(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水溶性セルロース類が、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースの少なくとも一方であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の複合粒子。
重合体粒子と、この重合体粒子に付着した金属酸化物粒子とを含み、前記金属酸化物粒子が、シリカによってシリカ以外の金属酸化物の粒子が被覆されてなるシリカ被覆金属酸化物粒子である複合粒子の製造方法であって、
水溶性セルロース類が表面に吸着したシリカ被覆金属酸化物粒子の存在下で、重合性モノマーを、水系懸濁重合させて、複合粒子を得る重合工程を含むことを特徴とする複合粒子の製造方法。
前記重合工程の前に、前記シリカ被覆金属酸化物粒子を前記水溶性セルロース類で処理して、前記シリカ被覆金属酸化物粒子の表面に前記水溶性セルロース類を吸着させる吸着工程を含むことを特徴とする請求項9又は10に記載の複合粒子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔複合粒子〕
本発明の複合粒子は、重合体粒子と、前記重合体粒子の表面に付着した金属酸化物粒子と、水溶性セルロース類とを含み、前記金属酸化物粒子が、シリカと、シリカ以外の金属酸化物とで構成されている。
【0029】
本発明の複合粒子において、前記金属酸化物粒子は、前記水溶性セルロース類を介して前記重合体粒子の表面に付着していてもよいし、前記重合体粒子の表面に直接付着していてもよい。言い換えれば、本発明の複合粒子において、前記水溶性セルロース類は、前記金属酸化物粒子及び前記重合体粒子の両方に付着していてもよいし、前記金属酸化物粒子及び前記重合体粒子の一方にのみ付着していてもよい。
【0030】
また、本発明の複合粒子において、前記重合体粒子の表面における前記金属酸化物粒子の付着量は、特に限定されないが、当該複合粒子の単位表面積あたり、0.10〜1.00g/m
2の範囲内であることが好ましい。前記重合体粒子の表面における前記金属酸化物粒子の付着量が、前記複合粒子の単位表面積あたり、0.10〜1.00g/m
2であると、前記金属酸化物粒子が重合体粒子に付着してなる複合粒子特有の特性を十分に得ることができる。なお、前記複合粒子において、前記重合体粒子の表面における前記金属酸化物粒子の付着量(g/m
2)は、例えば、後述する実施例の項に記載の〔付着量の算出方法〕により、求めることができる。
【0031】
(重合体粒子)
前記重合体粒子は、重合性モノマーの重合体である。前記重合性モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、リン酸エステル結合を有さず、重合可能な炭素−炭素二重結合(広義のビニル結合)を有する化合物(以下、単に、重合性ビニル系モノマーという)が好ましい。
【0032】
前記重合性ビニル系モノマーとしては、特に限定されず、1個のアルケニル基(広義のビニル基)を有する単官能モノマー、2個以上のアルケニル基(広義のビニル基)を有する多官能モノマー等が挙げられる。
【0033】
前記単官能モノマーとしては、例えば、α−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル;スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレンの誘導体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のカルボン酸ビニル;アクリロニトリル、アクリルアミド等のようなアクリル酸エステル以外のアクリル酸誘導体;メタクリロニトリル、メタクリルアミド等のようなメタクリル酸エステル以外のメタクリル酸誘導体等が挙げられる。
【0034】
前記α−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル、アクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル、メタクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル等のメタクリル酸エステル;α−クロロアクリル酸メチル等のα−ハロアクリル酸エステル等が挙げられる。
【0035】
場合によっては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等のようなα,β−不飽和カルボン酸を単官能モノマーとして使用することもできる。さらに、これらを2種以上組み合わせて用いてもよい。また、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;ビニルナフタリン塩等を、本発明の効果を妨げない範囲で1種又は2種以上を組み合わせて単官能モノマーとして使用することもできる。
【0036】
なお、本発明において、上記した単官能モノマーは、1種又は2種以上を組み合わせて使用してよい。また、上記した単官能モノマーの中でも、スチレンやメタクリル酸メチル等は、安価であることから、本発明で使用する単官能モノマーとしてより好ましい。
【0037】
前記多官能モノマーとしては、ジビニルベンゼン;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(繰り返し単位数が2〜10)、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(繰り返し単位数が2〜10)、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート等の2官能アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ブチレンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジオールジ(メタ)アクリレート等の2官能アルキレンジオールジ(メタ)アクリレート;エトキシ化(繰り返し単位数が2〜10)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等の2官能エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアクリロイルオキシエチルフォスフェート等の3官能トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の4官能テトラ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート類;ポリ(ペンタエリスリトール)アクリレート等の8官能ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート類;エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレートのような3官能の窒素原子含有環状(メタ)アクリレート類等が挙げられる。なお、本出願書類において、「(メタ)アクリレート」は、メタクリレート又はアクリレートを意味する。
【0038】
前記重合性モノマーとして前記重合性ビニル系モノマーを使用する場合、前記重合性ビニル系モノマーは、単官能モノマー及び多官能モノマーの両方を含むことが好ましい。これにより、重合体粒子中に良好な架橋構造を形成して、複合粒子に良好な耐溶剤性を付与することができる。多官能モノマーの使用量は、重合性ビニル系モノマーの総使用量に対して、0.5〜50重量%の範囲内であることが好ましく、1〜40重量%の範囲内であることがより好ましい。これにより、重合体粒子中にさらに良好な架橋構造を形成して、複合粒子にさらに優れた耐溶剤性を付与することができる。
【0039】
(金属酸化物粒子)
前記金属酸化物粒子は、シリカによってシリカ以外の金属酸化物の粒子が被覆されてなるシリカ被覆金属酸化物粒子であることが好ましい。これにより、特にシリカ以外の金属酸化物が酸化チタンや酸化亜鉛等のような高い光触媒活性を持つ金属酸化物である場合に、シリカ以外の金属酸化物の粒子を被覆するシリカがシリカ以外の金属酸化物の光触媒活性を不活性化することにより、シリカ以外の金属酸化物や他の成分が紫外線による光触媒反応で劣化する(例えば黄変する)ことを効果的に抑制できる。その結果、複合粒子やそれを用いた製品の耐候性を効果的に向上させることができる。
【0040】
前記金属酸化物粒子の平均一次粒子径は、特に限定されないが、50〜200nmであることが好ましい。平均一次粒子径が50nmより小さい金属酸化物粒子は、特にシリカ被覆金属酸化物粒子である場合に、製造が困難である。金属酸化物粒子の平均一次粒子径が200nmより大きいと、重合体粒子表面における金属酸化物粒子で被覆された部分の割合を所望の割合として所望の効果(例えば紫外線遮蔽効果)を複合粒子に付与するために、多量の金属酸化物粒子が必要となる。
【0041】
前記金属酸化物粒子におけるシリカの含有量は、10重量%以上であることが好ましい。前記金属酸化物粒子におけるシリカの含有量が10重量%より少ないと、シリカによる複合粒子やそれを用いた製品の紫外線による劣化(例えば黄変)を抑制する効果が小さくなる。前記金属酸化物粒子におけるシリカの含有量は、10重量%以上50重量%以下であることがより好ましい。前記金属酸化物粒子におけるシリカの含有量が50重量%より多いと、シリカ以外の金属酸化物による複合粒子への特性(例えば紫外線遮蔽特性)の付与が顕著でない。
【0042】
前記金属酸化物粒子を構成するシリカ以外の金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄、酸化ジルコニウム等が挙げられるが、酸化チタン及び酸化亜鉛の少なくとも一方が好ましい。シリカ以外の金属酸化物が酸化チタン及び酸化亜鉛の少なくとも一方である場合、優れた紫外線遮蔽性を複合粒子に付与することができる。また、酸化チタンや酸化亜鉛は高い光触媒活性を持っているが、本発明の複合粒子では、酸化チタンや酸化亜鉛の光触媒活性を不活性化することにより、酸化チタンや酸化亜鉛、他の成分が紫外線による光触媒反応で劣化する(例えば黄変する)ことを効果的に抑制できる。その結果、シリカ以外の金属酸化物として酸化チタン及び酸化亜鉛の少なくとも一方を含む複合粒子やそれを用いた製品の耐候性を向上させることができる。
【0043】
前記シリカ被覆金属酸化物粒子は、シリカによって酸化チタンの粒子が被覆されてなるシリカ被覆酸化チタン粒子、及びシリカによって酸化亜鉛の粒子が被覆されてなるシリカ被覆酸化亜鉛粒子の少なくとも一方であることが好ましい。前記シリカ被覆酸化チタン粒子としては、シリカ被覆酸化チタン粒子又はその水分散体の市販品を用いることができる。前記シリカ被覆酸化チタン粒子又はその水分散体の市販品としては、例えば、「マックスライト(登録商標)TS−01」、「マックスライト(登録商標)TS−04」、「マックスライト(登録商標)TS−043」、「マックスライト(登録商標)F−TS20」(以上、昭和電工株式会社製)、「MT−100HP」、「MT−100WP」、「MT−500SA」、「WT−PF01」(固形分40重量%の水分散体)(以上、テイカ株式会社製)、「STR−100A」、「STR−100W」「GT−10W」(固形分40重量%の水分散体)(以上、堺化学工業株式会社製)、「ST−455WS」(チタン工業株式会社製)等が挙げられる。
【0044】
前記シリカ被覆酸化亜鉛粒子としては、シリカ被覆酸化亜鉛粒子の市販品を用いることができる。前記シリカ被覆酸化亜鉛粒子の市販品としては、例えば、「マックスライト(登録商標)ZS−032」、「マックスライト(登録商標)ZS−032−D」(以上、昭和電工株式会社製)、「FINEX(登録商標)−30W」、「FINEX(登録商標)−50W」(以上、堺化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0045】
(水溶性セルロース類)
前記水溶性セルロース類としては、特に限定されず、例えば、メチルセルロース等のアルキルセルロース類;ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース類;ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のヒドロキシアルキルアルキルセルロース類等の化合物が挙げられる。これらの化合物の中でも、ヒドロキシアルキルセルロース類、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース類が好ましく、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)がより好ましい。また、これら化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて使用してよい。
【0046】
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)は、一般的に、45℃の下限臨界共溶温度(LCST)を有することが知られており、市販品としては、例えば、日本曹達株式会社製のNISSO(登録商標) HPCシリーズ(「SSL」、「SL」、「L」、「M」、「H」等)を挙げることができる。
【0047】
また、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の市販品としては、信越化学工業株式会社製のメトローズ(登録商標)シリーズ、より具体的には、60℃の曇点を有するメトローズ(登録商標)60SHシリーズ(「SH60−50」、「60SH−4000」、「60SH−10000」)、65℃の曇点を有するメトローズ(登録商標)65SHシリーズ(「65SH−50」、「65SH−400」、「65SH−1500」、「65SH−4000」)、90℃の曇点を有するメトローズ(登録商標)90SHシリーズ(「90SH−100」、「90SH−400」、「90SH−4000」、「90SH−15000」)等を挙げることができる。
【0048】
〔複合粒子の製造方法〕
本発明の製造方法は、重合体粒子と、この重合体粒子に付着した金属酸化物粒子とを含み、前記金属酸化物粒子が、シリカによってシリカ以外の金属酸化物の粒子が被覆されてなるシリカ被覆金属酸化物粒子である複合粒子の製造方法であって、水溶性セルロース類が表面に吸着したシリカ被覆金属酸化物粒子の存在下で、重合性モノマーを、水系懸濁重合させて、複合粒子を得る重合工程を含んでいる。
【0049】
上記した複合粒子の製造方法によれば、重合体粒子(重合性モノマーの重合体)の表面にシリカ被覆金属酸化物粒子が付着した本発明の複合粒子、例えば、
図1のTEM画像に示されるような、複数個の前記シリカ被覆金属酸化物粒子(
図1中における円弧状に並ぶ黒点部分)で前記重合体粒子(
図1中における黒点部分より下の部分)の表面の少なくとも一部が被覆されてなる複合粒子を得ることができる。
【0050】
(重合性リン酸系モノマー)
本発明の製造方法では、前記重合性モノマーとして、前記重合性ビニル系モノマーのみを使用してもよいが、水溶性セルロース類の種類に応じて、前記重合性ビニル系モノマーと以下の式(1)〜(5)に示す重合性リン酸系モノマーを併用してもよい。水溶性セルロース類の種類に応じて、前記重合性ビニル系モノマーと前記重合性リン酸系モノマーを併用することにより、重合性モノマーの水系懸濁重合において、水性媒体中における重合性モノマーの液滴の安定性を向上させることができる。このため、本発明の製造方法では、前記重合性リン酸系モノマーを、前記重合性ビニル系モノマーと共に、好適に用いることができる。
【0051】
【化1】
(式(1)中、nは1〜5であり、aが1のとき、bは2であり、aが2のとき、bは1である。)
【0053】
【化3】
(式(3)中、nは1〜5である。)
【0055】
【化5】
(式(5)中、nは1〜6である。)
【0056】
上記式(1)で示される重合性リン酸系モノマーの具体例としては、日本化薬株式会社製の「KAYAMER(登録商標)PM−21」(前記式(1)においてn=1、a=1、b=2である化合物と、前記式(1)においてn=1、a=2、b=1である化合物とのモル比1対1の混合物)が挙げられる。また、上記式(2)で示される重合性リン酸系モノマーの具体例としては、日本化薬株式会社製の「KAYAMER(登録商標)PM−2」、共栄社化学株式会社製の「ライトエステル P−2M」等が挙げられる。また、上記式(3)で示される重合性リン酸系モノマーの具体例としては、日本化薬株式会社製の「KAYAMER(登録商標)PM−1」(前記式(3)において、n=1である化合物)、共栄社化学株式会社製の「ライトエステル P−1M」(前記式(3)において、n=1である化合物)、ユニケミカル株式会社製の「ホスマー(登録商標)M」(前記式(3)において、n=1である化合物)、ユニケミカル株式会社製の「ホスマー(登録商標)PE」(前記式(3)において、n=4〜5である化合物)等が挙げられる。また、上記式(4)で示される重合性リン酸系モノマーの具体例としては、ユニケミカル株式会社製の「ホスマー(登録商標)CL」等が挙げられる。また、上記式(5)で示される重合性リン酸系モノマーの具体例としては、ユニケミカル株式会社製の「ホスマー(登録商標)PP」(前記式(5)において、n=5〜6である化合物)等が挙げられる。
【0057】
本発明において、前記重合性リン酸系モノマーと前記重合性ビニル系モノマーとを併用する場合、前記重合性リン酸系モノマーの使用量は、前記重合性ビニル系モノマーの使用量100重量部に対し0.01〜1重量部の範囲内であることが好ましく、0.01〜0.8重量部の範囲内であることがより好ましい。前記重合性リン酸系モノマーの使用量が、前記重合性ビニル系モノマーの使用量100重量部に対して、1重量部を超えると、重合時に乳化粒子(乳化重合による副生微粒子)等のような、粒子径の小さすぎる複合粒子ができ易くなり、複合粒子の粒子径の変動係数が大きくなるおそれがある。
【0058】
(水性媒体)
本発明の製造方法の前記重合工程において、前記重合性モノマーを水系懸濁重合させるための水性媒体としては、水、又は、水と水溶性媒体(例えば、メタノール、エタノール等のアルコール)との混合媒体が挙げられる。水性媒体の使用量は、複合粒子の安定化を図るために、通常、重合性モノマーの使用量100重量部に対して、100〜1000重量部であることが好ましい。
【0059】
(重合開始剤)
本発明の製造方法の前記重合工程において、前記重合性モノマーの水系懸濁重合は、重合開始剤の存在下で行うことが好ましい。
【0060】
前記重合開始剤としては、通常、水系懸濁重合に用いられる油溶性の過酸化物系重合開始剤又はアゾ系重合開始剤を好適に使用することができる。
【0061】
前記過酸化物系重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化オクタノイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、キュメンハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0062】
前記アゾ系重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、(2−カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート等が挙げられる。
【0063】
上記した重合開始剤の中でも、分解速度等の観点から、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等が本発明の製造方法で使用され得る重合開始剤として好ましい。
【0064】
前記重合開始剤の使用量は、前記重合性モノマーの使用量100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましく、0.1〜5.0重量部であることがより好ましい。前記重合開始剤の使用量が、前記重合性モノマーの使用量100重量部に対して、0.01重量部未満であると、重合開始の機能を十分に果たし難く、また、10重量部を超えると、使用量に見合った効果が得られず、コスト的に不経済的であるため好ましくない。
【0065】
(水溶性セルロース類が吸着したシリカ被覆金属酸化物粒子)
本発明の製造方法の前記重合工程において、前記重合性モノマーの水系懸濁重合は、水溶性セルロース類が吸着したシリカ被覆金属酸化物粒子の存在下で行なわれる。前記重合工程において、前記水溶性セルロース類が吸着したシリカ被覆金属酸化物粒子は、懸濁安定剤として、機能する。
【0066】
前記シリカ被覆金属酸化物粒子の使用量(以下、添加量という)は、本製造方法で得られる複合粒子の単位表面積あたり、0.10〜1.50g/m
2であることが好ましい。前記シリカ被覆金属酸化物粒子の添加量が、0.10g/m
2未満である場合には、上記複合粒子において、前記重合体粒子表面へのシリカ被覆金属酸化物粒子の付着が不十分となるおそれがあり、1.50g/m
2を超える場合には、それに見合った効果が得られず、不経済となるおそれがある。
【0067】
前記シリカ被覆金属酸化物粒子への前記水溶性セルロース類の吸着量は、本発明において使用するシリカ被覆金属酸化物粒子の比表面積に応じて適宜設定することができるが、前記シリカ被覆金属酸化物粒子1gあたり0.01g〜0.5gであることが好ましい。
【0068】
なお、水溶性セルロース類のシリカ被覆金属酸化物粒子への吸着量は、例えば、公益社団法人高分子学会発行の高分子論文集(Japanese Journal of Polymer Science and Technology)Vol.40,No.10,pp.697−702(Oct,1983)に記載されている方法を用いて測定することができる。例えば、後述する実施例の項に記載の〔シリカ被覆金属酸化物粒子への水溶性セルロース類の吸着量の測定方法〕により、測定することができる。
【0069】
本発明の製造方法は、前記重合工程の前に、前記シリカ被覆金属酸化物粒子を前記水溶性セルロース類で処理して、前記シリカ被覆金属酸化物粒子の表面に前記水溶性セルロース類を吸着させる吸着工程を含むことが好ましい。
【0070】
前記シリカ被覆金属酸化物粒子の表面に前記水溶性セルロース類を吸着させるための、前記水溶性セルロース類による前記シリカ被覆金属酸化物粒子の処理方法としては、特に限定されず、例えば、水系媒体中においてシリカ粒子及び水溶性セルロース類を共存させ、シリカ粒子の表面に水溶性セルロース類を物理的に吸着させる方法(具体例としては、Rheological and Interfacial Properties of Silicone Oil Emulsions Prepared by Polymer Pre−adsorbed onto Silica Particles,Colloids Surfaces A:Physicochem.Eng.Aspects,328,2008,114−122.の文献に記載の方法)においてシリカ粒子に代えて前記シリカ被覆金属酸化物粒子を用いる方法が好ましい。この処理方法によりシリカ被覆金属酸化物粒子に吸着させた水溶性セルロース類は、前記重合工程において、シリカ被覆金属酸化物粒子からほとんど脱離せず、安定した状態にある。
【0071】
また、前記水溶性セルロース類の(T−15)℃(Tは、前記水溶性セルロース類の下限臨界共溶温度(℃)又は曇点(℃)を意味する。)以上の温度条件下、より好ましくは、(T−15)℃以上、(T+20)℃以下の温度条件下で、前記シリカ被覆金属酸化物粒子と前記水溶性セルロース類とを共存させることにより、より効果的に前記シリカ被覆金属酸化物粒子の表面に水溶性セルロース類を物理的に吸着させることができる。なお、前記水溶性セルロース類は、その特性により、下限臨界共溶温度又は曇点のどちらか一方のみを有する。
【0072】
なお、前記吸着工程において、シリカ被覆金属酸化物粒子に吸着されなかった水溶性セルロース類は、前記重合工程前に遠心分離等によって取り除いてもよいし、前記重合工程の後、前記重合工程で得られた複合粒子を精製する精製工程において洗浄によって取り除いてもよい。
【0073】
また、本発明の製造方法では、前記重合工程では、前記水溶性セルロース類が吸着した前記シリカ被覆金属酸化物粒子による懸濁安定性向上の効果を妨げない範囲内で、前記シリカ被覆金属酸化物粒子以外の他の懸濁安定剤を更に使用してもよい。
【0074】
(界面活性剤)
本発明の製造方法の前記重合工程において、前記重合性モノマーの水系懸濁重合は、懸濁安定性をより向上させるために、界面活性剤の存在下で行ってもよい。前記界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤及びノニオン性界面活性剤のいずれをも用いることができる。
【0075】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム;ヒマシ油カリ石鹸等の脂肪酸石鹸;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;アルキルナフタレンスルホン酸塩;アルカンスルホン酸塩;ジアルキルスルホコハク酸塩;アルキルリン酸エステル塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0076】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。
【0077】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0078】
両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキサイド、リン酸エステル系界面活性剤、亜リン酸エステル系界面活性剤等が挙げられる。
【0079】
上記界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。界面活性剤は、得られる複合粒子の径や水系懸濁重合時における重合性モノマーの分散安定性等を考慮して、種類が適宜選択され、使用量が適宜調整される。
【0080】
(重合禁止剤)
本発明の製造方法の前記重合工程において、前記重合性モノマーの水系懸濁重合は、水系での乳化粒子の発生を抑えるために、水溶性の重合禁止剤の存在下で行ってもよい。
【0081】
前記水溶性の重合禁止剤としては、例えば、亜硝酸塩類、亜硫酸塩類、ハイドロキノン類、アスコルビン酸類、水溶性ビタミンB類、クエン酸、ポリフェノール類等を挙げることができる。
【0082】
(その他添加剤)
本発明の製造方法の前記重合工程において、前記重合性モノマーの水系懸濁重合は、本発明の効果を妨げない範囲で、その他の添加剤、例えば、顔料、染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの存在下で行なわれてよい。
【0083】
前記顔料としては、例えば、鉛白、鉛丹、黄鉛、カーボンブラック、群青、酸化亜鉛、酸化コバルト、二酸化チタン、酸化鉄、チタン黄、チタンブラック等の無機顔料;ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ等の黄色顔料;モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGK等の橙色顔料;パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロン、レッド4R、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミンB等の赤色顔料;ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、ジオキサンバイオレット等の紫色顔料;アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩化物、ファストスカイブルー、インダンスレンブルーBC等の青色顔料;ピクメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファナルイエローグリーンG等の緑色顔料;イソインドリノン顔料、キナクリドン顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、不溶性アゾ顔料、溶性アゾ顔料、染色レーキ顔料等の有機顔料を挙げることができる。
【0084】
前記染料としては、例えば、ニトロソ染料、ニトロ染料、アゾ染料、スチルベンアゾ染料、ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料、キノリン染料、メチン染料、ポリメチン染料、チアゾール染料、インダミン染料、インドフェノール染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、硫化染料等を挙げることができる。
【0085】
前記酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、n−オクタデシル−3’−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス〔2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン等のフェノール系酸化防止剤;ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジフォスフォナイト、ビス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン等のリン系酸化防止剤;フェニル−1−ナフチルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等のアミン系酸化防止剤等を挙げることができる。
【0086】
前記紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(例えば、株式会社ADEKA製の「アデカスタブ(登録商標)LA−31」)、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤等が例示できる。
【0087】
(懸濁重合の方法)
本発明の製造方法の重合工程では、前記水溶性セルロース類が表面に吸着したシリカ被覆金属酸化物粒子の存在下で、重合性モノマーを、水系懸濁重合させる。例えば、前記重合工程では、重合性モノマーに、必要に応じて重合開始剤及び/又は重合禁止剤及び/又はその他の添加剤を混合してモノマー混合物を調製し、調製されたモノマー混合物を、水溶性セルロース類が表面に吸着したシリカ被覆金属酸化物粒子を含む(必要に応じて、さらに、界面活性剤及び/又はその他の懸濁安定剤含む)水性媒体中に分散させて、水系懸濁重合を行う。
【0088】
モノマー混合物を水性媒体中に分散させる方法としては、例えば、水性媒体中にモノマー混合物を直接添加して、プロペラ翼等の攪拌力によりモノマー滴として分散させる方法;水性媒体中にモノマー混合物を直接添加して、ローターとステーターとから構成される高剪断力を利用する分散機であるホモミキサーを用いてモノマー混合物を水性媒体中に分散させる方法;水性媒体中にモノマー混合物を直接添加して、超音波分散機を用いてモノマー混合物を水性媒体中に分散させる方法;水性媒体中にモノマー混合物を直接添加して、マイクロフルイダイザーやナノマイザー(登録商標)等の高圧型分散機を用いて、モノマー混合物の液滴同士の衝突や反応容器内壁に対するモノマー混合物の液滴の衝突を利用して、モノマー混合物を水性媒体中に液滴として分散させる方法;MPG(マイクロポーラスガラス)多孔膜を通してモノマー混合物を水性媒体中に圧入させる方法等が挙げられる。これらの方法の中でも、上記のマイクロフルイダイザーやナノマイザー等の高圧型分散機を用いる方法や、上記のMPG(マイクロポーラスガラス)多孔膜を通す方法は、粒子径をより均一に揃えられるため、モノマー混合物を水性媒体中に分散させる方法として好ましく用いることができる。
【0089】
次いで、モノマー混合物が分散された水性媒体(水性懸濁液)を、加熱することにより懸濁重合を開始させる。重合反応中は、水性懸濁液を攪拌するのが好ましい。攪拌は、例えば、モノマー混合物が液滴として浮上すること、及び重合により生成した複合粒子が沈降することを防止できる程度に行えばよい。
【0090】
懸濁重合において、重合温度は、30〜120℃の範囲内にするのが好ましく、40〜80℃の範囲内にするのがより好ましい。この重合温度を保持する時間は、0.1〜20時間の範囲内であることが好ましい。
【0091】
重合完了後、得られた複合粒子は、吸引ろ過、遠心脱水、遠心分離、加圧脱水等の方法により含水ケーキとして分離され、さらに、必要に応じて得られた含水ケーキを水洗し、乾燥することにより、目的の複合粒子を得ることができる。
【0092】
本発明の複合粒子の大きさ及び形状は特に限定されないが、上記複合粒子の製造方法によれば、1〜100μmの体積平均粒子径の複合粒子を得ることができる。
【0093】
なお、モノマー混合物と水性媒体との混合条件、他の懸濁安定剤や界面活性剤等の添加量及び上記攪拌機の攪拌条件、分散条件等を調整することで、得られる複合粒子の平均粒子径を調整することができる。
【0094】
〔外用剤〕
本発明の複合粒子は、紫外線遮蔽性を付与するための添加剤、滑り性等の使用感を向上させるための添加剤や、光拡散効果により、毛穴、シミ、シワ等の肌の欠点を目立たなくするための添加剤等として、外用剤に含有させることができる。本発明の外用剤は、本発明の複合粒子を含んでいる。
【0095】
本発明の外用剤における複合粒子の含有量は、外用剤の種類に応じて適宜設定できるが、1〜80重量%の範囲内であることが好ましく、3〜70重量%の範囲内であることがより好ましい。外用剤全量に対する複合粒子の含有量が1重量%を下回ると、複合粒子の含有による明確な効果が認められないことがある。また、複合粒子の含有量が80重量%を上回ると、含有量の増加に見合った顕著な効果が認められないことがあるため、生産コスト上好ましくない。
【0096】
本発明の外用剤は、例えば、外用医薬品や化粧料等として使用できる。外用医薬品としては、皮膚に適用するものであれば特に限定されないが、具体的には、クリーム、軟膏、乳剤等が挙げられる。化粧料としては、例えば、石鹸、ボディシャンプー、洗顔クリーム、スクラブ洗顔料、歯磨き等の洗浄用化粧品;おしろい類、フェイスパウダー(ルースパウダー、プレストパウダー等)、ファンデーション(パウダーファンデーション、リキッドファンデーション、乳化型ファンデーション等)、口紅、リップクリーム、頬紅、眉目化粧品(アイシャドー、アイライナー、マスカラ等)、マニキュア等のメイクアップ化粧料;プレシェーブローション、ボディローション等のローション剤;ボディパウダー、ベビーパウダー等のボディー用外用剤;化粧水、クリーム、乳液(化粧乳液)等のスキンケア剤、制汗剤(液状制汗剤、固形状制汗剤、クリーム状制汗剤等)、パック類、洗髪用化粧品、染毛料、整髪料、芳香性化粧品、浴用剤、日焼け止め製品、サンタン製品、ひげ剃り用クリーム等が挙げられる。
【0097】
本発明の外用剤中に配合される複合粒子は、油剤、シリコーン化合物及びフッ素化合物等の表面処理剤や有機粉体、無機粉体等で処理したものであってもよい。
【0098】
前記油剤としては、通常外用剤に使用されているものであればいずれでもよく、例えば流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、パラフィンワックス等の炭化水素油;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ウンデシレン酸、ヒドロキシステアリン酸、リノール酸、ラノリン脂肪酸、合成脂肪酸等の高級脂肪酸;トリオクタン酸グリセリル、ジカプリン酸プロピレングリコール、2−エチルヘキサン酸セチル、ステアリン酸イソセチル等のエステル油;ミツロウ、鯨ロウ、ラノリン、カルナウバロウ、キャンデリラロウ等のロウ類;アマニ油、綿実油、ヒマシ油、卵黄油、ヤシ油等の油脂類;ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛等の金属石鹸;セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。また、複合粒子を前記油剤で処理する方法は特に限定されないが、例えば、複合粒子に油剤を添加し、ミキサー等で撹拌することにより油剤をコーティングする乾式法や、油剤をエタノール、プロパノール、酢酸エチル、ヘキサン等の適当な溶媒に加熱溶解し、それに複合粒子を加えて混合撹拌した後、溶媒を減圧除去又は加熱除去することにより、油剤をコーティングする湿式法等を利用することができる。
【0099】
前記シリコーン化合物としては、通常外用剤に使用されるものであればいずれでもよく、例えばジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アクリル−シリコーン系グラフト重合体、有機シリコーン樹脂部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物等が挙げられる。複合粒子をシリコーン化合物で処理する方法は特に限定されないが、例えば、上記の乾式法や湿式法を利用できる。また、必要に応じて焼き付け処理を行ったり、反応性を有するシリコーン化合物の場合は反応触媒等を適宜添加してもよい。
【0100】
前記フッ素化合物は、通常外用剤に配合されるものであればいずれでもよく、例えばパーフルオロアルキル基含有エステル、パーフルオロアルキルシラン、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロ基を有する重合体等が挙げられる。複合粒子をフッ素化合物で処理する方法も特に限定されないが、例えば、前記の乾式法や湿式法を利用できる。また、必要に応じて焼き付け処理を行ったり、反応性を有するフッ素化合物の場合は反応触媒等を適宜添加してもよい。
【0101】
前記有機粉体としては、例えばアラビアゴム、トラガントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、アイリッシュモス、クインスシード、ゼラチン、セラック、ロジン、カゼイン等の天然高分子化合物;カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、エステルガム、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース等の半合成高分子化合物;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミド樹脂、シリコーン油、ナイロン粒子、ポリメタクリル酸メチル粒子、架橋ポリスチレン粒子、シリコーン粒子、ウレタン粒子、ポリエチレン粒子、フッ素樹脂粒子等の樹脂粒子が挙げられる。また、前記無機粉体としては、例えば酸化鉄、群青、コンジョウ、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、マンガンバイオレット、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、カオリン、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー等が挙げられる。また、これら有機粉体や無機粉体は、予め表面処理を行ったものでもよい。表面処理方法としては、前記のような、公知の表面処理技術が利用できる。
【0102】
また、本発明の外用剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、一般に用いられている主剤又は添加物を目的に応じて配合できる。そのような主剤又は添加物としては、例えば、水、低級アルコール(炭素数5以下のアルコール)、油脂及びロウ類、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、ステロール、脂肪酸エステル、金属石鹸、保湿剤、界面活性剤、高分子化合物、色材原料、香料、粘土鉱物類、防腐・殺菌剤、抗炎症剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、有機無機複合粒子、pH調整剤(トリエタノールアミン等)、特殊配合添加物、医薬品活性成分等が挙げられる。
【0103】
前記油脂及びロウ類の具体例としては、アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、カカオ脂、牛脂、ゴマ脂、小麦胚芽油、サフラワー油、シアバター、タートル油、椿油、パーシック油、ひまし油、ブドウ油、マカダミアナッツ油、ミンク油、卵黄油、モクロウ、ヤシ油、ローズヒップ油、硬化油、シリコーン油、オレンジラフィー油、カルナバロウ、キャンデリラロウ、鯨ロウ、ホホバ油、モンタンロウ、ミツロウ、ラノリン等が挙げられる。
【0104】
前記炭化水素の具体例としては、流動パラフィン、ワセリン、パラフィン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン等が挙げられる。
【0105】
前記高級脂肪酸の具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ウンデシレン酸、オキシステアリン酸、リノール酸、ラノリン脂肪酸、合成脂肪酸等の炭素数11以上の脂肪酸が挙げられる。
【0106】
前記高級アルコールの具体例としては、ラウリルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール、水素添加ラノリンアルコール、へキシルデカノール、オクチルデカノール、イソステアリルアルコール、ホホバアルコール、デシルテトラデカノール等の炭素数6以上のアルコールが挙げられる。
【0107】
前記ステロールの具体例としては、コレステロール、ジヒドロコレステロール、フィトコレステロール等が挙げられる。
【0108】
前記脂肪酸エステルの具体例としては、リノール酸エチル等のリノール酸エステル;ラノリン脂肪酸イソプロピル等のラノリン脂肪酸エステル;ラウリン酸ヘキシル等のラウリン酸エステル;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸オクチルデシル、ミリスチン酸オクチルドデシル等のミリスチン酸エステル;オレイン酸デシル、オレイン酸オクチルドデシル等のオレイン酸エステル;ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル等のジメチルオクタン酸エステル;イソオクタン酸セチル(2−エチルヘキサン酸セチル)等のイソオクタン酸エステル;パルミチン酸デシル等のパルミチン酸エステル;トリミリスチン酸グリセリン、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、ジオレイン酸プロピレングリコール、トリイソステアリン酸グリセリン、トリイソオクタン酸グリセリン、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、リンゴ酸ジイソステアリル、イソステアリン酸コレステリル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル等の環状アルコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0109】
前記金属石鹸の具体例としては、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ウンデシレン酸亜鉛等が挙げられる。
【0110】
前記保湿剤の具体例としては、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、dl−ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ソルビトール、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリグリセリン、キシリット、マルチトール等が挙げられる。
【0111】
前記界面活性剤の具体例としては、高級脂肪酸石鹸、高級アルコール硫酸エステル、N−アシルグルタミン酸塩、リン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤;アミン塩、第4級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;ベタイン型、アミノ酸型、イミダゾリン型、レシチン等の両性界面活性剤;脂肪酸モノグリセリド、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、イソステアリン酸ソルビタン等)、蔗糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、酸化エチレン縮合物等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0112】
前記高分子化合物の具体例としては、アラビアゴム、トラガントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、アイリスモス、クインスシード、ゼラチン、セラック、ロジン、カゼイン等の天然高分子化合物;カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、エステルガム、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース等の半合成高分子化合物;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミド樹脂、シリコーン油、ナイロン粒子、ポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子(例えば、ポリメタクリル酸メチル粒子等)、ポリスチレン粒子、シリコーン系粒子、ウレタン粒子、ポリエチレン粒子等の樹脂粒子等の合成高分子化合物が挙げられる。なお、本出願書類において、「(メタ)アクリル」は、メタクリル又はアクリルを意味する。
【0113】
前記色材原料の具体例としては、酸化鉄(赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄等)、群青、コンジョウ、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、マンガンバイオレット、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、雲母、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー等の無機顔料、アゾ系、ニトロ系、ニトロソ系、キサンテン系、キノリン系、アントラキノリン系、インジゴ系、トリフェニルメタン系、フタロシアニン系、ピレン系等のタール色素が挙げられる。
【0114】
なお、上記した高分子化合物の粉体原料や色材原料などの粉体原料は、予め表面処理を行ったものも使用することができる。表面処理の方法としては、公知の表面処理技術が利用でき、例えば、炭化水素油、エステル油、ラノリン等による油剤処理、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等によるシリコーン処理、パーフルオロアルキル基含有エステル、パーフルオロアルキルシラン、パーフルオロポリエーテル及びパーフルオロアルキル基を有する重合体等によるフッ素化合物処理、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等によるシランカップリング剤処理、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート等によるチタンカップリング剤処理、金属石鹸処理、アシルグルタミン酸等によるアミノ酸処理、水添卵黄レシチン等によるレシチン処理、コラーゲン処理、ポリエチレン処理、保湿性処理、無機化合物処理、メカノケミカル処理等の処理方法が挙げられる。
【0115】
前記粘土鉱物類の具体例としては、体質顔料及び吸着剤などの数種の機能を兼ね備えた成分、例えば、タルク、マイカ、セリサイト、チタンセリサイト(酸化チタンで被覆されたセリサイト)、白雲母、バンダービルト社製のVEEGUM(登録商標)等が挙げられる。
【0116】
前記香料の具体例としては、アニスアルデヒド、ベンジルアセテート、ゲラニオール等が挙げられる。前記防腐・殺菌剤の具体例としては、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ベンザルコニウム、ベンゼトニウム等が挙げられる。前記酸化防止剤の具体例としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、トコフェロール等が挙げられる。前記抗炎症剤の具体例としては、ε−アミノカプロン酸、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、β−グリチルレチン酸、塩化リゾチーム、グアイアズレン、ヒドロコルチゾン等を挙げることができる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。前記紫外線吸収剤の具体例としては、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化セリウム、微粒子酸化鉄、微粒子酸化ジルコニウム等の無機系吸収剤、安息香酸系、パラアミノ安息香酸系、アントラニリック酸系、サリチル酸系、桂皮酸系、ベンゾフェノン系、ジベンゾイルメタン系等の有機系吸収剤が挙げられる。
【0117】
前記特殊配合添加物の具体例としては、エストラジオール、エストロン、エチニルエストラジオール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン等のホルモン類、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE等のビタミン類、クエン酸、酒石酸、乳酸、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム・カリウム、アラントインクロルヒドロキシアルムニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛、硫酸亜鉛等の皮膚収斂剤、カンタリスチンキ、トウガラシチンキ、ショウキョウチンキ、センブリエキス、ニンニクエキス、ヒノキチオール、塩化カルプロニウム、ペンタデカン酸グリセリド、ビタミンE、エストロゲン、感光素等の発毛促進剤、リン酸−L−アスコルビン酸マグネシウム、コウジ酸等の美白剤等が挙げられる。
【0118】
〔コーティング剤〕
本発明の複合粒子は、紫外線遮蔽剤、塗膜軟質化剤、塗料用艶消し剤、光拡散剤等としてコーティング剤に含有させることが可能である。また、シリカ以外の金属酸化物、特に酸化チタンや酸化亜鉛は、赤外線遮蔽性、放熱性等の特性を有することから、本発明の複合粒子は、特にシリカ以外の金属酸化物が酸化チタンや酸化亜鉛である場合に、遮熱剤、断熱剤、放熱剤等としてコーティング剤に含有させて、主として建材用途に用いられる遮熱コーティング剤(遮熱塗料)、主として建材用途に用いられる断熱コーティング剤(断熱塗料)、放熱コーティング剤等を得ることも期待できる。本発明のコーティング剤は、本発明の複合粒子を含んでいる。
【0119】
前記コーティング剤は、必要に応じてバインダー樹脂を含んでいる。バインダー樹脂としては、有機溶剤若しくは水に可溶な樹脂、又は水中に分散できるエマルジョン型の水性樹脂を使用でき、公知のバインダー樹脂をいずれも利用できる。バインダー樹脂としては、例えば、三菱レイヨン株式会社製の商品名「ダイヤナール(登録商標)LR−102」や「ダイヤナール(登録商標)BR−106」、或いは、大日精化工業株式会社製の商品名「メジウム VM」等のアクリル系樹脂;アルキド樹脂;ポリエステル樹脂;ポリウレタン樹脂;塩素化ポリオレフィン樹脂;アモルファスポリオレフィン樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。これらバインダー樹脂は、塗工される基材へのコーティング剤の密着性や使用される環境等によって適宜選択され得る。
【0120】
複合粒子の配合量は、バインダー樹脂を含むコーティング剤により形成される塗膜の膜厚、複合粒子の平均粒子径、塗工方法、使用する用途等によって適宜調整されるが、バインダー樹脂100重量部に対して、1〜300重量部の範囲内であることが好ましく、5〜100重量部の範囲内であることがより好ましい。複合粒子の配合量が、バインダー樹脂100重量部に対して、1重量部未満である場合、艶消し効果が十分得られないことがある。また、複合粒子の配合量が、バインダー樹脂100重量部に対して、300重量部を超える場合にはコーティング剤の粘度が大きくなりすぎるために複合粒子の分散不良が起こることがあり、この結果、コーティング剤の塗工によって得られる塗膜表面にマイクロクラックが発生する、或いは、得られる塗膜表面にザラツキが生じる等のような、塗膜表面の外観不良が起こることがある。
【0121】
前記コーティング剤は、必要に応じて、媒体を含んでいる。前記媒体として、バインダー樹脂を溶解できる溶剤(溶媒)、又はバインダー樹脂を分散できる分散媒を使用することが好ましい。分散媒又は溶媒としては、水性の媒体及び油性の媒体がいずれも使用できる。油性の媒体としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤等が挙げられる。水性の媒体としては、水、アルコール類(例えばイソプロパノール)等が挙げられる。これら媒体は、1種のみを使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。コーティング剤中における媒体の含有量は、コーティング剤全量に対し、通常、20〜60重量%の範囲内である。
【0122】
さらに、コーティング剤には、硬化剤、着色剤(体質顔料、着色顔料、金属顔料、マイカ粉顔料、染料等)、帯電防止剤、レベリング剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の他の添加剤が含まれていてもよい。
【0123】
コーティング剤の被塗布基材としては、特に限定されず、用途に応じた基材が使用できる。
【0124】
例えば、光学用途では、ガラス基材、透明基材樹脂からなる透明基材等が被塗布基材として使用される。被塗布基材として透明基材を使用し、着色剤を含まないコーティング剤を透明基材上に塗工して透明の塗膜を形成することで、光拡散フィルム、防眩フィルム、紫外線遮蔽フィルム、遮熱フィルム、断熱フィルム、放熱フィルム等の光学フィルムや、遮熱窓ガラスを製造することができる。この場合、複合粒子は、光拡散剤、紫外線遮蔽剤、遮熱剤、断熱剤、放熱剤等として機能する。
【0125】
また、被塗布基材として紙を使用し、着色剤を含まないコーティング剤(紙用コーティング剤)を透明基材上に塗工して透明の塗膜を形成することで、艶消し紙を製造することができる。
【0126】
また、被塗布基材として建材を使用し、コーティング剤を建材上に塗工して塗膜を形成することで、断熱建材を製造することができる。
【0127】
コーティング剤の塗工方法は、特に限定されず、公知の方法をいずれも使用できる。塗工方法としては、例えば、コンマダイレクト法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコート法、ディッピング法、ナイフコート法、カーテンフロー法、ラミネート法等の方法が挙げられる。コーティング剤は、必要に応じて粘度を調整するために、希釈剤を加えて希釈してもよい。希釈剤としては、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶剤;水;アルコール系溶剤等が挙げられる。これら希釈剤は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。光学フィルムを製造する場合には、塗工方法として、複合粒子に由来する凹凸が塗膜表面に形成されるような方法を使用することが好ましい。
【0128】
〔光学フィルム〕
本発明の光学フィルムは、本発明のコーティング剤をフィルム状の基材に塗工したものである。光学フィルムの具体例としては、光拡散フィルム、防眩フィルム、紫外線遮蔽フィルム、遮熱フィルム、断熱フィルム、放熱フィルム等を挙げることができる。
【0129】
光学フィルムの基材の具体例としては、ガラス基材や、透明基材樹脂からなる透明基材等を挙げることができる。
【0130】
前記透明基材樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略記する)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等が挙げられる。これら透明基材樹脂の中でも、優れた透明性が透明基材樹脂に求められる場合には、アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、及びポリスチレンが好ましい。これらの透明基材樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0131】
また、光学フィルムにおいて、コーティング剤を塗工して得られる塗膜の厚みは、5〜100μmの範囲であることが好ましい。
【0132】
〔樹脂組成物〕
本発明の樹脂組成物は、本発明の複合粒子と基材樹脂とを含むものである。この本発明の樹脂組成物は、本発明の複合粒子を含み、光拡散性を有することから、照明カバー(発光ダイオード(LED)照明用照明カバー、蛍光灯照明用照明カバー等)、光拡散シート、光拡散板等の光拡散体の原料として使用できる。さらに、本発明の樹脂組成物は、紫外線遮蔽材料、遮熱材料、断熱材料、放熱材料等としての使用が期待できる。
【0133】
前記基材樹脂としては、通常、複合粒子を構成する重合体の成分と異なる熱可塑性樹脂が使用される。前記基材樹脂として使用する熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等が挙げられる。これら熱可塑性樹脂の中でも、優れた透明性が基材樹脂に求められる場合には、アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、及びポリスチレンが好ましい。これらの熱可塑性樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0134】
前記基材樹脂への複合粒子の添加割合は、基材樹脂100重量部に対して、0.1〜70重量部の範囲内であることが好ましく、1〜50重量部の範囲内であることがより好ましい。前記基材樹脂への複合粒子の添加割合が、基材樹脂100重量部に対して、0.1重量部未満の場合、樹脂組成物に光拡散性や紫外線遮蔽性等を与えにくくなることがある。前記基材樹脂への複合粒子の添加割合が、基材樹脂100重量部に対して、70重量部より多い場合、樹脂組成物に光拡散性を与えられるが上記光拡散体の光透過性が低くなることがある。樹脂組成物に光拡散性や紫外線遮蔽性等を与えられるが樹脂組成物の光透過性が低くなることがある。
【0135】
樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、複合粒子と基材樹脂とを機械式粉砕混合方法等のような従来公知の方法で混合することにより製造できる。機械式粉砕混合方法では、例えば、ヘンシェルミキサー、V型混合機、ターブラミキサー、ハイブリダイザー、ロッキングミキサー等の装置を用いて複合粒子と基材樹脂とを混合し撹拌することにより、樹脂組成物を製造できる。
【0136】
〔成形体〕
本発明の成形体は、本発明の樹脂組成物を成形してなるものである。本発明の成形体の具体例としては、照明カバー(発光ダイオード(LED)照明用照明カバー、蛍光灯照明用照明カバー等)、光拡散シート、光拡散板等の光拡散体;紫外線遮蔽材料;遮熱材料;断熱材料;放熱材料等としての使用が期待できる。
【0137】
例えば、複合粒子と基材樹脂とを混合機で混合し、押出機等の溶融混練機で混練することで樹脂組成物からなるペレットを得た後、このペレットを押出成形するか、或いはこのペレットを溶融後に射出成形することにより、任意の形状の成形体を得ることができる。
【0138】
〔他の用途〕
シリカ以外の金属酸化物、特に酸化チタンや酸化亜鉛は比較的高い屈折率を有することから、本発明の複合粒子は、特にシリカ以外の金属酸化物が酸化チタンや酸化亜鉛である場合に、光閉じ込め層の材料、光取り出し層の材料、光学材料(例えば光学フィルム)の屈折率を調整するために光学材料に添加される屈折率調整剤等としても使用が期待できる。また、本発明の複合粒子は、複合粒子の硬度が重合体粒子表面に付着した金属酸化物粒子により確保されているので、研磨剤としても使用が期待できる。また、シリカ以外の金属酸化物、特に酸化チタンや酸化亜鉛は放熱性を有することから、本発明の複合粒子は、放熱材料としても使用が期待できる
【実施例】
【0139】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。まず、実施例及び比較例中の各測定方法について説明する。
【0140】
〔金属酸化物粒子の平均一次粒子径の測定方法〕
金属酸化物粒子(シリカ被覆金属酸化物粒子、又はシリカで被覆されていない金属酸化物粒子)の平均一次粒子径(具体的には、キュムラント解析法で算出したZ平均粒子径)は、例えば動的光散乱法による粒径測定装置(Malvern社製の「Zetasizer Nano ZS」)により測定する。
【0141】
測定試料としては、測定する金属酸化物粒子をイオン交換水中に分散させて、分散液としたものを使用する。なお、金属酸化物粒子の想定の平均一次粒子径が100nm未満の場合は、金属酸化物粒子の濃度が1重量%となるように上記分散液を調製し、金属酸化物粒子の想定の平均一次粒子径が100nm以上の場合は、金属酸化物粒子の濃度が0.1重量%となるように上記分散液を調製する。上記動的光散乱法による粒径測定装置(Malvern社製の「Zetasizer Nano ZS」)の測定部に、ポリエチレン製セルをセットし、前記ポリエチレン製セルに上記分散液を分注して、金属酸化物粒子のZ平均粒子径を測定する。
【0142】
Z平均粒子径とは、粒子分散物等の動的光散乱法の測定データを、キュムラント解析法を用いて解析して得られる値である。
【0143】
キュムラント解析法においては、粒子径の平均値と多分散指数(PDI)が得られ、この粒子径の平均値が、Z平均粒子径と定義される。厳密には、測定で得られたG1相関関数の対数に、多項式をフィットさせる作業を、キュムラント解析といい、下式における定数bが、二次キュムラント又はZ平均拡散係数とよばれる。
【0144】
LN(G1)=A+bt+ct
2+dt
3+et
4+・・・
上記定数bを、上記分散液の粘度と幾つかの装置定数を用いて粒子径に換算した値がZ平均粒子径である。
【0145】
〔シリカ被覆金属酸化物粒子への水溶性セルロース類の吸着量の測定方法〕
後述する実施例1については、複合粒子の製造工程で得た水溶性セルロース類が吸着したシリカ被覆金属酸化物粒子を含む分散媒を用い、シリカ被覆金属酸化物粒子1gあたりの水溶性セルロース類の吸着量(g)を以下の方法により、測定した。
【0146】
水溶性セルロース類が吸着したシリカ被覆金属酸化物粒子を含む分散媒0.25gを、イオン交換水1gを加えて希釈した後、遠心分離機(株式会社日立ハイテクノロジーズ製の「日立高速冷却遠心機 HIMAC CR22GII」)を用い、25000Gにて、30分間遠心分離する。得られた上澄み液1mlに、5重量%フェノール水溶液1mlを添加し、さらに、5mlの濃硫酸を添加後、10分間放置し、さらに、25℃の水溶液中に10分間静置して測定試料を得る。前記測定試料について、紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製の「紫外可視分光光度計UV−2450」)で485nmにおける吸光度を測定し、較正曲線(吸光度と水溶性セルロース類の濃度との関係を表す曲線)を用いて、上記上澄み液中における水溶性セルロース類の濃度(g/l)を求める。
【0147】
なお、較正曲線は次に示す方法により、作成する。すなわち、イオン交換水100gに分散媒の作製時に使用する水溶性セルロース類を0.01g、0.05g、0.1g添加した濃度の異なる3種の水溶液を作製する。作製した各水溶液0.25gを、それぞれ、0.75gのイオン交換水で希釈し、希釈後の水溶液のそれぞれについて、吸光度を測定する。そして水溶液中の水溶性セルロース類の重量と吸光度をプロットすることで一次曲線の較正曲線を作成する。
【0148】
そして、以下の式により、シリカ被覆金属酸化物粒子1gあたりの水溶性セルロース類の吸着量(g)を求める。
【0149】
D=(W
H−C×V)÷Ws
D:シリカ被覆金属酸化物粒子1gあたりの水溶性セルロース類の吸着量(g)
C:上記上澄み液中における水溶性セルロース類の濃度(g/l)
W
H:複合粒子の製造に使用した水溶性セルロース類の重量(g)
Ws:複合粒子の製造に使用したシリカ被覆金属酸化物粒子の重量(g)
V:複合粒子の製造において上記分散媒の調製に使用した水性媒体の体積(l)
〔体積平均粒子径の測定方法〕
後述する実施例及び比較例で得られた複合粒子及び比較例で使用した重合体粒子の体積平均粒子径は、コールターマルチサイザーIII(ベックマン・コールター株式会社製測定装置)により測定する。測定は、ベックマン・コールター株式会社発行のMultisizer
TM 3ユーザーズマニュアルに従って校正されたアパチャーを用いて実施するものとする。
【0150】
なお、測定に用いるアパチャーの選択は、測定する粒子(複合粒子又は重合体粒子)の想定の体積平均粒子径が1μm以上10μm以下の場合は50μmのサイズを有するアパチャーを選択し、測定する粒子(複合粒子又は重合体粒子)の想定の体積平均粒子径が10μmより大きく30μm以下の場合は100μmのサイズを有するアパチャーを選択し、粒子(複合粒子又は重合体粒子)の想定の体積平均粒子径が30μmより大きく90μm以下の場合は280μmのサイズを有するアパチャーを選択し、粒子(複合粒子又は重合体粒子)の想定の体積平均粒子径が90μmより大きく150μm以下の場合は400μmのサイズを有するアパチャーを選択するなど、適宜行う。測定後の体積平均粒子径が想定の体積平均粒子径と異なった場合は、適正なサイズを有するアパチャーに変更して、再度測定を行う。
【0151】
また、50μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は−800、Gain(ゲイン)は4と設定し、100μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は−1600、Gain(ゲイン)は2と設定し、280μm及び400μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は−3200、Gain(ゲイン)は1と設定する。
【0152】
測定用試料としては、測定する粒子(複合粒子又は重合体粒子)0.1gを0.1重量%ノニオン性界面活性剤水溶液10m1中にタッチミキサー(ヤマト科学株式会社製、「TOUCHMIXER MT−31」)及び超音波洗浄器(株式会社ヴェルヴォクリーア社製、「ULTRASONIC CLEANER VS−150」)を用いて分散させ、分散液としたものを使用する。コールターマルチサイザーIIIの測定部に、ISOTON(登録商標)II(ベックマン・コールター株式会社製:測定用電解液)を満たしたビーカーをセットし、ビーカー内を緩く攪拌しながら、前記分散液を滴下して、コールターマルチサイザーIII本体画面の濃度計の示度を5〜10%に合わせた後に、測定を開始する。測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、粒子(複合粒子又は重合体粒子)を10万個測定した時点で測定を終了する。粒子(複合粒子又は重合体粒子)の体積平均粒子径は、10万個の粒子(複合粒子又は重合体粒子)の体積基準の粒度分布における算術平均である。
【0153】
〔強熱残分の測定方法〕
測定対象の複合粒子1.0gを計量した後、計量した複合粒子を550℃で30分間、電気炉内で焼失させて、残った残渣の重量(g)を測定する。そして、測定した残渣の重量(g)を、測定前の複合粒子の重量(1.0g)で除し、百分率換算して、複合粒子の強熱残分(重量%)を得る。
【0154】
〔比表面積の測定方法〕
測定対象の複合粒子を0.25g計量した。計量した複合粒子を、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.025gと、純水50gと混合し、この混合物を超音波にて10分間撹拌して、複合粒子を分散させたものを測定試料とした。そして、この測定試料中の粒子の比表面積を、レーザー回折式粒度分布測定装置(Malvern Instruments Ltd製、「マスターサイザー2000」)を用いて、下記測定条件で測定した。
【0155】
<測定条件>
分散媒;水
解析モデル;汎用
粒子屈折率;1.50
分散媒屈折率;1.33
〔シリカ被覆金属酸化物粒子の添加量の算出方法〕
複合粒子の製造における金属酸化物粒子(シリカ被覆金属酸化物粒子、又はシリカで被覆されていない金属酸化物粒子)の使用重量と、重合性ビニル系モノマーの使用重量と、上記比表面積の測定方法により測定された複合粒子の比表面積とを用いて、以下の算出式により、上記製造で得られた複合粒子の単位表面積あたりの金属酸化物粒子の添加量(g/m
2)を求める。
【0156】
添加量=(W
S÷W
m)÷X
W
S:複合粒子の製造における金属酸化物粒子の使用重量(g)
W
m:複合粒子の製造における重合性ビニル系モノマーの使用重量(g)
X:上記比表面積の測定方法により測定された複合粒子の比表面積(m
2/g)
〔シリカ被覆金属酸化物粒子の付着量の算出方法〕
後述する実施例及び比較例で得られた複合粒子については、上記強熱残分は、複合粒子中の金属酸化物粒子(シリカ被覆金属酸化物粒子、又はシリカで被覆されていない金属酸化物粒子)の量とほぼ等しいことから、上記強熱残分の測定方法により測定された強熱残分と、上記比表面積の測定方法により測定された複合粒子の比表面積とを用いて、以下の式により、上記製造で得られた複合粒子の単位表面積あたりの金属酸化物粒子の付着量(g/m
2)を求める。
【0157】
付着量=(A÷100)÷X
A:強熱残分の測定方法により測定された強熱残分(重量%)
X:上記比表面積の測定方法により測定された複合粒子の比表面積(m
2/g)
なお、上記強熱残分の測定方法において前記複合粒子を550℃の電気炉内で30分間、焼失させて残った残渣が、金属酸化物粒子以外の成分を含み、上記強熱残分の測定方法により測定された強熱残分が、複合粒子中の金属酸化物粒子の量と異なる場合には、以下の式により、上記製造で得られた複合粒子の単位表面積あたりの金属酸化物粒子の付着量(g/m
2)を求めることができる。なお、上記残渣が金属酸化物粒子を含むか否か、及び、上記残渣中に含まれる金属酸化物粒子の量については、元素分析等の公知の方法を用いて判別することが可能である。
【0158】
付着量={(A÷100)×(B÷100)}÷X
A:強熱残分の測定方法により測定された強熱残分(重量%)
B:上記残渣中における金属酸化物粒子の含有率(重量%)
X:上記比表面積の測定方法により測定された複合粒子の比表面積(m
2/g)
〔光学フィルムの分光透過率の測定方法〕
4cm×4cmの平面サイズにカットした光学フィルムをセルに挟み込み、積分球を装着した紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製、商品名「UV−2450」)を用いて波長300〜800nmの分光透過率を測定した。
〔実施例1〕
容器に、水性媒体としての水150gと、シリカ被覆金属酸化物粒子としての超微粒子シリカ被覆酸化チタン水分散体「GT−10W」(堺化学工業株式会社製、平均一次粒子径:115nm、固形分40重量%、シリカ被覆量(シリカ被覆金属酸化物粒子におけるシリカの含有量)20重量%)10.58g(シリカ被覆酸化チタン粒子の純分量4.23g)と、水溶性セルロース類としての「メトローズ(登録商標)65SH−400」(略称「HPMC(65SH−400)」、信越化学工業株式会社製ヒドロキシプロピルメチルセルロース、曇点65℃)0.14gとを投入し、60℃の温度で24時間混合した。これにより、水溶性セルロース類が吸着したシリカ被覆酸化チタン粒子を含む分散媒を得た。この分散媒を用いてシリカ被覆酸化チタン粒子に対する水溶性セルロース類の吸着量を測定したところ、シリカ被覆酸化チタン粒子1gあたり0.023gの水溶性セルロース類がシリカ被覆酸化チタン粒子に吸着していた。
【0159】
別途、重合性ビニル系モノマーとしてのメタクリル酸メチル(MMA)50g及びエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)2.5gと、重合開始剤としての2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN)0.5gと、重合性リン酸系モノマーとしての「KAYAMER(登録商標)PM−21」(略称「PM−21」、日本化薬株式会社製)0.2gとを均一に混合し、溶解させて、重合開始剤を含むモノマー混合物を調製した。
【0160】
この重合開始剤を含むモノマー混合物を前記容器内の上記分散媒に加えて、ハイフレックスディスパーサーHG92(株式会社エスエムテー製)にて回転数(攪拌速度)4000rpmで約3分間攪拌し、上記分散媒中に上記モノマー混合物を微分散させた。
【0161】
攪拌装置を有する重合容器に、上記分散媒中に上記モノマー混合物を微分散させたものを加えて、回転数100rpmで攪拌を継続させ、上記モノマー混合物を加えた分散媒の温度が50℃になってから6時間懸濁重合を行った。
【0162】
次いで、攪拌しながら重合容器内の反応液を室温まで冷却した。次いで、前記反応液を、定性ろ紙No.101(アドバンテック東洋株式会社製「東洋 定性ろ紙」)を用いて吸引ろ過し、イオン交換水で洗浄、続いて脱液し、その後、80℃のオーブン中で一昼夜乾燥させることで複合粒子を得た。
【0163】
得られた複合粒子の断面をTEMで確認したところ、
図1に示すように、当該複合粒子は、重合体粒子(
図1中における黒点部分より下の部分)と、当該重合体粒子の表面に付着したシリカ被覆酸化チタン粒子(
図1中における円弧状に並ぶ黒点部分)とを含むことが認められた。
【0164】
また、得られた複合粒子の体積平均粒子径は17.5μmで、比表面積は0.34m
2/g、強熱残分は7.30重量%、複合粒子の単位表面積あたりのシリカ被覆金属酸化物粒子の添加量は0.23g/m
2で、複合粒子の単位表面積あたりのシリカ被覆金属酸化物粒子の付着量は0.21g/m
2であった。
【0165】
〔実施例2〕
シリカ被覆金属酸化物粒子としての超微粒子シリカ被覆酸化チタン水分散体「GT−10W」の使用量を22.45g(シリカ被覆酸化チタン粒子の純分量8.98g)に変更し、水溶性セルロース類としての「メトローズ(登録商標)65SH−400」(HPMC(65SH−400))の使用量を0.30gに変更し、さらに、微分散させる際のホモミキサーの回転数を4000rpmから6000rpmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を得た。
【0166】
得られた複合粒子の体積平均粒子径は7.8μmで、比表面積は0.77m
2/g、強熱残分は12.60重量%、複合粒子の単位表面積あたりのシリカ被覆金属酸化物粒子の添加量は0.22g/m
2で、複合粒子の単位表面積あたりのシリカ被覆金属酸化物粒子の付着量は0.16g/m
2であった。
【0167】
〔実施例3〕
シリカ被覆金属酸化物粒子としての超微粒子シリカ被覆酸化チタン水分散体「GT−10W」の使用量を4.50g(シリカ被覆酸化チタン粒子の純分量1.80g)に変更し、水溶性セルロース類としての「メトローズ(登録商標)65SH−400」(HPMC(65SH−400))の使用量を0.06gに変更し、さらに、微分散させる際のホモミキサーの回転数を4000rpmから2000rpmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を得た。
【0168】
得られた複合粒子の体積平均粒子径は40.2μmで、比表面積は0.15m
2/g、強熱残分は2.88重量%、複合粒子の単位表面積あたりのシリカ被覆金属酸化物粒子の添加量は0.23g/m
2で、複合粒子の単位表面積あたりのシリカ被覆金属酸化物粒子の付着量は0.19g/m
2であった。
【0169】
〔実施例4〕
シリカ被覆金属酸化物粒子としての超微粒子シリカ被覆酸化チタン水分散体「GT−10W」の使用量を2.25g(シリカ被覆酸化チタン粒子の純分量0.90g)に変更し、水溶性セルロース類としての「メトローズ(登録商標)65SH−400」(HPMC(65SH−400))の使用量を0.03gに変更し、さらに、微分散させる際のホモミキサーの回転数を4000rpmから1000rpmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を得た。
【0170】
得られた複合粒子の体積平均粒子径は80.8μmで、比表面積は0.075m
2/g、強熱残分は1.53重量%、複合粒子の単位表面積あたりのシリカ被覆金属酸化物粒子の添加量は0.23g/m
2で、複合粒子の単位表面積あたりのシリカ被覆金属酸化物粒子の付着量は0.20g/m
2であった。
【0171】
〔実施例5〕
シリカ被覆酸化チタン粒子として、超微粒子シリカ被覆酸化チタン水分散体「GT−10W」10.58gに代えて超微粒子シリカ被覆酸化チタン「STR−100W」(堺化学工業株式会社製、平均一次粒子径:115nm、シリカ被覆量20重量%)4.23gを使用したこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を得た。
【0172】
得られた複合粒子の体積平均粒子径は17.2μmで、比表面積は0.35m
2/g、強熱残分は7.62重量%、複合粒子の単位表面積あたりのシリカ被覆金属酸化物粒子の添加量は0.23g/m
2で、複合粒子の単位表面積あたりのシリカ被覆金属酸化物粒子の付着量は0.22g/m
2であった。
【0173】
〔実施例6〕
シリカ被覆酸化チタン粒子として、超微粒子シリカ被覆酸化チタン水分散体「GT−10W」10.58gに代えて超微粒子シリカ被覆酸化チタン水分散体「WT−PF01」(テイカ株式会社製、平均一次粒子径:86nm、固形分40重量%、シリカ被覆量20重量%)7.90g(シリカ被覆酸化チタン粒子の純分量3.16g)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を得た。
【0174】
得られた複合粒子の体積平均粒子径は17.5μmで、比表面積は0.34m
2/g、強熱残分は5.27重量%、複合粒子の単位表面積あたりのシリカ被覆金属酸化物粒子の添加量は0.18g/m
2で、複合粒子の単位表面積あたりのシリカ被覆金属酸化物粒子の付着量は0.16g/m
2であった。
【0175】
〔実施例7〕
シリカ被覆酸化チタン粒子として、超微粒子シリカ被覆酸化チタン水分散体「GT−10W」10.58gに代えて超微粒子シリカ被覆酸化チタン「MT−100WP」(テイカ株式会社製、平均一次粒子径:86nm、シリカ被覆量35重量%)3.16gを使用したこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を得た。
【0176】
得られた複合粒子の体積平均粒子径は17.6μmで、比表面積は0.34m
2/g、強熱残分は5.59重量%、複合粒子の単位表面積あたりのシリカ被覆金属酸化物粒子の添加量は0.18g/m
2で、複合粒子の単位表面積あたりのシリカ被覆金属酸化物粒子の付着量は0.16g/m
2であった。
【0177】
〔実施例8〕
水溶性セルロース類として、「メトローズ(登録商標)65SH−400」(HPMC(65SH−400))0.14gに代えて、「メトローズ(登録商標)65SH−4000」(略称「HPMC(65SH−4000)」、信越化学工業株式会社製ヒドロキシプロピルメチルセルロース、曇点65℃)0.14gを使用したこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を得た。
【0178】
得られた複合粒子の体積平均粒子径は17.1μmで、比表面積は0.35m
2/g、強熱残分は7.85重量%、複合粒子の単位表面積あたりのシリカ被覆金属酸化物粒子の添加量は0.23g/m
2で、複合粒子の単位表面積あたりのシリカ被覆金属酸化物粒子の付着量は0.22g/m
2であった。
【0179】
〔実施例9〕
水溶性セルロース類として、「メトローズ(登録商標)65SH−400」(HPMC(65SH−400))0.14gに代えて、「メトローズ(登録商標)65SH−50」(略称「HPMC(65SH−50)」、信越化学工業株式会社製ヒドロキシプロピルメチルセルロース、曇点65℃)0.14gを使用したこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を得た。
【0180】
得られた複合粒子の体積平均粒子径は17.4μmで、比表面積は0.34m
2/g、強熱残分は5.23重量%、複合粒子の単位表面積あたりのシリカ被覆金属酸化物粒子の添加量は0.23g/m
2で、複合粒子の単位表面積あたりのシリカ被覆金属酸化物粒子の付着量は0.15g/m
2であった。
【0181】
〔実施例10〕
水溶性セルロース類として、「メトローズ(登録商標)65SH−400」(HPMC(65SH−400))0.14gに代えて、「NISSO HPC H」(日本曹達株式会社製ヒドロキシプロピルセルロース、下限臨界共溶温度45℃)0.14gを使用し、分散媒を調製する際の混合温度60℃を40℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を得た。
【0182】
得られた複合粒子の体積平均粒子径は17.6μmで、比表面積は0.34m
2/g、強熱残分は7.21重量%、複合粒子の単位表面積あたりのシリカ被覆金属酸化物粒子の添加量は0.23g/m
2で、複合粒子の単位表面積あたりのシリカ被覆金属酸化物粒子の付着量は0.21g/m
2であった。
【0183】
〔実施例11〕
重合性ビニル系モノマーとして、メタクリル酸メチル(MMA)50g及びエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)2.5gに代えて、スチレン(St)50g及びエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)2.5gを使用し、さらに、シリカ被覆金属酸化物粒子としての超微粒子シリカ被覆酸化チタン水分散体「GT−10W」の使用量を12.7g(シリカ被覆酸化チタン粒子の純分量5.07g)に変更し、さらに、水溶性セルロース類としての「メトローズ(登録商標)65SH−400」(HPMC(65SH−400))の使用量を0.17gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を得た。
【0184】
得られた複合粒子の体積平均粒子径は17.1μmで、比表面積は0.34m
2/g、強熱残分は8.61重量%、複合粒子の単位表面積あたりのシリカ被覆金属酸化物粒子の添加量は0.28g/m
2で、複合粒子の単位表面積あたりのシリカ被覆金属酸化物粒子の付着量は0.25g/m
2であった。
【0185】
〔実施例12〕
シリカ被覆金属酸化物粒子として、超微粒子シリカ被覆酸化チタン水分散体「GT−10W」10.58gに代えて、超微粒子シリカ被覆酸化亜鉛「FINEX−30W」(堺化学工業株式会社製、平均一次粒子径:137nm、シリカ被覆量20重量%)6.82gを使用し、水溶性セルロース類としての「メトローズ(登録商標)65SH−400」(HPMC(65SH−400))の使用量を0.13gに変更し、さらに、微分散させる際のホモミキサーの回転数を4000rpmから6200rpmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を得た。
【0186】
得られた複合粒子の体積平均粒子径は17.2μmで、比表面積は0.35m
2/g、強熱残分は12.36重量%、複合粒子の単位表面積あたりのシリカ被覆金属酸化物粒子の添加量は0.37g/m
2で、複合粒子の単位表面積あたりのシリカ被覆金属酸化物粒子の付着量は0.35g/m
2であった。
【0187】
〔実施例13〕
重合性リン酸系モノマーとしての「KAYAMER(登録商標)PM−21」(PM−21)を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を得た。
【0188】
得られた複合粒子の体積平均粒子径は17.3μmで、比表面積は0.35m
2/g、強熱残分は5.95重量%、単位面積あたりのシリカ被覆金属酸化物の添加量は0.23g/m
2で、単位面積あたりのシリカ被覆金属酸化物の付着量は0.17g/m
2であった。
【0189】
〔比較例1〕
水溶性セルロース類としての「メトローズ(登録商標)65SH−400」(HPMC(65SH−400))を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、懸濁重合を試みたが、分散媒中におけるモノマー混合物の液滴の安定性が低く、複合粒子を得ることができなかった。
【0190】
〔比較例2〕
分散媒の調製において、水溶性セルロース類としての「メトローズ(登録商標)65SH−400」(HPMC(65SH−400))0.14gに代えて、「ゴーセノール(登録商標)GL−05」(略称「GL−05」、日本合成化学工業株式会社製ポリビニルアルコール(PVA))0.14gを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、懸濁重合を試みたが、分散媒中におけるモノマー混合物の液滴の安定性が低く、複合粒子を得ることができなかった。
【0191】
〔比較例3〕
シリカ被覆金属酸化物粒子としての超微粒子シリカ被覆酸化チタン水分散体「GT−10W」10.58gに代えて、シリカ被覆されていない酸化チタン粒子である超微粒子酸化チタン「STR−100N」(堺化学工業株式会社製、平均一次粒子径:110nm)4.04gを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、懸濁重合を試みたが、分散媒中におけるモノマー混合物の液滴の安定性が低く、複合粒子を得ることができなかった。
【0192】
〔比較例4〕
シリカ被覆金属酸化物粒子としての超微粒子シリカ被覆酸化亜鉛「FINEX(登録商標)−30W」6.82gに代えて、シリカ被覆されていない酸化亜鉛粒子である超微粒子酸化亜鉛「FINEX−30」(堺化学工業株式会社製、平均一次粒子径:35nm)1.74gに変更し、水溶性セルロース類としての「メトローズ(登録商標)65SH−400」(HPMC(65SH−400))の使用量を0.13gに変更したこと以外は、実施例12と同様にして、懸濁重合を試みたが、分散媒中におけるモノマー混合物の液滴の安定性が低く、複合粒子を得ることができなかった。
【0193】
〔比較例5〕
水溶性セルロース類としての「メトローズ(登録商標)65SH−400」(HPMC(65SH−400))を使用せず、シリカ被覆金属酸化物粒子として、超微粒子シリカ被覆酸化亜鉛「FINEX(登録商標)−30W」6.82gに代えて、超微粒子シリカ被覆酸化亜鉛水分散体「FINEX−30RST」(堺化学工業株式会社製、平均一次粒子径:160nm、固形分50重量%、シリカ被覆量9重量%)15.92g(シリカ被覆酸化亜鉛粒子の純分量7.96g)に変更したこと以外は、実施例12と同様にして、懸濁重合を試みたが、分散媒中におけるモノマー混合物の液滴の安定性が低く、複合粒子を得ることができなかった。
【0194】
〔比較例6〕
攪拌装置を有する重合容器に水とシリカ被覆金属酸化物粒子と水溶性セルロース類とを投入した後、60℃の温度で24時間混合する処理(水溶性セルロース類をシリカ被覆金属酸化物粒子に吸着させるための処理)を行わずに、水溶性セルロース類及びシリカ被覆金属酸化物粒子を含む分散媒を得た以外は、実施例1と同様にして、複合粒子の製造を試みたが、重合中に、粒子同士が合着してしまい、複合粒子を得ることができなかった。
【0195】
〔比較例7〕
シリカ被覆金属酸化物粒子としての超微粒子シリカ被覆酸化チタン「STR−100W」(堺化学工業株式会社製、平均一次粒子径:115nm、シリカ被覆量20重量%)4.23gと、重合体粒子としての体積平均粒子径が16.9μmのポリメタクリル酸メチル粒子53.0gとをボールミルにて分散させることで、シリカ被覆酸化チタン粒子と重合体粒子とが複合化された複合体を得た。
【0196】
得られた複合体には、重合体粒子表面上にないシリカ被覆酸化チタン粒子や、弱い粒子間相互作用(例えば静電気相互作用)により重合体粒子表面上に載っており水洗浄などの処理により容易に重合体粒子表面から脱落するシリカ被覆酸化チタン粒子が含まれていると考えられる。そこで、容易に重合体粒子表面から脱落しないような状態で重合体粒子表面に付着しているシリカ被覆酸化チタン粒子の量を測定するために、以下のようにして前記複合体を水洗浄して得られた複合粒子について、シリカ被覆酸化チタン粒子の付着量を測定する。
【0197】
すなわち、前記複合体をイオン交換水に分散させた後に、定性ろ紙No.101(アドバンテック東洋株式会社製「東洋 定性ろ紙」)を用いて吸引ろ過し、イオン交換水で洗浄、続いて脱液し、その後、80℃のオーブン中で一昼夜乾燥させ、複合粒子を得た。乾燥後の複合粒子の強熱残分は3.19重量%、複合粒子の単位表面積あたりのシリカ被覆金属酸化物粒子の添加量は0.22g/m
2、複合粒子の単位表面積あたりのシリカ被覆金属酸化物粒子の付着量は0.09g/m
2であった。
【0198】
〔比較例8〕
シリカ被覆金属酸化物粒子としての超微粒子シリカ被覆酸化チタン「STR−100W」4.23gに代えて、シリカ被覆されていない酸化チタン粒子である超微粒子酸化チタン「STR−100N」(堺化学工業株式会社製、平均一次粒子径:110nm)4.04gを使用したこと以外は、比較例7と同様にして、複合粒子を得た。乾燥後の複合粒子の強熱残分は3.05重量%、複合粒子の単位表面積あたりの金属酸化物粒子の添加量は0.21g/m
2、複合粒子の単位表面積あたりの金属酸化物粒子の付着量は0.08g/m
2であった。
【0199】
実施例1〜13及び比較例1〜8について、製造に使用した各種原料の使用量、製造に使用した金属酸化物粒子の平均一次粒子径の測定結果、製造により得られた複合粒子の体積平均粒子径、比表面積、及び強熱残分の測定結果、金属酸化物粒子の添加量の算出結果、及び、製造により得られた複合粒子における金属酸化物粒子の付着量の算出結果を表1〜3に示す。
【0200】
【表1】
【0201】
【表2】
【0202】
【表3】
【0203】
表1〜3に示す結果より、実施例1〜13で得られた粒子は、重合体粒子と、この重合体粒子の表面に付着したシリカ被覆金属酸化物粒子とを含む複合粒子であることが認められた。また、実施例1〜13では、いずれもシリカ被覆金属酸化物粒子の添加量とシリカ被覆金属酸化物粒子の付着量との差がほとんど見られないことから、懸濁重合により得られた複合粒子を洗浄及び脱液した際において、シリカ被覆金属酸化物粒子の脱落がほとんどないことが認められた。したがって、実施例1〜13で得られた複合粒子は、重合体粒子の表面にシリカ被覆金属酸化物粒子が強固に付着したもの、すなわち、重合体粒子の表面からシリカ被覆金属酸化物粒子が脱落し難いものであることが認められた。また、実施例1〜13で得られた複合粒子において、複合粒子の単位表面積あたりにおけるシリカ被覆金属酸化物粒子の付着量は、0.10〜1.00g/m
2(具体的には0.15〜0.35g/m
2)と多く、本発明の複合粒子は、多くのシリカ被覆金属酸化物粒子が重合体粒子の表面に付着したものであると認められた。
【0204】
これに対して、比較例1〜6では、いずれも複合粒子を得ることができなかった。また、比較例7及び比較例8では、重合体粒子とシリカ被覆金属酸化物粒子(又はシリカで被覆されていない金属酸化物粒子)との複合体が得られるものの、これをイオン交換水で洗浄及び脱液し乾燥すると、単位面積当たりのシリカ被覆金属酸化物(又はシリカで被覆されていない金属酸化物粒子)の付着量は、シリカ被覆金属酸化物粒子(又はシリカで被覆されていない金属酸化物粒子)の添加量と比較して顕著に少なくなった。すなわち、比較例7及び比較例8で得られる複合体におけるシリカ被覆金属酸化物粒子(又はシリカで被覆されていない金属酸化物粒子)の大部分は、容易に脱落するものか、あるいは重合体粒子表面上にないものであることが認められた。また、比較例7及び比較例8で得られる複合体をイオン交換水で洗浄及び脱液し乾燥して得られる複合粒子は、実施例1〜13で得られた複合粒子と比較してシリカ被覆金属酸化物粒子(又はシリカで被覆されていない金属酸化物粒子)の付着量が顕著に少なかったことから、比較例7及び比較例8で得られる複合体を他の物質と混合して外用剤、コーティング剤、樹脂組成物等の製品を製造したときにも、実施例1〜13で得られた複合粒子と比較してシリカ被覆金属酸化物粒子(又はシリカで被覆されていない金属酸化物粒子)の付着量が少なくなるものと推測される。
【0205】
〔実施例14〕
実施例1で得られた複合粒子30gと、バインダー樹脂としてのアクリルポリオール(商品名:メジウム VM、大日精化工業株式会社製、樹脂固形分34重量%、溶剤分散系)100gと、硬化剤としてイソシアネート(商品名:VM−D、大日精化工業株式会社)30gとを混合して、コーティング剤を得た。この後、得られたコーティング剤を、基材としての厚み100μmのポリエステルフィルム上に、アプリケーターを用いて塗布した後、70℃で10分間熱風乾燥し、光学フィルムを得た。得られた光学フィルムの分光透過率の測定結果を
図2に示す。
【0206】
〔実施例15〕
実施例1で得られた複合粒子に代えて実施例5で得られた複合粒子を使用したこと以外は、実施例14と同様にして光学フィルムを得た。得られた光学フィルムの分光透過率の測定結果を
図2に示す。なお、
図2には、コーティング剤を塗布していないポリエステルフィルムのみのもの(ブランク)の分光透過率も併せて示している。
【0207】
〔実施例16〕
実施例1で得られた複合粒子に代えて実施例6で得られた複合粒子を使用したこと以外は、実施例14と同様にして光学フィルムを得た。得られた光学フィルムの分光透過率の測定結果を
図3に示す。
【0208】
〔実施例17〕
実施例1で得られた複合粒子に代えて実施例12で得られた複合粒子を使用したこと以外は、実施例14と同様にして光学フィルムを得た。得られた光学フィルムの分光透過率の測定結果を
図3に示す。なお、
図3には、コーティング剤を塗布していないポリエステルフィルムのみのもの(ブランク)の分光透過率の測定結果も併せて示している。
【0209】
図2及び
図3より明らかなように、実施例14〜17の光学フィルムは、ブランク(フィルムのみ)と比べて、300〜400nmの波長領域での透過率が十分に低く、紫外線を十分に遮蔽していることが認められた。