(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6294168
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】原子力プラント
(51)【国際特許分類】
G21C 19/02 20060101AFI20180305BHJP
G01F 23/18 20060101ALI20180305BHJP
G21C 17/035 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
G21C19/02 F
G01F23/18
G21C17/02 D
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-129464(P2014-129464)
(22)【出願日】2014年6月24日
(65)【公開番号】特開2016-8883(P2016-8883A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2016年11月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚原 達也
【審査官】
長谷川 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−329684(JP,A)
【文献】
特開平02−227699(JP,A)
【文献】
特開2013−122444(JP,A)
【文献】
特開平10−197683(JP,A)
【文献】
米国特許第05475720(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/02
G21C 9/00−9/04
G01F 23/18
G21C 17/00−17/14
G21D 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉圧力容器と、
前記原子炉圧力容器を格納する格納容器と、
前記格納容器の上方に位置する原子炉ウェルと、
前記格納容器のフランジ部より高く位置するウェル堰によって前記原子炉ウェルと隔てられた機器仮置きプールと、
前記原子炉ウェルの上部を閉塞するウェルカバーとを備えた原子力プラントにおいて、
前記ウェルカバーに挿通して設けられ、前記原子炉ウェルに注水を行う注水ラインと、
前記原子炉ウェルの床面に接続され、前記原子炉ウェルの水抜きを行うドレンラインと、
前記ドレンラインに一端が接続された検出配管と、
前記検出配管の他端に接続され、水頭圧によって前記原子炉ウェルの水位を計測する差圧式水位計と
を備え、
前記注水ラインを介して前記原子炉ウェルに注水を行う時に前記差圧式水位計で計測した前記原子炉ウェルの水位が上昇しなくなったことを検知することにより前記フランジ部の冠水状態を維持できるように構成されたことを特徴とする原子力プラント。
【請求項2】
請求項1に記載の原子力プラントにおいて、
前記検出配管は、前記ドレンラインから前記差圧式水位計に向かって上り勾配を有することを特徴とする原子力プラント。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の原子力プラントにおいて、
前記差圧式水位計は、隔膜式水位計で構成されていることを特徴とする原子力プラント。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の原子力プラントにおいて、
前記検出配管に接続された水張りラインを更に備え、
プラント運転中に前記水張りラインを介して前記ドレンラインの所定の水位まで注水し、前記検出配管を満水待機させることを特徴とする原子力プラント。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の原子力プラントにおいて、
前記検出配管に接続された洗浄用ラインを更に備えたことを特徴とする原子力プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉ウェルを備えた原子力プラントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントでは、燃料から放出される放射線を遮蔽するため、定期検査時に燃料取り出し作業を行う際は、圧力容器上蓋および格納容器トップヘッドを取り外して燃料の取り出し経路となる圧力容器及び原子炉ウェルの水張りを行うとともに、水位計を用いて原子炉ウェル水位を監視する。
【0003】
定期検査時に原子炉ウェル水位を監視する方法として、例えば特許文献1及び2に記載のものがある。特許文献1には、原子炉ウェルプールの上方に設置した原子炉ウェル水位計を用いて原子炉ウェル水位を監視する方法が記載されている(
図5及び[0056]等)。一方、特許文献2には、圧力容器の内部に連通する計装配管に接続された定検時水張り用水位計を用いて原子炉ウェル水位を監視する方法が記載されている(
図1及び[0016]等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−202079号公報
【特許文献2】特開2013−108810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
原子力プラントの安全性を向上するため、重大事故等の発生時に原子炉ウェルの水張りを行うことにより、格納容器と格納容器トップヘッドとを連結する格納容器フランジ部の過温破損を防止する方法が考案されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の原子炉ウェル水位計及び特許文献2に記載の定検時水張り用水位計は、いずれも圧力容器上蓋及び格納容器トップヘッドが取り外された状態(定期検査時)での使用を想定しており、圧力容器上蓋及び格納容器トップヘッドが取り付けられた状態(プラント運転時)は使用できない。また、原子炉ウェルの内壁には金属ライナーが施工されており、サポート金具等の取り付けができないため、既設プラントにおいて原子炉ウェルの内部に水位計を設置することは困難である。従って、重大事故等の発生時に原子炉ウェルへの注水を行った場合、原子炉ウェル水位を監視できないという課題が生じる。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、プラント運転時に原子炉ウェルへの注水を行うとともに、原子炉ウェル水位を監視できる原子力プラントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、原子炉圧力容器と、前記原子炉圧力容器を格納する格納容器と、前記格納容器の上方に位置する原子炉ウェルと、前記原子炉ウェルの上部を閉塞するウェルカバーとを備えた原子力プラントにおいて、前記ウェルカバーに挿通して設けられ、前記原子炉ウェルに注水を行う注水ラインと、前記原子炉ウェルの床面に接続され、前記原子炉ウェルの水抜きを行うドレンラインと、前記ドレンラインに一端が接続された検出配管と、前記検出配管の他端に接続され、水頭圧によって前記原子炉ウェルの水位を計測する差圧式水位計とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、プラント運転時に原子炉ウェルへの注水を行うとともに、原子炉ウェル水位を監視できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る原子力プラントの概略構成図である。
【
図2】本発明の第2の実施の形態に係る原子力プラントの概略構成図である。
【
図3】本発明の第2の実施の形態に係る原子力プラントが備える隔膜式水位計の構成図である。
【
図4】本発明の第3の実施の形態に係る原子力プラントの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0012】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る原子力プラントの概略構成図である。
図1において、原子力プラント100は、原子炉圧力容器(以下、圧力容器という)1を格納する格納容器2と、格納容器2の上方に位置する原子炉ウェル3と、原子炉ウェル3の隣に位置する機器仮置きプール4と、原子炉ウェル3を挟んで機器仮置きプール4の反対側に位置する使用済燃料プール5とを備えている。
【0013】
圧力容器1の上部には、圧力容器フランジ部1aを介して圧力容器上蓋1bが取り付けられ、格納容器2の上部には、格納容器フランジ部2aを介して格納容器トップヘッド2bが取り付けられ、原子炉ウェル3の上部はウェルカバー6によって閉塞されている。定期点検時は、圧力容器上蓋1b、格納容器トップヘッド2b及びウェルカバー6を取り外して圧力容器1及び原子炉ウェル3に水張りを行い、燃料交換等の作業を行う。なお、ウェルカバー6には原子炉ウェル注水ライン(以下、注水ラインという)11が挿通して設けられており、プラント運転時も原子炉ウェル3への注水を行うことができる。
【0014】
機器仮置きプール4は、水密性の低いスロットプラグ7によって原子炉ウェル3と仕切られており、原子炉ウェル3への注水時にウェル堰10を越えた水が機器仮置きプール4に流出する。一方、使用済燃料プール5は、水密性の低いスロットプラグ8及び水密性の高いプールゲート9によって原子炉ウェル3と仕切られており、また、使用済燃料プール5にはプラント通常運転時も水が張られているため、原子炉ウェル3への注水時に原子炉ウェル3から使用済燃料プール5に水が流出することはない。
【0015】
原子炉ウェル3の床面には、原子炉ウェル3の水抜きを行う原子炉ウェルドレンライン(以下、ドレンラインという)12が接続され、ドレンライン12の途中にはドレンライン12を閉止する原子炉ウェルドレンライン止め弁(以下、ドレンライン止め弁という)13が設けられている。これにより、原子炉ウェル3の水張り時はドレンライン止め弁13まで満水状態となる。ドレンライン12のドレンライン止め弁13上流側には検出配管14の一端が接続されており、検出配管14の他端は差圧式水位計20に接続されている。検出配管14は、原子炉ウェル3の水抜き時にドレンライン12からスラッジが混入して閉塞することを防止するため、ドレンライン12から差圧式水位計20に向かって上り勾配を有するように設けられている。検出配管14の途中には検出元弁15が設けられており、差圧式水位計20は、原子炉ウェル注水時に検出元弁15を開弁した状態で、水頭圧によって原子炉ウェル水位を計測することができる。
【0016】
本実施の形態に係る原子力プラント300では、重大事故等の発生時にドレンライン止め弁13を閉弁して注水ライン11から原子炉ウェル3へ注水を行う。その間、検出元弁15を開弁して差圧式水位計20を用いて原子炉ウェル水位を監視し、原子炉ウェル水位を格納容器フランジ部2aより高い水位に保つ。これにより、格納容器フランジ部2aが冠水して冷却されるため、格納容器フランジ部2aの過温破損を防止することができる。
【0017】
なお、本実施の形態においては、原子炉ウェル水が格納容器トップヘッド2bから伝わる熱によって膨張し、また、検出配管14を水抜き待機とすることで原子炉ウェル3への注水時に検出配管14内に空気が残留することにより、差圧式水位計20による原子炉ウェル水位の計測精度の低下が懸念される。しかし、格納容器フランジ部2aの冷却を目的として原子炉ウェル3の水張りを行う際は、下記の理由により高い計測精度は要求されないため、計測精度の低下は問題とならない。
【0018】
(理由1)少なくとも原子炉ウェル水位が格納容器フランジ部2aより高いことを検知できれば、格納容器フランジ部2aの冠水状態を維持できる。
【0019】
(理由2)原子炉ウェル3に注水を行い、原子炉ウェル水位が格納容器フランジ部2aより高く位置するウェル堰10の高さに達すると、それ以降、原子炉ウェル3の水はウェル堰10を越えて機器仮置きプール4に流出し、機器仮置きプール4に設けられたドレンライン(図示せず)を介して排出されるため、原子炉ウェル水位は上昇しなくなる。従って、少なくとも原子炉ウェル3への注水時に原子炉ウェル水位が上昇しなくなったことを検知できれば、格納容器フランジ部2aの冠水状態を維持できる。
【0020】
上記のように構成した本実施の形態においては、圧力容器1及び格納容器2がそれぞれ圧力容器上蓋1b及び格納容器トップヘッド2bによって封止され、かつ原子炉ウェル3の上部がウェルカバー6で閉塞されているプラント運転時に、原子炉ウェル注水ライン11を介して原子炉ウェル3に注水を行うとともに、原子炉ウェルドレンライン12に設けられた差圧式水位計20によって原子炉ウェル水位を監視することができる。これにより、重大事故等の発生時に格納容器フランジ部2aを冠水させて冷却することが可能となり、格納容器フランジ部2aの過温破損を防止できる。また、差圧式水位計20がドレンライン12に接続されるため、既存プラントへの差圧式水位計20の取り付けが容易である。
【0021】
<第2の実施の形態>
図2は、本発明の第2の実施の形態に係る原子力プラントの概略構成図である。
図2において、第1の実施の形態と同一の構成については同一の符号を付し、説明は省略する。
【0022】
本実施の形態に係る原子力プラント200は、第1の実施の形態における差圧式水位計20に代えて隔膜式水位計30を備え、更に、検出配管14に接続された洗浄用ライン40と、洗浄用ライン40の途中に設けられた洗浄用ライン開閉弁41とを備えている。原子炉ウェルドレンライン止め弁13及び検出元弁15を開弁するとともに、洗浄用ライン開閉弁41を開弁して洗浄用ライン40から洗浄水を供給することにより、検出配管14を洗浄することができる。これにより、検出配管14に混入したスラッジが除去され、隔膜式水位計30による原子炉ウェル水位の計測精度の低下が抑制される。
【0023】
図3は、隔膜式水位計30の構成図である。
図3において、隔膜式水位計30は、圧力計31と、圧力計31に接続された圧力計配管32a,32bと、圧力計配管32a,32bのそれぞれに接続された隔膜33a,33bとを備えている。圧力計配管32a,32b内には、圧力媒体として非圧縮性特殊液が充填されている。圧力計31は、隔膜33a及び圧力計配管32aを介して伝達される検出配管14の水圧と隔膜33b及び圧力計配管32bを介して伝達される大気圧との差圧に基づいて原子炉ウェル水位を計測する。
【0024】
上記のように構成した本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。さらに、原子炉ウェル水位を計測する差圧式水位計を隔膜式水位計30で構成し、隔膜33aと圧力計31との間が非圧縮性特殊液で充填された圧力計配管32aで接続したことにより、ドレンライン12と隔膜式水位計30とを接続する検出配管14が短縮される。これにより、検出配管14内の残留空気が減少し、隔膜式水位計30による原子炉ウェル水位の計測精度の低下が抑制される。
【0025】
<第3の実施の形態>
図4は、本発明の第3の実施の形態に係る原子力プラントの概略構成図である。
図4において、第1の実施の形態と同一の構成については同一の符号を付し、説明は省略する。なお、
図4は、原子炉ウェル3の水張りが行われる前のプラント通常運転時の状態を示している。
【0026】
本実施の形態に係る原子力プラント300は、検出配管14に接続された純水供給ライン(水張りライン)50を備えており、プラント通常運転時に水張りライン50を介してドレンライン12の所定の水位Lまで水張りを行うとともに、差圧式水位計20を用いてドレンライン12の水位を監視し、蒸発等によりドレンライン12の水位が所定の水位Lより低下したときは水張りライン50から注水することにより、検出配管14を満水状態に維持する。なお、所定の水位Lは、検出配管14との接続点よりも上流側に位置するのであれば特に限定されない。
【0027】
上記のように構成した本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。さらに、検出配管14を満水待機させることにより、検出配管14内の残留空気が排除され、差圧式水位計20による原子炉ウェル水位の計測精度の低下が抑制される。
【0028】
<その他の実施の形態>
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。例えば、
図1に示した第1の実施の形態において、検出配管14に
図2に示した洗浄用ライン40を接続しても良く、また、
図2に示した第2の実施の形態において、洗浄用ライン40を省略しても良い。あるいは、
図4に示した第3の実施の形態において、差圧式水位計20を
図2に示した隔膜式水位計30に置き換えても良い。
【符号の説明】
【0029】
1 原子炉圧力容器
1a 圧力容器フランジ部
1b 圧力容器上蓋
2 格納容器
2a 格納容器フランジ部
2b 格納容器トップヘッド
3 原子炉ウェル
4 機器仮置きプール
5 使用済燃料プール
6 ウェルカバー
7,8 スロットプラグ
9 プールゲート
10 ウェル堰
11 原子炉ウェル注水ライン
12 原子炉ウェルドレンライン
13 原子炉ウェルドレンライン止め弁
14 検出配管
15 検出元弁
20 差圧式水位計
30 隔膜式水位計
31 圧力計
32a,32b 圧力計配管
33a,33b 隔膜
40 洗浄用ライン
41 洗浄用ライン開閉弁
50 純水供給ライン(水張りライン)
100,200,300 原子力プラント