(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6294217
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】水素ガス供給装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/065 20160101AFI20180305BHJP
H01M 8/04225 20160101ALI20180305BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20180305BHJP
H01M 8/04007 20160101ALI20180305BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20180305BHJP
C01B 3/00 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
H01M8/065
H01M8/04225
H01M8/04746
H01M8/04007
H01M8/04 J
C01B3/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-243478(P2014-243478)
(22)【出願日】2014年12月1日
(65)【公開番号】特開2016-105381(P2016-105381A)
(43)【公開日】2016年6月9日
【審査請求日】2017年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】下簗 祐介
(72)【発明者】
【氏名】昆沙賀 徹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】青木 正和
(72)【発明者】
【氏名】山内 崇史
【審査官】
清水 康
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−302201(JP,A)
【文献】
特開平05−047400(JP,A)
【文献】
特開2002−134147(JP,A)
【文献】
特開2004−162812(JP,A)
【文献】
特開2011−052742(JP,A)
【文献】
特開2000−012062(JP,A)
【文献】
米国特許第4211537(US,A)
【文献】
欧州特許出願公開第1956672(EP,A1)
【文献】
特開平07−094202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00 − 8/2495
C01B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に水素ガスを供給する水素ガス供給装置であって、
第1温度範囲で水素ガスを放出する第1水素吸蔵合金を収容した第1タンクと、
前記第1温度範囲よりも下限温度の低い第2温度範囲で水素ガスを放出する第2水素吸蔵合金を収容した第2タンクと、
前記第1タンクと前記負荷とを接続する第1流路と、
前記第1タンクと前記第2タンクとを接続する第2流路と、
前記第1流路と前記第2流路とを接続する第3流路と、
前記第1流路において、前記第3流路の接続部と前記第1タンクとの間に設けられ、前記第1タンクからの水素ガスの流出を規制する第1逆止弁と、
前記第2流路において、前記第3流路の接続部と前記第1タンクとの間に設けられ、前記第2流路から前記第1タンクへの水素ガスの流入を規制する第2逆止弁とを備えた水素ガス供給装置。
【請求項2】
前記第1逆止弁が開弁する第1設定圧力は、前記第2タンクの上限圧力に基づいて設定されている請求項1に記載の水素ガス供給装置。
【請求項3】
前記第1流路において、前記第3流路の接続部と前記負荷との間には、前記負荷に供給される水素ガスの圧力を調節する調圧弁が設けられ、
前記第2逆止弁が開弁する第2設定圧力は、前記調圧弁の下限圧力に基づいて設定されている請求項1又は請求項2に記載の水素ガス供給装置。
【請求項4】
前記負荷が発した熱を前記第1タンクに供給する流通路を有する請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の水素ガス供給装置。
【請求項5】
前記第1温度範囲の下限温度は、前記第2温度範囲の上限温度よりも低い請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の水素ガス供給装置。
【請求項6】
外部から水素ガスを水素ガス供給装置に充填するための充填部を前記第1タンクに設けた請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載の水素ガス供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷に水素ガスを供給する水素ガス供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水素ガスを燃料として利用する負荷には、水素ガスを供給するための水素ガス供給装置が設けられる。例えば、燃料電池の電力で駆動するモータによって走行する電気自動車や、水素エンジンによって走行する水素エンジン車には、燃料電池や水素エンジンなどの負荷に水素ガスを供給する水素ガス供給装置が搭載されている。水素ガス供給装置では、所定温度や所定圧力の条件のもとで水素ガスを吸蔵して水素化物になり、必要時に別の温度や別の圧力の条件のもとで水素ガスを放出する水素吸蔵合金を用いて水素ガスの貯蔵と放出を行っている。水素吸蔵合金が水素ガスを放出する温度範囲が、負荷が動作する温度範囲よりも狭い場合、環境温度が負荷の動作する温度範囲であるにも関わらず、負荷に水素ガスを供給できないおそれがある。このため、特許文献1では、水素ガスを放出する温度範囲が異なる2種類の水素吸蔵合金を用いて、負荷に水素ガスを供給している。
【0003】
図5に示すように、特許文献1に記載の水素ガス供給装置100は、負荷である燃料電池101に水素ガスを供給するメインタンク102、及び、サブタンク103を備えている。メインタンク102及びサブタンク103には、それぞれ、水素吸蔵合金が収容されている。サブタンク103に収容されている水素吸蔵合金は、メインタンク102に収容されている水素吸蔵合金よりも低い温度で水素ガスを放出する。メインタンク102と燃料電池101を接続する第1流路104、サブタンク103と燃料電池101を接続する第2流路105、第1流路104と第2流路105の結合点106、及び、メインタンク102とサブタンク103とを接続する連通路107には、それぞれ、バルブ108が設けられている。このバルブ108は、制御回路109によって開閉される。水素ガス供給装置100は、メインタンク102から水素ガスを放出できないときには、まず、サブタンク103から水素ガスを放出する。そして、サブタンク103から供給された水素ガスで負荷を起動させた後に、負荷で発生した熱でメインタンク102を加熱する。制御回路109は、バルブ108を開閉することで、メインタンク102及びサブタンク103と燃料電池101との接続を切り替えたり、メインタンク102から放出された水素ガスをサブタンク103に供給して、サブタンク103内の水素吸蔵合金に水素ガスを吸蔵させたりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−12062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の水素ガス供給装置100は、バルブ108の開閉を制御するために、メインタンク102内の圧力や、サブタンク103内の圧力を制御回路109で監視する必要があり、また、バルブ108の開閉を制御するための配線などが必要になる。このため、水素ガス供給装置100の構成が複雑化している。
【0006】
本発明の目的は、簡素化を図ることができる水素ガス供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する水素ガス供給装置は、負荷に水素ガスを供給する水素ガス供給装置であって、第1温度範囲で水素ガスを放出する第1水素吸蔵合金を収容した第1タンクと、前記第1温度範囲よりも下限温度の低い第2温度範囲で水素ガスを放出する第2水素吸蔵合金を収容した第2タンクと、前記第1タンクと前記負荷とを接続する第1流路と、前記第1タンクと前記第2タンクとを接続する第2流路と、前記第1流路と前記第2流路とを接続する第3流路と、前記第1流路において、前記第3流路の接続部と前記第1タンクとの間に設けられ、前記第1タンクからの水素ガスの流出を規制する第1逆止弁と、前記第2流路において、前記第3流路の接続部と前記第1タンクとの間に設けられ、前記第2流路から前記第1タンクへの水素ガスの流入を規制する第2逆止弁とを備えている。
【0008】
これによれば、第1流路に設けられ、第1タンクからの水素ガスの流出を規制する第1逆止弁、及び、第2流路に設けられ、第1タンクへの水素ガスの流入を規制する第2逆止弁によって負荷への水素ガスの供給が制御される。第1逆止弁及び第2逆止弁は、メインタンク及びサブタンクから放出される水素ガスに応じて変動する各流路の内圧によって開閉する。このため、第1逆止弁及び第2逆止弁は、制御装置による制御を必要とせず、水素ガス供給装置の簡素化が図られる。
【0009】
上記水素ガス供給装置について、前記第1逆止弁が開弁する第1設定圧力は、前記第2タンクの上限圧力に基づいて設定されていることが好ましい。
これによれば、第2タンクの内圧が上限圧力を上回ろうとすると、第1逆止弁が開弁する。これにより、第2タンクから放出された水素ガスは、第2流路、第3流路、及び、第1流路を経由して第1タンクに流入する。第1タンクに流入した水素ガスは、第1水素吸蔵合金に吸蔵される。これにより、第2タンクの内圧が低下するため、第2タンクから放出された水素ガスを外部に放出する必要がなく、水素ガスを無駄にすることなく第2タンクの内圧を第2タンクの上限圧力に基づいた値以下とすることができる。
【0010】
上記水素ガス供給装置について、前記第1流路において、前記第3流路の接続部と前記負荷との間には、前記負荷に供給される水素ガスの圧力を調節する調圧弁が設けられ、前記第2逆止弁が開弁する第2設定圧力は、前記調圧弁の下限圧力に基づいて設定されていることが好ましい。これによれば、第1タンクから放出される水素ガスは、調圧弁によって調圧されて、負荷に供給される。
【0011】
上記水素ガス供給装置について、前記負荷が発した熱を前記第1タンクに供給する流通路を有することが好ましい。これによれば、負荷が発した熱によって第1タンクを加熱することができる。このため、環境温度が第1温度範囲の下限温度よりも低い場合でも、第1タンクを加熱することで、第1タンクから水素ガスを放出させることができる。
【0012】
上記水素ガス供給装置について、前記第1温度範囲の下限温度は、前記第2温度範囲の上限温度よりも低いことが好ましい。これによれば、第1温度範囲の一部と第2温度範囲の一部が被るため、水素ガス供給装置から負荷に水素が供給されない状況が生じにくい。
【0013】
上記水素ガス供給装置について、外部から水素ガスを水素ガス供給装置に充填するための充填部を前記第1タンクに設けることが好ましい。
これによれば、第1タンクの充填部から水素ガスを第1タンクに充填すると、第2逆止弁が開弁し、第1タンクから第2タンクに水素ガスが流入する。このため、第1タンクのみに外部から水素ガスを充填すれば、第2タンクにも水素ガスを充填することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】フォークリフトに搭載された燃料電池システムを示す概略構成図。
【
図2】メインタンクが第1温度範囲まで加熱されたときの燃料電池システムを示す概略構成図。
【
図3】サブタンクの温度が第2温度範囲の上限温度よりも高くなったときの燃料電池システムを示す概略構成図。
【
図4】メインタンクに水素ガスを充填したときの燃料電池システムを示す概略構成図。
【
図5】従来技術の水素ガス供給装置を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、水素ガス供給装置の一実施形態について説明する。
図1に示すように、フォークリフト10には、車輪を動作させる走行用モータ11、及び、荷役装置を動作させる荷役用モータ12が搭載されている。また、フォークリフト10には、負荷としての燃料電池21、及び、燃料電池21に水素ガスを供給する水素ガス供給装置30を備えた燃料電池システム20が搭載されている。燃料電池システム20としての上限圧力は、1MPa未満に設定され、本実施形態では、0.9MPaが上限圧力として設定されている。燃料電池21は、酸素と、水素ガス供給装置30から供給される水素ガスとの化学反応によって発電を行う。本実施形態の燃料電池21の動作温度は、−20℃〜80℃である。この動作温度は、燃料電池21が動作(発電)する温度範囲の定格値であり、この温度範囲内で燃料電池21は良好な発電を行うことが可能である。
【0017】
水素ガス供給装置30は、第1タンクとしてのメインタンク31、及び、第2タンクとしてのサブタンク32を備えている。メインタンク31は、サブタンク32に比べて容量が多く、サブタンク32よりも多量の水素ガスを貯蔵することができる。
【0018】
メインタンク31には、第1温度範囲である0℃〜50℃で水素ガスを放出する第1水素吸蔵合金33が収容されている。第1温度範囲は、メインタンク31が水素ガスの放出を行う温度範囲の定格値であり、第1水素吸蔵合金33は、第1温度範囲内で良好な水素ガスの放出を行うことが可能である。第1水素吸蔵合金33としては、例えば、Ti−Fe系合金、La系合金、Mm系合金などが用いられる。メインタンク31には、第1水素吸蔵合金33に水素ガスを吸蔵させるときに、水素ガス供給プラグなど、外部機器に設けられた水素ガス供給器具から水素ガスが供給される充填部34が設けられている。充填部34には、フォークリフト10外に露出して水素ガス供給器具が差し込まれる接続部材などが繋がれる。
【0019】
サブタンク32には、第2温度範囲である−20℃〜30℃で水素ガスを放出する第2水素吸蔵合金35が収容されている。第2水素吸蔵合金35は、第2温度範囲内でサブタンク32内の圧力を0.9MPa以下に保つ。すなわち、サブタンク32の上限圧力は、0.9MPaとされている。第2温度範囲は、サブタンク32が水素ガスを放出する温度範囲の定格値であり、第2水素吸蔵合金35は、第2温度範囲内で良好な水素ガスの放出を行うことが可能である。第2水素吸蔵合金35としては、例えば、Ti−Mn系合金、Ti−Cr系合金などが用いられる。
【0020】
第1温度範囲と、第2温度範囲とは、ともに50℃の温度幅を有している。この温度幅は、燃料電池システム20の上限圧力から定まる。温度幅が燃料電池システム20の上限圧力から定まるのに対して、第1水素吸蔵合金33、及び、第2水素吸蔵合金35は、その組成を変更することで、第1温度範囲、及び、第2温度範囲の温度域(上限温度及び下限温度)を変更することができる。本実施形態では、第2温度範囲の下限温度を、燃料電池21の動作温度の下限温度と同一としている。そして、下限温度に温度幅の50℃を加えた温度が上限温度として定まる。第1温度範囲の下限温度は、第2温度範囲の上限温度よりも低くしている。これにより、第1水素吸蔵合金33と第2水素吸蔵合金35では、水素を放出する温度範囲の一部が被っている。
【0021】
水素ガス供給装置30は、メインタンク31と燃料電池21とを接続する第1流路36、メインタンク31とサブタンク32とを接続する第2流路37、及び、第1流路36と第2流路37とを接続する第3流路38とを備えている。
【0022】
第1流路36において、第3流路38の接続部51とメインタンク31との間には、第1逆止弁39が設けられている。第1逆止弁39は、メインタンク31からの水素ガスの流出を規制する一方で、第1設定圧力で開弁することで、第1流路36からメインタンク31への水素ガスの流入を許容する。第1逆止弁39は、第1流路36の内圧に応じて制御装置からの制御を要することなく開閉する弁である。第1設定圧力は、サブタンク32の上限圧力に基づいて設定されている。サブタンク32の上限圧力、すなわち、第2水素吸蔵合金35の温度が第2温度範囲の上限温度(本実施形態でいえば、30℃)のときのサブタンク32の内圧は、0.9MPaであり、本実施形態において、第1設定圧力は、サブタンク32の上限圧力と同一である0.9MPaに設定されている。第1の設定圧力は、サブタンク32の上限圧力以下で、サブタンク32の上限圧力に基づいてサブタンク32の特性や第1逆止弁39の特性を考慮して設定される。
【0023】
また、第1流路36において、第3流路38の接続部51と燃料電池21との間には、燃料電池21に供給される水素ガスの圧力を調節する調圧弁40が設けられている。調圧弁40は、燃料電池21が適切に発電を行える圧力に水素ガスの圧力を調節する。調圧弁40は、下限圧力が0.1MPaに設定されており、第1流路36の内圧が0.1MPa以上で調圧を行い、燃料電池21に供給する。
【0024】
第2流路37において、第3流路38の接続部52とメインタンク31との間には、第2逆止弁41が設けられている。第2逆止弁41は、サブタンク32からメインタンク31への水素ガスの流入を規制する一方で、第2設定圧力で開弁することで、メインタンク31からの水素ガスの流出を許容する。第2設定圧力は、調圧弁40の下限圧力に基づいて設定されている。本実施形態において、第2設定圧力は、調圧弁40の下限圧力と同一である0.1MPaに設定されている。
【0025】
フォークリフト10には、燃料電池21に液媒体を循環供給するとともに、燃料電池21と熱交換された後の液媒体をメインタンク31に供給する流通路42が設けられている。また、フォークリフト10には、サブタンク32に外気を供給する送風機43が設けられている。
【0026】
次に、水素ガス供給装置30が燃料電池21に水素ガスを供給するときの各逆止弁39,41の動作について説明する。フォークリフト10は、冷凍物が保管されている冷凍室などでの使用や、寒冷地などでの使用など、環境温度が第1温度範囲の下限温度である0℃未満の状況で使用されることがある。以下の説明では、環境温度が第1温度範囲の下限温度未満であり、第2温度範囲内である状態から燃料電池システム20を起動させて、フォークリフト10を動作させる場合の各逆止弁39,41の動作について説明する。
【0027】
環境温度が0℃未満の状態から燃料電池システム20を起動させる場合、サブタンク32のみから水素ガスが放出される。サブタンク32から放出された水素ガスは、第2流路37、第3流路38、及び第1流路36を経由して、調圧弁40によって圧力が調節された状態で燃料電池21に供給される。このとき、各流路36,37,38の内圧は0.9MPa未満であり、第1逆止弁39が開弁する第1設定圧力未満である。このため、第2流路37からメインタンク31への水素ガスの流入は第2逆止弁41によって規制され、第1流路36からメインタンク31への水素ガスの流入は第1逆止弁39によって規制される。したがって、サブタンク32から放出された水素ガスは、全て燃料電池21に供給される。サブタンク32の温度は、水素ガスの放出に伴い低下するが、送風機43によって供給される外気との熱交換によって、外気の温度に追従する。
【0028】
サブタンク32から燃料電池21に水素ガスが供給されて、燃料電池21が発電を行うと、燃料電池21の温度は次第に上昇していく。これに伴い、フォークリフト10は、燃料電池21を冷却するために、流通路42に液媒体を供給する。液媒体は、燃料電池21と熱交換を行うことで燃料電池21を冷却し、温度が上昇する。燃料電池21との熱交換によって温度が上昇した液媒体は、流通路42を流通するとともに、メインタンク31と熱交換を行う。液媒体は、メインタンク31と熱交換を行うことでメインタンク31を加熱し、温度が低下する。すなわち、燃料電池21が発した熱は、熱交換された液媒体としてメインタンク31に供給される。そして、液媒体は、流通路42を更に流通して、ラジエータなどで冷却された後に、再度燃料電池21と熱交換を行う。燃料電池21の発電に伴う温度上昇に従い、液媒体の温度も上昇していき、液媒体の温度上昇に従い、メインタンク31の温度も上昇していく。
【0029】
図2に示すように、メインタンク31の温度が、第1温度範囲内になると、第1水素吸蔵合金33から水素ガスが放出される。したがって、サブタンク32は、環境温度が第1温度範囲の下限温度未満のときの燃料電池システム20の始動時に燃料電池21に水素ガスを放出し、メインタンク31はサブタンク32による燃料電池21の発電に伴う温度上昇によって第1温度範囲の下限温度以上の温度になると水素ガスを放出する。メインタンク31の内圧が0.1MPaを上回ると、第2逆止弁41が開弁することで、メインタンク31から第2流路37に水素ガスが放出される。メインタンク31から第2流路37に流入した水素ガス、及び、サブタンク32から第2流路37に流入した水素ガスは、第2流路37、第3流路38、及び第1流路36を経由して、調圧弁40によって圧力が調節された状態で燃料電池21に供給される。このとき、各流路36,37,38での水素ガスの圧力は0.9MPa未満であり、第1逆止弁39が開弁する第1設定圧力未満であるため、第1流路36からメインタンク31への水素ガスの流入は第1逆止弁39によって規制される。
【0030】
燃料電池21が発した熱は、メインタンク31にのみ供給され、サブタンク32は外気温に追従しているが、環境温度が30℃を超える状況下での使用などの要因により、サブタンク32の温度が30℃よりも大きくなると、サブタンク32の内圧が0.9MPaよりも大きくなろうとする。
【0031】
図3に示すように、サブタンク32の内圧の上昇に伴い、各流路36,37,38の内圧が上昇していき、サブタンク32、及び、各流路36,37,38の内圧が0.9MPaを上回ろうとすると、第1逆止弁39が開弁する。第1逆止弁39が開弁することで、第2流路37及び第3流路38を経由して第1流路36に流入した水素ガスの一部は、メインタンク31に供給される。この水素ガスは第1水素吸蔵合金33に吸蔵される。また、メインタンク31に供給される水素ガス以外の水素ガスは、調圧弁40によって圧力が調節された状態で燃料電池21に供給される。サブタンク32から放出された水素ガスがメインタンク31の第1水素吸蔵合金33に吸蔵されることで、サブタンク32、及び、各流路36,37,38の内圧が低下していき、内圧が0.9MPaを下回ると、第1逆止弁39が閉弁する。
【0032】
次に、メインタンク31及びサブタンク32に水素ガスを充填するときの各逆止弁39,41の動作について説明する。メインタンク31及びサブタンク32に水素ガスを充填するときには、調圧弁40が閉弁された状態で水素ガスの充填が行われる。
【0033】
図4に示すように、調圧弁40を閉弁した後には、メインタンク31に設けられた充填部34から、外部機器によってメインタンク31に水素ガスを供給する。外部機器からの水素ガスの供給に伴い、メインタンク31の内圧が0.1MPaよりも高くなると、第2逆止弁41が開弁する。第2逆止弁41が開弁することで、メインタンク31から第2流路37に水素ガスが流入し、第2流路37からサブタンク32に水素ガスが供給される。これにより、メインタンク31、及び、サブタンク32の両方に水素ガスが充填される。
【0034】
したがって、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)第1逆止弁39及び第2逆止弁41は、制御装置に制御されることなく開閉する。このため、制御装置を接続するための配線などが不要となる。また、制御装置が弁を開閉するためのプログラムなどが不要になり、燃料電池システム20を制御するプログラムを簡素にすることができる。したがって、水素ガス供給装置30の簡素化を図ることができる。
【0035】
(2)第1逆止弁39が開弁する第1設定圧力は、サブタンク32の上限圧力に基づいて設定されている。このため、サブタンク32の内圧が上限圧力を上回ろうとすると、第1逆止弁39が開弁することで、水素ガスが第1水素吸蔵合金33に吸蔵される。これにより、サブタンク32の内圧を低下させることができる。したがって、外部に水素ガスを放出する場合に比べて、水素ガスを無駄にすることなくサブタンク32の内圧をサブタンク32の上限圧力に基づいた値以下とすることができる。
【0036】
(3)第2逆止弁41が開弁する第2設定圧力は、調圧弁40の下限圧力に基づいて設定されている。このため、メインタンク31から放出される水素ガスは、調圧弁40に調圧されて燃料電池21に供給される。
【0037】
(4)メインタンク31は、燃料電池21と熱交換された後の液媒体によって加熱されている。このため、環境温度が第1温度範囲の下限温度よりも低い場合でも、燃料電池21が発した熱を利用してメインタンク31を加熱して水素ガスを放出させることができる。
【0038】
(5)第1温度範囲の一部と第2温度範囲の一部は被っている。このため、燃料電池21に水素ガスが供給されない状況になることが抑制される。
(6)メインタンク31には、充填部34が設けられている。そして、充填部34からメインタンク31に水素ガスが充填されると、第2逆止弁41が開弁する。このため、メインタンク31のみに水素ガスを充填することで、サブタンク32にも水素ガスを充填することができ、メインタンク31及びサブタンク32に個別に水素ガスを充填する場合に比べて、手間が少ない。
【0039】
なお、実施形態は以下のように変更してもよい。
○第1逆止弁39の第1設定圧力は、サブタンク32の上限圧力に基づいて設定されていればよく、0.8MPaなどでもよい。すなわち、第1逆止弁39の第1設定圧力がサブタンク32の上限圧力に基づいて設定されているとは、第1設定圧力がサブタンク32の上限圧力と完全に一致する場合のみではなく、サブタンク32の上限圧力の近傍の値も含む。同様に、第2逆止弁41の第2設定圧力は、調圧弁40の下限圧力に基づいて設定されていればよく、0.2MPaなどでもよい。すなわち、第2逆止弁41の第2設定圧力が調圧弁40の下限圧力に基づいて設定されているとは、第2設定圧力が調圧弁40の下限圧力と完全に一致する場合のみではなく、調圧弁40の下限圧力の近傍の値も含む。
【0040】
○調圧弁40は、制御装置によって開閉を切り替えられる弁であってもよいし、第1逆止弁39や第2逆止弁41と同様に、制御装置に制御されることなく開閉する弁であってもよい。
【0041】
○実施形態では、第1逆止弁39の第1設定圧力は、サブタンク32の上限圧力に基づいて0.9MPaとしているが、これに限られない。例えば、第1流路36の内圧に関わらず、第1流路36からメインタンク31への水素ガスの流入を許容してもよい。同様に、第2逆止弁41の第2設定圧力は、メインタンク31の内圧に関わらず、メインタンク31から第1流路36への水素ガスの流入と許容するように設定されていてもよい。
【0042】
○メインタンク31と燃料電池21は、調圧弁40を介することなく第1流路36で接続されていてもよい。
○メインタンク31は、燃料電池21が発した熱とは異なる熱で加熱されてもよい。例えば、フォークリフト10に搭載されている他の発熱部品が発した熱を利用して燃料電池21を加熱してもよい。
【0043】
○メインタンク31に加えて、サブタンク32にも水素ガスの充填部を設けてもよい。この場合、メインタンク31、及び、サブタンク32には、個別に水素ガスを充填する。
○燃料電池システム20の上限圧力は、1MPa未満であれば、0.9MPaとは異なる値に設定されてもよい。
【0044】
○水素ガス供給装置30は、電気自動車に搭載され、電気自動車の燃料電池21に水素ガスを供給してもよい。
○水素ガス供給装置30は、負荷としての水素エンジンに水素ガスを供給してもよい。
【0045】
○流通路42を流通する媒体は、液媒体とは異なる部材でもよく、気体の媒体でもよい。
○第1温度範囲の下限温度は、第2温度範囲の上限温度よりも高くてもよい。この場合、サブタンク32の温度が第2温度範囲の上限温度を上回る前に、燃料電池21が発した熱や、加熱装置による加熱によってメインタンク31の温度が第1温度範囲の下限温度を上回ればよい。
【0046】
○第1温度範囲と第2温度範囲の上限温度及び下限温度は、燃料電池21の動作温度などに応じて適宜変更してもよい。
○メインタンク31の容量は、サブタンク32の容量よりも少なくてもよいし、サブタンク32の容量と同一でもよい。
【0047】
○送風機43は、車室内の空気をサブタンク32に供給してもよい。
○送風機43は設けられていなくてもよい。この場合、空気とサブタンク32との熱交換によってサブタンク32の温度を調節してもよいし、空気とサブタンク32とを熱交換させなくてもよい。
【符号の説明】
【0048】
21…燃料電池、30…水素ガス供給装置、31…メインタンク、32…サブタンク、33…第1水素吸蔵合金、34…充填部、35…第2水素吸蔵合金、36…第1流路、37…第2流路、38…第3流路、39…第1逆止弁、40…調圧弁、41…第2逆止弁、42…流通路。