特許第6294148号(P6294148)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6294148
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】保持シール材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/28 20060101AFI20180305BHJP
【FI】
   F01N3/28 311N
【請求項の数】1
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2014-97200(P2014-97200)
(22)【出願日】2014年5月8日
(65)【公開番号】特開2015-214907(P2015-214907A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2017年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊野 圭司
(72)【発明者】
【氏名】岡部 隆彦
【審査官】 菅家 裕輔
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−508044(JP,A)
【文献】 特開2012−157809(JP,A)
【文献】 特開2005−054726(JP,A)
【文献】 特開2002−206421(JP,A)
【文献】 特開2014−009637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/28
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の有機結合剤と第1の無機結合剤からなる結合剤皮膜が表面に形成された無機繊維からなり、第2の有機結合剤と第2の無機結合剤からなる凝集体が前記結合剤皮膜から突出して、複数の凸部を形成している保持シール材の製造方法であって、
無機繊維からなるマットを準備するマット準備工程と、
有機結合剤からなる有機結合剤溶液を準備する有機結合剤溶液準備工程と、
無機結合剤からなる無機結合剤溶液を準備する無機結合剤溶液準備工程と、
前記有機結合剤溶液を前記マットに接触させる工程と前記無機結合剤溶液を前記マットに接触させる工程とをそれぞれ行うことで、前記無機繊維の表面に前記有機結合剤溶液に由来する第1の有機結合剤と前記無機結合剤溶液に由来する第1の無機結合剤からなる結合剤皮膜を形成し、かつ、前記結合剤皮膜上で前記有機結合剤溶液に由来する第2の有機結合剤と前記無機結合剤溶液に由来する第2の無機結合剤を凝集させて凝集体を形成し、前記結合剤皮膜上に前記凝集体からなる凸部を形成する溶液接触工程と、
前記有機結合剤溶液及び前記無機結合剤溶液を接触させた前記マットを乾燥する乾燥工程とからなることを特徴とする保持シール材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持シール材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中には、スス等のパティキュレートマター(以下、PMともいう)が含まれており、近年、このPMが環境や人体に害を及ぼすことが問題となっている。また、排ガス中には、COやHC、NOx等の有害なガス成分も含まれていることから、この有害なガス成分が環境や人体に及ぼす影響についても懸念されている。
【0003】
そこで、排ガス中のPMを捕集したり、有害なガス成分を浄化したりする排ガス浄化装置として、炭化ケイ素やコージェライトなどの多孔質セラミックからなる排ガス処理体と、排ガス処理体を収容するケーシングと、排ガス処理体とケーシングとの間に配設される無機繊維集合体からなる保持シール材とから構成される排ガス浄化装置が種々提案されている。この保持シール材は、自動車の走行等により生じる振動や衝撃により、排ガス処理体がその外周を覆うケーシングと接触して破損するのを防止することや、排ガス処理体とケーシングとの間から排ガスが漏れることを防止すること等を主な目的として配設されている。そのため、保持シール材には、圧縮されることによる反発力で発生する面圧を高め、排ガス処理体を確実に保持する機能が求められている。さらに、排ガス処理体をケーシングに収容する際には、保持シール材を構成する無機繊維が破断し、大気中に飛散することが知られている。このような無機繊維の飛散によって、大気中に飛散した無機繊維が保持シール材を取り扱う作業者の作業環境に悪影響を及ぼすという問題が存在する。
【0004】
従来、このような問題を解決するために、有機結合剤と無機結合剤からなる凝集物を保持シール材に含浸する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−157809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された方法は、有機結合剤と無機結合剤としての無機粒子からなる凝集物のみを用いており、無機繊維の飛散を抑止する効果は、凝集物が付着した部分に限定される。そのため、凝集物が存在しない部分で無機繊維が破断した場合には、無機繊維の飛散を抑止することができない。また、排ガスの熱により有機結合剤が焼失した後には、無機繊維の表面に残存する無機結合剤が繊維同士の滑りを防止することで面圧を向上させているが、残存する無機結合剤は無機繊維の表面の一部にしか存在しないため、面圧を向上させる効果は小さい。そのため、面圧向上効果と無機繊維の飛散抑制効果を充分に達成できていないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、無機繊維の飛散量を効果的に抑制することができるとともに、保持シール材に要求される面圧特性を充分に満足できる保持シール材及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、上記保持シール材を備えた排ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の保持シール材は、無機繊維からなる保持シール材であって、上記無機繊維の表面には第1の有機結合剤と第1の無機結合剤からなる結合剤皮膜が形成されており、第2の有機結合剤と第2の無機結合剤からなる凝集体が上記結合剤皮膜から突出して、複数の凸部を形成していることを特徴とする。
【0009】
本発明の保持シール材は、無機繊維の表面に第1の有機結合剤と第1の無機結合剤からなる結合剤皮膜が形成されているので、無機繊維が破断した場合であっても、結合剤皮膜により無機繊維の飛散を抑制することができる。そのため、本発明の保持シール材が巻き付けられた排ガス処理体を金属ケーシングに圧入等して排ガス浄化装置を製造する際、無機繊維の飛散を抑制することができる。
また、結合剤皮膜には第1の無機結合剤が含まれているため、結合剤皮膜の皮膜強度が高くなることにより、無機繊維同士が接触した際に結合剤皮膜が剥がれにくくなる。そのため、無機繊維は結合剤皮膜が剥がれると同時に滑ることが起こりにくくなる。その結果、保持シール材の面圧を向上させることができる。
【0010】
また、結合剤皮膜には、第2の有機結合剤と第2の無機結合剤からなる凝集体が結合剤皮膜から突出して凸部が形成されている。そのため、無機繊維同士が接触した場合に、上記凸部が引っ掛かることにより摩擦抵抗となり、無機繊維同士が滑ることが起こりにくくなる。その結果、保持シール材の面圧が向上する。
【0011】
さらに、本発明の保持シール材は、排ガス浄化装置に排ガスが流入し、第1の有機結合剤及び第2の有機結合剤が焼失した場合であっても、保持シール材の面圧を高く保つことができる。
結合剤皮膜中の第1の有機結合剤が焼失した場合であっても結合剤皮膜中の第1の無機結合剤は焼失しないため、無機繊維の表面に微細な凸部を形成する。そのため、無機繊維同士の摩擦抵抗を増加することができ、保持シール材の面圧を向上させることができる。
また、凝集体中の第2の有機結合剤が焼失した場合であっても凝集体中の第2の無機結合剤は焼失しないため、凝集体により形成されていた凸部は第2の有機結合剤の焼失後も維持される。これは、高温下で凝集体中の第2の有機結合剤が焼失する際、第2の無機結合剤としての無機粒子が無機繊維表面に付着、結合して凸部として維持されるためである。
そのため、上記凸部が引っ掛かることにより摩擦抵抗となり、無機繊維同士が滑ることが起こりにくくなる。その結果、保持シール材の面圧が向上し、排ガス処理体を安定的に保持することができる。
【0012】
本発明の保持シール材において、上記凝集体は、上記第2の有機結合剤としての高分子樹脂成分中に上記第2の無機結合剤としての無機粒子が分散することにより構成されていることが好ましい。第2の有機結合剤としての高分子樹脂成分中に第2の無機結合剤としての無機粒子が分散することで、凝集体の機械的強度が向上し、面圧の向上に寄与する。
【0013】
本発明の保持シール材において、上記結合剤皮膜は、上記第1の有機結合剤としての高分子樹脂成分中に上記第1の無機結合剤としての無機粒子が分散することにより構成されていることが好ましい。第1の有機結合剤としての高分子樹脂成分中に第1の無機結合剤としての無機粒子が分散することにより結合剤皮膜が構成されていることで、結合剤皮膜の機械的強度が高くなりやすい。そのため、無機繊維同士が接触した場合に、結合剤皮膜が剥離して無機繊維同士が滑ることが起こりにくく、面圧を向上させやすくなる。
【0014】
本発明の保持シール材では、上記凸部の平均高さが、上記結合剤皮膜を含んだ上記無機繊維の平均繊維径よりも小さいことが好ましい。
凸部の平均高さが結合剤皮膜を含んだ無機繊維の平均繊維径以上である場合、凸部の引っ掛かりが強すぎる場合があり、結合剤皮膜が無機繊維から剥離したり、凸部を形成している凝集体が結合剤皮膜から脱落したりすることがある。
【0015】
本発明の保持シール材において、上記第1の有機結合剤及び上記第2の有機結合剤の含有量の合計は、保持シール材全体の2重量%以下であることが好ましい。
第1の有機結合剤及び第2の有機結合剤の含有量の合計が保持シール材全体の2重量%を超えた場合、無機繊維の飛散を抑制する効果、及び、面圧の向上という効果はほとんど変わらず、排ガスの熱によって発生する分解ガスの量が多くなり、周囲の環境に悪影響を与える可能性がある。
【0016】
本発明の保持シール材において、上記第1の無機結合剤及び上記第2の無機結合剤の含有量の合計は、保持シール材全体の2重量%以下であることが好ましい。
本発明の保持シール材では、第1の無機結合剤及び第2の無機結合剤の含有量が2重量%を超えた場合、無機繊維の飛散抑制及び面圧の向上という効果はほとんど変わらない。そのため、第1の無機結合剤及び第2の無機結合剤の過剰な使用は、製造コストの観点から好ましくない。
【0017】
本発明の保持シール材において、上記第1の有機結合剤としての高分子樹脂成分及び上記第2の有機結合剤としての高分子樹脂成分は、アクリル系樹脂であることが好ましい。
第1の有機結合剤としての高分子樹脂成分及び第2の有機結合剤としての高分子樹脂成分がアクリル系樹脂であると、結合剤皮膜の強度を向上させやすくなる。
【0018】
本発明の保持シール材において、上記第1の有機結合剤としての高分子樹脂成分及び上記第2の有機結合剤としての高分子樹脂成分のガラス転移点(T)は、5℃以下であることが好ましい。
第1の有機結合剤としての高分子樹脂成分のガラス転移点が5℃以下であると、無機繊維の表面を覆う結合剤皮膜が硬くなりすぎず、可撓性に富むので、保持シール材を排ガス処理体に巻きつける際などに保持シール材が曲げやすくなる。
また、第2の有機結合剤としての高分子樹脂成分のガラス転移点が5℃以下であると、無機粒子が加わった凝集体の柔軟性を維持しながら強度を高くすることができる。そのため、保持シール材の可撓性を維持するとともに、無機繊維同士が接触した場合に、凝集体が脱落して無機繊維同士が滑ることが起こりにくく、面圧を向上させやすくなる。
【0019】
本発明の保持シール材は、上記結合剤皮膜における上記第1の無機結合剤としての無機粒子の割合は、上記結合剤皮膜の全体の体積に対して20〜60体積%であることが好ましい。第1の無機結合剤としての無機粒子の割合が結合剤皮膜の全体の体積に対して20〜60体積%であると、結合剤皮膜の強度が高くなりやすい。そのため、無機繊維同士が接触した場合に、結合剤皮膜が剥離して無機繊維同士が滑ることが起こりにくく、面圧を向上させやすくなる。
【0020】
本発明の保持シール材は、ニードルパンチング処理が施されていることが好ましい。ニードルパンチング処理によって無機繊維を交絡させることで、無機繊維同士の絡み合いを強固にし、面圧を向上させやすくなる。
【0021】
本発明の保持シール材は、上記結合剤皮膜の皮膜強度は、5MPa以上であることが好ましい。結合剤皮膜の引っ張り強度が5MPa未満である場合には、無機繊維同士が接触した際に結合剤皮膜が剥離して無機繊維が滑ることがあり、面圧を向上させにくくなる。
【0022】
本発明の保持シール材の製造方法の一の態様は、無機繊維からなるマットを準備するマット準備工程と、第1の有機結合剤と第1の無機結合剤からなる結合剤皮膜を上記無機繊維の表面に形成するための結合剤溶液を準備する結合剤溶液準備工程と、第2の有機結合剤と第2の無機結合剤を混合して上記第2の有機結合剤と上記第2の無機結合剤からなる凝集体を形成する凝集体溶液準備工程と、上記結合剤溶液及び上記凝集体溶液を上記マットに接触させることで、上記無機繊維の表面に上記第1の有機結合剤と上記第1の無機結合剤からなる結合剤皮膜を形成し、かつ、上記結合剤皮膜に上記凝集体からなる凸部を形成する溶液接触工程と、上記結合剤溶液及び上記凝集体溶液を接触させた上記マットを乾燥する乾燥工程とからなることを特徴とする。
【0023】
本発明の保持シール材の製造方法の一の態様では、第1の有機結合剤と第1の無機結合剤からなる結合剤溶液を準備する結合剤溶液準備工程と、第2の有機結合剤と第2の無機結合剤を混合して第2の有機結合剤と第2の無機結合剤からなる凝集体を形成する凝集体溶液準備工程を行う。結合剤溶液をマットに接触させた後、乾燥させることにより、第1の有機結合剤と第1の無機結合剤からなる結合剤皮膜が、無機繊維の表面に形成されることとなる。一方、凝集体溶液をマットに接触させた後、乾燥させることにより、第2の有機結合剤と第2の無機結合剤が凝集した凝集体からなる凸部が形成されることとなる。従って、本発明の保持シール材を製造する方法として適している。
【0024】
本発明の保持シール材の製造方法の別の態様は、無機繊維からなるマットを準備するマット準備工程と、有機結合剤からなる有機結合剤溶液を準備する有機結合剤溶液準備工程と、無機結合剤からなる無機結合剤溶液を準備する無機結合剤溶液準備工程と、上記有機結合剤溶液を上記マットに接触させる工程と上記無機結合剤溶液を上記マットに接触させる工程とをそれぞれ行うことで、上記無機繊維の表面に上記有機結合剤溶液に由来する第1の有機結合剤と上記無機結合剤溶液に由来する第1の無機結合剤からなる結合剤皮膜を形成し、かつ、上記結合剤皮膜上で上記有機結合剤溶液に由来する第2の有機結合剤と上記無機結合剤溶液に由来する第2の無機結合剤を凝集させて凝集体を形成し、上記結合剤皮膜上に上記凝集体からなる凸部を形成する溶液接触工程と、上記有機結合剤溶液及び上記無機結合剤溶液を接触させた上記マットを乾燥する乾燥工程とからなることを特徴とする。
【0025】
本発明の保持シール材の製造方法の別の態様では、有機結合剤溶液及び無機結合剤溶液中が無機繊維の表面で接触することにより、有機結合剤溶液に由来する第1の有機結合剤中に無機結合剤溶液に由来する第1の無機結合剤が分散することで結合剤皮膜を形成する。さらに、有機結合剤溶液に由来する第2の有機結合剤と無機結合剤溶液に由来する第2の無機結合剤とが凝集して凝集体を形成する。
すなわち、有機結合剤溶液中の成分の一部である第2の有機結合剤と無機結合剤溶液中の成分の一部である第2の無機結合剤が凝集して凝集体を形成し、凝集体を形成しなかった有機結合剤溶液中の成分である第1の有機結合剤中に、凝集体を形成しなかった無機結合剤溶液中の成分である第1の無機結合剤が分散することにより結合剤皮膜を形成する。
従って、本発明の保持シール材を製造する方法として適している。
【0026】
本発明の排ガス浄化装置は、金属ケーシングと、上記金属ケーシングに収容された排ガス処理体と、上記排ガス処理体の周囲に巻きつけられ、上記排ガス処理体及び上記金属ケーシングの間に配設された保持シール材とを備える排ガス浄化装置であって、上記保持シール材は本発明の保持シール材であることを特徴とする。
【0027】
本発明の排ガス浄化装置では、保持シール材として、上記製造方法により製造された保持シール材が用いられているので、排ガスの導入等による加熱で第1の有機結合剤及び第2の有機結合剤が分解、焼失した後には、第1の無機結合剤により無機繊維の表面に微細な凸部を形成し、さらに、凝集体を形成していた第2の無機結合剤がしっかりと無機繊維の表面に結合して無機繊維の表面に多数の大きな凹凸が形成されるため、無機繊維同士が接触した際の引っ掛かりを強め、保持シール材の面圧を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1(a)は、本発明の保持シール材を構成する無機繊維、無機繊維表面を覆う結合剤皮膜及び結合剤皮膜から突出する凝集体の一例を模式的に示した斜視図であり、図1(b)は、図1(a)におけるA−A線断面図であり、図1(c)は、図1(b)における凝集体の拡大断面図であり、図1(d)は、図1(b)における結合剤皮膜の拡大断面図である。
図2図2(a)は、本発明の保持シール材を構成する凝集体の別の一例を模式的に示した断面図であり、図2(b)は本発明の保持シール材を構成する凝集体のさらに別の一例を模式的に示した断面図であり、図2(c)は、本発明の保持シール材を構成する凝集体のさらに別の一例を模式的に示した断面図である。
図3図3(a)は、本発明の保持シール材の焼成前のSEM写真であり、図3(b)は、本発明の保持シール材の焼成後のSEM写真である。
図4図4は、本発明の保持シール材の一例を模式的に示した斜視図である。
図5図5(a)は、無機繊維の飛散性を測定するための測定装置の一例を模式的に示す側面図であり、図5(b)は、無機繊維の飛散性を測定するための測定装置を構成するサンプル支持アームの一部を模式的に示した平面図である。
図6図6は、本発明の排ガス浄化装置の一例を模式的に示す断面図である。
図7図7は、本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体の一例を模式的に示す斜視図である。
図8図8は、本発明の排ガス浄化装置の製造方法の一例を模式的に示した斜視図である。
【0029】
(発明の詳細な説明)
以下、本発明の保持シール材について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0030】
以下、本発明の保持シール材について説明する。
【0031】
本発明の保持シール材では、無機繊維の表面が第1の有機結合剤と第1の無機結合剤からなる結合剤皮膜で覆われており、さらに、第2の有機結合剤と第2の無機結合剤からなる凝集体が上記結合剤皮膜から突出している。
【0032】
図1(a)は、本発明の保持シール材を構成する無機繊維、無機繊維表面を覆う結合剤皮膜及び結合剤皮膜から突出する凝集体の一例を模式的に示した斜視図であり、図1(b)は、図1(a)におけるA−A線断面図であり、図1(c)は、図1(b)における凝集体の拡大断面図であり、図1(d)は、図1(b)における結合剤皮膜の拡大断面図である。
図1(a)に示すように、本発明の保持シール材は、保持シール材を構成する無機繊維10の表面が、結合剤皮膜20で覆われている。さらに、図1(b)に示すように、結合剤皮膜20から凝集体30が突出している。
【0033】
また、図1(b)に示すように、本発明の保持シール材を構成する無機繊維において、凝集体30は無機繊維10に接触していてもよく、無機繊維10に接触していなくてもよい。
凝集体が結合剤皮膜から突出していることによって、無機繊維の表面には凸部が形成されることとなる。この凸部によって無機繊維同士の摩擦抵抗が増加し、保持シール材の面圧を向上させることができる。
【0034】
図1(c)は、凝集体30において、第2の有機結合剤としての高分子樹脂成分31中に第2の無機結合剤としての無機粒子32が分散していることを模式的に示した断面図である。
第2の有機結合剤としての高分子樹脂成分中に第2の無機結合剤としての無機粒子が分散していることで、凝集体の機械的強度が向上する。そのため、無機繊維同士が接触した場合に、凝集体が脱落して無機繊維同士が滑ることが起こりにくく、面圧を向上させやすくなる。
【0035】
また、図1(c)に示すように、凝集体30は結合剤皮膜20から突出しているが、その高さ(図1(c)中、両矢印aで示す距離)の平均値(以降、凸部の平均高さともいう)は、結合剤皮膜20を含んだ無機繊維10の繊維径(図1(b)中、両矢印bで示す長さ)の平均値よりも小さいことが好ましい。凸部の平均高さが結合剤皮膜を含んだ無機繊維の平均繊維径以上である場合、凸部の引っ掛かりが強すぎる場合があり、結合剤皮膜が無機繊維から剥離したり、凸部を形成している凝集体が結合剤皮膜から脱落したりすることがある。
なお、凸部の平均高さは、保持シール材のSEM画像からランダムで選択した10個の凸部の高さの平均値とする。
【0036】
さらに、図1(d)に示すように、結合剤皮膜20は、第1の有機結合剤としての高分子樹脂成分21中に第1の無機結合剤としての無機粒子22が分散して形成されている。
第1の有機結合剤としての高分子樹脂成分中に第1の無機結合剤としての無機粒子が分散していることで、結合剤皮膜の皮膜強度が向上して無機繊維の飛散を抑制できるとともに、結合剤皮膜の剥離が起こりにくくなり、面圧の向上にも寄与する。
【0037】
図2(a)は、本発明の保持シール材を構成する凝集体の別の一例を模式的に示した断面図であり、図2(b)は本発明の保持シール材を構成する凝集体のさらに別の一例を模式的に示した断面図であり、図2(c)は本発明の保持シール材を構成する凝集体のさらに別の一例を模式的に示した断面図である。
本発明の保持シール材を構成する凝集体では、第2の有機結合剤としての高分子樹脂成分と第2の無機結合剤としての無機粒子との凝集形態は特に限定されず、例えば、図2(a)に示すように、少なくとも1つ以上の第2の無機結合剤としての無機粒子32の周囲を第2の有機結合剤としての高分子樹脂成分31が取り囲むように凝集体35を形成していてもよく、その逆に、図2(b)に示すように、第2の有機結合剤としての高分子樹脂成分31の周囲を第2の無機結合剤としての無機粒子32が取り囲むように凝集体36を形成していてもよい。
また、図2(c)に示すように、第2の無機結合剤としての無機粒子32が1つの大きな粒子であって、その周囲を第2の有機結合剤としての高分子樹脂成分31が取り囲むように凝集体37を形成していてもよい。
なお、図1(c)、図2(a)、図2(b)及び図2(c)に示した凝集体の断面図は、第2の有機結合剤としての高分子樹脂成分(例えばラテックス粒子)と第2の無機結合剤としての無機粒子が凝集体を形成する様子を模式的に示しており、凝集体を構成する第2の有機結合剤としての高分子樹脂成分の形状、第2の無機結合剤としての無機粒子の形状及び凝集体の形状は特に限定されない。また凝集体は、例えば、第2の有機結合剤と第2の無機結合剤とを溶媒中で凝集させることにより形成することができるが、溶媒中における第2の有機結合剤としての高分子樹脂成分の形状、及び、第2の無機結合剤としての無機粒子の形状は特に限定されない。
【0038】
以下、本発明の保持シール材を構成する各種材料について説明する。
【0039】
本発明の保持シール材を構成する結合剤皮膜は、溶媒中に分散させた第1の有機結合剤と第1の無機結合剤を含む溶液(結合剤溶液)が乾燥されることによって得られる。
【0040】
本発明における結合剤皮膜を構成する第1の有機結合剤としての高分子樹脂成分は特に限定されず、アクリル系樹脂、アクリレート系ラテックス、ゴム系ラテックス、カルボキシメチルセルロース又はポリビニルアルコール等の水溶性有機重合体、スチレン樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられ、アクリル樹脂が特に好ましく、これらを2種以上併用してもよい。
【0041】
本発明における第1の有機結合剤としての高分子樹脂成分のガラス転移点は、5℃以下であることが好ましく、−10℃以下であることがより好ましく、−30℃以下であることがさらに好ましい。上記第1の有機結合剤のガラス転移点が5℃以下であると、無機繊維の表面を覆う第1の有機結合剤と第1の無機結合剤からなる結合剤皮膜は柔らかくなり、可撓性に優れた保持シール材とすることができる。そのため、保持シール材を排ガス処理体に巻き付ける際等に保持シール材が曲げやすくなる。また、無機繊維の表面に第1の有機結合剤と第1の無機結合剤からなる結合剤皮膜が形成されているので、無機繊維が破断した場合であっても、結合剤皮膜により無機繊維の飛散を抑制することができる。
【0042】
結合剤皮膜を構成する第1の無機結合剤とは、無機ゾル分散溶液等の無機粒子溶液から溶媒を取り除いた固形成分を指す。
上記無機ゾル分散溶液(無機粒子溶液)としては特に限定されず、アルミナゾル、シリカゾル等が挙げられ、これらを2種以上併用してもよい。
上記無機粒子としては、アルミナゾルに由来するアルミナ粒子、シリカゾルに由来するシリカ粒子が好ましい。
【0043】
第1の無機結合剤を構成する無機粒子の粒子径及び粒子径分布については、特に限定されないが、無機粒子の粒子径が無機繊維の繊維径よりも小さいことが好ましい。具体的には、無機粒子の平均粒子径が0.005〜10μmであることが好ましく、0.01〜5μmであることがより好ましく、0.01〜1μmであることがさらに好ましい。
【0044】
本発明の保持シール材において、結合剤皮膜の皮膜強度は5MPa以上であることが好ましい。結合剤皮膜の皮膜強度が5MPa以上であると、無機繊維同士が接触した際に結合剤皮膜が剥がれにくくなるため、保持シール材の面圧を高く保つことができる。
【0045】
本発明の保持シール材を構成する凝集体は、第2の有機結合剤と第2の無機結合剤が凝集することによって得られる。
【0046】
凝集体を構成する第2の有機結合剤としての高分子樹脂成分は特に限定されず、第1の有機結合剤としての高分子樹脂成分と同様のものを好適に用いることができる。
また、第2の有機結合剤としての高分子樹脂成分のガラス転移点は、5℃以下であることが好ましく、−10℃以下であることがより好ましく、−30℃以下であることがさらに好ましい。上記第2の有機結合剤のガラス転移点が5℃以下であると、第2の無機結合剤としての無機粒子が加わった凝集体の柔軟性を維持しながら強度を高くすることができる。そのため、無機繊維同士が接触した場合に、凝集体が脱落して無機繊維同士が滑ることが起こりにくく、面圧を向上させやすくなる。
【0047】
本発明における凝集体を構成する第2の無機結合剤とは、無機ゾル分散溶液等の無機粒子溶液から溶媒を取り除いた固形成分を指す。
上記無機ゾル分散溶液(無機粒子溶液)としては特に限定されず、アルミナゾル、シリカゾル等が挙げられ、これら2種以上を併用してもよい。
上記無機粒子としては、アルミナゾルに由来するアルミナ粒子、シリカゾルに由来するシリカ粒子が好ましい。
【0048】
第2の無機結合剤を構成する無機粒子の粒子径及び粒子径分布については、特に限定されないが、無機粒子の粒子系が無機繊維の繊維径よりも小さいことが好ましい。具体的には、平均粒子径が0.005〜10μmであることが好ましく、0.01〜5μmであることがより好ましく、0.01〜1μmであることがさらに好ましい。
【0049】
第1の有機結合剤及び第2の有機結合剤の含有量の合計は、保持シール材全体の2重量%以下であることが好ましく、0.1〜2重量%であることがより好ましい。
第1の有機結合剤及び第2の有機結合剤の含有量の合計が保持シール材全体の2重量%を超える場合、面圧の向上、繊維飛散の抑制という効果はほとんど変わらず、排ガスの熱によって発生する分解ガスの量が多くなり、周囲の環境に悪影響を与える可能性がある。
【0050】
第1の無機結合剤及び第2の無機結合剤の含有量の合計は、保持シール材全体の2重量%以下であることが好ましく、0.1〜2重量%であることがより好ましい。
第1の無機結合剤及び第2の無機結合剤の含有量の合計が保持シール材全体の2重量%を超えた場合、保持シール材が徐々に硬くなり柔軟性が低下する。保持シール材を曲げて排ガス処理体に巻き付ける際には、保持シール材が折れ曲がり、排ガス処理体の外周に沿って巻き付けができなかったり、保持シール材の表面に亀裂が入るといった巻き付け性の悪化が懸念される。一方、第1の無機結合剤及び第2の無機結合剤の含有量の合計が保持シール材全体の2重量%を超えたとしても、面圧の向上という効果はほとんどみられない。また、第1の無機結合剤及び第2の無機結合剤の過剰な使用は、製造コストの観点からも好ましくない。
【0051】
本発明の保持シール材を構成する凝集体によって形成された凸部の平均高さは、結合剤皮膜を含んだ無機繊維の平均繊維径よりも小さいことが好ましい。具体的には、凸部の平均高さが0.05〜11μmであることが好ましく、0.1〜6μmであることがより好ましく、0.2〜4μmであることがさらに好ましい。
【0052】
本発明の保持シール材を構成する凝集体の凝集体溶液中における大きさは、0.1〜11μmであることが好ましく、0.2〜6μmであることがより好ましく、0.2〜4μmであることがさらに好ましい。
凝集体の大きさが11μmを越えるような場合、凝集体をマットに付与する工程において、凝集体溶液をマット表面に接触させた場合、凝集体が大きすぎてマット表面で詰まってしまい、マットの厚み方向に存在する各繊維表面に均等に凝集体を接触させることが難しくなる。さらに、凝集体が大きすぎると凝集体の数が減ることになり、無機繊維表面に形成される凝集体による凸部が繊維表面のごく一部に形成されやすくなる。その結果、保持シール材の面圧向上効果が不足することがある。また、凝集体の大きさが0.1μm未満の場合、凝集体が小さすぎて、無機繊維同士の引っ掛かりが弱くなり、保持シール材の面圧を向上させられないことがある。
【0053】
本発明の保持シール材を構成する無機繊維は、特に限定されないが、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナシリカ繊維、ムライト繊維、生体溶解性繊維及びガラス繊維からなる群から選択される少なくとも1種から構成されていることが好ましく、耐熱性や耐風蝕性等、マットに要求される特性等に応じて変更すればよく、各国の環境規制に適合できるような太径繊維や繊維長のものを使用するのが好ましい。
無機繊維が、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナシリカ繊維、及び、ムライト繊維の少なくとも1種である場合には、耐熱性に優れているので、排ガス処理体が充分な高温に晒された場合であっても、変質等が発生することはなく、保持シール材としての機能を充分に維持することができる。また、無機繊維が生体溶解性繊維である場合には、保持シール材を用いて排ガス浄化装置を作製する際に、飛散した無機繊維を吸入等しても、生体内で溶解するため、作業員の健康に害を及ぼすことがない。
【0054】
この中でも、低結晶性アルミナ質の無機繊維が望ましく、ムライト組成の低結晶性アルミナ質の無機繊維がより好ましい。加えて、スピネル型化合物を含む無機繊維がさらに好ましい。高結晶性アルミナ質であると、硬く脆いため、クッション材として用いられるマットには不向きである。
【0055】
さらに低結晶性アルミナ質かつスピネル型化合物を含む無機繊維の場合、結晶化比率は0.1〜30%の範囲が望ましく、さらには結晶化率0.4〜20%の範囲がさらに好ましい。この範囲の無機繊維で製作されたマットの反発力及び耐久試験後の復元面圧は高く、性能が良い。しかし、結晶化比率が0.1%未満または30%を超えると、急激に反発力や復元面圧は急激に低下してしまう。結晶化率の測定方法は、ムライト回折線(2θ=26.4°)とγアルミナ回折線(2θ=45.4°)の積分強度比より算出することができる。
【0056】
保持シール材を構成するマットは、種々の方法により得ることができるが、例えば、ニードリング法又は抄造法により製造することができる。
【0057】
交絡構造を呈するために、ニードリング法により得られるマットを構成する無機繊維はある程度の平均繊維長を有しており、例えば、無機繊維の平均繊維長は、1〜150mmであることが好ましく、10〜80mmであることがより好ましい。
無機繊維の平均繊維長が1mm未満であると、無機繊維の繊維長が短すぎるため、無機繊維同士の交絡が不充分となり、排ガス処理体への巻き付け性が低下し、保持シール材が割れやすくなる。また、無機繊維の平均繊維長が150mmを超えると、無機繊維の繊維長が長すぎるため、保持シール材を構成する繊維本数が減少するため、マットの緻密性が低下する。その結果、保持シール材のせん断強度が低くなる。
【0058】
抄造法により得られるマットを構成する無機繊維の平均繊維長は、0.1〜20mmであることが好ましい。
無機繊維の平均繊維長が0.1mm未満であると、無機繊維の繊維長が短すぎるため、もはや繊維としての特徴を実質上示さなくなり、マット状繊維集合体にしたときに繊維同士に好適な絡み合いが起こらず、充分な面圧を得ることが困難になる。また、無機繊維の平均繊維長が20mmを超えると、無機繊維の繊維長が長すぎるため、抄造工程で水に無機繊維を分散したスラリー溶液中の無機繊維同士の絡み合いが強くなりすぎるため、マット状繊維集合体としたときに無機繊維が不均一に集積しやすくなる。
繊維長の測定は、ニードリング法や抄造法ともにピンセットを使用して、マットから無機繊維が破断しないように抜き取り、光学顕微鏡を使用して繊維長を測定する。ここでは、無機繊維300本を抜き取り、繊維長を計測した平均を平均繊維長とした。マットから無機繊維を破断せずに抜き取れない場合、マットを脱脂処理して、脱脂済みマットを水の中へ投入し、無機繊維同士の絡みをほぐしながら無機繊維が破断しないように採取すると良い。
【0059】
本発明の保持シール材としては、無機繊維として生体溶解性繊維を用いてもよい。生体溶解性繊維は、例えば、シリカ等のほかに、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、及び、ホウ素化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなる無機繊維である。
これらの化合物からなる生体溶解性繊維は、人体に取り込まれても溶解しやすいので、これらの無機繊維を含んでなるマットは人体に対する安全性に優れている。
【0060】
生体溶解性繊維の具体的な組成としては、シリカ60〜85重量%、並びに、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物及びホウ素化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を15〜40重量%含む組成が挙げられる。上記シリカとは、SiO又はSiOのことをいう。
【0061】
上記アルカリ金属化合物としては、例えば、ナトリウム、カリウムの酸化物等が挙げられ、上記アルカリ土類金属化合物としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムの酸化物等が挙げられる。上記ホウ素化合物としては、ホウ素の酸化物等が挙げられる。
【0062】
生体溶解性繊維の組成において、シリカの含有量が、60重量%未満では、ガラス溶融法で作製しにくく、繊維化しにくい。
また、シリカの含有量が60重量%未満では、柔軟性を有するシリカの含有量が少ないため構造的にもろく、また、生理食塩水に溶けやすい、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、及び、ホウ素化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物の割合が相対的に高くなるので生体溶解性繊維が生理食塩水に溶けやすくなりすぎる傾向にある。
【0063】
一方、シリカの含有量が85重量%を超えると、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物及びホウ素化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物の割合が相対的に低くなるので生体溶解性繊維が生理食塩水に溶けにくくなりすぎる傾向にある。
なお、シリカの含有量は、SiO及びSiOの量をSiOに換算して算出したものである。
【0064】
また、生体溶解性繊維の組成においてアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物及びホウ素化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物の含有量が40重量%を超えると、ガラス溶融法では作製しにくく、繊維化しにくい。また、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物及びホウ素化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物の含有量が40重量%を超えると、構造的にもろく、生体溶解性繊維が生理食塩水に溶けやすくなりすぎる。
【0065】
本発明における生体溶解性繊維の生理食塩水に対する溶解度は、30ppm以上であることが好ましい。生体溶解性繊維の溶解度が30ppm未満では、無機繊維が体内に取り込まれた場合に、体外へ排出されにくく、健康上好ましくないからである。
【0066】
本発明の保持シール材を構成する無機繊維のうち、ガラス繊維は、シリカとアルミナとを主成分とし、アルカリ金属のほかに、カルシア、チタニア、酸化亜鉛等からなるガラス状の繊維である。
【0067】
本発明の保持シール材では、第1の有機結合剤及び第2の有機結合剤を熱で焼失させた場合、無機繊維のおおよそ表面全体に渡って第1の無機結合剤及び第2の無機結合剤による凸部が形成される。
図3(a)は、本発明の保持シール材の焼成前のSEM写真であり、図3(b)は、本発明の保持シール材の焼成後のSEM写真である。
本明細書において結合剤皮膜を焼失させる場合、特筆しない限り600℃で1時間、大気中で加熱することを指す。
【0068】
図3(a)に示すように、本発明の保持シール材を構成する無機繊維の表面には結合剤皮膜及び凝集体が形成されており、凝集体によって凸部が形成されている。無機繊維の表面に結合剤皮膜が形成されているため、無機繊維が破断した場合であっても、結合剤皮膜が無機繊維の飛散を食い止めることができる。さらに、結合剤皮膜からは、凝集体が突出している。そのため、無機繊維同士が接触した場合に、凝集体による凸部が引っ掛かり、無機繊維同士の摩擦抵抗を増加させることにより、保持シール材の面圧を向上させることができる。
【0069】
図3(a)に示した凸部を有する構造は、図3(b)に示すように、第1の有機結合剤及び第2の有機結合剤の焼失後においても維持されている。図3(b)では、無機繊維のおおよそ表面全体に凸部が形成されているが、この凸部は、凝集体を構成する第2の無機結合剤が焼成により分解せずに残存したものである。従って、第1の有機結合剤及び第2の有機結合剤が焼失した後であっても、凝集体中の第2の無機結合剤によって無機繊維の表面の凸部が維持され、無機繊維同士が滑ることが防止されるので、面圧を向上させやすくなる。
さらに、第1の有機結合剤が焼失したことにより、結合剤皮膜中に分散していた第1の無機結合剤が無機繊維表面に露出して、上記凝集体による凸部よりも小さな凹凸を形成する。そのため、無機繊維同士の接触の際の摩擦抵抗がさらに増加し、面圧を向上させやすくなる。
すなわち、本発明の保持シール材においては、第1の有機結合剤及び第2の有機結合剤が焼失した場合であっても、第1の無機結合剤及び第2の無機結合剤により無機繊維同士が滑ることが防止されるので、高い面圧を発揮することができる。
【0070】
本発明の保持シール材の形状等について説明する。
図4は、本発明の保持シール材の一例を模式的に示した斜視図である。図4に示すように、本発明の保持シール材は、所定の長手方向の長さ(以下、図4中、矢印Lで示す)、幅(図4中、矢印Wで示す)及び厚さ(図4中、矢印Tで示す)を有する平面視略矩形の平板形状のマットから構成されていてもよい。
【0071】
図4に示す保持シール材では、保持シール材の長さ方向側の端部のうち、一方の端部である第1の端部には凸部111が形成されており、他方の端部である第2の端部には凹部112が形成されている。保持シール材の凸部111及び凹部112は、後述する排ガス浄化装置を組み立てるために排ガス処理体に保持シール材を巻き付けた際に、ちょうど互いに嵌合するような形状となっている。
なお、「平面視略矩形」とは、凸部及び凹部を含む概念である。また、平面視略矩形には、角部が90°以外の角度を有する形状も含まれる。
【0072】
本発明の保持シール材は、ニードルパンチング処理が施されていることが好ましい。ニードルパンチング処理によって無機繊維を交絡させることで、無機繊維同士の絡み合いを強固にし、面圧を向上させやすくなる。
【0073】
ニードルパンチング処理は、ニードルパンチング装置を用いて行うことができる。ニードルパンチング装置は、無機繊維前駆体のシート状物を支持する支持板と、この支持板の上方に設けられ、突き刺し方向(素地マットの厚さ方向)に往復移動可能なニードルボードとで構成されている。ニードルボードには、多数のニードルが取り付けられている。このニードルボードを支持板に載せた無機繊維前駆体のシート状物に対して移動させ、多数のニードルを無機繊維前駆体のシート状物に対して抜き差しすることで、無機繊維前駆体を構成する繊維を複雑に交絡させることができる。ニードルパンチング処理の回数やニードル数は、目的とする嵩密度や目付量に応じて変更すればよい。
【0074】
保持シール材の厚さは特に限定されないが、2〜20mmであることが好ましい。保持シール材の厚さが20mmを超えると、保持シール材の柔軟性が失われるので、保持シール材を排ガス処理体に巻き付ける際に扱いづらくなる。また、保持シール材に巻きじわや割れが生じやすくなる。
保持シール材の厚さが2mm未満であると、保持シール材の面圧が排ガス処理体を保持するのに充分でなくなる。そのため、排ガス処理体が抜け落ちやすくなる。また、排ガス処理体に体積変化が生じた場合、保持シール材は排ガス処理体の体積変化を吸収しにくくなる。そのため、排ガス処理体にクラック等が発生しやすくなる。
【0075】
本発明の保持シール材の面圧は、面圧測定装置を用いて、以下の方法により測定することができる。
面圧の測定には、マットを圧縮する板の部分に加熱ヒーターを備えた熱間面圧測定装置を使用し、室温状態で、サンプルの嵩密度(GBD)が0.3g/cmとなるまで圧縮する。そのときの面圧を焼成前面圧とする。その後、10分間保持した。なお、サンプルの嵩密度は、「嵩密度=サンプル重量/(サンプルの面積×サンプルの厚さ)」で求められる値である。
次に、サンプルを圧縮した状態で40℃/minの昇温速度で片面900℃、片面650℃まで昇温しながら、嵩密度が0.273g/cmとなるまで圧縮を開放する。そして、サンプルを温度片面900℃、片面650℃、嵩密度0.273g/cmの状態で5分間保持する。
その後、1inch(25.4mm)/minの速度で嵩密度が0.3g/cmとなるまで圧縮する。嵩密度0.273g/cmとなるまでの圧縮の開放と、嵩密度0.3g/cmとなるまでの圧縮を1000回繰り返した後の嵩密度0.273g/cm時の荷重を測定する。得られた荷重をサンプルの面積で除算することにより、面圧(kPa)を求め、焼成後面圧とする。
【0076】
本発明の保持シール材を構成する無機繊維の飛散性については、以下の手順によって測定することができる。
まず、保持シール材を100mm×100mmに切り出し、飛散試験用サンプル210とする。この飛散試験用サンプルについて、図5(a)及び(b)に示す測定装置を用いて、無機繊維の飛散率を測定することができる。
図5(a)は、無機繊維の飛散性を測定するための測定装置の一例を模式的に示す側面図であり、図5(b)は、無機繊維の飛散性を測定するための測定装置を構成するサンプル支持アームの一部を模式的に示した平面図である。図5(a)に示すように、試験装置200は、基台250上に垂直に設けられた2本の支柱260の上端部にサンプル支持アーム270が所定の範囲内で回転可能となるよう接続されている。さらに、2本の支柱間には、上記サンプル支持アームと衝突可能な位置に、垂直壁部材290が固定されている。
また、図5(b)は、無機繊維の飛散性を測定するための測定装置のサンプル支持アーム部の一例を模式的に示した平面図である。図5(b)に示すように、サンプル支持アーム270のもう一方の端部はサンプル支持アーム270の端部同士を接続するサンプル固定部材280によって固定されている。サンプル支持アーム270の端部に接続されるサンプル固定部材280から支柱260方向に一定距離離れた位置には、もう一本のサンプル固定部材280が存在し、2本のサンプル支持アーム270は、少なくとも2箇所でサンプル固定部材によって接続されている。
【0077】
サンプル支持アーム270と支柱260との角度が90°となる位置で、サンプル支持アーム270を所定のロック機構によりロックし、飛散試験用サンプル210をクリップ220でサンプル固定部材280に固定する。サンプル支持アーム270のロックを解除すると、サンプル支持アーム270と飛散試験用サンプル210は支柱260を固定している基台250に向かう方向に落下を開始する、サンプル支持アーム270と支柱260との接続部を中心に回転するように向きを変え、サンプル支持アーム270と支柱260とが平行となる時点で、サンプル支持アーム270が垂直壁部材290に衝突する。この衝突により、飛散試験用サンプル210を構成する無機繊維の一部が破断し、飛散する。そのため、衝突前後の飛散試験用サンプルの重量を計測し、以下の式(1)を用いて、繊維飛散率を求めることができる。:
繊維飛散率(重量%)=(試験前の飛散試験用サンプルの重量−試験後の飛散試験用サンプルの重量)/(試験前の飛散試験用サンプルの重量)×100 (1)
【0078】
本発明の保持シール材の目付量(単位面積当たりの重量)は、特に限定されないが、200〜4000g/mであることが好ましく、1000〜3000g/mであることがより好ましい。保持シール材の目付量が200g/m未満であると、保持力が充分ではなく、保持シール材の目付量が4000g/mを超えると、保持シール材の嵩が低くなりにくい。そのため、このような保持シール材を用いて排ガス浄化装置を製造する場合、排ガス処理体が脱落しやすくなる。
【0079】
また、本発明の保持シール材の嵩密度(巻き付ける前の保持シール材の嵩密度)についても、特に限定されないが、0.1〜0.3g/cmであることが好ましい。保持シール材の嵩密度が0.1g/cm未満であると、無機繊維のからみ合いが弱く、無機繊維が剥離しやすいため、保持シール材の形状を所定の形状に保ちにくくなる。
また、保持シール材の嵩密度が0.3g/cmを超えると、保持シール材が硬くなるため、排ガス処理体への巻き付け性が低下し、保持シール材が割れやすくなる。
【0080】
本発明の保持シール材には、さらに膨張材が含有されていてもよい。膨張材は、400〜800℃の範囲で膨張する特性を有するものが好ましい。
保持シール材に膨張材が含有されていると、400〜800℃の範囲で保持シール材が膨張するようになるため、ガラス繊維の強度が低下する700℃を超えるような高温域においても、保持シール材として使用する際の保持力を向上させることができる。
【0081】
膨張材としては、例えば、バーミキュライト、ベントナイト、金雲母、パーライト、膨張性黒鉛、及び、膨張性フッ化雲母等が挙げられる。これらの膨張材は単独で用いても良いし、2種以上を併用してもよい。
膨張材の添加量は、特に限定されないが、保持シール材の全重量に対して10〜50重量%であることが好ましく、20〜30重量%であることが好ましい。
【0082】
本発明の保持シール材を排ガス浄化装置の保持シール材として用いる場合、排ガス浄化装置を構成する保持シール材の枚数は特に限定されず、一枚の保持シール材であってもよいし、互いに結合された複数枚の保持シール材であってもよい。複数枚の保持シール材を結合する方法としては、特に限定されず、例えば、ミシン縫いで保持シール材同士を結合する方法、粘着テープ又は接着剤で保持シール材同士を接着する方法等が挙げられる。
【0083】
次に、本発明の保持シール材の製造方法について説明する。
まず、本発明の保持シール材の製造方法の一の態様を説明する。
【0084】
本発明の保持シール材の製造方法の一の態様は、無機繊維からなるマットを準備するマット準備工程と、第1の有機結合剤と第1の無機結合剤からなる結合剤皮膜を上記無機繊維の表面に形成するための結合剤溶液を準備する結合剤溶液準備工程と、第2の有機結合剤と第2の無機結合剤を混合して上記第2の有機結合剤と上記第2の無機結合剤からなる凝集体を形成する凝集体溶液準備工程と、上記結合剤溶液及び上記凝集体溶液を上記マットに接触させることで、上記無機繊維の表面に上記第1の有機結合剤と上記第1の無機結合剤からなる結合剤皮膜を形成し、かつ、上記結合剤皮膜に上記凝集体からなる凸部を形成する溶液接触工程と、上記結合剤溶液及び上記凝集体溶液を接触させた上記マットを乾燥する乾燥工程からなることを特徴とする。
【0085】
本発明の保持シール材の製造方法の一の態様を構成する各工程について説明する。
【0086】
(a)マット準備工程
本発明の保持シール材の製造方法では、まず、無機繊維からなるマットを準備するマット準備工程を行う。
保持シール材を構成するマットは、種々の方法により得ることができるが、例えば、ニードリング法又は抄造法により製造することができる。
ニードリング法の場合、例えば、以下の方法により製造することができる。すなわち、まず、例えば、塩基性塩化アルミニウム水溶液とシリカゾル等とを原料とする紡糸用混合物をブローイング法により紡糸して無機繊維前駆体を作製する。続いて、上記無機繊維前駆体を圧縮して所定の大きさの連続したシート状物を作製し、これにニードルパンチング処理を施し、その後、焼成処理を施すことにより3〜10μmの平均繊維経を有するアルミナシリカ繊維からなるマットの準備が完了する。
【0087】
抄造法の場合、アルミナ繊維、シリカ繊維等の無機繊維と、無機粒子と、水とを原料液中の無機繊維の含有量が所定の値となるように混合し、攪拌機で攪拌することで混合液を調製する。混合液には、必要に応じて、高分子化合物や樹脂からなるコロイド溶液が含まれていてもよい。続いて、底面にろ過用のメッシュが形成された成形器に混合液を流し込んだ後に、メッシュを介して混合液中の水を脱水することにより原料シートを作製する。その後、原料シートを所定の条件で加熱圧縮乾燥することによりマットの準備が完了する。
なお、抄造法の場合、ニードリング法と比較して無機繊維の繊維長が短いため、無機結合剤や有機結合剤等の結合剤にてシート強度を維持する必要がある。排ガス処理体に巻き付けたり、排ガス浄化装置を組み立てたりする際に必要なシート強度を維持するために、成形前の混合液に対して、有機結合剤、無機結合剤等を適宜添加してもよい。
【0088】
(b)結合剤溶液準備工程
次に、第1の有機結合剤と第1の無機結合剤を溶媒中に分散させることにより結合剤溶液を準備する工程を行う。第1の有機結合剤及び第1の無機結合剤を溶媒中に添加し、必要に応じて分散剤等を加え、充分に撹拌することで、第1の有機結合剤と第1の無機結合剤が溶媒に分散した結合剤溶液を調製することができる。
【0089】
上記(b)結合剤溶液準備工程において用いる第1の有機結合剤及び第1の無機結合剤としては、特に限定されず、本発明の保持シール材の説明において述べたものを使用することができるため、その詳細な説明は省略する。
【0090】
上記(b)結合剤溶液準備工程において用いる溶媒としては、特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール等の水性有機溶媒や水等が挙げられ、製造コストの観点からは、水を使用することが好ましい。
【0091】
上記(b)結合剤溶液準備工程における第1の有機結合剤の濃度は、特に限定されないが、固形分換算で0.2〜20重量%程度に薄めた液を用いることが好ましい。
【0092】
上記(b)結合剤溶液準備工程において、第1の有機結合剤のガラス転移点は、特に限定されないが、5℃以下であることが好ましく、−10℃以下であることがより好ましく、−30℃以下であることがさらに好ましい。
【0093】
上記(b)結合剤溶液準備工程における第1の無機結合剤溶液の濃度は、特に限定されず、固形分換算で0.2〜20重量%程度に薄めた液を用いることが好ましい。
【0094】
上記(b)結合剤溶液準備工程では、必要に応じて、結合剤溶液のpHを調整するためのpH調整剤を添加してもよい。
【0095】
上記(b)結合剤溶液準備工程では、第1の有機結合剤と第1の無機結合剤とを溶液中に分散させるため、必要に応じて、高分子系分散剤を添加してもよい。
【0096】
上記(b)結合剤溶液準備工程において用いる高分子系分散剤の種類は特に限定されないが、ポリカルボン酸及び/又はその塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物及び/又はその塩、ポリアクリル酸及び/又はその塩、ポリメタクリル酸及び/又はその塩、ポリビニルスルホン酸及び/又はその塩、等のアニオン性高分子系分散剤、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等のノニオン性高分子系分散剤、などの親水性合成高分子物質;ゼラチン、カゼイン、水溶性でんぷん等の天然親水性高分子物質;カルボキシメチルセルロース等の親水性半合成高分子物質等が挙げられる。
これらの中では、親水性合成高分子物質が好ましく、アニオン性高分子系分散剤がより好ましい。例えば、無機粒子としてアルミナゾル由来のアルミナ粒子を使用した場合、上記アルミナ粒子の表面は分散溶液中でカチオン性となる。そのため、アニオン性高分子系分散剤は静電引力によりアルミナ粒子に吸着しやすい。さらに、高分子系分散剤が極性を有する場合は、第1の有機結合剤も例えばアクリル系樹脂のように極性を有するものが好ましい。これは結合剤皮膜中で第1の有機結合剤と高分子系分散剤の相溶性が高まることで、アンカー効果により結合剤皮膜の強度が向上するためである。
また、これらの高分子系分散剤は、1種類のみ用いられていてもよく、複数種類が併用されていてもよい。また、アニオン性高分子系分散剤としての性質を示す構造とノニオン性高分子系分散剤としての性質を示す構造を共に有する高分子系分散剤であってもよい。
【0097】
上記(b)結合剤溶液準備工程において用いる高分子系分散剤としては、数平均分子量が500〜100000であるアニオン性高分子系分散剤も特に好ましい。
【0098】
上記(b)結合剤溶液準備工程における結合剤溶液中の高分子系分散剤の濃度は、特に限定されないが、50〜1000ppmであることが好ましい。高分子系分散剤の濃度が50ppm未満の場合には、高分子系分散剤の量が不足するために結合剤溶液中で第1の有機結合剤と第1の無機結合剤とが凝集してしまうことがあり、1000ppmを越える場合は、分散させる効果が変わらないため、過剰な添加は好ましくない。
【0099】
(c)凝集体溶液準備工程
次に、第2の有機結合剤と第2の無機結合剤を混合して第2の有機結合剤と第2の無機結合剤が凝集した凝集体を含む溶液を作製する凝集体溶液準備工程を行う。
凝集体溶液を準備する方法は、第2の有機結合剤と第2の無機結合剤を凝集させることができれば特に限定されないが、例えば、第2の有機結合剤を溶媒中に分散させた溶液(第2の有機結合剤溶液)中に、第2の無機結合剤を溶媒中に分散させた溶液(第2の無機結合剤溶液)を添加し、必要に応じて凝集剤を添加することにより調製することができる。
【0100】
上記(c)凝集体溶液準備工程で用いる第2の有機結合剤及び第2の無機結合剤としては、特に限定されず、本発明の保持シール材の説明において述べたものを使用することができるため、その詳細な説明は省略する。
【0101】
上記(c)凝集体溶液準備工程で用いる第2の無機結合剤の濃度は、特に限定されないが、第2の無機結合剤の濃度を固形分換算で0.2〜20重量%程度に薄めた溶液を用いることが好ましい。
【0102】
上記(c)凝集体溶液準備工程で用いる第2の有機結合剤としては、特に限定されず、本発明の保持シール材の説明において述べたものを使用することができるため、その詳細な説明は省略する。
【0103】
上記(c)凝集体溶液準備工程で用いる第2の有機結合剤の濃度は、特に限定されないが、第2の有機結合剤の濃度を固形分換算で0.2〜20重量%程度に薄めた溶液を用いることが好ましい。
【0104】
上記(c)凝集体溶液準備工程で用いる溶媒としては、特に限定されず、例えば、上記(b)結合剤溶液準備工程で用いた溶媒と同様のものを用いることができる。
【0105】
上記(c)凝集体溶液準備工程において、第2の有機結合剤のガラス転移点は、特に限定されないが、5℃以下であることが好ましく、−10℃以下であることがより好ましく、−30℃以下であることがさらに好ましい。
【0106】
上記(c)凝集体溶液準備工程では、必要に応じて、凝集体溶液のpHを調整するためのpH調整剤を添加してもよい。
【0107】
上記(c)凝集体溶液準備工程では、必要に応じて、第2の有機結合剤と第2の無機結合剤の凝集を促進させる凝集剤を添加してもよく、例えば、ポリアクリルアミド、アクリル系共重合体等の有機凝集剤やアルミン酸塩等の無機凝集剤等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
【0108】
凝集剤の添加量は、凝集体溶液の全量に対して、0.5重量%以下であることが好ましく、0.2〜0.4重量%であることがより好ましい。
【0109】
(d)溶液接触工程
次に、上記結合剤溶液及び上記凝集体溶液を上記マットと接触させる溶液接触工程を行う。
この溶液接触工程において、マットを結合剤溶液及び凝集体溶液と接触させる方法は、特に限定されず、例えば、マットを結合剤溶液及び凝集体溶液に含浸することにより、マット中の無機繊維に結合剤溶液及び凝集体溶液を接触させてもよく、カーテンコート法等の方法で結合剤溶液及び凝集体溶液をマット上に落下させることにより、マット中の無機繊維に結合剤溶液及び凝集体溶液を接触させてもよく、スプレーコーティングのように結合剤溶液及び凝集体溶液を噴霧してマットに吹き付けてもよい。
結合剤溶液及び凝集体溶液を接触させる順番は、特に限定されず、結合剤溶液を接触させ、無機繊維を乾燥させた後に凝集体溶液を接触させてもよいし、無機繊維を乾燥させず、結合剤溶液との接触後、引き続いて凝集体溶液と接触させてもよい。
結合剤溶液及び凝集体溶液を接触させたマットを脱溶媒処理することにより、上記マットを構成する無機繊維に結合剤皮膜及び凝集体を形成することができる。
上記脱溶媒処理においては、上記マットを構成する無機繊維100重量部に対する上記結合剤溶液の付与量が50〜200重量部となるように調整することが好ましい。
【0110】
なお、凝集体溶液を接触させる際には、凝集体溶液を撹拌等を行うことで、凝集体を溶液中に分散しながら無機繊維と接触させることが好ましい。凝集体溶液を撹拌しながら無機繊維と接触させることで、凝集体の沈殿を防止し、さらに、凝集体の大きさが大きくなりすぎることを抑制することができる。
【0111】
上記(d)溶媒接触工程では、結合剤溶液をマットと接触させた際及び凝集体溶液をマットと接触させた際に、結合剤溶液及び凝集体溶液中の溶媒を除去する脱溶媒処理を行ってもよい。
脱溶媒処理としては、マットに含まれる溶媒を除去することができれば特に限定されないが、例えば、圧縮、回転、吸引、減圧等の手段により溶媒を除去することができる。
【0112】
(e)乾燥工程
この後、上記結合剤溶液及び上記凝集体溶液を接触させた上記マットを、110〜140℃程度の温度で乾燥させる乾燥工程を行い、溶媒を除去する。上記乾燥工程によって、無機繊維の表面に第1の有機結合剤と第1の無機結合剤からなる結合剤皮膜が形成され、さらに、上記結合剤皮膜に第2の有機結合剤及び第2の無機結合剤からなる凝集体が突出することで凸部が形成される。
乾燥工程においては、加熱熱風乾燥、通気乾燥、熱板による圧縮乾燥等の方法を用いてマットを乾燥させることができる。
もし、熱板による乾燥を行うとマット内に含浸された結合剤溶液及び凝集体溶液の分布が厚み方向に均一となるため、厚みの成形性が悪い抄造法のマットには有利となる。
【0113】
本発明の保持シール材の製造方法では、第1の有機結合剤と第1の無機結合剤からなる結合剤溶液と、第2の有機結合剤と第2の無機結合剤からなる凝集体を含む凝集体溶液をマットに接触させる。第1の有機結合剤と第1の無機結合剤からなる結合剤溶液をマットに接触させることによって、無機繊維表面には第1の有機結合剤と第1の無機結合剤からなる結合剤皮膜が形成される。さらに、凝集体溶液をマットに接触させることによって、第2の有機結合剤と第2の無機結合剤からなる凝集体が結合剤皮膜から突出するように形成されることとなる。
そのため、無機繊維が破断した場合であっても、結合剤皮膜により無機繊維の飛散を抑制することができる。さらに、結合剤皮膜には、第2の有機結合剤と第2の無機結合剤からなる凝集体が結合剤皮膜から突出することで凸部を形成している。そのため、無機繊維同士が接触した場合に、上記凸部が引っ掛かることにより摩擦抵抗となり、無機繊維が滑ることが起こりにくくなる。その結果、保持シール材の面圧が向上する。
【0114】
以上説明したように、本発明の保持シール材の製造方法の一の態様によって、本発明の保持シール材を容易に製造することができる。
一方、本発明の保持シール材は、上記の方法以外によっても容易に製造することができる。その方法を、本発明の保持シール材の製造方法の別の態様として、以下に説明する。
【0115】
本発明の保持シール材の製造方法の別の態様は、無機繊維からなるマットを準備するマット準備工程と、有機結合剤からなる有機結合剤溶液を準備する有機結合剤溶液準備工程と、
無機結合剤からなる無機結合剤溶液を準備する無機結合剤溶液準備工程と、上記有機結合剤溶液を上記マットに接触させる工程と上記無機結合剤溶液を上記マットに接触させる工程とをそれぞれ行うことで、上記無機繊維の表面に上記有機結合剤溶液に由来する第1の有機結合剤と上記無機結合剤溶液に由来する第1の無機結合剤からなる結合剤皮膜を形成し、かつ、上記結合剤皮膜上で上記有機結合剤溶液に由来する第2の有機結合剤と上記無機結合剤溶液に由来する第2の無機結合剤を凝集させて凝集体を形成し、上記結合剤皮膜上に上記凝集体からなる凸部を形成する溶液接触工程と、上記有機結合剤溶液及び上記無機結合剤溶液を接触させた上記マットを乾燥する乾燥工程からなることを特徴とする。
【0116】
以下に、本発明の保持シール材の製造方法の別の態様を構成する各工程について説明する。
【0117】
(a)マット準備工程
本発明の保持シール材の製造方法の別の態様では、まず、無機繊維からなるマットを準備するマット準備工程を行う。
マット準備工程は、既に説明した本発明の保持シール材の製造方法の一の態様と同じであるため、説明を省略する。
【0118】
(b)有機結合剤溶液準備工程
次に、有機結合剤を溶媒中に分散させることにより有機結合剤溶液を準備する工程を行う。
有機結合剤を溶媒中に添加し、充分に撹拌することで、有機結合剤が溶媒に分散した有機結合剤溶液を調製することができる。
【0119】
上記(b)有機結合剤溶液準備工程において用いる有機結合剤としては、特に限定されず、本発明の保持シール材で説明した第1の有機結合剤及び第2の有機結合剤として記載された化合物を好適に用いることができ、アクリル系樹脂、アクリレート系ラテックス、ゴム系ラテックス、カルボキシメチルセルロース又はポリビニルアルコール等の水溶性有機重合体、スチレン樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられ、アクリル樹脂が特に好ましく、2種以上を併用してもよい。
【0120】
上記(b)有機結合剤溶液準備工程において用いる溶媒としては、特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール等の水性有機溶媒や水等が挙げられ、製造コストの観点からは、水を使用することが好ましい。
【0121】
上記(b)有機結合剤溶液準備工程において、有機結合剤溶液の濃度は、特に限定されないが、固形分換算で0.2〜20重量%程度に薄めた液を用いることが好ましい。
【0122】
上記(b)有機結合剤溶液準備工程において用いる有機結合剤のガラス転移点は、特に限定されないが、5℃以下であることが好ましく、−10℃以下であることがより好ましく、−30℃以下であることがさらに好ましい。
上記(b)有機結合剤溶液準備工程において用いる有機結合剤のガラス転移点を5℃以下とすることで、無機繊維の表面に形成される結合剤皮膜の強度を高くしつつ、皮膜伸度が高くて可撓性に優れた保持シール材を製造することができる。このような保持シール材は、排ガス処理体に巻き付ける際に保持シール材が折れにくくなる。また、結合剤皮膜が硬くなり過ぎないため、無機繊維の飛散を抑制しやすくなる。
【0123】
上記(b)有機結合剤溶液準備工程では、必要に応じて、有機結合剤溶液のpHを調整するためのpH調整剤を添加してもよい。
【0124】
(c)無機結合剤溶液準備工程
次に、無機結合剤を溶媒中に分散させることで、無機結合剤溶液を準備する無機結合剤溶液準備工程を行う。
無機結合剤を溶媒中に添加し、充分に撹拌することで、無機結合剤が溶媒に分散した無機結合剤溶液を調製することができる。
【0125】
上記(c)無機結合剤溶液準備工程で用いる無機結合剤としては、特に限定されず、本発明の保持シール材で説明した第1の無機結合剤及び第2の無機結合剤として記載された化合物を好適に用いることができる。
【0126】
上記(c)無機結合剤溶液準備工程において、無機結合剤溶液の濃度は特に限定されないが、無機結合剤の濃度を固形分換算で0.2〜20重量%程度に薄めた溶液を用いることが好ましい。
【0127】
上記(c)無機結合剤溶液準備工程で用いる溶媒としては、特に限定されず、例えば、上記有機結合剤溶液準備工程で用いた溶媒と同様のものを用いることができる。
【0128】
上記(c)無機結合剤溶液準備工程では、無機結合剤溶液のpHを調整するためのpH調整剤を添加してもよい。
【0129】
(d)溶液接触工程
この溶液接触工程では、無機繊維に対して有機結合剤溶液と無機結合剤溶液を別々に接触させる。先にマットと有機結合剤溶液とを接触させた場合、無機繊維の表面にはまず有機結合剤が付着する。続いて、マットを無機結合剤溶液と接触させると、無機繊維の表面に存在する有機結合剤と、無機結合剤溶液中に含まれる無機結合剤が凝集して凝集体を形成する。さらに、上記凝集体を形成しなかった有機結合剤と無機結合剤は凝集せずに、有機結合剤としての高分子樹脂成分中に無機結合剤としての無機粒子が分散する。そのため、無機繊維の表面には有機結合剤と無機結合剤からなる結合剤皮膜が形成され、かつ、上記結合剤皮膜から有機結合剤と無機結合剤からなる凝集体が突出して凸部を形成することとなる。
すなわち、無機繊維の表面に有機結合剤溶液に由来する第1の有機結合剤と無機結合剤溶液に由来する第1の無機結合剤からなる結合剤皮膜を形成し、かつ、結合剤皮膜上で有機結合剤溶液に由来する第2の有機結合剤と無機結合剤溶液に由来する第2の無機結合剤を凝集させて凝集体を形成、結合剤皮膜上に凝集体からなる凸部を形成することとなる。
【0130】
上記(d)溶液接触工程において有機結合剤溶液と無機結合剤をマットに接触させる順序は特に限定されないが、まず有機結合剤溶液をマットに接触させ、その後無機結合剤溶液をマットに接触させることが好ましい。
まず有機結合剤溶液をマットに接触させることによって、無機繊維の表面に結合剤皮膜を形成することができるため、続く無機結合剤溶液との接触において、有機結合剤溶液と無機結合剤溶液とが接触しやすくなる。
【0131】
上記(d)溶媒接触工程では、有機結合剤溶液をマットと接触させた際及び無機結合剤溶液をマットと接触させた際に、溶媒を除去する脱溶媒処理を行ってもよい。
脱溶媒処理としては、マットに含まれる溶媒を除去することができれば特に限定されないが、例えば、圧縮、回転、吸引、減圧等の手段により溶媒を除去することができる。
【0132】
なお、本発明の保持シール材の製造方法の別の態様において、有機結合剤は第1の有機結合剤と第2の有機結合剤の混合物ではなく、単に、上記(d)溶液接触工程において、有機結合剤のうち、凝集体を形成するものを第2の有機結合剤、結合剤皮膜を形成するものを第1の有機結合剤と区別しているものである。
【0133】
(e)乾燥工程
続いて、上記(e)溶液接触工程を終えたマットを乾燥する乾燥工程を行うが、本発明の保持シール材の製造方法の別の態様を構成する乾燥工程は、本発明の保持シール材の製造方法の一の態様を構成する乾燥工程と同じであるため、説明を省略する。
乾燥工程によって、無機繊維の表面に第1の有機結合剤と第1の無機結合剤からなる結合剤皮膜が形成され、さらに、上記結合剤皮膜に第2の有機結合剤と第2の無機結合剤からなる凝集体が突出することで凸部が形成される。
【0134】
このような製造方法によって製造された保持シール材は、無機繊維の表面に第1の有機結合剤と第1の無機結合剤からなる結合剤皮膜を有しており、さらに、上記結合剤皮膜から上記第2の有機結合剤と上記第2の無機結合剤からなる凝集体が突出して凸部を形成している。
従って、本発明の保持シール材の製造方法の別の態様では、本発明の保持シール材を容易に製造することができる。
【0135】
以上説明したように、本発明の保持シール材の製造方法の一の態様と本発明の保持シール材の製造方法の別の態様とでは、結合剤皮膜及び凝集体が形成される場所が異なる。すなわち、本発明の保持シール材の製造方法の一の態様では、第1の有機結合剤と第1の無機結合剤からなる結合剤溶液と、第2の有機結合剤と第2の無機結合剤からなる凝集体溶液とが無機繊維の表面にそれぞれ接触する。これに対して、本発明の保持シール材の製造方法の別の態様では、有機結合剤溶液と無機結合剤溶液がそれぞれ個別に無機繊維の表面と接触する。無機繊維の表面で有機結合剤と無機結合剤が接触することで、初めて結合剤皮膜と凝集体が形成される。それ以外の点、例えば、マット準備工程、乾燥工程は共通している。
【0136】
本発明の保持シール材の製造方法により製造した保持シール材を図4に示すような凸部と凹部を備えた形状の保持シール材とするためには、保持シール材を所定の形状に裁断する裁断工程をさらに行えばよい。
【0137】
保持シール材の裁断は、トムソン刃、ギロチン刃、レーザー、ウォータジェット等により行うことができる。適宜、状況に応じて上記裁断方法を用いればよいが、大量加工を重視するのではあればトムソン刃やギロチン刃が好ましく、裁断精度を重視するのであればレーザーやウォータジェットが好ましい。
【0138】
本発明の保持シール材は、排ガス浄化装置の保持シール材として使用することができる。
【0139】
以下、本発明の排ガス浄化装置について説明する。
本発明の排ガス浄化装置は、金属ケーシングと、上記金属ケーシングに収容された排ガス処理体と、上記排ガス処理体の周囲に巻き付けられ、上記排ガス処理体及び上記金属ケーシングの間に配設された保持シール材とを備える排ガス浄化装置であって、上記保持シール材は、本発明の保持シール材又は本発明の保持シール材の製造方法により製造された保持シール材である。
【0140】
図6は、本発明の排ガス浄化装置の一例を模式的に示す断面図である。
図6に示すように、本発明の排ガス浄化装置100は、金属ケーシング130と、金属ケーシング130に収容された排ガス処理体120と、排ガス処理体120及び金属ケーシング130の間に配設された保持シール材110とを備えている。
排ガス処理体120は、多数のセル125がセル壁126を隔てて長手方向に並設された柱状のものである。なお、金属ケーシング130の端部には、必要に応じて、内燃機関から排出された排ガスを導入する導入管と、排ガス浄化装置を通過した排ガスが外部に排出される排出管とが接続されることとなる。
【0141】
次に、本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体(ハニカムフィルタ)及び金属ケーシングについて説明する。
なお、排ガス浄化装置を構成する保持シール材の構成については、本発明の保持シール材としてすでに説明しているので省略する。
【0142】
本発明の排ガス浄化装置を構成する金属ケーシングの材質は、耐熱性を有する金属であれば特に限定されず、具体的には、ステンレス、アルミニウム、鉄等の金属類が挙げられる。
【0143】
本発明の排ガス浄化装置を構成する金属ケーシングの形状は、略円筒型形状のほか、クラムシェル型形状等を好適に用いることができる。
【0144】
続いて、排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体について説明する。
図7は、本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体の一例を模式的に示す斜視図である。
【0145】
図6に示す排ガス処理体120は、多数のセル125がセル壁126を隔てて長手方向に併設される柱状のセラミック質からなるハニカム構造体である。また、セル125のいずれかの端部は、封止材128で封止されている。
【0146】
セル125のいずれかの端部が封止されている場合、排ガス処理体120の一方の端部からみたときに、端部が封止されたセルと封止されていないセルとが交互に配置されていることが好ましい。
【0147】
排ガス処理体120を長手方向に垂直な方向に切断した断面形状は、特に限定されず、略円形、略楕円形でもよく、略三角形、略四角形、略五角形、略六角形等の略多角形であってもよい。
【0148】
排ガス処理体120を構成するセル125の断面形状は、略三角形、略四角形、略五角形、略六角形等の略多角形でもよく、また、略円形、略楕円形であってもよい。また、排ガス処理体120は、複数の断面形状のセルが組み合わされたものであってもよい。
【0149】
排ガス処理体120を構成する素材は特に限定されないが、炭化ケイ素質及び窒化ケイ素質等の非酸化物、並びに、コージェライト及びチタン酸アルミニウム等の酸化物を用いることができる。これらのうち、特に、炭化ケイ素質又は窒化ケイ素質等の非酸化物多孔質焼成体であることが好ましい。
これら多孔質焼成体は、脆性材料であるので、機械的な衝撃等により破壊されやすい。しかし、本発明の排ガス浄化装置では、排ガス処理体120の側面の周囲には保持シール材110が介在し、衝撃を吸収するので、機械的な衝撃や熱衝撃により排ガス処理体120にクラック等が発生するのを防止することができる。
【0150】
本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体には、排ガスを浄化するための触媒を担持させてもよく、担持させる触媒としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属が好ましく、この中では、白金がより好ましい。また、その他の触媒として、例えば、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、バリウム等のアルカリ土類金属を用いる事もできる。これらの触媒は、単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。これら触媒が担持されていると、PMを燃焼除去しやすくなり、有毒な排ガスの浄化も可能になる。
【0151】
本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体としては、コージェライト等からなり、一体的に形成された一体型ハニカム構造体であってもよく、あるいは、炭化ケイ素等からなり、多数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム焼成体を主にセラミックを含むペーストを介して複数個結束してなる集合型ハニカム構造体であってもよい。
【0152】
本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体は、セルに封止材が設けられずに、セルの端部が封止されていなくてもよい。この場合、排ガス処理体は、白金等の触媒を担持させることによって、排ガス中に含まれるCO、HC又はNOx等の有害なガス成分を浄化する触媒担体として機能する。
【0153】
本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体は、外周面に外周コート層が形成されていてもよい。排ガス処理体の外周面に外周コート層が形成されていると、排ガス処理体の外周部を補強したり、形状を整えたり、断熱性を向上させることができる。なお、排ガス処理体の外周面とは、柱状である排ガス処理体の側面部分を指す。
【0154】
上述した構成を有する排ガス浄化装置100を排ガスが通過する場合について、図6を参照して以下に説明する。
図6に示すように、内燃機関から排出され、排ガス浄化装置100に流入した排ガス(図6中、排ガスをGで示し、排ガスの流れを矢印で示す)は、排ガス処理体(ハニカムフィルタ)120の排ガス流入型端面120aに開口した一のセル125に流入し、セル125を隔てるセル壁126を通過する。この際、排ガス中のPMがセル壁126で捕集され、排ガスが浄化されることとなる。浄化された排ガスは、排ガス処理側端面120bに開口した他のセル125から流出し、外部に排出される。
【0155】
次に、本発明の排ガス浄化装置の製造方法について説明する。
【0156】
図8は、本発明の排ガス浄化装置の製造方法の一例を模式的に示した斜視図である。
本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体及び保持シール材は、図8に示すように排ガス処理体120の周囲に沿って保持シール材110を巻き付け、巻付体140とする。次に、この巻付体140を金属ケーシング130に収容することで、本発明の排ガス浄化装置となる。
【0157】
次に、巻付体140を金属ケーシング130に収容する方法としては、例えば、金属ケーシング130内部の所定の位置まで周囲に保持シール材110が配設された排ガス処理体120を圧入する圧入方式(スタッフィング方式)、金属ケーシング130の内径を縮めるように外周側から圧縮するサイジング方式(スウェージング形式)、並びに、金属ケーシングを第1のケーシング及び第2のケーシングの部品に分離可能な形状としておき、巻付体140を第1のケーシング上に載置した後に第2のケーシングをかぶせて密封するクラムシェル方式等が挙げられる。
圧入方式(スタッフィング方式)によって巻付体を金属ケーシングに収容する場合、金属ケーシングの内径(排ガス処理体を収容する部分の内径)は、上記巻付体の外径より若干小さくなっていることが好ましい。
【0158】
本発明の排ガス浄化装置は、互いに結合された2層以上の複数枚の保持シール材から構成されていてもよい。複数枚の保持シール材を結合する方法としては、特に限定されず、例えば、ミシン縫いで保持シール材同士を結合する方法、粘着テープ又は接着剤で保持シール材同士を接着する方法等が挙げられる。
【0159】
これらの工程を経て、本発明の排ガス浄化装置が製造される。
【0160】
本発明の排ガス浄化装置では、排ガス処理体と金属ケーシングとの間に、保持シール材が介在しており、上記保持シール材は、本発明の保持シール材、本発明の保持シール材の別の態様、又は、本発明の保持シール材の製造方法により製造された保持シール材である。
本発明の保持シール材の製造方法により製造された保持シール材は、無機繊維の表面に第1の有機結合剤と第1の無機結合剤からなる結合剤皮膜が形成されている。無機繊維の表面に結合剤皮膜が形成されているため、無機繊維が破断した場合であっても、結合剤皮膜により無機繊維の飛散を抑制することができる。さらに、結合剤皮膜からは、凝集体が突出している。そのため、無機繊維同士が接触した場合に、凝集体による凸部が引っ掛かり、無機繊維同士の摩擦抵抗を増加させる。その結果、保持シール材の面圧を向上させることができる。また、排ガスの熱によって結合剤皮膜及び凝集体中の有機結合剤が焼失した場合、無機繊維のおおよそ表面全体には結合剤皮膜中の第1の無機結合剤による微細な凸部と、凝集体中の第2の無機結合剤に由来する大きな凸部が形成される。これらの無機結合剤に由来する凸部が無機繊維のおおよそ表面全体に形成されていることで、繊維同士が滑りにくくなり、高い面圧を保持することができ、排ガス処理体の破損を抑制することができる。
【0161】
以下に、本発明の保持シール材、保持シール材の製造方法及び排ガス浄化装置の作用効果について説明する。
【0162】
(1)本発明の保持シール材では、無機繊維の表面に第1の有機結合剤と第1の無機結合剤からなる結合剤皮膜が形成されている。そのため、無機繊維が破断した場合であっても、結合剤皮膜により無機繊維の飛散を抑制することができる。従って、本発明の保持シール材が巻き付けられた排ガス処理体を金属ケーシングに圧入等して排ガス浄化装置を製造する際、無機繊維の飛散を抑制することができる。
【0163】
(2)本発明の保持シール材では、結合剤皮膜から第2の有機結合剤と第2の無機結合剤からなる凝集体が突出して、複数の凸部を形成している。そのため、無機繊維同士が接触した場合に、上記凸部が引っ掛かることにより摩擦抵抗となり、無機繊維同士が滑りにくくなる。その結果、保持シール材の面圧が向上する。
【0164】
(3)本発明の保持シール材の製造方法では、上記構成の保持シール材を容易に製造することができる。
【0165】
(4)本発明の排ガス浄化装置では、排ガス処理体と金属ケーシングとの間に、保持シール材が介在しているので、排ガスが漏れるのを防ぐことができるとともに、保持シール材を構成する無機繊維表面に第2の有機結合剤と第2の無機結合剤からなる凝集体が突出して、複数の凸部を形成しているので、保持シール材の面圧が高く、排ガス処理体を安定的に保持することができる。
【0166】
(5)さらに、本発明の排ガス浄化装置では、排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体に高温の排ガスが流通すること等により、結合剤皮膜中の第1の有機結合剤及び凝集体中の第2の有機結合剤が焼失する。結合剤皮膜中の第1の有機結合剤及び凝集体中の第2の有機結合剤が焼失したとしても、結合剤皮膜中の第1の無機結合剤及び凝集体中の第2の無機結合剤は焼失しないため、無機繊維の表面には第1の無機結合剤に由来する微細な凸部と、第2の無機結合剤に由来する大きな凸部が形成され、無機繊維同士の摩擦抵抗を増加させるため、面圧を高く保つことができる。
【0167】
(実施例)
以下、本発明をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0168】
(実施例1)
(a)マット準備工程
まず、以下の手順により無機繊維からなるマットを準備した。
【0169】
(a−1)紡糸工程
Al含有量が70g/lであり、Al:Cl=1:1.8(原子比)となるように調製した塩基性塩化アルミニウム水溶液に対して、焼成後の無機繊維における組成比が、Al:SiO=72:28(重量比)となるようにシリカゾルを配合し、さらに、有機重合体(ポリビニルアルコール)を適量添加して混合液を調製した。
得られた混合液を濃縮して紡糸用混合物とし、この紡糸用混合物をブローイング法により紡糸して無機繊維前駆体を作製した。
【0170】
(a−2)圧縮工程
上記工程(a−1)で得られた無機繊維前駆体を圧縮して、連続したシート状物を作製した。
【0171】
(a−3)ニードルパンチング工程
上記工程(a−2)で得られたシート状物に対して、以下に示す条件を用いて連続的にニードルパンチング処理を行ってニードルパンチング処理体を作製した。
まず、ニードルが21個/cmの密度で取り付けられたニードルボードを準備した。次に、このニードルボードをシート状物の一方の表面の上方に配設し、ニードルボードをシート状物の厚さ方向に沿って一回上下させることによりニードルパンチング処理を行い、ニードルパンチング処理体を作製した。この際、ニードルの先端部分に形成されたバーブがシート状物の反対側の表面に完全に貫出するまでニードルを貫通させた。
【0172】
(a−4)焼成工程
上記工程(a−3)で得られたニードルパンチング処理体を最高温度1250℃で連続して焼成し、アルミナとシリカとを72重量部:28重量部で含む無機繊維からなる焼成シート状物を製造した。無機繊維の平均繊維径は、5.1μmであり、無機繊維径の最小値は、3.2μmであった。このようにして得られた焼成シート状物は、嵩密度が0.15g/cmであり、目付量が1500g/mである。
【0173】
(a−5)裁断工程
上記工程(a−4)で得られた焼成シート状物を裁断して、無機繊維からなるマットを作製した。
【0174】
(b)結合剤溶液準備工程
(b−1)第1の有機結合剤溶液準備工程
第1の有機結合剤溶液としてガラス転移点が−10℃であるアクリルゴムを水に分散させたアクリレート系ラテックス(日本ゼオン社製 Nipol LX854E(固形分濃度:45wt%))を用い、水で希釈することにより、固形分濃度が2重量%の第1の有機結合剤溶液を調製した。
【0175】
(b−2)第1の無機結合剤溶液準備工程
第1の無機結合剤としてアルミナコロイド溶液(アルミナゾル)(日産化学工業社製 アルミナゾル550(固形分濃度:15wt%))を水で希釈し、アニオン性高分子系分散剤(サンノプコ社製 ノプコサントRFA)を添加して充分攪拌することで、無機粒子の固形分濃度が2重量%であり、上記アニオン性高分子系分散剤の濃度が500ppmである無機結合剤溶液を調製した。
【0176】
(b−3)結合剤溶液調製工程
上記工程(b−2)で得られた第1の無機結合剤溶液に上記工程(b−1)で得られた第1の有機結合剤溶液を、第1の有機結合剤溶液:第1の無機結合剤溶液=1:1の重量比になるよう加え充分攪拌することで、第1の有機結合剤が固形分濃度で1重量%、第1の無機結合剤が固形分濃度で1重量%、上記アニオン性高分子系分散剤の濃度が250ppmである結合剤溶液を調製した。
【0177】
(c)凝集体溶液準備工程
(c−1)第2の有機結合剤溶液準備工程
第2の有機結合剤溶液としてガラス転移点が−10℃であるアクリルゴムを水に分散させたアクリレート系ラテックス(日本ゼオン社製 Nipol LX854E(固形分濃度:45wt%))を用い、水で希釈することにより、固形分濃度が2重量%の第2の有機結合剤溶液を調製した。
(c−2)第2の無機結合剤溶液準備工程
第2の無機結合剤としてアルミナコロイド溶液(アルミナゾル)(日産化学工業社製 アルミナゾル550(固形分濃度:15wt%))を水で希釈し、固形分濃度が2重量%の第2の無機結合剤溶液を調製した。
(c−3)凝集体溶液調製工程
上記(c−1)第2の有機結合剤溶液準備工程で得られた第2の有機結合剤溶液に上記(c−2)第2の無機結合剤溶液準備工程で得られた第2の無機結合剤溶液を、第2の有機結合剤溶液:第2の無機結合剤溶液=1:1の重量比になるよう加え充分攪拌し、その後静置することで、第2の有機結合剤と第2の無機結合剤が凝集した凝集体溶液を調製した。
【0178】
(d)溶液接触工程
上記(b)結合剤溶液準備工程で得られた結合剤溶液と上記(c)凝集体溶液準備工程で得られた凝集体溶液を1:1の重量比で混合し、充分に撹拌させながら、カーテンコート法により(a)マット準備工程で得られたマットに接触させた。さらに、凝集体溶液及び結合剤溶液が付与されたマットを吸引脱水機によって吸引脱水することにより、結合剤皮膜と該結合剤皮膜から突出する凝集体を形成した。
【0179】
(e)乾燥工程
上記(d)溶液接触工程により得られたマットを、温度130℃、風速2m/sの熱風を吹き付けることにより加熱熱風乾燥して、第1の有機結合剤及び第2の有機結合剤の合計量と、第1の無機結合剤及び第2の無機結合剤の含有量が、それぞれ、保持シール材全体の1重量%である保持シール材とした。
【0180】
(実施例2)
(a)マット準備工程
実施例1に記載のマット準備工程と同様の手順により無機繊維からなるマットを準備した。
【0181】
(b)有機結合剤溶液準備工程
有機結合剤として、ガラス転移点が−10℃であるアクリルゴムを水に分散させたアクリレート系ラテックス(日本ゼオン社製 Nipol LX854E(固形分濃度:45重量%))を、溶液全体に対して固形分換算で有機結合剤濃度が1重量%となるように水に添加し、充分に撹拌することで有機結合剤からなる有機結合剤溶液を調製した。
【0182】
(c)無機結合剤溶液準備工程
無機結合剤として、アルミナコロイド溶液(アルミナゾル)(日産化学工業社製 アルミナゾル550(固形分濃度:15重量%))を、溶液全体に対して固形分換算で無機結合剤濃度が1重量%となるように水に添加し、充分に撹拌することで無機結合剤からなる無機結合剤溶液を調製した。
【0183】
(d)溶液接触工程
まず、上記(b)有機結合剤溶液準備工程で作製した有機結合剤溶液をカーテンコート法により、上記(a)マット準備工程で得られたマットに接触させた。続いて、有機結合剤溶液と接触させたマットを吸引脱水機によって吸引脱水することにより、有機結合剤の合計が、後述する(e)乾燥工程終了後に、保持シール材全体の1重量%となるように調製した。
さらに、有機結合剤溶液を接触させて吸引脱水を行ったマットに対して、上記(c)無機結合剤溶液準備工程で作製した無機結合剤溶液を、カーテンコート法により接触させた。続いて、無機結合剤溶液と接触させたマットを吸引脱水機によって吸引脱水することにより、結合剤皮膜と該結合剤皮膜から突出する凝集体を形成した。
【0184】
(e)乾燥工程
上記(d)溶液接触工程により得られたマットを、温度130℃、風速2m/sの熱風を吹き付けることにより加熱熱風乾燥して、有機結合剤及び無機結合剤の重量が保持シール材全量に対して、それぞれ1重量%である保持シール材とした。
【0185】
(比較例1)
実施例1における(b)結合剤溶液準備工程を行わず、(c)凝集体溶液準備工程において、第2の有機結合剤及び第2の無機結合剤を、溶液全体に対して固形分換算で、第2の有機結合剤:第2の無機結合剤=1重量%:1重量%となるように準備し、凝集体溶液を撹拌せずにマットと接触させたほかは、実施例1と同様の方法で、比較例1に係る保持シール材を製造した。
【0186】
(比較例2)
実施例2における(c)無機結合剤溶液準備工程を行わず、無機結合剤溶液とマットを接触させないほかは、実施例2と同様の方法で、比較例2に係る保持シール材を製造した。
【0187】
(有機結合剤及び無機結合剤の含有量(重量%)の測定)
各実施例及び各比較例で得られた保持シール材を一定重量サンプルとして採取し、サンプル中に含まれる有機結合剤が溶解する有機溶媒(テトラヒドロフラン)を選び、ソックスレー抽出器にて上記有機結合剤を溶解し、サンプルから分離した。この時、溶解した上記有機結合剤に含まれる無機結合剤もサンプルから分離され、有機溶媒中に上記有機結合剤と上記無機結合剤とが回収される。
この上記有機結合剤と上記無機結合剤からなる有機溶媒をるつぼに入れ、加熱により有機溶剤を蒸発除去した。
るつぼに残った残渣を、保持シール材に対する上記有機結合剤と上記無機結合剤の合計重量とみなし、保持シール材の重量に対する含有量(重量%)を算出した。
さらに、るつぼを600℃で1時間加熱処理し、有機結合剤を焼失させた。るつぼ中には、無機結合剤が残留しているので、これを有機結合剤と無機結合剤の合計に対する無機結合剤の含有量(重量%)とみなし、その含有量を算出した。残りが有機結合剤の含有量(重量%)となる。
各実施例及び各比較例に係る保持シール材については、第1の有機結合剤及び第2の有機結合剤の含有量の合計と、第1の無機結合剤及び第2の無機結合剤の含有量の合計を測定した。結果を表1に示す。
【0188】
本実施例及び本比較例では、上記方法により、有機結合剤及び無機結合剤の含有量の測定が可能であるが、有機結合剤が架橋性樹脂の場合、架橋性樹脂を有機溶剤により全て溶出することが困難である。そこで、その場合には、マットを構成する無機繊維(結合剤皮膜及び凝集体が形成されていないもの)を採取して重量(A1)を測定し、本実施例及び本比較例と同様の条件で有機結合剤と無機結合剤とを無機繊維に付着させた後、充分に乾燥させ、重量を測定する(A2)。この後、600℃で1時間加熱処理し、さらに重量を測定する(A3)。A2−A3が有機結合剤の重量であり、A3−A1が無機結合剤の重量となるので、サンプルの重量に対する有機結合剤及び無機結合剤の含有量(重量%)を算出することができる。
【0189】
(結合剤皮膜の確認)
各実施例及び各比較例について、焼成前の保持シール材を構成する無機繊維の表面を蛍光X線分析装置により観察し、無機繊維表面の大部分からカーボンが検出されたものを、結合剤皮膜が形成されていると判断した。結果を表1に示す。なお表1では、結合剤皮膜が形成されていると判断したものを○、そうでないものを×と示している。
【0190】
(凝集体の確認)
各実施例及び各比較例について、焼成前の保持シール材を構成する無機繊維を走査型電子顕微鏡により観察し、凝集体によって凸部が形成されているかどうかを確認した。結果を表1に示す。なお表1では、凝集体によって凸部が形成されているものを○、そうでないものを×と示している。
【0191】
(面圧試験)
各実施例及び比較例の保持シール材について面圧試験を行った。
面圧測定装置による面圧試験の方法は、本発明の保持シール材の説明で説明したとおりである。結果を表1に示す。
【0192】
(無機繊維の飛散性試験)
各実施例及び比較例で製造した保持シール材を用いて、無機繊維の飛散性試験を行った。
無機繊維の飛散性試験の方法は、本発明の説明で説明したとおりである。結果を表1に示す。
【0193】
【表1】
【0194】
表1に示すように、実施例1及び実施例2に係る保持シール材を用いると、焼成前で170kPa以上、焼成後で30kPa以上の高い面圧を確保することができ、さらに無機繊維の飛散を0.1重量%以下に抑制することができた。
一方、比較例1に係る保持シール材では、結合剤皮膜が形成されておらず、無機繊維の飛散を充分に抑制できなかった。さらに、凝集体が無機繊維同士の接近箇所を接続するように付着しており、実施例1及び実施例2に係る保持シール材のような凸部はみられず、焼成前後の面圧も低下していた。
比較例2の保持シール材では、無機結合剤を添加していないため、凝集体が形成されていなかった。そのため、無機繊維の飛散は充分に抑制できたが、焼成後の面圧が大きく低下していた。
以上のことから、結合剤皮膜と、上記結合剤皮膜から凝集体が突出した凸部を有している本発明の保持シール材は、繊維飛散の飛散抑制、及び、焼成前後の面圧に優れていることがわかった。
【符号の説明】
【0195】
10 無機繊維
20 結合剤皮膜
21 第1の有機結合剤としての高分子樹脂成分
22 第1の無機結合剤としての無機粒子
30、35、36、37 凝集体
31 第2の有機結合剤としての高分子樹脂成分
32 第2の無機結合剤としての無機粒子
100 排ガス浄化装置
110 保持シール材
120 排ガス処理体
130 金属ケーシング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8