特許第6294149号(P6294149)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6294149
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】空気吹出装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/34 20060101AFI20180305BHJP
【FI】
   B60H1/34 611Z
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-97624(P2014-97624)
(22)【出願日】2014年5月9日
(65)【公開番号】特開2015-214215(P2015-214215A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2017年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】308016242
【氏名又は名称】豊和化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】特許業務法人プロスペック特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100184321
【弁理士】
【氏名又は名称】森野 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大江 広行
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 則之
【審査官】 佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−006054(JP,A)
【文献】 特開平11−173641(JP,A)
【文献】 実開平03−073852(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口及び吹出口を画成する筐体と、前記吸気口から前記吹出口に向かう空気の流れ方向及び量を調整可能な吸気弁と、前記吹出口を通る空気の流れ方向を調整可能な風向調整板と、を備えた空気吹出装置であって、
前記筐体は、
一端が開口端であり且つ他端が閉じた筒形状を有し、前記吸気口として一の側面に開口する第1吸気口及び前記第1吸気口に向き合うように他の側面に開口する第2吸気口を有し、前記吹出口として前記開口端を有し、
前記風向調整板は、
前記筐体の軸線に垂直な回動軸周りに回動可能に前記吹出口の近傍に設けられ、
前記吸気弁は、
互いに連動して回動可能な第1弁及び第2弁であって、
該第1弁が、前記第1吸気口を覆う板形状を有し、
該第2弁が、前記第2吸気口を覆う板形状を有し、
該第1弁の回動軸が、前記風向調整板の回動軸及び前記筐体の軸線の双方に垂直であると共に、該第1弁の前記他端側の端部を通過し、
該第2弁の回動軸が、前記風向調整板の回動軸及び前記筐体の軸線の双方に垂直であると共に、該第2弁の前記他端側の端部を通過する、
第1弁及び第2弁を含む、
空気吹出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の空気吹出装置において、
前記第1弁及び前記第2弁が、
前記第1吸気口及び前記第2吸気口の双方を閉じる第1状態、前記第1吸気口のみを開く第2状態、前記第1吸気口及び前記第2吸気口の双方を開く第3状態、及び、前記第2吸気口のみを開く第4状態、の順に前記吸気口を開閉するように、互いに連動して回動する、
空気吹出装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の空気吹出装置において、
前記第1弁及び前記第2弁が、
前記第1弁の前記吹出口側の端部と、前記第2弁の前記吹出口側の端部と、が接触しないように、互いに連動して回動する、
空気吹出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気口及び吹出口を画成する筐体(リテーナ)と、吸気口から吹出口に向かう空気の流れ方向及び量を調整可能な吸気弁(ダンパ)と、吹出口を通る空気の流れ方向を調整可能な風向調整板(フィン)と、を備えた空気吹出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の室内等に冷暖房用の空気を供給する空気吹出装置が提案されている。この種の空気吹出装置は、一般に、同装置から吹き出される空気流(以下「吹き出し空気流」という。)の流れ方向等を調整するための風向調整板を備えている。
【0003】
例えば、従来の空気吹出装置の一つ(以下「従来装置」という。)は、筒状の筐体と、筐体の前方の開口端(空気の吹出口)に設けられる複数の風向調整板と、を備えている。具体的には、従来装置は、複数の風向調整板として、筐体の軸線に垂直な軸周りに回動可能な第1の調整板(横フィン)、及び、第1の調整板に垂直な軸周りに回動可能な第2の調整板(縦フィン)を有している。即ち、第1の調整板と第2の調整板とは、それらの回動軸が垂直な位置関係にあるように配置されている。本構成の結果、従来装置は、第1の調整板および第2の調整板の回動に伴い、吹き出し空気流の流れ方向を上下左右に変更できるようになっている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
従来装置のように筒状の筐体を備える空気吹出装置は、通常、その筐体の後方の開口端(吸気口)から冷暖房用の空気を取り込むようになっている。そこで、以下、便宜上、このような空気吹出装置を「背面吸気型の空気吹出装置」と称呼する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−160981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
背面吸気型の空気吹出装置が自動車等に取り付けられる際、一般に、管状の吸気ダクトが空気吹出装置の後方(吸気口)に連結される。このとき、要求される量の空気を出来る限り効率良く(例えば、圧力損失を出来る限り小さくしながら)取り込む観点から、一般に、空気吹出装置の軸線と吸気ダクトの軸線とが一致するように、吸気ダクトが空気吹出装置に連結される。換言すると、背面吸気型の空気吹出装置は、一般に、吸気ダクトと空気吹出装置との連結部分において空気流の流れ方向が変化しないことを前提として、設計される。
【0007】
そのため、背面吸気型の空気吹出装置は、一般に、上述した吸気ダクトを設置可能な程度に背面空間に余裕がある場所(例えば、自動車のインストルメントパネルの周辺等)に取り付けられる。逆に、背面空間に十分な余裕が無い場所(例えば、自動車の天井部分およびピラー部分等)に背面吸気型の空気吹出装置を取り付けると、上述した吸気ダクトを設置できず同装置内に効率良く空気を取り込むことができないこと等に起因し、空気吹出装置が設計通りの性能を発揮できない場合がある。よって、背面吸気型の空気吹出装置は、一般に、背面空間に十分な余裕が無い場所への設置には適さない。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、背面空間に十分な余裕が無い場所に対しても空気吹出装置としての性能を損なうことなく設置可能な空気吹出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するための本発明の空気吹出装置は、吸気口及び吹出口を画成する「筐体」と、前記吸気口から前記吹出口に向かう空気の流れ方向及び量を調整可能な「吸気弁」と、前記吹出口を通る空気の流れ方向を調整可能な「風向調整板」と、を備える。
【0010】
具体的には、前記筐体は、
一端が開口端であり且つ他端が閉じた筒形状を有し、前記吸気口として一の側面に開口する「第1吸気口」及び前記第1吸気口に向き合うように他の側面に開口する「第2吸気口」を有し、前記吹出口として前記開口端を有する、ように構成されている。
【0011】
更に、前記風向調整板は、
前記筐体の軸線に垂直な回動軸周りに回動可能に前記吹出口の近傍に設けられている。
【0012】
加えて、前記吸気弁は、
互いに連動して回動可能な「第1弁」及び「第2弁」を含み、より具体的には、
該第1弁が、前記第1吸気口を覆う板形状を有し、
該第2弁が、前記第2吸気口を覆う板形状を有し、
該第1弁の回動軸が、前記風向調整板の回動軸及び前記筐体の軸線の双方に垂直であると共に、該第1弁の前記他端側の端部を通過し、
該第2弁の回動軸が、前記風向調整板の回動軸及び前記筐体の軸線の双方に垂直であると共に、該第2弁の前記他端側の端部を通過する、
ように構成されている。
【0013】
上記構成によれば、冷暖房用等の空気は、筐体の「側面」に互いに「向き合うように」開口した「第1吸気口」及び「第2吸気口」を介して筐体の内側に取り込まれ、筐体の開口端である「吹出口」から吹き出される。このとき、吹き出し空気流の流れ方向等は、各吸気口を開閉する「吸気弁」及び「吹出口の近傍に設けられ」る「風向調整板」により、調整される。
【0014】
具体的には、「第1吸気口を覆う板形状を有」する「第1弁」が「他端側の端部を通過」する回動軸周りに回動することにより、第1吸気口が開閉される。更に、第1弁の回動角度に対応し、「前記吸気口から前記吹出口に向かう空気の流れ方向及び量」が調整される。同様に、「第2吸気口を覆う板形状を有」する「第2弁」が「他端側の端部を通過」する回動軸周りに回動することにより、第2吸気口が開閉される。更に、第2弁の回動角度に対応し、「前記吸気口から前記吹出口に向かう空気の流れ方向及び量」が調整される。
【0015】
更に、風向調整板の回動軸が「前記筐体の軸線に垂直」であり、各吸気弁(第1弁および第2弁)の回動軸が「前記風向調整板の回動軸及び前記筐体の軸線の双方に垂直」であるので、風向調整板と、各吸気弁(第1弁および第2弁)とは、それらの回動軸が垂直な位置関係にあるように配置されている。
【0016】
よって、第1弁および第2弁の回動角度を「互いに連動」させながら操作すれば、吹き出し空気流の「量」に加え、それら吸気弁の回動方向に対応した方向(例えば、空気吹出装置の左右方向)において、吹き出し空気流の「流れ方向」を調整できる。更に、風向調整板の回動角度を操作すれば、各吸気弁の回動方向に垂直な方向(例えば、空気吹出装置の上下方向)において、吹き出し空気流の「流れ方向」を調整できる。加えて、筐体の「側面」に吸気口が存在するので、空気吹出装置の背面空間の大小にかかわらず、効率良く筐体内に空気を取り込むことができる(例えば、図1を参照。)。
【0017】
したがって、本発明の空気吹出装置は、従来装置のような背面吸気型の空気吹出装置に比べ、背面空間に余裕が無い場所に対しても空気吹出装置としての性能を損なうことなく設置することが可能である。
【0018】
以上、本発明の空気吹出装置の構成・効果について説明した。次いで、以下、本発明の空気吹出装置のいくつかの態様(態様1,2)について述べる。
【0019】
・態様1
本発明の空気吹出装置において、第1弁および第2弁は、吹き出し空気流の流れ方向および量を調整可能であるように「互いに連動して回動可能」であればよく、具体的な連動の態様は特に制限されない。
【0020】
例えば、前記第1弁及び前記第2弁は、
前記第1吸気口及び前記第2吸気口の双方を閉じる「第1状態」、
前記第1吸気口のみを開く「第2状態」、
前記第1吸気口及び前記第2吸気口の双方を開く「第3状態」、及び、
前記第2吸気口のみを開く「第4状態」、
の順に前記吸気口を開閉するように互いに連動して回動する、ように構成され得る(例えば、図3図6を参照。)。
【0021】
上記構成によれば、吸気弁が「第1状態」にある場合、筐体の内部に空気が取り込まれないため、吹き出し空気流の量はゼロとなる。
【0022】
次いで、吸気弁が「第2状態」にある場合、第1吸気口のみを通って筐体の内部に空気が取り込まれるため、吹き出し空気流の流れ方向が、第1弁の回動角度に対応して変化することになる(例えば、第1吸気口から離れるような斜め方向に、吹き出し空気流が流れる。)。
【0023】
更に、吸気弁が「第3状態」にある場合、第1吸気口および第2吸気口の双方を通って筐体の内部に空気が取り込まれ、それら空気が筐体の内部又は外部にて衝突・合流するため、吹き出し空気流の流れ方向が、第1弁および第2弁の回動角度に対応して変化することになる(例えば、空気吹出装置の軸線周辺の正面方向に、吹き出し空気流が流れる。)。
【0024】
加えて、吸気弁が「第4状態」にある場合、第2吸気口のみを通って筐体の内部に空気が取り込まれるため、吹き出し空気流の流れ方向が、第2弁の回動角度に対応して変化することになる。第2吸気口は第1吸気口に向き合うように開口しているので、第4状態における吹き出し空気流の流れ方向は、第2状態における吹き出し空気流の流れ方向とは逆方向となる(例えば、第2吸気口から離れるような斜め方向に、吹き出し空気流が流れる。)。
【0025】
よって、吸気弁が第1状態〜第4状態の順に状態を変化させながら回動すると、吹き出し空気流の流れ方向および量は、例えば、無風状態、第1吸気口から離れる斜め方向、軸線周辺の正面方向、及び、第2吸気口から離れる斜め方向の順に、規則正しく変化することになる。
【0026】
よって、本態様の空気吹出装置は、吹き出し空気流の流れ方向および量を規則正しく調整することができ、空気吹出装置の使い易さを高めることができる。
【0027】
なお、第1吸気口又は第2吸気口を「閉じる」とは、第1吸気口又は第2吸気口を空気が通過することを禁止する、と言い換え得る。更に、第1吸気口又は第2吸気口を「開く」とは、第1吸気口又は第2吸気口を空気が通過することを許可する、と言い換え得る。
【0028】
・態様2
本発明の空気吹出装置において、第1弁および第2弁の位置関係は、筐体の形状、並びに、空気吹出装置に要求される吹き出し空気流の量および指向性等を考慮して定められれば良く、特に制限されない。
【0029】
例えば、第1弁及び前記第2弁は、
前記第1弁の前記吹出口側の端部と、前記第2弁の前記吹出口側の端部と、が接触しないように互いに連動して回動する、ように構成され得る。
【0030】
上記構成によれば、第1弁および第2弁が同時に回動する場合(例えば、吸気弁が上記第3状態にある場合)であっても、一方の吸気弁の回動が他方の吸気弁の回動を邪魔することがない。よって、第1弁および第2弁が接触する場合に比べ、吹き出し空気流の流れ方向をより広範囲において調整でき、吹き出し空気流の指向性を更に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の空気吹出装置の実施形態の一例を示す概略断面図である。
図2】本発明の空気吹出装置の実施形態の一例を示す概略断面図である。
図3】吸気弁および風向調整板の回動角度と、吹き出し空気流の流れ方向と、の関係を表す模式図である。
図4】吸気弁および風向調整板の回動角度と、吹き出し空気流の流れ方向と、の関係を表す模式図である。
図5】吸気弁および風向調整板の回動角度と、吹き出し空気流の流れ方向と、の関係を表す模式図である。
図6】吸気弁および風向調整板の回動角度と、吹き出し空気流の流れ方向と、の関係を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の空気吹出装置の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0033】
<装置の概要>
図1は、本発明の実施形態の一例に係る空気吹出装置10(以下「実施装置10」という。)の概略構成を示している。具体的には、実施装置10は、空気流が内部を通過可能な中空柱状の形状(筒状)の形状を有しており、図1は、実施装置10の軸線AXに平行な平面によって実施装置10を左右方向に(後述される右方向Rから左方向Lに)切断した場合における、実施装置10の概略断面図を表している。
【0034】
以下、便宜上、軸線AXに沿って実施装置10の前後に向かう方向は「正面方向F」及び「背面方向B」とも称呼され、正面方向Fに垂直に実施装置10の左右に向かう方向は「左方向L」及び「右方向R」とも称呼される。なお、これら正面、背面、左および右の方向は、実施装置10が自動車の室内等に取り付けられた場合において自動車の操作者から実施装置10を見たときの正面、背面、左および右の方向を基準とし、定義付けられている。
【0035】
図1に示すように、実施装置10は、筐体(リテーナ)21と、1枚の風向調整板(フィン)31と、複数の吸気弁(ダンパ)41,42と、を備えている。以下、これら部材の構成をより詳細に説明する。
【0036】
・筐体(リテーナ)
リテーナ21は、正面方向Fの端部が開口端であり、且つ、背面方向Bの端部が閉じた筒形状(具体的には、略四角筒状の形状)を有している。更に、リテーナ21は、右方向Rの側面および左方向Lの側面に、リテーナ21の内部と外部とを連通する開口部を有している。これら形状により、リテーナ21は、右方向Rの側面に開口した第1吸気口22、左方向Lの側面に開口した第2吸気口23、及び、正面方向Fの端部に開口した吹出口24を画成すると共に、吸気口22,23から吹出口24に向かう空気流路を画成している。換言すると、リテーナ21により、第1吸気口22及び第2吸気口23の少なくとも一方からリテーナ21の内部に取り込まれた空気が、空気流路を通過した後、吹出口24から吹き出されるようになっている(図中の矢印を参照。)。なお、リテーナ21の背面方向Bの端部は、背面壁25によって閉じられている。
【0037】
第1吸気口22及び第2吸気口23は、互いに向き合うように(即ち、互いに向き合う側面22,23上に)配置されている。そのため、図1に示すように第1吸気口22及び第2吸気口23の双方から空気が取り込まれる場合、第1吸気口22を通過する空気流と、第2吸気口23を通過する空気流とが、リテーナ21の内部又は外部において衝突して合流し、吹出し空気流を形成することになる(詳細は後述される)。なお、第1吸気口22及び第2吸気口23の一方のみから空気が取り込まれる場合、当然ながら、上述した空気流の衝突および合流は生じない。
【0038】
なお、第1吸気口22は、略四角形の形状を有している(例えば、図2を参照。)。また、第2吸気口23は、第1吸気口22の形状と同一の略四角形の形状を有している。
【0039】
・風向調整板(フィン)
フィン31は、平面視における形状が略長方形の板体であり、回動軸31a周りに回動したときの角度(回動角度)に応じて吹出口24を通過する空気(吹き出し空気流)の流れ方向を変化させることができる。フィン31は、吹出口24の近傍のリテーナ21の内部に、回動軸31a周りに回動可能に設けられている。回動軸31aは、リテーナ21の軸線AXに垂直である(本例では、リテーナ21の軸線AXに垂直であり且つ実施装置10の左右方向に平行である)。
【0040】
図2は、実施装置10の軸線AXに垂直な平面によって実施装置10を上下方向に(後述される上方向Uから下方向Dに)切断した場合における、実施装置10の概略断面図を表している。なお、「上方向U」及び「下方向D」は、軸線AXに沿って実施装置10の上下に向かう方向であり、上記同様、実施装置10が自動車の室内等に取り付けられた場合において自動車の操作者から実施装置10を見たときの上下の方向を基準とし、定義付けられている。
【0041】
図2に示すように、フィン31は、回動軸31a周りに回動することにより、吹出し空気流Aの流れ方向を上下方向(U・D)に調整できる。
【0042】
なお、本例において、フィン31は、第1位置P1から第2位置P2までの範囲において回動可能となっている。更に、フィン31の回動軸31aに平行なリテーナ21の上方向Uの内壁面26及び下方向Dの内壁面27は、吹出口24の近傍において、吹出口24に近づくにつれてリテーナ21の軸線AXに近づくように傾斜している。具体的には、フィン31が第1位置P1にあるときにはフィン31と内壁面26とが平行であり、フィン31が第2位置P2にあるときにはフィン31と内壁面27とが平行であるように、内壁面26,27が傾斜している。
【0043】
・吸気弁(ダンパ)
ダンパは、図1に示すように、第1弁(第1ダンパ)41及び第2弁(第2ダンパ)42を含む。第1ダンパ41は、平面視における形状が略長方形の板体であり、第1吸気口22を覆うことが可能な板形状を有している(図2を参照。)。第2ダンパ42は、平面視における形状が略長方形の板体であり、第2吸気口23を覆うことが可能な板形状を有している。第2ダンパ42の形状は、第1ダンパ41の形状と同一である。図1においては、これら板体の断面が表示されている。第1ダンパ41は、第1吸気口22の近傍のリテーナ21の内部に、回動軸41a周りに回動可能に設けられている。同様に、第2ダンパ42は、第2吸気口23の近傍のリテーナ21の内部に、回動軸42a周りに回動可能に設けられている。
【0044】
具体的には、第1ダンパ41の回動軸41aは、フィン31の回動軸31aに垂直であり、且つ、リテーナ21の軸線AXに垂直である(図2を参照。)。即ち、回動軸41aは、実施装置10の上下方向(U・D)に平行となっている。更に、回動軸41aは、第1ダンパ41の背面壁25側(背面方向B)の端部を通過している。なお、回動軸41aは、第1ダンパ41が第1吸気口22を閉じることが可能であるように、右方向Rの側面の近傍に設けられている。
【0045】
よって、第1ダンパ41は、背面壁25側の端部(回動軸41a)を中心に回動し、第1吸気口22を閉じる回動角度にあるとき(図1に示す角度αがゼロであるとき)、第1吸気口22を空気が通過することを禁止することができる。更に、第1ダンパ41は、第1吸気口22を開く回動角度にあるとき(角度αがゼロより大きいとき)、第1吸気口22を空気が通過することを許可し、第1吸気口22から吹出口24に向けて回動角度αに対応した方向に空気を流すことができる。
【0046】
同様に、第2ダンパ42の回動軸42aも、フィン31の回動軸31aに垂直であり、且つ、リテーナ21の軸線AXに垂直である。即ち、回動軸42aは、実施装置10の上下方向(U・D)に平行となっている。更に、回動軸42aは、第2ダンパ42の背面壁25側(背面方向B)の端部を通過している。なお、回動軸42aは、第2ダンパ42が第2吸気口23を閉じることが可能であるように、左方向Lの側面の近傍に設けられている。
【0047】
よって、第2ダンパ42は、背面壁25側の端部(回動軸42a)を中心に回動し、第2吸気口23を閉じる回動角度にあるとき(図中の角度βがゼロであるとき)、第2吸気口23を空気が通過することを禁止することができる。更に、第2ダンパ42は、第2吸気口23を開く回動角度にあるとき(図中の角度βがゼロより大きいとき)、第2吸気口23を空気が通過することを許可し、第2吸気口23から吹出口24に向けて回動角度βに対応した方向に空気を流すことができる。
【0048】
なお、第1ダンパ41及び第2ダンパ42の形状は、第1ダンパ41の吹出口24側の端部と第2ダンパ42の吹出口24側の端部とが各ダンパの回動時において接触しないように、定められている。更に、第1ダンパ41及び第2ダンパ42の形状は、各ダンパの吹出口24側の端部(正面方向Fの端部)がフィン31に接触しないように、定められている。
【0049】
このように、第1ダンパ41及び第2ダンパ42は、第1吸気口22及び第2吸気口23を開閉すると共に、吹出し空気流Aの流れ方向を左右方向(L・R)に調整できる。更に、第1ダンパ41及び第2ダンパ42は、リンク機構(図示省略)を介して連結されており、互いに連動して回動可能になっている。なお、本リンク機構は、後述される回動状態を実現するように適宜構成されればよく、歯車及び連結棒等の数、配置および連結方法等は特に制限されない。
【0050】
なお、フィン31、第1ダンパ41及び第2ダンパ42の回動角度は、例えば、操作者が図示しない操作用ノブ等を介して各フィンを直接操作することにより、または、操作者からの指示に応じて各フィンに設けられた図示しないモータ等が作動することにより、操作可能となっている。
【0051】
以上が、実施装置10の概要についての説明である。
【0052】
<実際の作動>
以下、図3図6を参照しながら、実施装置10の実際の作動について説明する。
実施装置10は、フィン31の回動角度、及び、第1ダンパ41及び第2ダンパ42の回動角度を変更することにより、吹き出し空気流の流れ方向を調整する。なお、図3図6は、図1と同様、実施装置10の軸線AXに平行な平面によって実施装置10を左右方向に切断した場合における、実施装置10の概略断面図を表す。なお、便宜上、図3図6において、フィン31の回動角度は所定の大きさに維持されている。
【0053】
図3は、第1ダンパ41の回動角度αがゼロであり、第2ダンパ42の回動角度βがゼロである場合における、吹き出し空気流の状態を表す。この場合、第1ダンパ41及び第2ダンパ42は、第1吸気口22及び第2吸気口23の双方を閉じる状態(第1状態)にある。よって、第1吸気口22及び第2吸気口23を空気が通過しないので、実施装置10から空気は吹き出されない。
【0054】
次いで、図4は、第1ダンパ41の回動角度αがゼロよりも大きい所定の大きさとなるまで回動し、第2ダンパ42の回動角度βがゼロに維持された場合における、吹き出し空気流の状態を表す。この場合、第1ダンパ41及び第2ダンパ42は、第1吸気口22のみを開く状態(第2状態)にある。よって、第1吸気口22を通過した空気のみが、第1ダンパ41の回動角度αに対応した方向に流れ、フィン31を経て、吹出口24から吹き出される。よって、この場合、吹き出し空気流Aは、正面方向Fから左方向Lに傾いた方向に形成される。
【0055】
上記の場合、第1吸気口22を通過した空気はフィン31及び筐体21の内壁面等に接触した後に吹出口24から吹き出されるので、吹き出し空気流Aの傾斜角度(図中の角度γ)は、必ずしも第1ダンパ41の回動角度αに一致しない。しかし、通常、吹き出し空気流Aの傾斜角度γと、第1ダンパ41の回動角度αとは、同程度の大きさとなる。
【0056】
次いで、図5は、第1ダンパ41の回動角度αがゼロよりも大きい所定の大きさであり、第2ダンパ42の回動角度βがゼロよりも大きい所定の大きさ(本例において、回動角度βは回動角度αと同一である。)となるまで回動した場合における、吹き出し空気流の状態を表す。この場合、第1ダンパ41及び第2ダンパ42は、第1吸気口22及び第2吸気口23の双方を開く状態(第3状態)にある。よって、第1吸気口22を通過した空気が、第1ダンパ41の回動角度αに対応した方向に流れ、第2吸気口23を通過した空気が、第2ダンパ42の回動角度βに対応した方向に流れる。これら空気は、フィン31の近傍の筐体21の内部又は外部において衝突した後に合流し、吹出口24から吹き出される。
【0057】
上記の場合、吹き出し空気流Aの傾斜角度γは、第1ダンパ41の回動角度αと第2ダンパ42の回動角度βとの大小関係に基づいて定まる。例えば、本例のように第1ダンパ41の回動角度αと第2ダンパ42の回動角度βとが同一であれば、図5に示すように、吹き出し空気流Aは正面方向Fに形成される。即ち、傾斜角度γはゼロである。一方、第1ダンパ41の回動角度αが第2ダンパ42の回動角度βよりも大きければ、吹き出し空気流Aは正面方向Fよりも左方向Lに傾いた方向に形成されることになる。逆に、第2ダンパ42の回動角度βが第1ダンパ41の回動角度αよりも大きければ、吹き出し空気流Aは正面方向Fよりも右方向Rに傾いた方向に形成されることになる。
【0058】
次いで、図6は、第1ダンパ41の回動角度αが再びゼロになるまで回動し、第2ダンパ42の回動角度βがゼロよりも大きい所定の大きさである場合における、吹き出し空気流の状態を表す。この場合、第1ダンパ41及び第2ダンパ42は、第2吸気口23のみを開く状態(第4状態)にある。よって、第2吸気口23を通過した空気が、第2ダンパ42の回動角度βに対応した方向に流れ、フィン31を経て、吹出口24から吹き出される。よって、この場合、吹き出し空気流Aは、正面方向Fから右方向Rに傾いた方向に形成される。
【0059】
なお、上記同様、吹き出し空気流Aの傾斜角度γは、必ずしも第2ダンパ42の回動角度βに一致しないが、通常は第2ダンパ42の回動角度βと同程度の大きさとなる。
【0060】
このように、第1ダンパ41及び第2ダンパ42が第1状態、第2状態、第3状態および第4状態の順に変化すると、吹き出し空気流Aは、無風状態、左方向L、正面方向Fおよび右方向Rの順に変化することになる。
【0061】
なお、図3図6は、フィン31の回動角度が一定の大きさに維持された場合における吹き出し空気流Aの状態を表している。しかし、ダンパ23,24についての上記説明から理解されるように、フィン31の回動角度が変化すれば、吹き出し空気流Aの流れ方向が実施装置10の上下方向に変化することになる。
【0062】
例えば、図2に示すように、フィン31が上方向U又は下方向Dに回動すると、下方向D又は上方向Uに向かう吹き出し空気流が形成される。具体的には、筐体21の内壁面26,27は上述したように傾斜しているので、空気は、フィン31に向かって誘導され、フィン31によって整流された後、フィン31の傾きに対応する方向に吹き出されることになる(図中の矢印を参照。)。
【0063】
なお、フィン31が第1位置P1にある場合、フィン31と内壁面26とは平行となるので、内壁面26は、空気をフィン31に向かって誘導するだけでなく、内壁面26自身によって吹き出し空気流の流れ方向を調整する(目標の流れ方向に向かわせる)ことになる。即ち、フィン31が第1位置P1にある場合、フィン31及び内壁面26の双方によって空気の流れが整流されることになる。一方、フィン31が第2位置P2にある場合も同様に、フィン31及び内壁面27の双方によって空気の流れ方向が整流されることになる。
【0064】
以上に説明したように、実施装置10は、上述したリテーナ21、フィン31、及び、ダンパ41,42を備えることにより、吹き出し空気流Aの量および流れ方向を調整できる。そのため、実施装置10は、自動車の天井部分又はピラー部分等の背面空間に余裕が無い場所に設置した場合であっても、空気吹出装置としての性能を十分に発揮できる。換言すると、実施装置10は、背面空間に余裕が無い場所に対しても空気吹出装置としての性能を損なうことなく設置できる。
【0065】
<他の態様>
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用できる。
【0066】
例えば、実施装置10の筐体21は、四角筒状の形状を有している。しかし、筐体21は、必ずしも四角筒状の形状を有する必要はなく、円筒状および他の多角筒状の形状を有してもよい。
【0067】
更に、例えば、実施装置10の筐体21は、右方向R及び左方向Lの側面に開口部を1つずつ有している(即ち、第1吸気口22及び第2吸気口23を画成している)。しかし、筐体21は、各側面に複数の開口部を有しても良い。また、右方向Rの側面の開口部と、左方向Lの側面の開口部と、の形状は、必ずしも同一でなくてもよく、実施装置10が設置される位置等に対応して異なってもよい。
【0068】
加えて、実施装置10は、例えば自動車の天井部分等に取り付けて用いられる。しかし、本発明の空気吹出装置は、自動車の天井部分等に限らず、空気の供給または停止が望まれる種々の部材(特に、背面空間に余裕が無い場所)に取り付けられ得る。
【符号の説明】
【0069】
10…空気吹出装置、21…筐体(リテーナ)、22…第1吸気口、23…第2吸気口、24…吹出口、31…風向調整板(フィン)、41…第1弁(第1ダンパ)、42…第2弁(第2ダンパ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6