(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6294239
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】負圧創傷治療製品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/00 20060101AFI20180305BHJP
【FI】
A61F13/00 355A
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-556815(P2014-556815)
(86)(22)【出願日】2013年2月13日
(65)【公表番号】特表2015-506793(P2015-506793A)
(43)【公表日】2015年3月5日
(86)【国際出願番号】US2013025903
(87)【国際公開番号】WO2013123024
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2015年12月14日
(31)【優先権主張番号】61/597,888
(32)【優先日】2012年2月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501356226
【氏名又は名称】ビーエスエヌ メディカル,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エバンズ,ジョン,シー.
(72)【発明者】
【氏名】シュエッツ,パトリック
【審査官】
藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/135284(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/087871(WO,A2)
【文献】
英国特許出願公開第02468905(GB,A)
【文献】
特表2010−517679(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0282309(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/00
A61M 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐湿性三次元編みファブリックと、接着性ポリウレタンフィルムのカバーとを備えた負圧創傷治療包帯であって、
前記耐湿性三次元編みファブリックは、創傷滲出物を傷から離れる方向に移送するための滲出物移送層を形成する耐湿性の糸を含んでなると共に、前記滲出物移送層が治療時に傷に接着するのを防止するのに適応した非接着層と一方の側がラミネートされた状態にある、体積で20%の高吸収性繊維を備え、
当該負圧創傷治療包帯は弾力性があり且つ張力を受けても変形しない、ことを特徴とする負圧創傷治療包帯。
【請求項2】
前記耐湿性三次元編みファブリックは、モノフィラメント糸およびマルチフィラメント糸のうちの一種以上を含んでなる、ことを特徴とする請求項1に記載の負圧創傷治療包帯。
【請求項3】
前記耐湿性三次元編みファブリックは、モノフィラメント形態およびマルチフィラメント形態の両方において、ポリアミドを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の負圧創傷治療包帯。
【請求項4】
前記耐湿性三次元編みファブリックの単層の厚さは、2.0mm〜4.0mmであり、
前記耐湿性三次元編みファブリックの孔サイズは、1.0mm〜3.0mmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の負圧創傷治療包帯。
【請求項5】
前記耐湿性の糸は、24〜75デシテックスである、ことを特徴とする請求項4に記載の負圧創傷治療包帯。
【請求項6】
耐湿性の糸のタイプ(種類)は、ナイロン、ポリプロピレン、ビスコース(viscose)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、及びそれらの組合せからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項5に記載の負圧創傷治療包帯。
【請求項7】
前記耐湿性三次元編みファブリック用のステッチ表記が、4又は6本の編みバーに基づき、
バー1:1-0/2-2/2-3/2-2;
バー2:1-0/1-2/1-0/1-2;
バー3:1-2/1-0/2-2/2-3;
バー4:2-2/1-0/2-2/2-3;
であり、ここで、全てのバーは完全に糸通しされ、全てのループは4端部からなり、バー1及びバー4は各ガイドあたり2端部を持って糸通しされている、
ことを特徴とする請求項1に記載の負圧創傷治療包帯。
【請求項8】
前記耐湿性三次元編みファブリックが、次のような設定に従い、タブルニードルバー・ラシェル(Raschel)編み機で形成される、
[設定]
インレイステッチ 1-0/2-2/2-3/2-2 ナイロン・モノフィラメント
ピラーバー 1-0/1-3/1-0/1-3 ポリプロピレン・マルチフィラメント
ピラーバー 1-3/1-0/1-3/1-0 ポリプロピレン・モノフィラメント
インレイバー 2-2/1-0/2-2/2-3 ナイロン・モノフィラメント
ことを特徴とする請求項1に記載の負圧創傷治療包帯。
【請求項9】
ラミネーション(層状構造)及びラミネート無しの上敷きのうちの一方の形態での抗菌層を更に備える、ことを特徴とする請求項1に記載の負圧創傷治療包帯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概ね、創傷ケアの分野に関し、特に、負圧(式)創傷治療を実施するための製品及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
負圧創傷治療は、真空治療(vacuum therapy)創傷治療とも言われるものであり、それは、複雑な創傷を癒すための確立された治療形態である。現在の形態の負圧創傷治療は、創傷治療をサポートすべく広く受け入れられ且つ広範に利用されている。複雑な創傷は、小さくて急性(acute)のものから、深くて慢性的なものまで多岐にわたる。現在の負圧創傷治療の手順は、典型的にはポンプ及びシールされた創傷皮膜によって提供されるところの、制御された大気圧以下の局所創傷環境を含むものである。
【0003】
市場に出回っている現在のシステムのほとんどが、創傷と創傷シール材料との間にある創傷フィラー(wound-filler)を使用する。創傷フィラーには、大気圧より低い圧力下での創傷治療をサポートするためのいくつかの特徴があり、それには、圧力の一定した分布、創傷滲出物(wound exudates)の分配及び移送、並びに傷の保護を提供することが含まれる。
【0004】
現在、主に使用されている二つのタイプの創傷フィラーは、織って作ったメッシュ材料の形態をしたコットン・ガーゼと、ポリウレタン又はポリビニルアルコールに基づくオープンセル合成フォーム(open cell synthetic foam)のような発泡体とを含む。これらの材料は両方とも、湿度の吸収及び保持に向かう傾向性も含めて、適用、使用および除去において様々な問題を提示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】(特になし)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それ故、本発明の目的は、改良された負圧創傷治療の製品および方法を提供することにある。
【0007】
本発明の更なる目的は、湿度管理特性を備えた創傷フィラーを提供することにある。
【0008】
本発明の更なる目的は、必要な治療効果を達成するのにより少ない数の材料層で済むという理由により、もっと効率的に製造され且つ適用される改良された負圧創傷治療製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の及びその他の目的及び利点を達成するために、ここに負圧創傷治療包帯が提供されている。その負圧創傷治療包帯は、耐湿性であり且つ創傷滲出物を傷から離れる方向に移送するための滲出物移送層を形成するところのファイバー(繊維)から形成された三次元編みファブリック(three-dimensional knitted fabric)を含むものである。
【0010】
本発明の包帯は、前記滲出物移送層が治療時に傷に接着するのを防止するために適応された非接着性素材、及び、傷またはその周辺でバクテリア(細菌)の成長を防止するための抗菌層を更に含んでいてもよい。
【0011】
前記編みファブリックは、モノフィラメント糸、マルチフィラメント糸、又は、それらの組合せを編むことで形成されるオープンメッシュ編み構造を有する。
【0012】
前記編みファブリックは、2.0mm〜4.0mmの単層厚さ、及び、1.0mm〜3.0mmの孔サイズを有してもよい。前記繊維から作られた糸のデシテックスは、好ましくは24〜75であり、糸のタイプ(種類)は、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ビスコース(viscose)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、及びそれらの組合せを含むことができる。
【0013】
本発明の包帯は、接着性ポリウレタンフィルムのカバーを更に含んでもよい。
【0014】
別の実施態様において、負圧創傷治療包帯が提供されるものであり、その包帯は、
ポリウレタンフィルム製の裏張り(backing)、並びに、
耐湿性であり且つ創傷滲出物を傷から離れる方向に移送するための滲出物移送層を形成するところの繊維から形成された三次元編みファブリック、を備えている。
【0015】
本発明の追加の特徴、態様及び利点は、以下に続く詳細な説明の中で述べられており、部分的には、その説明から当業者には容易に明らかであり、あるいは、ここで述べられた発明を実施することで認識されるであろう。前述の概括的な説明も以下に続く詳細な説明も共に、本発明の様々な実施形態を表すものであり、そして、特許請求されているような本発明の特徴を理解するための概観や枠組みを提供することを意図したものであることは、理解されるべきである。
【0016】
本発明のこれらの又は他の特徴、態様および利点については、以下に述べる発明の詳細な説明を添付の図面を参照して読んだときに、よりよく理解されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、使用のために多層に折り畳まれた、本発明の好ましい形態に従う編みファブリック包帯の平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に従う、ロール形態の編みファブリック包帯の斜視図である。
【
図3】
図3は、編みファブリック包帯と、編みファブリック包帯が採用された負圧装置とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[発明の詳細な説明]
以下、本発明の例示的な実施形態が示された添付の図面を参照しつつ、本発明を更に十分に説明する。但し、本発明は多くの異なる形態で具体化されてもよく、ここで説明する代表的な実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。例示的な実施形態は、この開示内容が詳細且つ完全なものとなり、発明の範囲を十分に伝え、且つ、当業者が本発明を再現、使用及び実施することを可能にするように提供されている。各図面を通じて、同じ参照番号は同じ要素を表している。
【0019】
図面を参照すると、オープン・ニット(open-knit)の耐水性編みファブリック包帯10が、負圧創傷治療手順における創傷フィラーとして使用される。その包帯は、織り(woven)(物)とは対照的に編まれた(knitted)ものであり、モノフィラメント糸、又は、モノフィラメント糸とマルチフィラメント糸との組合せを所望の構造に編むことで形成された三次元オープンメッシュの編み構造である。それ故、結果的に得られた編みファブリック包帯は、カットし易く、傷(創傷)にもフィットし易い。得られた編みファブリック包帯は、圧力下でも安定であり、創傷滲出物を創傷部位から離れる方向に効果的に移送する。編みファブリック包帯は、適切な処置に必要とされるに十分な程度に厚みを増し且つ傷を満たすべく、容易に折り畳まれる。
【0020】
創傷フィラーは、深い傷用および平らな傷用の両用に使用することができる。以下、詳細に説明するように、編みファブリック包帯は、編み構造(ニット構造)と、該ファブリックが編まれた糸とのために耐水性である。前記編み構造は、いくつかの個々の層に対する置き換えとして、あるいは、現在入手可能な製品で要求されているような他の層と組み合わせて使用されてもよい、ということが見込まれている。
【0021】
編みファブリック包帯は、微細なフィラメント、例えば、1/24デシテックスより大のポリアミド(モノフィラメント形式及びマルチフィラメント形式のいずれでも)を含んでもよい。
【0022】
編みファブリック包帯の別のバージョンは、ポリエステルのモノフィラメントを使って形成されてもよい。単層の編みファブリック包帯の厚さは、2.0mm〜4.0mmの範囲にあってもよく、1.0mm〜3.0mmの範囲の細孔又はメッシュ寸法を有してもよい。糸(yarn)のデシテックスは、好ましくは24〜75であり、糸のタイプ(種類)は、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ビスコース(viscose)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、及びそれらの組合せを含む。糸の組合せは、モノフィラメント形式又はマルチフィラメント形式のいずれでもよい。
【0023】
独創的な編み構造の結果として、編みファブリック包帯は、皮膚浸軟(皮膚のふやけ)を低減し又は最小化する非常に効率的な湿度処理能力を有する。編みファブリック包帯の開いた構造は、張力を受けても変形せず、患者の創傷及び生体構造に容易に順応(同化)して、治療の質を維持及び改善しつつ良好な快適性を提供する。編みファブリック包帯は、その弾力性のために、傷に対する適切なクッション性を提供する一方で、モノフィラメント糸の使用は効果的に湿気移送システムとして作用し、創傷滲出物が創傷部位から排出されるのを許容する。包帯を通じて傷にかけられる圧力は、編み構造によって作り出されたメッシュ開口を閉塞せず、編みファブリック包帯は、本質的に耐水性である。
【0024】
編みファブリック包帯は、三次元の創傷フィラー編み構造内に、薄い多層保護カバーを伴って提供されてもよい。編みファブリック包帯はまた、多層の創傷充填システム(wound filling system)内に、ポリウレタンフィルム12を伴って提供されてもよい。
【0025】
編みファブリック包帯の好ましいステッチ表記は、4又は6本の編みバーに基づき、
バー1:1-0/2-2/2-3/2-2;
バー2:1-0/1-2/1-0/1-2;
バー3:1-2/1-0/2-2/2-3;
バー4:2-2/1-0/2-2/2-3;
である。
ここで、全てのバーは完全に糸通しされ、全てのループは4端部からなり、バー1及びバー4は各ガイドあたり2端部を持って糸通しされている。
【0026】
負圧創傷治療包帯用の別のファブリック構成が、次のような設定に従い、タブルニードルバー「ラシェル(Raschel、商標)」編み機で形成されてもよい。
[設定]
インレイステッチ 1-0/2-2/2-3/2-2 ナイロン・モノフィラメント
ピラーバー 1-0/1-3/1-0/1-3 ポリプロピレン・マルチフィラメント
ピラーバー 1-3/1-0/1-3/1-0 ポリプロピレン・モノフィラメント
インレイバー 2-2/1-0/2-2/2-3 ナイロン・モノフィラメント
【0027】
図3を参照すると、負圧創傷治療用の深傷用の標準包帯セットは、傷をカバーする接着性のポリウレタンフィルムと、ポンプ用のチューブアタッチメントと、
図2に示すようなロール形態で提供されるところの本発明に従う創傷フィラーとを含んでもよい。典型的な深傷は、滲出物貯蔵コンテナ(容器)を備えたポンプを必要とする。平らな傷用の多層カバー及び創傷フィラーは、抗菌能力のある追加層を持ったあるいは持たない、快適で、耐水性のある、三次元編みファブリック包帯を含んでもよい。代わりに例えば、陰イオン糸(anion yarn)のような特別な抗菌糸が使用されてもよい。平らな傷の実施形態は、滲出物を移送して傷の全体に圧力をかけることを主に意図している。この実施形態はより小さな傷用に設計されているので、滲出物を捕えて蓄えるコンテナ(容器)が全ての場合に必要ではないかもしれない。代わりに、高吸収性の素材が適切であるかもしれない。そのような適切な素材の一つは、創傷部位又はその周辺におけるバクテリアの成長を制限するところの、ポリヘキサメチレン・ビグアニド(biguanide)含浸のガーゼ包帯製品である。溶液の形態をなす他の抗菌製品は、想定されている。
【0028】
上述のような抗菌層が、本発明の編み包帯と組み合わせて、ラミネーション(層状構造)として、又は、ラミネート無しの上敷き(overlaid without lamination)として使用されてもよい。
【0029】
包帯カバーは、好ましくは、傷を閉じるために使用される接着性のポリウレタンフィルムである。親水コロイド版(仕様)は、適用を簡単にするかもしれない。その結果得られる利点は、滲出物の吸収時に親水コロイドの膨張(又は展開)が無いかほとんど無いことである。
【0030】
貯蔵及び拡張層の要件は、低レベルの膨張を示しつつも最適な滲出物の展開及び移送を伴って、滲出物を吸収することが可能な薄い基材の必要性を含む。不織布材料(好ましくは高い吸収特性を有するもの)が好ましい。そのような構成物の一つは、約3mmの厚さで、1平方メートルあたり200グラムの公称重量を持ち、一方の側が非接着層とラミネートされた約20%高吸収性繊維から構成されてもよい。前記高吸収性の繊維は、ポリアクリル酸ナトリウム(塩)を形成する開始剤の存在下、水酸化ナトリウムとブレンドされたアクリル酸の重合で作られてもよい。高吸収性のポリマー、例えば、ポリアクリルアミド共重合体、エチレン・マレイン酸無水物共重合体、架橋カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール共重合体、架橋ポリエチレンオキサイド、ポリアクリロニトリルのデンプングラフト化共重合体(starch grafted copolymer of polyacrylonitrile)、等を形成するためにその他の材料が使用されてもよい。
【0031】
別の構成は、追加のエンボス加工された孔、より低い吸収性、及び追加された吸収層を備えた変性ハイドロ活性(hydro-active)材料であってもよい。ヒドロゲル浸漬された不織マトリックスは、更なる代替案(選択肢)である。
【0032】
実施可能な構造についての表を以下に示す。
【表1】
【0033】
前述の説明は、事例のみによって本発明の実施形態を提供する。その他の実施形態が同様の機能を呈し及び/又は同様の結果を達成することは、想定されるところである。
【符号の説明】
【0034】
10…編みファブリック包帯
12…ポリウレタンフィルム