【実施例】
【0027】
図2には、本発明に係る追い焚き循環金具の一実施例に設けられているケース部材17の斜視図が、ケース部材17に取り付けられる弁体4a,4bと共に示されており、
図1(a)にはケース部材17のケース本体18の正面図が示されている。本実施例の追い焚き循環金具9は、
図2に示されるようなケース部材17を有し、ケース部材17は浴槽26の側壁内側に設けられるものである。ケース部材17は例えば硬質合成樹脂の成形品により形成され、図示されていない取り付け具を介して浴槽26の内側に取り付けられている。
【0028】
なお、前記取り付け具の構成は特に限定されるものでなく、適宜設定されるものであり、これまで提案されている様々な構成や今後提案される構成が適宜適用されるものであるが、例えば、浴槽26の内側に設けられる内部取り付け具と浴槽26の外側に設けられる外部取り付け具とを有するものとすることができる。また、外部取り付け具には、追い焚き循環通路25の往管24と戻り管23の一方側が接続される接続管と他方側が接続される接続管とが設けられるように構成することができ、本実施例は、それらの接続管のうち、どちら側に往管24と戻り管23の一方が接続されて他方が他方側の接続管に接続されてもよいような、無極性タイプの追い焚き循環金具9と成している。
【0029】
図2に示されるように、ケース部材17は、筒体42を備えたケース本体18と、該ケース本体18を覆う蓋部材22とを有しており、ケース本体18と蓋部材22とは、共にその外周部に形成された凹部36同士を位置合わせした状態で、蓋部材22のビス挿通部66とケース本体18のビス挿通部56とに挿入される図示されていないビス(
図5の符号67、参照)によって固定される。蓋部材22には、開口28,29が形成されると共に、開口28と開口29とが連通することを防ぐショートサーキット防止部材68が設けられている(
図2においてハッチングを施してある)。開口28は浴槽湯水をケース部材17内に導入する第1の湯の吸い込み口として機能し、開口28は後述する第2の室2を介して追い焚き循環通路25の戻り管23に連通する。
【0030】
なお、本実施例の追い焚き循環金具9は前記の如く無極性タイプであるので、蓋部材22に形成されている開口28,29のうちの一方が戻り管23側に連通して第1の湯の吸い込み口として機能するものであり、追い焚き循環通路25との接続態様によっては開口29が第1の湯の吸い込み口となることもあるが、説明を分かりやすくするために、ここでは、開口28が戻り管23に連通するように追い焚き循環通路25が接続されているとして説明する。
【0031】
図1に示されるように、ケース本体18には、浴槽26への湯の吐出口30がケース部材17の側部下方側に形成されている。なお、
図2に示されている斜視図は、ケース部材17の構成を分かりやすくするためにケース部材17の浴槽26への取り付け角度を実際の角度と周方向にずらして示しており、湯の吐出口30がケース本体18の側部中央側(ほぼ真横)に形成されているように示してあるが、ケース本体18の取り付け角度は
図1に示される角度であり、湯の吐出口30はケース本体18の側部下方側に設けられる。
【0032】
また、ケース本体18には、浴槽湯水をケース部材17内に導入する第2の湯の吸い込み口31がケース部材17の側部がわに形成されており、第2の湯の吸い込み口31はフィルタ無しで設けられている。ケース部材17のケース本体18内には仕切り壁32が形成されており、
図1においては、仕切り壁32の形成位置とビス挿通部56および、ケース本体18の外周壁52における第2の湯の吸い込み口31の両側部位と図の左下側のビス挿通部56の両側領域にハッチングが施されている。
【0033】
ケース本体18には、仕切り壁32によって仕切られた第1の室1と第2の室2とが形成されて
ケース部材17内における上半分側の位置に、第1の室1と第2の室2とが隣り合わせて配置されており、第1の室1は追い焚き循環通路25の往管24に連通し、第2の室2は追い焚き循環通路25の戻り管23に連通する。また、ケース本体18には
ケース部材17内の下半分側に第4の室としての連通室33が形成され、
連通室33は、第1の室1と第2の室2の両方の室と上下方向に隣り合わせに配置されている。図2、
図4に示されるように、連通室33と第1の室1との間
(境界部)に弁体4aの吐出弁
(第1の常閉弁)71が配置されて、弁体4aの吸込弁72がケース本体18の上側位置において蓋部材22の開口29に対応する位置に配置される。
【0034】
なお、弁体4aは、例えば
図3に示されるように、断面略L字形状に形成された合成ゴムの一体成形品であり、その一片が矩形板状の吐出弁71と成し、他片が矩形板状の吸込弁72と成している。吐出弁71と吸込弁72との連結部には略角棒状の弁支持軸73が設けられており、弁支持軸73には凹部73aが形成されている。
【0035】
そして、弁支持軸73の両端部がそれぞれ、第1の室1と連通室33との連通部の両端の係合部54(
図1、参照)に係合し、
図4に示されるように、自然状態においては、弁体4aの吐出弁71が連通室33と第1の室1との間を連通室33側から閉塞し
(第1の室1と連通室33とは連通せず)、弁体4aの吸込弁72が第1の室1側から開口29を閉塞する態様と成している。また、第1の室1が追い焚き循環通路25の往管24に接続されている本実施例においては、弁体4aの吸込弁72は閉じたままであり、開口29は閉塞されている。一方、往管24から第1の室1に湯が導入されると、その湯が弁体4aの吐出弁71を連通室33側に押して開いて、
図4の破線矢印Hに示されるように連通室33を通り、
図1(b)の実線矢印Hに示されるように、連通室33の湯の導出口34から導出されるように構成されており、湯の導出口34は第1の室1からの湯の導出口と成している。
【0036】
なお、弁体4bも弁体4aと同様に形成されており、自然状態において、弁体4bの吐出弁
(第2の常閉弁)71が連通室33と第2の室2との間を連通室33側から閉塞し
(第2の室2と連通室33とは連通せず)、弁体4bの吸込弁72が第2の室2側から開口28を閉塞する態様と成している。そして、追い焚き循環通路25の追い焚き循環ポンプ21の駆動により戻り管23側が負圧になると、吸込弁72がケース本体18側に開いて開口28から浴槽湯水が導入される。また、第2の室2が追い焚き循環通路25の戻り管23に接続されている本実施例においては、追い焚き動作時には弁体4bの吐出弁71は閉じたままであり、第2の室2と連通室33とは吐出弁71によって分離される。
【0037】
また、
図1に示されるように、ケース本体18には、第1の室1からの湯の導出口(連通室33からの湯の導出口)34を浴槽26への湯の吐出口30に連通させる連通通路35と、第2の湯の吸い込み口31に連通する第3の室3とが形成されている。第3の室3は第1の室1からの湯の導出口34にも連通しており、第3の室3は連通通路35を介して(通して)湯の吐出口30に連通している。
【0038】
第2の湯の吸い込み口31は第1の室1からの湯の導出口34よりも大きく形成されており、該湯の導出口34から湯が導出されるときのエゼクタ効果によって、
図1(b)の矢印Cに示されるように、浴槽湯水が第3の室3を介して第2の湯の吸い込み口31から吸い込まれ、該浴槽湯水が第1の室1からの湯の導出口34から矢印Hに示されるように導出される湯に合流して連通通路35を通ることにより混合され、湯の吐出口34から導出される構成と成している。
【0039】
また、
図5(a)に示されるように、ケース部材17にはカバー部材37が着脱自在に取り付けられるものである。カバー部材37は例えば硬質合成樹脂により形成され、その前面の開口部38に金属製の網状のフィルタ39が設けられ、カバー部材37の側面にはケース本体18の湯の吐出口30と第2の湯の吸い込み口31とに対応する位置にそれぞれ開口部40,41が形成されている。
【0040】
なお、本実施例において、カバー部材37はケース部材17に対して定位置から周方向に許容範囲内で回転可能に装着され、その回転許容範囲を超えると外れるように形成されている。つまり、
図5(b)には、カバー部材37がケース部材17に対して定位置にある状態について、ケース本体18の第2の湯の吸い込み口31と湯の吐出口30の近傍を示す断面図により示されており、
図5(c)には、カバー部材37がケース部材17に対して定位置から周方向に許容範囲内で最大限回転した状態について、ケース本体18の第2の湯の吸い込み口31と湯の吐出口30の近傍を示す断面図により示されており、ケース本体18とカバー部材37との相対位置は、
図5(b)から
図5(c)の範囲内で変動することがある。
【0041】
それに対し、本実施例では、カバー部材37がケース部材17に定位置で装着されていても、カバー部材37が緩んでケース部材17の周方向に許容範囲内で回転していても、第2の湯の吸い込み口31の面積が前記エゼクタ効果を十分に発揮できるように形成されている。つまり、
図5(b)と
図5(c)とに示すように、カバー部材37がケース部材17に定位置で装着されていても、カバー部材37が緩んでケース部材17の周方向に許容範囲内で回転していても、第2の湯の吸い込み口31と開口部40とが重なっている部分の開口面積S1とS2は同等となり、前記エゼクタ効果によって浴槽湯水を吸い込むのに十分な面積が確保されるように形成されている。
【0042】
また、湯の吐出口30側の開口面積も、カバー部材37がケース部材17に定位置で装着されている
図5(b)の状態(S3)も、カバー部材37が緩んでケース部材17の周方向に許容範囲内で回転している
図5(c)の状態(S4)も同等となるように形成され、前記エゼクタ効果による熱くない湯の吐出が良好に行われる。なお、カバー部材37はケース部材17よりも大きめに形成されて、湯の吐出口30に利用者の身体などが直接当たらないように形成されている。
【0043】
本実施例は以上のように構成されており、本実施例の追い焚き循環金具9を介して浴槽26に風呂装置の追い焚き循環通路25を接続することにより、湯張り時には、追い焚き循環通路25の往管24と戻り管23からそれぞれ浴槽26内に湯を送るので、往管24から第1の室1に導入された湯が弁体4aの吐出弁71を連通室33側に押して開いて連通室33を通り、連通室33の湯の導出口34から導出され、また、戻り管23から第2の室2に導入された湯が同様に、弁体4bの吐出弁71を連通室33側に押して開いて連通室33を通り、連通室33の湯の導出口34から導出される。
【0044】
また、追い焚き動作時には、前記の如く、開口28から吸い込まれる浴槽湯水が弁体4bの吸込弁を押して第2の室2に導入され、戻り管23に導入されて追い焚き循環通路25を循環し、往管24から第1の室1に導入される。そして、この湯が弁体4aの吐出弁71を連通室33側に押して連通室33を通り、連通室33の湯の導出口34から導出されるが、このとき、前記の如く、エゼクタ効果によって浴槽湯水が第3の室3を介して第2の湯の吸い込み口31から吸い込まれ、該浴槽湯水が第1の室1からの湯の導出口34から導出される熱い湯に合流し、連通通路35を通ることにより混合されて、熱い湯の周りを浴槽湯水によって囲むようにして湯の吐出口30から導出される。
【0045】
つまり、本実施例によれば、追い焚き動作時に、追い焚熱交換器15によって加熱された熱い湯がそのまま吐出されることがないので、熱い湯の吐出によって利用者に不快感を与えることを防止でき、また、たとえ糖尿病の人が湯の吐出口30付近に足をおいたままでいたとしても火傷することを防ぐことができる。
【0046】
なお、本発明は、前記実施例に限定されるものでなく、様々な態様を採り得る。例えば、前記実施例では、
図1の向かって右側の室(符号1)を追い焚き循環通路25の往管24の連通する第1の室とし、向かって左側の室(符号2)を追い焚き循環通路25の戻り管に連通する第2の室としたが、前記の如く、前記実施例の追い焚き循環金具は無極性タイプであるので、実施例の記述とは逆に、
図1の向かって右側の室(符号1)を追い焚き循環通路25の戻り管23の連通する第2の室とし、向かって左側の室(符号2)を追い焚き循環通路25の往管24に連通する第
1の室と
成すこともある。この場合は、追い焚き動作時における弁体4aと弁体4bの動作が互いに逆になり
(弁体4aの吐出弁71が第2の常閉弁となり、弁体4bの吐出弁71が第1の常閉弁となり)、追い焚き循環路25の往管24から、第1の室として機能する室(符号2)に湯が導出されると、弁体4bの吐出弁71(第1の常閉弁)が開いて室(符号2)が連通室33と連通し、熱い湯が
図1(b)の破線矢印Hに示されるように、向かって左側の室(符号2)から導出されるが、その場合でも、連通室33からの湯の導出口34が第1の室からの湯の導出口となり、前記実施例と同様の効果を奏することができる。
【0047】
また、本発明の追い焚き循環金具は、必ずしも前記実施例のように無極性タイプのものとは限らず、極性があるもの(追い焚き循環通路25の往管24に接続される室と戻り管23に接続される室とが固定のもの)であってもよい。
【0048】
さらに、ケース本体18の連通通路25に、例えば通路の内側に突出する凸部を適宜形成し、湯の導出口34から導出される熱い湯と第2の湯の吸い込み口31から吸い込まれる浴槽湯水とが連通通路25を通るときに攪拌されながら混合するように形成してもよい。
【0049】
さらに、例えば
図6に示されるように、連通通路35が第3の室3の底面側を横切るような態様として連通通路35の上面側(蓋部材22に対向する側)には湯水が通れる空間を形成し、連通通路35の外周側を湯水が通る態様で第3の室3を湯の吐出口30に連通させる態様に形成してもよい。そして、エゼクタ効果によって第2の湯の吸い込み口31から第3の室3内に吸い込まれた浴槽湯水が連通通路35の周りを通って湯の吐出口30から吐出され(矢印C、参照)、図の実線矢印Hに示されるようにして連通通路35を通った熱い湯と合流混合されるようにしてもよい。なお、この矢印Hにおいて、熱い湯が連通通路35を通る部分は破線としている。
【0050】
また、
図6において、向かって左側の室(符号2)から連通室33を通る態様で示されている破線矢印Hは、向かって左側の室(符号2)を追い焚き循環通路25の往管24に連通する第1の室とした場合の、第1の室から導出される湯の経路を示している。
【0051】
さらに、ケース部材17の詳細な構成は適宜設定されるものであり、例えば第1の湯の吸い込み口を追い焚き循環金具9の前面に形成せずに側面がわに形成してもよいし、ケース部材17の形成材料や形状、大きさ等も適宜設定されるものである。
【0052】
つまり、本発明において、追い焚き循環金具9は、ケース部材17に、湯の吐出口30と、追い焚き循環通路25の戻り管23側に連通する第1の湯の吸い込み口と、浴槽湯水を吸い込むフィルタ無しの第2の湯の吸い込み口31と、追い焚き循環通路25の往管24に連通する第1の室1と、追い焚き循環通路25の戻り管23に連通する第2の室2と、第2の湯の吸い込み口31に連通する第3の室3と、第1の室1からの湯の導出口34を浴槽26への湯の吐出口30に連通させる連通通路35とを形成し、第2の湯の吸い込み口31を第1の室1からの湯の導出口34よりも大きく形成して、該湯の導出口34から湯が導出されるときのエゼクタ効果によって浴槽湯水を第3の室3を介して第2の湯の吸い込み口31から吸い込み、第1の室1からの湯の導出口34から導出される湯に合流混合されて湯の吐出口30から導出される構成と成していればよい。
【0053】
さらに、本発明の風呂装置は、本発明の追い焚き循環金具を介して追い焚き循環通路を浴槽に接続して形成されていればよく、そのシステム構成や制御構成は適宜設定されるものである。例えばガス燃焼式の代わりに石油燃焼式のバーナを有していてもよいし、給湯側の回路を省略することもできるし、給湯側に加え、暖房用の回路や発電装置の廃熱を利用する構成を有するもの等、様々なシステム構成のものを適用することができる。