特許第6294143号(P6294143)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6294143-汚泥乾燥設備 図000002
  • 特許6294143-汚泥乾燥設備 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6294143
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】汚泥乾燥設備
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/12 20060101AFI20180305BHJP
   F26B 23/00 20060101ALI20180305BHJP
   F26B 21/04 20060101ALI20180305BHJP
   C04B 7/38 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   C02F11/12 B
   F26B23/00 A
   F26B21/04 A
   C04B7/38
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-91807(P2014-91807)
(22)【出願日】2014年4月25日
(65)【公開番号】特開2015-208716(P2015-208716A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2017年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(74)【代理人】
【識別番号】100129610
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 暁子
(72)【発明者】
【氏名】藤田 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】川村 忠義
(72)【発明者】
【氏名】金子 信明
(72)【発明者】
【氏名】松内 孝夫
【審査官】 松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−066095(JP,A)
【文献】 特開2003−181324(JP,A)
【文献】 特開2002−273492(JP,A)
【文献】 特開2008−114173(JP,A)
【文献】 特開2004−066094(JP,A)
【文献】 特開平02−293100(JP,A)
【文献】 米国特許第04245570(US,A)
【文献】 特表2013−540051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00− 11/20
F26B 1/00− 25/22
C04B 2/00− 32/02
C04B 40/00− 40/06
B09B 1/00− 5/00
B09C 1/00− 1/10
B02C 9/00− 11/08
B02C 19/00− 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥供給源と、
セメント製造設備の廃熱を熱源とし、循環空気を昇温させる熱交換器であって、前記廃熱は前記セメント製造設備のロータリーキルンの下流側に接続されたガスライン経由で供給されるものである、熱交換器と、
前記循環空気により汚泥を乾燥させるとともに、この汚泥を解砕する解砕機と、
前記解砕機の上流と下流とを接続する汚泥循環路と、
前記汚泥循環路であって前記解砕機の下流側に設けられた固気分離手段と、
前記汚泥循環路とは別途設けられ、前記固気分離手段の下流から乾燥後の汚泥を一部外部に排出する分岐手段と
を備え、
前記汚泥循環路であって前記固気分離手段の下流側に設けられ、乾燥後の汚泥と、前記汚泥供給源から供給された乾燥前の汚泥とを混合し、排出する混合機と、
前記汚泥循環路であって前記熱交換器と接続し、前記混合機の下流側に前記循環空気を供給する配管接続部と
を有し、
前記汚泥循環路に接続し、昇温前の前記循環空気を前記熱交換器に供給するとともに、昇温後の前記循環空気を前記汚泥循環路に戻す熱交換ラインと、
前記熱交換ラインと並列に設けられ、前記熱交換器を介さずに前記循環空気を前記汚泥循環路に戻すバイパスラインと
をさらに備え、
前記配管接続部と前記熱交換器との間に設けられ、解砕機入口温度を計測する温度計測手段と、
前記熱交換ラインに供給される循環空気の供給量を制御する制御手段と
をさらに設け、
前記解砕機は、前記汚泥循環路であって前記配管接続部の下流側に設けられ、
前記制御手段は、前記解砕機入口温度に基づき前記熱交換ラインに供給される循環空気の供給量を制御すること
を特徴とする汚泥乾燥設備。
【請求項2】
請求項に記載の汚泥乾燥設備において、
前記乾燥後の汚泥は、セメント製造設備に供給されること
を特徴とする汚泥乾燥設備。
【請求項3】
請求項1または2に記載の汚泥乾燥設備において、
前記制御手段は、前記解砕機入口温度の目標値と実際値の差に基づき、前記熱交換器へ供給する循環空気の供給量を制御すること
を特徴とする汚泥乾燥設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温の乾燥用ガスにより汚泥を乾燥させる汚泥乾燥設備に関し、特に、乾燥排ガスの温度変動を低減し、系全体の処理能力の安定化を図ることができる汚泥乾燥設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家畜ふん尿や下水汚泥といった汚泥廃棄物(単に「汚泥」ともいう)を、乾燥機で乾燥させ、それにより得られた乾燥固形物を燃料等に利用することが知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、汚泥廃棄物を乾燥用ガスとともに搬送し、解砕機で解砕した後、次いで、固気分離装置で固気分離するとともに、分離されたガスの一部を再び乾燥用ガスとして循環させる処理設備が開示されている。また、同文献では、乾燥用熱風(燃焼排ガスと循環ガスの混合ガス)の温度として、例えば、約300℃程度が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−65476号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように高温のガスを循環させて湿潤廃棄物の乾燥を行う設備においては、乾燥排ガスの温度をコントロールすることが系全体の処理能力の安定化等の観点から重要となる。
【0006】
本発明はそのような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、乾燥排ガスの温度変動を低減し、系全体の処理能力の安定化を図ることができる汚泥乾燥設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一形態の汚泥乾燥設備は下記の通りである。
【0008】
汚泥供給源と、
循環空気を昇温させる熱交換器と、
前記循環空気により汚泥を乾燥させるとともに、この汚泥を解砕する解砕機と、
前記解砕機の上流と下流とを接続する汚泥循環路と、
前記汚泥循環路であって前記解砕機の下流側に設けられた固気分離手段と、
前記汚泥循環路とは別途設けられ、前記固気分離手段の下流から乾燥後の汚泥を一部外部に排出する分岐手段と
を備え、
前記汚泥循環路であって前記固気分離手段の下流側に設けられ、乾燥後の汚泥と、前記汚泥供給源から供給された乾燥前の汚泥とを混合し、排出する混合機と、
前記汚泥循環路であって前記熱交換器と接続し、前記混合機の下流側に前記循環空気を供給する配管接続部と
を有し、
前記汚泥循環路に接続し、昇温前の前記循環空気を前記熱交換器に供給するとともに、昇温後の前記循環空気を前記汚泥循環路に戻す熱交換ラインと、
前記熱交換ラインと並列に設けられ、前記熱交換器を介さずに前記循環空気を前記汚泥循環路に戻すバイパスラインと
をさらに備え、
前記配管接続部と前記熱交換器との間に設けられ、解砕機入口温度を計測する温度計測手段と、
前記熱交換ラインに供給される循環空気の供給量を制御する制御手段と
をさらに設け、
前記解砕機は、前記汚泥循環路であって前記配管接続部の下流側に設けられ、
前記制御手段は、前記解砕機入口温度に基づき前記熱交換ラインに供給される循環空気の供給量を制御すること
を特徴とする汚泥乾燥設備。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、乾燥排ガスの温度変動を低減し、系全体の処理能力の安定化を図ることができる汚泥乾燥設備を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一形態による汚泥乾燥設備の構成を模式的に示す図である。
図2図1の設備における処理フローの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態を図面を参照して以下に説明する。なお、以下の説明では、汚泥廃棄物やガスの流れ方向を基準として「上流」、「下流」といった表現を用いることもある。
【0012】
図1の汚泥乾燥設備1は、汚泥供給源としての受入れホッパ10と、その下流側に配置された混合機15と、混合機15から排出された汚泥廃棄物を解砕する解砕機31と、その下流側に配置された固気分離手段としてのサイクロン35、36と、循環する乾燥排ガス(循環空気)を昇温させる熱交換器50等を備えている。この実施形態では、また、セメント製造設備120が併設されており、このセメント製造設備120からの廃熱が熱交換器50に供給されるようになっている。
【0013】
受入れホッパ10は、乾燥前の汚泥廃棄物を受け入れる部分である。汚泥廃棄物としては、限定されるものではないが、家畜ふん尿や下水汚泥等であってもよい。受入れホッパ10に供給された汚泥廃棄物は、供給ポンプ11等により下流側へと送られる。具体的には、この例では、供給ポンプ11出口と混合機15とが搬送路81で接続されており、汚泥廃棄物はこの搬送路81経由で混合機15へと送られる。
【0014】
混合機15は、送られてきた乾燥前の汚泥廃棄物と、乾燥後の汚泥廃棄物(詳細後述)とを混合する装置である。混合機15により混合された汚泥廃棄物は汚泥循環路(詳細後述)内に送られる。
【0015】
ここで、本実施形態の汚泥循環路について説明すると、この例では、混合機15と解砕機31とを結ぶ循環ライン82と、解砕機31とサイクロン35、36とを結ぶ循環ライン83と、サイクロン35、36の固体出口側と混合機15とを結ぶ循環ライン84、85とを有している。汚泥廃棄物は、大まかに言えば、この循環路(82〜85)内を後述する乾燥用ガスによって気体搬送されながら解砕機31により粉砕され、次いで、サイクロン35、36によって固気分離され、それにより分離された乾燥固形物がサイクロン出口側から排出され振分手段39によって振り分けられ、セメント製造設備120側へと送られる流れとなっている。
【0016】
本実施形態においては上記のような汚泥循環路の他に(一部は共通する)、乾燥用ガスの循環経路も設けられている。具体的には、(a)サイクロン35、36の気体出口側からの出口ガスを下流側に搬送するガスライン87と、(b1)ガスライン87の途中から分岐し熱交換器50へと向かう熱交換ライン88Aと、(b2)熱交換器50を迂回するバイパスライン88Bと、(c)熱交換器50からの乾燥用ガスを汚泥循環路(82〜85)に戻す戻りガスライン89とが設けられている。
【0017】
戻りガスライン89は、熱交換器出口から延び出しその末端側が汚泥の循環ライン82の途中に接続され(接続部P1)ている。これにより、高温の乾燥用ガスが循環ライン82に吹き込み、汚泥が気体搬送されるように構成されている。戻りガスライン89の接続部P1より上流側には、内部のガス温度を計測する温度計22が設けられていてもよい。また、ガス流量を計測する流量計(不図示)が設けられていてもよい。なお、温度計22は、ガス温度を計測できるものであればどのような方式のものであっても構わないが、例えばアナログ表示部またはディジタル表示部を有するものであってもよい。
【0018】
解砕機31は、送られてきた汚泥廃棄物を細かく粉砕するものである。解砕機31としては特に限定されるものではなく、例えば、特開2000−65476で用いられているようなものを利用してもよい。解砕機31から排出された汚泥廃棄物は循環ライン83経由でサイクロン35、36へと送られる。
【0019】
サイクロン35、36は固気分離を行うものであり、ここでは一例として、2基のサイクロンを並列に接続した構成となっている。サイクロン35、36の出口ガスの一部は乾燥用ガスとして循環利用され、分離された乾燥固形物はセメント製造設備120側に送られるか、または、混合機15側(すなわち汚泥循環路内)に戻される。なお、各サイクロン35、36の下流には従来公知のロータリバルブRVが配置されていてもよい。
【0020】
続いて、熱交換器50およびその周辺のガス循環路の構成について詳しく説明する。
【0021】
熱交換器50は、外部の熱源を利用して、乾燥用ガスを昇温させる役割を果たす。一例として、この例では、セメント製造設備120の排ガスが利用されるようになっている。
【0022】
本実施形態においては、上述したように、ガスライン87の途中(分岐部P2)から熱交換ライン88Aと、バイパスライン88Bとが分岐しており、これにより、熱交換器50へのラインと、熱交換器50を迂回して戻りガスライン89へと接続するラインとが形成されている。その結果、熱交換器50を通過するガスは昇温され、迂回するガスは昇温されないこととなる。
【0023】
なお、特に限定されるものではないが、分岐部P2の上流側においては、ガスライン87上に、ガス流量を計測する風量計21、流路開閉用の弁V3、およびガスを下流側に送り出す乾燥ファンB1等が設けられていてもよい。
【0024】
また、熱交換ライン88Aおよびバイパスライン88Bのそれぞれにも、流路開閉用の弁V1、V2が配置されており、この弁V1、V2を操作することで、流路の開閉を調節することができるようになっている。
【0025】
なお、弁V1、V2は、作業者によって手動で操作(開閉および/または開度調整)されるものであってもよい。
【0026】
別の実施態様としては、弁V1、V2の開閉および/または開度調整を行う不図示の駆動機構と、その駆動機構の動作を自動制御する制御回路(例えばコンピュータユニット)とを有し、この制御回路が所定の判定を行うことで駆動機構の動作を制御する構成としてもよい。
【0027】
セメント製造設備120としては、従来公知の様々な種類のものを利用可能であり、特定の構造に限定されるものではない。例えば、特許第4445147号に開示されたようなもの、すなわち、
−汚泥ケーキと後述の気流乾燥機で乾燥された乾燥粉の一部とを混合する混合部と、
−この混合部からの混合粉を熱風流とともに解砕する解砕機と、
−解砕された粉体を気流乾燥させる略鉛直方向の乾燥ダクトと、
−この乾燥ダクトの上端に接続された集塵器と、
−この集塵器の上部に接続された乾燥機排ガスダクトと、
−この集塵器の下部に排出機を介して接続された乾粉供給装置を付属する乾粉供給タンクとを有する気流乾燥機と、
−複数段のサイクロンからなるサスペンションプレヒータと、
−このサスペンションプレヒータの最下段のサイクロンに連結された仮焼炉と、
−この仮焼炉および最下段のサイクロンに入口フッドを介して接続されたロータリキルンと、
−このロータリキルンの出口部に連結されたクーラとを有するセメント焼成装置と、
を備えるセメント製造設備であってもよい。
【0028】
再び図1を参照し、この例では、セメント製造設備120として、原料等の受入部を構成するエレベータ63、原料タンク65、ロータリバルブRV、貫流フィーダ67、ルーツブロワ69等が設けられている。これらにより乾燥原料がサスペンションプレヒータ121の下部に供給され、ロータリキルン125内にて燃焼されるようになっている。ロータリキルン125の廃熱は、ガスライン91を通じてサイクロン135、136へと送られ、さらに、ガスライン93を通じて熱交換器50へと供給される。
【0029】
熱交換器50から出た出口ガスは、ガスライン94経由でセメント製造設備120側に戻されるように構成されていてもよい。この例では、ガスライン94上に、弁V5および熱風ファンB3が設けられている。また、熱交換ライン88Aの途中から分岐したガスライン97を通じて、ガスがセメント製造設備120の燃焼用ガス流路127へ送られるように構成されていてもよい。サイクロン135、136により分離された固形物は、スクリューコンベア137やルーツブロワ138を利用して搬送路92経由でセメント製造設備120側に戻されるようになっていてもよい。
【0030】
以上のように構成された本実施形態の汚泥乾燥装置1の基本的動作について、以下、説明する。
【0031】
まず、処理の対象となる汚泥廃棄物が受入れホッパ10に供給され、供給ポンプ11により、搬送路81経由で混合機15へと送られる。ここで混合された汚泥廃棄物は、次いで、混合機15の出口から汚泥の循環ライン82へと排出される。汚泥廃棄物がロータリバルブRVを通過し接続部P1まで達すると、ここには熱交換器50側からの乾燥用ガスが吹き込むようになっているので、汚泥廃棄物は次いで乾燥用ガスによって気体搬送され、解砕機31へと送られる。
【0032】
次いで、解砕機31内で、汚泥廃棄物は細かく解砕されて、より下流側へと気体搬送されサイクロン35、36に送られて固気分離が行われる。分離された固形物はセメント製造設備120側に送られるか、または、混合機15へと戻される。なお、セメント製造設備120側に固形物を送る際、例えば流量計61でその量を測っても良いし、また、ロータリバルブRVを利用するなどしてもよい。
【0033】
両サイクロン35、36の出口ガスは、ガスライン87を通って、下流の熱交換機50側へと送られる。ガスライン87内を通る乾燥用ガスは、風量および温度の少なくとも1つが測定されるようになっていてもよい。なお、この状態では、弁V3は開いており、また、弁V1およびV2に関しては一方または両方が開いている。
【0034】
熱交換器50を通過させるガス流量の調整については、一例として、図2に示すようなフローチャートにしたがって制御することができる。
【0035】
まず、本設備の動作開始後(一例)、ステップS1において、解砕機入口温度の設定を行う。この「解砕機入口温度」とは、解砕機31の上流側(特には、一例として接続部P1の上流側)の乾燥用ガスの温度のことをいう。一例として、解砕機入口温度のこの設定値は150℃〜350℃程度の範囲内であってもよい。なお、こうした設定値の決定(ステップS1)は、汚泥廃棄物の乾燥動作の開始後ではなく、開始前に予め行っていてもよい。
【0036】
次いで、ステップS2において、解砕機入口温度の測定を行う。このステップは、例えば作業者が温度計22を見ることにより行われるものであってもよい。または、コンピュータ等の制御回路が温度計22からその検出値の情報を得ることにより行われるものであってもよい。
【0037】
次いで、ステップS3において、設定温度と測定値との比較を行い、設定温度が測定値より高いか否かの判定を行う。設定温度が測定値より高かった場合(Yesの場合)は、循環路内の乾燥用ガスの温度が低いということであるので、ステップS4において、熱交換器50による昇温作用を増加させるように、流路開度の調整を行う。具体的には、弁を操作し、(a)熱交換ライン88Aの開度を上げつつバイパスライン88Bの開度を下げる、または(b)熱交換ライン88Aは完全に開放させバイパスライン88Bのみを閉塞するようにする。このようにすることで、ガスの昇温作用が増加するので、乾燥用ガスの温度を徐々に上昇させることができる。
【0038】
一方、ステップS3において、設定温度が測定値以下だった場合(Noの場合)、循環路内の乾燥用ガスの温度が高いということであるので、ステップS5において、ガスの昇温作用を低減させるように、上記とは逆に、流路開度の調整を行えばよい。これにより、解砕機31に送られる乾燥用ガスの温度を徐々に低減させることができる。
【0039】
上記ステップに関しても、やはり、作業者により行われるものであってもよいし、または、制御回路からの動作信号に基づいて不図示の駆動機構が自動で弁の開閉を行うものであってもよい。
【0040】
従来の汚泥乾燥設備では、コントロールすべき乾燥排ガスの温度が例えば115℃程度となるように、熱交換器へ循環させるラインと、循環させないラインとの風量バランスを単に制御するものが一般的であった。そして、特に、熱交換器の熱源としてセメント製造設備からの廃熱を利用するような場合には、セメント製造プロセスの運転状況により、廃熱の温度が一例で400℃に対して±30℃程度変動することもある。また、汚泥廃棄物自体も、その含水率が例えば80%〜85%の範囲で変動するものである。そのため、サイクロン35、36と乾燥ファンB1との間の乾燥排ガスの温度を所定温度に制御しようとしても、±5℃程度の温度変動が発生することとなる。
【0041】
これに対して本実施形態の構成によれば、戻りガスライン89とバイパスライン88Bとが合流する箇所より下流の地点を制御対象として、熱交換器50への循環風量およびバイパス風量を制御するものであるので、乾燥排ガスの温度の安定化を実現することが可能となる。その結果、製品(乾燥汚泥)の含水量が安定することとなり、乾燥設備の処理能力の変動も小さくなり、例えば解砕機過負荷等のトラブルの発生も抑制される。
【0042】
また、解砕機入口温度の制御の目標設定値について、乾燥排ガスの偏差や、投入される汚泥廃棄物の量の変更に自動で追従するカスケード制御を導入することで、乾燥排ガスの温度変動をより小さくすることができる。
【0043】
以上、本発明の一形態について具体的な例に沿って説明したが、本発明は必ずしも上記の具体的構成、手順に限定されるものではない。汚泥乾燥設備1の各部装置等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
【0044】
本発明において、例えば、「装置」や「手段」と言った場合、それらは必ずしも物理的に1つのものとして構成されているものに限定されるものではない。複数の装置等が組み合わされて、所定の機能を発揮する「装置」を構成するようなものであってもよい。
【0045】
上記実施形態では、「搬送路」や「ライン」といった用語を用いて、汚泥廃棄物や乾燥用ガスの経路の説明を行ったが、これらの「搬送路」や「ライン」の引き回しも適宜変更可能である。また、流路の開閉を行う弁やロータリバルブに関しても、その数や配置位置を適宜変更可能である。
【0046】
(付記)
本出願は下記の発明を開示する:
1.汚泥供給源(10)と、
循環空気を昇温させる熱交換器(50)と、
前記循環空気により汚泥を乾燥させるとともに、この汚泥を解砕する解砕機(31)と、
前記解砕機の上流と下流とを接続する汚泥循環路(82〜85)と、
前記汚泥循環路であって前記解砕機の下流側に設けられた固気分離手段(35、36)と、
前記汚泥循環路とは別途設けられ、前記固気分離手段の下流から乾燥後の汚泥を一部外部に排出する分岐手段(39)と
を備え、
前記汚泥循環路(82〜85)であって前記固気分離手段の下流側に設けられ、乾燥後の汚泥と、前記汚泥供給源から供給された乾燥前の汚泥とを混合し、排出する混合機(15)と、
前記汚泥循環路であって前記熱交換器と接続し、前記混合機の下流側に前記循環空気を供給する配管接続部(P1)と
を有し、
前記汚泥循環路に接続し、昇温前の前記循環空気を前記熱交換器に供給するとともに、昇温後の前記循環空気を前記汚泥循環路に戻す熱交換ライン(88A)と、
前記熱交換ラインと並列に設けられ、前記熱交換器を介さずに前記循環空気を前記汚泥循環路に戻すバイパスライン(88B)と
をさらに備え、
前記配管接続部(P1)と前記熱交換器(50)との間に設けられ、解砕機入口温度を計測する温度計測手段(22)と、
前記熱交換ラインに供給される循環空気の供給量を制御する制御手段(V1、V2)と
をさらに設け、
前記解砕機(31)は、前記汚泥循環路であって前記配管接続部(P1)の下流側に設けられ、
前記制御手段(V1、V2)は、前記解砕機入口温度に基づき前記熱交換ライン(88A)に供給される循環空気の供給量を制御すること
を特徴とする汚泥乾燥設備。
【0047】
このような構成によれば、循環空気と汚泥が混合する直前の温度である解砕機入口温度に基づき熱交換ラインに供給される循環空気の供給量を制御することにより、制御精度を向上させることができる。
【0048】
2.上記記載の汚泥乾燥設備において、前記熱交換器は、セメント製造設備(120)の廃熱を熱源とすることを特徴とする汚泥乾燥設備。これによれば、セメント製造設備の廃熱を有効活用できる。
【0049】
3.上記記載の汚泥乾燥設備において、前記乾燥後の汚泥は、セメント製造設備(120)に供給されることを特徴とする汚泥乾燥設備。これによれば、乾燥後の汚泥をセメント製造の原料、燃料として有効活用できる。同時に熱交換器の熱源としてセメント製造設備の廃熱を利用することにより、システム全体の熱効率をさらに向上させることができる。
【0050】
4.上記記載の汚泥乾燥設備において、前記制御手段は、前記解砕機入口温度の目標値と実際値の差に基づき、前記熱交換器(50)へ供給する循環空気の供給量を制御することを特徴とする汚泥乾燥設備。これによれば、制御精度をより向上させることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 汚泥乾燥設備
10 受入れホッパ
11 供給ポンプ
15 混合機
21 風量計
22 温度計
31 解砕機
35、36 サイクロン
39 振分手段
50 熱交換器
63 エレベータ
65 原料タンク
67 貫流フィーダ
69 ルーツブロワ
81 搬送路
82〜85 循環ライン
87 ガスライン
88A 熱交換ライン
88B バイパスライン
89 戻りガスライン
91、93、94 ガスライン
92 搬送路
97 ガスライン
120 セメント製造設備
121 サスペンションプレヒータ
125 ロータリキルン
127 燃焼用ガス流路
135、136 サイクロン
137 スクリューコンベア
138 ルーツブロワ
B1〜B3 ファン
P1 接続部
P2 分岐部
RV ロータリバルブ
V1〜V5 弁
図1
図2