通気性を維持しつつ、立体網状構造部11の上面15Uの柔軟性を高めることができる。
【0078】
(第3実施形態)
以下、本発明の第3実施形態について説明する。
図30、
図31及び
図32に示すように、本実施形態のクッション構造100cでは、立体網状構造部11の下面15Bに送風部140を備えていない点が上記第1及び第2実施形態と異なる。立体網状構造部11の下面15Bには、含浸部51は形成されていない。発泡体部41は、凹部116を有しない。
【0079】
本実施形態では、
図33に示すようなクッション構造部品150bを用いてクッション構造100cが製造される。クッション構造部品150bは、上述した立体網状構造部11と、立体網状構造部11の側面15Sを囲繞するように配置された浸透膜21aとを備えている。なお、本実施形態では、浸透膜21aに替えて、上述した浸透膜21b〜21gを適用することができる。
【0080】
クッション構造部品150bを用いてクッション構造100cを製造する際には、
図34に示すように、上面15Uが下方に向き、下面15Bが上方を向くように反転させられたクッション構造部品150bが、クッション構造100cの形状に対応した上型300A及び下型300bの中に配置される。本実施形態では、上型300Aには、上記第1実施形態の上型300aのような突起300dは設けられていない。
【0081】
上型300A及び下型300bにクッション構造部品150bが配置された後は、上記第1及び第2実施形態と同様にして、クッション構造100cを製造することができる。上記第1実施形態のように、立体網状構造部11の上面15Uは、表皮112の下面に積層された無膜発泡体120により覆われている形態にできる。また、上記第2実施形態のように、立体網状構造部11の上面15Uは、空気が流通可能な通風孔部131が形成された発泡体130により覆われている形態にできる。
【0082】
なお、本実施形態では、送風部140を配置するための発泡体部41をくり抜いた凹部116が設けられていない。しかし、凹部116が設けられていなくとも、発泡体部41と発泡体部41を支えるS字構造ばねの間に送風部140を挟み込むことで、送風部140を配置することができる。あるいは、モールド用ファスナーを用いた通気性の不織布によって、送風部140を固定することができる。
【0083】
(第4実施形態)
以下、本発明の第4実施形態について説明する。近年、ハイブリッド車や電気自動車などで、バッテリーの搭載などにより、自動車の床下のスペースがより大きく使われる傾向がある。自動車の空気抵抗の低減のために、自動車のルーフの高さを低く抑える必要がある。そのため、
図35に示すように、自動車のシートの下部にバッテリーBが配置されることがある。このような場合、発泡体部41を備えたクッション構造10の厚みtを十分に取れないことが多い。
【0084】
そこで、本実施形態では、
図36に示すように、薄い厚みtを有する発泡体部41と、発泡体部41の内部に、発泡体部41より強い弾性を有する立体網状構造部11を備えたクッション構造100dがシートとして適用される。クッション構造100dは、立体網状構造部11と発泡体部41との境界に、浸透膜21hを備える。浸透膜21hは、一般的な不織布が適用される。上記第1〜第3実施形態と同様に、浸透膜21hは、液状の発泡体原料40が浸透可能である。浸透膜21hを介して液状の発泡体原料40が立体網状構造部11に含浸した後に固化したことにより、含浸部51が形成され、立体網状構造部11と発泡体部41とが接合されている。
【0085】
しかし、上記浸透膜21a〜21gに比べて、一般的な不織布からなる浸透膜21hを浸透した発泡体原料40は含浸部51をより高い硬度で硬化させる。このため、含浸部51の硬度を高め、かつ含浸部51の厚みを小さくすることができる。含浸部51の硬度を高めたとしても、発泡体部41の表面の柔軟性は悪化しない。
【0086】
図37に示すように、搭乗者Cがクッション構造100dに着座したときには、強い弾性を有する立体網状構造部11により、発泡体部41のみのクッション構造10に比べて、搭乗者Cに薄い厚みtを感じさせないことができる。また、含浸部51が発泡体部41中に浮く補強材の役目を果たすことにより、搭乗者Cの臀部の下の局部的な荷重Pの集中を立体網状構造部11及びその周辺の発泡体部41へ分散させることができる。
【0087】
(第5実施形態)
以下、本発明の第5実施形態について説明する。
図38に示すように、本実施形態のクッション構造200aは、自動車のシートバックに適用されるものである。
図38では、表皮112により表面が未だ覆われていない状態を示している。クッション構造200aは、その上部にシートバック上部202を備える。クッション構造200aは、その中央部であってシートバック上部202の下部にシートバック中部204を備える。クッション構造200aは、シートバック上部202及びシートバック中部204の左右にシートバック側部206を備える。クッション構造200aは、シートバック上部202、シートバック中部204及びシートバック側部206それぞれの境界に凹部215を有する。凹部215には、上記第1〜第2実施形態と同様の線材導入部110が形成される。
【0088】
図38及び
図38のZ−Z線による断面視である
図39に示すように、クッション構造200aは、シートバック中部204に立体網状構造部11を備えている。クッション構造200aは、シートバック上部202及びシートバック側部206に発泡体部41を備えている。クッション構造200aは、立体網状構造部11と発泡体部41との境界に配置された浸透膜21aを備えている。なお、本実施形態では、浸透膜21aに替えて、上述した浸透膜21b〜21gを適用することができる。
【0089】
上記第1〜第4実施形態と同様に、浸透膜21aを介して発泡体部41の液状の発泡体原料が含浸した後に固化した部位には、含浸部51が形成されている。上記第1〜第3実施形態と同様に、含浸部51は凹部215の近傍に位置している。上記第1実施形態のように、立体網状構造部11の表面は、表皮112の下面に積層された無膜発泡体120により覆われている形態にできる。また、上記第2実施形態のように、立体網状構造部11の表面は、空気が流通可能な通風孔部131が形成された発泡体130により覆われている形態にできる。
【0090】
クッション構造200aを製造する際には、上記第3実施形態と同様のクッション構造部品150bをシートバックの形状に対応した型に入れた後に、上記第3実施形態と同様の発泡工程を行うことにより、クッション構造200aを製造することができる。
【0091】
本実施形態では、シートバックに適用されるクッション構造200aにおいて、上記第1〜第4実施形態と同様に、強度、耐久性、感触及び通気性を向上させることができる。
【0092】
(第6実施形態)
以下、本発明の第6実施形態について説明する。
図40に示すように、本実施形態のクッション構造200bは、シートバック中部204に開口部220を有する点が上記第6実施形態と異なる。
図40及び
図40のz−z線による断面視である
図41に示すように、開口部220の底部では、発泡体部41、含浸部51及び浸透膜21aは無く、立体網状構造部11が露出している。開口部220は、上記第1実施形態のクッション構造100aの凹部116と同様にして形成することができる。
【0093】
本実施形態では、シートバックに適用されるクッション構造200bにおいて、開口部220により、さらに通気性を向上させることができる。
【0094】
(第7実施形態)
以下、本発明の第7実施形態について説明する。上記第1〜6実施形態では、浸透膜21a〜21gを浸透する発泡体原料40の量を設定することにより、含浸部51の厚さである含浸量を設定した。
図42に示すように、本実施形態では、立体網状構造部11の内部に発泡体原料40が浸透不可能な含浸防止膜61を形成することにより、含浸量が設定される。立体網状構造部11の内部における所望の含浸部51の終端部に、ノズル65から任意の粘度に調整されたゲル状防止膜原料62が滴下される。ゲル状防止膜原料62には、熱可逆性エラストマー、揮発性ジェル及び光硬化樹脂などを適用することができる。立体網状構造部11に発泡体部41を接合するために必要最小限の含浸量に対応する位置に、発泡体原料40が浸透不可能な含浸防止膜61を形成することにより、上記第1実施形態の浸透膜21a〜21gを配置することと同様の効果を奏する。
【0095】
図43に示すように、立体網状構造部11の側面15Sそれぞれから必要最小限の含浸量に対応する位置に含浸防止膜61が形成されたクッション構造部品150cが製造される。クッション構造部品150cは、上記第3実施形態のクッション構造部品150bと同様に用いられることにより、クッション構造100cを製造することができる。
【0096】
(第8実施形態)
以下、本発明の第8実施形態について説明する。本実施形態では、
図44に示すように、立体網状構造部11は、溶液槽66内の光硬化溶液63に所望の含浸量の深さに浸漬させられる。立体網状構造部11が光硬化溶液63に浸漬させられた状態で、溶液表面64に光源67から光が照射され、溶液表面64のみが硬化させられる。これにより、立体網状構造部11の内部に含浸防止膜61を形成することができる。光硬化溶液63以外にも、乳酸カルシウム水溶液中に立体網状構造部11を所望の含浸量の深さに浸漬させつつ、アルギン酸ナトリウム水溶液等を乳酸カルシウム水溶液の表面に噴霧することによっても、立体網状構造部11の内部に含浸防止膜61を形成することができる。
【0097】
図45に示すように、立体網状構造部11の側面15Sそれぞれから必要最小限の含浸量に対応する位置に含浸防止膜61が形成されたクッション構造部品150dが製造される。クッション構造部品150dは、上記第3実施形態のクッション構造部品150bと同様に用いられることにより、クッション構造100cを製造することができる。
【0098】
(第9実施形態)
以下、本発明の第9実施形態について説明する。含浸部51の硬度は、立体網状構造部11の網状の樹脂同士が発泡体部41により架橋されるため、立体網状構造部11と発泡体部41との硬度を加算したものよりも高くなる。含浸部51の硬度と、立体網状構造部11及び発泡体部41との硬度の差を少なくするために、
図46に示すように、立体網状構造部11の含浸部51が形成される部位に、立体網状構造部11の全体の硬度よりも硬度を低くした低硬度部16を形成することができる。
【0099】
低硬度部16は、立体網状構造部11の製造時に、低硬度部16の部分において、成型に用いるノズルを変更し、ノズルから射出される樹脂の線材の径を細くすることにより形成することができる。また、立体網状構造部11が、全体として成型に用いるノズルから内部が中空の樹脂の線材が射出されることにより製造されている場合は、低硬度部16の部分において、成型に用いるノズルを変更し、低硬度部16以外の部分よりも直径が細く、中空ではない樹脂の線材が射出されることにより、低硬度部16を形成することができる。
【0100】
立体網状構造部11の素材は低硬度部16と低硬度部16以外の箇所とで同一とされる。このため、立体網状構造部11及び発泡体部41との接合力は低下することが無い。また、低硬度部16を含浸部51とすることで、含浸部51の硬度と、立体網状構造部11及び発泡体部41との硬度の差を少なくすることができる。
【0101】
図47に示すように、
図46の立体網状構造部11の側面15Sそれぞれを浸透膜21aで覆うことにより、クッション構造部品150eが製造される。なお、本実施形態では、浸透膜21aに替えて、上述した浸透膜21b〜21gを適用することができる。クッション構造部品150eは、上記第3実施形態のクッション構造部品150bと同様に用いられることにより、
図48及び
図49に示すようなクッション構造100eを製造することができる。クッション構造100eでは、低硬度部16に含浸部51が形成されるため、含浸部51に発泡体原料40が含浸したことによる硬度の上昇による搭乗者の異物感を低減することができる。
【0102】
(第10実施形態)
以下、本発明の第10実施形態について説明する。
図50に示すように、本実施形態のクッション構造部品150gでは、
図4の立体網状構造部11の側面15Sそれぞれが発泡体原料40が浸透可能な孔部28を有する樹脂フィルム27である浸透膜21dで覆われている。浸透膜21dは、側面15Sの下部の孔領域Qにのみ孔部28が設けられている。そのため、側面15Sの下部からのみ発泡体原料40は浸透可能であり、側面15Sの上部からは発泡体原料40は浸透不可能である。浸透膜21dは、側面15Sの一部からのみ発泡体原料40を浸透させる。なお、孔領域Qの大きさは適宜任意の範囲に設定することができる。
【0103】
クッション構造部品150gは、上記第3実施形態のクッション構造部品150bと同様に用いられることにより、
図51及び
図52に示すようなクッション構造100fを製造することができる。クッション構造100fでは、立体網状構造部11の下部の孔領域Qにのみ含浸部51が形成される。本実施形態では、立体網状構造部11の下部にのみ含浸部51が形成され、搭乗者Cが着座したときに搭乗者Cに近い立体網状構造部11の上部には含浸部51が形成されない。そのため、発泡体原料40が含浸したことにより硬度が上昇した含浸部51による搭乗者Cの異物感を低減することができる。
【0104】
(第11実施形態)
以下、本発明の第11実施形態について説明する。
図53及び
図53のx−x線による断面視である
図54に示すように、本実施形態のクッション構造100gは、クッション後部104に加えてクッション前部102の全体に立体網状構造部11を備えている。クッション中央部106の立体網状構造部11とクッション側部108との境界に含浸部51が形成されている。
図54に示すように、立体網状構造部11とクッション後部104の発泡体部41との境界に含浸部51が形成されている。なお、
図53のy−y線による断面視については、上述の
図32と同様であるため、図示を省略する。クッション構造100gの製造時には、
図4の立体網状構造部11の3つの側面15Sに上述した浸透膜21a〜21iや、含浸防止膜61を形成したクッション構造部品を適用することができる。
【0105】
本実施形態では、搭乗者Cが着座したときに搭乗者Cの太腿の下面が接触するクッション前部102の全体に立体網状構造部11を備えているため、搭乗者Cの太腿の下面での大幅に通気性が向上し、搭乗者Cの清涼感が向上する。
【0106】
(第12実施形態)
以下、本発明の第12実施形態について説明する。
図55及び
図55のx−x線による断面視である
図56に示すように、本実施形態のクッション構造100hは、クッション後部104に加えてクッション前部102の上部に立体網状構造部11を備えている。クッション前部102の下部は上記第3実施形態と同様に、発泡体部41を備えている。
【0107】
クッション中央部106の立体網状構造部11とクッション側部108との境界に含浸部51が形成されている。
図56に示すように、立体網状構造部11とクッション後部104の発泡体部41との境界に含浸部51が形成されている。また、クッション後部104の立体網状構造部11とクッション前部102の下部の発泡体部41との境界に含浸部51が形成されている。また、クッション前部102の上部の立体網状構造部11とクッション前部102の下部の発泡体部41との境界に含浸部51が形成されている。なお、
図53のy−y線による断面視については、上述の
図32と同様であるため、図示を省略する。
【0108】
クッション前部102の上部及びクッション後部104の形状に加工された立体網状構造部11の発泡体部41との境界となる面に上述した浸透膜21a〜21iや、含浸防止膜61を形成したクッション構造部品を適用することができる。
【0109】
本実施形態では、搭乗者Cが着座したときに搭乗者Cの太腿の下面が接触するクッション前部102の上部に立体網状構造部11を備えているため、搭乗者Cの太腿の下面での通気性が向上し、搭乗者Cの清涼感が向上する。また、クッション前部102の下部には発泡体部41を備えるため、搭乗者Cの着座時の違和感が低減される。
【0110】
(第13実施形態)
以下、本発明の第13実施形態について説明する。
図57に示すように、本実施形態では、上記第1実施形態の浸透膜21a〜21iや、上記第2実施形態及び第3実施形態の含浸防止膜61を用いず、立体網状構造部11と発泡体原料40を配置する位置との距離Lを変更することにより、含浸量を制御する。例えば、発泡体原料40をノズル70から上型300a及び下型300bの中に吐出する位置を、上型300a及び下型300bの中の立体網状構造部11から最も遠い位置に設定する。これにより、
図57中で破線により示すように、立体網状構造部11に到達する前に発泡の過程にある発泡体原料40の表面粘度を上げることで、含浸量を一定かつ最小に制御することが可能となる。なお、本実施形態の製造方法は、上記第1実施形態の浸透膜21a〜21iを用いる場合にも適用することができる。
【0111】
(第14実施形態)
以下、本発明の第14実施形態について説明する。
図58に示すように、本実施形態では、上記第1実施形態の浸透膜21a〜21iや、上記第2実施形態及び第3実施形態の含浸防止膜61を用いず、下型300b内で立体網状構造部11と発泡体原料40との間に設けられた突起物である突起300cの高さHを変更することにより、含浸量を制御する態様を示す図である。突起300cは、下型300b内で立体網状構造部11の下端部に接しつつ保持する。立体網状構造部11の下端部からの突起300cの上端部の高さHは1mm〜50mmに設定される。突起300cは、発泡する前の発泡体原料40の立体網状構造部11への流入を防止する。
【0112】
図58中で破線により示すように、発泡体原料40の水平方向への発泡を抑制し、立体網状構造部11に含浸する前に垂直方向への発泡が進行し、上型300a及び下型300bの中の空隙に充満したのちに余剰の発泡分が立体網状構造部11に含浸することで、発泡体原料40の投入量の調整のみで含浸量を一定かつ最小に制御することが可能となる。なお、本実施形態の製造方法は、上記第1実施形態の浸透膜21a〜21iを用いる場合にも適用することができる。
【0113】
(第15実施形態)
以下、本発明の第15実施形態について説明する。
図59及び
図59のx−x線による断面視である
図60及び
図61及び
図61のz−z線による断面視である
図62に示すように、本実施形態の自動車のシートに用いられるクッション構造100i及び自動車のシートバックに用いられるクッション構造200cは、人体に接する全体に立体網状構造部11を備えている。
図59、
図61及び
図62では、表皮112により表面の一部又は全部が覆われていない状態を示している。この第15実施形態にて配置される立体網状構造部11は厚みを50mm以下と薄くすることでクッションの意匠面に沿って湾曲可能であり、特段の成形加工を必要としない。
図60及び
図62に示すように、立体網状構造部11と発泡体部41との境界に含浸部51が形成されている。クッション構造100i及びクッション構造200cの製造時には、
図4の立体網状構造部11の3つの側面15Sに上述した浸透膜21a〜21iや、含浸防止膜61を形成したクッション構造部品を適用することができる。
【0114】
本実施形態では、
図60の形態においては搭乗者Cが着座したときに搭乗者Cの臀部及び太腿の下面が接触するクッション前部102及びクッション後部104の全体に立体網状構造部11を備えており、
図62の形態においては搭乗者Cが着座したときに搭乗者Cの背中が接するシートバック上部202及びシートバック中部204の全体立体網状構造部11を備えているため、搭乗者Cの臀部及び太腿の下面、背中全体の大幅に通気性が向上し、搭乗者Cの清涼感が向上する。通気性を有する素材をクッション表面に施設する方法は従来から知られているが、本構造により、接着などによる加工費用低減、生産性向上、接合強度の向上ができる。
【0115】
尚、本発明の実施形態のクッション構造、クッション構造部品及びクッション構造の製造方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の実施形態の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、自動車のシートあるいはシートバックに用いられるクッション構造について中心に説明した。しかし、実施形態のクッション構造、クッション構造部品及びクッション構造の製造方法は、椅子、ベッド、まくら等の他の弾力性を用いる物品にも適用可能である。