特許第6294152号(P6294152)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6294152
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】粒状金属鉄の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C21B 13/12 20060101AFI20180305BHJP
   C21B 13/10 20060101ALI20180305BHJP
   C21B 11/08 20060101ALI20180305BHJP
   C21B 11/10 20060101ALI20180305BHJP
   C22B 1/24 20060101ALI20180305BHJP
   C22B 1/16 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   C21B13/12
   C21B13/10
   C21B11/08
   C21B11/10
   C22B1/24
   C22B1/16 101
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-101724(P2014-101724)
(22)【出願日】2014年5月15日
(65)【公開番号】特開2015-218351(P2015-218351A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2016年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 昌麟
(72)【発明者】
【氏名】伊東 修三
【審査官】 藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−121085(JP,A)
【文献】 特開2010−189762(JP,A)
【文献】 特開2010−261101(JP,A)
【文献】 特開2009−270198(JP,A)
【文献】 特開2002−030319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 13/12、C21B 11/08
C21B 11/10、C21B 13/10
C22B 1/16、C22B 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化鉄含有物質および炭素質還元剤を含む混合物を塊成化し、得られた塊成物を加熱炉の炉床上に装入して加熱することによって、該塊成物中の酸化鉄を還元し、更に加熱して還元鉄を溶融し、還元鉄を凝集させて粒状金属鉄を製造する方法であって、
上記塊成物を上記加熱炉の炉床上で加熱する際、
前記炭素質還元剤に含まれる揮発分の質量割合(質量%)と、前記加熱炉内における二酸化炭素ガスと、前記二酸化炭素ガス以外の酸化性ガスと、窒素ガスとを含む混合ガスであって、酸化性ガスの割合が30〜50体積%であるガスの平均ガス流速(m/秒)との関係が、下記式(1)を満足することを特徴とする粒状金属鉄の製造方法。
揮発分の質量割合≦−4.62×平均ガス流速+46.7 ・・・(1)
【請求項2】
前記塊成物に含まれる酸化鉄含有物質由来の酸素量(質量%)を、該塊成物に含まれる炭素質還元剤由来の固定炭素量(質量%)で除した値(酸素量/固定炭素量)が1.46〜2.67である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記混合物は、更に、融点調整剤を含有する請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記二酸化炭素ガス以外の酸化性ガスが水蒸気ガスである請求項1〜3の何れか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化鉄含有物質と炭素質還元剤を含む混合物を塊成化し、得られた塊成物を加熱炉の炉床上に装入して加熱することによって、該塊成物中の酸化鉄を還元し、更に加熱して還元鉄を溶融し、還元鉄を凝集させて粒状金属鉄を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鉱石を原料とする製鉄プロセスとしては、高炉−転炉法が知られている。この高炉−転炉法は、高炉で鉄鉱石を還元して高濃度の炭素を含む溶銑を製造し、この溶銑を転炉で脱炭して鋼を製造する方法である。上記高炉−転炉法では、コークスや焼結鉱などの原料の事前処理が必要であり、また、近年スケールメリット享受のため、大型化する傾向が進んでおり、資源に対する柔軟性や生産性が低下する。また、自然環境保護の観点から、CO2ガスの排出量を抑制する製鉄プロセスが求められるが、上記高炉−転炉法は、所謂間接製鉄法であるため、鉄鉱石を還元して直接鋼を製造する直接製鉄法に比べて、CO2ガスの排出量が多いという課題がある。このため、近年、直接製鉄法が見直されている。
【0003】
上記直接製鉄法としては、例えばMIDREX法が知られている。MIDREX法では、鉄鉱石を還元する還元剤として天然ガスを大量に使用する。そのためプラントの立地場所が、天然ガスの生産地域に限られるという難点があった。
【0004】
そこで最近では、還元剤として、天然ガスに替えて、入手が容易な石炭を用いる方法が注目されている。この方法は、鉄鉱石などの酸化鉄含有物質と、石炭などの炭素質還元剤を含む塊成物を、移動炉床炉などの加熱炉の炉床上に装入し、炉内で加熱バーナーによるガス伝熱や輻射熱で加熱することによって、塊成物中の酸化鉄を還元し、更に加熱して還元鉄を溶融し、還元鉄を凝集させて粒状金属鉄を製造するものである。この方法では、粉末状の鉄鉱石をそのまま利用できる他、鉄鉱石と還元剤が近接に配置されるため、高速還元が可能となり、また、還元剤の配合量を調整する等の方法により、製品中の炭素含有量を調整できるといった利点を有している。
【0005】
本発明者らは、移動炉床式加熱還元炉で粒状金属鉄を製造するにあたり、C量が高く、S量が低い高品質の粒状金属鉄を製造できる方法として、特許文献1の技術を開示している。この技術は、酸化鉄含有物質と炭素質還元剤を含む原料混合物を、移動炉床式加熱還元炉の炉床上に装入して加熱し、原料混合物中の酸化鉄を炭素質還元剤により還元し、生成する金属鉄を溶融し、溶融した金属鉄を副生するスラグと分離しつつ粒状に凝集させた後、冷却凝固させて粒状金属鉄を製造する際に、炉内における雰囲気ガスの流速を制御するところに特徴を有している。具体的には、炉内における雰囲気ガスの平均ガス流速を5m/秒以下に制御しており、この流速の制御は、少なくとも還元末期から金属鉄の溶融が完了するまでの間で行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−121085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に開示した技術によれば、高品質の粒状金属鉄を製造できたが、粒状金属鉄の歩留まりを高くできると共に、粒状金属鉄を製造するための時間を短くして、粒状金属鉄の生産性を高めることが求められている。
【0008】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、粒状金属鉄の生産性を向上できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決することのできた本発明に係る粒状金属鉄の製造方法とは、酸化鉄含有物質および炭素質還元剤を含む混合物を塊成化し、得られた塊成物を加熱炉の炉床上に装入して加熱することによって、該塊成物中の酸化鉄を還元し、更に加熱して還元鉄を溶融し、還元鉄を凝集させて粒状金属鉄を製造する方法である。そして、上記塊成物を上記加熱炉の炉床上で加熱する際は、前記炭素質還元剤に含まれる揮発分の質量割合(質量%)と、前記加熱炉内における二酸化炭素ガスと、前記二酸化炭素ガス以外の酸化性ガスと、窒素ガスとを含む混合ガスであって、酸化性ガスの割合が30〜50体積%であるガスの平均ガス流速(m/秒)との関係が、下記式(1)を満足する点に要旨を有している。
揮発分の質量割合≦−4.62×平均ガス流速+46.7 ・・・(1)
【0010】
前記塊成物に含まれる酸化鉄含有物質由来の酸素量(質量%)を、該塊成物に含まれる炭素質還元剤由来の固定炭素量(質量%)で除した値(酸素量/固定炭素量)が1.46〜2.67であることが好ましい。前記混合物は、更に、融点調整剤を含有してもよい。また、前記二酸化炭素ガス以外の酸化性ガスが水蒸気ガスであってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、原料として用いる炭素質還元剤に含まれる揮発分の質量割合と、加熱炉内における雰囲気ガスの平均ガス流速との関係を適切に制御しているため、粒状金属鉄の生産性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、炭材に含まれる揮発分の質量割合(質量%)と、乾燥ペレットの見掛け密度(g/cm3)との関係を示すグラフである。
図2図2は、炭材に含まれる揮発分の質量割合(質量%)と、乾燥ペレットに含まれる全鉄の量(質量%)との関係を示すグラフである。
図3図3は、炭材に含まれる揮発分の質量割合(質量%)と、反応時間(分)との関係を示すグラフである。
図4図4は、電気炉内における平均ガス流速(m/秒)と、乾燥ペレットに含まれる炭素質還元剤中の揮発分の質量割合(質量%)との関係を示すグラフである。
図5図5は、酸素量を固定炭素量で除した値(酸素量/固定炭素量)と、粒状金属鉄の歩留まり(%)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者らは、粒状金属鉄の生産性を高めるために、鋭意検討を重ねてきた。その結果、原料として用いる炭素質還元剤に含まれる揮発分の質量割合と、加熱炉内における雰囲気ガスの平均ガス流速との関係を適切に制御すれば、粒状金属鉄の歩留まりを高くできると共に、粒状金属鉄を製造するための時間を短縮できるため、粒状金属鉄の生産性を向上できることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
加熱炉の炉床上に装入した塊成物は、炉に設けられた燃焼バーナーによるガス伝熱や輻射熱によって加熱され、塊成物に含まれる酸化鉄含有物質中の酸化鉄が、炭素質還元剤により還元される。そして該還元鉄を更に加熱することによって、塊成物中の炭素質還元剤や加熱炉の炉床上に床敷材として敷かれる炭素質還元剤により還元鉄が浸炭され、溶融、凝集し、粒状金属鉄を生成する。
【0015】
上記燃焼バーナーの燃料としては、一般には天然ガス等の化石燃料を用いるため、燃焼によって二酸化炭素ガスや水蒸気などの酸化性ガスを発生する。この酸化性ガスにより、上記還元鉄が再酸化することがある。還元鉄が再酸化すると、生成したFeOは、スラグ側へ移行するため、溶融、凝集段階において、スラグ中のFeO濃度が上昇する。スラグ中のFeOは、下記に示すように、溶融鉄に含まれる炭素と反応し、COガスを発生する。この反応は、吸熱反応であるため、スラグ中のFeO濃度が高くなるほど、溶融した還元鉄が粒状金属鉄を形成するまでの時間が長くなり、粒状金属鉄の生産性が低下する。
FeO+C=Fe+CO
【0016】
また、発生したCOガスが、スラグ中に気泡として留まると、スラグを膨張させる原因となる。このスラグの膨張は、スラグフォーミングと呼ばれており、スラグフォーミングが発生すると、溶融、凝集中の還元鉄がスラグに覆われてしまうため、周囲から供給される熱の伝熱が遮断される。その結果、溶融した還元鉄が粒状金属鉄を形成するまでの時間が長くなり、粒状金属鉄の生産性が低下する。
【0017】
このように、粒状金属鉄の生産性を向上させるために重要なことは、還元鉄の再酸化を防止することであり、そのためには塊成物近傍における雰囲気ガスの酸化度を低減することが重要である。
【0018】
塊成物近傍における雰囲気ガスの酸化度を低減するには、塊成物近傍における雰囲気ガスの流速を小さくするか、塊成物に含まれる炭素質還元剤中の炭材の反応性を高め、塊成物から放出されるCOガス量を増加させることが考えられる。これらのうち、塊成物に含まれる炭素質還元剤中の炭材の反応性を高める方法としては、揮発分の多い炭材を用いることが考えられる。炭材は、一般的に、含有する揮発分が多いほど、含まれる固定炭素の結晶化度が低くなり、下記式(A)および下記式(B)の反応が進行しやすくなる。そのため、COガスが生成し、塊成物近傍における雰囲気ガスの酸化度が低下して、還元鉄の再酸化が抑えられる。
xC+FeOx=xCO+Fe ・・・(A)
C+CO2=2CO ・・・(B)
【0019】
しかし炭素質還元剤に含まれる揮発分が多くなると、酸化鉄の還元に必要な固定炭素量を確保するために、塊成物に配合する炭素質還元剤の割合を多くする必要がある。そのため、加熱炉内での加熱時間を一定とした場合は、塊成物の見掛け密度が小さくなり、且つ該塊成物に含まれる鉄量が少なくなる結果、粒状金属鉄の生産性が低下する。
【0020】
そこで本発明者らは、酸化鉄を還元し、得られた還元鉄を溶融、凝集させるにあたり、還元鉄の再酸化を防止してスラグフォーミングの発生を抑制し、粒状金属鉄の製造に要する時間を短縮し、粒状金属鉄の生産性を向上させるために、検討を重ねてきた。その結果、塊成物を加熱炉の炉床上で加熱する際は、炭素質還元剤に含まれる揮発分の質量割合(質量%)と、前記加熱炉内における雰囲気ガスの平均ガス流速(m/秒)との関係が、下記式(1)を満足すれば良いことが明らかとなった。
揮発分の質量割合≦−4.62×平均ガス流速+46.7 ・・・(1)
【0021】
上記式(1)の関係は、本発明者らが種々実験を繰り返して導いたものであり、後記する実施例の項で説明するように、炭素質還元剤の質量を100%としたとき、該炭素質還元剤に含まれる揮発分の質量割合と、加熱炉内における雰囲気ガスの平均ガス流速との関係が、上記式(1)を満足しない場合は、生産性が低下する結果となった。即ち、塊成物を加熱するときの塊成物近傍における雰囲気ガスの酸化度を低下させるには、上述したように、炭素質還元剤に含まれる揮発分の質量割合を増加させることが考えられる。揮発分の増加は、本来、塊成物中の鉄分の低下および塊成物の密度の低下を引き起こすため、生産性は低下すると考えられた。しかし結果的に、粒状金属鉄の製造に要する時間が短縮されるため、粒状金属鉄の生産性が却って増加することは意外な事実であった。
【0022】
上記式(1)の関係は、下記式(1a)の関係を満足することが好ましく、下記式(1b)の関係を満足することがより好ましい。
揮発分の質量割合≦−4.62×平均ガス流速+45.3 ・・・(1a)
揮発分の質量割合≦−4.62×平均ガス流速+43.4 ・・・(1b)
【0023】
上記揮発分の質量割合の下限値は、特に限定されないが、本発明の製造方法によれば、炭素質還元剤の質量を100%としたとき、例えば、10%以上であっても用いることができるし、20%以上であっても用いることができる。また、上記揮発分の質量割合は、30%以上であってもよい。
【0024】
上記炭素質還元剤に含まれる揮発分の質量割合は、JIS M8812(2004年)に基づいて分析すればよい。
【0025】
上記加熱炉内における雰囲気ガスの平均ガス流速(m/秒)は、単位時間(秒)あたりのガス流量(m3)を、ガスの進行方向および炉床面に対して垂直な炉内断面積(m2)で除することにより算出できる。上記単位時間(秒)あたりのガス流量は、実機では、例えば、炉内に供給する単位時間(秒)あたりの燃料の量と、該燃料を燃焼させるために供給する単位時間(秒)あたりの酸素含有ガス量とから燃焼計算によって求められる燃焼後の単位時間(秒)あたりの総ガス量(m3/秒)を、ガスの進行方向および炉床面に対して垂直な炉内断面積(m2)で除することにより算出できる。
【0026】
上記雰囲気ガスの平均ガス流速(m/秒)は、燃焼バーナーの炊き方、炊き量、炉の内部形状などによって、調整できる。雰囲気ガスに含まれる二酸化炭素ガスや水蒸気などの酸化性ガスの割合は、30〜50体積%であればよい。
【0027】
上記塊成物は、該塊成物に含まれる酸化鉄含有物質由来の酸素量(質量%)を、該塊成物に含まれる炭素質還元剤由来の固定炭素量(質量%)で除した値(酸素量/固定炭素量)が1.46〜2.67であることが好ましい。なお、上記酸素量と上記固定炭素量は、いずれも塊成物の質量を100%としたときの値である。
【0028】
上記酸素量/固定炭素量は、炭素質還元剤の配合量を決定するための指標となる。即ち、酸化鉄含有物質の代表である鉄鉱石に含まれる鉄分は、鉄鉱石中では、Fe23やFe34などの酸化鉄(以下、これらをまとめてFeOxと表記する)として存在している。一方、炭素質還元剤としては、石炭を好適に用いることができ、この石炭に含まれる炭素は、加熱したときに揮発分として失われるものの他、加熱しても残るものがあり、この加熱後に残る炭素は、一般に、固定炭素と呼ばれている。揮発性の炭素は、酸化鉄の還元には殆ど寄与しないが、固定炭素は、酸化鉄の還元に寄与する。従って固定炭素の含有量が多い石炭ほど、石炭の品位が優れていることとなる。このため上記酸素量/固定炭素量は、還元すべき酸素量に対して、どれだけの固定炭素量が存在するかを示しており、この値が小さいほど、酸化鉄の還元に充分な固定炭素が存在していることを意味し、この値が大きいほど、酸化鉄に対して固定炭素が不足気味であることを意味している。
【0029】
上記酸素量/固定炭素量が1.46を下回ると、酸化鉄を還元した後に残留する炭素によって還元鉄の凝集阻害が起こり、粒状金属鉄の歩留まりが95%未満に低下する。上記酸素量/固定炭素量は、粒状金属鉄の歩留まりを95%以上とするために、1.46以上であることが好ましい。上記酸素量/固定炭素量は、より好ましくは1.50以上、更に好ましくは1.60以上である。
【0030】
しかし上記酸素量/固定炭素量が2.67を超えると、酸化鉄の全てを還元できないため、粒状金属鉄の生成量が少なくなり、粒状金属鉄の歩留まりが95%未満に低下する。なお、2.67という値は、塊成物に含まれる酸化鉄含有物質中の酸化鉄を過不足なく還元するために必要な固定炭素を計算により求めた理論値である。本発明では、上記酸素量/固定炭素量は、2.67以下であることが好ましく、より好ましくは2.50以下、更に好ましくは2.00以下である。
【0031】
上記塊成物に含まれる酸化鉄含有物質中の酸素量は、次の手順で算出できる。
【0032】
まず、塊成物中の全鉄(T.Fe)およびFeO量を化学分析によって求める。
【0033】
次に、T.Feのうち、FeOとして存在していないFeは、全てFe23として存在していると仮定し、下記式(i)により、塊成物に含まれるFe23の質量(WFe2O3)を算出する。下記式(i)において、Wxは成分Xの質量(質量%)、Mxは成分Xの分子量を夫々示している。具体的には、WT.FeはT.Feの質量(質量%)、WFeOはFeOの質量(質量%)、WFe2O3はFe23の質量(質量%)、MFeはFeの分子量で55.85、MFeOはFeOの分子量で71.85、MFe2O3はFe23の分子量で159.7である。
【0034】
【数1】
【0035】
次に、下記式(ii)に基づいて、Fe23に含まれる酸素量と、FeOに含まれる酸素量の合計として、塊成物に含まれる酸化鉄含有物質中の酸素量を算出する。式中、MOは酸素の原子量で16である。
【0036】
【数2】
【0037】
次に、本発明に係る粒状金属鉄の製造方法について説明する。
【0038】
本発明に係る粒状金属鉄の製造方法は、酸化鉄含有物質および炭素質還元剤を含む混合物を塊成化し(以下、塊成化工程ということがある)、得られた塊成物を加熱炉の炉床上に装入して加熱することによって、該塊成物中の酸化鉄を還元し、更に加熱して還元鉄を溶融し、還元鉄を凝集させて粒状金属鉄を製造する(以下、加熱工程ということがある)ものである。そして、上記塊成物を上記加熱炉の炉床上で加熱する際は、上述したように、上記炭素質還元剤に含まれる揮発分の質量割合(質量%)と、上記加熱炉内における雰囲気ガスの平均ガス流速(m/秒)との関係が、上記式(1)を満足するところに本発明の特徴がある。上記式(1)の関係については上記で詳述したため、下記ではこれ以外の部分について説明する。
【0039】
[塊成化工程]
塊成化工程では、酸化鉄含有物質および炭素質還元剤を含む混合物を塊成化して塊成物を製造する。上記酸化鉄含有物質としては、具体的には、鉄鉱石、砂鉄、製鉄ダスト、非鉄精錬残渣、製鉄廃棄物などの酸化鉄源を用いることができる。上記炭素質還元剤としては、炭素を含有する還元剤を用いることができ、例えば、石炭やコークスなどが挙げられる。
【0040】
上記混合物には、更に融点調整剤を配合してもよい。上記融点調整剤とは、酸化鉄含有物質中の脈石や、炭素質還元剤中の灰分の融点を下げる作用を有する物質を意味する。即ち、上記混合物に融点調整剤を配合することによって、塊成物に含まれる酸化鉄以外の成分、特に脈石の融点に影響を与え、例えばその融点を降下させることができる。それにより脈石の溶融が促進され、溶融スラグを形成する。このとき酸化鉄の一部は溶融スラグに溶解し、溶融スラグ中で還元される。溶融スラグ中で生成した還元鉄は、固体のまま還元された還元鉄と接触することにより、固体の還元鉄として凝集する。
【0041】
上記融点調整剤としては、例えば、CaO供給物質、MgO供給物質、Al23供給物質、SiO2供給物質、蛍石(CaF2)などを用いることができる。上記CaO供給物質としては、例えば、CaO(生石灰)、Ca(OH)2(消石灰)、CaCO3(石灰石)、およびCaMg(CO32(ドロマイト)よりなる群から選ばれる少なくとも一つを用いることができる。上記MgO供給物質としては、例えば、MgO粉末、天然鉱石や海水などから抽出されるMg含有物質、MgCO3よりなる群から選ばれる少なくとも一つを配合してもよい。上記Al23供給物質としては、例えば、Al23粉末、ボーキサイト、ベーマイト、ギブサイト、ダイアスポアなどを配合できる。上記SiO2供給物質としては、例えば、SiO2粉末や珪砂などを用いることができる。
【0042】
上記混合物には、更にバインダーを配合してもよい。上記バインダーとしては、例えば、有機バインダーや無機バインダーなどを用いることができる。有機バインダーとしては、例えば、多糖類を用いることができる。多糖類としては、例えば、コーンスターチや小麦粉等の澱粉などを用いることができる。無機バインダーとしては、消石灰やベントナイト等を用いることができる。
【0043】
上記酸化鉄含有物質、炭素質還元剤、および融点調整剤は、混合する前に予め粉砕しておくことが好ましい。例えば、上記酸化鉄含有物質は平均粒径が10〜60μm、上記炭素質還元剤は平均粒径が10〜60μm、上記融点調整剤は平均粒径が5〜90μmとなるように粉砕することが推奨される。
【0044】
上記粉砕する手段は特に限定されず、公知の手段を採用できる。例えば、振動ミル、ロールクラッシャ、ボールミルなどを用いることができる。
【0045】
上述した酸化鉄含有物質等は、回転容器形の混合機や固定容器形の混合機を用いて混合すればよい。回転容器形の混合機としては、例えば、回転円筒形、二重円錐形、V形などの混合機が挙げられるが、これらに限定されない。固定容器形の混合機としては、例えば、混合槽内に、例えば、鋤などの回転羽を設けた混合機が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
次に、上記混合機で得られた混合物を塊成化し、塊成物を製造する。上記塊成物の形状は特に限定されず、例えば、ペレット状やブリケット状などであればよい。上記塊成物の大きさも特に限定されないが、粒径は50mm以下であることが好ましい。塊成物の粒径を過剰に大きくしようとすると、造粒効率が悪くなる。また、塊成物が大きくなり過ぎると、塊成物の下部への伝熱が悪くなり、生産性が低下する。なお、塊成物の粒径の下限値は5mm程度である。
【0047】
上記混合物を塊成化する塊成機としては、例えば、皿形造粒機、円筒形造粒機、双ロール型ブリケット成型機、押し出し機などを用いることができる。なお、皿形造粒機は、ディスク形造粒機と呼ばれることがある。また、円筒形造粒機は、ドラム形造粒機と呼ばれることがある。
【0048】
[加熱工程]
加熱工程では、上記塊成化工程で得られた塊成物を加熱炉の炉床上に装入して加熱することによって、該塊成物中の酸化鉄を還元し、更に加熱して還元鉄を溶融し、還元鉄を凝集させて粒状金属鉄を製造する。
【0049】
上記加熱炉としては、例えば、電気炉や移動炉床炉が挙げられる。上記移動炉床炉とは、炉床がベルトコンベアのように炉内を移動する加熱炉であり、例えば、回転炉床炉やトンネル炉が挙げられる。上記回転炉床炉は、炉床の始点と終点が同じ位置になるように、炉床の外観形状が円形またはドーナツ状に設計されており、炉床上に装入された塊成物に含まれる酸化鉄は、炉内を一周する間に加熱還元されて還元鉄を生成する。従って、回転炉床炉には、回転方向の最上流側に塊成物を炉内に装入する装入手段が設けられ、回転方向の最下流側に排出手段が設けられる。回転炉床炉の炉床は、回転構造であるため、回転方向の最下流側は、実際には装入手段の直上流側になる。上記トンネル炉とは、炉床が直線方向に炉内を移動する加熱炉である。
【0050】
本発明では、上記加熱炉内で生成する上記還元鉄は、上記加熱炉内において、全部が一旦溶融している。
【0051】
上記塊成物は、炉床上で、1350〜1500℃で加熱して加熱還元することが好ましい。上記加熱温度が1350℃を下回ると、還元鉄やスラグが溶融しにくく、高い生産性が得られないことがある。従って上記加熱温度は、1350℃以上とすることが好ましく、より好ましくは1400℃以上である。しかし上記加熱温度が1500℃を超えると、排ガス温度が高くなるため、排ガス処理設備が大掛かりなものとなって設備コストが増大する。従って上記加熱温度は1500℃以下とすることが好ましく、より好ましくは1480℃以下である。
【0052】
上記加熱炉に上記塊成物を装入するに先立ち、炉床保護のために床敷材を敷くことが望ましい。
【0053】
上記床敷材としては、上記炭素質還元剤として例示したものの他、例えば、耐火セラミックス等の耐火性粒子を用いることができる。
【0054】
上記床敷材の粒径の上限は、塊成物やその溶融物が潜り込まないような粒径であることが好ましい。上記床敷材の粒径の下限は、床敷材がバーナーの燃焼ガスによって吹き飛ばされないような形状であることが好ましい。
【0055】
[その他]
上記加熱工程で得られた粒状金属鉄は、粒状金属鉄とスラグに分離し、粒状金属鉄を回収すればよい。回収した粒状金属鉄は、例えば、高炉、転炉、電気炉などにおいて鉄源として用いることができる。
【0056】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0057】
下記実験例1および実験例2では、酸化鉄含有物質と炭素質還元剤を含む混合物を塊成化し、得られた塊成物を加熱炉に装入して加熱することによって、該塊成物中の酸化鉄を還元し、更に加熱して還元鉄を溶融し、還元鉄を凝集させて粒状金属鉄を製造した。このとき、下記実験例1では、炭素質還元剤に含まれる揮発分の質量割合(質量%)と、加熱炉内における雰囲気ガスの平均ガス流速(m/秒)との関係が、粒状金属鉄の生産性に及ぼす影響を調べた。一方、下記実験例2では、塊成物に含まれる酸化鉄含有物質由来の酸素量(質量%)を、該塊成物に含まれる炭素質還元剤由来の固定炭素量(質量%)で除した値(酸素量/固定炭素量)が、粒状金属鉄の歩留まりに及ぼす影響を調べた。なお、下記実験例1、2では、塊成物としてペレットを用いた。
【0058】
[実験例1]
上記酸化鉄含有物質としては、下記表1に示す成分組成の鉄鉱石αを用いた。下記表1において、T.Feは全鉄を意味している。また、下記表1には、鉄鉱石αに含まれるFeO中の酸素量、鉄鉱石αに含まれるFe23中の酸素量を算出した結果を併せて示す。また、鉄鉱石αに含まれるFeOおよびFe23をFeOxと示したとき、鉄鉱石αに含まれるFeOx中の酸素量を下記表1に併せて示す。
【0059】
上記炭素質還元剤としては、下記表2に示す成分組成の炭材a〜dを用いた。下記表2において、T.Cは全炭素を意味している。
【0060】
上記鉄鉱石と上記炭材に、融点調整剤およびバインダーを混合し、更に適量の水を配合した混合物を、タイヤ型造粒機を用いて直径19mmの生ペレットを造粒した。
【0061】
得られた生ペレットを乾燥機に装入し、付着水を除去し、球状の乾燥ペレットを製造した。得られた乾燥ペレットの成分組成を下記表3に示す。下記表3に示した「その他」とは、融点調整剤およびバインダーである。バインダーとしては、小麦粉に代表される有機バインダーを用いた。
【0062】
下記表3には、乾燥ペレットの質量を100%としたときの該乾燥ペレットに含まれる鉄鉱石中の酸素量、および該乾燥ペレットに含まれる炭材中の固定炭素量を算出し、結果を示す。また、下記表3には、上記酸素量(質量%)を、上記固定炭素量(質量%)で除した値(酸素量/固定炭素量)を算出し、結果を示す。
【0063】
ここで、下記表3に示した乾燥ペレットAを取り上げ、酸素量/固定炭素量の値を算出する手順について説明する。
【0064】
(酸素量)
下記表3に示されるように、乾燥ペレットAに含まれる鉄鉱石量は71.34%であり、該鉄鉱石に含まれるFeOx中の酸素量は下記表1から27.67%であるから、乾燥ペレットAの質量を100%としたときの該乾燥ペレットAに含まれる鉄鉱石中の酸素量は19.74%となる。
(71.34×27.67)/100=19.74
【0065】
(固定炭素量)
下記表3に示されるように、乾燥ペレットAに含まれる炭材量は16.27%であり、該炭材に含まれる固定炭素量は下記表2から78.00%であるから、乾燥ペレットAの質量を100%としたときの該乾燥ペレットAに含まれる炭材中の固定炭素量は12.69%となる。
(16.27×78.00)/100=12.69
【0066】
よって、乾燥ペレットAに含まれる鉄鉱石中の酸素量を、該乾燥ペレットAに含まれる炭材中の固定炭素量で除した値(酸素量/固定炭素量)は、1.56となる。
【0067】
また、乾燥ペレットの見掛け密度ρ(g/cm3)、および乾燥ペレットに含まれる全鉄(T.Fe)の量(質量%)を測定し、結果を下記表4に示す。なお、下記表4には、乾燥ペレットの種類、該乾燥ペレットを製造する際に用いた炭材の種類、炭材の質量を100%としたときの該炭材に含まれる揮発分の質量割合を示す。揮発分の質量割合は、下記表2に示した値と同じである。
【0068】
ここで、炭材に含まれる揮発分の質量割合(質量%)と、乾燥ペレットの見掛け密度(g/cm3)との関係を図1に示す。
【0069】
また、炭材に含まれる揮発分の質量割合(質量%)と、乾燥ペレットに含まれる全鉄の量(質量%)との関係を図2に示す。
【0070】
次に、得られた乾燥ペレットを加熱炉の炉床上に装入して1450℃で加熱し、乾燥ペレット中の酸化鉄を還元し、更に加熱して還元鉄を溶融し、還元鉄を凝集させて粒状金属鉄を製造した。上記加熱炉としては、電気炉を用いた。なお、乾燥ペレットの装入に先立ち、上記電気炉の炉床上には、炉床保護のため、炭素含有の固形物、例えばグラファイト粉末等を敷いた。
【0071】
上記乾燥ペレットを上記電気炉の炉床上で加熱する際は、該電気炉内における雰囲気ガスの組成を、天然ガスを完全燃焼させたときのガス組成を模擬して二酸化炭素ガスと窒素ガスの混合ガス雰囲気とし、電気炉内における平均ガス流速(m/秒)を制御した。上記平均ガス流速は、流量計にて調整した単位時間あたりのガス流量(m3/秒)を、電気炉内の温度に基づく単位時間あたりのガス流量(m3/秒)に換算し、このガス流量を流路の断面積(m2)で除して算出した値とした。流路の断面とは、ガスの進行方向に垂直で、炉床面に対して垂直な断面を意味している。下記表4に、算出した電気炉内における平均ガス流速(m/秒)を示す。また、この平均ガス流速を上記式(1)の右辺に代入して右辺の値を算出した。算出した右辺の値を、以下、Z値と呼び、このZ値を下記表4に示す。
Z=−4.62×平均ガス流速+46.7
【0072】
また、上記乾燥ペレットを還元溶融するために必要な時間(分)を測定し、測定結果を下記表4に示す。なお、下記表4では、反応時間(分)と表記した。
【0073】
ここで、炭材に含まれる揮発分の質量割合(質量%)と、反応時間(分)との関係を図3に示す。
【0074】
次に、還元終了後、粒状金属鉄を含む試料を電気炉から排出した。
【0075】
得られた試料を、磁選し、磁着物を、目開きが3.35mmの篩を用いて分級し、篩の上に残った残留物を製品として回収した。製品として回収した残留物は、主に粒状金属鉄であり、その質量を測定した。粒状金属鉄の質量(g)と、乾燥ペレットに含まれるT.Feの質量(g)に基づいて、粒状金属鉄の歩留まり(%)を算出し、結果を下記表4に示す。なお、粒状金属鉄には、Feの他に、C等が含まれるため、歩留まりは、100%を超えることもある。
歩留まり(%)=(粒状金属鉄の質量/乾燥ペレットに含まれるT.Feの質量)×100
【0076】
ここで、下記表4に示した乾燥ペレットの見掛け密度、乾燥ペレットに含まれる全鉄の量、乾燥ペレットを還元溶融するために必要な時間(以下、反応時間と呼ぶことがある)、粒状金属鉄の歩留まりに基づいて、下記式により粒状金属鉄の生産性を算出した。算出結果を下記表4に示す。
生産性=(A×B×D)/C
【0077】
但し、A〜Dは、次の通りである。
A=乾燥ペレットの見掛け密度(g/cm3
B=乾燥ペレットに含まれる全鉄の量(質量%)
C=乾燥ペレットを還元溶融するために必要な時間(分)
D=粒状金属鉄の歩留まり(%)
【0078】
また、下記表4に示したNo.1における生産性を基準値1.00とし、No.2〜15の生産性の相対値を生産性指数として算出し、結果を下記表4に示す。
【0079】
また、下記表4に示した電気炉内における平均ガス流速(m/秒)と、乾燥ペレットに含まれる炭素質還元剤中の揮発分の質量割合(質量%)との関係を、図4に示す。図4に示した○印は、下記表4に示したNo.1〜10、13〜15の結果を示しており、×印は、下記表4に示したNo.11と12の結果を示している。各プロット点の近くに記載した数値は、下記表4に示した生産性指数を示している。
【0080】
下記表3、表4および図4から次のように考察できる。No.11、12は、本発明で規定している要件を満足していない例である。即ち、炭材に含まれる揮発分の質量割合と、加熱炉内における雰囲気ガスの平均ガス流速との関係が、上記式(1)を満足していないため、生産性を向上できなかった。これに対しNo.1〜10およびNo.13〜15は、本発明で規定している要件を満足している例である。即ち、炭材に含まれる揮発分の質量割合と、加熱炉内における雰囲気ガスの平均ガス流速との関係が、上記式(1)を満足しているため、生産性を向上できた。また、乾燥ペレットに含まれる鉄鉱石中の酸素量を、該乾燥ペレットに含まれる炭材中の固定炭素量で除した値(酸素量/固定炭素量)が1.46〜2.67の範囲満足しているため、粒状金属鉄の歩留まりが高くなっている。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】
[実験例2]
上記酸化鉄含有物質としては、上記表1に示す成分組成の鉄鉱石αを用いた。上記炭素質還元剤としては、上記表2に示す成分組成の炭材a〜dを用いた。上記鉄鉱石と上記炭材に、融点調整剤およびバインダーを混合し、更に適量の水を配合した混合物を、上記実験例1と同じ手順で平均直径が19mmの生ペレットに造粒した。
【0086】
得られた生ペレットを乾燥機に装入し、上記実験例1と同じ条件で乾燥し、球状の乾燥ペレットを製造した。得られた乾燥ペレットの成分組成を下記表5に示す。下記表5に示した「その他」とは、融点調整剤およびバインダーである。下記表5には、乾燥ペレットに含まれる鉄鉱石中の酸素量、および該乾燥ペレットに含まれる炭材中の固定炭素量を算出し、結果を示す。また、下記表5には、上記酸素量を、上記固定炭素量で除した値(酸素量/固定炭素量)を算出し、結果を示す。
【0087】
次に、得られた乾燥ペレットを加熱炉の炉床上に装入し、上記実験例1と同じ条件で1450℃で加熱し、乾燥ペレット中の酸化鉄を還元し、更に加熱して還元鉄を溶融し、還元鉄を凝集させて粒状金属鉄を製造した。
【0088】
上記乾燥ペレットを上記電気炉の炉床上で加熱する際は、該電気炉内における雰囲気ガスの組成を、天然ガスを完全燃焼させたときのガス組成を模擬して二酸化炭素ガスと窒素ガスの混合ガス雰囲気とし、電気炉内における平均ガス流速(m/秒)を制御した。上記平均ガス流速は、流量計にて調整した単位時間あたりのガス流量(m3/秒)を、電気炉内の温度に基づく単位時間あたりのガス流量(m3/秒)に換算し、このガス流量を流路の断面積(m2)で除して算出した値とした。下記表5に、算出した電気炉内における平均ガス流速(m/秒)を示す。
【0089】
次に、還元終了後、粒状金属鉄を含む試料を電気炉から排出し、上記実験例1と同じ条件で、粒状金属鉄の歩留まり(%)を算出した。結果を下記表5に示す。
【0090】
また、下記表5に示した酸素量を、固定炭素量で除した値(酸素量/固定炭素量)と、粒状金属鉄の歩留まり(%)との関係を図5に示す。
【0091】
下記表5および図5に基づいて、次のように考察できる。上記酸素量/固定炭素量の値を大きくすることによって、粒状金属鉄の歩留まりは高くなる傾向が読み取れ、酸素量/固定炭素量の値を1.46以上とすれば、粒状金属鉄の歩留まりを95%以上にできることが分かる。
【0092】
【表5】
図1
図2
図3
図4
図5