【実施例】
【0068】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。本実施例では、イオン液体を合成し、イオン液体を含有する潤滑剤を作製した。そして、潤滑剤を用いて磁気ディスク及び磁気テープを作製し、それぞれディスク耐久性及びテープ耐久性について評価した。磁気ディスクの製造、ディスク耐久性試験、磁気テープの製造、及びテープ耐久性試験は、次のように行った。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0069】
<磁気ディスクの製造>
例えば、国際公開第2005/068589号公報に従って、ガラス基板上に磁性薄膜を形成し、
図1に示すような磁気ディスクを作製した。具体的には、アルミシリケートガラスからなる外径65mm、内径20mm、ディスク厚0.635mmの化学強化ガラスディスクを準備し、その表面をRmaxが4.8nm、Raが0.43nmになるように研磨した。ガラス基板を純水及び純度99.9%以上のイソプロピルアルコール(IPA)中で、それぞれ5分間超音波洗浄を行い、IPA飽和蒸気内に1.5分間放置後、乾燥させ、これを基板11とした。
【0070】
この基板11上に、DCマグネトロンスパッタリング法によりシード層としてNiAl合金(Ni:50モル%、Al:50モル%)薄膜を30nm、下地層12としてCrMo合金(Cr:80モル%、Mo:20モル%)薄膜を8nm、磁性層13としてCoCrPtB合金(Co:62モル%、Cr:20モル%、Pt:12モル%、B:6モル%)薄膜を15nmとなるように順次形成した。
【0071】
次に、プラズマCVD法によりアモルファスのダイヤモンドライクカーボンからなるカーボン保護層14を5nm製膜し、そのディスクサンプルを洗浄器内に純度99.9%以上のイソプロピルアルコール(IPA)中で10分間超音波洗浄を行い、ディスク表面上の不純物を取り除いた後に乾燥させた。その後、25℃50%相対湿度(RH)の環境においてディスク表面にイオン液体のIPA溶液を用いてディップコート法により塗布することで、潤滑剤層15を約1nm形成した。
【0072】
<ディスク耐久性試験>
市販のひずみゲージ式ディスク摩擦・摩耗試験機を用いて、ハードディスクを14.7Ncmの締め付けトルクで回転スピンドルに装着後、ヘッドスライダーのハードディスクに対して内周側のエアベアリング面の中心が、ハードディスクの中心より17.5mmになるようにヘッドスライダーをハードディスク上に取り付けCSS耐久試験を行った。本測定に用いたヘッドは、IBM3370タイプのインライン型ヘッドであり、スライダーの材質はAl
2O
3−TiC、ヘッド荷重は63.7mNである。本試験は、クリーン清浄度100、25℃60%RHの環境下で、CSS(Contact、Start、Stop)毎に摩擦力の最大値をモニターした。摩擦係数が1.0を超えた回数をCSS耐久試験の結果とした。CSS耐久試験の結果において、50,000回を超える場合には「>50,000」と表示した。また、耐熱性を調べるために、300℃の温度で3分間加熱試験を行った後のCSS耐久性試験を同様に行った。
【0073】
<磁気テープの製造>
図2に示すような断面構造の磁気テープを作製した。先ず、5μm厚の東レ製ミクトロン(芳香族ポリアミド)フィルムからなる基板21に、斜め蒸着法によりCoを被着させ、膜厚100nmの強磁性金属薄膜からなる磁性層22を形成した。次に、この強磁性金属薄膜表面にプラズマCVD法により10nmの
ダイヤモンドライクカーボンからなるカーボン保護層23を形成させた後、6ミリ幅に裁断した。この磁性層22上にIPAに溶解したイオン液体を、膜厚が1nm程度となるように塗布して潤滑剤層24を形成し、サンプルテープを作製した。
【0074】
<テープ耐久性試験>
各サンプルテープについて、温度−5℃環境下、温度40℃30%RH環境下のスチル耐久性、並びに、温度−5℃環境下、温度40℃90%RH環境下の摩擦係数及びシャトル耐久性について測定を行った。スチル耐久性は、ポーズ状態での出力が−3dB低下するまでの減衰時間を評価した。シャトル耐久性は、1回につき2分間の繰り返しシャトル走行を行い、出力が3dB低下するまでのシャトル回数で評価した。また、耐熱性を調べるために、100℃の温度で10分間加熱試験を行った後の耐久性試験も同様に行った。
【0075】
(実施例1)
<トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド−n−オクタデシルアンモニウム塩の合成>
トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド−n−オクタデシルアンモニウム塩については、下記スキームによって合成した。
原料のオクタデシルアミン硝酸塩は、オクタデシルアミンを、加熱したエタノールに溶解させ、等モルの硝酸を滴下して中性になったことを確認後、冷却して析出した結晶をろ過後乾燥させて得た。この硝酸塩3.3gをエタノールに溶解させ、メチドのカリウム塩4.5gをエタノールに溶解させたものを加えた。その後に、撹拌を1時間行い、30分間加熱還流した。溶媒を除去後にエーテルを加え、有機層を水で洗浄後に無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、エーテルを除去した。n−ヘキサンとエタノールとの混合溶媒を用いて再結晶を行い、無色の結晶6.5gを得た。収率95%。融点92.0℃。
【化13】
【0076】
ここで、本明細書においてのFTIRの測定は、日本分光社製FT/IR−460を使用し、KBrプレート法あるいはKBr錠剤法を用いて透過法で測定を行った。そのときの分解能は4cm
−1である。
また、TG/DTA測定では、セイコーインスツルメント社製EXSTAR6000を使用し、200ml/minの流量で空気中を導入しながら、10℃/minの昇温速度で30℃−600℃の温度範囲で測定を行った。
1HNMRスペクトルは、VarianMercuryPlus300核磁気共鳴装置(バリアン社製)で測定した。
1HNMRの化学シフトは、内部標準(7.24ppmにおけるCDCl
3)との比較としてppmで表した。分裂パターンは、一重項をs、二重項をd、三重項をt、多重項をm、ブロードピークをbrとして示した。
13CNMRスペクトルは、VarianGemini−300(125MHz)核磁気共鳴装置(バリアン社製)で測定した。
13CNMRの化学シフトは、内部標準(77.0ppmにおけるCDCl
3)との比較としてppmで表した。
【0077】
生成物のFTIRスペクトルとその帰属をそれぞれ
図4及び表2に示す。
1124cm
−1にSO
2の対称伸縮振動、1371cm
−1にSO
2結合の逆対称伸縮振動、1197cm
−1と1220cm
−1にCF
3の対称伸縮振動、1614cm
−1にNH結合の逆対称変角振動、2851cm
−1にCH
2の対称伸縮振動、2920cm
−1にCH
2の逆対称伸縮振動、3170−3263cm
−1にNH結合の伸縮振動が見られた。
【0078】
【表2】
【0079】
また、重メタノール中でのプロトン(
1H)NMR及びカーボン(
13C)NMRのピークとその帰属について、以下に示す。
【化14】
【化15】
【0080】
以上から、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド−n−オクタデシルアンモニウム塩が合成されていることが確認できた。
【0081】
次に、TG/DTA測定を行った。TG/DTA測定結果を、
図5に示す。重量減少による発熱ピーク温度は、386.0℃及び397.1℃と非常に高かった。また、重量減少が発熱であることから、これが化合物の分解反応であることが示唆された。発熱温度は、パーフルオロオクタンスルホン酸オクタデシルアンモニウム塩と比較して2℃改善されている。
【0082】
(実施例2)
<トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド−n−オクタデシルTBD塩の合成>
トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド−n−オクタデシルTBD塩については、以下のスキームによって合成した。
まず、原料の7−n−オクタデシル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]−5−デセン(オクタデシルTBD)の合成について示す。R.W.Alderらの方法(非特許文献、 Roger W. Alder, Rodney W. Mowlam, David J. Vachon and Gray R. Weisman, “New Synthetic Routes to Macrocyclic Triamines,” J. Chem. Sos. Chem. Commun. pp.507−508 (1992)参照)を参考にして合成した。
即ち、水素化ナトリウム(55質量%ヘキサン)を、乾燥THFに溶解させた1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]−5−デセン(TBD)8.72g中に10℃で加えて攪拌した。10℃に温度を保ったまま、臭素化オクタデカンを20分間かけて滴下した。その後、10℃で30分間撹拌し、続いて、常温で2時間撹拌した後に、1時間加熱還流した。常温に戻して過剰の水素化ナトリウムを加えて反応させた。溶媒を除去後、アミノ処理したシリカゲルでカラムクロマトグラフィーを行い、淡黄色の目的物を得た。
【0083】
得られた目的物4.0gをエタノールに溶解させ、そこへ65質量%硝酸(d=1.400)を0.71cc加えた。リトマス紙で中性になったのを確認後、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドカリウム塩4.60gのエタノール溶液を添加した。添加後30分間撹拌後30分間加熱還流を行った。溶媒を除去後に、エーテルを加え、有機層を水で洗浄後に無水硫酸ナトリウムで乾燥させ溶媒のエーテルを除去した。n−ヘキサンとエタノールとの混合溶媒を用いて再結晶を行い、無色の針状結晶7.6gを得た。収率89%。
【0084】
【化16】
【0085】
生成物のFTIRスペクトルとその帰属をそれぞれ
図6及び表3に示す。
1132cm
−1にSO
2の対称伸縮振動、1205cm
−1にCF
3の対称伸縮振動、1383cm
−1にSO
2結合の逆対称伸縮振動、1600cm
−1にNH結合の逆対称変角振動、1631cm
−1にC=Nの伸縮振動、2852cm
−1にCH
2の対称伸縮振動、2920cm
−1にCH
2の逆対称伸縮振動、3447cm
−1にNH結合の伸縮振動が見られた。
【0086】
【表3】
【0087】
また、重クロロホルム中でのプロトン(
1H)NMR及びカーボン(
13C)NMRのピークとその帰属について以下に示す。
【化17】
【化18】
【0088】
以上より、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド−n−オクタデシルTBD塩が合成されていることが確認できた。
【0089】
次に、TG/DTA測定を行った。TG/DTA測定結果を、
図7に示す。メインの重量減少による発熱ピーク温度は、415.0℃、424.7℃、及び506.7℃と非常に高かった。また、重量減少が発熱であることから、これが化合物の分解反応であることが示唆された。発熱温度は、パーフルオロオクタンスルホン酸オクタデシルアンモニウム塩と比較して31℃改善されている。
【0090】
(実施例3)
<トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド−n−オクタデシルDBU塩の合成>
トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド−n−オクタデシルDBU塩については、以下のスキームによって合成した。
まず、6−octadecyl−1,8−diazabicyclo[5.4.0]−7−undecene(オクタデシルDBU)の合成について述べる。
DBU−C
18H
37は、Matsumuraらの方法(非特許文献、Noboru Matsumura, Hiroshi Nishiguchi, Masao Okada, and Shigeo Yoneda, “Preparation and Characterization of 6−Substituted 1,8−diazabicyclo[5.4.0]undec−7−ene,” J. Heterocyclic Chemistry Vol.23, Issue 3, pp.885−887 (1986)参照)を参考にして合成した。
即ち、原料の1,8−diazabicyclo[5.4.0]−7−undecene(DBU)7.17gをテトラヒドロフラン(THF)溶液に溶解させて0℃に冷却し、1.64mol/L濃度のn−ブチルリチウム29ccをアルゴンガス雰囲気下で滴下して、0℃で1時間撹拌した。得られた溶液へ、臭化オクタデシル15.71gをTHFに溶解させたものを滴下した後に、24時間撹拌放置した。なお、THFはtype4Aのモレキュラーシーブスで乾燥後、蒸留精製したものを直ぐに用いた。その後、塩酸で酸性にした後に溶媒を除去し、ヘキサンに溶解させたものをアミノ化したシリカゲルでカラムクロマトグラフィーを行って精製して無色結晶を得た。収率90%。
【0091】
得られたオクタデシルDBU4.0gをエタノールに溶解させ、65質量%硝酸(d=1.400)を0.96g加えた。リトマス紙で中性になったのを確認後、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドカリウム塩4.45gのエタノール溶液を添加した。添加後、30分間撹拌後30分間加熱還流を行った。溶媒を除去後に、エーテルを加え、有機層を水で洗浄後に無水硫酸ナトリウムで乾燥させ溶媒のエーテルを除去した。n−ヘキサンとエタノールとの混合溶媒を用いて再結晶を行い無色の針状結晶7.6gを得た。融点58.6℃、収率94%。
【0092】
【化19】
【0093】
生成物のFTIRスペクトルとその帰属をそれぞれ
図8及び表4に示す。
1117cm
−1にSO
2の対称伸縮振動、1198cm
−1にCF
3の対称伸縮振動、1381cm
−1にSO
2結合の逆対称伸縮振動、1632cm
−1にC=Nの伸縮振動、2850cm
−1にCH
2の対称伸縮振動、2918cm
−1にCH
2の逆対称伸縮振動、3408cm
−1にNH結合の伸縮振動が見られた。
【表4】
【0094】
また、プロトン(
1H)NMR及びカーボン(
13C)NMRのピークとその帰属について以下に示す。
【化20】
【化21】
【0095】
以上より、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド−n−オクタデシルDBU塩が合成されていることが確認できた。
【0096】
次に、TG/DTA測定を行った。TG/DTA測定結果を、
図9に示す。メインの重量減少による発熱ピーク温度は、414.3℃、426.7℃、及び528.4℃と非常に高かった。また、重量減少が発熱であることから、これが化合物の分解反応であることが示唆された。発熱温度は、パーフルオロオクタンスルホン酸オクタデシルアンモニウム塩と比較して30℃改善されている。
【0097】
合成したイオン液体について下記表5にまとめた。
実施例1〜3で合成したイオン液体についてイオン液体1〜3とする。そのときの融点、発熱ピーク温度、20%重量減少温度、及び10%重量減少温度も併せて示す。比較例1として、パーフルオロオクタンスルホン酸オクタデシルアンモニウム塩を挙げた。比較例2としてFomblin Z−DOLを挙げた。比較例3として、Z−Tetraol(ZTMD)を挙げた。
比較例1のパーフルオロオクタンスルホン酸オクタデシルアンモニウム塩と比較して、発熱ピーク温度は、実施例1、実施例2、実施例3の場合にそれぞれ、3℃、32℃、31℃高かった。また20%重量減少温度は、それぞれ12℃、45℃、49℃高かった。10%重量減少温度は、14℃、32℃、43℃高かった。
本発明のイオン液体を含有する本発明の潤滑剤は、パーフルオロオクタンスルホン酸オクタデシルアンモニウム塩、Z−DOLや他の潤滑剤と比べて非常に耐熱性が高いことがわかった。
【0098】
【表5】
【0099】
次に磁気記録媒体にイオン液体を含有する潤滑剤を使用して耐久性について調べた。
【0100】
(実施例4)
表5に示す[イオン液体1]のトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド−n−オクタデシルアンモニウム塩を含有する潤滑剤を用いて、前述の磁気ディスクを作製した。表6に示すように、磁気ディスクのCSS測定は、50,000回を超え、加熱試験後のCSS測定も50,000回を超え、優れた耐久性を示した。
【0101】
(実施例5)
表5に示す[イオン液体2]のトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド−n−オクタデシルTBD塩を含有する潤滑剤を用いて、前述の磁気ディスクを作製した。表6に示すように、磁気ディスクのCSS測定は、50,000回を超え、加熱試験後のCSS測定も50,000回を超え、優れた耐久性を示した。
【0102】
(実施例6)
表5に示す[イオン液体3]のトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド−n−オクタデシルDBU塩を含有する潤滑剤を用いて、前述の磁気ディスクを作製した。表6に示すように、磁気ディスクのCSS測定は、50,000回を超え、加熱試験後のCSS測定も50,000回を超え、優れた耐久性を示した。
【0103】
(比較例4)
表5に示す[比較例1]のパーフルオロオクタンスルホン酸オクタデシルアンモニウム塩(C
8F
17SO
3−H
3N
+C
18H
37)を含有する潤滑剤を用いて、前述の磁気ディスクを作製した。表6に示すように、磁気ディスクのCSS測定での耐久性は50,000回を超えるが、加熱試験後でもCSS測定は50,000回を超えであり、ディスクでの特性に対しては実施例との大きな差は見られなかった。
【0104】
(比較例5)
表5に示す[比較例2]のZ−DOLを含有する潤滑剤を用いて、前述の磁気ディスクを作製した。表6に示すように、磁気ディスクのCSS測定での耐久性は50,000回を超えるが、加熱試験後にはCSS耐久性はは12,000回で劣化が始まった。実施例と比較すると耐熱性に欠けるため、加熱後に耐久性が低下したと考えられる。
【0105】
(比較例6)
表5に示す[比較例3]のZ−Tetraolを含有する潤滑剤を用いて、前述の磁気ディスクを作製した。表6に示すように、磁気ディスクのCSS測定での耐久性は50,000回を超えるが、加熱試験後にはCSS耐久性は36,000回で劣化が始まった。耐熱性に関して、Z−DOLよりは耐久性は改善されているが、実施例と比較すると耐熱性に欠けるため、加熱後に耐久性が低下したと考えられる。
【0106】
【表6】
【0107】
以上の説明からも明らかなように、本発明のイオン液体を含有する本発明の潤滑剤は、高温保存条件下においても優れた潤滑性を保つことができ、また、長期に亘ってそのCSS潤滑性を保つことができた。
【0108】
次に、イオン液体1〜3、比較イオン液体1、及び比較潤滑剤1〜2を磁気テープに適用した例を示す。
【0109】
(実施例7)
イオン液体1を含有する潤滑剤を用いて、前述の磁気テープを作製した。表7に示すように、100回のシャトル走行後の磁気テープの摩擦係数は、温度−5℃の環境下で0.19であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で0.21であった。また、スチル耐久試験は、温度−5℃の環境下で60min超であり、温度40℃、相対湿度30%環境下で60min超であった。また、シャトル耐久試験は、温度−5℃の環境下で200回超であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で200回超であった。また、加熱試験後の100回のシャトル走行後の磁気テープの摩擦係数は温度−5℃の環境下で0.19であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で0.22であった。スチル耐久試験は、温度−5℃の環境下で60min超であり、温度40℃、相対湿度30%環境下で60min超であった。また、加熱試験後のシャトル耐久試験は、温度−5℃の環境下で200回超であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で200回超であった。以上の結果より、イオン液体1を塗布した磁気テープは、優れた摩擦特性、スチル耐久性、及びシャトル耐久性を有することが分かった。
【0110】
(実施例8)
イオン液体2を含有する潤滑剤を用いて、前述の磁気テープを作製した。表7に示すように、100回のシャトル走行後の磁気テープの摩擦係数は、温度−5℃の環境下で0.22であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で0.23であった。また、スチル耐久試験は、温度−5℃の環境下で60min超であり、温度40℃、相対湿度30%環境下で60min超であった。また、シャトル耐久試験は、温度−5℃の環境下で200回超であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で200回超であった。また、加熱試験後の100回のシャトル走行後の磁気テープの摩擦係数は温度−5℃の環境下で0.22であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で0.23であった。加熱試験後のスチル耐久試験は、温度−5℃の環境下で60min超であり、温度40℃、相対湿度30%環境下で60min超であった。また、加熱試験後のシャトル耐久試験は、温度−5℃の環境下で200回超であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で200回超であった。以上の結果より、イオン液体2を塗布した磁気テープは、優れた摩擦特性、スチル耐久性、及びシャトル耐久性を有することが分かった。
【0111】
(実施例9)
イオン液体3を含有する潤滑剤を用いて、前述の磁気テープを作製した。表7に示すように、100回のシャトル走行後の磁気テープの摩擦係数は、温度−5℃の環境下で0.21であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で0.21であった。また、スチル耐久試験は、温度−5℃の環境下で60min超であり、温度40℃、相対湿度30%環境下で60min超であった。また、シャトル耐久試験は、温度−5℃の環境下で200回超であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で200回超であった。また、加熱試験後の100回のシャトル走行後の磁気テープの摩擦係数は温度−5℃の環境下で0.21であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で0.22であった。加熱試験後のスチル耐久試験は、温度−5℃の環境下で60min超であり、温度40℃、相対湿度30%環境下で60min超であった。また、加熱試験後のシャトル耐久試験は、温度−5℃の環境下で200回超であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で200回超であった。以上の結果より、イオン液体3を塗布した磁気テープは、優れた摩擦特性、スチル耐久性、及びシャトル耐久性を有することが分かった。
【0112】
(比較例7)
比較例としてイオン液体であるパーフルオロオクタンスルホン酸オクタデシルアンモニウム塩を含有する潤滑剤を用いて、前述の磁気テープを作製した。表7に示すように、100回のシャトル走行後の磁気テープの摩擦係数は、温度−5℃の環境下で0.20であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で0.23であった。また、スチル耐久試験は、温度−5℃の環境下で60min超であり、温度40℃、相対湿度30%環境下で60min超であった。また、シャトル耐久試験は、温度−5℃の環境下で200回超であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で200回超であった。しかし、加熱試験後の100回のシャトル走行後の磁気テープの摩擦係数は温度−5℃の環境下で0.23であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で0.26に増加した。加熱試験後のスチル耐久試験は、温度−5℃の環境下で60min超であり、温度40℃、相対湿度30%環境下で60min超であった。また、加熱試験後のシャトル耐久試験は、温度−5℃の環境下で200回超であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で200回超であった。以上の結果より、比較イオン液体1を塗布した磁気テープは、優れたスチル耐久性、及びシャトル耐久性を有するが、加熱試験後に摩擦係数が増加することが分かった。
【0113】
(比較例8)
比較例2を含有する潤滑剤を用いて、前述の磁気テープを作製した。表7に示すように、100回のシャトル走行後の磁気テープの摩擦係数は、温度−5℃の環境下で0.25であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で0.30であった。また、スチル耐久試験は、温度−5℃の環境下で12minであり、温度40℃、相対湿度30%環境下で48minであった。また、シャトル耐久試験は、温度−5℃の環境下で59回であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で124回であった。また加熱試験後の100回のシャトル走行後の磁気テープの摩擦係数は温度−5℃の環境下で0.32であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で0.35に増加した。加熱試験後のスチル耐久試験は、温度−5℃の環境下で12minであり、温度40℃、相対湿度30%環境下で15minであった。また、加熱試験後のシャトル耐久試験は、温度−5℃の環境下で46回であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で58回であった。以上の結果より、比較例2の化合物を塗布した磁気テープは、摩擦係数が高く、またスチル耐久性、及びシャトル耐久性の劣化が大きいことが分かった。
【0114】
(比較例9)
比較例3の化合物を含有する潤滑剤を用いて、前述の磁気テープを作製した。表7に示すように、100回のシャトル走行後の磁気テープの摩擦係数は、温度−5℃の環境下で0.22であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で0.26であった。また、スチル耐久試験は、温度−5℃の環境下で25minであり、温度40℃、相対湿度30%環境下で35minであった。また、シャトル耐久試験は、温度−5℃の環境下で65回であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で156回と耐久性は比較例2よりは改善したものの磁気テープの仕様を満足しない。また加熱試験後の100回のシャトル走行後の磁気テープの摩擦係数は温度−5℃の環境下で0.28であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で0.32に増加した。加熱試験後のスチル耐久試験は、温度−5℃の環境下で23minであり、温度40℃、相対湿度30%環境下で31minであった。また、加熱試験後のシャトル耐久試験は、温度−5℃の環境下で55回であり、温度40℃、相対湿度90%環境下で126回であった。以上の結果より、比較例3の潤滑剤Z−Tetraolを塗布した磁気テープは、実施例と比較して摩擦係数が高くまたスチル耐久性、及びシャトル耐久性が悪いことが分かった。
【0115】
【表7】
【0116】
これらの結果も、本発明のイオン液体を含有する本発明の潤滑剤を塗布した磁気テープは、優れた耐摩耗性、スチル耐久性、シャトル耐久性を示した。しかし、比較例として示したZ−DOLやZ−Tetraolの場合には、前述のディスクの場合と同様にその耐久性の劣化が大きかった。またパーフルオロオクタンスルホン酸オクタデシルアンモニウム塩を含有する潤滑剤の場合には優れた耐久性を有するものの、加熱後に摩擦係数が増加した。
【0117】
以上の説明からも明らかなように、共役酸(B
+)と共役塩基(X
−)とを有し、前記共役酸が、炭素数10以上の直鎖状の炭化水素基を有し、前記共役塩基が、前記一般式(1)で表され、プロトン性であるイオン液体を含有する潤滑剤は、高温条件下においても潤滑性を保つことができ、また、長期に亘って潤滑性を保つことができる。したがって、このイオン液体を含有する潤滑剤を用いた磁気記録媒体は、非常に優れた走行性、耐摩耗性、及び耐久性を得ることができる。